少し疲れたから貴方の隣で子守歌を4
バスボムを入れ、湯船に浸かる。そんな夜も過ぎ去って、朝が来て、また夜が来てを繰り返した。やってきたGWは、意外にも溶けていった。連絡をしたアメリがまさかの日本に来日したのだ。前もそうだっただろうか?と思いつつも部屋を掃除していた都結がやっほーといって声を掛けた。付き添いは白鳥だった。彼は仕事で父親らと話があるのだそう。嗚呼だから連絡していたのか。
時刻は昼になるところだった。どうやら一度ホテルに泊まって外に出て来たらしい。観光もこれからするのだそうで、一緒に来ない?と言われ断ってしまう。コルンら達の掃除もあるし、と言っていたら別にいいのでは?と大神官に言われた。少しくらい休息を取っても。というのだ。少なくとも今日一日が潰れてしまうではないか。もうしなかったらどうするというのだ。
責任を取る様にすればいいと大神官がこの際腹を括れと言うのだ。もう為せば成る何事も。そう言い聞かせた都結は10分待ってと言って急ぎ支度をした。風呂は入りたかったが、我慢した。家に帰ったら今度買って来ていたバスボムをまた投下してやることにしよう。私も風呂厨になってしまったのだろうか。
『お待たせー』
「うわ、かわい〜〜!」
そう言ってくれた彼女には笑って礼を言う。とは言っても紺色のワンピース姿だ。以前城内で着ていた余所行きに近いワンピースそっくりさんが、なーーーぜか先日売っていたのを、なーーーぜかクカテルと見つけて、これだ!!!!と二人で
嗚呼勿論、少々値は張ったが、事情を説明したら許可が出た。…まぁお察しの通り、その後以降は先に許諾を申請しないといけない仕様になったとかなんとかなんだがな。何故だおこだよ。まぁ大声出したのは反省するけれどもさぁ〜〜〜私につられたからと言って私が怒られるの解せないんだよな。解せぬ解せぬ。これ如何に。
『で、何方に行くんですか。』
「えと〜お城と〜後は近場のカフェー」
『cafe?かふぇ!』
またとんでもないコアなというか、処を選んだものだ。むすっとしていた気持ちも一気に方向という舵を切り替えてしまった。…まぁ、確かに以前白鳥が遊びに来ていた女子学生らが、良い処があると言っていたのを聞いたと話をしていた気がしなくもない。SNS映えというものだろうか?なんでもそのアイスクリームは輪が何処か浮遊している様に見えるものらしく…いや確かに見て見たいと思った。どうせなら描きたいくらいでもあったからな。
え?天使を喰らうみたいな話ですか?いやいや〜〜〜そーーーーんな、ばばばばばばばだskdふぁそdfkじゃそdfじゃおlksdfm
行きたくなって行こうと言ったらば、だ。車を出すしかない。今日は流石にと言った大神官の言葉で歩き、公共交通機関を使用することになった。歩きながら話をするのもまた興だと思ったから何も反論などしなかった。じゃあ後はよろしくねと言った都結に、ええと大神官が扉を開けて話す。都結が靴を履いて起き上がる処を顔で追いかけて。後この思考回路は調整が入ることになります。五秒後ぐらいにね。
「暗くなるまでに帰って来て下さいね。一応アメリさんがおられますし、大丈夫だとは思いますが。」
『うん!沢山遊んでくる!行って来ます!』
「はい、いってらっしゃい。」
ふふっと笑った彼が手を振ってくれる。一度前を向いて振り返ったらば、もう扉はがちゃりと鍵をかけてしまってしまった。手を取って行こうと言われる。うんと頷くだけ頷き、肩にかけたポシェットの紐を掴んで歩き出した。
時刻は午後12時を知らせようとしていた。
日照りは肌を焼きつけようと、此方を見ていたのを、私は見て見ぬふりをして、スマホの画面を消し、ポシェットの中にスマホを仕舞いこんだのだった。
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駅から30分前後乗り継いで付いた場所は、田舎も田舎だと思える。ミンミンとちょっと気が早いだろう蝉の音が聞こえて来た。雑木林が近くにあるのだろうか?ぱっとみでは見えないが、きっとあるのだろう。少々急な坂道を歩いていく。その先にcafeがあるのだ。オクトーバーcafeというちょっとお洒落で、こじんまりした看板が見えた。
ハーフティンバー状に作られたcafeだ。中も広々としていて、鈴の音が心地よく広がる。カランカラン、と鐘に近い音がドアを開けたことで鳴り響いたからだ。音が落ち着いてくる中、いらっしゃいませーと店員が入って来た。席は外側の窓際に座らせて貰えた。ちょっとだけ座りにくい木の椅子だって動かしたら何とでもなくなる。
