残響響く、それは夢幻のように8
と、言う訳で、だ。
『ふう、粗方調整は出来たか。』
それ以降、本当に寝込んでいた都結が回復したのは一週間が過ぎ去ったあとのこと。その間ひたすら蹲っては指示を出して苦しみを耐え忍んでいた。それ程痛いのかと軽々しく口にした破壊神には天使らが軽くあしらっているが、本当に都結が大神官様の正妻に、となりそうというかほぼなっていると知って驚く者達。
気軽に扱えないと思うが、それでも彼女がそう望むならば、普通に接してやる迄のこと。何だかんだ言って、今の破壊神達は温厚だと思う。以前までの破壊神らはもっと適当で、尚且つ考えずに動いていた。まぁ泳がせていれば自分達が其処迄相手しなくてもいいので、ね。それでも力は以前大昔にあった大戦程よりはない。
ソレで良かった。ソレが良かった。だが、今回でそう言う話が、出来なくなった。
遥か昔、宇宙がまだ出来上がった頃の話。神々がまだ、種族から引き抜いていた時の時代での、話。結ばれていた契りや契約が破棄され、血の降り注ぐ戦いが繰り広げられていた時期があった。その時からの生まれ変わりが、ローズやシトリンらだった。アゲート自体はエフェメラルらが生きていた時の兄弟だったらしく、その血も残されているから故、彼等を余り敵対として見れない。
漬け込まれるのもということで、外した方が良いという話も入ったくらいだ。実際モヒイトらが駆け付ける時はちょっとヒヤッとした状態だったのは確かで、あのアゲートが髪を黒く染め上げ、息を荒げ、都結の方を睨んでいたのだ。明らか様子がおかしかったのと、都結自体ぐったりしていたので、何かしらの反応があったのは事実で。
まぁその後彼等の中で何かが分かったのだろう、ダイヤとスペードの印が浮かび上がっては消えてを繰り返していた。勿論援護に続々と入って行った神々らもその姿は見ている。実際立ち向かったシドラもはっきり言えた。アレは勝てん。だが、逆に勝てないからこそ強く意思を持って立ち向かって分かったことがあった。
「奴等は精神攻撃に非常に弱いと見た。」
「精神攻撃?」
「いつもは優柔不断だが、あの時はやると決めたからなぁ。」
それでも彼らを殺すなんてことは出来なかったし、都結が止めたから、というのもあって手を止めたこともある。おかげ様で不完全燃焼な神々がため息を吐きつつも、復興作業の手伝いをしていた。こうしてみたらただのボランティア活動での一環にしか見えないが、一応この惑星自体を回復している状態と大差ないと都結が言っているので、する以外ないというか、しないと勝ち目がないとまでいい切ったのでする以外の選択肢などないのだ。
「だがシドラ。お前勝ち目ないって分かってたんだろ?何故其処迄いい切って前に出たんだ。下手したらこっちが死んでた可能性だって充分あるだろう。」
「いやそれはない。」
「あ?なんでだよリキール。」
「考えてもみろ。相手は自分らが使いたい力を秘めている者だぞ?それも願いが唯一と言っても良い程叶えられる神々に選ばれた者。早々殺す訳にはいかない。」
「あくまでも暴走させ、周りの奴らを巻き込み力を蓄えさせると見た。」
其処にシドラが怒りを持ったところだ。そんなことをして、何が起きるというのだろうか、と。心が優しいが故の、怒りだ。そして、都結は言った。
「ですが面白いこともある者ですよねぇ〜まさか都結さんがシドラ様を最も恐れているとは。」
「あいつがか?」
「わしをか?」
「ええ。同じだから、と。」
「アレと同じ優しいか???」
まぁ間違ってはいないだろう、と思っている。今回の件で、ソレが確定となっただけのことだが。モヒイトは知っていた。都結と少しだけでも暮らしていて、彼女の精神や、その心持ちが。シドラのことを好きだと言っていたのも、自分の立ち位置に非常に似ていたからこそ。そして、
「見た目では衰えている様に見える。ご老人のことを労わるばかり、優しく力を抜く若者と同じ原理ですよ。力を使い方を知っている者こそが、恐怖に値する者。一見優しそうに見えた者こそが、一番自分に害をなす時、恐ろしいものだ、と彼女はよくご自身に言い聞かせておられましたから。」
「とんでもないバケモンを飼っているが故か?」
「それとはまた別問題っぽそうでしたがね。」
「じゃがわしはあそこ迄怒ったことないと思うが…」
それはお前が忘れてるからだろうが。ため息交じりにロウが答える。どうやら前科は何度もあるらしい。破壊しろと言っても破壊しない破壊神が恐ろしいとは、これ如何に、と思う処。とは言っても他に怖い奴とかいるのかと聞いたら、今度は嗚呼居りますよとコニックが答えた。
