残響響く、それは夢幻のように3
「ほらみろやれば出来たな。」
『(もうむり日本語話せない)』
「それを言うなら口頭での会話は無理だってことだろう?」
お疲れ様。
うい。
それから約三時間少々で反対側のの掃除が終わった。本来数日かけて、というつもりだったのだが、アゲートの宝石を石から外す加工技術と、都結の水を運搬する力を組み合わせた合体技で綺麗になったのだ。知恵熱でるーとか思っているが、恐らく出るだろうとみている。
あれ程やったのだ、流石に明日はゆっくりし、明後日調子が戻りつつあれば明々後日辺りに再開するとしよう。何だかんだ言って、破壊神らがしてくれたのは上層迄のこと。最上階の部分は綺麗に手付かずである。それと地下だ。この宝石を使う力があれば、下手すれば岩自体を自在に扱える可能性だって出て来た。
『なんだかアバターみたい』
「あばたー?なんだそりゃ。」
『火とか水、土や風を扱う子達のこと。それぞれ質を持っていて、全部習得出来る子は神様に近しいとされるアバターって異名を貰うの。』
「俺達で言う処のノヴァ・ネラみたいな位置だな。種族は同じなのか。」
『あー人種的にはなの?分かんない。』
分かんねぇのかよ。
「それで?」
『あーそれで…私が使うのって水でしょ?』
「ああ」
『水のアバターって奴がいたんだよ。水を手で引き寄せて空中に浮遊させたり。』
「…ちなみにそれ、ちょっと試しに出来るか?」
『まぁあれは”物語の話”だから、流石に”出来る訳がない”と思うけど。』
そう言った都結は、そっと立ち上がった後、構える。姿勢は腰を落とし、手を引いては前にを、ゆっくりと繰り返し、空気を水が通る道を作った。近くにあった水場から勢いよく吸い上げてみる。すると、どういうことか、水が手に引き寄せられてきたではないか。それだけではなかった。流石に異常だと思いつつも、手を止める訳には行かない。これが次出来るか分からないから。
身体の周りや、手の周り、出来るだけ遠くや近くにも移動出来る。間違いなく、水のアバターの師匠が見たらきっと絶望するだろう。なんだったら失望、か。自分よりも出来たという恨みや嫉妬等も込々な気がする。私あの世界の住人じゃなくてよかった、じゃなくてだな。
ばしゃりと落ちたことで身体が濡れる。うわっと言ったあと、やはりかとアゲートが白いタオルを渡してくれた。嗚呼助かる。
「お前、さっき思ったのを覚えてるか?」
『え?水?』
「違う、空中に浮遊させた辺りの話だ。」
”物語の話”だから”出来る訳がない”と言ったのだ。
それは物語に入る掟みたいなものだった。いいか?と都結が身体を軽く拭き上げていると、余りの適当さにアゲートの手が入る。ごしごしと擦る彼に逃げようとすれば、次第に力加減も変えてくれた。落ち着いて立ち尽くし、話を聞く。
「本を扱う者の掟”物語と現実の区別は絶対にしなければならない”というものだ。お前はそれを無意識化したのか元々あったものかは知らんが出来ている。」
だから彼女の周りは不思議なことが起きるのだろう。植物の蔦や葉も、偶に彼女の周りで踊っている。彼女の思った通りに動き、しなくていいと言っても大丈夫と言いたそうに蔦らは動いてくれる。それは水も同じである。下手したら風とかも操っているのかもしれない。それは彼女が「物語上でなければ成し得ないこと」だと思い込んでいるからであって。
以前倒れた時、混濁者と融解者という話が持ち上がった時があったのを覚えているだろうか?糸がごちゃごちゃに混ざるのが混濁者、対して融解者は溶けて分からなくなる処の者。同じなのは「本質がどれか分からなくなること」である。似ていないようで、何かしらの一致はする。これが栞と宝石職人にも言えること。
栞は本を守り抜くという意味でもある。本のページに挟み、次の時間其処から始められるようにするのが栞の役目。目印になる。宝石だってそうだ。人を厄災から守るという意味がある。そして、誰かの地位を名誉を、周囲に報せ己にも理解させ、目印に。この二つだって、同じ「守る」という意味では一致している。
そうして、二つが反対側に位置していると、あれば?
