てのひらから




あーとか、うーとか、赤ちゃん言語から漸く小学生くらいの言葉を喋れるようになってきた頃。
勉学をとコルンが軽い、本当に馬鹿にしているだろうと言われて当然程の幼児向けを作ってきて、
ソレを習わせていたところにモヒイトがやって来た。

滅茶苦茶引いていたが、仕方がないのだ。

あんまりにも、出来なさ過ぎた結果である。

メルが再三言っていたのが現実起こっていたのだ。
もう出来ないというのは何故かこっちの心境が伝わるらしい。
中身は見ていないが、一瞬の空気で全てを知るとのこと。

内容を聞いたら全部当たっていたので
本当に心が読めないか不思議で仕方がないくらいなのだが。
まぁそれでも一応彼女に了承を得て、現在教えているところ。

『ローマ字逆文字にしたところでこんなん無理なんじゃ!』
「とかいいつつ、ちゃんと励んでいるのは分かっていますよ?」

そう、メルという子は本当に生真面目。

以前コルンに似ているとルトラールが
スピスに文句を言っていた意味を、
コルンは此処で漸く知ることになった。

驚く位に隠れて勉強してくるのだ。
それも絶対時間を守ってないだろうって言えるくらいには。
次の日の習える量と比例していない。明らかに勉学をしているのだ。

つたない言葉を、彼女は重複して覚える。
増える量に伴い、忘れた時の目の色が可哀想に見えてくるくらいには、
絆されていると言われたって、否定など出来なくなってしまった。

あの絶望した目の色。色を忘れたような、空の色。
光りなど知らない。見たこともないのだから。
そんな素振りになるその目の顔の色合いと来たらこっち迄驚くのだ。

どうしてそんな顔が出来るのだと、言いたいくらいには。

しかも彼女、直ぐに顔を変える上に感情迄ぐんっと戻す。
そりゃあもう後で泣いてないか心配になるくらいには絶望した顔するから
こっちもこっちで言いたいことも中々言えずじまいで、色々参っている。

そして困り果てた結果、とち狂った結果に落ち着いているということだ。
コルンの性格からして、こんな幼稚向けを渡すなんてプライドが許さないと
恐らく全天使が口をそろえて言うだろうが、現在進行形でこうなっているので、
モヒイトの開いた口が塞がらないのも、致し方がないことなのだ。

「…何か悪い物でも食べ、いや術でも掛けられました?」
「食べても居なければ掛けられてもいません。
至って接した結果の末です。」

だが、案外コレが良かったりする。

始めて実はここ三日目なのだが、
最初よりもスラスラと書き始めたのだ。

一応念のためサワアにも連絡をしたら、
本人曰く「其処迄勉学に励んでない」とのこと。
なんならちょっと勉強して
すぐに終わらす程度にしているらしいのだ。

それはつまり、ただ、彼女の自信が無いだけで、
その才能を潰しきっているというだけのこと。

「彼女の自信を確実に底上げすればすぐに上達しますよ。
なんなら我々が思う以上の文献を読みだして
意味を知っているか聞いてくるかもしれません。」
「いや流石にそれは言い過ぎでは……」
『そうだよこんなやたらむずかしいやつおらむりだ』
「最初から諦める馬鹿がおりますか。
諦めもしていない眼をして何を言うのです。」

おやばれた?とにやり笑う彼女。
いや本当にやめて欲しい。

「ちゃんと上達しているではないですか。」
『…後で痛い目あうから。絶対あうから。』
「そう言って早くも一週間は経ちましたよ?
全くその気配も何もないではありませんか。」

流石に知識を徐々に入れたら最初の方を忘れるのはあることだ。
それを理解し、克服するために日々コツコツと覚え続けることが良いのだから、
彼女の性格上それが出来るはず。ならば何にも問題がない。なのに、そう思うのは

「呪われ、呪って一体其処に救済はあるというので?
私には逃げる様に見える処か、自分の価値を無理やり固定化し、
下げ切る愚かな行為としか見えませんが。」
『そんなことない』

そんなこと、と彼女はそうやって俯くのだ。
本当に彼女の自信を殺した奴を今この場に突き出して
彼女に謝り倒させたいくらいには怒りを込めてしまいがちになる。

此処まで優しい彼女が、そうなるまで気を落すなど、そうそうないはず。
余程のことをさせているのは間違いないのだ。
それを根気強く、手厚くサポートするのも自分の役目だろう。

