近づかないで





コルンとのお勉強も大体一か月程過ぎ去った頃だろうか。
軽く話も分かるようになった。

「…ふむ、まぁ、いいでしょう。」
『やた〜〜〜〜!!!!』
「ま、23点ですが。」
『びえ』
「スペルミスが多すぎます。少々厳しく採点をしたので、この点数ですが。」

此処とか此処のミスが多すぎますので、覚えておいてください。
そう言って文章の正確には単語のミスを指摘するコルンに
メルははぁいと答えてシャーペンの頭をノックする。

文字自体は書ける様になったと思う。メル曰くローマ字とやらで逆にかけばいいので、どうしようもない時は先に元の形を作り、そのまま反対にしているのを見るが…それもいつかはしなくなって欲しいものだ。

いや、させるつもりではあるのだが。まだ、と言った所か。

本当にこの状態、自分も人が変わったなとは思う。
もっと昔は厳しかったし、そうしたら何時かは楽になると思っていたから。
何も出来ずに、手を下すあの時間だけは、妹弟らに味合わせたくなかった。

彼女はそのことを、強く知っているからこそ、しない方が良いと思っただけのこと。
これ以上知ったら本当に何処か知らない見えない所に姿を忽然と消しそうで怖いのだ。
もう、貴方が居ない世界なんて生きれない。お兄様だけではないということを、彼女にも知って欲しいものだが、それはいつかに取っておくことにしよう。

それにしても。

「本当に会話自体は問題ありませんねえ。」
『ほんと?!?!まだ伝えれなかったり、分からなかったりするけど。』
「前と比べれば見違える程ですよ。よく勉強していますね。」

そうクスリと笑ってコルンはメルの頭を優しく撫でてあげる。
すると、キューと喉を鳴らして目を閉じ、
その撫でた感触と褒められた言葉に酔いしれ身を包み切っている。

顔が崩れるその姿は、サワアの時にしか見れないと思っていたが、
どうやら信頼関係が築けることが出来ればこうなるらしい。

褒められ慣れていないから、そう聞いていて、
ちゃんと褒めれば意識してくれる。

顔を真っ赤にして、目を合わせずに。

上目遣いでこっちを見る者だから、
誘っている以外見えないことを、
彼女は知らずにやってのけているのだろう。

全く、最初はかなり引かれてあんまりの引きにショックを受けていたが、
最終的にこうして懐かれるのであれば、あんなもの大したことはないなと
案外現金な思考に呆れて鼻で笑ってしまった。

『どうしたの?』
「っくく、いいえ、なんでも?そういえば今日はどうします?
私にもテストしてくれるのですか?」
『ん〜したい?』
「そうですねえ、したいと言えばしたいですね。」
『ならこっちおいで。』

そう言ってメルが連れてきたのは図書館だ。
メルが最初、こっちに戻って来た時に整理していたのを想い出す。
それからもう、早くも一か月余りの時間が過ぎ去っていたとは。

案外早いものだ。

「…ん?これは」
『此処の資料どう?読める?』
「ええ、読めます。読めますよ??」

ならそれでテスト完了というものだ。
そう言うメルがじゃあと手に取る。

「…本気で舐めてます??」
『っへへへ、今までのおさらいテスト。』

それは小学生の三年生いや、小学生レベルのテストの資料を持ち出してきたのだ。
メルからは最初の方に基礎知識として教えて貰っている為
これがどれ程幼稚なレベルなのかを知って嫌な顔をするコルンにメルはにやにやとしている。

メル曰くコルンらの授業は英語とそう変わらないという。
日本語の様に細かい言葉を覚え、そのごちゃ混ぜ形式ではない為
割と方式さえ覚え続ければ出来るのだというのだ。

まぁ、そのスペルミスが減点対象になっているのを、彼女は忘れているのかどうか…。

『じゃあやってみよっか。』
「よろしくお願いします。」

制限時間は同じ様に一時間程に設定している。
今回は半日時間を取ってきているのだ。
リキール曰くやることが無いと言っていたが、
単純にこっちに気を回してもらえているだけのこと。

