海の底のついこないだのお話






前回のあらすじ

メルとサワアが小さくなっちった!!!


『じゃあ、むすんでするよ!』
「…なんか人増えてません?」
『なら後でやりたかったこと全部出来るね!』
「まだあったのですか!?!?!?」

あれ程やったのにと驚くサワアにうんとメルは頷いた。

『あ〜でもこんなにいるなら通りゃんせとか、
はないちもんめとか、かごめしたい!!』
「それはなんですか?」
『サワと二人じゃできないの!お願い遊んで〜〜!!』
「ふふ、貴方の頼みとあればするしかありませんねえ。」

大神官様からもお願いされていますし。
そう言うウイスにやたーとメルはぴょんぴょんと飛ぶ飛ぶ。
これを見せたら羞恥でベットから出て来れないのではと
ふとコルンは考えていたことをやめた。

現在モヒートやヴァドスが参加し、天使は6名になっている。
このままでは全員来るのでは…というかほぼ来るのだろうな。

「それにしても大神官様のご友人多いですね?ご兄弟ですか?」
「ええ、現在は全員で12名いらっしゃりますよ。」
『ええ!??!いいな!!お兄ちゃんお姉ちゃんより取り見取り!!!』
「メル様???」
『メルも一人二人ほしい〜〜〜!!!』
「嗚呼また始まった…」
「また?」
「最近かか様…大天使様の中にお子がおられると
お聞きしてからずっとああなんですよ。
全く兄も姉も自分の前に生まれていないと意味を成さないというのに。」

そう項垂れるサワアに、昔から駄々をこねていたのをなだめていたのを知る。
本当にちゃんと面倒を見ていた兄なのだろう。
自分らの時も割とそうだったが、此処まで接することはなかった。

…いや、するのを止めたのだろう。

彼女が寂しがったり、彼女が羨ましくするならば。
一緒に愛でようと、そう思って止めたのならば。

どれ程心優しくさせて貰えていたのだろうか?

「すいません、ご迷惑をお掛けします。」
「ああ、いえいえ…」

あと普通にいつも通りの対応にこっちが寧ろ困る。
メル程はじけてくれたらまだ別人だと対応も…
いや、アレはあれで変わらなくて逆に困ってはいるが。

普通に話が出来るので、本当に困るのだ。

「それで?何をするんです?」
『えっとね、はないちもんめ!!人が半分こして、組に分かれてするの!』
「では一度組み分けをしましょうか。」

コニック、ウイス、コルン、マルカリータに加えて
モヒイトとヴァドスも入った状態。

「メルさんとサワアさんは別のチームにしましょうか。」
「構いませんよ。」
『しょーぶだ!!』
「我々はどういたしましょう?」
『じゃあメルとサワアがえらんでいいー?』
「ええ、構いませんよ。」
『こにちゃんと〜まーちゃ!!』

そう言ってメルは服を掴んで引っ張るのに、
はいはいと二人は彼女の行く方について行く。
止まった所でではとサワアが目を向けた。

「僕はモヒイトさんとコルンさんを。」
「おや、良い人選で。」
『え〜〜〜残してたのに〜〜〜!!』
「ふふ」
『まぁいいや!どうせ奪うし!』
「え?」
『じゃあういちゃんきて〜〜!!』
「わかりました。」

