学べば変わる






前回のあらすじ

悪魔に一瞬だけなって、原因追及して、分からないまま戻ってきました。


『まぁその前になんか滅茶苦茶前回の長いあらすじ一つ二つ飛んできたがな。』
「何訳の分からないことを言っているんですか。」

そんな暇あれば手を動かす。
はぁい。

現在メルは部屋の整理をしていた。
主にコルンやウイスらと。まぁなんでかっていうとだな。
普通に赤本から出したことがバレました。怒られたよ。

いやだってさあ、一人でするって言ったんだもん。
でも一人で置くと此間みたいに悪魔になることを考えて
半強制的に一人は駄目ってことになりました。

うう、こうなったら一人だけの楽園場所作るしかないのか。
なんならサワアらの天使らが使える思考とか遮断できるところとか。
いやなにその楽園私行きたい。作るんだよ私が。

メルはそんなどうでも良いことを考えつつ手を動かしていた。
何だかんだ言ってこの作業滅茶苦茶鍛えられるぞ。
本は重いです。そう思っている矢先だ。

「にしてもこの文字は一体…」
『嗚呼、君らが向こう行ってた時の日本語ってやつ。』
「あ〜〜〜!見覚えがあると思えば、成程これがそれですかあ。」
「あの惑星はなんというのですか?」
『地球のハズ。恐らくだけどBの世界も地球。』
「そういえばメリアさんの惑星も地球でしたねぇ…?」

何か意味が?
い〜〜や?

『私も気付いたのは確かに地球だったから、
ひょっとしたら地球自体に意味があるのかもねえ?』
「…末恐ろしい所ですねぇ、貴方が居る場所は。」

そうにやりと目を睨ませるウイスに、おお怖いとメルは笑って答える。

『にしても本当に良いの?』
「何がです?」
『いや君らが此処に居て。破壊神の業務とか疎かにならないの?
寧ろ私そっちの方が心配なんだが。』
「ご安心下さい。我々天使はルトラール様から権限を頂き
現在全ての天使がこの場所に瞬間移動で辿り着ける様になっています。」
「その為貴方のサポートに移動など差支えなどないのです。」

嗚呼それならいいが…此処って割と結構まずいから
瞬間移動させない様にしてたんだが、気のせいか???

「ご安心ください。移動と言っても扉の前のみです。
流石に中に瞬間移動はちょっと……」
『嗚呼まあでしょうね。それならいいか。』
「そういえばあちらにあったこの世界を記述した例のものは持ってきてないのですか?」
『嗚呼ドラゴンボールのこと?漫画とかの絵が描かれた。』
「ええ」
『あれは流石に持ってきてない。干渉したくないというのが大きなものだけどね。』

流石にウイスらに見せてしまったのは不味いと今では大いに反省している。
嗚呼本当にIFをこれ以上増やしてはいけないのだが。
そういえば、そんなことを言ってもIFってもしもでしょ?

もしも私が悪魔になった時とかまさか

「エフェメラル様」
『…いかないよ?』
「明らかにお出かけになられる感じでしたが?」

うう。

身長差というのもあるのか、妙に二人特にコルンが真後ろに来られると怖いというか恐怖しか感じない。
そのぎろりとした目が、和んだあの目になんて中々なるわけもないだろう。

うんうん、あんなの夢だもん。というかアレ毎回されると私の心臓が追い付かない。
普通にあんな顔されたらお願いなんでも聞いちゃいそうで怖いわ。

後で耐えられるように練習を

「そういえば時にメルさん一つお聞きしても?」
『ん?ああいいよ?なんでしょうウイスさん。』

メルはウイスから本を受取りつつおきたかった場所に整理していた。
ポンと明るい音が手渡された合図の様に音がなると同時に声がかかる。

「メルさんってどうやって精神での耐える練習を?
お兄様に言ってもらいたいことを想像して慣らしていたとかです?」
『!??!?!?!?!!?!?』
「ウイスさん?????」
「ああいえ、深い話ではないのですが。やけに人間と天使の間とは言えど
その性質といいますか、何処まで人間に偏っているのだろうと思いまして。」

そういう不思議的な気持ちね????
故意的なものないよね?????

