残響響く、それは夢幻のように7



前回のまとめ

都結がブチ切れた。


いや、普通は温厚な子が怒らせると怖いとは言う。だがそれはその事象によりけりであって。都結の場合は自分に対してならば例え侮辱行為だとしても平然ととるし、なんならそれはそうだと納得させてまでくる始末。だが、彼女が怒らないという訳ではない。怒りを鎮めさせるというよりも「怒りの方向性を捻じ曲げた」だけでなく更に付け加え「怒りそのものを知らないようにする」というものなのだ。目を向ける方向を素早く切り替えるだけ。

そう、それだけなので、向けた先が悪かった。そして、その相手も、今回は悪かった。

頭を打ったことが原因だと各々言うが、天使らもそれは生唾を呑み込みそう思った。今回外に出て行ったのは本当に全員らしい。もう都結を留める精神内の味方等何処にも居やしないのだろう。胡坐をかき、頭を包帯グルグル巻きにした状態で深く唸り地図を目の前にペンをクルクルと回しては目の前にいる子に話しかける。

「現在はこんな状態。此処が拠点此処が今回の修羅場。」
『はー…アゲート首都は何処』
「あ、え、えと…こ、此処だ。以前第9や第8ら連れて行ったところだな。」
『あー後は聖堂だろアレ何処だ。』
「恐らくこっちかと。以前使っていた処での回復でしょうし、貴方の場合血筋と加えて魂由来の転生ですからね。」
『あの、さ。前にあったじゃん、えーーーとなんだ。』

嗚呼出てこない・・!そうトントンと頭を叩いた後手を叩き叫ぶ。エフェメラルの妹枠であるエヴァネセントの話だ。彼女が願いを言った地域や範囲を赤で囲んで欲しいと言って彼、アンドラーシュにペンを渡した。地図に手を置いた処が若干波打ったことに舌打ちを零す。いや、ほんと、もう…

「(滅茶苦茶に切れてますね)」
『切れるに決まってんだろざけんな』

うわぁ。

なんて声が聞こえて来る。かなりぴりついて、いや、本当にイラついている。此処まで怒らせるとは、本当に喧嘩を売る相手を間違えていると思う。しかもこの苛立ち、通常のイライラだったら方向性を間違える処だが、この子の場合怒りの制御そのものを調整し続けていたが、故に。かなり冷静に、かつその組み立ても確実にしていっている。

地図を何枚も用意させ、現在アンドラーシュと協力し、アゲートに声をかけ、外に出た者達全員を招集させている。この会場は王室前の会議室だった。机?椅子?嗚呼そんなもの邪魔と言って都結が軽く外に振り払って現在外側は可哀想なことになっている。其処ら辺粗くなるのか。風通し良いからいいだろ酸素入るしなんて言っているが、通常の冷静さは恐らく一かけらも残されていない。

「大体古い円は此処。」
「何故行ってもないのに分かる。」
「昔から建設の場所は決められていたからね。」
『どうせあれだろ?血筋を守る為にまずは己から。自我に叩き込み深く掘り巡らせ、埋め立て隠してただけだろ。だから動きは全て分かる。だって掘っていた処を綺麗に取り除けばいいだけなのだから。』
「道筋を固定化概念として植え付けた、と言って欲しいね。」
「いやどっちも駄目だろお前ら」

そう冷静に応えるアゲートが可哀想である。彼も胡坐をかいては二人の間から声をかける。都結からして地図を正面として向かって左側から声をかけた彼の顔は疲弊していた。それに対して都結は至って平然だった。いや寧ろ怒っていた方がずっとマシだった。というか今すぐ怒って冷静さをもっと事欠いて欲しいとさえ願う始末だ。…切れたらいけない処を切っていきやがった。マジで責任とれよ、とロウは冷や汗を垂れ流しながら遠くからその状態を見ていた。

『で?これがあれか。』
「そ、青い方が移動後、赤い方が移動前。」
「嗚呼諸範囲内に入っていますね。」
『チッ』
「これ舌打ちしない。いい加減になさいよ。」

ギロリと下から上を見る都結に、目を細め威嚇するコルン。ふっと笑った後、まぁ程々にはという。腹の内が本当に見えない…内心を探ったら恐らく目を付けられるし、こういう時は何もしない方が吉である。モヒイトらは応援に来たはいいものの、帰る手段を見失っていた。というか、彼女をこのまま放置する、というのも気が引けたのだ。暴走しかねないというかほぼ半分暴走している。少なくとも近くにいる化け物がグルグルと音を立てて怖がっている界王神が多い。

