さわれない心臓と生きる
ああああああああああああああ
『うーーーーーーんま!!!!!!!!!』
なんこれうまうまうまうま!!!!!!
がっつくメルに、ゆっくり食べて下さいとモヒイトが嘆く。
いやだってこれくそうまいよ?!!?
多く食べとかないと後悔するって!!!!
そうメルは思いながら目をキラキラ輝かせてモヒイトを見て言う。
スプーンは口の中に入っているが。
「そりゃ作って嬉しいというものです。
ほんとに美味しそうに食べますねえ?」
『だってうまい。サワア食べないなら食べるよ?』
「貴方のお腹の調子が良ければ上げますよ。」
『いい』
「だめです。」
『』
「っくくく、嫌そうですね?」
「全く、私が天使であること時々忘れてますよね?」
輪見えません?
見えるみえる。
そう笑ってもメルは食事を止めない。
本当に前を向いているらしい。
悪魔の力に影響されてというもの
少々彼女の知るというよりかは
サワアの唯一知っていた知識から選出した
悪魔の食事を少々交えての調理を入れていた。
それが功を奏したのか、メルの体調はぐんぐんと良くなる。
それは同時に、メルが悪魔の身体に
片足を突っ込んでいるということにもなって。
胸が痛くなるのはなにもサワアだけではない。
モヒイトもその姿をみて少々心が痛かった。
真面目ではないあの破壊神や界王神を買う彼女。
下にいても、下とは見ない彼女。
「エフェメラル様」
『ふん??ふぁふぃ?』
「貴方はあのお二人も天に選ぶおつもりで?」
『…んぐ……と、いうと?』
「私はあの二人が貴方の知る所に相応しい者達とは思えません。
それは貴方知る物語に居るからに過ぎないのでは?」
あーそういうことかとメルは空になった食器にスプーンを置いた。
腕で口を拭うメルに、隣から拭うなと声がかかる。
『ね、私下品でしょ?』
「は?え、いや」
『足も組むし、こうやって腕で口のもの拭う。
それはこの土地に相応しい者の態度だと思う?』
「…それ、は。」
『ロウやシドラは確かに神様としては愚かだろうねえ?
でも私はあいつらが一番重要な鍵になると思ってる。』
確かに行儀は悪いだろうけどね?
『問題はその中にある心が強いかどうかだよ。
…私の知る力の大会そのものが同じならば、の話。』
「そうでなければ選ばないと。」
『勿論!私ね、本当に容赦ないんだよ?』
一度見せた方が良いだろうけどね。
というか見せるけど。
そう言うメルに、何か考えが?とサワアが聞く。
『嗚呼、近いうちにね。例の奴を全員に見せつける方が良いと思って。』
「例?」
『私が0番目から1番目にしてた行為だよ。
さっきいた二人も気にしてそうだったからね。』
「何をです?」
『どうしてそうも、耐えられるようにしているのか、とかね?』
そんなことを。そう言ったサワアにいいとメルは手を横に振る。
『悪魔になっても引きずり上げてくれる天使が居るんだし。頃合いだ。』
「…そりゃあどうも。でしたらあの黄金の草花で?」
『一応したいはしたい。出来なければ場所何処かに作る。』
「ソレが一番いいんですがねえ。」
『話は戻るが、私は切り捨てる時はばっさり行く。
あの二人はそれに相応するかどうかは、その後の判断。』
「わかりました。ですが本当にもの好きですねえ?