これくらいして当然というもの。

だって、命を救われたのだから。

闘って守れない。背中に押して前に等出れない。
ただ隣か、背中に入れ、逃げてやるしか出来ないのだ。
そんな自分らの出来る範囲が此処。

ならば全力で彼女の支援をするというものだ。
これで儚い一瞬にしか生きれない彼女が
少しでも生き延びられる可能性が上がるというならば
そんな浅はかなプライドなんぞ捨て去れるというもの。

正直出来ないと思っていたが、案外やって見ればすんなりできる。
なんならこっちの方が彼女にとって得なのだ。やるだけはやるつもり。

そんな意気込みのコルンをみて、モヒイトは変わりましたねぇと答える。


「幼稚向けも赤子が漸く文字かきし始めたかくらいのものではないですか。」
『…悲しいお知らせをしていいですか?』
「え?はぁ、どうぞ?」
『現在進行形でコルン様に教えている内容も正直赤子向けです。』
「っ!?!?!?!」
『ごめんよぉ〜〜でもアレをしとかないと後がキツイんで……。』
「…成程、お互い様だった、という訳ですね?」

そういうことらしい。

まぁフェアと言えばそうだろう。
どうしようととんでもなく
困惑気味にこっちを見ていたのを了承していたが、
そういうことだったのか。

「まぁ別に構いませんよ。こっちもその容量でやっていますし。」
「ちなみにどれくらいの年齢対象で?」
『言うてもう小学生6歳児だから…』

割と話が出来て会話もそこそこ分かる程度らしく、
それなら別にと思うが、まぁそれだとしたら
フェアではないくらいの差は出来ている。

「なら別の道を教えて頂ければそのレベルまで
上がった時次の資料をおつくりします。」
『…ええんですか。』
「いや寧ろそういう話はどんどん仰ってくれなければわかりませんから。」

この場所で会話をするというのは、つまりそういうことなのだ。
モヒイトもなんだかんだ言ってそっと座り、
三人で話をしながら勉強会に似たような形を取っている。

因みにウイスの件も然りだが、
モヒイトが来ているのはコルンが以前メルに「各天使との会話を」と言ったもの。
要は日常会話で何を話しているかを聞かせる為に呼びつけているというものだ。

二日前くらいからこれを始めたので、
明日はマルカリータ辺りを呼ぼうかと思っていた。

「そういえばあれから吐血は一度もないのですか?」
『ん?ええ、もう綺麗さっぱり!』
「違いますよ、正確には吐血程の滲みはない、でしょう?」
『サワア!!お〜〜〜かえり!!!』

はいはい、ただいま帰りましたよ。
そうメルが席を立って腹に突っ込んだ彼女を軽くあしらう彼、サワアがモヒイトの疑問に答える。

「咳は寝る前辺りには出ますし、熱も昨日出たばかりですから。」
「っメル様?!!?!?」
『う゛言わないって言ったのに……』
「本気で捉えられると後で怒られるのは貴方の方でしょう?
組手は早くても再来週あたりでしょうかねえ?」

うぐ。

正直余り運動が得意ではないが、空は飛びたい所存のメル。
だが現在進行形で彼女は華樹神初心者マーク付き。
普通に外に出ても空を飛ぶことは許されない。

まぁその前に千年間外に出れる訳もないのだが。
仮に出れたとしても地を踏むことは許されない。
前にアルメリアが足を下したらしいが、かなりの火傷を負ったらしい。
因みにルトラールの時は凍傷になったようで。

メルの場合どっちに転がるか、下手したら両方。
普通に増幅されて足が吹っ飛ぶとか在り得そうで怖いのだ。
じゃなかったとしても、歩いたり走ったりしか出来ない状態。

気を使って空中に飛ばせることは可能だろうが、身に纏うことは不可能。
それは地上で戦闘不能と言ってもおかしくない形であってだな。

『…もし仮に、地球とか遊びに行くとしたら、どうなるの?』
「そうですねぇ、下界では原則天使は同行でしょうね。
私が貴方を抱えていくので実質天使は二人になります。」
『うう、おろして…私を下ろして。』
「下せるものなら下ろしたいですが、
仮に動ける状態になったとしても付きまとう形になりますよ?」

