全部抱きしめて、ずるいよ、それは7





「不思議ですよね、あのような言葉で納得出来ちゃったんですから。」




ーただ、ただ私は、





「【”貴方が生きて居ることを覚えていたいだけ”】だなんて。」




おや、雨ですか。珍しいことがあるものですね?


「ねぇ、ウイスさん。」
「……ええ、」


そうですね。



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言わなかった。もう分かっている。痛い程に見えて来た。


「…ほんと、お前らが必死になる気持ちが痛い程分かる」
「そうですか」
「……あら毒だ」

いっそのこと、殺してよ

「そら殺してとせがむ。俺ならこんなの嫌だね。」

それでもあの子は望んだ。





”覚え続けることだけ”を望んだのだ。




本当は言いたかっただろう。どうして忘れてしまったのだと、どうして栞を消してしまわれたのだと。思いついた言葉は泡の様に溶けて消えて居なくなって、残された言葉は、全てを知らずとも、何処か気になってしまう様な言葉一つだった。帰る間、ふとリキールは唸ることすら忘れて顔を伏せた。彼女が望んだことだ。今更とやかくは言わないし、あのお人の顔を見て、もういうものではないと思った。


貴方の傍に居たいけど、出来ないならばそれならばいっそのこと貴方のことをおぼ


「(中立が其処迄大事か)」

彼女等にとって、其処が全てなのだろう。



ーじゃあひとりにならなければいい?

医者に告げた通りだった。彼女の周りには多くの人が居た。だから言うことを聞いていた。

ーきっと抱きしめてくれやしない

だからそのままそっか、と言えば良かったのに。

ー帰ってくるかもしれないのに?帰りたいんだろう?



お家に。帰らしてあげる。



なんて残酷な世界を突きつける。目を輝かせて、世界の色が一気に反転する。灰色にも近かった色が色鮮やかに鮮明に光を灯していくその姿なんて見たくなかったのに、直接脳に入って来たのだから見たくなくとも見えてしまっていて。



ーほんと?



約束をしないで帰った。






お医者さんも嘘つきだった。







貴方が帰ることは二度と無かったのだから。






「(寧ろ何故恨まない、恨んでも良いくらいだろ、こんな胸糞の悪い…)チッ」
「おや、リキール様ともあろうお方が舌打ち等…明日は雨が降りますかね。」
「いや俺くらい舌打ち等…嗚呼」

そうだな。そうなると、いいな。
ええ。


「この惑星は雨がきついな。濡れて風邪を引きかねない。」
「そうですね。」

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小さく丸くなった子。待ち続けた。少し多めにご飯を何時も居れていた子。食べてくれた。大きめの服を買って着ていた子。丁度良い大きさだったから。髪の毛を乾かすなんてしなかった子。乾かしてくれる人が居た、から。



扉を開けてばかりだった人。



貴方が何時だって此処に入ってくれるように開けていた。




「…繭に穴をあけたのは、あの方がお前を探した時に見つけられるように、という配慮だったということか。」
「ビルス様」
「敵は」
「未だ見つかりません。ですが間違いなく、近くには居るでしょう。」
「チッまた厄介だな。こっちの気を悟られることなく動ける奴等だとは。」
「ええ」

上の空、にもなる、か。天使自体、そんな人形じゃあるまいし、と思える程には感情が欠落しているようにも見えた。知識があれば良いと思っている処はあるだろうが、帰って来てからというもの、そういったものが次第と消えていった。こっちの方が良いと思っていたが、やはり最初が良かった。きっと彼女もそれを願っている。


だからせめて貴方の気に留めない場所で私をどうかこ


「寝ているのか」
『ねてないよ』


ねれないよ。だってねたくないのだから。


『ねなくてよいからいいのだよびるすさま』

私は何時だって戻り続けられる。再起動できるようになったんだ。ねぇ、一つ出来るようになったの!これで私はきっと貴方にほめ

「ビルス様、少々乱雑過ぎます。」
「いや、僕がしなかったら君がしたでしょこれ…」

ぐったりとした彼女の身体を少しでもそっとベットに寝かしつけてやる。ふと思いついたビルスが彼女の身体を抱き上げる。何をと思ってみたら、顎をくいと動かす。嗚呼、本当に貴方はもう…

「怒らせたいのですか」
「はっ、怒れるものなら怒ってみればいい。」

その日はきっと、良い日だろうからな。
ええ、そうですね。

そっと降ろした場所に、柔らかいタオルケットをしいてやった。

「…これは僕からのプレゼントだよ、都結。」

その夢を見続ける。

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ううんと音を立て背伸びをして起き上がる。頭が重くて、一体何時から寝ていたのか分からないが。

『…あれ、いいにおい』

すんすんと音を立て背伸びをして匂いを嗅ぐ。そんな動物ではあるまいし、なんていうコルンの声はそっちのけだ。だって記憶の中だから。ふと、違和感を感じた。

『あれ』

六畳半程の空間が広がる

扉は開いていた

カタカタと音を立て止まってしまえば、パタパタと足音が聞こえる。扉の前に見えたのは一人だけだった。




「おや、もう起きたんですか。おはようございます。」



息が詰まる、これは、どういうことだろうか?



