夜間飛行のカーテンコールを1



『互いに凄いお似合いだね?”にぃさま”!』
「…るっせ、ほんと、ま〜〜〜じで、うるっせえなお前」

えへへ、そう後ろに手を組んで肩を上げ笑う都結に、ため息を吐いて答えるのは、前を歩いていて振り返ったアゲートだった。現在はコルンらの組手終わり、午後に半休を貰えたので行きたいところがあると言った彼女の言葉にコルンらも色々考え、特別に見える範囲であれば、と許可が出た処だった。

一体何時の間にこんな惑星を見つけていたのだろうか?と思っていたが、恐らくアゲートと敵対関係に位置していた頃に見つけたのだろう。軌道はその位置だったから、だ。

まさか起きていたとは思わなかった。と言ったら起きていなかったのだそう。本当に直感で本能が告げたらしい。大体ここら辺にうろ覚えで見ていた世界があるのだ、と。事実あったから驚きだし、その直感はもう少し別の処で使って頂きたいものである。例えば組手の途中に指示をされた言葉を覚えながら動く、とかね?まぁしていてコレ、なのでもうどうしようもないことではあるのだが。

都結の戦闘力は本当にアゲートが見た想定通りだった。まぁ真剣にやったら目の前でずっこけて、場合によっては敵に情けを貰える程度だったのだ。もう可哀想というか、目も当てられない。これが危惧している者なのか、と思える程である。あの戦闘での動きは何だったのだろうか?もう夢見が悪かったと言って片付けられたらどれ程良かったことか。コルンらはため息を吐いて肩を落とすしかなかった。

『でも此処綺麗でしょ?聞いたよ?私出会った処が違ったら護衛だったって!』
「…逆だからな?お前が姫の方だからな?」
『分かってる分かってる!』

本当に分かっているのだろうか?

ため息を吐いて、先に走った都結の後をゆっくりと追いかける。着てみたいと言っていた衣服を着てのお出かけ、だ。深い紺色のワンピースに、白いエプロンが似合っている。水色の色をしていたらまるで

『不思議の国のアリスみたい』
「なんだそれは」
『樹の中に落っこちて、不思議な世界に行くんだよ!』

えっと穴、だったかな?落ちた先には…なんだったか。
はぁ…思い出せないなら無理に言わなくていいだろうに。

「お前本当に喋り出すと阿保丸出しだな?もう少し何とかならなかったのか。」
『ひどい!阿呆だなんて!せめてお馬鹿と言っておあげよ!』
「何故に他人事で突っ込む。お前のことだろうが。」

あと、訂正させる先が団栗の背比べであることを、彼女は分かって言っているなら、本当にもう少しどうにかして欲しかったものだ。ちらりとコルンの方を向けば、ため息を吐いたのか知らないが、頭が下に落ちた後、横に振っているのが見えた。恐らく「無理ですよ」なんて答えてくれていることに違いないとみた。まぁそうでなくとも、きっと似たようなことだろう。

あんなに立ち向かっていた子が、何食わぬ顔で傍に居る。何故かはわからなかったが、徐々に、この子の傍に居て何となく気付いたことがある。

「(嗚呼こいつは優し過ぎるだけなんだ)」

きっとこの人も出会いが違ったらいい人なんだ。なんて変なことを考えるものだ。恐らくあの悪の帝王とも名高いフリーザとかにもそう言うに違いないことだろう。なんなら部下になってもいいとさえ言い出しかねない。勿論人殺しはしないだろうが。それにあのフリーザとて、こんな惚けた子に人殺しを任すこともないだろう。良くて近くに置いてるペットくらいか。下手に殺したら何処で危険になるか分からない世界で、伸び伸びとするわけもない。少なくとも、複数の気を彼女は察知していないのだから。

「(…3、いや5か)」

都結の体内に居た子の気を察知する。彼女自体は分かっていないのか、いや気付いていてこれなら肝が据わり過ぎていやしないか?死んだ後のこともそうだが、拉致った時もそうだった。身ぐるみ剝いだのは、最終的に自分ではあるが、最初シトリンがしたがって堪らなかったので、怖くて名乗り出たのだ。

身体つきは細かった。でも、柔らかい肌の感覚は忘れられない。戦いなんて知らないだろう肌の柔らかさと透き通った肌の色。それは力を使い注ぎ続け、覚醒した後の肌でも同じことが言えるのだろうか?自分達のように封印し、力を閉じ込めているから別の形にと維持出来るが、彼らが言った様に、本来大神官やウイスらと同じような肌色をしている種族だ。

もっと言えばその場所によって肌色が変化する、と言った方がいいだろうか?太陽光の光で変わるのだ。近いと赤みになり、遠いと青くなる。とは言っても薄いものではあるが、な。それでも力を使えば薄い水色のような肌には変わることであって。でも、それすらも見せないようにだって、出来なくはない。そう、維持をさせれば、だ。

『みてみてあずーるおはなーーー』
「俺の名前はアゲートだ。誰が第二の元華神だ。」

それにあいつは女だっただろうが。それも髪の毛はストレートの長髪。全く違うんだが?
そう?頑張ればいけるいける。
それ全員頑張れば同じになれるとか言ってるよな?それ頑張らないで言える話だからな???