今度彼には礼をしてやらねばと思っているとはじめとの掛け声に用紙を裏返した。

+++++++++++

『いや、完璧。満点花丸あげちゃう。』
「いえ、それ程しなくとも…。」

赤ペンで丸を付けていくメルに、右斜め上の端に百点と一緒に花丸を貰うコルン。
先生の花丸好きだったんだよね〜とメルはケラケラ笑ってコルンに手渡す。

『花丸貰えたら次もしよう〜って思ってさ?よく花丸貰うためにお勉強してたなぁ。』
「そういう意欲の持って行き方を良く出来ますね?普通面倒になったりしないのですか?」
『そりゃ最初はね?でもさ、花丸貰えた時の先生がした表情。…とっても、嬉しかったから。』

そうメルはうんと溜めて嬉しそうに言うのだ。
うっとりとして、その情景を想い出している。
酷い地獄に居た時の、小さな幸福。
その幸福に、彼女は生かされて今こうして生きている。
その先生とやらには感謝してもしきれない程だろう。

無邪気に、ただ好奇心を知識に注ぎ、成長していく彼女が。
こうやって生きれるのは、サワアのことだけではない。
周りに救われて、彼女は生きているのを、
彼女本人が気付いているから尚の事。

「では、私も。何時かそう致しましょうか?」
『え?い、いいの?』
「勿論。頑張ってくれれば私もやりがいありますし。」

それに、こんなにも真っすぐ見てくれるのだから、
それ相応の対価を与えてやらねば意味がないというもの。
そう言えば、メルの目がキラキラと向いてくる。

『ほんと!?!?ほんとに!?!?!?』
「っえ、ええ、別に花丸くらい対して意味等、」
『わ〜〜〜〜!!!!』
「(ただの線をくっつけた模様で、意味等ない。
…なんていうのは野暮、と言った処でしょうかねぇ?)」

頑張るね!そう幼子の様に目をキラキラさせた後にっこりと笑って答えるメルに、コルンはええと答えてやった。
なんてこんなにも純粋に前を見るのか…いや、まさか。

「(コレを守る為に、貴方は数多の己を捧げてきた。
今此処に居る貴方こそが、0であり、真の形だと…
そういうならば、本当に誘っている以外何物でもないんですがねぇ。)」

きっと他意などないのだろう。こういう子なのだ。エフェメラルという子は。

小さな花丸ごときに、とは思うのだが。
その小さな幸せだけに囚われ、そしてその先を見続ける者。
境地にしか、生きれない者を、殺したその者を想い出す。

「(私はまだ貴方だと言い切りたくないのですよ。
無実の罪、というのも在り得ます。)」

いろは歌の上を取れば「無実の罪で殺されるから助けて欲しい」
という意味になるとメルはいつぞや言ってくれた。
こうして上だけの言葉を繋げて取る文章が彼女は好きだという。

似たような文章もあって、日常的なものだと調味料のさしすせそ。
とか、今では覚える容量で変化して受け継がれているとのことで。

「頑張り過ぎて無理のなさらないように。」
『うん!』
「貴方は無茶をし過ぎますしねぇ。」
『そんなことないですよ?それにしてもコルン様のお手手気持ちい〜ですね〜。』
「いえいえ、そ、んなこと…」

はて、こんなにも彼女の体温は熱かっただろうか?
というか、心なしか顔が赤くなっている。

「…エフェメラル様」
『ん?』
「失礼」

メルの身体をそっと抱き上げて移動し始めるコルンに
メルはえっえっと顔を動かす。

「どうされました?」
「熱が高いので寝かせにと思いまして。」
「おや、確かに顔が赤いですね。」
『え?でも私そんなしんどくないのに……。』
「これから体調を崩す可能性もあります。では。」
「タオルとか用意していくのでそのまま上がって行って下さい。」

