離さないで、




元の世界の言語から離れ、早くも一か月二か月。
三か月程が経った頃だろうか?
組手の時間も増やし、勉学もして充実している毎日を過ごしていた。

大分力も使える様にはなったものの、

『…そう、わかった。また引き続けて探索お願いね。』
「エフェメラル様、お時間構いませんか?」
『ん?はーい、ちょっと待ってね。そいじゃきり良いし此処で。
はーいおつかれさまでーす。失礼しまーす。』
「すいません、お手を止めさせてしまいましたか?」
『いいえー丁度きりが良くて切るタイミング見計らってた所です。』

寧ろ助かります。そうぺこりとお辞儀をした相手は

『モヒイトさんにヴァドスさんですか。また珍しい組み合わせなことで。』
「ごきげんよう、エフェメラル様。」
『どうされたので?』
「まえに結んで開いてという童謡といいますかお言葉を聞いていたので、その件について少々。」

やはり気付かれたか。

どうぞと言って中に入れ、メルは紅茶を持ってきたのを彼らの前にそっと置いて座る。

『それで、その童謡と言うかそのことについて何か分かったのですか?』
「その時に意味を教えて頂かなかったので、少々気になりまして。」
『…結んで開いて手を打ってまた結ぶ。その繰り返しの歌です。
揉め事が起きた時には、互いに引っ張り合うのではなく
互いにその紐を緩めなさいといいう意味をもつもの。』
「やはり意味があったのですね。」

しなかったのは恐らくそれが一人遊びだったからだろう。
アレは本来複数人でするものではない。

『互いの主張を認め合わなければ解決など出来やしない。
その繰り返しをしているだけで、話は続く。終わりなどない。
ただそれだけのこと、そういう意味ですよ。』
「…それだけ、でしょうか?」
『…それだけ。では駄目ですか?』

その目に、はぁとため息を吐いた。
ちょっと待っててと言ってサワアを呼ぶ。
犬と一緒に彼らの相手をしておけと告げ、メルは図書館へとやってきていた。

確か此処にあったはず。そっと民謡系の一覧本を作っていたのを思い出して持って行くことに。

コンコンとノックをして部屋に入る。

『おまたせ』
「いえいえ、それは?」
『貴方ら二人が知りたいもの。言っておくけど、コルン様はまだ見てない。』
「ほぉ?そのようなものをお見せして頂けると?」
『聞けばある程度ならば話をするからね。私は。』
「誤魔化す癖に何を言うのでしょうか。」

そりゃ知らない。

『お二人が察した通り。これは日本の民謡ではない。』
「…やはりそうでしたか。」
『誰に聞いた?』
「…私はシアージュ様から。」
「私の方はキュフロー様からです。」
『キュフローはまだしも、シアージュが?おかしいな。』
「何故です?」

そう聞いたのはサワアだ。

『キュフローは日本の文化に触れていてなんらおかしくない。
対してシアージュは私の方の廻廊組、終焉の人間。
日本語の話を何度もしていておかしくないことはないが、
もししているとあればずっとしていてもいいくらい。』

特にサワアらと出会った後、天使フィズの時間の次だ。
確かヒビが入っていた時間軸だったが、何があったのかは知らない。

「前にメル様は仰られておりましたよね?
世界は六日間で作られていたのだと、」
『ええ…まさか。』
「ええ、その直感は正しいですよ?エフェメラル様。
6番目の時に貴方は一度民謡の話を
彼女に言い聞かせておられたそうです。」

やはりしくったか。とち狂っていたか。
頭を抱えるメルに、民謡でも幾つか種類がある。
そして、日本ではないものも数多く存在すると言っていたらしい。

それに手遊びも教えていたらしく、しかもいた面子が悪かった。

会合で彼女が聞いた話はこうだ。

手遊びでも結んで開いての言葉の海外言語は興味深い話しだった。
そのことを思い出したらしく、ヴァドスが話を聞きにいくと同時に
モヒイトも似たような話を聞いていたらしく、意見の一致で来たという事か。

