僕だけが知っている、君の5
ドレス姿で歩き方やら何やらを教えて貰って、大体三週間が過ぎ去った頃合いだろうか。紅茶に手を掛け飲んだ作法に、誰だと言われたので嫌ですねと答えてやった。
『僕ですよ僕。都結その者ですよ。やるときゃやるんですこの僕天才ちょ〜凄いんですえっへんどうだまいったか!たすけちほんとにえーんえーん!!!』
「色々零れてるぞ」
「努力の結果ですねぇ〜それにしても随分と叩きこまれた様で」
『もう聞いて?涙もちょちょぎれる処か滝の様にどばって流れて消えるから。』
「そこまでか。」
もう泣きそうな勢いで言う都結に、苦笑いで答えるのはサワアだ。現在第七宇宙に居た都結で、気になって遊びに来ていたヘレスが茶を楽しんでいた。本来は都結を呼びに行けばいいのだが、この後大神官の方に用があるらしい。第四で話をしていたことを第七でも話をしなければならない事案だったらしく、その内容は破壊神の内容で。詳しい話はヘレスがビルスと暫く会話をしていたのでふーん程度でしか聞いていない。
まぁ簡単に言えば「最近の破壊神って、どこら辺メインで仕事進捗進めてます?」って確認事項の話だ。各宇宙それぞれ破壊と創造で会議をするが、何も破壊神ら単体で動き続け放置する、なんてことはない。ある程度確認して、数億年に一度大神官の前で発表する機会があるのだが、その進捗状況やら、後は神々のシステムの見直しを今現在再度確認している処であってだな。
要は「要望あれば今後の検討は出来ますって言われてるけど、そっちはどう?話、する?」って言いたいわけだ。因みに色々言いたいことはあるが言ってどうなる。ということでビルスはこの件について何も言わないらしい。下手に言ったら消滅、なんて考えられそうだったのもあったからだ。まぁ都結が今回居るので、下手したら彼女に庇って貰うことも出来なくはないだろう。
ただ、其処ら辺都結もすぐに察知できる者。甘く見せて置いて、この子が一番怖いことを、ビルスは勿論ウイスら天使らもほんのり感じ取っていた。事実化け物を分離させ、飼いならしている現状は恐ろしいものだ。下手にやると天使も消滅しかねないのだ。
「ですが以前と比べ物にならない程非常に良い形だと思いますよ?」
「足を上げて胡坐どころか、物を持って地べたで座って話していたくらいですからねぇ〜」
『むぅ、まだ言う…』
「そりゃ言いますよ。其処迄出来る癖して、よくぞまぁあのような痴態を晒して。」
それもそうだ、だってあの位置はあの人の
『…そりゃもう、見なくてよく、なっちゃったので。』
なってしまっているのだから、致し方がない、と言い聞かせるしかない。抑えるのではない、受け入れるのだ。
「…そうですか」
『美味しいですか?』
「ええそりゃあもう」
カチャリと音を立てつつも、紅茶をティーカップの受け皿に置いて答えるのはウイスだ。サワアは少し飲み足りなかったのか、丁度口に紅茶を注ぎ込んでいるところ。
「お上手になられましたね。」
『いえいえ』
「ご謙遜ならずとも、充分ですよ。」
『見違える程に?』
「ええ、見違える程に。」
なら遠い場所に来てしまったようだ。県外をこえ、野を越え山を越えて。遥か遠くの、四角い歪な箱の中に。私は息づいて居るというのも、頷くことが出来てしまう。嗚呼、
変わってしまえるものなのだな、私も貴方も、永遠さえも。
『なら、良かった。』
そしたら貴方は泣いて私の名前を呼んでくれることだろうから。嗚呼それでも、貴方が私の名前を呼ばなければその時はきっとあ
『(なたを呪い殺してやりかねないと思っていたのだけれども、)』
もう有効期限など、とうの昔に切れていたようだ。すっかりと世界も穏やかで、そう紅茶を楽しんでいると声が掛かった。意外なことにおおと声が出る。
『これはこれは、ベジータさんに悟空さんじゃないですか!お久しぶりです!』
「ああ」
「よっ都結!」
彼だけは別にそのまま呼ばせてもいいというか、そう言う子が堅苦しく覚えるのは少々心苦しかったので。少々嫌でもあるのだが、それでもこれくらい慣れてやったら其処迄嫌なことは無くなる。難しいことはない、何事も慣れ、である。
「ビルス様以外の奴が来てたんだけどよ、」
『嗚呼第二宇宙の者ですよ。破壊神ヘレス様です。ちなみにその仕えてる天使様がこちらの天使サワアさんです。』
「どうも、お久しぶりですね。」
「ん?どっかであったんか?」
「っ、おい!カカロット貴様、もう忘れたのか!そこに居るのは力の大会で敵だった宇宙の奴だぞ!!!」
そう怒鳴るベジータに、グルグルと音を立て世界が暗くなる。嗚呼もう〜と音を立て、席を立った都結が叫ぶ。
『ぴくるすお座りしときんしゃい!!!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
くーんくーんと言う子に対してグチグチと言う。
『も〜そ〜んなことするからこうなるんだってば!いい加減お前も私なんだったら分かれよもう。大体攻撃してこない人様がこっちに害を与えるなんてする訳ねぇだろ?じゃあお前は何か?息とし生ける者こそ敵だとでも言って善も悪もひっくるめて破滅を持たしたら万事解決世は終わりとか言うのか?んなこたしたらお前またあの綺麗な世界に独りぼっちの涙もほろろで終われない処に逆戻りを喰らうことになるの分かるだろ〜〜〜〜????』
お前賢いだろ。少なくともこの私よかは!!!