そう言う彼に、コルンはぺこりとお辞儀をした。
二階に上がるとメルは待ってと声を掛ける。
指を指す方向はひたすら真っすぐ。

「…っ、よい、のですか?あそこは貴方の寝室でしょう?」
『サワアは前に入ってるし、貴方でも別にいい。』
「……襲われてもいい訳出来ませんよ?」
『体調悪い子を襲う人だと私思わないなぁ。』
「ぐっ、いいますねえ?」

まぁ部屋に入れるのを想定してサワアも許可を出したのだろう。
本当にこの二人は、どれ程自分に信頼を渡していれば気が済むのか。
奪われるかもしれないとか、間違いなく思ってもしないというのだろう。

したらどうでるか、見ものだが。

まぁこの関係性は今後二度と叶わなくなる。
それはさすがに、きついと思ってしまう。
嗚呼もしこれが貴方の作戦通りだというならば、
本当に白旗をすぐに上げてしまえるというもの。

「気分は?」
『…少し、悪いかも。』
「でしょうね。顔色が悪いので。」

赤く火照って苦しいのだろう。肩で息をし始める彼女にコルンは目を細めた。
身長は自分の腰程度しかないその小さな身体が、熱に惑わされている。
眉が上がり切り、ベットの温度が気持ちいいのか目を閉じて身体を一度も動かさないまま
コルンの手で取られたシーツに身を包まれていた。

「明日はゆっくりお休み下さい。此処一か月余り休憩もとれなかったでしょうし。」
『でも…』
「言う事を聞かぬなら花丸はなしですよ。エフェメラル様。」
『うう、ひどおい』
「っぷ、くくくくっ、ええ、酷くもなります。
貴方が元気にならねば、私もきついですから。」

ぐったりとしている姿は余り見たくなどない。
元気に笑ってぴょんぴょんと飛び跳ねているくらいが丁度良いのだ。
それに、この原因は自分の方にもあるというもの。

彼女を指導するのは非常に楽しいと思っているのだ。
そりゃあ怖じ気づいているというのに、こっちを見る目は変わらない。
徐々に心を開き、いつの間にか隣に居ても全く意識しないというのに、
いざこっちが近づけば驚いて意識して赤く頬を染めて笑ってくれる。

愛弟子以上の意識を向けてしまっているのは、
もう認めざるを得ないことだろうが。
でもそれでも、彼は耐えているのだ。

こんなことをしても、私は貴方だけを見るのだから。
大丈夫だと、メルは暗黙に、彼へ目を向けて笑う。
だから耐えろ、その痛みを苦しみを絶望を快楽と変えて。
そうして、真っ白な場所に、身を墜としてしまえと。

まさに悪魔の所業。

本当に悪魔ではないかと思わせてくるが、
まぁそんな彼女も今ではベットの中。
悪魔とて熱には勝てないというのだろうか。

息が上がり始めた所でノックが入る。

「失礼、どうです?容態は。」
「熱が上がりました。もうろくに話せる感じではないでしょうね。
…出来れば回復させてやりたいところですが。」
「我々の回復で、彼女の免疫が衰えては元も子もありません。
こればかりは努力して直してもらうしか他ないでしょう。」
「でしょうね。一度下を片付けてきます。」
「そのまま帰って頂いても構いませんよ?」
「いえ、流石に時間もあります。
様子を少し見てから帰ることにさせてもらえると助かりますので。」
「わかりました。では手伝ってもらえますか?」

そう言って二人が捌けようとした時だった。

「…メル?」
『っ』
「…お兄様は此方に居て下さい。後は私が致しますので。」
「ええ…それでは、お言葉に甘えて。」

ぱたりとドアが閉じる。それに伴いサワアがメルの方を振り返った。
ぎしりとベットに腰を掛け、メルの頭を撫でる。

「大丈夫、何処にも行きませんよ?」
『っ』
「っくく、甘えたさんになっちゃいました?」

眠い時と熱が出た時。正確には余り考えられなくなった時に起きる状態だ。
メルは元々寂しがり屋で、甘え下手の子なのだ。
なんだかんだ言って彼女はプライドが高く、
その分愛情に接する機会を自分で奪いつくしてきた。