「はあ…でしたらあの子を鎮めさせてください。」
『おすわり』
「してますが」
『…お前”いいかげんにしいよ”』

そう言えばきゅんと変な音がする。よく見たら身体を丸め震えあがっていた。目は開いて、でも口元は笑っている。…嗚呼、ブチ切れている。

『…いうことをきいちょきよ、またころされるがは、いややろう?』

嗚呼それともなにか?目の前で殺されたい?そう言って剣を作り出し頭の寸で留める。

『恐怖を改めて覚えろ。今回は確実に、明確に、その身に慣らし続けては耐えるんじゃあない。もうその段階は裕に外れた位置にいる。知れ、何処までも広い範囲を知り尽くせ。息を吸って吐いて、そうして見えてくる者を整理し、息をひそめる練習をしろつってんだよ。いい加減分かれ貴様は俺の化け物なんだろう?なぁ?』

この私を?ああ?喰らう?はっ!もう浅はかなことを抜かして笑えるわ!!!!

『…この私を喰らってものにしたいならば、お前は私以上の存在であらなければならない。』

恐怖を知れ、怒りを知れ、喜怒哀楽全ての範囲を知り尽くしてしまえ。私は生憎、もうお前の位置に居ないだからこそ、お前から切り取り綺麗に外せるように出来たんだ。生半可な努力じゃあ、済まされないぞ?

『恐れ慄けひれ伏せよ?この私こそが永遠とも見紛う者を追いかけ続けるに相応しい存在なのだから。』


その位置を喰らう?はっ、なら喰らえるならば喰らえよ。どうせお前の腸を引きずり回して遊び散らかすまでのこと。


『喰らっても良いが、その先お前はそのままで居られるかな?』


私が今度はお前を喰らってやる。


『…ま、話を戻すか。』
「誰が戻せるか。どれ程怒り狂ってるんだよ。ちったー落ち着け。」
『落ち着いた落ち着いた♡♡♡僕正常〜〜〜♡♡』
「正常な人間は少なくとも其処迄綺麗にしませんよ。あと舌打ちしない。」


だが、そのおかげか化け物もグルグルと怒りの音を立てなくなった。まぁ鼻息が荒く、一部は犠牲になっているが、仕方がないということにしよう。

「それで、何を企てようと?」
『エフェメラル確かお前が願った所は東側だったよな?』
「え?ええ」
『じゃあ私達は西側を拠点とするか。アゲート此処の城の主って元々誰だったの。』
「え、嗚呼いやまぁ辿ればそりゃエヴァネセントらだろうが、それは」
『じゃあエヴァネセントとエフェメラルらが此処で管轄するか。』

おい話を聞けよという彼に聞いてると答え起き上がる。聞いてないというのに、周りももう少し落ち着けと言い出すのでじゃあと答える。あんまりこういった話は言わないようにしていたんだけどなぁ、と付け加えて、だ。

『聞くけど私が此処の主だとしてだ。今回のやることは?』
「は?嗚呼いや、奴等の討伐だろ?」
『違う、浄化だよ。浄化。彼等の堕ちたものを引きずり上げるんだよ。』
「はあ?!?!?!?!?!?」

んなの出来る訳ねぇだろうがという彼に、いや可能になりましたと言ったのは地図の前に座っていたアンドラーシュだ。立ち上がった二人の顔を見上げるように答える。

「化け物と人間が分裂していますから、同時浄化をすれば救いようはあるかと。」
「一つではいけないのですか?」
「一見一つの方が浄化できると思いますが、その状態は全てが複雑に絡まった状態。」
「嗚呼二つに分けられたことで大分雑くではあるが、解けているから戻せる、と。」
「そう言う事ですね。」
「だとしても無理だろうが!!!」

そう否定するアゲートに、いいやできると言い切る都結。

『だって君言ったろ?』
「何を」
『物語という絶対的な否定を。』
「…いやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!!」

お前まさかアレか!?物語の中に奴らを入れる魂胆か!?!?!?
いやや、そんな〜生易しいこと私が出来る訳!
は?