うう、どっちもどっち。

昔の様に旅なんて甘えたことは出来ないのだ。
これなら華神とかそこら辺の人間になった方がマシか。
いや、それを彼らが許してくれるわけもない。

なんなら、この世界が、理の人間らが、許さないだろう。

いずれにせよ、向こうには行かねばならないのだろうから。

それまで、そう、それまでの時間なのだ。
淡い、夢物語を、浅はかなこの、愚か者がみるだけのこと。
その先にある、空白には、幸福など残るのだろうか?

「エフェメラル」

そう呼ばれてふと上を見る。
優しそうに微笑んでくれる彼の手が温かい。
目を閉じても真っ暗闇で、白い世界なんて何処にもいけない。

うん、大丈夫だよ?何処にもいかない。
何処にも、存在など、しえな


『…だれ?』

そうメルはちらりと後ろを振り返る。
彼女の目線にコルンらも目を向けた。
その先は、外にあり、黄金の草花が彼女いや彼か?
足元の白と青色の華の上に立つ一人。

白い布を身体一つに身を包み、その黒い髪の毛が映えて。

「っ!!!」
「っ消えました、か」

急いで彼の身ぐるみをはごうとコルンとサワアが飛び出しかけたのも遅かった。
綺麗に居なくなった彼の居た場所に咲いた華にコルンが止まる。

そんなはずはない、それがそうなら、現実を見せるべきではない。
嘘だ、そんなの嘘で在って欲しいとコルンがぼやくのに、サワアが首を傾げた。

「コルンさん?」
「…いや、憶測で物事を推し量るのはしない方が良いでしょうね。」

何でもないですと立ち上がるコルンの元に、メルが小走りで駆け寄り、その後をモヒイトが歩いてやってきた。

『誰か知り合い?』
「いえ。エフェメラル様、貴方此方にはご自身の知っている範囲で、且つ心を許した者しか入れないと聞いていますが、それは今現在も適用されておられるのですか?」
『え?ああ、うん。そう、だけど…』
「それは例えば、全く知らない者がこの中に入って来た時、貴方は知らない人と知れますか?」
『…それはしたことないから、なんとも。』
「ならば実験をすればいい、ということですね。わかりました、少々時間をとっても?」

ええ、構いませんがという彼に、少しお待ちをと席を外すコルンに、メルは首を傾げた。


暫くしてコルンはリキールを連れて帰って来た。


「メル様、今から私が直接とある方をこの地の何処かに入れます。」
「っ!!」
「ご安心を。此方で間引いた下界の者です。」
「本当に知らない見ず知らずの人間ということですか。」
「ええ、貴方は何処に誰がどんな形で、気を持った者かを探って頂きたい。」
『わかりました。目とか手とかで伏せた方がいいです?』
「何をしても構いません。」

合図をすればします。何時でもそう言ったコルンにきょろきょろと辺りを見渡すメル。
トテテと裸足ではあるものの、庭を一周して回ってくる。それどころじゃない。

「ああちょ、メル様?!」

足を軽くふいて中にダッシュで入っていったではないか。
しかもドアに軽くぶつかりながら
「いったあああああ」と言いながら笑ってドタドタ走り回る。

二階にも行ったのだろう、ばんと窓を開けてよしと声をかけた。


『サワア!受け止めて!!』
「え?ええ?!あっちょ!!エフェメラル!??!」

ばっと飛び降りてきたメルに、慌ててその地に軽く飛び彼女を受け止めた。

『よし!!いいよコルンさん!!れっつご!!』
「わかりました。」

メルはそのままぱっと目を閉じる。
暫くして、コルンが声を掛けた。

「もう既にこの地の何処かに人が入っています。確認できますか?」
『…変な気があるのはわかる。後ろ、庭の反対側、裏庭に近い所からうろうろしてる。
こっちに来そうだけど、声にビビって困ってる感じする。』