寂しいけど、大人になるのだから。お姉ちゃんになるのだから。
そう言い聞かせて、自分の欲望をとにかく殺し続けたのだろう。
黄金の草花が生い茂る中、自分と瓜二つの己をいともたやすく殺した日の様に。

頭や手や足を軽々と切り落とし、殴り、斬り、殺し続けた。
あの殺意しかない眼のような、あの子が。彼女を苦しめる。
悪魔とも言われる様な、そのギラギラした芽を、摘み続ける。

彼女の心は魂は本当に消えることを知らない。

まさに、選ばれた存在と言っても過言ではない。

『きもち、い』
「そうですか。ならこのままでもいいですよ?」
『う、ん。』
「っふふ、本当に可愛らしいですねぇ?襲ってしまいますよ?」
『しないく、せに』
「ま、そりゃそうですが。元気になれば覚悟して下さいよ?」

えーと笑うメルに、サワアはクスリと笑って見せた。
確かに朝見ていた時よりもぐったりしている。

恐らくテストをして終わった達成感と同時に
今までの疲れが一気に押し寄せてきたのだろう。

次いでだから暫くはテストをせずに
体力維持のための戦いを入れても良い頃合い。
天使らとも仲良くなった彼女ならば、きっと大丈夫だ。

なんだかんだ言って天使らも妹の様にメルを可愛がってくれている。
最初はタジタジだったが、今ではさん付けで話をしているくらいだ。
加えて下界の者ならまだしも、あの絶滅したであろう華樹神が再び戻って来たのだ。
なんなら兄や姉が世話になった者のお子とあれば、皆手を貸すというものだが、

ソレを抜きにしても、彼女は充分に可愛らしい性格をしていると思う。


「(そんな真っ直ぐに見つめる子は誰一人としていませんからねぇ。)」

なんだかんだ言って天使。人間の様な情など向ける訳もない。
だが彼女は人間と天使の間に位置する子。情を持つのも無理はない。
そしてそのあたたかい感情に天使らも絆されていく。
コルンが良い例と言った処だろう。

彼は厳粛にがモットーで、とことん厳しくしていくのだが、
メルの性格から色々買ってくれて彼とは思えない程に甘く指導しているのを弟や妹から連絡を毎回受けている。
その為一応彼にも告げ口をしようかと思ったが

「…あんなにも嬉しそうな顔を見るのは、初めてですからねぇ。」

愛おしそうに、すくすくと育っていく子を見つめるソレ。
愛を与えているのだ。知らないであろう、愛を、感情を。
それに気付いたメルはニコリと笑って笑みを返す。

軽く叱ってはええんと半泣きになるメルだが笑みは絶えない。
穏やかな昼下がりの日常が、今ずっと続いてくれている。
仕事も割と忙しい時は忙しいだろうに、間を縫ってでも来るのは
彼女がそんな真っすぐに自分を見てくれるからだろう。

彼女の優しさに感化されたのは彼だけではないのだ。

自分もまた、同じ様に。そしてその痛みを封じて生きてきたのだ。
漸く、貴方とまた、この時間を過ごせる。
それまでどうか、この感情を止めてと。時を止めて隠しきっていたのに。

「不思議ですねぇ、貴方がかえって来たら戻ってしまうんですから。」

……あんなに冷酷だったのに。
星を軽く消してきた数など、もう数えきれない。
代行も数えきれないほどしているから、この手でこんな綺麗な、
それこそ殺しを知らない子に触れるなど、言語道断。

神の裁きを受けるに値すると言っても
おかしくないくらいには罪深き行為だと思うのだが。

彼女はそんなことないと、私だけでなく
皆の手を取って優しいと言ってくれるのだから。

本当に何も言えずにそうですかとしか言いようがない
殺し文句をサラッというのだ。この子は。
このエフェメラル様というお人は。

温かな陽だまりを作り出すのだ。
まるで此処が、永遠の時間の様に。
時が止まったかのような、そんな居場所の中で。

貴方はずっと、一緒に居てくれる。

「早く良くなってくださいね。」

そしてまた、追いかけっこをしてしまおう。
ケタケタと笑ってきゃっきゃとマルカリータと遊ぶのを想い出す。
待って待ってと走る彼女に、こっちですますよ〜と笑ってふわふわ浮いて移動する彼女。

