残響響く、それは夢幻のように9
それでも目は覚める。
貴方に会う、そんな夢の中に。
「おや、これが夢だと本気でお思いに?」
『…だとしたらどうする?それとも物語の中に居る、とかだったら。』
「それでもお会いできるならば。それだけで構いませんよ。」
嗚呼狡い。そうやって突き放すんだ。私は其処迄縋っていませんって、そうして距離を保って中立の立場に戻ろうとする。少しでも多くの人間の目を欺く為に。そして私を守る為に。彼はそうやっていうのだ。ソレを分かっているから、私は苦しくなる。息の仕方を時々忘れてしまう。
貴方を見ないまま、忘れて生きれたらどれ程良いだろうか?それでもきっとこの心は何処か落ち着かなくて、きっと貴方を探す旅に出かけてしまうことだろう。もしも出会わなくたって、誰かを好きになっていたって。きっと気付けば貴方を追い求めているに違いなかった。それは今貴方を知っているから、言えることなのかもしれない。
頬に手を当て、そのまま横髪をなぞる。すっと流れるようになぞってこっちを見ていることに気づき、向いた。ふっと笑って軽く触れてくる。触れる度に目を閉じて、その時間が長くなっていく。この時間が好きだ。繋がっていると感じる、この時間が好き。この誰も見ていないであろう、暗闇の中で、二人きりになれる時間が。
何時の間に好きな部屋に戻って来ていたのだろうか?彼らが居る状態では此方になんて戻って来れない。そして、私は一体何時からこの部屋を大事にしていたのだろうか?誰も知らない、そう貴方だけが知っている場所。
ねぇ守っているよ?私。貴方と一緒に。過ごすその日の為だけに。
その言葉が伝わったのか、私も嬉しいですよと答えが返ってくる。
「なによりも」
ああ、それだけでいい。もう、何一つだって要らない。
貴方がこの場所に居る。もう、それだけで、いいのに。
夜風が当たる。カーテンが広がって、世界を変えた。目の色が変わる。世界は小さな部屋に切り替わった。嗚呼これ夢の中だと瞬時に思える。貴方と共に、ケーキと紅茶を合わせ鏡のようにして、月夜の楽しみをしている。昼間ではない、夜の、中で。月が傾いている。もう時刻は過ぎ去っている。ドクドクと心臓の音がなっていれたらよかった。そしたら現実だって分かるのに。
なのにいくら胸に手を当てたって、音はしなかった。
「***」
『嗚呼、』
貴方の声が聞こえない。貴方の手も、声も、何もかもが、分からなくなっていく。紐がぐじゃぐじゃに絡まり合って、そのままどろりと溶けていく。止めて欲しい。私の願いを、連れて行かないで欲しい。こんなの、辛い。いっそのこと貴方に出会わなければ
『…いや、違う。』
貴方に会わない世界になんて、私は生きれなかった。
貴方に会ったから、私はこんなにも世界を広く見て居られるのだから。
『…ね、もしも、もしも。』
貴方に私がお願いをしたら、貴方は叶えてくれる?そう言ったら、勿論だと声が混じって聞こえる。まるで何かの音声が途切れたように、ズレて反応が返ってくる。電波が合わないような音だ。こんな真正面にいるのに、相手をしているのはただのラジオなのだろうか?と言える程に、音が籠った上に、雑音が入り混じっているように聞こえた。
貴方の音すらも、よく分からない。もう、名前も…そして、私の想いだって。
擦り合わせに合わせた挙句、もう何が何だかよく分からない。ソレで良いのかもしれない。この中にだけ、貴方が居て、嗚呼でも、それでも私はそれでもあの場所に生きて居る貴方に、会ってそしてそれで、えと、たしか…ど、
『…どう、するんだっけ?』
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ばさりと音を立てた。はて、彼女が起きるのはまだ早いが、ひょっとしたら寝違えたのかもしれない。ノックを入れ、部屋に入った。失礼しますと言って入った先には、
「ーーーー、」
誰もいなかった。
すぐに杖を召喚し、伝える言葉に、命令が下った。
ー一刻も早く彼女を探しなさい。
それは当たり前のことだった。
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そんな中、行方不明になっていた彼女が発見されたのは結構早い段階だった。報告を聞きつけた三時間後くらいに発見された。場所は惑星内に留まっては、いた。だが…その場所が、場所だった。
