だからねぇ神様、お願いだから一人にしないで7
夕方。もう外に出てどれ程の移動をしたかわからない。ただまだ此処から移動しなければいけなかった。悲しいことに移動組では都結らが最後。もうこの地域に大神官らはいない。彼らには悪いが、ある程度の嘘くらいついてそう思っていると飛んでくる。
ー嘘ついても騙されませんよ。放送見ました。今何処ですか。
嗚呼、どうしよ。
『ね、さわあ。どうしようね。』
「……」
『ヘレス様いなくなちゃた…君も。ごめんね。』
「」
『此処で良いよ。私。ヘレス様何処に行ったのかわからないけれども。』
いやですなんて声が聞こえて来る。早くいけ、と。ふわりと風が巻き上がった。嫌なくらいに目に付く赤い花びらが鬱陶しい。目を閉じて動かない彼の手は緩むことはない。でも、無理矢理出ようとしたら動けるのは間違いなくて。嗚呼、それでも嫌なのだ。樹の幹に倒れ込んだサワアの衣服に包まれる。時間的に寒さで震えてしまう。
ぶぶっと音が鳴る。電話だ。彼らが電話出来る訳ない。みたら非通知だった。もしもしと言おうとしたら怒鳴り声が出た。
ー今何処ですか!この馬鹿者!!
お怒りのコルン様がいる。こわ。
ー貴方そのままサワアさんの近くにいるんですね?放送切りました?
『ごめ、きれなくて。』
ーチッ…まぁいいでしょうこの際そっちは。下手し捨てて行ってもいいくらいです。早く移動なさい。
『でも』
ー今すぐに。
それはサワアを置いて行くことに変わりなかった。嫌だと言った都結になら貴方はとコルンが告げる。
ーそのサワアさんやヘレス様のご意思を踏みにじるおつもりですか。
『っ、』
ーま、そんな方でしたら確かに我々とは程遠い人間の端くれですね。
ー幾ら何でも言い過ぎでは…!
ー貴方には関係ない。私が話しているのは都結さんただ一人ですよ。
向こうでも軽く喧嘩になってる。まぁそれもそうだ。こんな大事になるとは思わなかった。
ー意図したことではない。
『え?』
ーこの意味。貴方ならお判りになる筈。さ、立ち上がりなさい。私の言葉は貴方に一番届く筈。
貴方の二番目に、と成れない私ならば。という彼に、何処か背中が熱くなった。振り返っても動く気配はない。ただ、彼の一部だったものを抱きかかえていく。大丈夫そう言って立ち上がる。一応自分で動ける足はあるのだ。このまま行こう。その気合を察知したのか、ふっとコルンが笑みを浮かべ切った。
「それでいい。」
「どう出ますか?」
「我々はこのまま移動致しましょう。少々彼女を騙す行為になりますが、このまま順当にいきましょう。」
サワアらは何処かまだ生き長らえている気がした。都結の泣き方が少し異常だったのだ。まるで今は肉体から外れた、みたいな感じさえ思えた。以前のゲームにあったものだ。全員がゲームオーバーにならなければ死亡しない設定だ。恐らくそれがただしければ、都結の近くで浮遊していることとなる。
とあれば、彼女の背中を押す役割はこの私が担う以外他ならない。現在コルンは花嫁が心配だからと公衆電話をとって話をしていたのだ。事情をある程度ざっくり説明したら、一応安心して車に乗せて貰えた。他の者達も多少難はしているらしいが、それでも近づいているらしい。
既にサワアやヘレスだけではない。脱落者は他にも居た。
「(まさか夜になる時点で三分の一が消えるとは)」
そう、第2だけではない。第12や第7、第3も駄目だったのだ。リキールは幸いなことにかなり質のいいコスプレで逃れていた。時々自我を出して切り抜けているらしいし、何処か身体の近くにビルスやキテラらがいると怖がっている話はにこやかに無視することにした。今それどころではないのだ。