スマホを立ち上げれば大神官から連絡が来ていた。過保護でしょ?と言って画面をアメリに見せてしまえば、ほんとだーと笑ってくれる。店員さんが来てくれたので、注文を決めてしまう。此処はラズベリーのパンケーキや軽食も取れた。ふと見つけたものにううむと悩む。
「どうかした?」
『ああいや、この苺とキャラメルのパンケーキ美味そうだなって…』
「頼む?」
『でも大きそうだし』
嗚呼、確かに大きいですね。これくらいですし、なんて手を使って店員さんが答える。あちゃーと言った都結はやめるかーと言うが、いいじゃんと答えたのはアメリだった。腕を組んで机の上に前のめりになって言う。店員さんから見たらきっとお友達に見えることだろう。ある意味友達ではあるが、この二人実は従妹なのだ。なんて知ったらどんな反応するのだろうか?なんて、考えても無意味か。
「二人で食べたら良いじゃん。」
『えー?そう?だったら私こっちのラズベリーが良いかなぁ。』
「バターパンケーキもお洒落〜」
メロンソーダも可愛い絵が描かれていて。これを二つと指を指していく。メロンソーダと後はブルーソーダだ。ラムネ味だと書かれていて、ちょっと興味がそそられた。きっと彼女も気に入ってくれることだろうから。そしたら向こうもパンケーキとふわふわクリームかき氷を頼んでいる。いやまて。飲み物に更に飲み物追加かよ。胃が悲鳴上げやしないか?
どうやら此処に小鳥のふわふわかき氷だあるらしいのだとか。セキセイインコとヒヨコ、後は鶏とかもあるらしい。因みに他にも種類があったが、個人的にはその三種が非常に気になった。絶対SNS映えする。それを狙っているのだろう、このカフェは。経営上手な気がしなくもない。的外れなことを考えつつも、都結はメニューを端にある枠に立て掛けた。
音が鳴る前に表示が出たことで手を取った。どうやら大神官からの連絡だったようだ。返信をしてしまってから
また絵を投稿したの?なんて言う彼女にまぁねと答える。向こうでも絵を描いていた。文章は残すとヒントになるから、だから絵だけでも、と描いていた。画力も落ちたら困るし。その身体や脳に叩き込まれているのかは知らないが、こっちで劇的な変貌を遂げつつあった。上手くなったな、と我ながら思う。
時々
そう言い聞かせるしかなかった。そうでもしないと、怖かった。何が怖いかなんて、分からないのに?
「ほんと上手く言ってそうで良かった。」
『何が?』
「え、付き合ってないの?えっちとか。」
『ぶーーーーー』
ゲホゲホと咽る都結に、大丈夫!?と聞く。いやもう、こういう処でそう言った話はマジでやめて欲しい。したんだなんて言われて誰が言うかと答えてやった。もうしたも同然だという事実に気付いたのは発言してから数秒後のことである。穴が合ったら入りたい…。穴なら作れたはずなのに、此処では力なんて出ないからね。どうしようもないね。
「まぁその感じだと大丈夫そうで良かった。あの時はあんな言葉言われて泣いたんだからね?」
『え私何か言ったっけ』
「なーんも?」
『えーーおしえてよーーー!!!』
ー恋しさに ぬるる袖さへ かへす波 よるべもなくて ただぞ浮かべる
古い言語はかなり調べ尽くさなければその正体を明かしてくれやしない。京都に行った図書館で見た情報を手に取ってしまう。一冊のノートを開いて、都結の方に見せてしまう。其処には日本語が描かれていた。絵も含めて、だ。
「何処にも行けずただ涙の波に漂うだけの時間を。恋の想いを断ち切りたいのに、どうしても波の様に心が揺れてしまう抑えきれない恋の心」
『な、にを』
「知ったよ?私は。では、貴方は何故
此処は何処までも温かくて過ごしやすい世界だというのに。
喉唾を呑み込む音が響いた。ごくり、と続けたのはアメリの方だった。
「栞、大事に持ってくれてる?」
無くしたなんて言えなかった。死んだから使ったなんて、以ての外で。うんと答えたらそっかと言った後、カランと氷がズレる音がした。
嘘付き
その言葉が胸に刺さって剥がれない。
「…そんな小さな紙切れになんて、もう乗せれない癖に。」
『え?』
「…何でもない。とにかく、さっさと食べちゃおう?」
写真を互いに撮ってしまう。二人が入れるようにと腕を上げてスマホのカメラを見せる。笑ってシャッター音が鳴り響いた。何度も写真撮影をして互いに満足してから口に入れてしまう。頬が蕩けそうになる程の触感に美味しいと言った。嬉しそうにアメリが笑ってよかったと言ってくれる。
嗚呼、陽だまりが身体に差し込んでくる。熱くてたまりゃしない。この熱さは一体何処からだろうか?30文字以内で答えて欲しい。正解は何処に隠されているのか、私は既に分かっている筈だというのに?