『ダイヤ…?』
「そ。ダイヤ状の形に変わる。均等な線を、というならば場所も同じこと。同じ位置同じ場所を、四方に置けば点と点を線で繋げば」
『でも、だからと言って流石に安直過ぎでは。仮にそうだとしたら、私が王のけ、つぞ』
「…そうだ。お前が生きて居られるのも、そしてそのお前の中に今も残り続けている奴等全てが、ダイヤのひし形の意味の中に入り込んでいるからこそ、だ。」
自分が生きて居られたのは単なる幸運、後はスペードが導いてくれた、ということにしておけばいいと思う。これが真実な気がしてならなかった。確証がないので確実には言い難いが、な。
「話を戻すが、お前がやっているのは全て物語上に入り込む力だ。」
『じゃあ、物語の本を使って』
「まあ封じ込めるなんてことも出来るなってどうした。」
『…ね、昔15の人数が必要になったものって、何かない?』
「15?また切りのいいような悪いような数字だな…流石に覚えはないが、この惑星や他の惑星を調べて居たら何か分かる可能性は充分にある。やってみるか?」
『うん、やろう。』
とは言っても、今日は終了である。明日に持ち越しということで今日は新しく出来た風呂を、使う日とする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ぴゃああああああきちゃああああああいいいいやっふううううう!!!!』
もうはしゃぐ以外あるわけがない。急いで髪を洗い流し、身体を洗い、綺麗にしてから湯船にどっぷり浸かってしまう。外は窓ガラスの木枠で両開きの窓。ちょっと見えるのはご愛敬、という処だ。窓を開けて下を見下ろせばアゲートが手を振ってくれた。落ちるなよってか出て来るなこの馬鹿って言われた。解せぬ話だ。ちょっと空を見てやろうと思っただけ、で…
『きれい』
まさにその言葉に尽きた。時刻は夕方の逢魔が時に差し掛かっていた処だった。涼しい風が火照った身体に纏わりついた水や濡れた髪を撫でていく。目の中に入った世界は絶景も絶景。
夕方で、右側から陽が落ちていく中、お月様が左側から見えている。通常だと月は東側で右。太陽は西側で左に位置している筈だ。勿論夜になる夕方限定である。因みにこの逆が明け方だ。そんなことを狂わせるくらいの位置に居た。中央から北東に位置しているのだから、此処の場所から見える位置的に、山々も遠くまで見える。
栄えている逆側は行ったことがないが、この町が完成したら、次の町の修復作業へと移ることにしたいところ。景色を堪能するのにと眼鏡を擦ってちょっと前のめりになったのがいけなかった。
「で、何か言いたいことは」
『たいへんもうしわけございませんでした』
もう文章だったら最後に;;で泣き顔になっている程に落ち込む。前の世界から持って来ていた、というのもあり、修復は不可能だった。天使や界王神らが言うんだから間違いない。うう、私の視力返して視力う;;
「どれくらい見えるんだ。」
『とりあえず普通にしていて声で判断して顔を見ていますよシャンパ様。』
「では都結さん、何方がビルス様でどちらがシャンパ様かお判りになられますか?」
『えーーーー…右がビルス様じゃないの?これ。』
「駄目ですね。」
結構な至近距離ではあるが、遠近法を使ってみた。ビルスを手前にし、シャンパを出来るだけ放してみた。そして極力息を止め、ビルスは少々姑息ではあるが、着ぐるみを着てみた。ら、だ。何処で分かるかと歩かせれば手が届く範囲内でやっと気付いた。下手に視力検査をしたら都結の目の中にある力が人間にバレる。それだけは避けたかった。
その為、現状は眼鏡無しの生活になってしまう。うう、お本も読めない。案外本は眼鏡がないと読めないものだ。というのも、意外と距離は近いので一見見えると思うだろうが、その本の文字が小さいと読み解くのに時間がかかる。すると読み解くだけで脳を使用し、想像しにくい。
