僕だけが知っている、君の8



神々が狙うのは、あくまでも都結の願いの末路だ。要は都結の願いが余りにも神々らの願いド直球だったことが原因なのだそう。願いが変わって、離れると思ったし、それにこれだけは隠し通したいと思っていたし、願いはかなわないと思っていた。だが、それこそがいけなかったことを、その時彼女は気付けれなかった。いや、気付いたとしても、防ぐなんて出来なかった。

「…私もお慕いしておりますよ」

自分の心に嘘なんてつきたくなかったのだ。

涙で乾いた目をそっと温かいタオルで拭い去ってやる。うん、と甘えた声が出て笑ってしまったが。気にしないで貰いたいものだ。それにしても、まさか息子らに此処まで手厚くされると、なんだかこそばゆい感覚を覚えてしまう。余りこういったものは感じ取らない方が良いのだが、

「彼らにすらバレてしまっていたのですからね」

敵にまでバレバレとは、これ如何に、である。

ベットにくたり、寝て力も入れずに繰り返し息をするだけしている都結に笑みが零れ落ちる。出ていた手を入れようとして止めた。冷たくなっていて、温めてやろうと手に力を入れてしまう。この身体では其処迄温度を保たなくていいからではあるが、そのまま彼女の手を取ったら凍傷になり兼ねない。それはやめてやりたかったし、それに

「温めるのは私だけで、なんて随分とお熱い言葉を言ってくれるものですよねぇ…」

ほんと、どこぞの店長が聞いたら卒倒しかけそうである。嗚呼、思い出しただけで笑いだしてしまえる。あの日々は実に楽しかった。でも、それでも知っていますか?

「実はあんなに教えて頂いたものはどれもこれも、試していなかったりするのですよ。」

勿論貴方の知ってる食材が非常に貴重で、それも特定の宇宙にしか存在していないというのもあった。一番質が良いのは、やはり第七のあの青い惑星地球という都結が暮らしていた世界とほぼ同じ様な惑星だけだった。全王様に、とも思ったが、やっぱり最初に味わいたいのは、貴方の前だけだった。

それも、貴方が居ないとあれば、記憶に残しても大差ない、そう思ってしばらくしたら消し去る予定だったのだが。貴方と言う子は、本当に恐ろしい。向こうの世界で言う能ある鷹は爪を隠すというが、まさか物理的に鷹の爪で隠していたとは思いもよらなかった。小さな子犬になった子は、現在近くで背中にぴったりくっついて寝ている。自分が寝付く場所はどうやら何処にもないらしい。

でもそれでいい、今はそれで、いいのだ。

こんな所でやっても仕方がないというか、そもそも告白もきちんとしていないのだから、しても意味がない。何をするかだなんて、そんなの決まっているでしょう?え?私が何も考えないだなんて思わない方が良いですよ。人間、何を考えているか、わかりゃしない。そうでしょう?

『じゃあしちゃう?二人でちょこっと逃避行。』
「…!起きてたのですか。」
『お手手もお足も冷たいから。』
「ふふ、では温めて差し上げましょうか?」
『やれるもんならやってみな』
「っはは、私のこと、舐めてますね?」

ほら!

そう言って都結を引き上げ瞬間移動で飛んできた処は、だ。何処だと言っている都結に、自室ですと答える。

『お?じしつ?』
「ええ、自室ですよ。おや予想外でした?」
『色々聞きたいけどとりあえずお兄さん瞬間移動出来たのに何故飛んでこない。』
「回数が限られてるんですよ。大体月に五回程度です。」
『まってその情報私が知って良い情報?』
「全王様がお知りになられているので知って良い情報かと。」
『それ私の知ったらいけない範囲ですね?!?!?!?!?!?!』

彼が急に言い出すものだから、びくりと反応したが、あれまて。とすんとベットの上に落とされるが…あれ?

「おや、どうされました?」
『ああ、いやあの、寝るだけだよ、な?』
「ええ、もう夜も遅いですからね。」
『…何で近付くんですかね?』
「では何故遠ざかるのですか?」
『いやあの』
「私のことが」


すき、なのでしょう?