『全くもう』
「まぁまぁ、それくらいにしておいてやって下さい。彼等に危害を加えるつもり等無かったのでしょう?」
『そらそうですよ。知り合いでなくとも、基本的に害を成そうとしませんし。まぁ警戒が露わになったのは大変申し訳ないところ。』
此方の落ち度ですから。
いえいえ…
「そんなことよりも、そいつ戦えるんか?」
『出来なくはな、いだろうが…』
「悟空さん」
そう凛とした声に、ぴっと身体が伸びた都結。それに首を傾げた悟空だが、次の瞬間分かる。
「余り、粗相をなさらないように。」
「っ、」
据わった目、物語っている。すぐに察した都結は、本能からか、それとも…
「都結さん」
『はい』
「分かっていますね?」
『…はぁい。すみません、悟空さん並びにベジータさん。』
「なんだ」
『確かに貴方方の仰る通り、私は戦えると思いますし、それにこの子も戦えることでしょう。』
ですが今はそうだと困るのです。
どういうことだ
「戦えるということは相手が出来る、いや俺達がその技量ではないとでも言いやがるのか?」
「恐れ多いですよ第七の者よ」
『私も未熟な身ですから』
「ならオラたちと一緒じゃ」
ねぇか、という前に、視線が増えた。ゾワリとしたのも無理はない。一つだけなら良いが、もう一つからの強い視線には笑ってしまった。
『ぶはっ』
「…なんですか」
『っいや?っはは、だ、だって、アゲートがそんなっひいっだ!!!』
「これありですよね?」
「ええ、アリで構いませんよ。」
叩いて良かったよな?ええそうです。なんて返しをするアゲートとサワアに痛いと反論する。まぁ叩かれて当然である。笑ってしまったのだから。
都結の衣服は、大体ウイスら天使と大神官を足して割ったような衣装だった。白いエプロンのような肩付き布を黒い帯で腰の位置で巻きつけ、その白は前と後ろのみに垂らしている。中の衣服は大神官の着ているような浅葱色の色合いだった。髪の色は真っ白に染まりあがっており、目の色は青色に。髪は後ろで二つおさげにしており、耳元後ろから頭の先にかけて黒い布のカチューシャをつけていた。
首元には緑色の宝石を形どったチョーカーを付け、白いエプロンのようなところの胸元には、ひし形の青い印が埋め込まれている様にも見えた。腕の袖は少し長く白い袖口のカフスが華奢な腕を印象付ける。席を立てばその身長が低いのもまた分かること。中の浅葱色のワンピースはひざ下、くるぶし近くまでの丈まで伸びているが、その中は何も着ていない。足はちょっと今回苦しくなって茶色のブーツを短いカット採用で履いていた。
「彼女はメイドですよ。今回から神々の一員として正式に採用なされましてね。現在我々天使らが交代交代で面倒をみているのです。」
「ほぉ、メイドか。」
「とは言っても全王様直属の、ですよ。貴方らがご想像しておられる位置とはかけ離れた処のお方です。」
「なんだそれ、おいしいんか?」
『私くわれるの』
ゾワリとした都結に、牙を今度こそ向きだす。化け物。分かった分かったと距離を取って慌てる悟空に、口の利き方には特に注意した方が良いと言ったのは護衛役のアゲートだった。
「そいつの飼いならしている化け物は俺達でも手に負えない。こっちの感情を包み隠さず覗き込まれていると思っておいて損はない。」
「つまり下手に口を聞けばそいつが俺達を丸呑みするのも容易い、と。」
「ま、そういうことだ。」
改めて自己紹介を。俺の名前はアゲート。いや、人は俺をこう呼んでいた。
「”ミティアゲート”」
ラルム・ミティアゲート
「ミティアでもアゲートと言っても何ならラルムと言ってもいい。好きな名前で呼んでくれ。」
『じゃあ僕はピクルス第二号で』
「お前にはいっとらん。」
『なんでぇ!!!』
ねぇ酷いよ!そう振り返って言う都結に対して、そうかそうかと適当にあしらいたいのだろうか、鼻息を荒らして彼女の相手をする獣には、驚き目を丸くして見ているしか出来ないベジータ。何せ都結自身からは気を感じ取れるが質が全く持って違うのだ。獣と都結の位置関係的に、恐らくほぼ同じ個体とみたのだが、それは大正解であって。
ただそれをうんとは言わない。都結も然り、である。極力外の人間には言わないように滾々と言い聞かせられた賜物であろう。顔にすら出さなくなっているのが、ある意味恐ろしくて敵わないとサワアはよそ見をする。紅茶に目を向けたのだ。
「じゃオラはアゲートって呼ぶぞ!」
