夜間飛行のカーテンコールを2
書庫は古びれていたとも言えない。ほぼ植物が這っているだけで、新品だった。
『”此処は王家の書庫。それも血族じゃないと入れない指紋認証&魂付き”』
あっ一致した〜やっぱりこの子だったんだね〜ふっしぎー!!
そう呑気な声で笑いながらも、エフェメラルが移動する。地下に降りていけば、其処は庭園だった。静かな庭園。外の庭園を春の午後というならば、此処は春の夜と言ってもいいくらいに、不思議な月明かりの光が落ちて来ていた。其処の中にあった本棚の中を開いてみれば、何という事だろうか。
「っな!これ、全てまさか!!!」
『”そ。日本語。此処の言語古いのは日本語の古語で書き綴られているんだよ。”』
まさか同じ様な世界に飛んでいたとは世間も狭いよねぇ〜なんて言うが、この言語を知っているのは都結とコルンくらいだ。アゲートも一応拾えるが、それでも知識だけ。使える話とは別問題。だが、それはエフェメラルも、だと思ってふと気づいた。都結とエフェメラルそしてエヴァネセントの三人が一致した時の話だ。もしや
「貴方、あの世界でその子を守る為だけに?」
ニヤリと笑って振り返る。嗚呼、その通りなのだろう。…話はこう、だ。
エヴァネセントの時に生まれ変わったエフェメラルは、彼女が望みを言って再度契約を交わすなんてことはしたくなかった。というか、エヴァネセントで魂が消滅し兼ねない懸念があったのだ。気付いた彼女は幼い頃から彼女が続くことの期待の願いを考えていた。その言葉がぼろっと出て、神々にバレて、エフェメラルが今度は契約を交わした。
その為、エフェメラルとエヴァネセントの二つに分断してしまった。もっと言えば派生だ。親の血族から少し外れていく、あの兄弟の感覚で間違いない。エフェメラルは魂由来の親戚になっていたのだ。その二つが移動する前に、都結の方に繋がった。というのもエヴァネセントの記憶由来だからこその話。そうでなければ今頃エフェメラルは別の力で三回忌を続けていたことだろうから。
単に都結の願い正確には元の神々が望んだ願いが強すぎたが故のこと。それに引き寄せられただけなのだから。
『”それにしても自分が主人公は想定外だったけどね?それも似たようなことしちゃってからに。”』
「…???」
『”ま、それは良いとして。だ”』
君らどうして此処に?
お前記憶ないのか?
「唐突にそうだ此処にいきたいから連れてけさもなくば殺すとかしもしない脅迫を天使に押し付けて来た処だよ。」
『”嗚呼そういう。”』
「というかお前達死んでたはずだろ。どうして生きてるというか、外に出ている筈だ。」
『”ん〜正確には欠けてる、かな?本体は外に出てると思う。神様が別の人間で生まれ変わって抱き合ってた元カレみたいに。”』
は???
『”あれ?言ってなかったんだ。この子の蘇生した神様の欠片が転生してたの。”』
「や、と、いうか…そも、嗚呼、え?」
「コルン落ち着け」
これが落ち着いて居られるか。あの部屋は元々違う人間がいた、というものだろう。元カレ、つまり付き合っていた者が別に居たというものだ。それも意外なことに、途中で消えたのだそう。もう居れない、と言って置いて行ったのだそう。嗚呼だから、あの子は裾をちょっと掴んで置いてかない?と消えるくらいに小さな声で聞いて来たのか。数年同棲していて消えたのだから、それは傷付くも同然というか、
「…使い方にも限度というものがある」
願いを押し付け、見ていて、他の者が嫌でも自分の欠片なら彼女を喰らっていい?そんなふざけたことを神が、それも神の端くれがしていいものか。許されるものではない。しかも、今は捨てたならば、今は大神官様の正妻とも言える様な状態なのに、だ。それでも彼女を縛り上げて、一体何を望んでいるのだろうか?恩を押し付けるというよりかは、最早これは俺の願いを叶えろ。という言い方にしか見えない。モラハラ夫でもまだ生前だけの付き合いだぞ。もう此処まで来たら狂気も狂気だ。
しかも願いはまだ、というものだ。ということはこれ以上のことが起きる可能性が充分に高い。それを考慮して、彼女は距離を置いているとしたら?
陽だまりの下に落ちた子の笑顔が見えた気がした。
『”…この惑星ね、実はドイツ語で出来てるんだ。”』
「ど?なんだそれは」
『”直訳で「妄想の取引」”』
ね、その「取引」は本当に「妄想」だけで留まっていたのかな?
