僕だけが知っている、君の2



『ここいずだどど』

最早言えてすらない。

世界は真っ青で、というか、此処あれだ、テレビとかで見たことある世界うんちゃら百科事典的な処だ。絶対に何か違う言葉無きがするが、此処にはツッコミ役が不在なのでこのまま貫き通すことにしよう。…心なしか今は居ない心の中のコルン様が違う意味で大号泣している気がするが、気にしない方向性で貫き通すことにします。可哀想に…可哀想にwwwwww


『だれ?』

ふと違和感を感じ取って上を見上げた。其処には大きな大きな獣が此方をぎろりと睨んでいて。目をぱちくりとさせてみた。ぐるぐると音を鳴らしている。これは警戒しているのだ。多分だが、私はこの目の前にいる獣の範囲に入ってきてしまったのだろう。下手に動いたら一発アウトだ。そう言えば以前近所の子犬を触ろうとしてカチッと噛まれたことがある。血が出て凄い形相でお姉さんが慌てて色々手当てやらなにやらしてくれたのを思い出した。

きっとこの子は怖がっている。

私がその恐怖を受取って逃げてしまえば、この子は一体どんな気持ちになってしまうのだろうか?そう思ったら、何処か胸が痛くなって、鼻がツンと痛みを伴ってしまった。…本当に怖いのは彼の方だ。私が怖がってどうする。確かに恐怖だ。私が居なくなる、これに食べられたらきっと痛いだろう。ひとたまりもないだろうが…それでもこの獣さんが少しだけでも生き長らえることが出来るのが幸せか。

それとも私がいることが幸せか。

大きな音を鳴らして、此方を睨んでくる。そんなに怒らなくていいよ。私は何もしやしない。貴方の傷を抉るなんて、そんなの私が知る由もない。そう言えば以前誰かが「化け物になる」とでも言っていたな。もしやそれがコレでは?だとしたら、この子が外に出たら一発アウトではないだろうか?嗚呼、そうだ、ふと思っていたことを思い出した。



世界の誰もが私を嫌っていても、私は



『私は貴方を好きで居るよ?』



私が私だけを、見つめて居ていればいいのだから。


銀色の目がこっちの姿を捉えてくれていた。きっとどんな場所でも私は私が見えないのに、この瞳にだけ、私を確認することが出来る。悲しいけど、これもまた、特別だと思えたらなんだか愛おしく思えて来た。だってそうだろう?この獣の瞳に映された姿のみが、私だと言っているのだ。愛おしくも思えてくる。

だから大丈夫。例え全世界の人間が貴方を嫌ったとしても。私だけは、私だけを好きで居てあげる。その瞳に映る私だけが。そしたら世界の誰もが、私の良い処を貴方の良い処を知らないでいる!特別というのは、何処に行っても何をしていても、其処にしか存在しない希少なもののことを指す言葉だ。私はこの言葉が大好きだ。何よりも、と言っても良い程に大好きだ。私は貴方の特別でありたい。


私が貴方の特別で居てあげる。


犬は手を下から上にゆっくりと上げてしまえばいいという。正確には下から潜り込ませるというものだが、今回の場合は普通に手を上げるようになってしまうのが悲しい処。グルグルと音を立てる。だから手を降ろした。何時だってそうだ、私が手を伸ばして良いことは何一つとてない。

君をも怖がらせる手なんて、無い方が良いのに。私はこの両手が死んでも手放したくないと思っているのだから、これほどどうしようもない奴は世界を探しても私くらいしかいないことだろう。飼いならせるなんて鼻から考えていやしない。そりゃあまぁ飼いならせることが出来ればいいことが沢山あることだろう。

はぁとため息を吐いてしまう。音が続かない。此処はとてもとても息苦しくてたまりゃしない。

『はっ…!そもそも犬のように相手するのが駄目なのでは』

間違いなく今「…違う違う。違う、違うそうじゃ、そうじゃ、ないっ!!!!」って誰かの声が聞こえた気がしなくもないが、まっ

いっか!!!!!

