少し疲れたから貴方の隣で子守歌を2



まず、今後の方針としては目標を一つ設定する。

「大神官様らと一緒に暮らす場所を作る」

その資金として、一つ提案があった。いっそのことアパートをほぼ貸切る、というものだ。とは言っても余り使わなくなったもので、尚且つ広いこういうアパートのような場所は特に探すのが面倒になる。其処で、だ。

『まず大神官様らは事情を警察に説明してきましたよね?』
「ええ、手筈通りに。」

コルンやウイスらが後々帰ってくることを考慮し、不定期に全員で大神官を含め、13名もの人間がアゲートと似たような場所に捕まっていた話を説明した。そしたら本当にその事実が裏でくっついていたらしく、まさに偶然が必然に見せかけた様な奇跡が起きた。警察はもう大神官らが別世界からのトリップ集団だという認識などしないだろう。

一応皆で話をしていたことがある。その事情は詳しく敢えて言わなかったらしいが、それでも自分の元に戻れるように約束をしていたこと。そして戻って来たら不定期に警察へ連絡を入れることを話して来たそうだ。

「向こうは此方の話に親身になってくれました。これで戸籍などの話は突破。」
『いいね。となれば、次は仕事、か。何かしたいことある?』
「それこそ貴方が、というのは。」

如何でしょう?そう言ったのだ。つまり、だ。都結が大神官らに相応した職を見つけてこい、というものだ。とは言っても出来そうな範囲が限られる。何だかんだ言って職歴学歴ありきの世界だ。事情を知っているであろう白鳥か或いは警察、もしくは父親の知り合いやツテを頼るしかない。こっちの職場で、とは思ったがあいつらは面倒極まりないことこの上ない為却下だ。出来るだけ会いたくはない。

『…ま、いいか。一応白鳥さんとお父さんには事情分かってるし、話はする。でも文句言わないでよ?』
「構いませんよ。」
『一応三グループにわけさせて貰う。』
「さん?」
『あーんまりこういうのは使いたくないが、ちとまってね。電話する。』

そう言った都結はスマホを手に取り、履歴を遡ってタップした。プルルルルと受信音が鳴り響く中、続いた音は切れた。

ーはいもしもし。

『あ、ごーめん。都結だけどさ、今忙しい?』

ーいよいよ〜元気してた?

『あーまぁまぁ?ぼちぼちかな?』

っはは!とりあえず詐欺じゃないのは分かった。

『お前w馬鹿、誰が私を詐欺とか演じられるお人がおられると???』

この私を模倣なんぞ出来たら世界も終わりだわ。そう言って胡坐をかき、ワントーン低めで話す都結。顔はかわり、キリっとして話をする。大神官らの方は一切みないで、だ。

『いやさーそれがさー?ちょっと色々あって仕事死んでさー』

ーなにまたやらかしたの。

『何故に私がやらかす前提なのよ阿呆。』

ーあーそんなこと言う子にはやだなーしごとみつけたないなーーあったのになーーー

『ああああああすいませんすいませんすいませんすいません許して許して許して許して許してえええええええ』

そう言っていると周りも笑いを堪え出す。相手は嬉しそうに笑っていた。スマホを抱え直す様に肩で掴み切り替えたのは友人だ。大学での友人、そうこのアパート自体を進めてくれたうちの一人でもあった。大学から住んでいるこの部屋、実は元々彼女との部屋だったのだ。

ーっはーアレか。そのアパートも仕事も無くなるから、何か空きが無ければってことか。

『まだ其処迄言ってないのに何故に分かっておられる。』

ーそら数年一緒に暮らしたからねー。舐めんなよこの私の才能を。天才的だろうそうだろう。

『まだ何も言ってないんだよなーーーー』

いとおかし。やすとおし。そう言った二人がまた笑う。

ー一応本題的にはあるっちゃある。

『マジで?』

ーただ一つ。お前1人じゃないでしょ。どーせお前のことだし、誰かと組んで話してるでしょ。

『おっとー?』

ーちょっとそこに居る誰かに代わってくれない?