「そうでなければならない。そうでなければ、それは」
それは、貴方が彼のことを諦めざるを得ない、ということそのものであって。
…事実そうなのだろう。恐らくだが、都結が大神官に好意を渡せば大神官は振るだろう。そしてその逆も然り、である。故に二人共好意を言っていないし、互いに交流をしていない。勿論一目の無い処で、というのもあるだろうが、だとしても互いの距離が明らかに遠かった。
何だかんだ言って甘え下手なのに甘えたがりの都結と、それを受け入れられるであろう大神官との距離ではなかったのだ。物理的にも心の精神的な面でも、である。互いに仕事付き合いはしているが、趣味までいかない、といったくらいか。
神は言っていた。絶望から出て来た希望の光を待ち望んでいるのだ、と。それは即ち、大神官との時間を待っている都結の時間を指していることだろう。…だから大神官は頑なに人間へと戻らないのだ。数時間でも数秒でも、きっと彼女の呪いに影響を及ぼすし、そしてその後は彼女は勿論のこと、彼女自体の存在すらもき
「ほかに」
「あ?」
「他に術などないのですか」
こんなのあんまりだ。
最初だって、恐らく彼女は普通を望んだ筈。何処に行っても、生きて居るそれだけでいいと望んだ。それはつまり、何処に行っても貴方のことは知っているし、そしてその幸せも私は知っているというある意味重い愛の表現だった。それを知らない受け取らないいや、知れなかった神の落ち度だ。完璧なる、落ち度であるのだ。それに気付くのは恐らく彼女が消えた後のことだろう。案外途中で気付くことはないからな、こういう執念深いことなら猶のことである。
『”ん〜ない、ことは、ない…かな?”』
「っ!」
『”でも結局は耐えられるかどうか。”』
大神官は中立を守る者だ。別に引退したらそれまでではあるが、都結自身がそれを望んでいる訳がないのは確かである。触れらえる距離なのに、触れられない。記憶を取り戻したとしても、それでも少しずつ募らせた末路が迎えているのは分かっているから。都結も大神官が好きだからこそ、彼に近づかない。心を綺麗に吐き出さない。
そうして神々のあの者にこの感情を渡すものか。と思っていることからだろう。なんてプライドの高いことか。そう言う処は本当に尊敬できるというのに、何故こうなったのか問いただしたいが彼女は現状出払っている身である。勿論精神的に、ではあるがな。
「ですがそんな消滅するみたいに言わなくても」
「いいやする」
「え」
「三回忌が終われば、その生きた時間すらも誰の心にすらも留まらずにきれいさっぱり消えてなくなる。」
だから王家はひた隠しにしたのだ。天使すらも殺せるというのは、代償が肉体の消滅に留まらないからこそ、である。恐らく神々が考えたのだろう。余りにもその天使らが行儀の悪いことをしていたから、とかだろうが。今と昔では違うものである。大神官だって親の姿を見てきていることだろうし、色々考えることだってあるだろう。だから放置していたのだが…それでも神々は、生きて居るのであって。
「その三回忌をどうにかできるって言う話を今してるんだよ。」
「そうなのですか」
「と、言うよりかは三回忌を乗り切るという話かな。」
「む、取り消しではないのですか。」
「取り消すことは間違いなく不可だ。それも神が直々の、三回忌だからなぁ。」
今眠っていると言っても、これは想定ではあるが、最近大きな力を使ったことが原因だろうと思う。元カレというのも、恐らく欠片を見つけては収集して体内に取り込んでいたこと。急に別れたのは人間が要らなくなった。まぁ力を吸い上げてそのまま捨てたに等しいことだ。好かれていると互いに思っていたのはまさか神が力を取り戻すだけのことだったとは、互いに知る由もないことだろう。
神が寝ている隙に、色々あの手この手で都結から引き剥がし、そしてあわよくば消滅させたい、というのが天使らの思惑。だが、それに気付かれてはいけないので、割と最近天使らが確実に都結の面倒を見ているという訳ではなくなっている。話している間に都結が気付いたら、神も気付くみたいなものだからだ。
都結は都結で神が邪魔をしているので大神官のことを見れないというものだろう。まぁそうでなくとも、此処まで来たら少しの間でも添い遂げさせることくらいは大目に見て欲しいものだ。あれ程までに嬉しそうに笑ったり、酷く悲しそうに落ち込んだ大神官なんて、コルンが生きた中では見たことも聞いたこともなかったから。なんなら、あの長女であるクスも見たことがないと言い切ったくらいだ。余程のことなのだ。
「…おい、エフェメラル」
『”なんだこの赤いバンダナクソ野郎”』
「とりあえずお前出たら一回しばくとして、だ。」
なぁんで?!?!?!?!
