僕だけが知っている、君の6
三時のおやつも食べさせて、一息ついた頃合いだった。ウイスの元に足を運べばおやと声が掛かった。
「アゲートさんではないですか。どうされました?」
「寝ていますか」
「ええ、どうやら疲れちゃったようでして。」
ヘレス様起きて下さいと言われ、二人してうつらうつらとしているも、まさかのその位置はなんとも獣の中だった。一度だけでももふもふしたいというのをテレパシーからか何かに察知した都結が、色々考えて特別に、今回だけヘレスのみに許可を出したのだ。勿論サワアも驚いたし、因みに大神官も遠くから見ていて本当に驚いた。
恐らく都結からしての、謝罪だろう。ヘレスのことを怖がっていたことは勿論だが、余り彼女に対してきちんとした振る舞いをしていない、それの対価として、未だ誰にも懐いていない獣の中で寝てしまわないかというものだった。勿論戦いなんて一ミリも考えていない処か、兎に角眠くて眠くて仕方がなく、意識が今にでも飛びそうになるヘレスを返すにも少々怖かったサワア。
部屋を借りて少し仮眠させてから帰ろうと考えていた矢先である。外で、それも日陰にもならないところで寝だしてしまったヘレスに対して、都結もまた寝だしてる。
かと言って下手に声を荒げたら今度は獣が反応する。お手上げ状態である。
「(ちょっぴり妬けちゃいますが…ま、いいでしょう)」
ヘレスの位置は非常に大事だと思ったのだ。都結が現在神々の中で唯一と言ってもいい程に、彼女に対しては素直になりやすかったのだ。どうしようと考えてからも、それでも気を許す。そんなこと他の天使らでさえないのだ。所謂人間でいう友人関係に近しい位置だった。その為それくらいの距離ならば気にしない方に気を向けるべきだと考えた。
記憶が戻って以降、兎に角気を落ち着かせることに重視した。他の子達の目もあるし、何より位置が位置だ。確かに都結がこっちにしかも追いかけて来たみたいな話で来たなんて聞いたら喜ばない訳もない。自分と同じ気持ちであったということだ。まぁ、その移動の仕方が少々苦しい思いにはなったが。
これからどうしようか。
アパートの中で培えることを諦めたことを、今からでも試してみてはどうだろうか?そんな声も聞こえてこなくもない。敵も味方に一部は入ってくれているし、その心も理解出来ている。アレが下手に動くなんてことはないだろう。曲がりなりにも血族。それ相応の所作は覚えているらしい。まぁ都結に関しては仕方がないとしよう。あれはそもそも生き抜くために必死な時間が長すぎたのだ。
とは言っても、である。如何せん都結と一緒に、ましてや長く居る時間は正直と言ってもいい程に、実は無いのである。長くいてもせいぜい30分前後だろうか?こっちも仕事があるし、かと言ってずっと居座るなんてしたら、子供達に悪い。全王宮の方に来てさえくれたら、もう少しゆっくり相手が出来るのではあるのだが…
「歯がゆいですねぇ」
アゲートも訓練している。このまま進めば、来年あたりには正式に入ってくれることだろう。都結も少しずつ意識を此方に向けさせ、あの肌の色も慣れて貰わないとこっちの身も持たない。一応悟空らにはメイド、として誤魔化しは聞いているが、それも何時まで持つかどうか、である。