『…降参。』

両手を上げた後、確かにと話を続ける。

『ヨーロッパの方面でかなり興味深い内容が在ってだな。三パターンあるんだが。』
「今度は割と少ないのですね。」
『や〜かごめは流石に種類が多い方だからしゃーない。
でもこっちは救済に近い話しまぁ神様に祈る系の言葉だからね。』
「ほぉ?貴方の世界にも神を望む者達が居たのですか?」
『再三言うけど私は無神論派だからな????』

確かにこういう神話は大好物だし、滅茶苦茶神様とか良いなって思うさ。
そりゃあ自由に思うよ?でもだからと言って一つに絞るとか無理だわ私。

『一人の神様どころか全部の神様牛耳りたい。』
「おやおや、随分と欲張りに出ましたねぇ?」
「まぁ今とそう変わりませんが。」
「ヴァドスさん???」
「ですがそうでしょう?あながち間違っていませんよ?」

我々も既に彼女の一部といってもおかしくないでしょう?
手を貸している時点で。そう言うのに彼らも黙る。

『…一つは我々が去る時、加護を欲しいっていうもの。
心を、喜びと平安で満たせ。自分達が貴方の
つまり神から貰う愛を約束通り受け取れるように
我々の心を変えろって言う意味をもつものがある。』
「人間が?」
『そ、人間が。』
「随分と強欲に出ましたねぇ。」
『この荒野を旅していく我々の心を新たにして下さいっていうものがねぇ?』
「っ?!!?!?」
『廻廊』

その言葉で既に察しただろうが。
そう言ったメルに、続けてと言ったのはモヒイトだ。

『次はその対価による言葉。恩恵を貰えるのだから対価として
自分達の感謝と崇拝を捧げるというもの。
貴方の、神の音は心地よい響きだから
貴方の救いによって生まれたものが
我々の心の中に豊かに在る様に…そう、
信じるような、信じられる様な、真実が見つけられるように。』

そう願うもの。

『最後は…』
「メル?」
「どうされました?」
『…原文を読みます。
主よ、遠い世界から貴方の愛が我々を呼ぶ時
死の恐怖で我々が怖がらないように、従う様に
呼んで下さることを心から喜びます。我々が。
我々が、永遠に貴方と共に、君臨出来ますように。』

だから、捧げるというのだ。
感謝と崇拝、それは感情その者と言ってもおかしくない。
願いに縋り、祈りに捧げた者達は、その神の力を得る。
喜びを得て、その音が呼んだその時は、永遠の時間に居続ける。

だから旅をさせろ。去るのを許せ。
その悲しみを、喜びに変えてまでして、
願いを全て捧げて、心を魂を、新たにしろというのか。

「…華樹神のことを言っているようにしか聞こえませんね。」
『ま、正確には華神に近いが、廻廊と言った点ではそうだろうね。』
「このことを彼女達は?」
『…気付いて何人かが特に最果て組が裏で荒探ししてる。
同時に終焉組も自分らの土地と最果て組の違う処を各々出して
会合を開いて協議するつもり。』
「…ちなみにその予定って、いつ頃かお聞きしても?」
『なに参加したいの?』
「流石に此処まで首を突っ込んだ以上は、ねえ?」
「ええ。」
『……来週。予定は?』
「開ける様に組みます。」
『ふむ、サワア。』
「コルンさんにもですね?」

頼んだというメルに畏まりましたとお辞儀をして席を外す。

『じゃあパピもお留守番か〜?やだねぇ〜〜。』
「連れて行くという判断は?」
『ないかな〜〜?パピはここ〜〜〜。』
「窮屈にならないのですか?」
『此処まで広いと逆に寂しがるだろうし、
その時は誰かを付けるとするよ。』

昔みたいに一緒にずっと居たいけどね〜〜。
こういうところはメリハリ付けとかないと
本当に四六時中傍にとかお前も嫌でしょうよ。

そう言う処はちゃんとするようになったのは
本当にこの子のおかげでもあるのだから、
良い教育方針に傾いてくれて良かったと
今ではありがたく思っている。


+++++++++++

そう、時は満ちました。

『で、着ました。おつかれさまでーす。』
「おお、来た、かって…お前ひとりじゃなかったのか。」
『あ〜〜ごめん。ちょっとね。』

また今度。そう項垂れるメルに、一人でなら言えば良かったのにとコルンが告げる。
まぁそれも良かったが、ソレの時は追々。
もしくはこの話が終わってからでもしようかという話に持って行くことにする。