「でしたらそのまま身を任して頂ければよろしいのに。」
『〜〜〜〜!?!?!?!?!?』
「ぶっっ…っくくくくく、そ、そんなかお、なさらなくとも」
『どんな顔ですかね!?!?!?』

ちょ、ちょっと待ってくださ、すみませ、
お兄さん私でツボのやめっぶぶっ
あなただってわらっ

『ふふ』

ひとしきり笑ってしまったらベットの中にダイブ、だ。ふわふわのベットにねぇと大神官様と声を出す。なんです?なんて言って彼は意外にも手を横に置き、靴を脱いで腰を掛け膝を立て話す。行儀が悪い大神官様なんてレアなものだ。環はいつだって頭の後ろに光り輝いていて。嗚呼此処は別世界であって、私は空をも飛んだこともあれば、気を放出したことだってあったなぁ、なんて遠くのように思いだしてしまっていた。どれもこれも夢物語だったらよかったのに。そしたらこんな悪夢がさめた後、貴方の居ないあの

「都結」

泣かないで
泣いてないよ

「うそつき」

泣いてる癖に、そう言って目尻をそっと手で拭ってキスを落とす。ちゅっと吸うように涙を消してしまった彼にこそばゆくて笑ってしまった。嗚呼貴方の環が綺麗で堪らない。私が手を伸ばしてはいけない世界に生きて居る。目の中に見えるその世界だけでよくて。それだけでいいのだ。

貴方が私の世界で生きてくれてる。

これ程幸せなことが、この世界にあってたまるものか。

「…泣き虫ちゃんですね」
『そうだよ。止めてよ。』

あの世界では幾ら泣いたって貴方が拭い去ってくれることはなかった。沢山天使達の前で、沢山大粒の涙を見せつけてしまった。時には抱きしめて添い寝してくれる子達も居た。その胸は温かった。だから余計に貴方と一緒に寝たあの日を思い出して泣いてしまった。手も足も温かくて。それでも布団の中だけであって。外に出たら寒くて凍えて死んでしまいそうだった。

屋根裏部屋の端っこに二人一つのベットの毛布に包まれ夜をゆっくりと明かしたあの小さなひと時の時間を何度も何度も脳内で繰り返していくたびに、これがあの日にあったほんとの記憶かどうか不安になった。覚えていたいのに徐々に薄れていくその世界に縋りついた。縋り付きたくなんてなかった。日を追うごとに貴方の胸元が恋しくなった。

逢いたかった、誰よりも何よりも。

此処に生きてる。心臓の音なんて聞こえやしないのに。それでも生きてるって、分かっているから、だから私はこんなにも満たされて辛くて堪らない。三角に練り切られた蜜柑の切り飴を食べた日を覚えているだろうか?一気に二つ食べた私に、同じ様にしたかったのか、それでも一口小さな切り飴を口に入れてコロコロ転がしたお人。

美味しい?と言えばええと笑ってくれた。パクパクと食べた都結にそんな食べるかと聞けば違うと口いっぱいに入れてまるでテレビ番組に映し出されたリスの様だった。そんなに口いっぱいに入れたら喋れないでしょう?なんて言った彼に対して、タンタンと肩を叩く都結。もう何ですかと言いつつも、彼女が取ったスマホの画面には映されていた


ー”だって口いっぱいに入れた蜜柑は最高に甘くて美味しいんだよ?やってみなよ騙されたと思って!”


その言葉に、後で飴が足りなくて泣いたって知りませんよ?そう言って大神官も幾つか口の中にポイポイと入れてしまう。あ〜あやっちゃったとスマホのメモ欄に改行されたその下の言葉にふはっと口から蜜柑が零れ落ちそうになった。


ー”これで私達は共犯者だ!二人で悪い子なっちゃった!”


口の中に食べきれない程のものをいれて、しかも軽く喋ろうとする。確かに子供達にはみせれない姿だ。口に手を充て、兎に角笑わないようにするも、彼女が笑わかしてくるものだから、勢いで軽く背中を叩いてしまえば、笑ってこっちを見てくれるのだ。肩を落として、嬉しそうに腹で笑う。余りにも煌びやかで。

その日の夜は二人で沢山悪いことをした。

食べきれないのに色んな種類のお菓子の袋を片っ端から開けてみたり、夜の八時を越えた癖して、未だ晩御飯の食事をきちんと摂らずに、昨日買って来ていたオレンジジュースの蓋を開けラッパ飲みする。蜜柑の切り飴を舐めながらコクコクと飲んで、口の中で蜜柑が生成されかねないのでは、と思った都結が大神官にメモ帳で話をすれば笑ってしまう。

ほろりと酔えるお酒を持ってきて、二人でスルメを焼いてしまう。都結自身がやると怖いので、大神官がやってやるのだ。パチパチと音を立て焼いた後、檸檬と蜜柑味の酒をバタバタと足音を立て持って机に持って良く都結。走るな、なんて今日はそんなの野暮なもので言ってやらない。きっと此処にコルンが居たら、きっと「これ!走らないのです!こけてしまったらどうするのですか!」なんて言ってくることだろうし、その話をメモ帳で大神官にしたら「きっとそう言いますね」なんて日本語でメモ帳の下に書いてくれていた。

それをみた時の都結の目は今でも印象に残っている。もう目をキラキラとさせてその文字を見てくれたのだ。たった数十文字の言葉を、だ。まるで初めて見て感動した映画を見たかのようにするのだ。自分がくれてやるものは、何時だってそんなキラキラした目をしてくれた。でも、一番はやっぱり、こうして文字やら絵やら自分の手で伝ってしたものばかりで。

それがどれ程嬉しいことか、彼女は知る由もなくて良くて。

今思えばあの日に恋をしていたと言ってもおかしくなかった。いやもっと前から。それはそう、貴方があの日作ってくれた

「シチューが食べたくなりますね」
『…もう夏なのに?』
「えぇ、もう、夏なのに。」

嗚呼それでしたら、冬になったら、作ってくれますか?