「全くもう、どうしてこんな状態で生き延びれたのか、不思議でたまりゃしねぇな」
『それでいいんだよ』
「え?」
『それでいい』

彼女は何時だってそうだ。遠くに位置している。幾ら距離を近づけようとしたって、彼女はその位置から外れようとしない。大神官とも交際を始めた、かのように見せかけて、あれから一切、互いに触れ合って居ない。それどころか、会いたいなんて言葉を呟くことすらないときたものだ。お前達、一応両想いなの、分かっているんだろうな?外はもう全員分かり切っている事なんだが。

指を指して言った彼女は花を手折らない。それは

「生かした方が地獄なのに」
『分かってるんだ』
「お前を一応蘇生した身だからな。…大体は知っている。」

お前が今迄どれ程の時間、両親から育てられ、生きれなかったことか。そして、兄がいるように見えて、はぐらかされていたこと。だがお前は知らない。だってその





俺が”兄”である人間であることを。




護衛は、本来であれば血族ではない。力の互換性だ。違う方が向きを向かずに済むのだ。だが、場合が場合。今回は二人ぼっちであるのは間違いなかった。正確には他の子達も居るが、それでもほぼ味方ではない。きっと、違う世界では護衛役として別の人に添い遂げていたことだろうし、其処に休憩だからと言って走ってついてきていたことだろう。想像に容易いものだ。

訓練も出来ればもう少し距離を放してやりたい。ただ、それではいけないし、そもそも護衛なのだから近くで面倒を見てやらないといけない。あの時間に生きて居たのは、大体7歳前後だ。自分らは7の時間に息をしている。そう、自分達とこの子らが合わさるのは大体56年後の時。

その時に成れば、全てが一つに戻る。…つがい、いや。本来の血族としての、二つが一つに戻る時だ。

それまでに子を成していれば、何も言うことはない、が。この状態、恐らく難しいし、その前に潰えることだろう。いやはや、数十億年も長生きする種族も、惑星が停止していれば話にならない。という、か。


「お前、此処どうして、いやどうして此処を?」
『え?ん〜まぁ、本能!』

もう頭を抱えたい。そう、なんとこの惑星、実は我々らが生きていた種族ノヴァーリスの故郷、惑星ディール・コップキーノ。空は青く、太陽の位置も地球と何もかも変わらない、が、だ。此処は一日三十時間程度の場所で、星も月も地球と同じだ。ただ日中の時間は長いと20時間短いと15時間程度の状態を続ける。春夏秋冬がある区域、此処が王族のそれも、王家も王家の者達が住んでいた場所の庭園とも云える場所であってだな…。

古びれている訳もない。だってそういう願いを叶えた者がいるからだ。流石に人間を願いで、なんてものは無理だったらしい。本当に人っ子一人いない、ただ植物が無造作に伸び切ったものが壁に這いつくばっているのは見えた。空には薄い「環」が見えることが特徴のこの惑星。鉱石が多く採取出来る箇所もあり、一応後で行く予定だ。彼女用の鉱石だって必要になってくる。

『それにしても古代都市って割には新品そのものだね。まるで誰かがお願いしたみたい。』
「っ!!…どうしてそう思う?」
『だってこれ程栄えた文明なのに誰も居ない、って言うのもおかしいじゃない?』

そう言って外の風景を眺め見る都結。視界には下界が、民間人が暮らしている処が見えた。人が住むには、此処は少々きついらしい。というのも、

「そもそも此処の惑星は生命体を酷く拒んでいた惑星だからな。」
「拒んで?どういうことですか。」
「そのままの通り、というものです。我々らがこうして降り立てるのも、貴方方が居たからのこと。」

とは言っても戦闘をした場所の惑星は別にある。あっちは予備惑星で、第九宇宙と第十宇宙の間にある場所だった。全部で十一の惑星がある。そのうちの一つがこの惑星。本来の故郷であるものだ。因みに今現在天使ら総出で探して貰って場所の検討はついているが、どれもこれも近付けば綺麗に溶け消え見えなくなってしまうらしい。故に近づくことすらできない、降り立てない、拒まれているというものだった。

