僕だけが知っている、君の3
目がかちばっていて、擦らないと生きていけない。ぐりぐりしたらぼろぼろ落ちてった。目アカ?いや、きっっったねぇなおい。
『(あれ、何時の間にこんな場所で居るんだ?)』
ぱちぱちと目を開けば温かい温度が続いている。あ〜きもち〜〜〜〜夢だ〜〜〜〜〜
「…夢を見てるのか?俺は。」
「いや、それなら俺も見ている。」
じゃあ皆で夢、みちゃおっか!
なんて続けるわけもない。何処か周りの姿は灰色の世界ばかりだ。私の目がおかしくなったのだろうか?そう思っていたら何処かから声が落ちてくる。さっき聞いていた音に酷く似ていた。
ー”違うよ、ソレはお前が覚醒した状態その者だ。”
『わぁぴくるすおましゃべるんかあ〜〜い』
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「え〜、と…と、とりあえず現状の、ですね。」
「お姉様お姉様、手、手。手が」
というか近いです。抱き着かないで下さい。
だってだってだってだってだってだって!!!!
そう天使らも慌てふためくことだって、当たり前で。だって死んだと思っていた都結の姿が、綺麗に水に付けて暫くしてベットに寝かしつけていれば、だ。誰もが視界から外れたからか、知らないが急にベットが獣に変わっていて、しかも都結自体も衣服を変え戻って来たとは想像出来る訳がない。
灰色の服を着ていた都結だったが、色は藍色に染め上げられていた。腰元は黄色いリボンで縛られている。ワンピースだ。しかもかなり長い。以前ルトラールらが着ていた衣装に似ているように感じた。恐らくベルト部分が布になっているだけだろうと見た。それにしても、と声を上げたのはモヒイトだった。
「おはようございます、都結さん。随分と遅いお目覚めで。」
『はよざま?』
「っぶ」
っははははは、お前だな〜そう言って頭をがしがしと撫でるっ子に、寝かせていた獣がグルグルと音を立てた後、シャーと音を立て警戒を示す。嗚呼怒っている。どーどーと言えば、馬じゃないんだからという声も少なくはなかった。だが、それでも嫌そうにもふうと息を立てて落ち着く獣。
「…驚いた。いや、まさか”化け物”その者を本当に分断したのか、お前。」
まさに過渡期であるに相応しい存在だな。今迄こんなの、見たことがない…そう言って歩いて来たのは黒い紐を首に巻き付けられている男性だった。敵だったことに気付いた獣が身体を起こすものだから声を出すしかない。
『ピクルス』
その声にぴたりと止まる。ぎろりと睨む銀色の瞳には、黒髪の女性が見えた。だから言ったのだ。
『だめだよ』
音は大事だ。きちんと正直に言えば、伝わってくれる。落ち着いたのか鼻息をこっちに飛ばしてくる。おい!お前対象こっちかよ!!!ざけんな此畜生めが!!!!
「…本当に、アレが。”破滅の旋律者”とも言える化け物がまさか此処まで大人し」
「くは、なっていないようですね……」
一応都結のみ、であろう。一体何を言った何を上げたんだと問い詰められてはグルグルと音を鳴らし警戒され、近付こうものならば喰らいつくしかねない程に音を立てる。その為都結自体に近づけていない。誰も、である。
「それにしても都結さん、気分は如何ですか?少々水に深く浸けていたので。」
『私浅漬けにして食べられようと?』
「するわけないではないですか!!!!」
もう恥晒しも良い処だ。そう言いたそうに頭を打ち困るコルンに、周りもケラケラと笑いだす。朗らかな陽射しを受け止めながら、笑みが混みあがって来たものだから。だから獣の方に向いて笑ってみせた。そしたら嬉しそうにクルクルと音を鳴らし目を閉じ茶色の部分に顔を押し付けてくる。嗚呼可愛いねぇ〜。
「本当に懐いてますね…」
「アレどういう状態なんだ」
「いや分かんないというか、そもそも化け物は力の暴走にというよりも本人の心と力その者だからな。人間の身体からかけ離れている上に、身体の形やら大きさで大体の力が分かる。」
アゲートが見ていた世界は、どうやら水面に映し出されていたもの丸々此処に居るらしい。この化け物のような獣こそが、都結自身だった化け物と同じだという。