彼らの何処がそんなに好きになるので?」
別に好みではないんだけどねえ。
『なんだろうね?わかんない!!』
「…そうですか。彼らにはもったいない言葉です。」
『へへ!そういやモヒイトさんって力強いよね?』
「急にどうしたんです?」
『ほら前に鬼ごっこした時に捕まえられた時さ。』
「…痛みます???」
ああ違うそうじゃないとメルは首を手と同時に横に振って拒否する。
席を立とうとしたモヒイトを止めたのだ。
『私が言うのもなんだけど、細いのに何処から力出るのだろうと。』
「……まあ、それなりの力はあると思いますが。」
「力がなくとも戦術でどうにでもなりますしねえ。」
『一番力強いのって誰?』
「誰でしょう?したことありませんし。」
「勝ち負け等所詮低俗のすることですし。」
『まあそりゃそうか。』
「おや、否定しないんですね?」
『私勝ち負け大っ嫌いだから。』
あんな勝利など、ままごと同然だろう。
「それは、貴方の出るはずだった大会もですか?」
『…あれは順位が隠されているから。』
それがとてもとても、嬉しいのだ。
あれ程心優しい大会はないと思う。
裏でしか決められていない順位。
点数は、子供達には酷過ぎるというのに。
子供達はそれを望んで我よ我よとみる。
その一枚に書かれた残酷な答えに。
どれだけの傷がつくのかも、大人たちは知っても尚止めない。
それが成長につながる傷だと知って。
そして甘くみることが、失礼だとも知っていて。
『どんな場所でも点数が隠されているから、不思議なんだよ。』
「ではそのようにすればいいではないですか。」
『へ?』
「次の、貴方が作る。武術大会で。」
『…全ちゃん滅茶苦茶驚くかな。』
「ぜっ、ま、まあ全王様もお喜びになられるでしょう。」
『まさに神々の遊びになるよ?いいの???』
「いいんじゃないです?充分遊ばれてますが。」
あははは、ごめんて。
『まぁ勝ち抜きトーナメントは絶対しないな。』
「武術の一位とはいかないのですか。」
『どっちかっていうとこっちに偏ったらいいかなと。』
「…成程、考えましたね。」
想い感情、メルは頭の方に指を指して言うのだ。
知能それが、策略が全てだと。
『今回人間は入れないが、のちの事を考えて観戦はさせてもいいかなと。』
「次の神々に相応しい者達に見せつけると」
『ま、そんなもの。するとしたら私の方で選ぶよ。』
「それは楽しみですね。破壊神らを戦わせて?」
『馬鹿お前らも道ずれに決まってるでしょ。』
「っ?!!?」
お茶を零しそうになったサワアとモヒイトにメルは息を吐いた。
『なんならお前ら二人戦わせたいくらいなのに。』
「ご冗談を。というか明らか負けが確定してるようなものですが。」
『おやあ?先に負けを認めるの?その未来を摘むんだあ?』
「…いいえ?適当に、言ったまでですよ。」
口が悪いので。
おやおや。そりゃ失礼。
そうメルはニヤ付いてお茶を飲む。
いやあ上手いわあ。ほんと。
『するとしたら私とサワアが戦うとか普通にするね。』
「ぶっ」
「おや、お相手本気でしても?」
『その代わり悪魔の状態キープね』
「なら貴方は天使に戻ってくれると?」
『勿論…絶対負けない。』
「その時まで楽しみに待っていましょう。」
そのまえに筋力ですね。
うう、いやだああ
ふふふ、精々頑張って下さい。
「僕の為に」
『…私の為にじゃないの?』
お二人ともそういう彼に失礼と二人して笑って答える。
「そう言えばあの図書の本は何ですか?
見た処神々の言語では明らか違いましたが。」
『嗚呼あれね、別世界の言語』
「ぶっ!!!!」
「っげほっごほっ、正気で?!?!?!」
『正気の沙汰。ほらサワア前にさ私赤本に書いてたって言ったでしょ?』
「っあ、ああ…あの勉強ですよね、ソレが何か?」
『あれ本叩いたらあの量出てきた。』
「………どれ程勉強したらあんなになるので?」
なぞるというか、ほとんどの資料は教科書である。
向こう側の知識を移動したに等しく、最早禁書というもの。
絶対に外の人間が見てはいけないものに近いのを、
この子は軽々と言ったしやってのけているのだ。
頼むから下手なことはするなと散々言っているが、
どうやら手遅れであることは間違いない。サワアは頭を抱えた。
いやまさか此処までとは、まだうちの破壊神の方がずっとマシだろう。
『だから知らなくていいんだってば〜手伝わなくてもね。』
「いやですがアレをどうするつもりで?