誰だとキテラが言えば、んと言って手を前に出す。俺か!?そう言ったキテラに、ええとコニックが答えた。作業は続行しているままだ。
「彼女曰く”一滴の何事もない小石を投げ入れ周りをかき混ぜ破壊していくタイプ”だろうから少なくとも敵だったら即叩きに行くと。」
「俺味方で良かった。」
「全くですね。それは此方も断言できますね。」
ゲームだときちんとした作戦だったりは難しく、よく癇癪を起していた都結だが、それが功を奏したのか、今回の作戦は実に良い調子ではあった。まるで作られているかのように…いや、下手したらそうなのかもしれない。彼女がそう思っているからこそ、何処かの世界では自分達が物語の中として、見られている。そうまるで
「なんだかマトリョーシカみたいですね」
「まと、なんだそれ。」
「同じような形を徐々に小さくさせ、ソレを纏めて居れている人形ですよ。開けたら同じ形の人形が出て来て、それをまた開けると同じものが、と続いて行くものです。」
「それ最後はどうなるんだ?何か入っているのか。」
「いいえ入っていませんよ。同じ人形が出来るだけ小さくなるまでなって入っているだけです。」
「面白いのか?」
「そこは分かりかねましたので、なんとも。」
そんなどうでもいい話が流れつつも、今やっているのは至って単純だった。瓦礫を崩し、ある程度の広さが出来れば元々あった形に近づけ、土や石を砕き交ぜ、壁を補修し、屋根まで綺麗に纏め上げていく。気を使い、周りのある植物らに声をかければ、本当に手伝ってくれる。都結が頼み込んでいるとは言っていたが、此処まで協力的だとは思わなかった。
ありがとうございます、そう天使らが言えばびくりと驚いた蔦がちょっとしたらくねくねと動き出した…い、一応喜んでいるのだろう。出来るだけ穏便にしたいのだが。嬉しそうに喜んだ子が、まさかの勢いのある子だった。ぶわり、何処からともなく蔦を葉を呼び寄せ、周りの壁やら材質を埋め尽くしたではないか。
流石にやり過ぎだと思ったが、どうもこの土地自体がそういう場所、らしく。都結の暮らしていた処も割と緑豊かな処だったが、向こうは草原、ヨーロッパ的な感じに仕上がっているが、こっちは何方かというと中国風に近いというべきか。竹林やら、家屋の屋根やら階数が少ない家が多い。中も土間で、明らか靴を脱いで活動する処も多く見えた。
「…本当に一瞬で終わりますね。」
「俺達の手間は居るのか?これ。」
「まぁ本人曰く”行動で示せ”と言っていましたから、一応しといてい、みがな、いわ、けで…は、な、い……かと。」
わっせ!わっせ!よいせ!よいせ!と小さな木の人形が動き出す。声を上げて、皆やってくれたぞ!という声におお!と声が上がる。いやもう、おとぎの話でもそうそうない現象が今目の前に繰り広げられている。直径大体30p前後の人形がそれぞれ手を上げ、土を持ち、蔦を貼り合わせ、破壊神らが手伝わなくとも作り上げられていく。
が、手を留めない方がいいですぞ。と言ったのは一緒に戦い、そして加勢してきていた第10宇宙のゴワスだった。彼もまた手を留めず木枠を作りは此方を見て話をする。その時だけしか手を留めない。話をするだけで、だ。
「彼等は我々の心までも見通し、力添えしてくれておられる。それに案外可愛らしい処がある。」
わー!やたー!そんな声が聞こえる。…流石に思いたくはないが、都結の精神がこういっているのでは、と思ってすぐにキテラは考えるのを止めた。確かに物語の中に出入りできる力は良いと思う。逃げれる場所が増えるのはいいが、だがそれは本を燃やされたりしたら二度と元の世界に戻れないのでは、という袋のネズミになり得ることでもあることで。
だが、その物語から別の世界に、とドンドン違う世界に飛び立って…いつの間にか元の世界に戻っていたら?都結が以前描いていた絵を見たことがあるが、その中でもエフェメラルの設定は異常なまでに細かく、そして彼女自体の設定が多すぎて理解出来なかった。しなくていいと言い切った彼女の言葉は覚えている。
ー理解しなくていいよ?理解出来ないようにしているのだから。
まるで理解されたら終わりかのように言う彼女だが、実際そうだったのだろう。生きていた人間なんて信じたくなくて。彼らが生きていた。死んでしまったなんて認知したくなくて。ならば最初から生まれていないことにしてしまえばいいと、最初から物語の人間だったのだ、と考えればいい、なんて思うだろうか?普通。思うだろうか?