「貴方が作ってくれた、あの温かなシチューと、後サラダを。」
『ええ〜できるかな〜』
「おや貴方ともあろうお方が出来ない等と?」
『確約できかねますねぇ〜』
「何処でそんな言葉をお知りに?貴方そんな言葉使えたんですか。」
『嗚呼コレはコルン様らから。』
「コルンさんらから???」

本人曰く”大神官様のそくさい・・・・”に相応しい人がなんとかだって
っっくくくく

『え、なに変なこと言った?』
「いえいえなんでも?」

ソレを言うなら”正妻せいさい”だって言ってやりたかったが。そんなこと、こっちの口から言えるものか。

いつかの日を思い出して、そうして今現在の子達を想像しながらベットの上で話をするのだ。いつの間にかベットの中に二人して潜り込んで、何時の日かにしたように、足や手を擦り合わせ目をゆっくりと閉じていく。嗚呼、このままタプタプと水が満たされたようになればいいのに。このまま居れたらどれ程良いだろうか?

このまま居れたらいいのに。そしたら何一つだって要らないと言えるだろう。

それでも、願ってはいけないし、望んではいけない。ソレを感じては、涙が零れ落ちる。嫌だって言っているのだって分かっている。嗚呼、普通の女の子で生きて居られた良かった。


そしたらこんな日も貴方に好きだと口から溶けるように言って貴方の愛を受け止められていたというのに。


「…大丈夫、此処に居ますよ?」
『っうっ、ん』

泣き過ぎて喉が引っ込んだ。声もひっくるめて。そんな音すら、大神官は気付いている。此処では色んな音が、その者から零れ落ちる。貴方のことを心配されている子がいるのかどうかだって、こっちからしたら筒抜けなんですよ。だから貴方もあの日私のことを喜ばせようとするだけでは、なんて思った日もあった。

でもやっぱり違っていた。

貴方は何時だって私を、あの人として生きていた私をもひっくるめて愛してくれていた。

それだけで、私だって満足しているのですよ。

だから守り抜いて差し上げましょう。

「いつか」
『ん?』
「楽しみにしておいてください。」

記憶を取り戻して、彼らに言われて、不甲斐ないことではあるが、気付いてしまった。嗚呼やっぱり私は貴方と共にいき



























「”ごめんなぁ、生きさせてやりたいよ”」


それでも、これは約束なんだ。どうか許しておくれ。


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「…寝れないのですか?」

大丈夫。そう言う都結だが、その眼は赤く腫れあがっていた。はぁとため息を吐いて部屋に招き入れる。今日は海外出張をしている店長もとい白鳥さんは出払っていた。扉を開けて中に入れ、部屋の扉をぱたりと締めてしまう。

「はぁ、入って下さい。」

そう扉を開けて居れた。今日は6月の12日、モヒイトは頭をがりがりと搔きむしった。本を丁度読み返していた処である。環を抜かれ、人間体になってから今日で丁度30日目を迎えた日だ。大体一か月が過ぎ去った頃、部屋に招き入れるのはこれが初めてではなかった。寧ろ人間になって大体二週間が過ぎ去った辺りから白鳥から頼まれたことからだった。

ーえ?添い寝、ですか?
ー嗚呼、非常に申し訳ないが、頼めるか?
ーいや別に…寧ろよろしいので?
ー寧ろコレをお前以外に俺は頼めない。

俺がやると怖がってというか、俺もそのつもりは一切無いから罪悪感でしかなくてな。いやだとしてもお前だってあるだろうし、強くは言わない。ただ、来たら部屋に入れてベットの隅っこでも良いから貸してやって欲しいんだ。お前だってアイツの部屋をずっと使う、なんてことはしたくないだろう?