こっちで勉学しても意味ないのでは?」
『向こう側の人間とも会合をする以上は向こうの知識がないとね。』
「嗚呼そういうことで書いてたんですか?」
『私が居ない時に使ってもと思って。』
破ろうが何しようが赤本あれば戻せるし。
嗚呼、させるようにはしませんし、修復出来るからいいですが。
『そういやモヒイトさん、向こうの人達に
変なこと言われてない?何か失礼なこととか。』
「嗚呼、あの時の会合ですか?特に、ええ、とくには…」
確か原初はミスティ、エル、キュフロー、ライネアの4人だったはずだ。
嗚呼そうか、確かにどれもこれも落ち着いているは居るか。
「どちらかといえば、私よりもサワアさんや
コルンさん、カンパーリさんの方が気になりましたよ。」
『あっあ、あ〜〜〜〜』
「急に飛びかかった時は驚きましたね。」
「なんでしたらコルンお兄様タジタジでしたから。」
外から見てタジタジとはそれ如何に……
アンダルシアもテンションが上がる方だが、
フェルとのコンビが滅茶苦茶良いのだろうな。
あと加護天使らも華神の形に近かったのだから
そりゃあ全員女に囲まれると困るだろう、ああいうタイプは。
「にしても昔からあのような衣装なので?」
『露出が高いのは翼が出るというのもあるが、
他に華をもたらす場所が人によって違うからね。』
「成程、だからあんなに露出が高いのですね。」
流石に今は長袖長ズボン状態である。
真っ白な布に身を包んでいるのは少々苦しいが。
そろそろ色も変えたい所でも、ううん。
「何か着たい洋服でもあるので?」
『ああいや、着たいよりも買いたいに近いかな。流石に出れないが……』
「嗚呼、ホームシック的なアレですか。それこそ内側を開ければいけるのでは?」
『したいけど、ちょっと怖くて。』
もしあのドアが空白ならば。
ミラ達が選ばれていないことになる。
まぁCの方に旅立ったのだから、その考えは当たっているハズだ。
なんならアンダルシアらものちにはCに旅立つことになるはず。
このAには、この者達が選ばれるのだろうから。
今は怖くてしていない。怖い怖いのだ。
その種を植え付け、一度に咲かせたその瞬間が。
「大丈夫ですよ」
『っ』
「我々を甘く見ないで下さい。」
そう、紫色の瞳が此方を見てくれる。
背中をさすってくれる手が温かい。
天使は人間ではない。
その為体温などないのだ。
冷たいのに、彼等は私を安心させるために偽造する。
その温もりを、彼等は創り出して私を勘違いさせるのだ。
その身に心臓などないくせして。
「さて、休憩も終わったことですし、作業を手伝いましょう。
メルはモヒイトさんと一緒に戻っていて下さい。」
『いいの?食器は?』
「今回は私がしますので。では」
「わかりました。行きましょうか、エフェメラル様。」
『はあい。』
席を立ったモヒイトにメルも声を上げて席立つ。
++++++++++
「エフェメラル様」
『んー?』
「この資料は全て読めるのですか?」
『一瞬読み解けるのは一部分だけ。
適当に抜粋してきた資料ばっかだから内容ほぼみてない。』
「え゛そ、そうなんですか。」
『なに、何か知りたい内容でも?』
あっいえ、というモヒイト。
現在サワアを放置し、二人して本を分けつつ
本棚に纏め入れていたところだ。
「貴方の知る言語だと言い方が違うのかと思いまして。」
『…実は日本語の喋り方全く同じなんだよねえ。』
「本当ですか?」
『なので言い方はおんなじ。
でも海外、まぁ私の知るところじゃないのは言い方が違う。
まぁ例えばNever say never.とかね?』
「はあ、ちなみになんて意味で」
「決してあきらめないで。」
その声にメルだけでなくモヒイトも振り返った。
その場所に居たのは
「英語という言語で日本語訳だとそうなります。
願いは叶うから、諦めることなどしなくていい。」
『アルトリア!!!』
「お久しぶりです。やっと落ち着いたので。」
『きゃ〜〜〜〜!!!』
「すいません大変ご迷惑をお掛けしまして。」
「いえいえ、無事何とか乗り越えられたようで。」
華樹神官のお努めが漸く分かって、
此処から正式にサポートをという形に移行することになったのだ。
天使らも様子を軽く見るだけになる。
少々寂しいが、これが一番の位置なのだ。
「にしても本当に色々持ってきたのね?英語だけじゃなくて
待ってドイツに、フランスに、中国語もあるこれ」
『のんのん!日本語、英語、ドイツ語、フランス語、
イタリア語、スペイン語、ギリシャ語、ラテン語が主。
中国語、ロシア語とかはまぁ少ないけど多少くらいで。』
「待って待って待って待って待って待って待って待って待って」
多い多い多すぎというアルトリアの声に聞こえてか
図書の中にサワアと大神官、そしてルトラールがやって来た
『わあ!スピスさんに父様!!!お元気で!』
「こら逆。お元気そうで何よりです。
でしょうが。帰らせるつもりかお前は。」
『ははははは〜〜〜〜!!きゃ〜〜〜!!』
「貴方も元気そうでよかった。
丁度引継ぎにと声を掛けに来たのです。」
『あちゃ〜長い様な短かったなぁ。』
「まぁ天使らも寂しいでしょうから、遊びに来るとは思いますよ。」
是非とも!!そうしてもらえると!!!
