少し疲れたから貴方の隣で子守歌を1


ええ、現場からは異常です。


『来たなお前この野郎』
「都結さん、ちょっとお口が悪いですよ?そもそも彼女は女性ですから、この場合このアマが正しいかと。」
「お父様、毒されないでくれませんですますか?」

ツッコミが追い付かなくなりますですますので。そう言ったマルカリータが嘆く。現在の日付は2月17日午後20時を過ぎ去った頃合いだ。因みにうそだぁと思って一応、一応念の為、朝から見張っていた。だって明日から仕事行かなくて良くなってしまったからな。とは言っても今日行って来ましたよ。勿論午前中だけね。話はこうだった。

ちょっと製品よりも運営自体が宜しくなくて、社員は勿論全員一律で解雇となってしまうことだ。勿論今迄分のお給料は一応支払いしてくれるらしい。ただその先は難しい為、この際、というものらしい。いや潔すぎか。色々その後皆でどうするか話をした。一応アプリに友達追加はしているが、この先連絡を取り合えるか、取り合うかは未定。だってこの世界自体、私が作り上げ続けている架空の時間だから。そう思ったら怖くなったのだ。彼等の皮が化けの皮が剝がれ落ちたその瞬間から、私は死んでしまいそうで。

そんなことないのに、も関わらずだ。一応連絡は来たら返信を返したくらい。因みにどさくさに紛れて上司の連絡先もちゃっかり入手した。これで適当に返事して遊ぶということが出来る。いやしないけれどもね?しないですよーそんなーあはははははは!!!!!!

「貴方記憶は?」
「といいますと?」
「では質問を変えます。都結さんのお気に入りは?」
『おい』
「浅葱色のタオルケットでカーテンで陽を遮ってから昼寝を五分だけ堪能することですます。」
『んおい』

正解じゃねぇんだよ。何人の私情を質問にしてんだ。あと何故言う。

「おや、いけませんでした?では触れていて嬉しい処とかですかね?」
『おい馬鹿止めろお前もっと駄目だろがよ』
「ふふ」

少なくとも貴方が偽物、だなんてあり得ませんね?
そう?私こそ誰にでもなれるでしょう?
おやおや、そんな酷いことを仰るのですか。

「貴方も随分と酷いことを。」
『え?』
「貴方のような真っすぐで、でもあやふやに出来るお人はこの世界何処を探したって居りませんよ。」
『言ってること本当に分かっておられます????』

ええ勿論。

「だって貴方はーーーーーなのですから。」
『え?ごめんなんて?』
「あーーーー」
「もう言いませんよ。」

えっ待ってマジで待ってごめんて!!!そう謝り掴む都結の手をひょいと上に上げ、振り切る大神官においてかないでーーーと棒読みで喰らい付く。頭を腰につけ、引きずられていくのを、二人して楽しんでいるようにも見えた。笑いながらおやめなさいと振り返って都結の頭を手で押し剥がす大神官に、都結の口から変な声が出ては笑っているからだ。

ちょっと面食らったが、それでも嬉しかった。

そこで、もう一つの話、だ。話を戻してマルカリータが来た時刻の話。実は図っていて、何とマルカリータが来たのは19時45分だということが判明した。都結の記憶が正しければ、同じ夜の時間帯に来ていた天使達のことを考え、大体の月日と時刻が決まった。一応壁に掛けていたカレンダーに印を書き殴る。大神官が戻ることはなかった。入れ違いになることだってなかったのだ。

ということは、もう一つ問題が出た。そう、全員こっちに来た時の食費やら、生活費、だ。後は流石にこの部屋自体三人、いや四人ならまだしも、流石に五名以上は無理、だ。となれば部屋を借りる場所が増える。必然的に、家主に話を付ける日がやって来た。余りこういうことはしたくないのだが…。明日には色々事情を説明すると同時に日も決めて貰おう。

来週か、再来週には話が決定することだ。そもそも大神官が来る前に話が終わっていたことだが、ちょっと事情が変わったんでね。

一先ずやることは一つ、だ。


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『すいませんバイト入れて下さい。』
「まぁ別にいいが」
『あっ良いんだそこ。』
「そらそうだろ。」

色々事情を説明し(正確には大神官が少々強めの呼び出しをして)の部屋で作戦会議だ。勿論向こうの世界での話はしていない。彼を巻き込むのはまた違う、と言った利害の一致が都結と大神官らで合致したためである。

胡坐をかいた彼が、うーんと頭をかく。というのも、だ。まだ都結をバイトにするのはまだ良い、が、だ。大神官らはある意味不法滞在者である。戸籍を取るにしても、取れる場所がない。海外から来たとなれば渡航のパスポートが必須な上に、その法律から何からの手続きがとにかく面倒極まりない。