メル組
コニック、マルカリータ、ウイス

サワア組
コルン、モヒイト、ヴァドス

この組み分けとなり、では説明をとウイスに促されてメルは言う。

『えっとね、お手手つないでもらえる?』
「それは構いませんが…届きます?」
『ううん。むり!!!!』
「…では私が。」

そう指を鳴らしたウイスに、メルの身体がふわふわと浮かび上がる。
ならと言ってコルンも同じ様にサワアの身体を浮かばせた。

「こうすれば遊べるでしょう?」
『流石だ!!!すごい!!!』
「ふふ、お褒め頂きありがとうございます。」
『お手手を皆繋いだ?縦に並んでねこうやってするの!』

横一列にならび、メルはサワアに向かい合う様に指示をする。
同じ様にサワアらもメルと同じ形にしてみせる。

『お歌うたいながらするげーむなの!』
「ほう?お歌を…」
『か〜ってうれしい、はないちもんめ!』

っとと、そう言って動き出したメルにウイスらも続けて動く。
後の組は後ずさることを伝え忘れずに。
この時、前に進む方は最後の「め」の所で片足を蹴り上げる。

『次はサワア達だよ。まけ〜てうれしい、はないちもんめ!って言うの。』
「…まけ〜てうれしい?はーないち、もんめ?」
『じょうずーー!!!』
「これを続けるのですか?」
『そう!掛け声が沢山あってね〜え〜〜どうしよ〜〜!!』
「とりあえずどんな形になるか歌って貰っても?」

いいよと言ってメルは手を叩きながら浮遊しつつ声を出す。
小さなソプラノはとても安定していて聞いていて心地よい。

『か〜ってうっれしい、はないちもんめ!
まけ〜〜てうれしい、はないちもんめ!
となりのばあさん、ちょいときておくれ
お〜にがこわくて、い〜かれない。
あのこが、ほしい。あのこじゃ、わからん。
相談しよう、そうしよう!ってかんじ!』
「ほ〜面白そうですね?互いに人を選んで交換すると。」

そういうことだ。

お布団被ってちょいときておくれ
お布団びりびりいかれない。

おかま被ってちょいときておくれ
おかま底抜け行かれない。

と色々文章は幾つかあるらしい。
歌が終われば相手のグループから
誰を自分達のグループに貰うか相談して決めるのだ。

決まったグループは「きーまった」と叫ぶ。

そして同じ様に言うのだ。

『例えばサワアが欲しかったら私がサワアが欲しいって言うの。
サワアの方はウイちゃんが欲しかったらウイちゃん欲しいってみんなで言うんだ。
名前を呼ばれた人が前に出て、じゃんけんして負けた人は勝った方に移動する。』
「どちらかのグループのメンバーが居なくなれば終了ということですか。」

そういうことだ。

『ふふ!誰が一人になっちゃうっかな〜〜!』

もう少し他の遊びは無かったのだろうか。
いや、この感じだと他も似たようなものかもしれない。

ではとウイスが声を出してやって見ましょうかと笑う。
やたーと両手を上げて嬉しそうにしている。

「先行は?」
「我々からでも?」
「構いませんよ。」
『じゃあいくよ〜?』

そう言ってニヤリと笑うメル。その目は、何時しか見た戦う時の目によく似ていて。
幼い頃から本気で遊んでいたのだとコルンはふと思っていた。

『か〜ってうれしいはないちもんめ!』
「まけ〜てくやしいはないちもんめ!」
『隣のばあさんちょいときておくれ!』
「いぬ〜が怖くて、いかれない!」
『おか〜ま被ってちょいときておくれ!』
「おかま底抜け行かれない。」
『あのこがほしい!』
「あのこじゃわーからん!」
『相談しよう!』
「そうしよう!」

はい始まったから円になってこそこそして!そう指示をしたメルがウイスをおいでおいでする。
それに伴いサワアらも似たように円を描き少し顔を近づけて話をする。

「…それで、一体何方を引き入れる予定で?」
『ふふふ、コルコル一択!!』
「っくく、最初から本番ですか?奪われますよ?」
『誰かが勝てばよかろうなのだ。』
「では合図を。」
『き〜まった!』
「こちらもき〜まった!」

そう言ったサワアにじゃあとメルは元の位置に付かせる。

『こるんがほしい!』
「っ!?!」
「ウイスがほしい!」
『よし!じゃあこるんとウイちゃんこっち〜〜!!』
「…あの子本当に私の名前知らないんですよね???」
「知らないはずですよ、ほら行って差し上げては?」

そう指を指すコルンに、苦笑いでモヒイトは答えて背中を押す様に言う。
仕方が無しに中央にコルンとウイスが相対して立ち尽くす。
その間にふわりとメルが浮いて説明をする。