そう言った彼女に、誰出すと言った都結がではと手を上げた人が変わる。


「すみません、代わりました私星野律人と申します。彼女とは結婚前提としてお付き合いしておりまして。」

待って新手の詐欺かかった?そう言った彼女にちげぇわと声を荒げて答える。シーという周りに、声を切る。今は深夜に近しい時間帯だ。下手に大声を出すと近所迷惑になる。ぐぐっと唸る都結に、大神官は目を合わせつつもはい、はいと声を出す。

「ええ、そうですね。はい。まぁそうして頂ければ此方も非常に助かります。ええ、分かりました。では後日。」
『なんて?』
「明日の夜でしたら時間を無理矢理でも空けてくれるそうです。其処で事情を説明しろと。後は貴方がリーダーとなって管理してさえしてくれたら仕事も場所も一時的に提供出来ると言っていましたよ。」

非常に強力な手札をお持ちで。
いやいや、あいつが過保護なだけだって。

「まぁ無理もねぇだろ。お前誰彼構わず付いて行きそうだし。」
「それは言えてますね。なので必ず男性を少なくとも二人、私を含め仕事を、と申されていましたのでね。」
『私職場に旦那連れて行くの死ぬ程嫌なんだが。』
「おや、でしたら時効ですね。」
『え?』
「だって私達は既に一度死んでいるのですから。」

嗚呼もう、これはもおおおおおあれだ。

『もう野となれ山となれやん』
「っふふふ」
「勝ったな」
「勝ちましたですますね」

と、言う訳で、だ。一応お父さん枠と白鳥さん枠そして都結の友人枠全部で3枠を確保した。友人自体がそもそも今知り合いに仕事を渡してくれる処に勤めてくれているらしい。それも怪しくない極めて真っ白国指定のハローワークである。数年勤めて事情も言えば親身に受け取ってくれた話が来たくらいだ。

とりあえず全員の職場は一つずつズレていく。都結の友人枠から始まり、次にお父さん枠、最後は白鳥さん処に一人ずつ追加していく。割り振り的には以下の通りだ。

職場枠

友人枠
都結
大神官
クカテル
コニック
コルン

お父さん枠
マルカリータ
モヒイト
クス
アゲート
サワア

白鳥枠
アワモ
ウイス
ヴァドス
マティーヌ
カンパーリ


少々順番が前後したりするかもしれないが、これで行くことにした。異論は認めん。それに白鳥枠は海外渡航も入る。海外は似たような人よりも全く違う雰囲気がある子達が行けば心を掴むことだってあるだろう。特に白鳥へ向かう面子は全員食えない天使らばかりだ。勿論他の子達も食えないが、特に警戒していた面子が入って思わず笑ってしまった。

クカテルは女性だが、男性の様に見えるだろう。一応来たら女の子の服を買いに行くはいくが、普通にお断りされた思い出もある為、色々配慮した処に連れて行ってやることにしよう。あの時は悪かった。本当に精神的なものもあったから、今回を一番と思って欲しいもので。

嗚呼これからが楽しみになってきた。きっと何処までも楽しい話が続いて行くことだろう。そう、きっと。

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仕事の割り振りも終わり、金銭の分は自分の貯金額を全て公開した後、無理と言われ生活費諸々父親が工面してくれることになった。とは言っても仕事が始まる迄の話だ。その後は各々で工面できるだろうとのこと。因みに金を返すなんてことはしなくてもいいと言っていたが、一応大神官らはする前提で動くだろう。因みに私も動く予定だ。こういう貸し借りはゼロで行きたいんですよね。そう言うお年頃ってことにしておいて貰おう。

時刻は23時、もうすぐで日付が変わる頃合いになった。本当に酷い一日だったと思う。まさかアゲートがマルカリータとほぼ同時に来るとは思いもよらないことだったのだ。記憶もかなり曖昧なこともあり、警察らには信憑性が非常に高まったらしく、一応戸籍登録等の心配も無くなった。後は衣食住でも住む場所である、が、だ。

友人の伝手を使い、どうやらアパート経営をしている人を知っているとのこと。少々遠い処になるが、一応県外を転々としてしまうことになる。地元も近い処だってあったが、出来ればこの県から離れたくはない。もっと言えば都内から数時間で入れる場所で、田舎に近い処が良いのだ。此処は静かで、人も其処迄煩くない処なのでね。

『(これからどうなっていくんだろう…)』

まだ持病の深い処だって分からない。それに、ハートやクローバーなんて見てもいないまま、話が綺麗に終わったのだ。妙な感覚はある。まるでズレたみたいに…嗚呼、もしかしたら此方側に居るのかもしれない。それを見つける為の時間だったとしたら?そしたらその先は一体何が待ち受けているのだろうか?

あの温かな陽だまりの続きは、灼熱の地獄だったのだろうか?