『ん〜〜〜、まぁ慣らす種類にもよるかなあ。』
「種類ですか?例えばどのような?」
『例えば?あ〜〜え〜〜?例えばかあ。』
「余り困らせてはいけませんよ、ウイスさん。」
『ああ良いですよコルンさんや。そうだねぇ?
全体的にはその時間が来た時に一瞬でも悩める隙を作る為、とかかな?』
「隙、ですか?」

そうそう、隙です隙。

「ですが私に捕まった時隙などみせなかったのはそういうことで?」
『嗚呼いや対策してました。』
「たいっ、ん?????」
「ああなると想定していたので??」
『半分正解。想定というよりかは、可能性があるかも、な?くらい。』
「それを人は想定というのですよ、エフェメラル様……」

一応頑張って絞り出した考えだと思ったが。
そうコルンが唸るのに、メルは苦笑いで答える。

『あはは、もう少し過度から、控えめから、かなり荒っぽいものまで。
実際起きると余裕がないけどさ、何度も慣らしてると嗚呼きたこれ!
やったことある!って思って次何しようか考える気持ち的な余裕作る為にね?』
「嗚呼、だからニヤニヤとあんな笑って居たのですか?」
『それは違う。アレは癖でして。』

ううあれは本当に慣らし過ぎた結末路というかねぇ〜〜〜???

「癖?」
『うん、私怖い時って笑う様にしてるんだあ』
「…怖い、時ですか……」
『笑ったら何時か大丈夫になるかもって。悪魔さんにね、教えてたの。』

それは一代目の時間。優しくて綺麗な箱庭の世界。
二人がひっそりと出会ったそのほとりに、起きた一瞬だけの時間。

微笑むメルに、そうですかとウイスも目を細めて答える。

『ん。その癖かな?いつも笑ってるのはきっと怖いんだよ!』
「え?」
『何時か全てが崩壊したその末路で。私が本当に貴方達の前で笑えるかどうか。』

その先に、私はちゃんと自分の足で立って、貴方達を守れるか。
いや、隣で一緒に、意思を持って立って、闘う戦力になれるかどうか。

『私は隣で一緒に、皆と。歩きたいって思ったんだから。』
「…随分と欲張りなお願いを持っていらしたのですね?」
『でしょ〜〜〜????だから私、欲なんてないわけじゃないのよ?』
「ええ、もう充分わかりましたよ。」

これ程居れば、分かるというものだ。
コルンはため息交じりに背中に手を回して杖を握り直した。

「そう言えば魔女ら正確には悪魔が杖を持っていましたが、アレも何か意味が?」
『い〜〜や、それはサワアに聞いた方が話早いかも。』
「私が何ですか?」
『あ!サワア!!こんにちわ!!』
「こんにちわ、お元気そうで何よりですね。」

もう交代の時間か。そう驚くコルンがちらりと時間を見る。
半日程というのもまた忙しいというと思う。
時々メルの体調によっては一日になるが。

今回はサワアとモヒイトの二組で、
こうやってみればBの世界に居た面子で少し笑ってしまう。
天使らがもう少し長く話をしているのを見続けたくなってしまうのか
嬉しいからか、少し背伸びをしてしまう。

ううん、癖だなぁ。嬉しいと、というべきか?

『ねぇサワア』
「どうしました?キスでもします?」
『うっしない!!!流石に今はしない!!!』
「したいはしたいんですね……」
「それで?」
『嗚呼、ウイスさんが気になることあって。』
「ウイスさんが?なんでしょう。」
「先程悪魔の話をしていまして。悪魔も杖を持っていたのでしょうかとメルさんにお尋ねしていたことなんですよ。」

そういうウイスに、嗚呼そういうことでしたらとサワアが答える。

「確かに悪魔も杖を持っていました。正確には未熟者という意味ですが。」
『え゛まじで???』
「え、ええ、それが?」
『嗚呼いや、実は天使もこの草冠に意味がありまして。何なら同じ。』
「えっ!?そうなんですか?」
『うん。草冠は未熟者だけど、天使の証ってもあってね?』
「…いや大体想像つきました。」

流石にメルの考えは全員すぐに分かった。
大方悪魔にすらも突き放されたサワアに
せめてもの祝福をと花冠を作って渡したかったのだろう。

手を前に出したサワアにええとメルが膨れる。
これ以上甘い話を聞いたら胸やけするというものだ。

『もー。でも悪魔は輪を持たないでしょ?どうなるの?』
「おや?その冠はそのまま輪になるのですか?」
『うん。一応認められし者達はね。頭の後ろとかが主。
強さは輪の多さや形に比例する。基本は一つだけど…』