『此処からじゃんけん。ぐー、ちょき、ぱーの三つ。やったことある?』
「詳しくはしりません。教えて頂けますか?」
「お兄様…」
『そっかー!ならメルが教えてあげる!あのね〜?』

グーしてーとメルがコルンの手を取っていう。
その姿を少し見とれていたウイスは気付いて
メルの指示に従い握りこぶしを作る。

そう、彼は知っているはずだ。この形を。
前に力の大会の時に、じゃんけんの説明を聞いている筈なのだ。
なのに、そう言ったというのはきっと…

「(…成程、知っているから進めろ、とは言わないんですねぇ…?)」

嬉しそうに、ただ目をキラキラさせて教えるメルに
うんうんと少し頷いては覚えようとするコルン。
きっとメルは教えたかっただろうし、
コルンもまた教わりたかったのだろう。


何時か在るはずだった、その夢物語の様な時間。


『じゃあ二人でじゃんけんして!』
「勝たせて貰いますね」
「それは此方のセリフ」
『いくよ〜?じゃんけんぽん!!』

ああ〜!と嬉しそうにするメル。
ウイスはパーを出し、コルンはグーを出したのだ。

『やたああああああああああ』
「すいません、負けてしまいまして。」
「いえいえ。取り返せば良いことでしょう?」
『む!させないもん!!』

これの、最後はしなくて良いと、
コルンだけでなく周りも徐々に気付いていた。
そう、最後の一人はどちらか必ず一人残るのだ。

一人また一人と消えていく。
そうして手を繋いだ人も消えて、独りぼっちになる。
その痛みを、こうやって、培って耐える為の練習とあらば…。

いや、それだとしても、少々心苦しいもので。

似たように繰り返していく。

か〜って嬉しいはないちもんめ。
まけ〜て悔しいはないちもんめ。


コルンが入り、一度抜け、そして戻ってきて。
そうして繰り返して言った後。

「…本当にわかれましたね。」
「どうします?」

メルとサワアの二人と、天使らの二組になったのだ。
いやもうこれは本当に適当ではなく、作戦だったのだが、
それがどうやら裏目に出てしまったようだ。

「メル様の判断で在れば恐らくサワアさんを入れるのが正しいでしょう。」
「ですが出来ればメルさんを入れたいですが…」
「そうすれば独りになったサワアさんを見て寂しくなるでしょうね。」
「どうしてこんな遊びを求めて…」
「恐らくですが、アルメリア様やルトラール様の持っていた
書物から盗み見た話の一部でしょうね。」

それを放置する彼女らも彼女らだが。

「…では、それで。」
「ええ。きーまった。」
『こっちもきーまった!』

そう言って言葉を交わす。

「サワアさんが欲しい。」
『こるんが欲しい!』

さ、行ってそうメルは手を放す。
それにふわりと飛んで行くサワアの姿を、ウイスらはちゃんと見ていた。

酷く寂しそうに、これで良いのだと。
手を伸ばしていた手を、そっと、大事そうに。
胸に抱きしめて。片手でその手を、優しく。

ただただ、其処に居なければと言いたそうに笑うのだ。
そして目を向ける。そこで待ち続けるのだ。

「ではお二人とも。」
「じゃんけん」

ぽん

そう出た形に、見ていたウイスの目が少し開く。
その姿に、メルは嬉しそうにしていたのが変わる。

振り返ったサワアの手とコルンの手を見たのだ。

『…いいよ、サワア。向こう行って?』
「ですが…」
『も〜メル負けちゃった!』

そうくるりと回って腰をトンとおろすメル。
お人形の様に足を前に出してケラケラと笑うのだ。
明らかに無理して笑って居るのは目に見えてわかる。

それを見たサワアがふわりと浮かんでメルの元に飛んで行った。

『さわあ?』
「お迎えに。独りになったら、皆で囲む。違います?」
『え?違うし、しかもこれで終わりだよ?』
「なら書き換えたら良いではないですか。」

そうだ、こんな一人なんて、させてはいけない。
そう言った者達がメルを囲むように円になった。

「一人になったら、皆で囲んで御迎えに。」
「これで寂しくない。そうでしょ?」
『〜〜〜っっみんなあああああ!!!!』

びえええと泣きだしたメルに、
よしよしとサワアはぎゅっと抱きしめて頭を撫でる。
きっととても怖かっただろう。
徐々に自分の元から人が消えていくのだ。
圧に対して睨んでいた顔も徐々に下がっていた。