端的に言えば、不可能だった。就職して、というのは最早知り合いの手を借り、其処で日当を貰うくらいの手段だ。少なくともパスポートは無理。え?では何故大神官がパスポートを取れたのかって?あれでも確かに…そう言えばこういうのをミステリー小説というのだろうか?ほらいる様で居なかったそう


幻覚の類


はた、と自分の疾患を思い出した。こっちでは精神的に難しい状態に陥っていたのを、何とか復帰したもの。大学に進学するのも、結構喧嘩したのはいい思い出だった。離人症というものをご存知だろうか?自分が自分ではないと思うものだ。それに続き、薬を飲んでいたのを思い出す。発達障害というものだ。衝動的に動いて、行動し、負荷がかかる。トリップをしていた?いいや、それがもし「記憶違い」のものだったら?

大神官が渡航出来たのも、そもそも大神官を女性が持って三階のこの部屋まで戻れるか?引きずってあげるのも難しいし、その間に人が出てくる筈なのにも関わらず、出てこなかった。それは重たい荷物を持っているのを確認した、とかだったら?まぁだとしても手助け出来ていないのはちょっと…そもそも重い荷物だったらこまめに運べよとは思う話は一応この際捨てて置いて置くとしよう。

そう衝動的に動く、という疾患と同時に自身の状態が別の人間だと感じるとなれば?その重度が、大学生になる頃合いで落ち着いて、その社会に出ることも含め、部屋を借りたのは二人で生活出来るもの、そう「最初から二人で生活できるように仕組まれていた」のならば許可が出てもおかしくはなかった。

我ながらぞわりとした。だって、そもそも彼等は


『(私が見ている幻覚)』


だとしたら全ての事象が説明付くというものなのだ。記憶がない間精神病棟に入院していた、というなら分からなくはない。恐らく自傷もかなりしたんだろう。身体は綺麗なままだが、それでも治りにくい箇所は多数存在する。決して綺麗なまま、というわけでもない。ということは、これが全て自傷なら?まぁ説明が付くのだ。他人に危害が加わると一発アウトであるしな。

だが、今現在もそうか、と言われたら正直答えはNOと言える。というか、その感覚も分からない為、医者に要相談と言った処だ。嗚呼検査時妙に記憶がねぇなと思っていたらそういうことか。だが周りの話を良い様に出来たのは普通におかしいが…それも自分の睡眠時に見ていた夢幻だったらまぁ説明も付く。寝ていて目覚めたらドイツに居たのだし…?

「都結さん?どうされました?」

そう困ったように声を掛けてくれる。嗚呼心配をかけてしまった。大丈夫と言い聞かせ、作戦を考える。精神病棟に入院していたのは余り覚えていない。マルカリータらが知っているなら別に何とも、だが。杞憂だと思いたい。診察日は最近半年に一度へ変更になっていたが…そう言えば次の診察何時だったかな。

『嗚呼いや、次の診察いつだったかな、と。』
「診察?お前持病か何か持ってたのか。」
『え?嗚呼うん…?』
「どっちなんだよ。ま、別にいいけどよ。」

確かにたまーに休み入れてたが、そっちは大学の補習か何かだと思い込んでいたらしい。まぁ事実補修の後に通院していたのもあった為、強ち間違っていないのはいない。…ただ、いや考え過ぎか。大神官様やマルカリータらを見えているのは明白。触れていることも見える処、どうあがいてもこれは「現実に居る」者達ソレで間違いないだろう。

そう、現実に。

そうでないと説明がつかないのだから。

「一先ず粗方の問題は3つ。一つはそいつらの衣食住。一つはお前とそいつらの仕事。一つはその肌色くらいか。」
「肌色?それがどうかしたですますか?」
「まだクソ神官だったら問題ねぇが」
『お兄さんサラッと貶されてますけども。』
「なんだか既視感を思い起こされちゃいますねーーーー」

アゲートの面影がちらつく。強ち間違っていないのではいのだろうか、なんて思えてくる始末だが…それはそうでもなく、、、???実は都結に兄妹が居たことが本人自ら発覚した。生き別れの兄妹だし、そもそもかなり幼い頃の記憶なのでてっきり都結的には「記憶違い」であると判断していたらしい。

『でもそれ肌色は衣食住とかでいいよ。問題一つ追加。』
「んだよまだあるのか。」
『うちの家族増える可能性高くなった。というか「戻ってくる」可能性。』
「あ?」

ー都結


”お兄ちゃん”が見つかった。


それはつい先ほどのMölkomモルコムからであった。上司やら同僚の表示よりも上に通知と共に出ていた最後の欄が表示されている。モルコム!と鳴った音にマナーモードへ即切り替える。左にあるスイッチをパチンと切り替えた。何処か自分の何かも切り替わったような気がしなくもない。きっと気のせいだろう。そう、「気のせいだろう」。