目を閉じたまま、サワアの身体にまだ軽くくっついた状態で言うのだ。
んん?と首を傾げつつ、眉間にしわを寄せていう。

『髪は、黒?身長はサワアよりもひく、い、か。私よりかは高い。
人間の男性では少し高めの身長くらいか。男だな?筋肉質って訳でもない。
肌はグレーか?えげつないね??色えぐない?眼は赤か。きれいだねーーー???』
「え?え?えっ本気で言ってるのか?」
「リキール様?」
『あっこっちきた。今サワアの後ろ斜めの角から見てくる。
あ〜〜臆病な子なのね〜〜かわいいいいいいいいいい!!!』

ねぇ目あけていい?あけていい?そう言うメルにコルンは構いませんよと答える。
サワアらもそれと同時に後ろを振り返った。するとどうだろうか。

「っ!!!!!」
「…彼女が言ったこと全て一致している。」
『わあ!!!!!!!』
「では先に彼をお送りします。リキール様。」

分かったと言って手を背中に置くリキールに、灰色の者も消える。
更に暫くして、帰って来た時は食卓の所。

お腹が空いたので食事を作って席についていた頃だ。
帰って来たコルンらに席に付けとメルがバンバン椅子を叩く叩く。

頂きますと言って食事にありつく各々に、それでとサワアが聞く。

「わかりました、よね?」
「…ええ、これで二択に絞ることが出来ました。」
『ふぁ?ふぁんふぁ????』
「…とりあえず食べてから話して下さい。」

あとそんなにがっついて、
女性という者がなんというはしたないことを。
あ〜〜〜〜んんあああ〜〜〜〜〜〜。

そう嫌そうな顔で拒絶するメルに、
隣に座っていたコルンがハンカチを取り出して口を拭いてやる。
真ん中にメル、左にサワア、メルの右側にはコルンが座り、
サワアの真正面にはモヒイト、
コルンの真正面にリキールが座って食事を共にしている。

かなり嫌なのだろう。拭き終わると
左右に頭をぶんぶんとふるってからまた食べ出した。
この感覚、飼い主に口を拭かれた犬の様な姿に、
リキールはそっと言わずに食べ物に手を付けることにした。

余程お腹が空いていたのだろう、会話も入らずにひたすら食べている。
本日のお昼はスパゲティ。真っ赤な口元は無理してがっついたのがバレバレ。
手で拭うとぴゃっと肩が身体が飛び跳ねるコルンが隣で𠮟りつける。

これはどっちかっていうと、子供の面倒を見る兄、いや、母親では…。

「それで?二択というのは?」
「嗚呼、メル様が認識している者でも、気を想い出せない者か、
或いは気を知らすことを何かしらで制御している者かの二択というものです。」

あれ程事細かに分かれば、この感じで行けば後者だろうが。
半分程食べて水を一気に飲んだメルがぷはーと息を吐いた後ぼそりとつぶやく。

『…あの姿、そっくりだったよ。』
「っ、まさか」
『うん。切られて、引きずり出されたの。嗚呼ごめん、食事中だったね。』
「いえ、構いません。そんな内容になる予定でもありましたし。」

子供を無理やり引きずり出され、その場で殺した者。
痛みに耐えるのだけで必死なのに、当時のメルは動いたという。

『とにかく子供だけは殺して欲しくなくて。
傷一つ付けて欲しくなかった。
…どうかお願いって、声、出してたなぁ。』
「…あの者と間違いない、そうですね?」
『うん。間違いない。あの人だよ。』

あの不思議な感じ。間違いがない。
それに、コルンの目が落ちる。
非常に残念そうな顔に、メルは首を傾げた。

「すいません、軽い私情に付き合わせてしまい。」
『え?あ、ああ、別に大丈夫!それに私もここを作ったの夢の中だし、
正直こうして皆と居れるのもびっくりだしね!』

そう、夢の中で思い描いた情景が現実になっているのは意外だった。
ひょっとしたら夢うつつにしただけで、現実じみていない
この創造こそが、私の夢なのかもしれないが。

今更そんなことにしがみついたって何もならない。

ま、するとしても、創造でも最大難関のやり方を取るつもりだ。
偽造の、偽物の、人間。ドール。人形。最大で大体3人程度だが、
最終的には50人近くの人間を一斉に出して、且つデモンストレーションを執り行えるようにはしたい。

