カーテンコールはくれてやる3




「ミィちょっといいか。」
『お、アメシストか。』
「餓鬼はどうした。」
『今モヒイトさん処に遊びに行ってる。どうしたお兄さんが此処に来るなんて珍しい。君通信入れる子でしょ。』
「君に何度か送ってたんですがね〜〜〜」
『え゛いやマジか…ごめん。』
「いやいや。別に構いやしないよ。こっちに資料も書類提出もあったからね。ついでの用事って所だったから。時間空いてるならちと付き合って欲しい話があってね。」

書庫に入って数か月。もうあれからある程度の知識が入った頃合い。子供は漸く足を動かすことも出来るし、普通に走って空も余裕に飛び続けていた。…というか、なんだったらほぼ成長が進み過ぎていたというか、なんというか、だな。

「処であの餓鬼…”ラヴィット”はどうなんだ?そろそろ力も落ち着いてくる頃合いだろう。」
『ちょ、うちの子と戦わせるのはまだ早いですって。』
「言っても成長的にほぼ成人近いだろうが。」
『とは言ってもコニックさん曰く「様子見でいいでしょう」って言われてんですよ〜』

最近ずっと悟空やベジータに戦わせてくれとせがまれて滅入ってるくらいだ。その話だったら断固拒否である。まぁ不測の事態とあれば話は別だろうが、変に戦いへ覚えるとメルスの件になり兼ねないのは良くない。何だかんだ言って第一子である。甘く見るのも仕方がないは仕方がない…が?

「そうはいってもお前言うほど面倒見ていないじゃないか。」
『放任主義って言って頂きたいですね。後予想以上にお兄さん方らの修正やら修復に追われているんですよね〜〜〜』
「あーちょーと野暮用が。」
『はいダウト〜って訳で、この中修正してきんしゃい。』

お前それだけだろおおおおおと言って綺麗に本の中に入って行った彼。一応言っておくが、修復が出来次第ちゃんと戻れる仕様になっているし、なんなら死なない様に修正はきちんと行っている為大丈夫である。いや〜と上から降りて来た魚に声を掛ける。

「ほんとお嬢ちゃんが来てくれて助かってるよ。此処はアイツすらも中々出入りしないからね。」
『うちの旦那が世話焼いてますね。』
「いやいや。処で本当にいいのかい?面倒みてやらなくて。」
『人間面倒を見る期間は大体成人近く迄って決まってるんですよ。』

もうあの身長やら精神はほぼ大学生付近に達しているのだ。流石に成長速度が早過ぎると言ったし、他の天使にも相談したが早い子だとあれ程の速度で成長していたのだそう。マジかよ。だからプライドも高いまま保持されるんだろうな。人間何だかんだ言って遅いからこそある程度の上から押しつけられて生き延びれているのでね。アレだとすぐにへたって死んでしまいそうで怖かった。

まぁ大神官曰く一応天使の枠組みらしい。現につい先日輪をきちんと譲渡されていた。マジかとは思ったが、どうやらあの輪、一応天使としての責務を果たすという位置にあるらしい。詳細は省くが。

『可愛い赤子の時期がマジで恋しい。マジで何処行った。』

まさか一年程度でほぼ成人するとは思いもよらなかったのだ。

そう、儀式を行い、既に一年程が経過している。今日この頃。定期的に会議も行い、やっと各々が落ち着き始めた頃だ。

「どうする好きな子が出来たから嫁ぐとか言い出したら。」
『最初はぶっころすかと思ったけど。』
「怖い怖い」
『今はそうでも。適当に死なない程度だったらいいんじゃねって思ってるよ。まぁ天使だろうし、死なないだろうけど。』
「へぇ」
『可愛い子には旅をさせよって言うからな〜とは言っても流石に早いから、宇宙での職場体験は早くても五年後くらいかな〜って話出てるけどね。』

私は正直産まれた年から経過で10年でも良いと思っている。そもそも職場体験学習をする頃合いは中学生程度。それでも三年は早い。確かに見た目も色々と良いかもしれないが、だ。恐らく挫折を体験させなければあれは潰れる。と見ている。