心細くて辛かっただろうし、いやなによりこの遊びが酷い。

「流石にこれは次やるのやめましょう。」
「そうですね、それにしても
良く思いつきましたねこんな残酷なこと。」
「ええ。」
『うあ?』

くぅ〜〜〜っと小さな腹の虫が聞こえてメルの顔が少し赤らむ。
クツクツとサワアが笑うので笑うなあと今度は怒っている。

どうやらお昼の時間らしい。

+++++++++++

「どうです?」
「みます?ものすご〜〜く可愛らしいですよ?」
「…仕方がありませんねえ。」

そうウイスに誘われ、コルンもその姿を見にいくことに。
隣の書斎その奥にある一室に、簡易的な一人専用の部屋があった。
そのベットの上で、サワアとメルが二人ですやすやと眠っているのを確認する。

それを見た者達がテレパシーを使って会話を始めた。

「(物凄く可愛いですますわ〜〜〜!!!)」
「(本当にぐっすり眠っているんですか?)」
「(天使が眠るなんて在っていいのでしょうか???)」
「(ずっと付いてやったので癖で寝ていたのでしょうね。)」
「(明らか意識、ない、ですよね???)」
「(反応する形も見受けられません。本当に寝ていますよ。)」

いや、天使が寝るなんて聞いたことも見たこともない。
そう各々が不思議そうにシーツを被った二人の特に我らの兄を見つめていた。

「(気持ちよさそうですねぇ〜〜)」
「(…我々は一度退散しましょう。)」
「(そうですね。)」

そう言って各々が消えて暫くした後。

ことりと身体を動かしたメルに、サワアはまだ起きる気配もない。
それに気付いたメルはゆっくりとベットから降りて部屋から出た。


『…と〜りゃんせ、と〜りゃんせ。こ〜こはど〜この、ほそみちじゃ。』
「おや、起きてらしたんですか?」
『あ、こるん。』
「サワアさんは?」
『ねんねちゅう。』
「…あの、失礼ですがメル様。貴方天使が寝ないということをご存じ……ではなかったんですね?」

ガーンと言いたそうな表情に、しくったとコルンは思った。
まさか大神官様らも言っていなかったとは。

『たぬきさんねいり!!!』
「いやそれはわかりませんが。何を歌っていらしたので?」
『ああ、かかさまが歌ってくれたの。聞く?』
「ええ。貴方が宜しければ。」

そう言って座るコルンに、メルもまた座っていた足をぶらぶらと縦に揺らして歌う。


『と〜りゃんせ、と〜りゃんせ。こ〜こはど〜このほそみちじゃ。
てんじんさ〜まのほそみちじゃ。ちっととうして、くだしゃんせ
ごようのないもの、とうしゃせぬ。このこのななつのおいわいに。
おふだをおさめにまいります。い〜きはよいよい、かえりはこわい。
こわいながらも、と〜りゃんせ、と〜りゃんせ。』
「そんな歌なのですか。」
『うん。綺麗でしょう?』
「いや、きれいとかいやまぁ、お上手ですが…意味はご存知で?」
『しらなあい。でもとってもとっても、かかさま嬉しそうにして歌ってたから。』

違う。それは、嬉しそうじゃない。
コルンはふとメルが教えてくれていた
いろは歌を思い出した。

言い方は方言によって変化をする。
それはつまり、こういう意味だ。

通りなさい、通りなさい。
ここは、どこの細道ですか?
天神様の細道ですよ。
ちょっと通して下さいませんか?
御用の無い者は、通しはしません。
この子の七つの御祝いに、御札を納めに参ります。
行きは良いですが、帰ってくるのは難しい。
難しいですが、通りなさい、通りなさい。


