残響響く、それは夢幻のように6



杖を胴体より少し長い程度に縮ませたものが宙を舞うのが見えた。

ナニカの音がする。誰?くうくうと音が鳴っている。


「…お前はよく頑張ったよ。」

ほんと?わたし、えらいの?

「ああ、本当に。」

ふふ、うれしい!

でもね、私まだまだやりたいの。やりたいって思えるの。これで終わるなんて、私なんだか嫌なんだ。

沢山の人に出会って、沢山のことを教えて貰った恩返しだってまだまだしたりないの。私はもっと覚えて話をしたいの。貴方が好きな理想の私じゃなくて、私が好きな現実の私として。そっちの方が、きっと最後は見たこともないとびっきりの世界が待ち受けていることだから。温かな陽だまりの中で私は息がしていたい。

私は貴方達の隣で、温かな陽だまりの下で息をしたいの。



そう、貴方らが笑って居られるのならば。

その為だったら、何だってしてやる。


その為だったらどんなことになったって許してやれる。私が望んで、私が見えた世界なのだ。この身体の隅々にまで生きて居る者達を全て引っ張り出して良いとすら思える。そうして戦うの。心の中でも、現実の世界でも。この身体を動かして、あの日教えてくれた天使達の動きを真似し…いいや「ものにして」動くんだよ。


「やはりお前らは兄弟だな…嗚呼、これだから止められないんだよ。」

頭か何処か、とりあえず何かを叩く音がした。乾いたパンという音だ。嗚呼どちらかと言えばぺちってちょっと高めのふにゃった音にも聞き捉えた気がするが、まぁ気のせいだろう。あと日本語が付いて行かない。え?元からだって?煩い煩い!あ!!調子戻って来た!

「くっ、ははっ!はっはっぶぶっ、くっくっくっくっく」

そう笑いをこらえていた人が吹き出してはまた笑いを堪える様にするものだから、その場所を振り返る。其処には、金髪のかなり長い髪の毛の男性が組んでいたであろう腕を緩め、片手で口元に手を少しだけ当てるように笑っていた姿が見えた。長髪の長さは、大体腰元程度、か?下手したらそれ以上かもしれない。

誰だろう?神様エヴァ様天使様?そう思っているとまぁ大体正解かな?と声が聞こえる。

「やぁ、維持をこよなく愛する者よ。僕の名前は”アンドラーシュ”」
『混濁者?』
「いいや、位置付けで言うならば君と同じ”融解者”の方だ。太古に生きていた神々にはそれぞれ役割として文字を付与されていた。僕は君と仲がそれとなりに良かったからね。」

こうして面白い君のお守やゲフンゲフン…んんっ…君のことが気がかりでね!!!
絶対お前私のこと魂由来から面白い処探し当ててはネタにするつもりだろ。

「っはははは!!そ〜んなこ〜〜〜とあ〜〜〜るわけないだろーーーー!?!?」
『此処まで目を見て嘘付かれたら一周回って私は好きだよお前のことが。』
「おおおお!そりゃあ良かった!僕も嫌われて蹴られると動きにくくて仕方がないからね!」

まぁ今の現状を言うね?

かなり昔から君達人間でも特に天使や神々に気に入られた種族が生きていた。元は人間だってことは忘れないで欲しい。君らは選ばれた。まぁ正確には僕もそのうちの一人だけどね?若干話がそれやすいのはご愛敬ってね?嗚呼では戻すよ。その気に入られていた種族が君の血筋ノヴァーリスで、力を持つ者達はノヴァと呼ばれていた。

ノヴァ・ネラは全ての力を知り得る、もっとも神々いいや…天使に近しい人間の者だ。

君らで例えるならばそうだな…アンドロイド!後は食品サンプルとかどうかな?あれらは非常に人間の声も形にも近しくなれるが、中身は結局違うものだ。食品サンプルなんて滅茶苦茶食べれるように見えても、実際は色や形を模したものだけに過ぎない。食べれるサンプルなんて、結局意味がない。だってサンプルを作るのは腐敗しない意味も含んでいるからだ。勿論他にも理由はあるだろうけどね?