「ねぇ次何処行こうか」
『そもそも何時まで居るつもり?』
「えー?永遠、とか?」
『ふはっ、もう〜漫画じゃないんだからー。』
「でも」
それでも良かったのに。
「貴方が生きてる。もうそれで、いいんだよ。それだけでいいんだよ。」
『アメリ…』
「ね、あの本実は調べたら色々分かったことがあってね。」
『ソレで来てくれたの?』
「うんそう、ソレで。」
目付きが変わる。15の文字が、ノートのページを捲って発覚した。それは何時かの契りを交わす、儀式円の表示だった。12の星が直線で交わる、その中央に近い場所には上から見上げれば逆三角形の印が見えた。十二角形の中央にあるその更にど真ん中は、一体「なに」があるのだろうか?
「古い呪文の円でね?これ不思議なことに装束とか色々説明が載ってるんだけど」
『貸して』
「あっちょ」
『ねぇアメリ』
「な、なに?」
『これ、ちょっと貸してくれない?』
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「都結が帰って来てから部屋から一度も出ない、ですか?」
「ええ、ちょっと調べ物が出来たと言ってから、それきり出て来なくて。」
そう困惑して言うクカテルにふむ、と大神官は唸る。あれから夕方になって帰って来た都結は大神官に連絡は入れていた。後から帰って来たのだ。その時間帯大神官はマルカリータとアワモ二人で買い出しに出掛けていたから。クカテルは流石に一言も言わず音も立てずに部屋から出ないのは心配だと困っていた処で。丁度大神官が帰って来たのを良いことに相談を持ち掛けたのだ。
その間、都結は唸っていた。
『(これ明らかに呪文だな…それも私が以前作ってたのに、全くと言っても良い程一致してるとまで来た。)』
そう、【エフェメラルで使用する予定だった呪文がそのまま描かれていた】のだ。これが決定打だった。ドアを開けられ、丁度良かったと声を掛けた。椅子から立ち上がって話しがあると言った都結に、丁度良かったと大神官も答えた。
「私も用があったのです。」
「これがその資料ですか。」
『はいそれではここで皆さんこれをどうぞご覧になって下されやがれませ。』
「相も変わらず言葉が多いですね…まぁいいですか。それで?」
そう言って都結はダブルクリックをして自分の小説で作っていた資料を出してくる。ノートに描かれていたものを画像として画面上に出して照らし合わせた。文字の解析は大神官らでも出来たが、都結も読解出来た。それは神々の古い言語だったからだ。前にコルンが滾々と言い聞かせていた言葉を思い出したから。
こっちの読解は良かったから。褒めてくれたのを都結は覚えていた。活きているよ、コルン。活きている。目は輝くことなく、真っすぐにその事情を見つめていた。心の中のコルンは何処か穏やかな表情で何も言って来やしない。現実のコルンに早く会ってしまいたい。そうして褒めて貰うのだ。それから先は?彼を何処かの母に見立てても無意味だというのに。コルンに失礼極まりないというのに。
その二度と帰ってこないであろう母に対しても、失礼だと思うのに。それでも止めれなかった。それは、それはただ母を覚え続けていたかった幼い自分の気持ち一つなだけだったのを、私は分かっている。分かっているからこそ、今回でけじめを付けたい。そうして前を向いて、今度こそ歩くのだ。
彼等と共に。
ふっと笑ってしまえた。嗚呼まだ笑えてしまえるんだ。何度も何度も傷付き殺されようとしても、それでも人は藻掻き苦しみ、立ち向かう為にも、その足で立ち上がる。起き上がって前を向いて走る。一歩でも、近付いて、その大きな壁を乗り越えてしまう。そもそも壁なんてないのかもしれないが。
「驚く程に一致してるな。」
「此方の呪文効果は?」