メルが呼び出したメンバーはというとだな。
種を了承してくれた最果て第5のティーナと
廻廊で終焉の第5、フィズの二人に加え。

加護天使でもあり、引継ぎでもある第5のリフレイ。
原初では第8のアンダルシアが姿を見せに来てくれていた。


「おお、随分とまぁまぁまぁまぁ〜〜〜〜?」
『え゛、な、なんですか…』
「ふぅ〜〜〜ん??偉い随分と、仕込まれちゃってまぁまぁまぁ?」
「…なんです?悪いですか?」
「いやいや。寧ろ大変、じゃったじゃろ?」

こいつの指導。
嗚呼まぁ、確かに、否定が出来ないのが悲しいですがね。
そういうコルンがそう言えばと声を掛ける。

「アンダルシア様、貴方サワア
お兄様のお師匠を務めてらしたとかお聞きしたのですが…」
「っ!!!」
「おお?お前言ったのか?」
「…正確には私ではなく僕、と言いますか。」
『あはは、色々あってね。小さくなっちゃってまして。』

事の詳細を聞いて、嗚呼成程とアンダルシアは納得した。

「確かに。昔こいつがあんまりにも泣き虫だから
叩き直してやろうと思って直談判したら
両方からよろしく言われたからな。」
「りょ、両方って…ちなみに」
「ルトラールとすっぴー」
「アンダルシア様?!?!!??!!?」

どうやら此処かららしい。
彼女の呼び方があんまりにも酷い原因は。

「お言葉ですが、アンダルシア様。
貴方様のおかげでエフェメラル様の教育に
非常に影響を及ぼしておりましてですね。」
「おお?そんなことないと思うが…」
『そうだよコルン様!ルトとすっぴーも良いって言ってた!!!』
「そう言う処からですよそういう処から!!」
「えへへ〜〜〜」
「褒めてませんからね?!?!!?!」

ある意味というか普通に文句の域ですよ!?!?
そう怒るコルンに、まぁまぁと宥める声が上がる。

「コルン様それくらいにしてやってくれません?
彼女そういう処はもう変えられっこありませんし。」
「アルトリア様!!!」
「ぬ〜〜〜だってなぁ??」
「だっても何もないでしょうが。その件に関しましては私も一応忠告を何度もしたんですがね。」

どうやら小さな頃のメルは聞きいれなかったらしい。
その頑固さというか、何と言うかはコルンら相手をしていた組はあーと頷く声を揃えて言うしかなかった。

「それで?この面子ってことは…どうやらそう言う事?」
『…ま、この天使らを抜きにして。先に話を進める方にするか。』

席に座って足を組んでぱっと出した用紙に、メルだけでなく他の子達にも資料を渡す様に出す。

『会合始めます。おねがいしまーす。』
「おねがいしまーす。」
「緩すぎません?」
『外野は黙ってて。じゃあフィズ、君らの神々から教えてくれる?』
「構いませんよ。そちらの破壊神界王神天使の組み合わせと似たような形でした。
全王様や大神官様らも快く承って頂いて、
現在原初の皆さまが中心として改めて華神として活動しています。
我々終焉は保留、というのもその話は後でしたくてですね。」
『保留?あ、ああまぁいいか。じゃあ次?』

うんと頷くフィズにメルはティーナと声を掛ける。

「こっちも似たようなものだ。破壊神界王神天使殆ど同じ。
ただこっちは華神としてまだ活動しないことになった。
その内容も、どうやら同じそうな感じがするが…」

一応全てではないが、見つけられるだけの種は回収した。
そう言ってティーナは指を鳴らし後ろにある大量の袋を出現させてきた。

「メル、単刀直入に聞く。」



お前、腹の中に持ってるヤツが誰だか分かってるのか?


+++++++++++


お前、腹の中に持っている奴が誰だか分かっているのか?