「我々ですら破壊出来ませんでしたからね。想像以上の願いが起因しているとみました。」
「お前達種族は願いの力で惑星すらも守ることが出来るんだろう?それも死んだとしても尚、だ。」
「…とは言っても、ですよ。それは血族でも結構な上位の者達です。それに当時の王家は結構に細かった。」

子供も多く居て三人程度。数人処の話ではない。下手したら一人の状態もあったとされているくらいだ。

「それに王家は幾ら血族が強かったとしても、その子時々に寄ります。身体が弱い子も居たでしょうし、継承をし続けるだけの時期もあった筈。」

1人数十億年生き残れると言っても、それはあくまで外の人間が来なかった時の話である。それ以降は本当に短い時間でしか生きれなかった。この惑星には多くの人間が居て、元々数十億人もの人間が居たのだが、今では手で数える程度の血族しか見受けられない。もし仮にいたとしても、恐らく血族から離れた親戚よりも遠い種族であろう。

「一概には力を色濃く持つ、とはいかない…ですか。」
「そう言う事ですよ。」
『ねぇねぇお空飛べる?飛べたりしてた?』
「え?嗚呼いーや?…確かに原則飛べはしてませんが、者によれば飛んでいましたし。でもそれは仮契約のしかも低レベル契約での活動範囲内。」
「低レベル?なんだそれは。」
「一概に全部がこの子みたいな力を持っていない、という事ですよ。通常の市民らでも交流はありました。濃度が低い子でも願いは願い、ですからね。その区画での神々が管轄していた。」
「つまりその子の中に居る神々は、その上に居たもの、だと。」

…そういうことだ。

「そいつをどうするつもりだ。」
「仮にも蘇生してくれたものですからね。これ以上危害を加えるつもりはありません。」

それに、この神々、まだ何か隠し持っている気がする。都結が何も言わないというのもまた怪しい処だ。嬉しそうに周りを見渡しては走ってうろちょろする。今は後ろに居たリキールの処に走って、イルの周りのクルクルと回って走って遊んでいる始末だ。もう放置するしかない。暫くしたら止まる。息を切らして、だ。

つかれたと言って地べたに座るものだから、そんなところで座らないとコルンに叱られて困っている。黒いリボンの付けた紺色の衣服はまるでそれは


ーねぇ!****!世界ってとっても、広いんだよ!?


「(同じ運命を辿るとでも言うんですか?)」


護衛として面倒を見ていた頃、姫の相手をしていた記憶が何故か脳裏を過った。恐らくこれは彼女が最初に願われた時の記憶だろう。藍色の髪色を染め上げた子が、ケタケタと笑っている。この花畑に短く切られた草原に、だ。今は荒れ果てた状態になっていたので、とりあえず視界をということで破壊神も手伝って草の除去をしたばかりだった。

因みにこの子、歩く度に視界に入れた処を切りかかってくるので、本当に見ていて怖いのだ。コルンに『なたくれ』と言った言葉も怖かったが、否定した後の目も怖かった。普通に殺すのでは、と言えそうなくらいに目はじっと見ていた。ただ丸い目なのに、だ。冷や汗をたらり流したコルンが手渡せば、もう笑ってしまうしかない世界が見える。

数時間前まで人を過って切りかねない程に左右になたを振り回していた女は一体何処のどいつだ。あれ程暴れたらそりゃ疲れもするだろう。やっとエネルギーが、活動時間が切れかけている。体力がついたと言えばそうだが、それはそれで面倒だな、とリキールはふと思いながら都結のことを眺めて居た。

「此処にお前は暮らしていた記憶は?」
「一応あるにはありますが…だとしてもこの時間の状態。まぁ他にも」
『前世の記憶!?!?!?!』
「っとと、」

危ないですよ!後ろに落ちたらどうするんですというコルンにえへっと笑って誤魔化す都結。心なしか髪色が青いのだが、もしやその色は

「めらる?」
『え?』
「その髪色、待て、お前さては”エフェメラル”か!?」

そう食いかかった彼に、都結が動揺する。落ち着け、とリキールがそっと彼の腕を、放す様に胸元辺りを抑えて引き剥がす。嗚呼すまないと言ってから、落ち着いた彼が説明してくれる。

「一応俺は元々エフェメラルの相棒だったからな。」
「「『相棒!?』」」
「と、言うと貴方とエフェメラルさんは力の使い手だったと。」
「嗚呼。とは言っても記憶に残った欠片での話。それに、あいつはすぐに何処かにいったからな。」
『”…そうだね。貴方を置いて、ね?”』