最も近しいが、結局は人間なんだよ。僕達は神様になれたとしても、天使になんてなれない。なんなら最も遠い場所に位置していると言っても過言ではないくらいだ。彼等は消滅出来ても、僕らは出来ない。そう言った仕組みに組み込まれている種族が、ノヴァーリスなんだからね。

『じゃあ永遠とこの戦いを繰り返すってこと?それって変わらない維持をするためだけに?』
「いいや話を続けるよ。とりあえず聞いてくれないかな。」

分かったそう頭を縦に振る。本当にいい子なのだ。だからこそ、アンドラーシュは出て来た。いや正確には出てこられた、が正しい。素直な子程、本質まで綺麗に見ようとしてくれる。そして、理解し、その打開策を講じてくれる。

ノヴァーリスは願いを一つ抱くと同時に力を貰える。攻撃、防御、回復。本来はその三つどれかの力を一つだけ得られる。とは言っても願いの限度やら濃度。後は血族によって変化する。もっと言えば本来最も天使に近いようで遠い存在なんだから、全部出来て当然なんだけどね。蘇生だってお手のもの、だし。まぁ故に危機感を感じ取った天使らが僕らを過って殺してしまったんだけどね。

そう、誤って殺してしまったことから、この物語は始まったんだよ。

覚醒石と封印石は切っても切れない存在だ。これはもう言うならば「天使からの呪い」を付与されていると言っても過言ではないだろう。人間から切り取られる代わりに、力を得られる。そしてその力で人間としての感覚を維持しつつ、力を増大しては落ち着かせる波を作る。そしたら人間の感情に酷く似ているからね。一定にするのはまだ良いが、時間を留め、綺麗に動かなくなった者。

それが堕ちた者だ。

堕ちた者達の効果は絶大だ。此処に入ったら封印石の効果はまずない。もう討伐一択になる。救い出すなんてことは出来る訳がない…のが、通常通りの歯車。

「だが、今回の件で少々希望が見えかくれしている。」
『希望が?』
「通常ではない、異常をきたしているんだよ。」

これが好機なのだ。本来堕ちた者達は言葉が話せない処か、そもそも獣と化し、体内の中に居る化け物が綺麗に肉体諸共食い散らかし、自我を持つ者だ。要は物語の登場人物が現実に居る自分を乗っ取り活動し始めることだ。その現象が「堕ちた」という状態なんだが…それはあくまでも物語に居る者達でなければならない。そう100%ね。

けれども見れば彼等は全くと言っても良い程人間の状態を綺麗に保っている。一応言っておくが、ローズやシトリンだけでなく、ノエマやノエシスのことも言っているんだからね?何だったらノエマとノエシスは元々融解者であったんだよ。

「太古の神々αの称号を持っていた非常に優秀な逸材だったのに…」
『まるでガラスみたい』
「え?」
『だってガラスは綺麗。綺麗な形故に、一度崩れたら元に戻すどころか使い物にならない。それどころか手を怪我するから箒で払って綺麗にゴミ箱の中に入れないと。』
「…ほんと、君は凄いね。」
『なにがだよ』
「おまえがだよ」

そう返してくれる処好きだよ。
ありがとねほんと。僕も好きだよ。

「ま、そんな軽いおふざけは置いておくとして、だ。」

化け物を分離した君が培ったそのデータを、彼等は共有しているに違いない。まぁ化け物・改と名付けたらいいのだろうかね?今迄みたいに消滅なんてさせようとしても無駄になった。確かに死ねないとは言うけれども君が想像していた殺したら種になるあの神々と同じ様な位置だと思ってくれて構わない。確か純環の定理者?嗚呼華樹神の方だったかな。良く分からないけれどもね。

本来はその種になる位置に、だったんだけどね。今回で綺麗に分断されたことにより、化け物と本人二人を同時攻撃しないと殺せない状態となってしまった。これが極めて面倒でね。同時に殺すというのも惜しい。ならば浄化しようというのが僕の提案だし

「君もそう思っている筈だ。だってそうだろう?お前はその陽だまりを「もう一度」繰り返したいと望んでいるのだから。」

そう言ってアンドラーシュは都結の胸元に指をトンと突いてみた。

「だろ?」
『…勿論。彼等が何かになるならば。別に厭わないよ。』
「それが彼等の望まぬことだとしても、か。ほんと君は残酷な人だね。」
『今も昔も?』
「嗚呼勿論…変わるなんてないよ。」