そう笑って手を上げるメルに、大神官もにこやかに笑う。
「エフェメラルお前正装は?」
『えーやだーあれ恥ずかしいでしょ?』
「まぁ慣れたら大丈夫。というかその調整もしないとだからね。」
『よくきれるというかスタイルが良いんだよ君ら。』
「いやあんたが言うか。」
普通にお腹周りくびれあるし細くていいじゃん。
ぎゃあああ触るなああああ
そう叫ぶメルに、周りもクツクツと笑う。
「まぁ動くわけじゃない。正装というかこっちの服もね。」
『うう、じゃあ着替えてくるか。ちょっとまってて!』
「はいはい。」
ドアを二つ移動した後、アルトリアはドアを閉めた。
にしてもと、アルトリアはメルの身体を抱きしめる。
「っ良かった。」
『わ、あ、あるとりあ?』
「聞いた時見た時もうどうしようかとっ」
『…ごめんね?がんばった。』
「うん、っ、うん。」
何だかんだいって、不完全。つかず離れずの二人。
それは一代目から……あ、
『アルトリアって記憶取り戻したんだっけ?』
「嗚呼、うん。もう無事に。それがどうしたの?」
『一代目とか、覚えてる?』
「……ごめんだけど、私はグレーだよ。」
彼女は天に選ばれた人間の一人だったという。
人間というフレーズに怖がる彼女に、大丈夫とメルは答える。
『もし仮に貴方だとしても、寧ろそっちが良い。』
「エフェメラル、」
『斬った人に早く会いたいんだあ』
「どうして?怖くないの?また、また赤ちゃんが」
『まだ居ない。だから会えないのかなあ?』
「〜〜〜っ!!!」
あの子が産まれると皆が安堵したその瞬間に
彼等はお迎えに来てくれるというならば。
私は泣いてしまうというのに。
『まぁ暫くは特に悪魔に在る状態なら尚更しないよ。』
「…そっ、か。ん。それで?したのしてないの?」
『へ!?!?!?』
「……あっ分かったはい。」
そう何を見たのか、察したアルトリアが外に出る。
あっちょ、まだ着替えてないんだが!!!
メルは急いで着替えていくとだ。
『ちょ、アルトリア?!?!?!?!』
「エフェメラル泣かせたらただじゃおかないから先手」
「泣かせるつもりはないですし、手放すつもりもありません。」
思いっきり杖と杖をぶつけ合っていた。
ちょ、此処図書館!!一応手前は広いけど。
上にくるりと回って落ちるが、華麗だけれどもあの。
「へぇ?女の子ぶつ悪魔が泣かさないわけないでしょ?」
「…ほお?私と手合わせを?」
『ちょっちょとっとっとあだだsふぁkjsdふぁk!!!!』
「っば!!!」
「わっ!!!エフェメラル!?!?!?」
流石にとメルがばっと飛び出て間に入る。
火力を上げた二人も流石に帳消しして軌道を無理やりずらしたので身体が地面に倒れる。
「ったたた、なにするんですか!!!あぶないでって」
『(喧嘩しないで)』
「……はあ、すいません。悪かったです。」
大事なことは言葉にしない。
倒れたサワアに飛びついたメルに、
仕方がないと背中を軽く叩いて分かったと声を掛けた。
「にしてもえらく可愛らしくなって戻ってきましたね?誘ってます?」
『〜〜〜!?!??!!?』
「っくくく、冗談ですよ。お似合いです、エフェメラル。」
首元は金の装飾で、胸上にはエメラルドの宝石。
白いスポーツブラのような形の下は一周して
金色の金具で固定され、中央には楕円形ではあるものの
似たような宝石が付けられ、その下は三角の装飾が付けらていた。
胸元中央より上には大きなエメラルドの装飾がキラキラと輝いている。
輝かすように、金色の縁を形どった下は神々しさを知らせる為か、
左右対称で2つほど粒が線として装飾されていて。
脇を通す様に、エメラルドグリーンの淡い色が腰元下まで
布が気持ち程度に垂れ下がっているのをくるくる回して浮かせる。
しゃらしゃらと胸下の装飾だけでなく、腰元の装飾も音を鳴らせる。