いいよいいよーもういいよーそーんなこと考えてたらおちおちと寝れやしない。あれ私前まで何してたっけ?あれひょっとしなくてもお姉さん、寝るどころか永遠の眠りについてきてませんかね?あれもしかして君

『私を追いかけて来てくれたの?』

そんなわけないだろうがと、言いたそうな顔になってしまった。どうしよう、どうしようじゃねぇよ流石に度が過ぎる言葉を言う馬鹿がおるか。いやいたわ現在進行形で此方におられますおられます。あのですね、その人都結ちゃんって言うんですけどねぇ〜〜〜あっぼくじゃ〜〜〜ん!!!!泣いた泣いたぴえんぴえん。

『…もしそうだったら、良かったのに。』

私が何処か違う処に走って来ていて、貴方が引き留めに来てくれていたら良かったのにな。手を後ろで組んでソワソワする。いつの間にか動いていても何もしてこないようになった。少し気を許してくれただろうか?まぁしてこなくてもいいのだが。だって怖いものね、一人ぼっちだったのがもう一人急に来ちゃったら。驚いちゃうよ、誰だって。

それにしてもその黒い毛はとても綺麗だと思う。きっとふさふさ、いや、しっとりとしていて、でもふわりと手触りが心地よい気がしたから、つい言ってしまったのだ。


『お揃いみたいだね』


私の髪の毛と、貴方の髪の毛。嗚呼貴方の場合は獣の毛、とでも表現した方が良いのかな?でも耳周りにふわふわと揺れているようにもみえるその黒は、まるで横髪みたいで。お揃いみたいに見えたのだ。だって私の髪の毛は黒色で、貴方の耳元も同じ黒色だったから。そう言えば似たようなことを以前にも言ったことがあった気がする。一体”誰に”言ったのかは忘れてしまっていて、今すぐには思い出せないが。

『わわっ!っきゃ〜!』

そう思っていたら、彼だろうか?雄雌の区別はつかないが、クンクンと鼻息を鳴らしてから頬にと摺り寄せて来てくれた。どうやら気を許してくれたようだ。余りにも優しく擦って来たので嬉しさで甲高い声が出てしまった。ぴたっと口に手をあてると向こうも止まる。ごめんね?

『えへへ、ごめんね?高い声急に話しちゃったら驚いちゃうね。』

そんなことない。なんて言いそうに鼻が鳴るもんだから、うわっきったなと言ってしまった。だって鼻水が飛んできたのだ。そらいうよ。近寄ってしまえば、気を許してくれているのか、動くことはない処か伏せ迄してくれたではないか。うわ〜〜〜か〜〜〜んわいい〜〜〜〜!!!!

『ぎゅーしていい?ねぇねぇ、ぎゅ〜〜〜していいい!?』

どうぞ。そう言いそうに、ゆっくりと頭を下げ、顎を地面に降ろしたものだから、ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねてしまった。えへへと嬉しさが口から零れ落ちていくのを感じつつ、都結は大きな狼みたいなパピヨンみたいな鷹みたいなフェンリルの頬に優しく抱きしめるように身体で触れてしまう。

嗚呼、温かいね?貴方はとっても、温かいじゃないか。

寧ろ私が冷たくて驚いてしまわないかビビっている始末だ。

『かわいいねぇ』

こんな子が”化け物”だなんて、酷い世界だ。確かに怖いかもしれないが、この子が寂しくて泣いてしまうことこそが、一番怖いと思ってしまう。誰だって二人から一人になった瞬間が寂しくなるものだ。折角会えたのだから、二人ぼっちで息をしていたいと思わないかい?嗚呼でも、貴方を置いて行く可能性だって無きにしも非ずなのだ。

そう思っていたらグルグルと音を鳴らした。まるで俺を置いて何処に行くのだと言っているみたいだ。だから言ってしまうのだ。

『だって私は人間なのだもの。貴方との時間は全く違う。生きる時間が、違うんだよ…』

きっと、きっと私の方が死んでしまう。残りの時間だって恐らく長く生きても大体9年弱だろう。下手したらもっとずっと、だ。この体格だったら恐らく軽く百年は生き延びることだろう。勿論食事の出来る処に居続けたら、であるが。大型生物が絶滅する一番の理由は案外単純で「食糧難」というものだったりする。恐竜が本当に絶滅したのが食糧難であったら幸いなことであると思う。今頃あんな温かくも冷たい世界が続いている事なんてなかったことだろうから。