「帰りましょう」
見つけたのは大神官だった。書庫の中に入り、本の話をしたらば、入り方を特別に教えて貰い、一つ本の中に入って見付けたのだ。彼女に渡したであろう指輪も、そしてその首元に付けられたチョーカーも彼女のもので間違いなかった。ただ、その眼の色は変わっていて。
嬉しそうに笑っている。月明かりが綺麗だった。
「月が綺麗ですね」
『私には見えません』
そうですか、なんて言えたら良かった。月を見ていた目が離れない。彼女の顔を見たくなんてなかった。でも、と声が聞こえた。柔らかいいつも通りの声だったから、振り返った。その眼は月明かりに照らされ、こっちを見ていた。
『だって私には眼鏡がないから』
「っ、」
『私の眼鏡返せよごら』
「はっ」
も、それ今、いいます?笑い出してしまった大神官に、都結もクスクスと笑ってしまう。一体どうして此方に?と聞けば、ハートやクローバーを探す旅に出ていたのだそう。しかもこっそりと、ではなく感覚で誘われたらしく、本人自体どう帰っていいか困り切っていたのだとか。それで此方の場所に。
『此処にずっと居たら来てくれると思ってたから』
「皆さん探してましたからね。見つけたコルンさんがとんでもない声出してきましたよ?」
『あんれま後で謝らないと。』
此処まで精神的に思ったらすぐに迷い込んじゃえる程にまで、力が強まっている。封印石は何時使ったかと問えば、最近使っていなかったと言った。アゲートもだが、割と疲れているのか、あの戦い以降其処迄力を制御しなくなっているのが少々怖い処ではあった。後で他の子にも連絡を、と考えていると、身体に抱き着いている力が弱まった。
迷子になって、それでもこの場所に辿り着けるようにまで、その身に刷り込ませている。その力を使って、この子を操作しようとしているのだろうか?彼女は気付いたら、なんて言うがこの状態で気付いたら移動出来る程、力を持っている訳がない。それに絶対安静中でもあるのだ。まだ包帯なんて取れない筈なのに、剥がれている。
触ればどろりと血の跡がついた。まて、今何と言った。力を…
「っ!!!都結さん、貴方!!!」
『あは、きづいちゃった?』
「こっ、の…!」
力を使ったのだ。そう、力を使い続け、彷徨い続け、此処に辿り着いたということだ。身体の血肉が血流が一定に動き続けるそれは熱を帯びる、ということ。熱を一定に保ちすぎるのは良くない。それは血流が流れが良くなるということに直結する。ただでさえ体力は付いたところでも他と比べて身体が弱いのには変わらないというのに。
血流を良くすれば、固まって止まっていた処も一度剥がれたら止まりにくくなるし、剥がれ易くなることくらい分かり切っていた。だから彼女も使用しなかった。今良くすること自体を防いでいるというのに、逆効果で塞いでいたであろう場所が露わになってしまうから。それでも使ってしまった。此処に来る為だけに。
まぁやったことに後悔も何もないのは分からなくはない。そうしなければ此処に辿り着けなかったのだろう。ぐったりと力を抜いて来ていたのは、身体を保つのが辛くなったのだろう。だとしてもダメだ、今眠らせたら起きなくなる。眠いの、という彼女にいけませんと強めに声を張って言う。確かに身体を委ねてくれるのは大変嬉しいことこの上ないが、それでも気を失うことがどれ程恐ろしいことか、彼女は分かってくれないだろう。
「貴方今寝たらただじゃおきませんからね!」
『いいよ、それで』
「っ、貴方が良くとも…私らは、…いいえ、少なくとも私は。例え物語の中でも、夢の中だったとしても嫌ですからね?」
最初にあった時、本当にこれ程まで阿呆な人間がこの世に存在するのか、とさえ思えた。それに漬け込まれた自分も、また阿呆だな、とさえ。今では思っているが、此処まで来た以上、誰が引き下がるか、と変なプライドが出てくる。例え貴方が嫌だと言っても、その本心は嫌じゃない以上、引き下がるわけにはいかない。
あの暗闇に灯された一つ灯りの中でのひと時も
あの日陰の下で風に頬を撫でられ談笑したひと時も
あの帰って来たであろう時間から新しい時間を迎えようとしたあの時間すらも
私は貴方が大事にしてくれたことを、漸く理解して、やっと手に取ろうとしているというのに。
それでも貴方はその遠い先に行こうとするならば。