そう言われて、嗚呼と顔が変わったのも、仕方がないと思う。
知っているんだなと強い目が此方を見ている。
呆然とただその目を見てそうだけどとしか言いようがなかった。

深いため息を吐いた後、背もたれに背を深く置いて無理だったからと答える。

「あ?」
『…話したいなら別に出来るよ?今は大分落ち着いてるし、会話も出来ると思う。』
「カランコエ、というわけではないのですか?」
『それはアニュラス様らが私を危険視して付けた種に過ぎないもの。
もっともな原因の核が出てこない、いや、私に余り気付かれたくなかった。』

気付けばこの世界の理自体に触れること。
それ即ち、狂い咲きに直結するから。

そう言うメルに拍手の音が鳴り響く。

「良く気付いたね。」
『0番目という自分の位置がヒントになってね。
…ねぇ、私。まだ純環の中にすら入っていないんでしょ。』
「っな!?!?」
「どういうことですか!?」
『それも聞こうと思って此処に来た。ねぇ、アニュラス様。』


初代って誰?


そう睨むメルの目に、目の色が一つ変わる。
黄金色の目の色が、赤く染まりあがったのだ。
それにはサワアらも顔色を変えた。

「君、何処まで知っている?」
『…理に選ばれた者が華樹神になり、その者でも理として生きれる者が前の理に導かれて生きる。
ってところまでは把握してる。というか勘でしかないけどね。』
「へぇ!そこで勘。…ご名答。君の判断は正しい。」

やはりそうか。

『ねぇ』
「ん?」
『純環に色って意味あるんでしょう?アニュラス様。』
「…さぁ?」
『この世には存在しえない焔火、神火を持つ者。真火様。』

別名、ロート。

その言葉に、ぶわりとメルの前が青白い炎で包み込まれる。
一体誰に言われた誰が言ったという声に、凛とした姿勢のまま答える。

『言っておくけど、あくまでも私の知識からあぶり出した直感。
彼女に言われたからとかじゃない。』

あとついでにとメルが続けて言う。

『純環の理【前期】第二代目、因業いんごうを極め篋底きょうていに位置する者。
夜都やと様。別名ロート様。』
「…これはこれは。正式名称までご丁寧にどうも。
ならあと二人。君の口から聞かせて貰っても?」
『…純環の理【中期】第三代目、至純しじゅんを持ち虚空に生きとし生ける者。
白亜はくあ様。別名ヴァイス、又はエリン様。』

後はそうだなぁとメルがぼやく。

『純環の理【草創期】日華に位置し、燐光りんこうを持ち得た火焔光かえんこう、統べる者。全ての始まり原初の原初。燈火とうか様。別名』

アウルム様

そう言ったメルの背後からキラキラとした光が目の中に入ってくる。
その姿を見た者達がぎょっとして身体を固めているのは見えた。

「…よく気が付いたね。と、いうか気付かなくても大体こんな感じ。
だと思った、直感。そうだといいな、程度のものか。」
『すいません。私余り貴方達がどれ程偉い人なのか想像つかないので。軽く話していますが。』
「いいよいいよ、寧ろ君がこの地にこんなに早く辿り着いて正直こっちが驚いてるくらいだ。」

もう目が覚めた。そう言う彼の声に、メルはそっと目を落す。

「チェレステ、アスル、カエルラ…うーむ。どれがいい?」
『…チェレステで構いませんよ。アウルム様』
「なら君は空色チェレステだ。」


蒼穹そうきゅうの彼方に存在すべき者。瑠璃。


「ようこそ此方側へ、とは言いたいが、少々早過ぎる到着だね?」
『そりゃどうも。私の処遇は如何致します?』
「おやおや、その為に彼等も連れてきて?」
『連れてくるつもりではなかったですが、次いで。ということで。』

成程、隠すつもりはもうないと。そう言う彼に、メルはこくりと頷いた。

「…ふむ。なる、ほど。」
「っ、」
「……良いだろう。だが管轄は次のそのまた次になるが、それでも?」
『と、言うかそのつもりで話を纏めに来ました。後我々がどうしていいのかとかね。』
「それは、この子を天使に。戻す話かい?」
「っ!?!?!」

そんな話は聞いてないと言わんばかりにサワアが顔をこっちに向ける。
あ〜〜そういう意味でも、まぁ、あるんだよなぁ。

『そうそうそうそうそうそうそうそう。
もうどうすればいいです?これ多分ルール違反ぶっちぎり場外アウトゾーン入ってますよね?』
「いや分かる訳が」
「まぁそうだね。」
「「「わかんのかい!!!!!」」」