今は白髪で、青目の彼女だが、元は黒い髪の毛で黒い目を持っているし、今でもそうだ。人がいる、正確には破壊神惑星に居る以上はその状態を維持させている。要はサイヤ人で言う処の常時スーパーサイヤ人で居させている状態なのだ。気を扱うとは言っても、不安定。だが、石の役割が非常に高く、そのおかげで、今彼女には少々キツイ修行をしてもらっている。
それもこれも、この世界で生き抜くための所作である。どうか許して欲しいものだ。勿論心の中を覗けば、そんな困りごと関係ない程に吹き飛ばしてくれる程の風を巻き起こしてくれる子なのだが。
「ま、ご報告程度に留めて置きましょうか。」
こっちには本もある。彼女が記していた、温かな時間だ。勿論続きだってあるし、その印は、胸を痛めるには充分過ぎる程だった。
ーいなかった。まるでまぼろしだった。でもいたの。あなたとえらんだものばかりであふれていて。それでもあなたはわたしのめにみえないというのに。わたしはいまでもあなたのことばにのろわれていきしてる。
私は此処に居ますよ
ーそれだけでいきができた。わらえてる。わらわせない。わすれさせない。わすれてやれない。あなたにあえたらいいのに。ゆめのなかでわたしまってるよ。なんどだって。まってるから。
その言葉通り、彼女はずっと待っていた。毎日も、来る日も、である。日記の一部いや、全天使が記していた。
ー彼女は”誰か”を待ち続けている。それが”誰か”だなんて、分かり切っているけれども。それでも”誰か”の枠が埋まることを。
「(本当に良かった)」
ー”我々”は心より待ち望んでいる。”いつか終わるその日まで”に。我々はその世界を見届けたい。
同じ気持ちで、同じ一心で、彼らも面倒を見てやってくれているのだ。いや、見てやってくれていた、が正しいか。数名はどうしてわかってくれないとか、なんとか色々もやもやしていたが、それでも彼女は分かっていた。それでも彼女は自分の心を分かろうとしては見ないふりばかりきめていた。
ね、知っていますよ。貴方が少し多めにご飯をよそうこと。貴方は私に持って行っていましたから。覚えていますよ。貴方がちょっといい処を私の器にこっそり置いて別の食べ物を取ってしまうことも。私が少しでも貴方の見えた世界を与えるそのお気持ちだけで、どれ程救われたことか。そしてその気持ちを少しでも、彼等だって知っていることだろうから。
だから叱るんですよ。だから面倒を見てやろうと、してくれるのですよ。
以前はそんな子達ではなかった。それぞれが独立して、それぞれで動き活動していた。プライドという誇りという名の埃で目を隠してしまって。本当に綺麗だったものを見ないふりしてばかりいた神々が。今、少しずつではあるが変わろうとしていたのを分かっていた。何気に全王様のお導きは、間違っていやしないのだ。彼に仕えて良くなかった話等、正直考え付かない程である。
「…さて、準備でも致しましょうか。」
どうやら全王様もお目覚めの様だからだ。
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『わわ!いいの!?』
「ええ構いませんよ。」
『いいの!!やっっっ』
た!!!!!!!!
そう言うのは本日お日柄もよい。朝である。朝早くから目醒めてしまってどうしようかと悩み、本やらの書類を纏めてしまって暇、と考えている中、ウイスが閃いたのはブルマのお家に遊びに行くことだった。
「いらっしゃ、きゃーーーー!!!」
可愛い〜〜〜!!!
ふぎゅっ!!