そう笑って振り返る子は、エフェメラルその者だった。髪色が変化し、青い目と青い髪色に変わる。久しぶりにと言えば久しぶりにと返す形も、また元の通りであって。

「お前本当にエフェメラルなのか?あのエヴァネセントと、血族から外れ生き延びた中立者の」
『”そうだよじゃなきゃこうなってない、でしょう?私達血族は力の濃度でその周りも魂の中に保管される。”』
「い〜や確かに言い伝え通りではあるし、それも蘇生したらくっついてくるもんだとしてもだよ…」

アゲートも全て最初から知っている訳ではない。都結の蘇生を行って以降、彼女の魂由来の時間をほぼ掻い摘んで見れるようになっただけのこと。特に寝ている時にみるもので、覚えようとしない限りは覚えていないし、思い出せもしていない。だが、この子だけはほぼ毎晩出てくるのだそう。何せ元々相思相愛の子だったのだそうだから。

『”アレは元々この子が想像したもの。とは言ってもきちっとしたらサワアさんに激似だけどね〜!”』
「…やめろ、俺はああいう奴のキャラは捨てたんだよ。キャラ被りも良い処だしな。」
「したらサワアさんのように?」
「まぁよく言われてただろうな。現に見つけた時驚いたよ。生き写しが居るもんだな、と思ったくらいだ。」

今の髪の毛は敢えてぼさぼさに、毛の量も多めにしてバンダナで無理矢理巻いているだけであって。本当にきちんと整えたらサワアその者なのだそう。色も同じになると言えば、もうどっちがどっちか分からない。強いて言うなら身長差程度、か。まぁやろうと思えば恐らく瓜二つの兄弟としても普通に生きていけそうなくらい似ているのだそう。

「それにしても良く生きてるな?お前、三回忌終わっただろ。」
『”それが神様らの思考でちょっと予定変えられちゃってさ?まだ三回忌ですらないとか言い出してさ。”』
「…なんだって?それは本当か。」

そう声をかけたのはリキールだ。それが事実なら、神々らの話にも入る。というのも、だ。都結の力は天使らを殺せる力そのもの。三回忌は力を願いを叶える時の時間だ。要は振りかざした勢いで人を軽く殺せるというもの。勿論この生きて居る都結の願いをも引き換えにして、その願った時間を叶えさせる、驚く程に執着深い願いの巻き添えを喰らう羽目になるのだ。

どうやらエフェメラルが指折り数えたと頃によると、今現在はエヴァネセントから数えて二番目に位置するらしい。つまり次の転生で、この願いが完成するというもの。一応言っておくが、エヴァネセントの次の転生は別の場所だった。その次が都結というものだ。計算上では都結が三度目になるから、というものだったが、それが違っていたのだ。

『”三回忌はあくまでも三度目に転生した後までに願いを叶えるというものであって、三度目に死ぬまで必ず叶う。逆に言えば叶った後は死ぬだけの存在。”』
「使ったものは捨てられる、か。いやなやり方だな。」
『”転生したらその特定の人間が体内に保管される。私らは都結自身が想像したものと”』
「転生した者が大事にしていた者達の、欠片、か。」

そういうことだ。その為、エフェメラルがこうして外に出られるのも、都結自身が想像したから。そう「いつか終わるその日まで」の時間に、というものであって。本来こんな姿をしていない、訳でもなかった。というか、ほぼ同じで想像出来るのが恐ろしくて敵わないというところでもある。だってアゲートはエフェメラルの気を察知したのではなく、髪色で察知したのだ。姿も形も、彼女知るその者であって。

あくまでもいつか終わるその日までに想像したもの。故に力は別の力であるのは間違いない。ただ、願いを、と縋る想いは同じだった。まぁ全く同じ小説を書こうものならば、恐らく眠っている神々らが目醒めて手を止めさせにいっていたことだろう。外の人間らに留められたら、契約も破綻になる。

「ですが今回契約が出来なかった、だからもう一度三回忌に、という話だったのでは?」
「それだと時間が違う。」

そもそも三回忌は死んだ時の人間を一度、と考えていた。が、違っていたという話が今回の話である。三回忌は一度死んで、次の転生を一度、と仮定し、其処から三度目の状態つまり当時を含め全部で四回の時間を繰り返して、願いが叶うというものだ。其処迄待てるなら、もう少しやりようがあっただろうに。

『”三回忌は終わっていない。一度死んで蘇生したものは別。”』
「確かに魂が別の個体に移動していませんからね。」
『”ただ三回忌が更新掛けられたのは事実だよ。現にエヴァネセントの時にそうなってたからね。”』

アゲートの記憶に残る姫との時間は、あくまでその更新前の話だ。なんなら、契約を交わす前でさえある。当時の記録も書庫にあるのだと言って、エフェメラルが案内してくれる。


『”おいで、こっちに”』


そうして見て見て。貴方達のその眼で。

この世界を。








泡沫の白昼夢


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