『一応考えていたのは三択。一つは破壊系、エフェメラルらの力はあくまでも種に寄る。起因は全て彼女らの決められた定められた願いによるものだった。』
故にその枠組みだってあるのでは?と思った次第だ。だが此処まで来たらこの選択肢を取るよりも、最後の選択肢に目が行った。余りいや、非常に現実であっては嫌だなと思っていた選択肢だ。これが本当ならば私はもう
『ほぉら、みたことか』
雑音と共に崩れ落ちていく。ボロボロになった絵本のページは、剥がれた場所から杖を取り出せてしまう。黒い魔物に防いでしまうくらいしか出来ない。いつの間にか衣服はあの浅葱色に身を包み込んでいた。これがアリス症候群であればよかった。そしたら私は病棟に入ってその腕に生きる時間を追加投入する世界だけに息が出来たというのに。
大神官様と叫んだ。粗い声に、どうするんです!?と声が出る。まだ時間は夕方だから、逢魔が時だから?
都結は手に杖を作り上げてしまう。剥がれた場所から取れた杖が心地いい。これが幻だったらどれ程良かっただろうか?そしたらまだよかった。統合失調症だと診断が下っただけで良かった。私の脳はこんな世界が見えているのに、周りの映像が見て見たい。定点カメラに私しか写されていない白い箱の中だったらば。どれ程良い世界だっただろうか?今すぐ私に見せて欲しいものだ。脳がいかれているというのに、一体どう写せ知らせと言うのだろうか!嗚呼!!おかしいことを言う者だ!!!
私はもう遠の昔から、
【壊れているというのに】
杖を勢いよく振り下げた。するとその場所から亀裂が入る。まるでページを破いたみたいな音が鳴った。ビリビリビリ、破いた場所は空間で。大神官が怒って空間をガラスの様にびしりとヒビを入れるならば、私は本のページを破るような音を出してしまうだろうと、心の何処かで整理を付けようとする。この行動に、言葉は付いているのだろうか?付随されるのだろうか?
この感情に、理由は付けられるのだろうか。
ラベルを貼りつけ、その器の中で息なんて出来る訳もない癖して。私はその中に入りたがっている。入っても意味がないというのに。この現実は変わるなんてこと、あり得ないのに。それでも何か変わると信じて動こうとする。嗚呼そういう考えなしに動くから、こういう現実に進んでしまうというものを、私は分かっていない。分かっていなかった。
そう、今は違う。
『今日の私よりも明日の私。』
「え?」
『明日の私よりも、明後日の私。』
「都結、さん?一体何を」
『明後日の私よりも、更に向こうの私こそが…!』
一番で在ると、私は言い聞かせる。
昔から魔法の言葉を言い聞かせて生きていた。
誰にも知られない眼は可哀想に、と同情の目を向けられていた時は、大丈夫だと言い聞かせていた。誰かに知られる様になって、指を指されていた時は、見えない、聞こえない、知れない。と、周りのことから遮断する様に言い聞かせていた。誰かが詰めるように言ってくる声が聞こえる様になってからは、世界の誰もが私を敵に回そうとしても、私だけは私を味方にしようと言い聞かせていた。
そして、誰かの指も目も声も何もかもが、分からなくなった時。
私は大丈夫と言わなくなった。
『私のおまじない』
ニヤリと笑った。杖は青く光を帯びていた。亀裂から出て来た黒い化け物は泣き叫んで空で何かを言っている。きっとあのピクルスだろう。今開放してやるから、なんて言って手すりに手を掛けようとしたら反対の腕を引っ張られてしまう。死にに行くのか。と、大神官の顔が見えた。目を見ないならば、見せに近づいてきたのだ。
「させませんよ。貴方は此処に残るべき存在。」
『それでおしまい?』
「え?」
『可愛いお子を絵本の中に仕舞いこんで、幸せに暮らせました。なんて最後を締めるならば。私はその先にある帯の裏に生きていたい。』