『んあ!…えへへ、こにちはぶるまさ!』
「ええ、こんにちは。話はよく聞いてるわ!それにしても、ウイスさんもこんな可愛い子を掴まえて」
「おほほほほ!可愛らしいでしょう?」
ええ勿論と言う彼女。今日はお買い物である。急に言ってすいませんと言ったウイスに構わないというブルマ。余りお着換えは好きではなかったのだが、確かにこの世界に来てからというものの、衣装は揃えていない。何だかんだ言って衣服をもっても、創造。まぁ所詮想像でしかないものが辿る末路だって、最終的には人が作ったものを買うのが一番だ。というものだった。
ブルマには恩があるが、ウイスはそれ以上に地球を存続させるという対価を常時支払っているのが、食べ物だと思っているし、勿論ブルマもその意見だった。地球を破壊する時間を延ばす代わりに、食べ物を。というもの。勿論都結だって日本人である。此処の衣服やらなにやらは本当に新鮮だった。
だとしても現代には程遠い。近未来のSFを見ている感覚はまだまだある。デザインもそれなりに古いと言えば古い。そもそも流行自体、あの時代と私が生きていた時代はちょっと離れているのだ。如何せん洋服にも限りがある。という訳で、だ。
『あの、其処で大変恐縮ではございますがですね。これ見て頂いても?』
「ん?これは?」
『これに似たようなお洋服があったらみたいな〜って』
「あら可愛いじゃないの!これ貴方が描いたの?」
『えへへ、お恥ずかしながら』
照れる都結に、充分可愛いわよと笑って応えるブルマ。背中を軽く叩くのがまた、懐かしさを思い出させてくれる。こういう近所の人に適当にされる感覚が良いのだ。
「できますか?」
「ええ、これなら知り合いがいるからね。それにしても随分可愛らしいものもあるじゃない。」
『ああそっちは出来ればといいますか其方は対象外といいますか』
「おや、着たいのではなかったのですか」
『いや正確には着たいと言えば着たい〜〜』
けど、きっとフリルだし、お金も高くなるだろう。それに着回しが出来る無地は最強だ。他の着合わせも出来るのだから。
『それなりでいいのですよ』
そう、それなりで。
『私それなりつったよなぁ!?!?!?!?おい!!!!!!!!』
「っははははは!!!あんた良い性格してんじゃないの!気に入ったわ!」
『気に入るな!!!煩い私は良い性格してるのは私が分かってる一番に!!!!!』
そう怒る都結に、腹を抱えて笑うブルマ。それから出歩いたところ、一時間弱である。年相応にというのにこの娘、年相応以下を対応してくるのに怒ったのだ。まぁ切れ散らかすのも意味がある。何せ、そうなにせ
『だ〜からといって誰がメイド服を寄越せつった!!!!ねぇ〜可愛い!!!!!』
そう、年相応(32)である。多分これ年相応(18)と思われていやしないか?泣くよ?それだったら私。泣いて良い?泣くね?
『びえ!!!!!』
「泣かないで下さい」
「にしても本当にメイドさんなのねえ、作法本当にきっちりと躾けられてまぁまぁまぁ」
まぁ
え
『そうなの!?』
「おや、お気づきになられていない様でしたか。それは良いことですねぇ〜」
お兄様もきっとお喜びになられることかと。どうです?そちらを着ていかれては
私恥ずかしくて死ぬよ!??!?!
『無理無理無理無理無理絶対に!!むり!!!!こんな!こ、こんな…』
こんな可愛いおべべ着ちゃって言ったら、私どんな顔して良いかわかんないもん……
……ねえウイスさん
はいなんでしょうブルマさん。
「こんな可愛い箱入り娘、よく外に出す許可出たわね。」
「おほほほほほ!実は許可なし、と言ったらどうします?」
「『え゛』」
「…ふふっ」
「ちょ、ちょっとそれって大丈夫なんでしょうね!?」
「ええ、寧ろ駄目でしたら時間を巻き戻してでも止めに来られますから。」
『そう言うのって何て言うか知ってる?無駄遣いって言うんだよ?』
「ですが貴方のこと、ですからねぇ?」
『うううううう!!!!』
「おほほほほほほ!そのような顔をなされても駄目ですよ〜」
大神官が止めに来ていない、ということは、だ。しろというのと同意見。つまりは、である。