近くに置いていればいいという訳でもない。至近距離で見ていたら今度は肩が凝った。態勢を下手にとれば、普通に腰とかもダメージを食らうし、首も目も痛くなる。そりゃあ長時間見るものではないのだが、だとしても不便極まりない話だった。少なくとも調理の手伝いは厳禁である。どこぞの華樹王でもあるまいから、出禁ではないのだが、な。
「まぁ暫くはそのまま、か。」
『あう…眼鏡ほちい……』
「貴方の度数は結構悲惨なものでしたからねぇ……これの技術を、と言ってもお医者さんの所に行かざるを得ないでしょうし。」
「人間にばらさないよう言い聞かせたらどうなんだ?」
「シャンパ様…もし仮にそうできたとして、対価の金銭は如何なさるおつもりでしょう?」
『あともっと言えば保険代からその土地の住民証明。後は眼鏡のフレームも駄目だから、眼科で判断出来るのはあくまでも視力のみ。レンズや物自体は眼鏡屋さんいかねばならんからなーーーー』
「は!?一度で済まねぇのかよ!!!」
まぁ気持ちは分かる。コンタクトレンズであれば話が別だが、こういう生活をしている以上、中に入れるのは出来れば避けたい話。力を使った際、網膜自体にどんな効果が入っているか分からないのだ。下手したらコンタクトレンズが溶け消え、何処か入り込むとか痛い話は時間を幾ら巻き戻せるからと言って、それに頼りたくはないし、そもそもそんなもの此方から願い下げ下げ避けたいところである。
『それに眼鏡のフレームも多岐にありますからね。これを機に視力が向上〜なんて無理かードラゴンボールでなんとかならねぇかな。』
「貴方の場合魂を含めた肉体で、ですし…期待はなさらない方が宜しいかと。」
『でーーーすよねーーーーー』
もっと言えば都結の身体自体は別世界産である。魂は幾ら此方側だと言っても、実物が向こうだと話にならない。そもそもソレが出来れば、恐らくこの眼鏡も綺麗に戻せた筈だ。時間を巻き戻したりできなかったのかと聞かれたが、生憎その時は入浴中だった為、気付けば軽く一分は裕に越えているし、最大五分程度巻き戻せなくはないが、大体風呂場からちゃんと出ようと思えば五分は最低掛かる。故に無理なのだ。風呂場から、という話であればな。
嗚呼ーーー景色を堪能して遊んでいたのがいけなかった。普通に私が悪いのだ。だから落ち込んでいる。マジでドジを踏んだ。これだから私は誰からも愛されない。なんて何処まで落ちるのか分からない程に精神的参っている都結には何も言うことがない。シャンパはううと唸るしかなかった。
「だけどお前することって特にねぇだろ?別段こまらどうした」
「はぁーーーーー」
「なんでそんな深いため息を吐くんだよ!あってるだろうが!!!」
「シャンパみたいに怠け者じゃないんだよこの子は。」
「ビルス様ブーメランの如く突き刺さって来てますからね?」
何を言い出すのだろうか。もう団栗の背比べである。仕事好きで、というか寧ろ仕事がないと精神的に参る程の真面目さを持つ都結からしたら、ビルスやシャンパのような動きはとてもじゃないが真似できない。何だったら睡眠と食事は彼女にとって一番かけ離れた位置にあるくらいだ。人間確実に切っても切り離せないラインをこの子はさらりと切ってくるので、おちおちと放置なんて出来る訳もない。
気にしていたら勿論其処はアゲートが面倒を見てやっていた。既に三度くらい喧嘩しているらしい。食事を食えと言っても癇癪を起すそうだ。誰が三歳児だ。まだ子供でも腹減ったから泣き叫ぶぞ。腹が減っても尚減っていないとは言えない。心の中でも腹が減っていると分かって猶言うのだ。