手に取れるようで取れない位置で浮くのだから
普通怒って掴めるようにしろだの文句をいうだろうに。

彼女は一切そんな素振りも考えもしない。
ただ前に居るマルカリータを捕まえる為に走り続けるのだ。
息が切れて咳き込みだすと止める。

そして元気になったらまた同じことの繰り返しだ。

仲が良いことは良いこと。
貴方が苦しいと、皆が苦しそうにする。
貴方が笑えば、皆も笑うのだ。

この場所は、本当に、恐ろしい。

「天使を悪魔に変えてしまう、恐ろしい天使さん」

軽く額にキスを落すサワアに、メルはううんと唸る。
どうやら本当に寝入ったようだ。
クツクツと喉で笑って居るとコルンが入って来てくれた。

「失礼します…と、寝ていますか?」

しーと指を立てるサワアに、コルンの声が落ちる。
音量を絞った彼に、ええと静かに答えメルの方を向いてやる。
本当に疲れているのだろう。ぐったりと寝ている彼女。

そして、この部屋の姿と言ったらもう

「向こうの世界に似ていますね…」
「この子が一番長い時間を共にしたのでしょうから。
此処が彼女の安心出来る場所、と言ったところでしょう。」

ドアを開けると右奥に続く長方形型の部屋奥にこのベットはある。
ベットの頭の先には彼女にとっては広めのL字型机と椅子が置かれていた。
平らな薄い板と箱と、何かの長方形の板が置かれているが、
きっと彼女が使っていた物なのだろう。

白く綺麗に掃除がいきわたっている。

壁は幾つか本棚が敷き詰められている場所もあり、
二か所程広い部屋に机と椅子が置かれている。

「みてやります?」
「本当に良いんですか???」
「寂しそうにしていましたので。」

懐かれて嬉しいのでは?
そうですね、嫌とは言い切れませんね。

そう言ってサワアは自分の居た処をコルンに譲ってしまう。
本当ならば彼すら寄せ付けたくない気持ちにもなるのだが、
メルが嫌がるだろうし、そんな彼女を見てまでして守りたいとは思いたくもないのだ。

ぎしりとベットのきしむ音がしてか、メルがそっと目を開ける。
起きてしまったのだろうか、ぽけーっとした目で身体を動かし始める。

「っ、これ、じっとしておきなさい!」
『っん』
「〜〜〜〜〜?!?!?!」
「っくくくく、そのままでいいですよ?」

手を伸ばしたメルがコルンの手を取り、
そのまま腕ごとぎゅっと抱きしめだしたではないか。
軽くベットにもたれる形になってしまったので行儀が悪くて姿勢を正したいが、
彼女の嬉しそうな顔と、その腕から伝わる熱い熱に目を細めた。

どうやらかなりの高熱になっているらしい。
冷やしたタオルを上にかけても、秒で取られる。

「これ、ちゃんと置いて下さい。熱も下がりませんから。」
『や〜〜〜〜〜〜』
「嫌ではないですよ!まったくもう……!!!!」

怒るコルンだが、ばっと引きはがすことなどしない。
そうして泣かれたら猶更困るのはコルンの方だからだ。
ぎゅっとしてし続けるとそっと手を放すのだ。

もう大丈夫だからと言って彼女はベットのシーツをガサガサと丸めて抱きしめる。
そうやって、何かに抱き着いてよく寝ているのだろう。
うとうととした後、安心したのか目を閉じて本当に寝だしたのだ。

この人の居る前でよく安心しきって寝れると思う。

いやそれ程辛かったのなら余り見れなかった此方の落ち度だ。
コルンはため息を吐いた後、また来ると言って今度こそ帰ることにした。

一応見て充分大丈夫そうだと判断したのだろう。
送れなくて悪いとサワアが言うと気にするなと言わんばかりに首を横に振った。