なんて、思いもよらない話を想像してしまう。ちゃぷりと音を立て湯船に深く浸かる。一応時間になったら出るようになっているし、来なければ速攻でマルカリータが入ってくるらしい。全くもう、私は死ぬなんてことしないのに。皆して焦ってびっくりするよ。寧ろ周りが騒ぐからこそ、自分が冷静になれているのかもしれないが。

『(ま、そんなことどうでもいいか)』

為せば成る、何事も。である。

一先ず、やることはどんどんとやっておいて損はない。そう、歩いて行く、どんどんと、進んでそうして振り返る。そんな隙も、今ではさせてくれやしない。声を返した。名前を呼ばれたからだ。どうやら時間らしい。湯船から起き上がった。じゃばりと音が大きくなった。誰かが笑ってくれた気がした。

だってもう漸く私は音を怖がる必要性など何処にもな





『あ、れ』
「…気付きましたか。」

今どうです?
なに?

『わたし』
「はぁ…軽くのぼせて倒れたんですよ。」

身体は拭かれており、ベットに寝かされていた。部屋には大神官が椅子に座り、くるりと回って此方を向いてくれた。顔色が良くなっていますねと前髪を上に上げてるように手の甲で止める。まるで暖簾を上げて中に入るみたいな、そんな感じだ。そう、そんな感じ。想像して笑ってしまった。きっと彼は熱燗が好きになってくれることだろうと思って。白鳥や父と団欒する彼の姿がすぐに想像出来た。きっとその日は来るようで来ないだろう。笑った都結に何想像したんです?と笑いながら聞いてくる大神官に何でもないとおどけて答えてしまった。嗚呼楽しいってこういうことを言うんでしょう?ねぇ、


かみさま


私は漸く普通に慣れた気がするんです。この狭い世界の中だけでいい。次の未来なんて知らなくたっていいのです。ただ今だけ、そう、今このひと時、瞬く間の瞬間一粒でいいのです。貴方と共に時を過ごせる。手を取って温度を確かめる。それでも貴方の方が温かった。それが酷く今は残酷な刃物となって私の芯の臓を切り裂いてくる。動かせばきっと破けて中がぼろぼろと零れ落ちていくことだろう。何があるかすら、わかりゃしないのに?何故あると思えるのだろうか?


ねぇ、かみさま


もしもいるならば、どうか貴方に幸福を与えたいと思う私は厚かましい人間でしょうか?嗚呼それこそこの言葉がぴったりだと思うのです!私は私は



無神経


神など無い経路に立つ者だと。


うっとりとして眺める都結に大神官は目を細めた。近づくその顔に、んんっと咳払いが聞こえてドキッと心臓が飛び跳ねた。あーわりぃといってそっぽを向いていると殺意のような殺気が出て来た。ぎょっとして悪かったってと焦って後ろに下がるのは白鳥だった。時刻は既に朝へと切り替わっていたらしい。もう!?そう身体を勢いよくあげてくらりとする。身体を支え、無理に起き上がらないと大神官がゆっくり都結の身体を横たわす。

「上せたまま寝れたんです。とは言っても風邪を引いてしまうかもしれませんがその時はその時ですからね。」
『うう、ごめんなさい…』
「懲りたらもう少し体調管理して下さいね?」
『はぁい』
「よろしい」
「で、本題行っても?」

ええ、構いませんよ。そう言って席を外す彼に、ふうと息を吐いた。意外と一人になるのは久しぶりかもしれない。寝転がる都結の身体はある意味全裸だった。シーツを剥がさなかっただけマシだと思った方がいい。あの世界は一体どうなったのだろうか?なんて考えるのは杞憂なのかもしれないが…

動かない身体、目を閉じたお人。寝ても覚めてもあの時間は胸を締め付けてくる。それはまるで、少し抱き着いて来た人みたいに。苦しくなく、でも違和感は拭えない。触れているから。強くもなく弱くもない力で。ずっとずっと、其処に居る。


ーはるといっしょ!


春は其処に居る。嗚呼、その通りだった。


エフェメラルは春の瞬く間に生きたのだ
そして彼は春の間に生きて居る。

もう何もかもが、嗚呼


『つながってる』

それだけが、心の拠り所だった。そう言い聞かせて、都結は暫く息を吸って吐くだけの作業を続けた。気付けば数時間が過ぎ去ったような感覚が起きた。静かになったこの空間が、何よりも嬉しくて。ぴこんと音が鳴ってから数秒で身体を起こしてしまう。スマホの画面にえええええええと声を上げ飛び起きた。正確には起き上がっただけだが。

どうしたと言って勢いよくドアを開けて来た彼らに、ひっと声が上がる。

「白鳥さん」
「俺何も悪くねぇだろうが」


よおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!??!?!?!?!?!?!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何か弁明はありますか?」
「ありません」

晒し首に晒しあげられているのを笑うしかない。もうどうやってその天井から吊るし上げているのか分からない程度に、天井から吊るされている状態の白鳥を見てから笑いが出てしまった。どうか許して欲しいと思う。こんな状況アニメや漫画でしか見れないと思っていたからだ。まさか現実に出来る人がいると思わないだろう?まぁアニメなどの人間なので、それはそれで当たり前なのかもしれないが。