そうして現実を見つめた時、果たして彼女は笑っているのだろうか。いいや、きっと笑えない。ある意味逃げだ。生きていたことを理解出来ない弱い人間の末路なんて、大抵決まって自害し、死んでいるのが結末なのだ。だが、それを覆す為に、都結は生き延びている。現に彼女は最終的にエフェメラルが元々生きていたという事実に打ちひしがれたとしても、今はそんな辛そうに見えない。
まぁ見えないようにしているというならば話が別だが、だとしても見えないように包み隠せるということは、それなりの技量は必要になってくる。ブチ切れた所を見るのも怖かったが、一番はその見据えたことが的確だった、というのも。そして、その物語での逃げ道が確実だった、というのも怖い処だった。
コニックが一番存在して居たら怖いのはなんだと聞いて答えたのが「やはり華樹の廻廊ですかね」と答えた。物語の話を聞いたが、本当に面白いと言えば面白い話だったので、試しに聞いてみたのだ。興味がおありで?と聞けばいいやと答えるしかない。何方かと言えばキテラは本を読むよりも実際身体で動き、如何に楽をするかを考え動く時間そのものが好きなのだ。
ー廻廊の一部にはIFの間がありまして、回復する為だけにその世界に飛べるというものです。最終的に戻って来られるかどうかは明確ではありませんでしたがね。
ー…確かにそれは怖いな。
無理矢理時の指輪が無限生成されかねん代物だった。確かにその管轄は怖い。とは言っても、時空やら時間をそもそも持つ人間だったらしく、まぁそれならそっちの管轄で切って貰えたら、とは思う。だとしても人間が増殖する同じものが分裂してしまう、というのが時の指輪。世界が増えては消して、を繰り返されるのはちょっとこっちも嫌な感じがする。
ーですが、やはり恐ろしかったのはその願いの癖ですかね。
ー癖?
ーええ、物語の人間は皆決まり決まって己の願いではなく、誰かの為にという願いに起因していました。
通常だったら自分の願い。例えばお菓子が食べたいなら食べれば満足する。自分がという願いならば、満足してそれで終わる。が、それで力が成せている訳ではない。それも種が勝手に、主の道標になるように様々な場所に散って、宿主の元に飛んで行くのだ。誰が選ばれるか分からない人間ロシアンルーレットである。下手に願えば即魔女になんて恐ろし過ぎる話である。
その種も、決まっている者。願いを言えるだろう者を見つけては宿主に宿り、そしてその願いを精神をエネルギーにして成長していき、そうして最終的には神様として選ばれる華を咲かせるというものだ。その神様は、やがて願いを維持し、止めて枯らす。そうして出てくる光こそが、天使の卵、というシステムを想像した彼女の想像力も豊かで素晴らしいものだったが、その動きが怖かった。
考えても見て欲しい。種は自在に飛んで行く。誰に宿るか分からない。でもそれは「決まった人を見付けていた」ので、でもその瞬間は彼女等選ばれた者達は「願いを言っていない」のである。そう、願いを言って力になるのは種が植えられている「後」の話。最初から見つけるということは、それ即ち「魂由来の導きに種が引き寄せられた」ということ。
そしてその因果が、現実として存在している事実だ。
都結が想像したことが、今回のケースで行けば魂由来の三回忌と直結しても大差ないだろう。他の者達を巻き込み転生させている以上、この繰り返しが破棄されるとすれば3つ。1つは願いを叶えること。だが叶えた者は消滅し、それどころか跡形も消えてなくなり、この世の世界から本当に消え去ってしまうことになる。願った者というよりも、願った者と、その相手二人諸共だ。片方がではないのが恐ろしい話である。
もう一つは願いを断ち切ることだ。今回のケースはこれを目標に活動していたのだが、正直これが上手くいくことは恐らくないと都結自体が断言したし、なんなら出て来たアンドラーシュ自体もそう言うのだ。
で、最後の一つ。これが今回の作戦。
そう、物語丸ごと、保管する、ということだ。
「にしても考えましたよね。まさかこの現実世界をそっくりそのまま物語の一部分に仕立て上げる、とは。」