『私はまぁただ〜……【ちょと同じ様に廻ってくれたらそれだけでいいんだけどな?】』
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!!!!」
「何が怖いんでしょうか…?イマイチ話が掴めないのですが。」
「知らない方が賢明かと。」

そう聞いて来たシンにウイスが答える。都結が言いたいのは物語の中に彼らを封じるなんて生易しいことなど考えるに値しないと言いたいのだ。そう、物語になんていれさせやしない。浄化と言うのも建前であって、その化け物痛みを苦しみを伴いながら活かしていくというのだ。絶対に殺させない。もう生き地獄の他ならない。だから奴らも引いたのだろう。このまま攻撃しなかったらいいのだが…そう言う訳にもいかないらしい。

やる分には徹底的に。がモットーな都結。それ故一度浄化する、となったらこっちから仕掛けるのだ。まさか追われる側が今度は追う側に転移するとは、誰も想像ついていないことである。様子を伺いに大神官がやって来たレベルだ。随分と怒られてますねと平然とした態度を取る彼に、目もくれない。

「何をなされておいでで?」
「実は…」
「嗚呼それは賢明な判断ですね。」

やられたらやり返す。倍返しだ!って奴ですね。
いや恨み妬みを買って返して碌なこと無いと知っているでしょうに。

「もう話を聞いてくれる隙がないのでお父様」
「ふふ、別に止めなくて良いと思いますがねー」
「え?」
「多分今組手したら結構伸びると思いますよ?試しにしてやりましょうか。」

気晴らしもあるでしょうし。そう言って粗方の指示が終わりそうになったところで大神官が声をかけた。

「都結さん、今からお時間ありますか?」

組手、久しぶりにお相手して差し上げましょう。


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そう言った彼の通りになった。

秒で物にする。もう今迄の悪態ついた時間は何だったのか、というレベルにまで、である。とにかく身体にというか、魂に刻み込み、相手をする。身体の振り方、勢い、流れをコツを掴み応用を切り替え動くキレは段違いで。息なんてしない。でも、冷静さは事欠かない。

「実に良い。その状態を維持するよう心掛けなさい。」
『御意。ありがとうございました。』
「いえいえ。」

深く礼をした後、振り返り、スッと息を吐いては繰り返し動きを回す。すると、何処かから水の流れが飛んでくる。都結が呼び寄せたのだろう。揺らぐ炎がふっと消えた。その時だった。

「(これは、すごい)」

彼女の動きで水だけでない、炎が燃えながら周りを回っていた。それに続き、風も入り、土埃も周りを回りだしてきた。四つの光がグルグルと彼女の周りを回り続け、彼女も何かを唱えている。それは、言い聞かせるようにも聞こえた。火・水・土・風と繰り返し元素の言葉を言っていたのだ。

くるりと一回転した後、どんと足を降ろした。身体の周りにあったもの達は綺麗に何処かへ消えた。まるで煙のように、夢、いや幻を見させられていたみたいだ。

「…まるで幻影使いだな」
「嗚呼なんだかしっくりきますねその響き。」
『私解熱剤とか嫌なんだけど』
「「幻影です幻影」」

貴方本当にどういう耳をしてるんですか。
お兄さんお兄さん。こういうお耳してるんです。
いだだだだだっこれ!!私の耳を引っ張るんじゃないですよ!!!
大丈夫大丈夫、痛みなんてないでしょお兄さん。

人が優しくしているのにと怒るコルンに都結は鼻で笑っている。ほんと、色んな姿が見えるものだ。それもこれも、彼女が大事に大事にしていたことだからであって。

「アンドラーシュさん」
「ん?なんだい?」
「その浄化というのは具体的にどのようなことを?」
「まぁ深く言うと何処で聞いているかは分からないから言えないが、とりあえず言葉の通りと言っておこう。」

それに都結が言うように、後二人もいないから、というのもある。今はダイヤとスペードの枠に位置する者しかいないが、ハートとクローバーの管轄がどうやらいる様で…?

「太古の神々は此処まで不完全ではなかったんだけどねぇ〜如何せん仕事しなかったというか、見られなかったから。」
「すみません、此方の不手際で。」
「いやいや、とんでもない。こっちだって不安定だったから任せたくとも任せられなかっただろうからね。」
「お気遣い痛み入ります。」
「とんでもない。」

なんだかとんでもない言葉が飛び交っているような気がする。そう思いながらも都結は足を運んだ。順調かい?と言ったアンドラーシュに至って良好と答える。

『感情の波、思考の幅、視界に映る者、行動、それら全て一定に保てるようになった。後は動きの纏まり。でも余り型に入ると癖になって面倒だから波がある以上はその場で判断したことを貫き通すまでだね。』
「其処迄コントロール出来たら上等だよ。流石はθに選ばれてただけおっと」
「θ?どういうことですか。」