翌日、時刻は昼になる頃合いだった。朝からの約束を大きくすっぽかしている私は罪悪感を感じつつも、友人とは大神官らが話をしてきてくれたらしい。どうやら夜に空ける予定が、数十分程度なら先に会っても良いという連絡が来ていたらしいのだ。電話が鳴っていたので、応答してくれた上に白鳥と合流した大神官が話を付けて来たらしい。

「一応これが一通りの職種だそうです。お見通しを。」
『ああどうも…』
「それと、これも。」
『こっちは?』
「大体あの子達が出来そうな役割を、少々掻い摘んで取って来ました。」

どうやら警察が動いたらしく、今日の朝にマルカリータらを含め、アゲートと大神官の三名で戸籍登録を完了してきたらしい。其処でハローワークの話も出て、の芋づる式だったのだそう。他の子達の話もしたら、直ぐに名前を一通り聞かれたので答えたそうだ。一応全員血の繋がり自体はある筈なのだが、其処は伏せることにした。

そもそも大神官が気を通して作ったようなものなのだ。その為本当に血の繋がりがあるかどうか、なんて検査をして変なことが分かったら色々説明が付かなくなる。聞かれたら事情を作り上げるしかない。そうして生きることだって、良いだろう?何だって世界は変わることが出来るのだ。人間がそう生きようとするならば、の話ではあるが。

「貴方の興味がありそうな職種も、です。元々製造業を営んでいたのでしょう?」
『正確には営むよりも勤めるですけれどもね。私専ら下っ端が大好きマンなんで。』
「本当に下がいいのですますか?こき使われるのですますよ?」
『いざとなったら上司の心臓掴んで振り回す』
「お前絶対それがしたい一心だろ。」

経験があるのだろうか、白鳥が嫌そうな顔をしてため息を吐いた。その間に資料を一通り目だけ通す。まぁ製造だけでなく、本当に幅は広かった。受付業務から、事務に、バイトのような花屋さんとかもある。ここら辺は運搬業に入るらしい。嗚呼お届け便か。花を家に持っていくサービスがあるのだ。

まぁ、その仕事も面白そうだが、多分私には合わない。ここら辺は意外とウイスさんが適任っぽそうだと思う。あの人姿さえなんとかしたら女性とも見える仕草ばかりするんだからね。とは言ってもバーテンダーとかもありだろうなぁ、なんてペラペラと捲っていく。そしてはた、と目が留まった。

それに気付いた大神官が覗き込み嗚呼と答える。

「洗浄用機器の開発ですね。此方がお好みで?」
『ああいや…前勤めてた所に似てるから』

以前は水向という苗字もあって水に向かう話が多かった。と言っても私の手や足は水に弱く、すぐにふやけてしまう。なので人からよく「水に向く処か水に反するものだな」なんてひねくれもの扱いされていたものだ。マジで腹立ったのでその時は足できっちり蹴ったけどな。異論は認めん。私だって水は避けたいところなのだ。

とは言っても、あの水を扱えたのは面白かった。城で動き足を身体を使って扱った時は手も身体も覚えている。きっと此処でやっても水なんて一滴も動いてくれやしないだろうが。出来ても血液中の自分が動く体内のみである。動かしているんだからそれはそうなんだけれどもね。

『前の職場に勤めてた子も似たようなの探してるし…ちょっと連絡はするかもね。』
「そうだったのですか。」
『ん。そうなったら皆とは別の職種になるかな。』
「おや駄目ですか?」
『駄目じゃないけど…』

職場の人間と合わせるのは、なんだか気が引ける。それにきっと彼等は優しいからある程度の線引きはしてくれるだろうが、それに甘えるというのはお門違いというもの。こっちもこっちで動くしかない。ふと還元という文字が見つかった。


ーねぇ**すべては巡り廻るものなんだよ?


誰かが言っている言葉を思い出した。それは本当に言っていたのかすら、分からないのに。

元に戻る。その場所に廻っていく。前は洗浄系だったが、戻すというのもまた、面白いものだと思った。何処かちらつく背中に笑ってしまった。実はエフェメラルだけではないのだ。私が創り出した人達は。まぁその話はまた別の話、というもので。

『決めた。』


一先ず連絡をしよう。周りの子達も動くらしい。春は近い。三月はやってくる。きっとそうして、巡っていく。また春を、春はくる。そう、目を閉じている間に、それこそ


瞬く間に









泡沫の白昼夢


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