『私が元々そうだったし、其処迄心配はしていないがねぇ〜』

如何せん互いにプライドがとても高い子の一番っ子で。しかも笑えないくらいに最近本当にコルンと見分けがつかなくなったと来た。割とマジで見分けが付けているのは髪の毛の長さ程度だ。彼は後ろに一つ纏めているが、偶に三つ編みをして流している。髪の毛は遊べて良いと言って切らないままで居てくれるので幸いだが、これがガッツリ切って来たら本格的に見分け付かないのではと思っている。口調も割と似ているが、まだ荒いのがコルン。落ち着いてるのがラヴィットの口調である。

『恋愛の一つや二つして来たら確かに価値観変わるし、良いんだけどね。』
「大神官に会って変わったと?」
『まぁその前が一番かな。』
「おや、お前がそう言うとは。」

あの子は良かった。

『音を知らない子だった。』

私の知らないことばかりを知っている子だった。だから互いに埋め合わせていけば、もっと広い世界を見れるのにね!なんて言ったことを私は後悔していないし、きっと彼もそう思ってくれていたことだろう。手を繋いで歩いた時間も、頬を撫でて飛ばす髪の毛が鬱陶しいことも、見上げた場所にある彼の目線の先が前を見ていたのが此方を向いてくれたあの瞬間さえも。

私は嬉しいと覚え続けているのだ。

あの時間が在ったからこそ、今がある。生きていれるのも、彼が居たからこそなのだ。

「嫉妬するぞ?」
『させておけばいいよ。書庫の一つ程度燃やされそうだけど。』
「冗談は止してくれ。仕事が増えるのは互いだぞ?」
『ま、それもそうか。』

他所の男を考える暇なんて、余り持たない方がいいのはそうだろう。もう此方は妻子ならぬ旦那と子を持っている身だ。消えて無くなってしまっている元神様の欠片に縋らなくたっていいというのにも関わらず。何処かちりちりと胸を焦がしてくる。本当に時々ではあるが、ふと思い出すのだ。

あの泉の上に居た男性のことを。

戦っていた人達のことを。

その奥底には、彼が助けを求めていたのではなかろうか?と感じることが時々あったのだ。そう思っては首を横に振って掻き消してしまう。きっと、これは忘れて良い話だ。でも

過ちを記録しているからこそ、今をよりよく見えるというものであって。


下に動く影を見つけ、私はねと彼に言う。


『今が好きだよ。春は巡って来て、天使が夢を観れるこの世界こそが。』


私の生きたくて生きたくて仕方がなかった世界で在り、そして。











「お前が最も恐れていた現実だ、とでもいうのだろうか?」






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『すぴりと!』
「おや、やはり此方にいましたか。」
『どうしたの?』
「仕事、とただのご相談が。」

振り向いた彼に、場所を変えましょうと言った大神官。来た場所は、というと。書庫とは違う方向にある一室だ。会議室であり、小さな部屋になっているものは都結が落ち着ける様にと手配したもの。割と真剣な話をする時に使用される為、都結の目付きも座って変わる。


『それで、話って?』
「単刀直入に言いますね。ラヴィットさんの件、如何致しましょう?」
『動かすにはま〜だ早いと思うけど。』
「私もそう思っていましたがね、ちょっと面白い話がありまして。」

メルスの職場は元々各宇宙の平穏を守る為のパトロール所謂お巡りさん的な管轄だった。この宇宙は他にも管轄があり、宅配便とかそう言ったものもある。ふむ、と考えた後幾つか用紙にサラサラと書き出す。これは、と言った彼に整理ですよと大神官が答える。

「整理?」
「ええ。」
『女の子の定めではないからな。』
「言わなくてよろしい……」

そう嫌そうに言う大神官にハイどうぞと都結が提示した。

『ざっとこれくらいの職業は出た。どう?』
「…!貴方何時これを。」
『私だって子を持ったママなんだよ〜。』

何もキャラを幾つも作っていない。職業は色々持ってきているが、その中でも…


「技術担当?」
「ええ、貴方の職場体験場所です。」
「メルス様とは違うのですか」

時は少し流れ、その話を大神官から通達を知ったモヒイトが書類を手渡しする。現在休憩時間中であり、近くにはボロボロになっている破壊神達が点在され、天使らが軽く回復を施していた。既に彼は軽く破壊神三人程度であれば優に対応出来ている。大神官の力と、都結のある意味冷たい人離れした感覚が良い感じにマッチしており、天使らも舌を巻く程の力を備えていた。完璧すぎて逆に怖いと思う子も、少なくはない。