腰は中央に胸と同じような楕円形のエメラルドグリーンが付けられ
ベルトなのだろう、太めの金色の縁が骨下あたりで止まっている。
腰元の横は二つ楕円を作り、
その楕円に合わせ幾つかひし形の装飾が綺麗に生えるのは
下の布が脇から通した淡いエメラルドグリーンの布と同じ色だから。
フィッシュテールと呼ばれる様な魚のヒレを似せた
前が短く後ろが短い布から、中央を分けてか白い純白の布がみえる。
腰元のエメラルドグリーン下は少し半円を描いた線を三等分して
気持ち程度の紐束が揺れていた。
二の腕ギリギリラインからは金色の腕輪から
薄い透明の白が手首の腕輪迄つながっている。
下に行くほどふわりとバルーンの様に広がっているが、
手首の腕輪のおかげか、キュッと締まっていて、ベル状にも見える。
耳にはさらりと金色のエメラルドグリーンのイヤリングが装飾されていたのを軽く触る。
いけませんねぇと言ったサワアにメルは首を傾げた。
『ん?』
「ま、あとで。」
『んん???』
髪の毛はうっとおしいのか、後ろでいつの間に編まれたのだろう
ひとつに三つ編みで編み込まれている。金色の紐が輝いて見える。
それが大事にしていた自分の作った
紐の一つだと思えば、ゾクリと疼くその感情を抑えた。
「にしても見れば見る程可愛いわあ〜〜」
「ええ、お似合いですねえ。」
「我が子ながら滅茶苦茶可愛い。」
「ルトラール様……」
『ん〜〜〜動くの恥ずかしいけど大丈夫?』
「まぁ慣れ慣れ。おへそ隠さない隠さない。」
『あ〜〜!』
なんでお腹隠すので?そう聞いた者に、さらっとアルトリアが答える。
「嗚呼、メルが神様におへそ取られちゃうから隠さないとって。」
「…………。」
「耐え、ですね?サワアさん。」
「はい。」
「ん??まぁいいですけど、首元後ろから外せるからね、エフェメラル。」
『え?此処?』
「嗚呼そうそう。胸の方は別だから。」
はぁいと衣装の説明を受けるメル。
どうやら気にってはいる様だ。
「そういえば華樹神官の衣装とかも変わるんですか?」
「嗚呼、似たような形だけどね。首元が少し広いだけで
白の衣服に包んでいるだけだよ。」
僕みたいにね。そういうルトラールの衣装はアラビアン系。
Vカットの白い長袖の先はメルと似たような腕輪。
まだベル状ではないものの、緩やかに止められている。
金色の少し分厚い首輪の先にはエメラルドの装飾。
首から胸に向かって三方向に向いた線は鎖骨の中央で
エメラルドの装飾で止まっている。
Vカットの衣服の中央、いや上から半そでの様なものを着ているのだろうか。
中央には紫色の楕円を横にし、上下にエメラルドの装飾が施された宝石をぶら下げている。
襟というか袖というか、金色の袖部分から中のシャツがみえる。
どうやらシャツの方が金の腕輪に繋がっている様だ。
腰元は金色のターバンの様な布を付け、外側は白い布、
内は少しだぼっとした白いアラビアンパンツを着ている。
肩に掛かった上の半そで後ろは淡いエメラルド色の布に装飾が施されている。
内側は少し薄い紫色で、かなり落ち着いた印象が見て取れた
耳に円を描いた金色のピアスを付け、その下にはエメラルドの宝石がちらりと見えた。
「まぁ似たような衣装にはなると思う。
髪色も徐々にこれから変わるだろうからね。」
「…成程。」
「にしても、スピス。お前とんでもない奴産んだな?」
「おや、そうですか?」
「嗚呼もうほぼ片足がっつり突っ込んでるわこりゃ。」
何にです?とくるくる回る彼に対してサワアも彼を見て言う。
「いや神官に。」
『っ?!?!?!』
「君眠気とか食欲あるでしょ。それも結構抑え効きにくくなってきてない?」
「…流石にばれますか。そうですね、まだ見えない処ではありますが、肌も変わっています。」
ほらとサワアは腕をまくる。二の腕の内側が既に色素が抜かれつつあったのだ。
いや意外過ぎてメルの胸がしゅんで冷える。