『ね、サワア一つ気になったことがあるんだけど、聞いてもいい?』
「ん?なんです?」
『天使らもさ、普通にこう人体の模倣というか、同じ姿を作り出せること出来る、
ん、だ、よ、ね????自分以外とかさ。ほら。』
「ええ、それくらいお安い御用です。」

そう隣から聞いたメルに、サワアが反対の方を向き、指を鳴らす。
クスがぱっと現れメルの方向いてニコリと微笑んで来てくれた。
それにテンションが上がったメルは両手をぶんぶんと振るので
食事中におやめなさいとコルンから指摘を貰って軽くしょげている。

「それがどうしたというのです?」
『これってさ、自我というか持てたりする?』
「それは出来ませんね。いや、正確には出来なくはないがしたくない。というものです。
自分が産んだ者が何かの迷惑になることは余り宜しくありませんし。」

それに似たような者を作り出すということは、それ即ち同じかたちをした同じ人間が
その世界に二人居るというもの。

偶然ならまだしも、必然的に、故意的には、流石に悪質的である。

『なら時間制限とかかけたりとかは?』
「何が言いたいので?」
『自我持った者が、君らみたいな身勝手の極意を持てるのかなあと。』

正確には意識と肉体を切り離し無意識に任せる力の応用。
模倣した生命体と、自分という生命体を切り離し、
無意識に物理的な会話や行動らを
デモンストレーションとして行えるかどうか、ということ。

「まぁ素質があるものを作り出せば可能でしょうね。しませんが。」
「したいのですか?エフェメラル様。」
『ん〜〜?んん〜〜〜〜〜〜!!!』
「…スパゲティとやらが美味しいのはわかりましたから。」

口の中に入れ、メルは聞いていたことが
美味しい感情にドンっと突き飛ばされて我を忘れる。
いや〜〜〜だって美味いものは美味いのだ!!

頭の上からポンポン花が出る気分だ。
まぁ物理的に出せなくもないだろうが、
こういうのは出すものではない。

「それで、するつもりがおありとあらば、ある程度の制限は掛けるべきですよ。」
『と、いうと?』
「人選ということですよ。下界の者を作るなど言語道断。何をしでかすか分かったものではありません。」
『私が作るからそもそも何をしでかすか分からなかったりしなくない?』
「ぐっ」
「っくくく、否定できないのが困りますねぇ〜」

本人は全くびくともなんともしないでサラッと自分を貶すが、
他の者がそれに同意する程のメンタルは持ち合わせていない。

「だとしてもかなり先の話しにはなるでしょう。
あんな模倣を五人も六人も出そう者なんぞ、
気が触れていると言ってもおかしくなんてない。」
『つまりとち狂った考えはやめろと。』
「分かっているなら言わないで下さい。」
『えへへへへ』
「褒めてませんからね????」

どういう思考に変えてるんですか。戻って来たんだからそろそろ直してみては?
いや〜そんなの無理だよ〜とメルは答える。既にスパゲティは完食していた。

「何故です?普通に貴方程度であれば戻せるのでは?」
『あ〜〜〜いや〜〜〜その〜〜〜〜〜』
「コルンさんそれくらいにしておいてやってください。」
「ん?何故ですか?」
「恥ずかしがり屋さんなっいった!!ちょエフェメラル!!」
『ん゛!!!!』
「ほ〜〜?この僕の口を塞ごうとは百年いや一億年早いですよ〜?
今更戻してしまえば、自分の素顔が晒され、丸裸になるのが嫌だ。
っていうだけの薄っぺらいプライドを保っているだけなのでしょう?」
『ん゛に゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!』
「…図星、だそうですね?」

両手で口を塞ごうと手を伸ばせば、その手を軽く捕まえて上に上げられる。
何にも出来ない為、言うなこの野郎と言いたかったが、
其処迄強く言ってもどうせ聞かない。

メルは猫が威嚇するように低い声で反応する。
こういう時は決まりきって図星なのだ。
シャーと威嚇する音に、ケラケラとサワアが笑う。

これで本格的な喧嘩別れとかが無いからまだマシだというものか。

食事が終わる。作業が始まる。作業を止めて、食事を始める。
その繰り返しで、毎日が過ぎ去っていく。

その過去をずっとずっとずっとずっと、見つめて。
彼女は何処に身を置けば後ろを振り返ることなどしなくなるのだろうか?