『もしかしなくともこれ[[rb:大神官様 > あやつ]]に見せる為のお洋服でもあるとか言うんじゃないだろうなぁ!?』
「おや、よくお判りで…なら、どうというのです?」
そう近づいて耳元でささやかれてしまえば、身体の力が抜ける。余り近づいて話さないでほしい。ううと眉を下げ困っていると、少し見てからだったらと言う声に気付いて身体を元の場所に戻すウイス。それに救われていた都結だが、その次の言葉で叩き落とされることとは思わなかった。
「じゃあ他のも着ちゃいましょうよ」
「ねぇそれでいいの?」
「冒険しませんねぇ〜」
『普通が一番精神安定剤!!!!!』
じゃあ自分が良いのを、と言われたらで、ある。もう〜一番妥当で、それも安そうな処を引っ張り出してきた。しかもこれ何が良いってこれ、ですね。肌触りが絶妙なんですよ!感覚は物を言うものである。あと単純に支払いが怖くなってきている非常に今更ではあるし、相手の金なんだがな。
「別に好きなもの買えばいいじゃない。」
『…私は出来るのであれば自分で働いた金で自分の決めたラインの範囲で選んで決めるのが好きなのです。』
そこに、あの人がいる。それがいいのだ。それだけで、よかったのだ。鼻がツンとする。泣いちゃ駄目だと思っていても、ぼたぼたと零れ落ちる。気と水。まじりあって、お花にでもキラキラした宝石にでもなってしまえばいいと思えばそうなってしまうのだから、不思議なもので。
「なっ!」
『私はただ』
ただ普通に、ありふれた人の中で息を共にしていたかった。
それだけなのだ。
こんな力なんて要らない。貴方と二人で生きたあの日に戻りたいとさえ思えてしまうのだ。あの場所に逃避行出来るならば、とうの昔にしているのに。それをしないのは二人共同じ気持ちなだけであって。それでも夢を今でも少しだけ、見てしまうのだ。
『二人で人間で。同じ背で、同じ場所を見たかったのに。』
「…ふむ(……だ、そうですが、如何致しましょう?)」
「(と、言いますと?)」
「(此処は彼女の願いを叶えて差し上げれば、と思っただけのことですよ。)」
確か大神官とて天使。メルスのように下界に降り立つとなっては神官の状態だけで、なんてこともないだろう。そりゃ仕事だったらそうだろうが、である。そう、ウイスは言っているのだ。
「(彼女と同じ背丈で一日程でも遊ばれてはどうでしょう?)」
それは、これ以上
「(全王様の身に何が起きるか分からないのに?)」
「(、)」
「(貴方には彼女の護衛、という役でも見させていること、どうかお忘れなきよう。)」
少しだけ、期待をしていたのも悪かったかもしれない。だが、其処迄するのだろうか?それを彼女が知ったらどれ程傷付くか、貴方は分かってやるのだろうか?嬉しそうに笑っている彼女が、痛々しくて。
「(私も弱くなってしまいましたね)」
目を逸らして逃げるくらいしか出来なかった。彼女に知られないように、逃げるくらいしか、である。
その時間に帰るなんてことは、出来ない。彼はそう言っているも同然だった。都結はその時間を宝物のように扱っているのに対して、大神官はその時間が経った一つの時間だった。それだけで切っている。それはそれ以上踏み込んだら彼女の危険が増えるから?メイドの役割もそのうちの一つだろう。だが、それは彼女を一番傷付ける位置とも言えるもので。
ー忠誠心が異様に高い。高すぎる…
もしも貴方がその獣だけに重きを確実に置いたその時は…貴方はこの子を処罰するおつもりなのでしょうか?それとも記憶を消し去って迄して、その檻に閉じ込め寝かしつけらえると本当にお思いで?
小さなアパートの一間に居る。小さな子供のような女性と二人の影が、落ちない。一つだけに伸びた影は、何処までも寂しそうであって。へにゃりと笑った姿を思い出してしまう。
ーごめんね、癖でやっちゃうの。今片付けるね。
貴方の為の時間をこの子は今でも守り続けているというのに。
蝉が耳に残って仕方がない。
「あ〜夏が来ちゃうわね〜」
『でも大丈夫ですよブルマさん』
夏は終わるので!
そう笑う彼女は服をたたんで外に出て来ていた。その日の空はやけに青く光り輝いていて。まるで貴方がその胸元に掲げたその宝石の中にあるアパートで見たそ