同じ世界に走り、辿り着いては笑って消えて居なくなる。それの繰り返しをする子。嬉しそうに笑って、本なんて読まずに外を走り回っていた子。元気いっぱいで、陽だまりの下でしか知らない息なんて忘れて走り続けていた子。大きく手を振って、此方に来ては引きずり出して巻き込んでいた子。

随分と臆病になったものだ。

「僕の望みはただ一つ。君達の望みを叶えたい。ただそれだけだ。」
『じゃあ貴方の望みは?』
「え?」
『私が貴方の望みを叶えたいと望んだら…そしたら、そしたらどうなる?』

ねぇ、どうなると思う?

そう突いていた指を手でぎゅっと握り締めて言う都結。ひし形の奥は、何かで蠢いている。でも、それは間違いなく、人の手や望みとかではない。たった一つポツンと誰かが生きていた。座り込んでいた。その姿を、アンドラーシュは知っていた。ぞわりと背筋に何かが伝わった。その意味をアンドラーシュは知っている。だから笑ってしまった。怖くなったのか?それとも、

「…嗚呼、どうなるだろうね?やってみるかい?」
『いいよ』
「望みを捨てる形になるが?」
『皆が笑うならば。』
「お前は元々笑えないから、戻るだけだと?」
『そうだよ。』

いいでしょ?そう言った都結に、嗚呼と答えた。

「本来ノヴァ・ネラは選ばれし12名で構成され、その感情が凝縮された一つの個体になった者だ。」
『私ノヴァ・ネラになれるとかなったとかほざいていたようななかったような。』
「まぁ可能性はあるが、確かになっているか、と聞かれたら微妙な位置ではあるな。」

だが、故に完成されていると言っても良い。

「まぁとは言っても力があるのも元素らの誘導尋問ぶった切ってるだけだけどな!!!」
『んなああああああ!!!』

ずっこける都結に、いやーと笑って頭をかく彼。だってそうだろー!?と言っているが、笑顔から何から何まで平然として言うんだから、本当に調子が狂う。マジでコイツ嫌なキャラ枠だなおい。不思議ちゃんか?紫か?偏見だろと思っていたら、…強ち間違いじゃないんだよなぁ。なんて低い声が聞こえて来た。待って気のせい?気のせいか。気のせいってことに致しますね?僕。

「さ、流石にそろそろ限界か。元の場所に戻すよ。」
『は!?急に!??!?!』
「言っておくけど君の力はヒントは既に出ている。応えは君が、」

出すべきだ。

そう言った直後だった、首を絞められている状態から突き飛ばされた。ゲホゲホと咽ていると、身体をそっと撫でてくれる。声が上からした。

「…遅れてしまい、申し訳ありません。」
「モヒイト、任せられるな?」
「御意に」

シドラが戦ってくれるのだろうが、恐らく勝ち目はない。ソレを分かっているのだろう。どうした?震えているぞ?と煽られる。

「貴様らの行為は許すことは出来んからな。」
「ほー?優柔不断なりし神で」
「…わしの優柔不断な所はわしが一番懸念しているが、」
『私ね、モヒイトさん。好きなキャラコルン様やサワアさんって言ってたじゃん。』

あれ、カモフラージュだったんだよね。

「はい?え、というか何を今更そのような…」

私好きなんだよね。迷える人って。だってそれってさ、アレでしょ?全ての事象を想像出来る人ってことでしょう?どちらにも得があるし、使い道によってはかなりの打撃に持ち越せる。だから維持する。だから保管する。だから捨てたくない。だから見て居たいと思うんだよ。それは間違っていないし、きっとそれこそが正解なんだよ。

ーシドラ様のことをですか?あのー…正気です?
ーえーでもいいじゃん。シドラ様私超好きだよ。いや流石にずっと優柔不断はきついだろうけれども。
ーじゃあ言わないで下さいよ。こっちがどれ程苦労していることやら。ってなんでそんなニヤニヤして見つめてくるんですか。
ーえ〜〜?いや〜お兄さんも面白いな〜と。