「まぁ本当に出来上がっているのが現実に見えているので…ねぇ。」
大神官が保管しているあの書庫に眠らせていた書物一式、それも舞台は一番最初の世界を引っ張り出して来ていた。どうも都結の考えは大当たりなようで、彼女らの血族は本に起因する。つまり神々らに選ばれし者達は命が繋がっている本さえ燃やせば綺麗に消滅するのだとか。
その本を浄化する、というのが今回の作戦だ。
浄化の仕方は至って簡単。本を見つけ、その当人を本の中におびき寄せる。そして本の中で終いを付け、出て来て封印し、本の端から端まで綺麗に装飾をし直してしまうものだ。新しい本に移動させると古びた所がバレる。というわけで、本を見つけ、その本とそっくりな状態に、この現実世界を書き換えている処が、現状である。
都結の作戦は非常に練度が高かった。この惑星自体が協力的だというのもあるが、本を読み込んだ彼女の想像力は遥か上。この惑星を元の状態に戻し、そしてその状態で戦い現実と本の中の区別を曖昧にさせ、引きずり込んでは自分だけ外れ、戻るという、一度ミスったらこっちが保管され、記憶やら状態全てが書き換えられる始末なのを、彼女は理解しているのだろうか?
まぁ言ったら大神官は怒った。流石に危険すぎると、それは天使らも同じこと。勿論都結は分かった上で言った。そうでもしないと適当に勝手にやったらもっと怒ると思ったから。それはそうだ。当然のこと。だが、彼女はいい切った。そうなれるように、仕組んでいるのだと。
周りの者達は見なくて良い。自分だけの逃げ道があるのだろう。実際いつか終わるだろう物語だってそうだった。此方の世界に移動しかねない話だったし、恐らくそう言ったルートを彼女自体作る様に仕向けているのだろう。だから何処で迷い込んだとしても、いずれは戻って来れる、ということだ。その間どれ程の長い時間がかかることか、彼女は知らないから、そう言えるのだろう。
それは自分達が永遠とも言える時間に生きれるからこそ。
だが、都結自体は違う。彼女は曲がりなりにも人間で。幾ら血筋が力が物を言ったとしても、それはあくまでも脳の誤認に過ぎない。それ故、使い過ぎは禁物。ローズら自体と言うか、最早願いを交わしたであろうノエシスとの契約はほぼ叶わないに等しいというか、だ。
「そもそもアイツら何を契約し交わしたんだ?」
「そう言われてみれば確かに…」
「契りを交わすということはそれ相応の対価が支払われたから故のこと…彼女のことですし、今も昔も変わらず〜なんて言ったら大体その方の何かを綺麗に救いとってしまったんでしょうね。」
例えばそう
「我々のように」
嗚呼しかねない。そう周りが頭を抱えて唸る。手伝っていた木の人形らが身体を曲げて困っている。一部の人形は天使らに顔を向けていたので、苦笑いを零してやるしか出来なかった。確かに都結のことだ。どうせ助けるのは当然だ、とかいい切ったに違いないし、流石にそれはいけないと押し切るのも同意できる。
なら都結が悪いと言われたらまぁ悪くも見える。が、それが本当であったとしても、タイミングが悪かったのではなかろうか、と思う。願いをずっと続けて維持なんて早々簡単に出来るものではない。執着に近しい感情を抱き続けなければ理想は程遠い場所に位置してしまう。それでも、その遠くからでも、眺め続けられることが出来たならば。
それは地球から月を眺め続け夜風に当たり待ち続ける子のように。
きっと、願いは叶ってしまうことだろう。例え願いを叶えたくないと縋る程に強く望んでしまっていたとしても。始まりがあれば終わりがくる。人生そういう仕組みなのだから致し方がない。
気付けば世界は元通りになっていた。
彼女の力が増幅されている証拠で、未だハートとクローバーの存在は見えない。一週間くまなく探しても、その姿は見えなかった。その書庫に眠っている本に、と狙いを定めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『他の物語を書いてたかどうかだぁ??????』
「え、ええ…」
何か思い出しませんか?