「(にしても幸先が不安ですね。天使らも同時に停止しているとは)」
他の天使らも続々と停止している。誰かが気絶したらバレて、という感じである。今の所順当なのは天使らθ組くらいだ。他も今現在続々と落ちている。これは参ったそう思っていたら、SNSが騒がしくなる。
救済
「ん?救済?…、」
ー待ってガチで人倒れてる。クスとマルカリータとウイスだ。
その表示に絶望した。画面の中に目を閉じて停止しているのが電車の中で発見された姿が見えた。その後に続いて読み進めていけば、意外な展開が起きていた。
ーまってガチだ。あの放送ガチもんだ。
ー待ってガチ囲え。これ他の天使と破壊神居る絶対要る。
ー都結ちゃん泣かないで;;お姉ちゃん応援してる。
「…これは、」
皆が応援をし始めて来ていた。居なくなれという人は一人もいない。
ーこんな劣悪な世界でよくも30数年生きていたよ。偉すぎる。
ー人生えげつないことなってるこの子。マジでどうやって生きたのか知りたくなるけど知ったら辛すぎて絶望しそう。
ー放送絶対止めるんじゃねぇぞ。皆囲え!とりあえず静岡県って何処ですかね。
ー速報:都結ちゃん保護。サワアさんと泣きながらバラの花全部かき集めてる。
「はな?」
ー待ってそれヘレス様の遺体とか言う?あっふーん???
ーとりあえず袋入れて移動させたいけど頑なに住所言わなくなっちゃった。放送詰んでる。誰か助けてあげて。
そう言う声を見つけすぐに放送画面に切り替える。ぐずっている子が聞こえて来た。
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どうしよ、どうしよ。頭の中がいっぱいだ。
「どうする?ずっとくっついて離れないけど。」
「いや〜まさか気付かれてすぐに逃げてサワアさんの処から離れなくなるとかまじで分からん。」
エフェメラルの放送での古参で、尚且つ静岡県の某地帯に住んでいた者が集まり声を掛けていた。職業柄、元警官というのもあって、放っておけなかったらしい。おじょうちゃーんといえばぱっと顔を向いた。おや意外とと言うか普通に可愛い子だね君。今迄不審者に出くわさなかったのは神の意志かな????割とありそうで怖いけれど。まあいっか。
「お嬢ちゃん何処の子かな?そのお兄さんどうしたの?」
『っぐずっ、う、あ〜〜あ』
「あ〜駄目だなこれ。女子陣いねぇかな。」
「暗号といたらいけるくない?とりま東京だろこれ。」
「まぁそれもそっか。行こう。ついておいで。」
『しらないひとだめいうも〜〜〜〜〜』
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
余計に泣きだした声に、ぴろりろと音が出た。出るよと言った後のことだ。もしもしと言う声に顔が固まる。
ー貴方まだ其処に居たんですか。後でしょっ引きますよ本当に。
『うばあ…!!!』
「”全く、すみませんうちの者が世話になります”」
「嗚呼いえいえ、ご家族さんでしたか。」
「”…ええ、そうですねぇ?”都結”。”」
『ぎゃみ!!あばだって!』
「”問答無用。すみません、何方かご存知ありませんが、その子をとある地域までお連れして頂いても構いませんでしょうか?”」
「ええ、明日は休みですから構いませんよ。」
「”ありがとうございます。では最寄り駅に。”」
行こうと言った彼に、ぎゅっと抱きしめたその声は小さくて。
…ずと、いっしょだよ?