「早く顔を洗って来なさい?もうお昼ですよ、確かに先日は長旅で疲れていたでしょうが、もう貴方の食べるものなんて菓子くらいしか残していませんよ。」
『、す』
「おや、声も枯れちゃいました?」

目の分に持って行ってくれたらいいのですが。
…り、と?

『りと?りとなの?ほんと、?りとなの?ねぇ』
「ん?どうされました?聞こえていますよ?」
『…ううん、うううん、なんでもない、なんでも』

頬に温かな温度が触れる。伝わる音に、温度が、この冷たい場所を温めてくれた。色が鮮やかで、眩しいのに、何処か嗚呼

『なんでもないよ、私ね?さっきまで酷い夢を観ていたの!』

これが夢だと分かってしまうのが、今だけは許したくなかったのだ。

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温かい

瞼は重さを知らない。世界を見せてくれる。

温かい

開いた場所には貴方が居た。

温かい

ぐしゃぐしゃになったシーツから、私は手を取って抜け出せてしまった。



嗚呼こんなにも簡単だったんだ!


「そんなに酷い夢を見ていらしたんですか。もうボロ泣きじゃないですか。」
『ぐじゅっ、ふ、へへ』
「も〜泣くのか笑うのかどちらかにして下さいよ。」

ほら雨が止んで雲から日が差し込んでいるんです。とても綺麗で、見れたらと思っていたので、丁度良かった。起きなければたたき起こすつもりでした。明日暴力で警察が来ないようにして頂きたかったので助かりました。
其処迄するつもりだったの!?!??

『ふはっ、も〜やめてよ〜!』
「っふふふふふ」




そう言って手を繋いで外の景色を見た。左を向けば、其処にはパタパタと音が鳴る。外は雨が止み、光が差し込んでいた。




時刻は午後二時を示していた。



何一つとて間違っていない。

ケトルは沸いて、既にカチッと音を鳴らしていた後だろうか、湯気がもうこれでもかと言わんばかりに沸き立ちあげていたのが見えた。ぐじゅぐじゅと鼻を啜っていたら手が引っ張られてしまう。どうやらソファーに座れという事だろう。ちょこんと座れば鼻に勢いよくテッシュが押し込まれただけじゃない。目にも入りそうだったから目をつぶったではないか。



も〜〜〜!!!!


『ちょ、だ、っ、こら!大神官様もうそんなざっっつい!なんでそんな雑いのかなぁ!?!?!?』
「おや、別にいいでしょ?貴方そうしていたでしょうし」
『誰がするか。いやしてたか。』

ちょっと反応は見て見たくてやった記憶がなくもない。まぁ無ければまた上書きしてしてしまうことだ。次の楽しみがこれで一つ増えてしまった。ふふふと笑えばなんです?気持ち悪いと嫌そうな顔で軽く引いてしまう。嗚呼、もう、これはきっとそうだ!


私はこの場所に帰ってこ


『…ね、大神官様。』
「なんです?ほら、早く食べてしまいましょう、美味しそうなキャラメルシフォ」
『今いつだっけ』
「そんなことですか?昨日帰って来てばかりで…嗚呼、確か時刻が違うんでしたっけ?確かそう2月のじゅうご」
『うそつきだね』
「え?」
『此処何処?私ビルス様に寝かしつけられたの。大神官様と約束したんだぁ、記憶残してくれるって。これ、ソレの副作用かな?』





何を言っているのですか?
それはこっちのセリフだよ。






『こんな日無かったの。貴方が居なかった時間で私は力を知った。これでは貴方だけが知って私は知らないままだ。そんなの私嫌だからな?おこだよおこ。激おこぷんぷん丸むかちゃっかふぁいありてぃーだよ』
「おっ????」
『おいおい、一体誰が言った?当ててやろうか…大方マルカリータとサワア後はコニック辺りだろう。それかあれか?念入りに言ったのは大体コルンと後はウイスだろう。』

嗚呼性格上、下手したらこっちの方か?いや、大体一人くらいは当たってるだろ。まぁ全員言ったら当たるか!
…あの、み、都結さん?