まぁ単に食べるのが億劫なだけだろう。あと仕事の邪魔。集中力を削ぐというものだ。中断したら、それこそ食事を取れば効率もあがることくらい、彼女も分かっているだろうに、だ。しないのだから不思議な子だと思う。因みに睡眠もこれと同じである。単に仕事を切りたくないのだろう。永遠にしたいとか、本当に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。とは言ってもそうして変わられたら寒気がしてしまうだろうが。何だかんだ言って今の破壊神が気に入っていなくもない天使達。内心は複雑な心境なのだった。
「とは言ってもどうされるのですか?一応眼鏡は似たようなものを作ってみていますが…」
『駄目ですね。本当に度ありです?』
「うっわ…マジで見えねぇ」
ほらもっと見ろよ。
お前鬼か。
そういつの間に仲良くなったのか、おれおれと都結がアゲートの頬に眼鏡を押し付ける。普通に痛いのでやめろというが、距離感が分かる訳もない。だって視力が軽く奪われたみたいなものなのだ。
「お前の目自体が特殊なんだろうな。正確にはお前の肉体自体が向こう側で生きて居るんだろ。」
「だから回復も碌にしないのか。」
「いい!?そうなのか!?」
「そうですよシャンパ様、現に都結さんは一度死に絶えておられますからね。」
あの時は結構痛かったが、あれはあれで良かったと思っている。だってそうしなければアゲートとこうして交流なんて出来なかった。今思えば不思議なものだ。彼が私の腹を刺して私が死んでいるのに、彼は服従してくれているのだから。例え前世が、いつかの時間共に生きていたと知り得ていたなんて互いに知っていたとしても、だ。
いや、にしても…
「お前、眼鏡無い方が結構かわ」
「シャンパ様それ以上はいけませんよ。」
「あ?なんでだよ。」
「はあーーーーーーー」
『ごめんちょっと私もため息付けるわこれ。』
「なんでなんだよ!!!!!」
別に可愛いのは分かっているのだが、此方としては大神官が居るのだ。彼に気がない以上、下手に好意を安易に受け取っていたら彼の始末が可哀想である。あとは大神官様の嫉妬がちょっと未知数なのも怖い処。それにもう時刻は夜だ。その為出来るだけ男性には近寄りがたい。きょろきょろして小走りで都結はヴァドスを見つけてはそっと後ろに隠れてしまう。
「あらあら」
「随分と甘えたさんになられましたねぇ〜」
正確にはそうではないのだが、まぁこの場合うんとでも言っておくことにしよう。何だったら風呂も怖い話である。出来ればヴァドスと一緒に入れるなら入りたい話だ。一緒に入って貰ってもいい?と聞けば、勿論だと答える。
「ではシャンパ様余りお行儀の悪いことはなさらないように。私は都結さんをお風呂に入れてまいりますので。」
『すいませんヴァドスさんお借りします。』
「いいいい、さっさといってこい。」
どうやらまだ食べ足りないらしい。一応近くでとれた木の実ではあるが、確かに腹も膨れにくいことだろう。肉や魚はあのパーティー以来取れていない。動物も貴重だろうし、放牧できたとしても、ちょっとこっちも手が出せない。元々食事も疎いのを利用し、手を抜ける処は抜き続けたいところだが…まぁ天使がこうして来る以上そんな願いは叶わない。
「また痩せましたね?」
『あば』
「コルンさんがお気づきになられたらどうなることでしょうか。」
勿論お父様も、ですよ?
あう
「眼鏡もなく、前も其処迄見えない中、毎日どう過ごしているのか。きっと心配でおちおち仕事出来なくなることでしょう…」
『ゆ、ゆるして…』
「でしたら良い提案が。」
『ん?何々言って?私に出来る事なら。』
嗚呼、でしたらとびっきりのものが。
なんなん!?
『私出来るならするよ!』
「なんだって?」
『うん!なんだ、って…?』
「はい、言質とりましたからね。」
『え?うひゃ!!』
っはは、擽ったいよヴァドスさんってヴァドスさん!?