嗚呼、この子は単純に間違った選択をしただけなのだ、と思った。同時にこの子は本当に優しい子なのだ、と。エフェメラルが言っていたのも分かった。即通知が来た時は驚いたが。
”助けて欲しい子がいるの多分君の居る処にいる”
そんな気がするで捜索をしてみれば、だ。本当にいたからビビったビビった。エフェメラルという名前にしたら何かのセンサーでも発動するんだろうか。恐ろしいことは考えないが吉だ。ため息を吐いた後約束しようと言った。だって彼女の言うことがもし正しければ。きっとこの子は動いてくれる。
今度こそ。
「…ね、約束しよう。僕らは味方になる。君らのことをこれ以上傷つけるつもりはないし、其処に散らばったバラも一つ残らず集めよう。その子も担いでいく。」
『ほ、と?』
「嗚呼。お巡りさんの言うことは聞ける。そうだろう?」
『うん』
本当にこの子マジで人に当たり悪かったら何処か売り飛ばされかねないのではと不安しか残らない子だなと思った。手を取って歩いてくれる。一応もう一人の子にサワアとやらは持ってもらうことにした。そこそこ重たいらしい。成人男性並みだと言っていたので、あとで交代してやらねば。
『おまわりさんおまわりさん』
「ん?どうした?」
『ぼくいいこ?』
「…嗚呼、そりゃあ勿論。」
きっとサワアさんと言う子やヘレス様という子だって、当然だと言うだろう。ドラゴンボールに関してはちょっと齧ったことがあるし、実際エフェメラルと言う子の薦めで彼女の書いた物語をかじっている。なんなら数多もの小説を読んだが、正直この子の話は読みやすい上に、酷く傷付く気持ちは強かった。
これ程優しい世界を見ていたらば。それはこんな世界に生きてはいけないだろう。ならば
「物語は物語に戻ってしまえられるならば、それが最大の幸福な結末だからね。」
『うん』
何処かそう言えば二人から「彼女をよろしくお願いいたします」と言われている気さえした。
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放送は順当に進み、妊婦というのもあってとりあえず駅に向かう。事情を話せば声が掛かる。こっちですよと言う声に身体を降ろす。既に都結の顔色は真っ青で、とてもじゃないが一人では難しかった。かと言って車にサワアを、というのも難しい。寝ている人を持っていくしかないという事情を何とか信じてくれた周りと、SNSで知った民が心配そうに声を掛けたりしていた。
「しんどいねーだいじょうぶだよー」
『うう、うう…』
「よしよし、良い子だねー」
放送でもがんばれーとか大丈夫ーとか声が上がる。がたがたと足音が出た。その音に、今新宿駅と声が上がる。
「”東京以降は任せて。今動いてる。”」
「〜〜〜!」
「”ごめん”カミ君”と”りっ君”頼んだそれまで。”」
「…!了解。」
「勿論。そう言われたらやるしか、なあ?」
「嗚呼。」
エフェメラルのフォロワーさんらに声を掛けて貰いつつ、何とか意識は保っている。本当は寝たいが、今寝ると逆にまずいと言われ、何とかタオルを入れて移動している状態だ。固まっているサワアの衣服が徐々に溶けていく。その状態に身体を起こす。無理しないでと言った女性らに止められるが、その前にある時間が、脳を埋め尽くしていく。
『きいろすきにならなきゃよかった』
「え?」
『そしたらきみがねむることもなかったのに…!』
手を伸ばしても、今は吐き気に戻しを繰り返すしかない。頭が割れそうに痛くなっては楽になって飛び起きての繰り返しだ。輪を持つ天使が、眠っている。心なしか華が咲き、ヘレスの肉体も戻って来たではないか。何を起こしたかと問いたいが、解析らと共に話をする。
「…あ、今時刻何時だ。」
「確かく…あ」
「20時か。」
そう、時間の数字で姿が戻るとあれば分かる話だ。此処からはずっと肉体を維持していることだろう。目を閉じたヘレスの姿に手を伸ばすことも出来ない。ごめんなさいとぼやく都結に大丈夫と声を掛ける。
「貴方は最善の選択をした。」
『』