「なにを気でも触れました?」
『それはこっちのセリフですよ大神官様!貴方こそ随分と演技がお上手ですね?元から?それとも本当に記憶を取り戻された?』

それにしては、随分と綺麗ですねぇ?まるでガラス細工だ。
…あの、ち、近いですよ。

『近くて良いじゃないですか。だってこの世界には私達二人だけなんですから。』
「それはそうですが」
『貴方がもしもいうなら2月14日。日付の跨ぎによる誤解です。』

またぎ?
ええそうまたぎ。

『ドイツと日本の時差は大体約八時間とされています。それも冬時間です。14の午前11時に出発すれば日本では14の午後7時発。飛行時間は約12時間。日本到着時間は確かに15日の午前1時を指し示します。』
「では正しいではないですか、何故嘘つき呼ばわりをされなければならな」
『幾つかあります。まず一つ、余り私を舐めないで下さい。数時間前の記憶なんて忘れると思いました?一応バックアップを常時稼働させて思い出す様に脳に伝達するよう癖付けているのです。』

私言いましたよね?先程ビルス様に寝かして貰ったと。どうして?それは私の身体が精神が研ぎ澄まされた状態だったから。何時だって私は貴方の居ない時間では先を見ていました。貴方が帰って来た時に、貴方にだけとびっきりの笑顔を見せてやるための手段です。おかげ様で良い笑顔が見れたことでしょう?気持ちが良かったでしょうね、大層。

「ですが記憶だけでは通用しない。悪夢の続きだと思い込んでいるのでしょう」
『そうですね。ですが大神官様は14日と必ず言う。それは何故か。彼は私の言ったことを否定なんてしないのです。』
「私がですか?そんなバカな」
『だから間違えそうになりました。危うく意思を固める処で危なかったですよ。』

私は貴方と他愛もない時間だけを覚えて居れたらそれだけでいいのです。こんな悪夢なんて見たいわけではないですし、ましてや醒めない夢を見続けたいとも言っていませんよ。確かに気持ちが良いですが、それでも幻を脳裏に描いて考えているだけで、私は救われるというものです。それでしたら貴方の仕事の邪魔なんてしませんからね。

『きっと時間は15日です。ですが、14であってほしい。教えてあげましょう、其処ら辺で聞いている子供達にも全部分かる様に。』
「…誰も居ないと貴方は言ったのに」
『約束を破った時の保険ですよ』

やくそくを?
ええやくそくを。

「それまた何故、私が約束を破るような人に見えるとでも?」
『嗚呼もう完璧駄目だ。お〜い、もう少し私の記憶探るならもっとずっとしつのたかいやつをよこせ!!!!』

これぜーんぜん駄目。もう駄目。あ〜これだから嫌なんだよ〜人の手に尽くされた大神官様とか、ああああ分かってない!!!
…あ、あの、都結さん?

『嗚呼すいません少々感情が昂り限界突破しかけましたね危ない危ない。』
「既に時遅しと言っても分かりますかね、分かってませんね?そもそも聞いてます?」
『聞いてます聞いてます!いう事聞かないって言いたいんですよね!』
「全く聞いてないですね。それ私が次言う言葉ですよ。」

っはははははは!!いいじゃんいいじゃん!

『次の日は雨でした。落ち込んだ私を貴方は慰めることも中々出来ず、気付いたらこの場所に戻って来ていた。次の日は仕事ですし、其処迄ゆっくりなんて出来ない。コレを逃せばきっと、次笑ってくれることなんて、二度と無いとさえ思った。』
「だからワザと時刻を変えて?でしたら次の休みにまた休息を取ればいいではないですか。」
『次の休みじゃ駄目なのです。』
「では平日の夜にでも」
『夜ではダメなのです。この今を一日だけでも伸ばしたことが大事なのです。』

分からない貴方の心をこじ開けてその中に居る者を引きずり出してぶっ叩きたいくらいですが、そんなのした日には過去の私がダイレクトアタックしてくることでしょうからね、したら大事です。時間操作も可愛いもんでしょ。
じっ、あ、あなたねぇ…

『あの日あの時の時間は”まだ続いているんですよ”だから私は”約束なんて破っていませんし、ましてや約束を忘れる、なんてことするわけがない”。』
「…、」
『彼ならば14だという。そして私はソレをうのみにする。そして茶会を開いて、行儀の悪い床に合わせて座り、気付いて言うんです。』

あ!騙したな!?







『なぁ〜んてね!』












封印なんて出来ると思うなよ


































『【”此処は僕の時間だ貴様らの様な石ころ共が入り込んでいい世界ではないのだ”】』


















泡沫の白昼夢


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