「…俺もそう呼ばせてもらう。こっちは好きに呼んでくれて構わない。俺はベジータ、こっちは」
「オラ悟空!」
「お前も違う名を持っている奴なのか。まぁいい、よろしくな、悟空それにベジータ。」
貴方くらいでしたらお相手出来るのでは?そう言ったウイスに、お!?いいのか!と嬉しそうにする悟空。まぁ別に、とちらり様子を見る。軽く手を振っている都結だが、余り興奮させることはしたくない。というのも、感情移入さえ出来れば、都結は攻撃が出来る範囲内。
それ故、彼女の前で一度も戦闘の姿を神々は見せていなかった。
「(試しにやらせてどう、動くか…か)」
もしも都結が動けばそれ相応の対処をする、という処だろう。下手したら罰が下されそうなのだが…。
「ま、良いだろう。」
「っしゃ!じゃあまずはオラから」
「おいマテ俺を先にいかせろ。」
「なんでだよ!」
お前だと話が長いだろうが。全力で削って後はお前に良い処をくれてやろうとする俺の気持ちを汲みやがれ
いい〜?そう言ってベジータ此間ビルス様とやりにやってオラの分置いて置いてくれなかったじゃねぇか
ぐっ
『ね、二人共提案一つ』
「なんだ」
『ソレさ、一対二が嫌なの?嗚呼違うかこの場合そのこえーと』
「…アゲート」
『あっそうそう、アゲートと先に戦うのが嫌?』
「まだ名前覚えていなかったのですか……」
あれ程言い聞かせて、そう頭に手を置いてやれやれとため息を吐いたサワアに、同情をしたのか獣もグルグルと音を立て座る。
『ん〜どうしたら満足します?』
「満足?」
「都結さんはこう仰られたいのですよ。”貴方達二人が一番満足する形で戦闘が出来ればいいが、その方法が分からない。どうしたらいいのか”とね。」
『しょゆこと!!!』
「そんなの決まっている、俺はこいつより早くそして先に強くなりたい!ただそれだけだ!!!」
かと言って悟空はそう言う訳にもいかない、というところか。
どうしましょう?と聞いたウイスにううんと唸る。ちらりと眼を見てみる。
『君はどう思う?』
手を上に上げてしまえばグルグルと音が上から落ちて来た。そっと左側から入って来た毛に目を閉じないと大変なことになる。嗚呼もうそんなことするつもりなかったんですけれどもぉ!?なんて声が出て来てしまう始末だ。此処はどうだろうか?君が出るのは、と思っていたら流石に駄目だと声がした。
「今の状態で戦闘は避けた方が良い。」
『なんで』
世界が代わり、あのアパートの中に戻る。彼は以前ソファーに腰掛けていた。
「俺を出して二対二を謀ろうって魂胆だろう?そして俺で勝たせる。」
『おうよーくわかってんじゃねぇか』
「…、それをして相手の出方が分かる以上、止めた方が良い。これはほぼ命令だ。」
『私に命令?』
「互いに、だ。…そう言う話、だろう?」
都結からも殺せるし、逆に化け物からも都結を殺せる。1:1の状態だった二人。過剰に反応すれば、そりゃあ片方が消えるのも時間の問題である。
『はぁ……分かった。呑もう。ただ彼等が満足する結果は得られない。』
「何も結果が得られないからと言って、彼らが此方側にまで踏み込む危機を抱かなくて良い。寧ろそういう危機感を抱くから向こうの思うつぼになる。焦って外に出ようと鍵を開けっ放しにしておきゃ、一体誰が入ってくるかわかりゃしねぇぞ?」
それもそうである。まさに正論。何も言うことがない。ということは、だ。
『はぁ…じゃんけんで。』
というわけで、じゃんけんさせることにしたのだった。
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結果論から言わせてもらおう。
普通に連続で勝負させてもアゲートの圧勝だった。それもそうだ、よくよく考えたら破壊神ら総出でさえいとも簡単に振り落としているのだ。多少天使の援護があろうとしても、である。その続けで都結が入って一瞬でかたを付けようとし、彼女のミスで彼女の腹は切られ、死んでいるのだから。
その為、一応この中ではアゲートが一番強いは強い。だが、それはあの状態だったからこそのこと。
石が主になっているのと、後は兄弟だっただろう彼等の位置が意味している。既に三人消え去っている今は、あの位置なんてところには行けないのだそう。
だとしても、である。
「狡いねぇ、それでも君は僕達よりも圧倒的に弱い、って言ってくれるんだから。」
「そうですかね。」
「そうだよ」
これは?