嗚呼でも、もしも、もしも貴方が私の”化け物”ならば…


『一緒にいてくれる?』


そうだ、よくよく考えたら、化け物はその者の体内の、それも精神内に位置していた筈だ。変な話精神が死ねばそのままこの化け物も死ぬことになるだろう。それなら同じ様に命は平等で、じゃあ、それってつまり

『私達、二人ぼっちなんだね!』

嗚呼それって、一番幸せなことじゃないだろうか?私は人間のままで居たくて、でも貴方と言う状態も私は知っていていたくて堪らなくて。人間の私も、化け物になった貴方も。全部全部、私のありのままで間違いないじゃないか。世界が嫌って私まで嫌ったら、どうする。泣いて死んでしまいそうになりたいのに、死ねなくて暴れてしまうじゃないか。

だから化け物が暴れるというのだろう。一体何を言っていたんだろうか、あの世界の住人達は。だってこんなにも酷く怯えて、


『寂しかったね…、ごめんね?見つけてあげられなくて。』


泣いて悲しんでこんな広い世界のど真ん中で怖くて丸くなって生きるしか出来ていなかったのだから。都結はそっと茶色の毛を撫でてしまう。喉を鳴らして此方を銀色の瞳が見つめてくれていた。その瞳の中には、真っ黒な髪の毛を背中まで伸ばした女性が映し出されていて。それが私で在るのだと、何故か私は納得してしまえて。


そして胸が満たされた様な感覚を覚えたのだった。





化け物を飼いならせ。

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『処でどうしようか。』

ポチ

そう言えばううんと嫌そうな音がした。あ〜これも駄目か。

『かと言って君の名前がポチ以外私の脳が判断出来ないんだよお〜ごめんてポチよ。』

だが他の名前がきっと良いだろう。君の、そう言えばこの耳、酷くあれに似ている気がする。嗚呼誰だったかな、こう、犬種の名前にしてたのにその犬種が出てこないとは、これ如何に。此処から出てしまいたいのだが、どうやろうか。現在はあれから数時間経過したのかどうかわからない。

体感では一時間であるが、恐らく数十分程度だと考えた。…多分三時間くらいは経ってるだろうなぁ〜。私の時間感覚、何時になったら家出から帰って来てくれるのやら。え?そもそも居ないって?い〜やいや〜〜〜そ〜〜〜〜んなまたまたぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!…はぁ、

『こういう時の占いが三位とかなんだよなあ〜』

だからと言って一位になったら出れるな訳がないだろう。下手し死んでたら最下位胃の一二位か何かだと思う。でも夢では死ぬことは生まれ変われるとか言うし、いやでも此処多分現実ぅ〜〜〜〜〜!!!!

『ねぇピクルス〜どうやったら外に出れると思う?』

少なくともお前が俺の名前をちゃんと言ってくれたらな?とか思ってるんじゃなかろうか!…それはそう。ごめんな〜でもお前が言葉を話せるとは思ってもいやしないし、それに私は話せない方が嬉しい迄あるのだ。だって世界の誰もがお前の言葉を理解出来ないということだろう?そして私はお前の目だけで会話出来る。拒絶したらいい。違っていたら、鼻息を荒らして反応するなりなんなりしてみていればいい。

そうして答えを私が導き出してあげる。

それが貴方の答えだ。そして私がその答えを導くことができ、貴方の言葉を唯一分かってやれるものだというものだ。嗚呼とんでもない特別で、居心地が大変良い処だと思わないかい?そう思っていたら、クルクルと音の高さが変わった。まるで


『寂しくないよ?』


恋しがっている様に見えた。誰かを主人を、くうくうと甘える様なというか、寂しさで、愛に餓えて餓えてたまりゃしない。ドアの向こう側に「ちょっと待っててね」って言って出て行ったお人を待ち続けている子みたいな感じだった。カチャカチャと音を立てる。足は鷹の様な爪だった。これはきっと暴れなくとも痛いだろう。傷付けないようにとしたところか知らないが、大きな鋭い牙を見せず口を閉じて頬の柔らかい処ばかり身体に擦りつけて来てくれる。私が気持ちいいと撫でていた処だ。…ほんと、其処迄しなくていいのに。