その手を掴んで引き込んでしまうというのに。だが、
もしも、その裏の声が同じならば、その時は
「(その時は)」
貴方の記憶ごと、私自らがその記憶を綺麗に浄化し切ってしまったというのに。
それだけだった。愛だの恋だのはもう、懲り懲りだから。そうしてひょっとしたら幾つもの人間に恋をしては消し去っているのかもしれない。そうして生き延びて来ただけだと言ったら、この子は初めてではないと言ったら、どういう反応を返すだろうか?嗚呼でもきっと、答えは一つだ。
貴方はきっと、私の幸を遠くから見つめてくれる人。
こんな薄汚い感情なんぞ今すぐにでも捨て去りたい。と、一心不乱にその感情を切り刻み、消し去って貴方の前に見せたくないと必死扱いて誤魔化し生きていると知ったら、貴方は一体どんな顔をするんでしょう?私と一緒だ、なんてふはっと吹き出すように笑ってくれることだろう。
それがどれ程私の心を楽にしてくれていることか。
「ね、帰りましょう。こんな寒空の中では」
『寝てもいいの?』
「それは駄目です」
抱き上げてしまう。出来るだけ動かさずに、そう動き出す中、ちらりと見えた。未だ温かそうな紅茶やケーキに少しだけ目を向けたが、それはそのままの方が良かった。だからこうして帰って来てくれた。
貴方が満足してくれていないから、私の元に帰って来てくれた。
それが何よりも、辛かった。
大神官は踵を返し、扉のドアを開けて外に出た。外は白い世界で満ち溢れていて。
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コツコツと音がなり、誰だと思って振り返ろうとした時。ふと血の匂いを感じ、ばっと振り返った。そこには大神官が都結を抱き上げ歩いて来ていたのだ。お父様と言って急ぎ駆け寄ったが、うつらうつらとしていた都結の姿にぎょっとした。以前戦った時に負傷した場所から同じ様に血がべったりと出て固まっていたのだ。通りで血の匂いが酷い訳だ。
嗚呼と声を上げる。たらりと冷や汗が垂れ、喉唾を呑み込んで返答を返したのは第二宇宙の天使サワアだった。丁度ヘレスと合流したばかりの頃、声をひっと上げた彼女が顔を青ざめるのも無理はなかった。冷静にとにかく落ち着いて話を聞こうと思い声をかけた。ヘレスは一言も喋らず、都結の様子を眺めて居た。そうした方がいい。事情を聞いてから声を出せばいいのだから。
「サワアさんでしたか。」
「一体何があったのですか…」
「少々力を使って抜け出して来ていたようです。彼等の仕業と見ていますが…」
「どういう状態かは、不明だ、と。」
都結を抱き上げようとしたがそうしなくていい、という風に真っすぐ歩き出した大神官に、そのまま後ろをついて行くしかなかった。サワアはそのまま歩き続け、ええと答えた彼の後に声をかける。ヘレスにちらり目を向けた後、こくりと首を縦に振って反対方向に走って行った。これで破壊神らの集合は近くなるだろう。そう安堵しつつも、サワアはか弱い声に気付き目を開き、声の方に顔を向けた。
『どこ?』
「都結さん、サワアさんですよ。」
「サワアですよ都結さん。分かりますかね?此方は貴方が住んでいる城内ですよ。今廊下です。」
『さああ』
「サワアさん」
「はい、なんでしょう?」
「出来るだけ彼女に声をかけてやってくださいませんか?」
ちょっと出血が多く、今寝かせると暫く起きそうになくて。
分かりました。
「っふふ、お眠さんですか?」
『んあ』
「お父様の腕の中で気持ち良さそうですね?」
『ん、ねてい?』
「駄目ですね〜」
『じゃ、おめめ瞑るのは?』
「それも駄目ですね〜ほら、お目目開けて下さい。ほらほら」
『っふふふふふふふ』
あ〜お目目閉じちゃいましたね〜?と言ったサワアにそんなことしてないよーととぼける都結。本当ですか?なんて声をかけていると、サワアが前を向いた。目の色が変わる。複数の音が聞こえて来た。顔を動かすのが辛いので、そのままで居ると、声をかけた後にサワアの元に近づいて来た。どうやら顔を動かしたくないのが分かったらしい。視界に入って来たのはヴァドスやコニックさんだった。
「っ、」
「まぁ、」
『こばわ、ねてい?』
「だから駄目ですってば」
『えへへへへへ』
「サワアさん其方は…」
「いえ私ではなく」
「私が見つけて参りました。」