えっと言った周りに、右側の電源ボタンを一度押して画面自体を切ってしまう。まずの優先順位は家族。次にきっと大家への相談だ。とは言ってもこれは少々面倒なので、後に回させて貰おう。と、言う訳で。


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現在その連絡を聞きつけた都結は、白鳥や大神官を引き連れ、とある病院にやって来ていた。一応車を出すと言ったのだが、お前の運転で俺は命を失いたくない。等と供述しやがりましたのでね、普通に引っ叩いてから来ましたよ。ええええ、だってさ、私職場にどうやって通勤してるとでもお思いで?普通にバックも出来るようになったんだよ?勿論専らナビ頼りではあるんだけれどもね。勘だよ勘。そう言ったらそれだよそれと言われた。どれだよどれ。

「んあ?随分と多い客人だね?何々結婚相手でも連れて来た???」
「んぐっ」
「これ」
『それはどうでもいいとして』

いいんだ、其処良いんだなんてぼやきが入るのをガン無視させてもらう。話が終わらないのでね。グダグダしていても仕方がないだろう。切り替えた都結は父親である彼に説明をする。

『じゃあ改めて紹介するね。”律人りつと”さん。こっちは私のお父さんで向水むこうみず俊也としなり

しゅんっても読めるから。私は時々「しゅんしゅん」とか「としなりとしとった」とか言ってるけど。
おい。
っくくく、可愛らしいではないですか。

「ご説明に上がりました、私の名前は星野ほしの律人りつとです。此方は、」
「”親戚”の黒瀬くろせ瑞樹みずきで〜す!」
「お久しぶりです向水むこうみずさん。」

あれ、其処繋がってたっけ?そう言って首を傾げた都結に、嗚呼勿論と話を切り替える。以前緊急連絡先で手渡していた電話番号を使って一度連絡を取っていたらしい。その後何度か会って、都結の仕事ぶりを聞いていたのだそう。いや過保護〜〜〜。ってそれなら持病を知っていてもなんら不思議ではないのだが、どうやら父親自らが伏せていたらしい。

「下手に持病を言ってお前の活動範囲が狭まるのだけは避けたかったからね。それに、良い人を見付けて来たようだし。」

安泰かな。そう笑った彼に、都結は盛大に首を傾げた。理解が追い付いていないだけらしい。クスクスと笑った周りにきょろきょろする。本題に入ろうかと言って画面を見せて来た。がらりと音が鳴って、背後の方を振り向いた。目の前には、先程まで一緒に居てくれていたお人が足音を立て入って来てくれた。

「昔捜索願いを出していたのを覚えてくれていたお巡りさんが偶々覚えてくれていてね。つい先日まで”誘拐ゆうかい”され無事保護してくれていたんだ。」
真琴まこと

春斗はると一緒!
ーだ〜からちげぇつってんだろうが!顔は一緒だが、俺の名前は

『…まこちゃあ』
「っ…!!!!」

ばっと見つけた途端、都結の腕を引っ張って抱き着いて来た男性に、おいと白鳥が出ようとするが、大神官が止めたことで抑えられる。何時もそうだった。そうだ、どうして忘れていたのだろうか?こんな大事な想い出を。どうして忘れてしまっていたというのだろうか?目の周りがパチパチと光が輝いて鬱陶しいことこの上ない。今大事な瞬間なのに。

いや、大事だからこそ、パチパチと光を輝かせて来てくれるのだろうか?

「っの、馬鹿。だからちげぇつってんだろうが…俺は”春斗はると”の方だってよ」

ほんと、お前。そう抱きしめる力が強まった。ふふと笑った都結に、周りも和んだ。ひと時の間抱きしめ、互いに感動の再会を果たした後のことだ。席に付いた各々に目を合わせた父親がそれでどうする?と声を出す。

「一応此方側と致しましては戸籍登録を再度作ることが可能ですよ。」
『え、今そうなってるんですか???』
「えっ、ええ。一応彼が居た処は結構面倒な集団でしたので…多分無いとは思いますが、此処まで離れていて、追ってくることを考慮すれば、いっそのこと全く違う戸籍を作るのも手かと。」

今は色々と事情を抱えた人が多く、警察や一部の市役所などの職員しか知らない手続きがあるらしい。かなり特殊な上に、知られるとその手を使って悪さをする輩も出てくるらしいのでね。成程ーーー。