幾つ迄あったかなぁ。もう歩く蛍光灯とか今思いつく位だし。
そう言うメルがぶっと自分で言っていて自分で笑う。
シュールなので話を戻させた。

「それで、お兄様悪魔も何か意味が?」
「ええ、杖が変化するかどうかだったのですが
…なんだったでしょう?」
「だあああっ」
「想い出せないのですか!?」
「そりゃあ数代目も前の話しです。
転生を何度も繰り返した前の事ですし、
寧ろ事細かに覚えていたほうが恐ろしいでしょう?」
「いや、そう言われたらそうですけれども。
どう考えても覚えているみたいな言い方でしたので。」

そう倒れた者達がよっこいしょと言いそうに起き上がる。
大丈夫?とメルはコルンの手を取っていた。
すいませんと手を取って起き上がるコルンに
メルは首を横に振ってこたえた。
これくらいどうってことないと言いたいのだろう。

「そういえば三つ編みをしている子達が
多そうでしたが、天使らの髪にも意味が?」
『嗚呼、おさげの事を考えると、
ひょっとしたら魔女や悪魔に近づいても
現を抜かすことのないようにって意味を込めてたのかもね。』
「思いっ切り意味を成してなさそうですが。」
『にゃはは〜〜〜〜そだね〜〜〜!!!
滅茶苦茶会ってた会ってた!!!』
「…もし、もし戻れるなら、お二人はあの頃に戻ろうと?」

そう言ったウイスに、コルンがこれというも
いいえと答えたのはメルだった。


『あの日が在ったから私は此処に居られる。
君らと出会えてこうして息が出来てる。
あの日に戻ったとしてもそれは此処が変わること。
私は変えたくない。縋ってでも想い出を守る。』
「エフェメラル……」
『時など変えてたまる者か。これは私の物語。私のものだもの。』
「…私も同じことですよ。あの日貴方に会えて色々変わってしまいましたので。」

まさか輪を持って天使にとは思いもしませんでしたが。
いやーほんと不思議だよねー

『今居る全ての天使が元悪魔とか考えたくない』
「それ本人が言う前で言います????」
『あはは!!!でも面白いんだよ?人間での悪魔と天使の無慈悲説。』
「ほお?どんなものです?」
『確か悪魔は数十人を助けたって言ってたやつだったかな?』
「たったそれだけですか?」
『でも天使は助けてないんだって!』
「え?」
『だあれも。ひとっこ一人。』

そう、おかしいね?

まるで、あの一代目のような姿が思い起こされる。

背後に綺麗な輪が、形が見えた気がした。
青い、ただ、青空を思い浮かばせるような、青空の色が。

ブンと音を立てて、二つの輪を、頭の背後に、線を描いて見せた気がして。

『ん?どうしたの?みんな。』
「ああいえ、きのせいですかね?」
「今何か見えた気が…」
『も〜仕事し過ぎじゃない?ちゃんと休憩取らなきゃ!!』
「あのそっくりそのままお返ししますよ????」

後背中を押さないで下さい。
そう言うコルンにいやーーと笑うメル。
本当は嫌ならさせないように厳しくしたり、
そもそも近づかないようにするだろうに。

「あの子も甘いですねえ」
「エフェメラル様ですし。仕方がないかと。」
「ではお兄様、モヒイトさん私らはこれにて。」
「ええ、お役目ご苦労様でした。」

ぺこりとお辞儀をした彼に二人してペコリとお辞儀をする。
どうやらメルはウイスとコルンを送るらしい。
コルンの手を取ってこっちに手を振っている。

ぴょんぴょんと飛ぶメルに対して
これはしゃがないとコルンが注意している。
上をそっと向いてみているメルは遠くからみればもう

「っくくく、兄と妹ですねえ?」
「…楽しそうですね?奪われてもしりませんよ?」
「おや、あの子がそうなると本気でお思いで?」
「おっと、失礼。」

流石に敵になど回したくない。
曲がりなりにも我々は天使。昔は悪魔。
それでも兄である彼を敵に回せば後が怖いのだ。

モヒイトは速攻で断固拒否した。

「ほんとお兄ちゃんって感じしますねえ?
いやはや言ってたらあの子どんな顔するのやら。」
「ほんとに楽しんでますね????」
「こんな場所もあの子は創るんです。ほんと想像力には恐れ要りました。」