「お父様一体何時から」
「私が発見してすぐでしたね。ひょっとしたらもう少し手前から、という可能性もあります。あの時は無風でしたからね。」
一応他の子達には捜索を中断させて来て下さい。そう言った彼には、と短く声を切って動いたのはサワアとコニックだ。ヴァドスは都結の手を握って一緒に歩いてくれている。ふわりと浮かび上がり、此方を覗き込んでくれた。嬉しい。そう思ってもう片方の手を伸ばしては、大神官の服を掴んだ。それに気付いた彼が此方を見てくれる。
それだけで良かった。
きゅっと掴んだ手を強く握りしめた。それでも彼女がきっと痛いとは言わないくらいの強さだ。触れるくらいの弱さがきちんと握った程度。大きなお城の中で一人綺麗におめかしして。貴方に迎えに来てくれて、幸せに暮らせる世界。きっと良い世界だ。一体何時目覚めてしまうのかな。なんて未だに到着地点の不安を拭い去ろうと一心不乱に考えてる。
結末なんて変わらないのに。
ねぇ、私の言葉を整えてよ。貴方は賢いのでしょう?綺麗に纏めて直してよ。そうしたら貴方の知る言葉になれるならば。私なんて要らない要らなくて良い。そう思ってた、そう思って遠くから眺めて居た。誰もいないからその場に座ってみた。其処が居心地よくなってしまった。何処にも行きたくなくなってしまって、此処から離れた先を見たくなくなった。もっと臆病になってしまった。
だから来てくれて本当に嬉しかった。
私をあの場所から連れ出してありがとう。もうすぐで終わる。きっと、この世界は巡り廻って、世界を戻って行く。目を細めてしまえばいけませんよ、と声が降ってくるもんだから、少し顔を上げて止めた。鎖骨辺りの肩に頭を置いていたから。目を向けるだけで良いと気付いたから。
「まだ力は使わないで下さい。出来れば二週間程安静に。」
『でも』
「その間に治してしまいましょう?」
部屋に付きましたよと言った彼が前を向く。ざわついていた声がぴたりと止んだ。音が掠れる音がする。絨毯がふわふわだからだ。此間丁寧に掃除したから。
「安心なさい。少々力を使って傷口が開いただけですよ。誰かからの負傷ではありません。」
「…そ、うで、すか」
ですから、気を鎮めなさい。コルンさん。
そう言えば、良かった。と、安堵の息を吐き切ったコルン。頬が冷たくなるから身体が反射的にびくりと反応した。誰かと思ったが、恐らく声の順番的にはコルンだろう。そっと頬に手を置かれるもんだから、触れて来た手の方が冷たくて目を閉じてしまったのは許して欲しい。反射的に、だ。だから反射的にだって。いーーーやマジでこれは許して欲しい。サワアと小さな声を上げた。先程の約束を破ったからだ。ふはっと笑った後はいはいと近寄ってくる声に口が開いてしまう。
「それくらい大丈夫ですよ〜」
『ふは』
「余り笑うのはよろしくないのでは。」
「まあ確実に笑わない方がいいですね。絶対に。」
「じゃあ駄目じゃないですか!!!!!!」
ゆっくりと創り出してくれたソファーに降ろされる。ちょっと寂しくなってか、きゅっと服を掴んでしまった。顔を赤らめ、急に動く都結に、ふふっと笑った後大丈夫ですよと声をかけてくれた。
「流石に今回は一緒に居て差し上げますから。」
『いなくていいです!!おかえろください!!!!』
冷静になったのか、それとも
少々ちくっとしますよーと言ったウイスの言葉通り、ズキンと音がして、勢いで身体が動いた。それにちょっと待って何人私の身体を留めるんだってくらいには手が身体を留めてくれる。肩だけでなく、片手を握り締めてくれる。温かい温度が伝わって、混ざり合うこの時間が嬉しいのに、痛みはそれを許してはくれない。
「ウイスさん構いませんよ、此方で抑えておきますので。」
「すみません、お願いします。」
「皆さんも」
『待って痛いからい゛』
嫌だ無理と言っても痛みなんてずっと来る。嗚呼こういうのどうやって乗り切っていたっけと思い巡らしていると、最近ご無沙汰の歯医者さんを思い出した。痛みなんて慣れていたが、頭の痛みはちょっと何度もやってるとよろしくはない。痛みに耐える為、好きなキャラの名前をポマードを唱える程に考えていた。