「で、どうされます?此方としてはすぐに段取り取れますが。」
「…では、よろしくお願いします。」
「分かりました。こっちで働かれますか?どうせなら親御さんと」
「いえ、其処で一つご提案なのですが。」

我々もちょっと色々諸事情を抱えておりまして、現在戸籍が無い状態に等しいのです。
…おや、それはそれは。

「その点で詳しいお話をお聞かせ願っても構いませんか?」
「ええ、此処では少々…」
「分かりました。貴方も?」
「偶々見つけましてね。」

目配せをしてくれた。どうやら向こうは向こうでなんとかしてくれるらしい。ちょっと息を吐いて安堵を零す。アゲートもとい、向水むこうみず春斗はるとという名前自体はどうやら使えるらしい。彼曰く別の名前を使い、最初の方から戸籍を変えていたのだそう。とは言っても、いっそのこと真琴の方でも良いが、と言った彼には悪いが、春斗でと都結が言ったことで決定した。

乗りかかった船である。こっちには強力な味方がいるし、それに今は二人だが、全員合わせたら十三名というとんでも集団になってしまうのだから。こっちに売られた喧嘩は、それ相応の対応で。お返しするまでのこと、だ。きちんと周りを見て、何も言わない様に心掛ける。これがこの世界で生きる唯一の方法である。それを都結は良く分かっている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

事情を説明した後、家に帰れたのは日が暮れ夜も明けそうなくらいに感じる夜の九時頃だった。もうすぐで十時が来るのを気にしつつ、部屋に上がり込む。白鳥はあれから帰っている。また見に来てくれるそうだ。春斗、いやアゲートと言った都結の声がワントーン低くなる。

『久しぶり、元気してた?』
「…は、お前本当に化けの皮上手いよな。」

パンと音を立て、二人で握手をした。叩いての握手は痛かった。居たかった。会いたかった。言葉遊びで続ける本心に、笑みを零した。至って正常だ。私の心はそう、正常なのだから。

「こっちも色々あったが、一応難なく乗り越えた。今は特に何も言うことがないくらいには、な。」
『そっか、それは良かった。』
「だがこっちで暮らす、となると話は別だ。一応記憶はあるも、如何せん幼少期程度で知識は止まっているからな。」
「でしたらマルカリータさんとお勉強してもらいましょうか。」

貴方も此方の語学は習得しておられるでしょうが、まだまだ、でしょう?彼女の面倒を見て下さっていたのでしょうし。
まぁ別に構わないですますが…

「お父様はどうされるのですますか?」
「私も覚え直しはしますから、こういうのはどうでしょう?一時的に此処で暮らす。そして時期を見計らい別に引っ越すというのは。」
『いや、それはしない方がいい。』

このアパート自体が良いというのもあるが…一応もう、難しいか、と頭を乱雑に掻いたあと事情を説明した。此処のアパート自体の契約事項だ。説明したら凄い険しくなった。特に大神官の顔つきが、である。最初から死ぬ前提で動いていたのがバレちゃったのだから仕方がない。その先をどうするつもりだったのですか、と言った低い声に淡々と答えた。心臓はバクバクと内側から叩き込んで来ている。まるで其処に居るんだろう?と取り立てをしに来たみたいに。

「こんなものを良く隠しきっていましたね。」
『そら貴方が…嗚呼』
「いなくなるから?それより前でしょう?責任転換は悪い癖ですよ。」
『分かってる』
「何にも分かっておられない。」

どうしてそうすぐに切ろうとするのですか。職場もスムーズに滞りなく行っていたでしょう?そう言った彼に、そうだったらよかったと思っていた。余り職場の話はしたくもないが、其処ら辺の事情も全部話したら、とりあえずモザイクしたい顔にはなった。わあすごい。

「凄いじゃないですよ。何故人に相談せずそうやって抱え込むんですか。貴方馬鹿でしょう。」
『馬鹿ではありますね。馬鹿では。』
「大馬鹿者」
『酷いなー』

でも、一応策はある。此処のアパート実は来年以降は暮らせなくなるのだ。その間に、資金を調達、というのも考えるのは?そう言って都結が取り出したのは数冊のパンフレットだった。これは?と目を丸くして聞いて来たマルカリータに、嗚呼資料と答える。

『昔小説書いていた名残りでね。絵も描いてたから、その資料にって無理矢理こじつけてぶんどって来てたんだよ。一応職場が肝だったし、これを機に別へ移動って言うのもありではある。』
「が、金銭的に現実的ではない、と。」

そういうことだ。流石に13いや「私とアゲートを含めて15名」になるのだから。




『話はこうだ』








泡沫の白昼夢


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