「私は未だ寝ませんが、先に寝ていても構いませんからね?」

そう言えばこくりと頷きはする都結。目の色は暗い。とにかく、酷く色を落としている。今日は鈴虫も音も何も鳴らない静かな夜だた。月明かりも明るく、まるで昼間の様にも見えてしまえる明るい日が差し込んできた時だった。カタンと音が鳴った。

『っ!あ、帰って来た…?』
「え?あいや、白鳥様はお帰りにならない筈ですが…ってこれ、」

ぱっとベットの端っこに寝てくる待っていた子が勢いよく扉を開ける。泥棒だったらどうするんだと思い急いで追いかけて振り返った。その背中は酷く、小さかった。髪の毛が見えなくなる。頭を下に下げたからだ。

「…、もう寝てしまいましょう?」
『うん』

ぱたた、そう床に何かが落ちる音がした。…先程見ていた日記を思い出して首を横に振ってしまうしかない。そっと背中をさすってしまえば、ゆっくりとでも部屋の中に入ってくれる。スンスンと、音を立てながらも、ベットの端の方でしか丸くならない。

『めだったら』
「え?」
『これがぜんぶゆめだったらいいのにっ』

でもそしたらあなたもひていしちゃうから、わたし、どっちもがいいのに

ごめんなさい。そう服を掴もうとした手が宙で止まり、手を握って降ろす。その手を取ってしまった。ぼろりと零れ落ちるのを見届けつつ、したことに気付いて意識をかえた。嗚呼そんな顔をなさらないで、なんて私が言える程に勇気は持ち合わせていなかった。

「…ほら、そうやって嗚呼そうだ。ではこうしませんか?」
『ぐじゅ…?』
「お父様のお帰りを待ちわびておられるのでしょう?どうでしょう何日かどの日かに決めて此方で寝てみては。」

こういうのは本来してはいけないが、流石にこれで参って次の朝動かなくなっている、なんてものは洒落にならなかった。こっちとて意識が飛ぶ始末。寝ている時に何かがあってはいけない。一応部屋の内側から鍵はかけられるとしても限度がある。助けを求めても声も出なかったら近くにいる意味もない。

指を立てて、おどけたようにして提案して見せる。ずずっと鼻を啜って『いつ?』と食いついて来た。その眼は未だ暗いのに、何処か光が差し込んだようにも見えて、そして気付いた。

嗚呼、敵わないなあ、なんて。

月光が彼女の目に差し込んでいくように見えた。目をゆっくりと瞬きをして、その眼が、顔が、まるで花を咲かせる様に顔が変わるのだから、本当にもう…

『…うん!そうしてみるね!』

敵わない。貴方の願いも、そしてあのお方の想いだって、きっとおんなじであって…だから、それだからどうかこの先に付く天使達には悪いが、一応日記に留めておくことにしよう。そしてあの黒い本に書き記すのだ。


ー”毎月15日になる夜は部屋を開けておきなさい”


その日は決まって都結がベットの中で寝る日にした。手を触れ足を触れようとするがそれですっと外れてしまう。嗚呼、温かいのに、同じ高さではなかったから。違うんだって再確認することを口に零す。その日は決まりに決まって、本音を互いに交わす日となった。彼の色をしたタオルケットを何時も着ていることだって、彼女は応えてくれた。


『これはりっ…えと、だっ大神官様と選んだタオルだから。…ああそうだ。これ一緒に被さってお昼寝しようってお話して選んだんだよ。』
「おや、それは良いことですね?これ程柔らかいのですから、きっと気持ちが良いことでしょう。」
『えへへ、でしょう?なのにね、高いからこっちにしません?なんて言ったんですよ〜!』
「ふふ、お金に困らせて心配しちゃう程高い買い物なんてしたんですか?」
『えあっえっえっえっえっ』
「え?都結さん?どうしてこっちを向いてくれないんですか????」

そそそそそーーーーーなことしてなーーーーいよ??????????

そうくるりと反転して言う彼女に、上からんー?と覗き込んでしまえば笑って元の場所に戻って来てくれる。肩を震わせて、胸を軽く叩いてくるものだから、痛いと言えばへへんと嬉しそうに鼻を鳴らしてきた。次の子が誰かは分からないが、きっと同じ様な話を聞いてくれることだろう。

『そんなことよりモヒイトさんこそ私沢山聞いちゃうよ?いいの?』
「ええ別に構いませんよ?お好きな程お尋ねして頂ければ。」
『えっ…えっど〜しよ〜〜〜』
「おや?それ程多くあるのですか?」
『…えへへ』

そうタオルケットを巻き込み目元だけ見せてくるものだからきょとんとして目を丸めてしまった。ふはっと笑いだしてみれば、クスクスと笑ってくれる。いつの間にか涙は引っ込んでいた。それ以降、彼女の暗い顔はほとんど見なくなった。朝ふと話をすれば答えを返してくれる。一体何時の間に仲良くなったんだい?と白鳥が聞けば、二人して目を合わせた後、同じ様に人差し指を立てて言った


『「それは内緒/秘密です!」』








泡沫の白昼夢


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