「そういやお前此処の出だとしても地元は?」
『”嗚呼、都よりもくっそ離れたド田舎もド田舎だよ”』
「まぁ”都は遠い”からなぁ。」
そう言った後、部屋を漁る二人に、コルンはふむ、と声を鳴らしてから、彼女らの仕事を手伝うことにした。
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「まぁ来ると思っていたよ。」
お帰り、僕らのダディー
そう言った月明かりに照らされた子は、青い髪色そのものであって。周りの気を察知してか、アゲートが目だけきょろきょろさせる。月明かりは彼にも注がれ、髪色が虹色にも見える程に白い髪の毛が照らされていた。
「…また回りくどいことを言って。」
「蘇生者の繋がりはあくまでも単体行動のみ。故にこっちに起因することはない。」
「私が食われているとか想定しなかったの?バディー」
「はっ、その時はその時さ。それに、」
俺はお前達に用があって来たんだからな。
久しぶり、そう言って互いに手を合わせた後、片手で背中を叩き合った。合せた手は額に置いて、それぞれ目を閉じ合い、今迄の記憶を交わし合ったりもする、儀式的な仕来りをする。きちんと額に印が浮かび上がった。これは添い遂げる相棒になるであろう形だ。
近くに居れば大体光が落ちるので、子供が出来てそれなりに動けるようになったら、一度王家の庭園に集めては選ばしたりしている行事があった。大体春頃に行い、数年程度様子を見ながら育成していた時の話をすれば懐かし過ぎて剥げそうなんて笑っている。
「それにしても聞いたぞ。お前ら混濁者と遭遇したそうだな?それも体内に数名も残らせて。暴走しなかったのか?」
「したはしたけど、当人のみかな。」
「僕らは見学。他の子達は知らないけどね。」
其処に居たのはエフェメラルだけでなく、ティーナやエル、アンダルシアと言った華神らだった。どうやら別々に飛び散ったらしく、今誰が何を何処でどうしているかなんて知らないらしい。今飛んで生活しているのはこの者達に付け加えていた天使のカミカゼだった。
「改めて自己紹介を。華を持つ者最果てに位置した華神のティーナ。と言うのは彼女の記された記憶内部の話。」
私の名前は”ニイナ”
「”ザパル・ニイナ・トゥルック”東の民で本屋を経営していた者だ。」
「本屋か…なんだか似合わないな?バーテンダーとかどうだ?」
「はっ、いってろ!」
「”
その言葉にぴたりとティーナが止まる。それと、と続いて言葉が出る。
「”
「…その名前、何処で知った?」
「さ?どこだろうね」
失った手足に痛みを感じるもの。切断後の異常感覚を伴ったものが幻肢痛と呼ばれるものだ。穿孔は体内にある胃や腸などの壁に穴が空くことを指す。膿瘍は細菌感染による膿のたまり、ようはニキビやおできなどを指す言葉。明らかに彼女らの目付きが、温度が一気に下がった。急降下も良い処だ。
「俺は言ったぞ?”お前達に用があって来た”、とね。」
「…話を聞こうか。」
「ちょっとティーナ。」
「煩い御託はどうぞそっちで受け取れ。…ちょっと興味がわいた。」
「同じく。我の正体を見抜こうとは…意外な奴がきたものだ。」
とは言っても、都結が大神官らに聞かれたので答えた話だ。
ーえ?他に起因されたもの?
ーえぇ、流石に華を、というだけでもいかないでしょう?
ーあ〜一応ボツ案だけどあるんだよね。ウイルス系。
ーウイルス?
ーうん。ウイスさんの名前がウイルスからって作者が言ってたのを思い出してね。外傷や内部の損傷をテーマに出したんだよ。
ほらこれ。
ーティーナとかは絶対「炎症」にしたかったの。
ー何故です?他にも外傷等あるでしょうに。
ーだってティーナは「炎」を持つ者だよ?
「”心に抱いた炎の痛み”等、計り知れない者だろうから、と。思っただけのことだ。」
「…驚いた、お前、本当にアイツみたいなことを言うんだな。」
「まぁこれでも?一応蘇生した民なんでね?それで、どうだ。合格か?それとも不合格。」
「…我はいいぞ。」
「ちょっとアンダルシア!」
「別に構いやせんだろう。こういう奴もまた、良い味を出す、というものだ。」
嗚呼それならもういいかと頭を掻いて話を戻す。
「”ニイナ”だ。こっちは」
「”シャーデン・ルシア・ノイエ”。アンダルシアこと、ルシアだ。」
「”ノーマリティー・ルエ・シュメルツ”」
「”ノシオン・エフェメラ・アロディニア”」
別に元の名前で、呼んでもいいんだよ?それこそいつか終わるその日まで、には覚えて置いて欲しいけど
ねぇ?
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「で、どうしたいんだお前は。」
「一番はお前達との断絶。」
お前ら、そもそも人間で死にたかったが、あいつがあんまりにも不安定で心配で堪らないから最後まで看取らないと気が済まなくなっている。違うか?
いやま、そらそうだが…
「あいつら仲良く出来たらいいんだが、流石に中立。しかも上も頂点と来たもんだ…」
「わ〜たしは出来るとおもうけどな〜」
「嗚呼アタシの魚!」
「こっちの方が甘かった多分好みだよ。」
「ええ?」
あっほんとだ。
お前らなぁ…
「っはははは!!まぁいいじゃないかアンダルシア!」
それで、お前達どういう作戦を思いつくんだ?
そりゃまぁエフェメラルがやってたこととりあえずやってみるのが手だろう。
「うちらはあいつが恋仲になるまでには切り落として、というか恐らく今ならいける筈だ。」
「嘘じゃないよな?」
「此処で嘘ついてどうする。アタシたちはある意味繋がっている状態と変わらない。向こうが駄目ならこっちも即死だぞ。」
まぁそれもそうだ。
「そう、要はこういうことだ。」