だが、何時までもこの世界に閉じこもる訳にも行かない。恐らくだが、お前と私二人でこの世界を覆す物語を見に行くことだって可能なことだろう。どんな世界だってキラキラと見えて来てしまえる。世界の誰かを信じるのではなくて。





化け物おまえ”だけに、この忠誠心こころを捧げよう。”




そうしたら、何処か世界が開ける気がした。胸に手を充て、腰に手を回してぴたりと姿勢を保つ。お辞儀をして、胸元にある心臓を触れるように。華を想像するように。あの煌びやかな一つだけの願いを持ったであろう華の力が、もしもこの世に存在しているのならば。私は今、たった一つの願いを捧げることだって、息をするように吸って吐いて言えるくらいには、簡単なことだった。

お前と共に生きる。

それが私の願いだ。そして希望だ。手に塗れて、もう自分が誰かわかりゃしない。それでいい。お前の瞳にだけ、私が生きて居る。それでいいではないか。だってその世界だけ、私は生きて居ると理解出来るならば。私は居るのだ。それでいい。


それでいい。それ以上望んだら、それこそ罰当たりだ。


笑ってそれでも目を閉じない。世界を見続けたいから。見通して、そしてその先に待ち受けた最果てに、私は触れて息をし続けたいと思ったからだ。この感情を、人はなんて名付けてくれることだろうか?人に会ったら聞いてみようか。覚えて居たら、そう、会えてしまえたら、ではあるが。

『どうしようか、マルクス』

そういつか聞いたであろう物理学者か精神学者かの名前を呼んでみる。あれ、マルサスだっただろうか?社会科で聞いたことがあるから少なくとも精神学者ではないか。そもそも物理学者でもないだろう。だって物理は理科の分野だ。もっと言えば物理の分野ではあるのだが、そんな細かいことを気にしている暇があったら、この世界から抜け出して今迄見ていた世界に戻ってしまわねばならいことだろう。

覚醒石と封印石

確か私は封印石に触れられ、効果が効かなかった筈だ。ということは放出し続けるということ。それは外にドライアイスのように、核としてあるというならば。



『小さな箱に息をしようか』


はた、綺麗に世界が閉じた。前を見たら、ソファーが下にあって。前には二つのドアが此方を見続けていた。まるで目で見られているみたいだった。左側は、こじんまりとした白い壁から切り取ったであろう枠から台所が見えた。白い壁の先は左に向けばパソコンやら荷物が壁に掛けられたり、整頓されている。グッズが埃なんて知らない程に、綺麗な形を保ってくれていたように見えるが、近くで見たら埃もつれだった。

『こ、こ』

振り返れば世界は、それでもおんなじ、ままだった。

暗い紺色のカーテンが白いカーテンと共にふわりと広がる。化け物の姿は何処にもいやしない。でも、一人だけ立ち尽くしてる男性がいた。正確には女性か?いや、中性か。黒髪で、それでも先が茶色にも見えた髪色が、銀色の瞳がこれは先程の化け物だと知らせてくれている。

「此処はお前の中だ。中枢。お前の一番が存在している世界。」
『…、ぴくるす?』
「っは、それでもいいよもう。」

お前が初めて好きになれた野菜がきゅうりだったもんな?食べて苦くて、嫌だったのに。前を向いて好きだと初めて「嘘」をついたその日に見えた世界は、何処までも綺麗だった。

ー美味しい?よかった!