上手く人間と天使の良いところを取っているとみた。
底知れぬ気の天使と、想像力の塊である好奇心の人間。
その二つが合わされ、純粋に伸ばせば高みという天井は知らないだろう。

それこそ、真っ青な青い空のように。

何処までも、その華を上にすくすくと伸ばし成長していく。


「たったひと時だけでも。今は長いというもの。」
「…ならせる訳には行きませんね」
「勿論。悪魔になんぞ。これ以上堕ちる事などない様に。」

我々はあの子を守ってやらねばならないのです。

なんせ、沢山彼女には助けられているというのだから。


ウイスの方に手を伸ばしたメルに、
顔はみえないが、きっと困って笑って居るだろう。
手を伸ばしたウイスの手を取って行ってくるとメルはサワアらに
ウイスの手を取った方で手を振る。

それにいってらっしゃいとサワアは答え、今度こそ三人は姿を消した。
料理の準備をとモヒイトは彼等の後を追う様に移動する。
その間、彼らがしていた作業をとサワアは確認に目を向けた。



『や〜にしても二人とも滅茶苦茶手おっきいね???』
「メルさんの方が小さいだけですよ〜〜〜」

ゆっくりと歩いてくれる彼等は近道であるはずの直進をしない。
それはサワアが言っていた悪魔であるソレが原因だった。
黄金の草花の中に足を踏み入れないでとメルもちゃんと聞いているのだ。

なんなら、愛おしそうにその黄金を見つめて。
まるで額縁にでも入れたかのように。
遥か遠い場所を想い出す様に。笑って見つめ続ける。

立ち止まらない様にではあるが、
ゆっくりとウイスらもメルの手を取って歩いていた。
本来此処まで甘やかさないで良いとは思うものだが
彼等もメルから返しきれない恩を貰っている身。

これくらいで報われるならば、喜んで手をだすというものだ。

『そうかなぁ?私手小さいかなあ?』
「小さすぎて赤子みたいですよ。
…ほんとちょっと力入れたら潰れそうで怖いです。」
『ふぬぬぬぬぬぬぬ!!!!』
「……何してます???」
『握力入れてる。』
「…本気でしてみてください。」
『えっ待って止まって。』

そう言われて足を止めて、何度か握った後、掴みやすい所を見つけたメルがぎゅっと掴んだあと

『はい』

というのだ。いやまて。

「待って下さい本気で全力です????」
『だっつってんだろこのやろう』
「そんな下品な言葉は慎んでくださいと…もうそれはいいとして。」
「いいんですね……」
「エフェメラル様ウイスさんにも同じ様にして下さい。」

この気持ちが分かるはずです。
そう言われて、ではとメルは手を取り直してぐっと力を入れる。

「…メルさん?もう片方も良いです?」
『え?あ、う、うん…????』
「………悪いことは言わないのでちょっと握力つけましょうか。」
『え?!?!なんで?!?!?!』
「まぁ体調の良し悪しが激しかったのですからね。
暫くは安定しそうですし、確かにそろそろ頃合いでしょうか?」
『何の話?!?!?!』
「また武術のお稽古をという話ですよ。」

メリアらから離れた以上、メルの知識はほぼ絵にかいた餅のようなもの。
技術はほぼない状態なので、その扱いもほぼ赤子と同じ。

一応金の首輪と言っても力を威力を抑える程度の改良された奴を取り付けている。
黒い紐に中央はエメラルドグリーンの綺麗なアクセサリー。
これこそがメルの気を制御し、養分をこの華樹の世界にいきわたらせているというもの。

「メルさんは華樹神であり理であるお方です。
貴方が死んでしまわない様に、我々も協力しますから。」
『えーー、痛いのヤダ……。』
「時には耐える事も必要ですよ。万が一の為に、ね?」
『うん。…がんばる。』
「っふふ、よろしくお願いしますね?」

こうして嫌がると言っても相手が望むことなら最終的に受け止めるメル。
俯いてそれは幼子が渋々了承するソレと同じような姿だ。
手を繋ぎ直して歩いていると、扉の所に戻って来たらしい。