「メル様はおいくつで?」
『えっと、まだねぇ、いちにーさん。よんか、ご!!!』
「…そうですか。」

天神様。それは、彼女らで言う理の存在なのかもしれない。
通しておくれと言って、御用があれば、通すのか。
この子が七つになってしまえば、その道に、入れるつもりで。

いや、そう決められていて、それが嫌で歌っていたのかもしれない。
どうか決まらないで。選ばないで。そんな気持ちでもし、歌っていたならば。

「その歌をどうして嬉しそうに?」
『なんか覚えた方が良かった気がするから!』
「…そうですか。」

お札を、その願いを納めに、いくのか。
行きつまり廻廊のことだろう。
廻廊に行くはいいが、廻廊から帰るのは難しい。
そりゃああんな地獄よりも地獄みたいな酷い最中に居たのだ。

精神がいくらあっても持たないというのに、
この子は耐えて帰って来た。
難しいけど、通れるものなら、通ってみろと。

そして、通って帰ってきた、暁には。

理になれる、権利を与えるとでも言いたかったのだろうか?


「もう一寝入りしなくても構わないので?」
『目が醒めちゃったから。』
「お兄…いえ、サワアさんを置いて?」
『…うん。ひどいでしょ?あのね、こるん。』
「なんですか。」
『メルね、サワアに沢山貰ってね、此間金の髪紐もらったの。』
「…っ」

それは、彼女が嬉しそうに付けていた紐。
ニコリと微笑む彼女は言うのだ。

『サワアに何か上げたいの!ねぇ、何が良いと思う?』
「…貴方が考えたものが、一番だと思いますよ?」
『わたしが?』
「ええ、何時も沢山遊んでくれておられるのです。」

きっと、どんなものでもお喜びになります。
そう言うコルンにじゃあそうしよとメルは決める。

『実はね?此処にお華が咲いてるの!』
「っあ、ちょめ、るさ、ま」

そう見せつけてきた胸元に目が留まる。
本当に金色の華が咲き誇っていたのだ。
そんなバカな話があるものか。

彼女はその華を千切って今、サワアの元に渡しているハズ。
なのに今、咲き誇っているそれは、つまり。

この時間すらも、彼女の理の???

『こるん?』
「っ、すいません。」

いや、いいよとメルは答える。
何処か、寂しそうに。

『ねぇ、こるん。』
「なんですか?」
『もしも私がいなくなっちゃったら、サワアのこと。よろしくね?』
「…っ、」
『ね?おねがい。』
「……貴方が帰って来るというならば。そうしましょう。」

でも、帰らなければ。そうしない。
嘘つきとメルは言うのだ。嬉しそうに目を細めて。
そんなこと出来ない癖にと。言うのだ。

本当にこの子は3つや4つなのか?
何処まで知っているというのだ。

『あ、わんちゃ!』

おいでーというメルに、犬がしっぽを振って頭を下げる。
嬉しそうにする犬に、メルも嬉しそうで。

『わんちゃんかわいいね!なんてなまえ?』
「それは言えませんね。」
『じゃあつけていい?なんてやつなの?』
「…パピヨン。パピヨンと聞いています。」
『じゃあ、パピ!!』
「っ!!!!」

君の名前は、パピだよ。パピヨンだから、パピ。

『ね、パピ〜ずっと一緒に、居てくれる?』
「(…嗚呼、君がそう願うなら。
僕は何時だって君の元に行ってやろう。)」

そんな声が聞こえてくる。恐らく彼の言葉だろう。

「(君が助けを求めるなら。難しいなら。
その道を照らすのではなく傍にいてやる。
その時間だけでも、君が救われるというならば。)」

僕は君の、パピであろう。

「…める?」
『あ、サワア〜!』

そう目をこすりながら来たサワアに
メルは駆け寄って抱きしめる。
犬もまた近寄って嬉しそうに尻尾を振っていた。


「…通るなら、お札を絶対に渡しましょう。」
『こるん何か言った?』
「いえ、なにも。」

貴方はお札を渡したのでしょう。
絶対に命よりも重い約束を。
お札として、与え、そして帰って来た。

それが、今こうして起きていること。