ふるーちゅというものだそうですよ。
「ちょっと試しに作りました。一応毒見はかねていますので。」
「ふーん」
最初にベジータ、次に悟空。手合わせした後、というか途中で『ああ〜あ〜あ〜〜〜〜』という声も出ていた。都結もアゲートの気持ちと一致しているのだろうと思いつつも、彼らに説明をした。勿論、教えていない処も都結がさらりと言ってのけた。
ー私がこういうのも難ですが”感情に純情”なのは少々厄介ですよ?”覚悟”すら分からずプライドという”埃”もつれになっているなら猶のこと、ねぇ?
一体誰に向けて言うのだろうか?
「で?君はどっちが破壊神に向いていると思った?」
「!…それは勿論、貴方様以外居ませんよ。」
「っくくくく、お前もプライドってもんがないのか?一応敵のそれも下っ端に使われてるようなものだろう。」
「とは言ってもある程度決めていたことですし。それに」
「それに?」
「…どうやらこっちの方が心が落ち着いている様ですから。」
あのギラギラした世界は息が出来なかった。石を創造しても基本的に割れて意味を成さなかった。だが、最近は良い出来るようになった。勿論都結に使わせていはするが、それでも濃度が高いものでないと使い道がない。都結の胸元にある青い宝石のようなひし形のくぼみ、あれも実はアゲートたっての希望だった。
この種族として、それも化け物を管理出来るならば猶のこと。覚醒石と封印石は使用し続けた方がいい。
干渉のやり方は至って単純だった。胸元に枠を作り、其処に石をはめ込む。そのはめ込んだ石と、外の創った石を共鳴させ、力を得たり封印したりを繰り返す訳だ。まぁ要は薬みたいなもの。使うものを薬の作用で叩き起こし、逆に使わなくなったら薬の作用で落ち着かせ寝かせるものだ。興奮剤と睡眠導入剤その両極端を、その石が司っている。
ただ、薬と同じ様に、過度に石を使う訳にもいかない。
基本的には使わない方がいい。余りやり過ぎると都結のようにそれなりの濃度でないと効果が現れなくなる可能性が出る。それに一度、都結は封印石の効果が見られなかった。ということは、だ。下手したらかなりの力が眠っていて、それが解かれつつある可能性だって出てきている。
「さて、何方でしょうかねぇ。少なくとも、今現在は貴方様の方がいいと思いますが。」
「それは君の主人が、だろう?君自体はどう思っているんだい?」
「…さあ?」
基本的に共鳴というのは、相手の意志に影響される。少なからずとも、その溝を覚えてしまえば、自分の元なんてものを覚えて居られる程器用な者が居たらば。きっともっと良い石職人が出来上がったことだろう。この種族が途絶えたのは、維持が出来なかった。そう、
意志を持ち続けることの醜さに気付いた者達の最期
「私は何方とも言えかねますね。」
蘇生したも同然のこっち側が、そんな言葉を吐き出せると思いでか。何方に、だなんて偏らなかった彼女の記憶が警告してくる。そんな面倒なことに口を挟むんじゃあないぞ、なんて随分といっちょ前に物をいうものである。一体どの面下げて言うんだろうか。あの記憶とやらに生きてた小娘は。
「ただ、」
「ただ?」
「貴方のご想像通りであるのは違いないでしょう。」
ふと世界が見えた。陽だまりの中、温かい日差しを受取りながら黄色い蝶々を追いかける子だ。白い衣服を持つことすら忘れ、蝶々ばかりを見て追いかけるお人。その姿を、じっとその場所を見ていたから、眩しくて目を少しだけ、閉じてしまいそうになった。
ーね!みてみてあげーと!ちょうちょさんだよ!
そんな世界、何時しかあったら一度お目にかかりたかったのは此方のセリフなのに。
「それでも貴方はその時間を望み止まないお人となった、」
(…言っておくが、其処は地獄だぞ?
お前が望み止まない、死にたくても死ねない世界だ。
それは煉獄と言っても良いところであって。それでもお前はそのお)