扉の前にはサワアが立っていた。

こうやって半周は前の天使らと手を繋いで次の天使が一人
扉の前でメルと一緒に送ってからもう半周を歩いて戻る。
これが今のルーティーンになっていた。

「では、メル?」
『うう。』
「また会えますから、ね?」
『…ばいばい。』
「ええ、また来ますから。では、お兄様。」
「ええ、お疲れさまでした。また。」

そう別れを惜しむメルがそっと嫌そうな顔をしつつも手を振る。
それは仕事に行くのを惜しむ幼子のようにも見えて。

「ほんと見れば見る程可愛らしいですねえ〜?」
「そうですね。」
「おや、お兄様がそんな正直なんて。」
「なんです?正直ではいけませんか?」
「いえいえ。ですが少しやきもちを。」
「やきもち?」
「貴方だけあの方から名付けなんて、とね。」

嬉しそうにその時間を待ち望んでいた子供。
天使と人間の間に居る子が、
その身を暗やみに堕とすことの無かった時。
それは、その日が来てしまう事の方が、地獄だろうに。

ウイスは少し望んでしまった。
コルンだけでなく、ウイスも名づけを貰えれば
一体どんな世界が待ち受けていたのだろうかと。

「…それは私の特権ですねえ?」
「おや、認めるので?」
「さあ?知りたければ私に一本取ることですね?」
「…是非とも。」

二人してクツクツと笑い、華樹神の居る所に背を向ける。
扉の向こう側は、もう大神官らが居る場所。
両方の手前二部屋はもう使うことはない。

悪魔や魔女を隔離なんてしなくて良い。
華樹神が怯えずに生きなくてもいい。
掟にその身体を止めなくても、よくなったのだ。


「本当に不思議な方ですよね。」
「ええ、だからこそ、恐ろしいですがね。」
「…きっと、大丈夫。なんでしょうね?」
「行きますよ」
「ええ」

今度こそ、歩みを止めさせない様に。
ウイスはコルンの隣を歩いたのだった。



++++++++++


そんな中とも知らず、メルはというと。

「二人と何をお話して?」
『お手手大きいねって話して、握力無くて驚いててさ
今度組手に入ろうかって話してた。』
「確かにそろそろ体力を付けつつ
其処に持っていくには丁度いいでしょう。
後でメニューを考えておきましょうか。」
『いいの?』
「ええ。何時か組手しましょうか?」
『…天使と悪魔で?』
「寧ろ良いので?この私に勝てるとでも?」

それはかつての一代目の力。
それをこの地ではなくても、あの地でもいい。
戦いの場を設ければとメルは思い悩んでいたのだ。

力の大会のような、神々とのぶつかり合い。

古い力と新しい力が、合わさった処。

ユートピアでの、試合を。

『ええ、勿論。だって貴方は私を選んでくれたでしょう?』
「っ!!!…ほんと、誘惑が上手になりましたねえ?」

軽く触れるキスに、メルはうんと笑って答える。
ずっとなんて望まなくたって此処にあるのだ。
幸せなんて、考えなくても、此処に在る。

だからどうだっていいのだと。

今は、そう、いま、だけは。

『絶対悟空とか見させると境地来そうで怖いけどね』
「あの人間ですか?本当にもの好きですよね。あの人間みたいなのが好みで?」
『いや〜お友達は良いけどそれ以上はいいや。筋肉其処迄ない方が私は好きだし。』
「ソレは良かった。私も筋肉は少々見飽きてまして…」
『明らかペル様原因では……』

それ以外にもなんかありそうだけど、まぁ其処はほじくらない方が良いだろう。

『でも、ちょっとね。』
「なんです?」
『ん〜?いや〜なんでも?』

そっとメルはサワアに寄りかかって歩く。
一人じゃない、作ったものじゃない。本物。
偽物なんかじゃない、架空ではない。

描いた理想郷なんかじゃない。

存在する場所に、息をしている。

『いいなあって。』
「…そうですか。」
『ん、いいにおいする!!!』
「今日は貴方がというよりかはあの子が好きそうなメニューをと頼んでまして。」
『え?またどうして。』
「貴方が望んでそうな気がしたので。」

天使を想う、悪魔に縋る、貴方なら。

「僕らの好きなものも、知りたいと思ってね?」
『…そりゃどーも。』

バレては仕方がない。

食事にするとしよう。