「通常ならばこれくらいの子犬程度の大きさだ。感情の操作や気の質。後はその後の創造力やらなんやらで変貌はするが、此処まで大きなものはほぼ素質頼りだ。天性と言ってもおかしくない。」
『食費馬鹿にならなさそうだから頑張って我慢して?』
「化け物に何犬みたいな扱いしてんだお前は……」
あと、ピクルスってもしかしてあのピクルスですか?もしや漬物にした。そう言うウイスに、そうそれ!というのだ。何だとビルスが聞けばウイスが答える。
「主に野菜や果実を特定の液体に付けたものですよ。とても酸っぱく、余り一度に食べると身体に悪影響を及ぼす可能性があるので、極力一日摂取する量は少ない方がいいとされている食品です。」
歯切れのよい野菜。例えば玉ねぎや人参とかもピクルスに出来る。主にはピクルスと言えばきゅうりという印象があるのだが、キュウリの調理的に相性がいいのだ。塩漬けしたのち、香辛料と共に酢漬けすることで保存性を高め、味に変化させた長期的な料理の一つである。
「ピクルスの欠片もないのに、貴方何故またそんな名前を」
『だって思いついたから。』
「思いついたで付けられるお前もお前で可哀想だな……」
この宇宙を、それも天使すらも殺せる悪魔みたいな魔物が、まさかピクルスなんて小さな名前を付けられてしまうとは…世も末である。ため息交じりに同情を示したらば、分かってくれるか。なんて息が落ちてくる。嗚呼可哀想なのは一体どちらだろうか、一目瞭然であろうが。どう考えてもこの化け物ピクルスである。名前があんまりにも可愛らし過ぎて、見た目と全く一致していない。
「(以前の位置も、其処迄変わっていないのが恐ろしいな…)」
攻撃力から忠誠心まで。先程見ていた設定と一致している。恐らくこれは化け物の付与も加味されたものだろう。…では、都結自身だけならば?なんて、恐ろしくて見て見たくもない。恐らくきっと
変わっていないのだろう。何も一つたりとも。その夢を叶える為だけに息を止めて暮らしていたのであれば。
「(忠誠心だけでこいつを飼いならしたということか)」
つまりはそう言うことだ。一体何を言ってどうしてこうなったのだろうか。まぁ脳内お花畑にもなるこの子だからこそ、化け物も此処まですんなりと言うことを聞いていることだろうし。まぁ忠誠心は基本的に真っすぐな心さえあればいうことは聞く。勿論何処に位置しているかに左右はされるが、この際そんなことはどうだっていい。
おめでとう的な感覚になっている皆に、お揃いの衣服羨ましいという都結。お姉さんの葬式をしていました、なんて口が裂けても皆言えないのを、彼女は知っているのだろうか?まぁ、知らないことが良いことだってある。知らぬが仏、触らぬ神に祟りなしである。
触ったら一発で喰われそうな獣を飼いならして戻って来られても困るものだがな。
「改めまして、此方は今回から貴方の護衛役として任命しました。」
「アケードだ。」
『都結です。こっちはおおきなおおきなぴくるすちゃん』
「ぐるぐる」
「…とりあえずその名前はどうにかならないものなのか?」
『無理っすね!!!』
盛大な笑みで、もうアケードや犬みたいな獣もため息を吐くだけで留まらず。その話を聞いていたコルンら天使も何名から大きなため息が鳴り響く。ケラケラと笑った後、話を続けさせた。
「化け物の意味は知ってるのか?」
『え〜っと…とりあえず宇宙ぼこぼこに出来そうな話くらいは掻い摘んで。』
「一応知ってるんだな…弁えてコレかよ。」
『頭はとうの昔にイカれてやがります故。』
ふふんと自慢することだろうか?いや違うと思う。お前のお師匠らしき者が圧を示しているぞ。それを許している獣からして、恐らく同意見だから、だろうなこれは…お前も本当に苦労するな?
「そいつは何が出来る」
『何も出来ないよ』
「は?いやいや、それは流石におかしい。お前だけでなく、俺も然りだが、俺達の種族ノヴァーリスは化け物が中に巣食っている。そもそも精神内に巣食っている自分を切り離し、尚且つ名付け迄して外に出す時点であり得ないのに、何も出来ないなんぞ」
『出来ない』
それでいいじゃないか。こんなにも寂しい音をさせて今迄ずっと独りぼっちだったのだ。それがようやく、二人ぼっちになれた。今はそれだけで、満足していて、良いだろう?