「放送を見たのは興味本位じゃなくて、もうそれ以外しか見れなかった。違う?」
「え?」
「駅に連れて行けばヘレス様のような顔立ちは一目瞭然。サワアさんの身長も流石に人間と言い切るには少々高すぎる。SNSでこれ程バズっていたら、もう移動手段が限られる。」
「嗚呼掛けたっていうことか。もしも放送の人が本当に良ければ一緒に行く。無理なら死ぬつもりだったと。」
『そ、れは』
声だしたってことはほんとねと言う。それに画面に見えたコメントも流れる。そんな…とか、あきらめんなよとか。応援やら嘆きも多かった。だって
『それでもまちがえちゃうから』
「都結ちゃん…」
『沢山笑って欲しいのに、いつもそうなの…!現実か夢かわかんなくなるの。』
これが夢だったら早く醒めて欲しかった。嗚呼でも、現実ならどれ程良かったかと安堵もした。醒めなくて良かった。安心している自分が何処かに居るのだ。
『わがままでごめんなさい』
それでも、私は貴方達を捨てて行くなんてことは出来なかった。すぐに歩いて振り返った。嗚呼やっぱり無理だなって。だって私が初めて愛したお色だったから。貴方が好きだったお色。黄色を見て綺麗と笑ってくれたあの日の陽だまりを。
私は知っているんだよ。ねぇ、
すぴりと。
「…なら連れていこう。」
『え?』
「そうだね。幸いなことにもう多くの子が君の虜だ。」
『なんで?』
「じゃあ君は大事そうな人の傍で泣いてる子を放置出来『むり』るとは無理か。そっかーー。」
「猶のこと話が早い。確かに人は人ひとりで動くことはないだろう。でもね。どうして動くか。」
分かる?嗚呼分からない?でも君の心は分かっている筈だよ。
「君が諦めない声で言葉を紡ぐからだ。君の奥には何か燻ったものが感じれる。言いたいことがあるのに、何処か言えない。言い切った言葉も何処か気になる。そんな子いなかったわけないだろう?数十年も生きていたら一人でもそのひと時でもあったはずだ。君はそんな子を見捨てる子ではないと思った。」
それは文字からもそうみえたし、恐らくこの場に居る子達も。そして映像を見ている子達もそう思っている事だろう。
「何度転んでも何度間違えても良い。人間で在る今の特権だ。」
『ありがとお』
「ふふっ、どういたしまして。ほら余り泣いて居たら他の天使が泣いちゃうよ?」
「どうしようこれでコルン様号泣していたら笑うんだけど。」
「よくぞ戻られました!なんて言ったらどうするよ。」
『ふはははっそれいわない!』
コルン様きっと言うよ。
『”もっと早くに頼って下さいよ”』
そして、よく辿り着いてくれましたって。きっと褒めてくれる。抱きしめてくれることだろう。勿論大神官様らも、だ。今会うのは怖いが、それでも会わないといけない。まさか本当にまずいことだったとは予想外だったし、今後の教訓とすることとしよう。
『みんなやさしいね。』
「違うよ。人は優しい人に対して優しくしたくなる生き物なんだよ。」
『そっか!』
「…そうだね。」
彼の言う通りだ。誰も彼もを助けたいと思う訳ではない。自分の範囲でも足りなくて。努力を怠らずそれでも足りなくて、あと少しでなんとかなりそうなものこそを手伝ってやりたいと思う。例えそうしていなくたって、日頃からそう誰かの為に助力無しで行動できる子は早々いない。
そんな子を助けてやって、そしてその助けでその子がより広い世界に行ける足掛けとなるならば、一体全体どれ程良いことをしたことだと言えるだろうか。暫く調子も良いことになるだろう。助けてやれる人間にもなれた。そんな気持ちにもなれる。
『世界は案外おんなじ気持ちの廻り合わせなのかもしれないね。』
そう言った都結の言葉に少し目を丸めた後、くすりと周りが笑ってしまう。
「…全くもう」
「はっ…!お前らしいと言ったらお前らしいな」
「…ですが」
「そんな貴方だからこそ。貴方が描いた世界を誰もが見て誰もが救われた。その救いを貴方に返せられる機会がこの一度きりだと言うならば。それこそ貴方が待ち望んだ一日が巡り合わせてくるというものなのに。」
それでも貴方はきっと。