嬉しそうに笑ったあの人の笑顔を、すっかり忘れていたのを今思い出せた。

貴方のおかげだ。ほんと…やめてほしいものだ。

『ぴくるすめ。』
「っくくく、言ってろ言ってろ。それにしても、随分とこじんまりした場所に入れ込んでしまったもんだな?」

お前の力ならば、もっと広い空間だって可能な筈。そう言ってソファーに座り込んで、足を膝の上に乗せ深く背中をソファーに押し付け座った彼は指を鳴らしてしまう。そしたらば、だ。世界が変化し、中心は一変する。

『っ!!』

円卓が目の前に広がり、周辺は机やら椅子があるも、円筒上に本棚がぐるりと回って上が見えない世界に来た。奥の方には本が山のように積まれた机も見える。此処は、

「お前がずっと想像していた理想だって幾つもあるのに」

指を鳴らせばまた世界が変化する。温かな陽だまりが身体を突き刺してきて胸がひやりとしてくる。こんなにも温かいのに、沁み込んでくるのは真逆で寒くて寒くて凍え死にそうになってくるからやめてほしい。足がふわふわしている。新築だろうベランダには、目にも肌にも優しそうな少しくすんだ材木が綺麗な形を保っていた。椅子に机。まるで午後には軽くティータイムが出来るように。その場に置かれていて。

リースのあるベルが付いたドアのノブは、何時までも私を待っているように見えた。

彼の奥に見える場所は、大きな建物だった。私の想像していた以上の数倍は、である。左側は奥を見続ければ中身が分かる。書斎だろうか?本棚が立てられ、中に本が仕舞われている。奥は扉が幾つか見えた。逆の右側はソファーがあり、その奥は

「それでもお前はこの場所だけを望む…それはお前が、大事だと思ったからだ。」

夢を叶えたいものが見つかったの。

貴方を追いかけない夢を。聞いて欲しい。

小さなアパートで、3LDK。片方の持ち家賃料は、大体約三万円程度。月に支払って、暮らしていた場所。クリーム色に近い白の壁が、朝日に当たって色が変わる。灰色にも見えたその世界は、何処までも広く見えた。リビング18畳程度の広さ。扉をどちらか一つ開いたら、私の逢いたくて堪らない人が待ってくれているのだろうか?


それとも寝てくれているだろうか?


『、』
「怖いか?」

それはそうだ。怖い。これが壊れたり、変わるのが、酷く怖い。もう帰るなんて場所はない。此処が帰る場所になってしまったというものだろう。あの繭は何処にも存在していやしない。此処が私の居場所で、此処が私の生きる場所そのものだと言っているのだ。

彼は、そう言っている。そしてそれを鵜呑みに出来てしまうほどに、私は考えられていないことにも。私は怖いと思っているのだから。

都結は少し頷いてベランダの方を見た。何時の間に戻ってきているこのアパートのリビングルームに、嫌気を日差しと共に差し込ませてしまえたらどれ程楽だっただろうか?幾分か楽にはなったことだろうが、そんなことはない。外は曇りでどんよりとしている。明るくて、陽射しが零れ落ちて来たとしても、其処迄明るくなんてないことだろう。だって周りが明るいから、いっそのこと気付かないのかもしれない。

風は入って来ない。だって窓を開けていやしないのだから。

『こわくないよ』

嘘だ。でも、そう言えばきっとそうなると思った。嗚呼私は信じたかったのだ。私を、貴方を。目の前に居る人を安心させるだけではない、私自身を安心させて、貴方をもひっくるめて、嬉しい気持ちをその時間だけ、共有したかったのだ。怖くない。だから怖くないと言ったのだ。もう一度、言ってしまえば、そうだと思っていたかのように錯覚してしまう。それでも私は怖かったというのにも関わらず、だ。

『怖くない』

今度は前を向いてしまった。その銀色の瞳には黒い光が見えた。髪の毛も何もかも私は自分の姿が見える。でも鏡や反射した場所にその姿は映し出されていない。その瞳にだけ、色が見えて。それだけでぞわぞわしてしまったではないか!笑って手を伸ばしてやれば、ふっと笑って手を伸ばし返してくれる。

そうして触れる手と腕に、そのまま胸元に身体が埋もれてしまって。目一杯の黒と銀に包まれた私は、陽射しの感覚を味わいながら目を閉じてしまえた。あんまりにも穏やかだから。あんまりにも、気持ちが良いから。



「”化け物”すらも愛おしく通せるお前の心に、忠誠を誓ってやろう。」

その音と共に意識が飛んで行った。まるで空を飛ぶかのように




あれ、空って飛んだことはあっただ












泡沫の白昼夢


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