「はい貴方のヴァドスですよ?都結さん。」
『あの私あのエフェメラルではないんですが!!!』
「そうですね。」
『じゃなくてだな!』
どうして全裸になって二人で風呂入ってるんだよ!!!!
おやいけませんでしたか?なんて言うが、それはいけない訳もない。普通に入って良いんだが、私の目になってくれるというよりも単に彼等の視線を巻く為の行為なだけであって。勿論それに気付かない訳もないヴァドス。だが、これがまた面白かったので調子に乗って見ただけのことらしい。何処から調子にお乗りなられたんですかね???ちょっと怒らないのでお姉さん私に言ってみてくださいよ。ねぇねぇなんで笑うだけ笑うの?言わないとか泣くよ?私。
「おほほほほほほほほ」
泣いた泣いた。
「またこうして此方に遊びに来て構いませんか?」
『え?そりゃあまぁ。何だったら皆でお風呂入りたいよね。ほらマルちゃんとか前ほぼ介護みたいなことさせちゃったからさー気を負わせてないか心配で心配で。』
「ふふっ、彼女でしたら心配ご無用かと。」
『そう?』
「ええ。貴方がそうやっていて下さっておられれば。」
皆きっと喜んでくれることだろうと言ったヴァドスにはそうだと良いなと笑ってしまう。あの人までも、笑ってくれるならば、もう、それだけでいいのに。鼻がツンと痛くなる。いや、正確にはツキン、と。かもしれない。涙なんて出さない。だってこんなもので出せる訳もないのだから。私が涙を流すのは何時だってあの場所で。
温かな陽だまりは今、夜で隠れている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
風呂から出て、パジャマに着替えた。因みにヴァドスさんからは「本当に其方を着…いえ、何でもありません」なんて結構意味深なことを言ってから口をきいてくれないまま風呂場から出てしまったんですが、あのウイスさん助けてよ。貴方のお姉さん言う事聞いてくれやしないんだよって思っていたら振り返ったのは何となく分かったが、それから声がしない。待ってなんで。静かだな嫌なくらいには。
「…都結さん?」
『はいななんでしょうウイスさん。』
「確かにあの衣装は露出していましたし、その後改善という点につきましては及第点とも言える範囲内でしょうが、余り其方もよろしくないかと。」
いや、下手したらこっちの方が駄目ですね。
待って何の話!?!?!
『そんな胸元がはだけやすいからって見えるから駄目だろって話じゃ…って待って?あれ?ウイスさーーん????』
「…お父様も気苦労が絶えませんねぇ〜〜〜。」
「おほほほほほ」
『待って私結構いい線言ったの!?』
いやでもこれ以外の衣装なかったし、この胸元が丁度良いくらいなんだよ。タオルで隠したり、なんなら髪の毛で隠せばと髪をつついているとぴたり手が当てられる。
「都結さん、一つお尋ねしても?」
『ん?え、何怖いなどうしたのウイスさん。そんな声して…』
「この惑星に蚊はおられますか?」
『ええ?今の所見ていないな…そういやいないな。何此処等々蚊でも湧いた?私無意識で蚊でも食われてる?O型だし可能性あり得るけど。』
「いえ、と言いますか…お姉様はお気づきだったのですか?」
「おほほほほ、私は脱衣所で気付いただけのこと。その前は知りませんでしたよ。」
何の話だと首元に手を掛けた処を探る。ここら辺を触ったのはつい数時間前だったりもしたが、それをもっと辿っていく。ふと少し大きめの手を思い出した。耳元で優しく自分の名前を呼んでくれる人。
『あっ…!〜〜〜〜〜〜〜!??!?!』
思い出してすぐに仕舞った。バァン!と勢いよくドアを閉める勢いで、だ。そっとゆっくり、後ろを振り返っている時だった。がっと身体を掴まれ、ちょっとお借りしますねなんて言ったウイスさんに反論なんて出来る訳がなかった。