「…それは、そ、うだが」
「逆にお尋ねしても?」
「ああ」
「貴方方の言う”化け物”、とは一体、どのような力を持つのでしょうか?」
そう言ったウイスに、こいつらはと胸に手をあて話す。
「恐ろしい怪物だ」
ある人は炎をまき散らし、ある人は水で埋め尽くしていく。それは災害も等しい者で、場合によっては記憶を消し去ったり、時空を歪めることもできるというか、多くはその化け物だから、天使ら中立を保とうとする者達に最悪は処罰され、消えて行ったことがあるそうだ。
「原則精神内で食われないと化け物は外に出てこない。俺達の何名かが食われ、お前らに牙をむいたりしていたみたいにな。」
「アレですか」
『どれですか』
「貴方は捕らえられておられましたし、話が見えないのも無理はないかと。」
そう言ってトンと杖を叩いて世界が切り替わる。過去の映像を見せてくれているのだ。何かを話していると、身体が代わり、翼の生えた化け物に変化したではないか。それも三名くらいか。
「プラズマとミルキー、それとアメシストは化け物に喰われて死亡。あれ程の圧をかけ、生き延びるなんて出来ない上に、お前が手を下したからな。」
『わたし?』
「お前覚えていないのか、お前が」
「いえ」
何もしてませんよ。そう言ったのは大神官だ。そう、何も。そうなのと都結が化け物に対して聞く。グルグルと音を鳴らし、何かを伝えたがっている。その眼は、嘘だとも本当だとも分からない。
「…まぁいいか。残ったのはローズとシトリン。ただ片割れ同士だったが、今行方不明でな。」
「なんですって?」
「俺達は石同士で共鳴が出来る。音を鳴らして、反応が無かったら生きて居ない。」
「でしたら反応が無いなら、貴方だけでは。」
「俺だけならそもそも石自体音が鳴らないと言えば?」
それではた、と静かになる。
「…どう動くかは知らん。だが、元々俺はお前、都結お前のその周りにくるりと腰を下ろして懐いているだろう化け物を殺す前提で動いていた。」
『』
「まぁ最後まで聞け。…それで、だ。殺すのはあくまでもこの宇宙に危害を加えるかもしれないというものだ。」
お前も危機感はあった筈だ。必ず殺してしまいかねない、そう言う気持ちが。
「それを阻止するのが俺達の役目だ。意志を受け継ぎ、守り抜く者。石を研磨し、お前達の盾にも矛にも成れうる存在。それこそが俺達石の研磨を告げた者らの使命。故にその化け物は脅威と判断し、攻撃を入れた。」
何も祖先が俺達を置いて行ったから、なんてものはない。ま、あった奴は一応いるはいるが…
「(それがローズだ。あいつは根深いし、頭が切れるシトリンと居るのが非常に厄介極まりない。下手にこっちの手に歯向かってこなければいいのだが…)」
『じゃあ』
「ん?」
『じゃあ”おりこう”にいたら、怒らない?』
、
「、れは」
「だ、そうですよ?」
「は?」
「彼は、そう。仰っている様です。」
そう大神官が言えば、そうだってと獣に対して顔をまた見上げてしまう。両手を広げて、おいで?と言いたそうに言うのだ。
『おりこうさんにいたら、ずっとずっと一緒に居てもいいんだって!』
ほら、前に言った通りでしょう!私が正しいのだよ!えら〜い!なんて声が広がる。なんて、なんて酷い。
「(可哀想なのはどっちだ馬鹿野郎)」
どう考えても、都結の方ではないか。
化け物が出て来た、ということは、それ即ち精神体の中にある中枢がきちんと役割を果たしている証拠だ。家と同じ理論だ。人は落ち着き、仕事をするためにも休息が必要で、その休息が家。彼女は家を中枢に作り上げ、其処に帰れるようにと化け物ごと考え抜き今この位置に降り立っている。その気は、絶大なる程に、大きすぎて、圧に心がきゅっと縮まってしまいそうになりかねない。
異様な程にまで高い忠誠心。そしてその維持と回復力も高いことから、戦闘の形は、悲惨で。
「(お前は凄いよ、都結)」
何度も何度も叩きつけられたところで、その希望が変わらない限り、立ち向かえるようにしてきたのだ。それ故、何度殺しても、恐らくこの子は早々死に絶えない。消滅させたとしても、ひょっとしたらその希望が潰えてさえいなければ…何度だって
戻ってくることが可能なのだろう
それはこの世界を危機に陥れるも同然だった。間違いなく、消滅対象だった。なのに、彼等は出来ない。だってこんなにも真っすぐでこんなにも綺麗な
「(化け物すらも飼いならして、生きることを選んだお前は。)」
世界を見続けているのだから。