なんでだよという声が聞こえるのにメルは苦笑いを零した。

「管轄は君のみが許される時期だ。
華樹神官が認められるとしたら次のそのまた次。
見習い程度なら別に問題はない。」
『あ〜〜〜要は正式就任は認められないけど、
まぁアルバイト未満くらいなら別に問題ないと。』
「そうそう。」
「なんでこんなに下界のルールしってんだこの神様…」
「だから天使と見習いを同時進行ってくらいなら許す、かな?」
「…ありがたき幸せ。」

そう深く頭を下げるサワアに、よろしいと声が上がる。

「さて。自己紹介が未だだったね。初めまして諸君。
僕は彼女チェレステの言った通り原初の原初。
全ての始まりを司っていた者、アウルムだ。」

君らの名前やらなにやらは知っているからそのままでいいよ。
そう軽く笑って手を振る彼に、はぁと困った顔をする各々。

「それで、その子はどうするつもりなの?」
『いや逆にこの子どうしたらいいです?放置?放置していいんですか?』
「ん〜〜通常だからねぇ〜。びっくりするくらいに気に入られてるんでしょ。それ程出てこないって言う事は。」
「あの…お言葉ですが質問構いませんか?」
「ああどうぞ?」
「各純環の理様らは全て役職に就く前の段階で現在のお方が中に入られていっておられると?」
「そうだね。まぁもっとも、此処まで出て来なくて気に入られているのは初めてだが…。」

あはは。

「メルの中にとんでもない者がいたとは…」
「ん?チェレステ、君今の名がメルかい?」
『ん?嗚呼、メルは略称ですよ。正式はエフェメラルっていいます。』
「へぇ〜〜?まぁまぁまぁ〜〜????」

ニヤニヤしてこっちをくるくる見ながらまわる彼に
何ですかと軽くメルは引き気味に答える。

「いいやぁ?儚いとは良く言ったものだね?華樹神に相応しい名を貰ったものだよ。誰が付けたんだい?」
『えっと、確か父様だから…ルトラール?』
「っ!?!?!?!るっ!?!?!!?」
「ん?」
『え、なんでアニュラス様驚いてるの?』
「何でって、アニュラスが司っていた時の華樹神がその子だからだよ。」


は!??!?!!


『はああああああああ?!?!!?うっそまじか!!!!!!』
「ぷっくくくく、ははははははは!!!!
そうそう、そうだよ〜チェレステ〜〜〜。」

いやほんと君ってば可愛いねぇ。まだ赤子どころか出てきてすらない胎児に近い時なのに。
そう頭を撫でる彼に、いややめろとメルはバタバタする。
これはメルだから許されているに等しいものであって、
普通にアニュラスらがやれば叩き殺される待ったなしだ。

「一つの花とかいて一花いっかと読む。それは一つの花以外にも意味があるのを知っているかい?」
『ううん、知らない。』
「…ほんのわずかの間、いっとき、一過というんだよ?チェレステ。」

そう自分ではない名で呼んでくれる彼。
その言葉を言われるたびに、腹のいやもっと下がゾクゾクと疼いてくるから困ってしまう。
余りその名で呼ばれたくない。変なスイッチが入りそうで嫌なのだ。

『うう、私はエフェメラルです。まだチェレ、ステ、じゃ、ない、ので。』
「…ほんと、可愛らしいねぇ?お前という子は。」

早くこっちに来てしまえばいいのに。
そう軽く抱きしめられることで身体がびくりと跳ね上がる。
あっちょ、皆見てるしそもそもくっついてくるなこら。

「純粋にその場所しか見つめない。だから彼女に選ばれるという者。」
『うううううう』
「っくくくく……ま、別に今の所は問題ない。強いて言うならもう少し力の使い方を覚えるくらいか。」

他の子達は土壇場で何とかしたけど、君らはかなり早い段階で落ち合ったからねぇ?

「精々此処まで来てみるものだね。」
『…がんばう、ぞい?』
「だああああああっ!!!!!」
「おまえなぁ!?!?このお方がどれだけ偉いか分かってるのか?!?!!」
『ん〜〜〜〜はちゃめちゃにえっっっっらい!!!!』
「…あれで言えます?」
「すいませんでした。」