そう言えばエフェメラルを作り出した時、サワアやコルンの名前をひたすらに連呼して泣きながら耐えたなと思い、先程会っていた時間を思い出した。リト、と脳内で声を上げた。別に誰でも良かった。サワアやコルン、後はモヒイトとか、ウイスさんとか。嗚呼ヴァドスさんや、マルカリータとか、クスちゃんとかでも良かった。でも誰を呼んだってなんか違うって思って。最初に呼んだ声がやっぱり落ち着いた。だから手を伸ばした。
『(と、りと。ね、こわい、いたいよ、ねえりと、りとりとりと)』
貴方と過ごした時間を掻い摘んで思い出す。そうしたら不思議と痛みが和らいでいく。まるで魔法みたいだった。痛いの痛いのとんでいけ〜と言ってくれたあの日のママのように。私の痛みがはらはらとまるで触れていた葉っぱのようにふわりと風に飛ばされ何処かに飛んで行く。
りとぉ、そう涙がボロボロと零れる中、痛いですね、と声が落ちてくる。
「大丈夫、此方に居ますよ。此処に。」
『(痛い怖いでも、)』
でも、頑張りたい。そう言う声にふっと安堵の息が一つではなくて。
抑えつけていたコルンや、他に話をしていたモヒイト、後はマルカリータに、マティーヌが笑って互いに眼を合わせた後都結の方を見た。何だかんだ言って、彼女は嫌々と言うが、本心は全く持って真逆なのだ。素直で、本当に、根っから真っすぐに見ようとしてくれる。だから人は真っすぐに対応してくれるようになるのを、彼女は気付いているのだろうか?
あの忘れられられない、いつか終わるその日の時間に居た者達だって。
きっと貴方と出会えば、我々と同じ様に対応してくれたことだろうし、願わくば自分らがそのいつかに、だなんて思っているくらいだった。あれ程の和えられをお望みとあらば、何時だってしてやれる。というかお安い御用だとさえ思えた。こんな可愛らしい子が、真っすぐに見てくれるなんて、それを
大丈夫ですよ、大丈夫という声が立て続けに聞こえて来る。それは天使らが都結の言葉に反応しているから。呻き声を出し、反動で力が出てしまっても、迅速な対応で彼女の申し訳なさからくる不安を綺麗に取り除いてやる。それをきちんと分かってくれる。自分の客観的な視点を良く見て、どんな気持ちになるのかを考えようとするこの子だからこそ。落ち着きもすぐに取り戻す。
数度同じことを繰り返せば、次第に身体も落ち着いて来た。強張った力を極力緩めていく。偉い偉いと言えば調子に乗って笑うものだから笑うなとコルンが言えば流石に無理と笑ってしまう。それにつられふふとマティーヌとマルカリータは微笑んだ。
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それから暫くして、処置が完了した。包帯を巻き直し、他の痛んでいるだろう治療を、と声を上げたのは先程暴れた時に見つけたマティーヌからだった。ウイスに声をかけ、分かりましたと物を渡す。場所が場所、男性陣は席を外すと同時に緊急会議を開くらしい。出来れば行って欲しくないと思っていたら、本当に行かなかった。
「今貴方からお父様を引き剥がすなんてしたら、きっと天罰が下ってしまいましょうからね。」
本当は行っても良かった。でも、それは皆が助かるからであって、本心は行って欲しくないという気持ちが強かった。それを理解して貰わなくて良かったのに、彼女らは、彼等は意図を汲み、頷くだけ目を合わすだけ合せて捌けて行ったのだ。少し申し訳なさが募るが、その間に言ったでしょう?と声が掛かる。顔が見えた。
「傍にいる、と。」
頬に頬を合わせてくれる。目を閉じて、感じてくれる時間に、うんと答えた。温かくて胸が痛んでしまうくらいに。息がしにくい。ドキドキと心臓が嬉しそうに動いているのが分かる。きっと次第に慣れてくれるだろう。その慣れに麻痺をしてしまわないように。動いた時身体が強張って中々動かないみたいなことになったら大変だ。すぐに動いてやらないと、助かる者も助からないから。
くっついてくれたら安心するのに、離れて欲しい。それは余りくっついていることに慣れてしまったら、離れた時の痛みが強くなって耐え切れなくなってしまいそうになるから。だから傍に居るだけ、いや見ているだけでも。いっそのこと、この世界のどこかにいるかもしれないと思える程くらいで良かった。
それだけあれば私には充分だったから。
でも、彼等は、彼は。そうさせてくれない。私の欲しいものを、与えてくれる。だから”その恩を返す”までのこと。
どうか覚えてね
(私が居ることを
そしてこの私が感じたことを)