固まったメルに、アルトリアが首を傾げた。
「…髪の色はまだ、か。」
「はぁ」
「下手したら薄い髪色かもね。目もそのままの可能性がある。
此処まで綺麗に緩やかな変化は正直初めてというか、何と言うか。」
「資料とかあるのですか?」
「紛失等々無ければ。まぁアニュラス様にでも聞けば教えてくれるだろう。
此方の管轄は向こう側にあるから、その華樹内部に行けばの話だが。」
「なら今度是非とも。」
「…嫌がる子はちゃんと言い聞かせておいた方が良いけどね?」
「え?」
『っ』
目を細めた彼に、メルはギッと睨み付ける。
「エフェメラル」
『……何』
「嫌がっていたらこんなにならない。
そもそも華樹神官の位置は夫婦以外不可能。
契りをきちんと成し得てないとこうも行かない。」
ましてやこんなに緩やかなのは
お互いがしっかり想い合ってる証拠なんだという彼に、
メルはスカートのすそをぐっと掴んで睨む。
「いい加減腹を括れ。こいつの方がよっぽど強い。」
『…分かってる。』
「ルトラール様、其処までに、」
「はぁー、すまないね。頑固な娘で。」
「いえいえ。華樹神官の仕事は此方で天使の様な業務とお聞きしていますが」
「嗚呼、前にも言っているが、基本ソレで合っている。
華樹神が死なない様に保護も兼ねているからね。」
「別れたりとかは」
「ないない!!喧嘩とか僕らもしょっちゅうしてたからね!!」
驚くサワアにクスクスと大神官が隣から話をつつく。
「昔色違いで喧嘩してましたからね?」
「っちょ、こらスピス!!」
「別にいいでしょう?些細なことで亀裂が走り、
それが永遠の別れに等なりません。
貴方達二人は一代目からの縁なのです。」
そんじゃそこらの違いで永遠が来るなど、思わない方が良い。
そう言う大神官に、そりゃそうかとサワアは納得した。
「忙しいようでしたら言って下さい。善処します。
その間はアルトリアと私に。天使の業務ならこの子に。」
「すいません何から何まで。」
「いえいえ、寧ろ娘をよろしくお願いします。」
『ととさま……』
「一代目とはいえ、我が子です。
幼いながら何もしてやれなかった。」
『っそんなことない!!ととさま
ずっとずっと私を見てくれてたでしょう!?』
あの小さな子犬がいたときから!!
そう言ったメルに、気付いていたのかとルトラールが驚く。
気配だけでも、という彼女に本当に呆れたと口だけで笑う。
「…嗚呼、こっちに来るまで怖かったからね。ちょくちょくね。
君の元にではないが、連絡は聞いてたよ。」
『やっぱり…』
「サワア君、君の知る通り彼女は強く、
穢れすらも抱きかかえるとんでもない娘だ。
その穢れを知らない子をどうか末永く守ってやって欲しい。」
頼むと頭を下げる彼に、暫くしてサワアは答える。
「僕は初めて会った時からずっと不思議でした。
白い翼を生やした子が何故地上で花冠を作るのか。」
「っ、サワア君……」
「きっと貴方に見て欲しかったのですね?」
一代目の時の、貴方に。産んでくれた父親に。
未熟者でも、一人前になれるように、
花を作れるようにはなったのだと。
もう大丈夫だと、言い聞かせられるように。
その背中を見せるように。
「そんな優しい子が、醜い僕にも手を差し伸べてくれた。
死のうとしたのに、生きたいと願った子が。
僕の前ではそっと隠して君だけは生きてと癒してくれた。」
あの日を、僕は忘れない。
例え忘れても、何度だって想い出す。
「あの日あの時から、意思は決まっています。
此方こそ、宜しくお願いします。」
「……ほんと、不思議だね、君達は。」
「え?」
「良いだろう。今度は天使としてではなく、
華樹神官としての指導になるが、それでも?」
「〜〜〜っ、はい!!!」
「よろしい、物理的な指導は僕の方が。
アルトリアからは身の回りの話を聞いてくれ。」
「わかりました。」