ぺらりと捲るものに、つまらないと言った彼。都結が想像していた通り、悟空らと仲良くなっていたのもあってか、メルスの様にパトロール隊を希望していたのだが、都結からの許諾が一度も降りていない。本人に直談判もしているし、なんならコルンやサワアが彼を連れて行ったこともあった。

が、『じゃあ今此処で私が死にそうになってお前は上の命から助けないで良いと言われそれに従うことが出来るか?』と言われ、何も言えなくなった。嘘で言っても恐らく彼女には通用しない。コルンやサワアも割と手厳しい話を聞かされている。成長が早いということはそれ即ち、それ相応の対応を求められるということだ、と。

都結は分かっていたのだ。ラヴィットがどういう方向に走る子か、を。

「母様はなんも聞いてくれない。」
「ですが言いたいことはお判りでしょう?」

メルスには組手でも判断が欠けていた。中立として、立場を弁え、確実に捕まえる時は捕まえる。が、上からの判断から逸脱した行動をとらない、という子ではない。何なら良く大神官の言うことから背いてばかりの問題児だったのだ。若い時から入って、一度人間に戻されている始末であるし、元々こういうことが起きなければそのまま命を散らさせていたくらいだった。

とは言え今は違う。メルスも天使とは多少違う位置ではあるが、中立を守る人間になっている。それがかっこよく見えるのは分からなくもないが、だとしても同じ道を選んでメルスの様に育つとはお門違いも良い処である。

「彼女はっきりとこの私に対して”見捨てることが出来る”と言いましたからね。」
「あはは、それはコルンお兄様が良い判断を下すと仰られていたのでは。」
「母の肩を無理に持たずとて構いませんよ。甘い判断は向こうだと思うんですがね…」
「ですが案外冷たい決断しちゃいますけどね〜」

先日はラムーシ様が悩まれていた惑星の件を一発で解決なさられちゃいましたし。
お母様がですか????

「ええ。破壊一択で消滅させていいと。」
「あの緑の豊かな惑星を!?…もうないのですか。」
「残念ですがね。彼女自ら仰られていました。」

ーいいよ其処だったら破壊しても。
ーですが、彼のお気に入りで
ー多少の情は持っても良いが

「”縋る行為だけはせめて一つだけになさい”と。」
「…また小難しいことを仰る。」
「そっちの方がずっと体験より難しい話だと思いますがねぇ〜」
「で、どうなさいます?受けますか?それとも拒絶しちゃいます?」

反抗なさっても我々別に構いませんし。それに管轄的には第九ですから、採用は私が執り行いますし。
っえ

「で?やります?それともやめます?」
「…やって、み、たいです。」
「…よろしい。ではその手ハズでお話を伝えておきますね。」

かかさまは。
ん?

「母様は、その…」
「…また顔をお出ししてくれることでしょう。我々からも一言お伝えしておきますから。」

現在彼女には色んな書類が届いている。惑星の管轄から、昔使っていたであろう腹心らの書物らの修復作業も兼ねている。その為多忙を極めていたし、そろそろ休憩を、と言うのだが言うことを昔から聞かなかった子だったので期待はしていない。

「確かにあれ程仕事熱心だと身体を壊されるのが心配ですね…。」
「一度スイッチが入ったら大丈夫だなんとか言っていましたが、びっくりするくらいには全く持って大丈夫な要素一かけらもないんですよね。」
「加減を知って頂きたいのは山々ですが…この際もう手を出しますか。」
「と、言いますと?」
「危険になったらどうなるか、ですよ。」
「それですが騙すみたいになって困るのでは…」
「目を醒ます丁度いい機会ですよ。」

それに体調も良くなっていると聞く。余り缶詰め状態に入っていると困る。という訳で、一手報いてみようではないか、ということだ。









泡沫の白昼夢


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