んーーーーーあーーーーーーー
『ないと言えばないし、あるといえばある。』
「何ですかその絶妙な答えは。」
『いや〜、物語を完結させましたって言う話だったらない。でも物語を中途半端に止めて来た、という話ならあるってこと。』
一応お尋ねしますが、その話が此方に起因することは?
まぁまず間違いなくないだろうね。
「何故そう断言できるのですか?」
『作りがそもそも違うから。片方は人間から天使の状態を作ったまぁ所謂人造人間(天使ver.)と言った話。力の話ではないし、あれはその後抜け出してる。もう一つは人間ではあるが、封印していたものを解除してしまっちゃったお転婆女子の回収話。』
嗚呼でもこっちなら可能性は無きにしも非ずだけどーーーんーーーー
どうしたんですか。
『…嗚呼いや、それ…一応天使が管轄してたって設定にしちゃってて、ですね。封印変に解除したら動物になってその子の傍から離れられなくなるって設定でして。』
「貴方なんつうもんをご想像してるんですか。」
いやーだってーあることないこと書くのおもろいからほらーーー因みにその子のお相手コルン様です。
よし、ひとまず聞かなかったことに致しますね。
『だから何の話よ。』
「要はハートやクローバーの位置におられる方々は別の物語からの派生では?ということをお尋ねしたいのですよ。」
「ウイスですか」
「どうも。」
あれから夜になった頃合い。まだ頭の傷は癒えていない処か、偶に血が滲む状態の為、都結自体は要安静を言い渡されていた。風呂も体温が上がらないように調整するしかない。一度大丈夫だろーと思って入ったら普通に全身血だらけみたいになってぶっ倒れたし、普通に後でクスに怒られた。マジであれはごめんて工藤。
それ以降本当に天使の目が離れなくなったし、なんなら子によっては滅茶苦茶近いというかほぼ抱き上げてる状態で話をしなければいけなくなった。もうなんでこうなった。
「貴方がそう要らぬことをしでかすからでしょうが。あと余計な策を考えない。全部筒抜けですからね???」
「お父様にお叱りを受けても知りませんよ?私らカバーできる範囲が限られているのでね。」
『んむーーーーーーーーーーーーーーーー』
そう唇を尖がらせても意味がない。ため息を吐いたコルンにお疲れ様ですとウイスが困っても反応を返した。後を頼みますよと言った後、おやと出合い頭にサワアと会話をしていた。そんな中、ちらりとウイスと眼が合う。ぱっと貝殻の人形を作り合げもふもふと遊んでは身体を揺らす。
余り揺らしてはいけませんと肩を掴まれた。はぁいと言って横になるしかない。誰かが何かを話している。嗚呼、このまま皆此処に居れたらいいのに、なんて思うがそれだと私は嫌なのだ。こうして話を戦いが出るのも、きっともうすぐだ。そしてその後は?
ふと、目を閉じたらふわりと良い匂いがした。ケーキが焼き上がったような、そして甘い匂いが。蜂蜜のような、甘ったるい匂いがした。其処が続ければよかった。出来ればそのまま食べ終えて、彼と何の話をしようとしていたのだろうか?其処の続きなんて、私は嫌だったから、彼を遠ざけてしまったのだろうか。
この左手にはあの人の匂いがある。左手を鼻に摺り寄せて匂いを嗅ごうとする。そしたら何処か花の匂いがするのだ。シャボン玉のようなふわり柔らかい匂いだ。太陽に当たった少しだけ焦げ臭いような匂いも混じって鬱陶しくなる。あの中途半端な匂いが、私は好きだった。
貴方の傍に居たいのに、きっとずっと居れない今だからこそ、私は生きて居られる。願わくば、貴方の腕の中で眠り続けたいというのに。きっとその時は
『(微睡んで溶けて無くなれたらどれ程良いだろうか)』
そしたら私は何も心配なんてせずに安らかに寝れるというのに。
都結はそのまま目を開けないまま、夜を明かそうとした。