『私やっぱりシドラ様好きだよ。』

沢山の事象を瞬時に感知し、そして沢山の結末を紐解いていく破壊神。そんなものが、その様なお人を敵になんて回したら…もう、勝ち目なんて無いのはこっちのセリフなんだよ。お前らに勝ち目なんてない。何処にもないんだ。ギラギラと睨みつけた者が、視界から消えていた。見えたのは、ローズの背後だったから。

ぎょっとした彼等に対し、笑った人は、二人だけだった。


『だって決めたら想像以上の速さで喰らい付けるのだから。』

「それこそが、わしの本質。」

ニヤリと笑った彼が勢いよく殴りつけ、叩き込む。流石に直では、とモヒイトが防御を取るも、都結が動くに腕の力を強く入れいけませんと声を荒げた。

「何するつもりですか!」
『参加する。』
「っ!!…叱られたいのですか。」
『別にいいよ。叱られたっていい。殴っ』

そう言ったら本気で殴って来た。それも頭を、だ。一応血が出ていたんだがな。それに気付いたのか、ひゅっと声がする。煽ったこっちがわるいので別に問題はない、というか

「貴方血が…」
『おっと、眠らせたらどうなるか分かるよね?今興奮状態なの。』
「…っ、」
『いい子だね。流石は彼のお子。』
「……処罰ものですよ。」
『いいよ。』

私は協定を組んだから。
は?一体誰と、

『”アンドラーシュ”』

その言葉で都結の身体から数名の光が周囲から飛んで行った。二つはローズの上に、少々身体が傾いて引けている気がするのは、恐らく気のせいではない。冷や汗が垂れ流されていた。ローズがノエシス様?と声をかけているが、ごくりと生唾を呑み込んでいる。

片手を上に上げ、内側に曲げてやる。まるで其処に獣がいるかのように。そして、その形は露わになった。大きな獣が、ぐるぐると音を立てている。世界はずるり、とむけてしまう。それはブドウの皮みたいに。

『いこう』
「御意」

その言葉一つで、誰かの声が聞こえた。煩い何故お前が、と焦る彼の上から攻撃が降りかかって来た。直撃を免れたのは、瞬時に剣を作ったからだろう。剣を合わせ、声をだす。金色の男性が、モヒイトの目には映っていた。視界には背中しか見えない。

「っ、何故貴方が此処に!!!!」
「それは此方のセリフだよ。だから僕は言ったんだ。”過ぎた真似は呪いに変わる”なんてね。」

言っても聞かないなら、実力を振るうまで!!そう言った声で、距離をとった彼に対し、勢いをつけ、ノエシスが距離を稼ぐ。その間ローズが背後に入ろうとしたその時だった。

「ローズ避けろ駄目だ!!!」

その言葉通りに、後ろに回った彼が綺麗に剣を横に切り払った。その眼には、スペードが印されていて。カチャリと音を立て、”標に則り”と声が続く。逃げようとする彼らに、させるか、と続々後援が入って来た。他の宇宙からこうまで速いことはなかった。一体何が、とふと思った。そう言えばこの指輪、私なら、何を…付与、する?

「…ご明察通りですよ。」

たらりと冷や汗が垂れる。喉唾なんて呑み込む感覚すら分からなくなるくらい、気付いた時は喉唾なんて呑み込んでいた後のことだと知る。

「”過の者逸脱堕ちし覇者を”」
『やめろ!!!』

その言葉で陣が消える。捕えていた者達が舌打ちをして瞬時に消えて居なくなった。何をと反論をした者達が止まる。その視界に入っていたのは、グルグルと音を立て、今にも誰彼構わず攻撃をしかけようとした化け物が見えた。

『分かっている…分かってるよ。それは怖いって言うんだよ。化け物よ』
「都結さん…」
『焦るな。まだ欠片は完成していない。全てに置いて中途半端な状態でぶち当たりこの機会を逃す等言語道断』

そうだろう?私よ。全く知らない、記憶の欠片よ。

『はっ…なら徹底的に、とことん、もうこれでもかって言うくらいには…追いかけ続けてやる。』

人を怒らせるとどうなるか、見ていておいて欲しい。









泡沫の白昼夢


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