嗚呼余り言う事ではないけどね、

「紹介しようか。彼女は太古の神々に位置していた者。θに属する融解者の一人だよ。」

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「融解者?」
「混濁者はエフェメラルらだっけ?それぞれ生きていた者達を混ぜ合わせた者だと聞いているし、実際その通りだ。混濁者自体は元々いるんだけどね。そいつが周りの子達を巻きこんでいく感じ。まぁいわばハリケーンみたいなものか。融解者は溶かすから、また違うけどね。」
「ですがそれは彼女が転生する以前の話ですよね?」
「嗚呼其処が原因だからね。薄々気付いているとは思うだろうけど、この惑星らは太古の神々が創り出したものだ。存在出来ているのは、そう言った契りを契約を付与しているから故のこと。」
「では我々破壊神らが幾ら破壊をなそうとしても」
「恐らく無理だろうね。」

現に天使らでさえ、この惑星を見逃していたのだ。遠くからだと見えないし、近くに行っても確認出来るかと言われたらはっきり断言など出来ない。それくらいに曖昧な処だったのに、加えて人も曖昧と来たら話にならない。破壊をしたくとも、物がはっきり見えて物質を崩壊させにいかないと、である。そもそも触れられないような曖昧な状態で破壊したらそれこそ当たらなかった方が恐ろしいというものだ。最悪時間を巻き戻さねばならなくなる。

出来るだけ時間を巻き戻すことは防ぎたい。数も限られているからね。

『うし、大体の調整終わり。後は維持あるのみ、か。』
「そうですね、それ程扱えるようになれたらば、後は戦況を読み続けるのみでしょうからね。そう言った訓練もしますか?」
『出来れば。』
「でしたら久しぶりに皆さん不定期に集まって戦いますか。」

模擬戦みたいなものだ。まぁ破壊神と界王神のタッグを組み、尚且つ攻撃の仕方を制限すれば別に支障はない。それに万が一のことも考慮し、最悪止めればいいだけのことだ。其処迄難しくはないし、以前もしていた時だってなくもなかった。とは言ってもそれでも一対一程度。チーム戦はしたこともないのだが。

面白そうだからという話で続けていく。この時間が、マグマのように煮えたぎっていた怒りが静まっていく。ふうと息を吐いて居れば、落ち着いてきましたか?と声をかけて来た。大神官だ。全くもう、皆してそう言うのだ。私は怒っていないというのに。

「充分ブチ切れていましたよ。」
『怒ってないよー』
「怒ってはいませんでしたね。きれていましたし。」
『怒らせたい?』
「いえいえ、とんでもない。…ですが嬉しかったですよ。」
『なんでまた』
「貴方がそうまでして、私達のことを見て下さっていたから。」

そうでもないと、貴方は見向きもしない。そうでしょう?そう言った大神官にはお手上げである。両手を上げ降参のポーズを示せばクツクツ笑われてしまう。全く持って遺憾であるが、それに興ずるのも、また良いというものだ。とりあえずひとまず西側に拠点も構える方針だ。浄化を続ける、というか、この街並みを復興するのも、また一つの仕事だったのだ。

出来れば一人で、と言いたいところだったのだが…ちらりと見てしまえばうん?と目をぱちくりして首を傾げ此方を見てくれる。嗚呼もう…惑星なのだから各宇宙の方針に、と則って行きたかったが、管轄がこっちに回って来た為に、だ。もう本当に策士なのは一体何方なのだろうか?少なくとも絶対私ではないと私は断言できるのだがな。こいつらはそう言わないから困ったもので。

『はぁ……はらいたい』
「おや生理ですか?」
『そうサラッと言える様になった間柄で私は嬉しいですよー』
「ふふ、それは良かったですね。」

それで、温かいものはいりますか?
いりますね。あと三日くらい寝ます。
はいはい、分かりましたよ。


一先ずエフェメラルら一行を召喚している状態には変わりないが、いずれにせよ作戦はこうだ。

まず東側と西側で分ける。そして、化け物と人間で分断し、一定の距離に位置させたまま、同時に攻撃する。アゲートは都結の方に来る。そうでもしないと面倒だと言った。本人が、そうこの場合アゲートではなく、都結自身が、だ。それには意外だなとビルスが声を上げた。