買った後、ページを捲り続けていた話の途中で気付いた時、帯を見つけ捲ったある意味のネタバレ。それは人によって大ダメージだったと思うが、それでも私はふはっと吹き出す程に笑えた。続きが見たいと、思った。その姿を、理由を。追い求めるから、続きを見たいと思えた。あれは本ならではの特権だと思っている。漫画は絵で、全てが分かってしまうから。小説だからこその、粋な計らいだ。
『私は今の私で満足したくないの。明日の私に私は会いたいし、明後日の私にだってその先だって会ってみたい。』
その先に行けば、もう過去の母に会えなくなったとしても。
それでもいいと思えるようになった。それはね、それは
『
「…わたし、に?」
そうだ。この緊急事態に言うものでもない話だろうが、今じゃないといけない気がした。だからうんと力強く頷いてしまう。目を見て、今度は、私から、目を向けてみた。綺麗な紫色が光っている。嗚呼、これは幻なんかじゃないよ。だって私が見えている。
私が見えるもの全てが現実であるのだ。
『貴方に出会えたから、私は今此処で息が出来ているのだから!』
嬉しそうに笑えてしまえた。そしたら杖が姿を消し去った。何処に行ったのかと思って両手を見ていたら、それと指をさされた。顔の方で、一体何が変わっているのか私からは分からないが…嗚呼と笑い出した大神官様の感覚的に何となく想像が付いた。だって彼の姿は後ろに輪を一つ付けていたから。律人ではない姿だったから。嗚呼、此処にいる。
「そうですね。物語の続きを見る為にも、皆さん、ご協力お願いしますね?」
「「「はい/ですますわ!!!!」」」
いい返事が返って来た。杖を姿を形を変えてしまえば浮遊が出来るようになる。周りの人間達は停止しているようだ。時間自体が止まっている。いや、ページが捲られないのであれば、時が止まるというものだろう。
だって本のページは捲れば時間が過ぎる。それは当たり前のことだからだ。
攻撃を、と浮遊し、出て行ったのはアワモとクカテルだ。マルカリータは待機命令が出てしまった。都結の扱いを知っているのはマルカリータだけだから、とアワモが言ったのだ。だってマルカリータは今、都結の暗い部分と明るい部分を知っている天使。それ故、動きを指示を理解出来るのも彼女以外居ないと見た。それなら攻撃に回れば、とも思うだろう。
だが、今回の目標はあくまでも「元の状態に戻す」だけのことだ。
ピクルスを戻す。それだけなのだ。化け物になった姿は、醜いものだった。狼の黒い姿は、地面に付いて薙ぎ払おうとする。おやめなさいと言って杖を使い蔦を作り上げては縛り上げるクカテルだが、
「っな!!」
「…流石に一筋縄ではいきませんか」
『え?縄だけっだ”!!!!!』
…すいません、うちの者が
い、いえいえ…
お父様も大変ですね。
勢いよく拳骨を入れた大神官に、ええんと都結が頭を両手で塞いで泣き叫ぶが、本当に泣いている訳ではない。要らぬことを、調子を狂わせるようなことを言ったからである。普通に都結の自業自得。クカテルとアワモは苦笑いで大神官の心境に同情を抱いて答えてしまう以外術がなかった。
「(にしても、動きが機敏、だが)」
その動きはまるで、意志に関係なく暴走している様にも見えた。というのも、物を踏みつけようとする時の動きが鈍くなるのだ。ズレて道路の方に移動する。何もない田畑に移動したりする動きは、何かに操られているという状態に見えなくもなかった。目を細め見定めるクカテルに、アワモが声を掛けた。
「一気に畳みかけますよ。」
「ええ、勿論。アワモさんは前足を私は後ろ脚を取りに行きましょうか。」
「分かりました。では」
そう言ってアワモは消えてしまう。瞬間移動したのだ。今は輪すらを持つ状態。此処がどういう世界なのか、イマイチ分からなくなってきた。さて、攻撃をしかけようか。
クカテルは杖を握り締めている手に力を入れた。