「君こういう時は知り合いを引き剥がしてでも動こうとするでしょ。」
『今回の件ではソレをすると思考の邪魔になるからね。』
「サラッと貶しましたね?」

まぁ今更な話である。分断した後、同時に叩けばソレが終わり。文字通り消滅、否正確には次の魂へと移り変わることが出来る。晴れてお役御免と言う処だ。呪いの縁から解放してやるというのが浄化の本来行いたいところなのだ。まぁ殺すには変わりないが、それはそれ、これはこれ、である。いずれにせよ殺すには変わりないが、タイミング重視。

「今回程種族が集まったことは?」
「まぁまずないな。俺が生きて居る間からしても、恐らくお前達の父親が生きて居る間にも、だ。」
「彼の仰る通りですよ。でなければ私が動きますからね。」
『ま、それもそうか。だってあれでしょ?ある意味大神官様らを殺せるんだから脅威として対応しとかないと何時寝首ぶったたいてくるか分からないもんね?』
「ぶっ」

そうですね。まぁその言い方は別として、間違ってはいませんよ。
でしょーーーーー私天才。
天才かどうかはちょっと流石に
びええええええ

「ですがやることはほぼ復興作業でしょう?そんな戦闘を目前にすることではないと思うのですが…って何ですかその調子こいた顔は」
『じゃ聞くけどさ、お兄さんや。君は怪我をした状態で本領発揮出来る?』
「出来る訳ないでしょう。負傷しているのですから。なにをば…」
『そ。この惑星自体の力を利用し、ぶっ叩く。』

考えたのだ。水の力や火の力を通して、巡る中で。以前本を貰った時のことを思い出した。お前ではないといけない、と。呪われるというのは、恐らく自分の血族が作った力での作用。ならばその本自体が、自分らの故郷であるとしたら?確か三セットあった筈だ。あれでも使ったのは一つのセットのみ。そして一度書かれていた形跡のものもあった。実は書かれていた形跡の物は外していた。

そして、もう一つの本は綺麗に消されていたのだが、うっすらと書かれていた。もしもこの本の三セット自体が「三回忌」だとしたら?三度目こそが、力の終着点、だとしたら?何も書かれていなかった状態の本に描いたもの達。消滅するに値する者達。それら全てが、徐々に近づいて行く。まるで地球が自転し、ゆっくりと太陽の周りをまわる様に。ゆっくりと物語が進んでいく。

一度目が神々と約束をした時。これが太古の神々である位置だ。恐らく此処がアゲートの記憶と一致する。そして次がエヴァネセントとエフェメラルらが生きていた時間だ。そして三度目が、私の居る位置、という処。本が受け継がれていっていたいや「本が転生ごとに増えてしまっていた」としたら話が分かるのだ。だが、此処で問題が発生する。

何故15冊なのだろうか?まだ12冊なら分かる。エヴァ・ネラも12名の構成だし、惑星やら何やらも12を構成としている。栞の数、と言ってもあれだって最終的に5名だったが、この感じ的には恐らく最終的な数は5ではなさそうな予感はしている。まぁ仮に5だとしても、何故三倍なのだというのもあるし。

数さえ何かが分かれば、もう少しなのだ。ハートとクローバー、ダイヤ、そしてスペードと言ったひし形にも位置する程の4つも指示される。全てが違っている世界なようで、意外と纏まったものだった。この物語はいったい「いつおわる」のだろうか?全く持って想像がつかないのが、恐ろしい処なのかもしれない。

『ということである程度の復興はする。とは言っても流石に自分一人で、とは時間が無理。なの、で。』

お願いしますね、皆さん。

『記憶には残されていませんが、いずれにせよ私の血族が巡り廻って貴方方のご迷惑をお掛けすることになりますが。』

どうか、お力添え頂く存じ上げます。

私を助けて。どうかお願いなんて、手放すことなどしないから。

その手を取って、そして最後まで駆け抜けたいと思うからこそ。

私は頭を下げた。

『お願いします』

そう言った後、数秒後、仕方がないですね〜と声が上がる。頭をそうも下げられては、そう近づいたことで頭を上げた。嬉しそうに、微笑み少し身体を曲げ、笑って言ってくれた。

「ご期待に沿えるよう、尽力致しましょう。…と、言うことで、構いませんよねぇ?お父様。」
『…!』
「ええ、皆さん分かりましたね?」

腹心になられるお方の、ご要望とあらば、手を貸さない訳にはいかない。そう言った大神官に各々が頭を下げる。ぺこりと頭を下げた。此処から反撃行為とすることになった。さて、どう出るか。

どう手を出すか、だ。







泡沫の白昼夢


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