山から里へ






「おや、お目覚めになられましたか?」
『うん…おはよお』

おはようございます。

そう笑うサワアに、あれ、夢かぁとメルはとぼける。
サワアは今日帰ってくる話ではなかったはずだ。

多忙期に入ったと聞いているので、
現実だとしてもこれは自分で作った模倣だろう。

まぁ、夢ならまだいいか。
でもそういや、こんなにも冷たかったか?
目が徐々に覚めていく。首のひやりとした感覚に、身体を飛び起こした。

「おや?どうされたので?」
『…ま、なん、で。』

へたりと身体が落ちる。
まずい、頭を思考をたたき起こして周りをみる。
パピも居なければヴァイスもいない。

「お二人ともお出かけになるとお話をお伺いしています。今日は僕と二人っきりですよ?」
『…ねぇサワア』
「なんです?エフェメラル。」
『これ、何処で手に入れたの?』

胸のざわつきが拭えない。金色の首輪は、もう処分されているハズなのに。
ニヤリと笑った彼にメルは飛び出すが

『っあ!!』
「何処にいくんですか?」

ぎょろりと睨むコルンの目に、背中がぞわりとして確信を持った。
まずい、捕まれば終わる。そう思って彼の動きからギリギリで避けたが

『っが』
「嗚呼危ないですよ、ほら。」

壁に頭をぶつけてよろけるメルを受け止めようとしたコルンの身体をすり抜け、距離を取った。

ぞわぞわが止まらない。杖にコンタクトを取って、もう確信した。

『っ!!!』

逃げないとまずい。

メルはすぐにドアの隙間から何とか転がってでも部屋から飛び出す。
食卓のドア玄関から出ようとしたが、がちゃがちゃと音が鳴るだけで開かない。

鍵をかけたのなら、力づくでと思ったが今は力が封じられている状態。
軽く走るのですら息が切れるのだ。後ろから近づく音に恐怖を感じる。

駄目だこないで。

明らか彼らの胸元が空いていて、感情が見えないのはわかっていた。
もう絶対に彼らは本物でもなければ、自分が作った模倣でもない。

「何処に行くつもりです?今日は此方で寝ているハズでは。」
『…ねぇサワア、貴方お仕事は?』
「そんなもの片付けてきましたよ?貴方に会いたくて。」
『嘘。サワアは仕事する時はちゃんとする人だもの。』

誰が模倣して入ってきている。
そう言ったメルに、彼の顔で舌打ちが落ちる。
止めろそんな顔をするな。

彼等の顔を姿を汚すなと怒るがすぐに冷静に分析する。
二対一、時間を稼ぐしかない。お願い、応答して。
助けて、助けて。お願い。怖い。

喉がカラカラになる。ぐっとこらえて次の部屋に飛び込もうとした時だった。

『っあ』
「っと、逃げれるとでも?」

やっぱり捕まったか。腕を取られたところが痛い。
違うやっぱりこれは現実だ。怖い。やめて。彼等を恐怖に位置させたくない。
この先を見たくない。来ないで。でも助けて欲しい。

自分で殺した後の、彼等の顔もみたくなければ
自分らに模倣されて傷付いた自分をみた顔も見たくないのだ。

『(あ、駄目だこれ)』

ぐっと力を入れて引き寄せられた時、首に触れた首輪の効力が強まったのか知らないが一気に力が抜けて倒れるメル。
それをそっと抱きかかえたコルンに、意識が落ちかけていた時。

がちゃりとドアを開け、家から出たのだろうか、空が青い。どこまでも、続く青が、見えなくなる。
ジワリと滲むその感情に、胸が締め付けられるくらいに痛くて。


ああ、おねがい、たすけて、


『さ、わあ、こ、るう』
「その汚らわしい手で彼女に触れないで貰えます?」

その言葉と同時にばっと出てきた彼等に、ぽろりと涙が零れ落ちる。
嗚呼、助けを求めたら、手を取ってくれるんだ。
眠たい思考を何とか起こして意識を兎に角強く持っているしかできない。

その姿を見たのか、低い声が周りに響く

【彼女に何をしようとしているんですか】

ひぃっと声が何処かから洩れる。嗚呼やっぱりこいつら偽物だ。
飛びついた私が普通に悪かったが、寝ぼけていてもしないと今誓う。

「貴方は向こうを私は詰めます」
「わかりました。」
『…さ、わあ』
「すいません、もう少し寝て居て貰っても構いませんよ?大丈夫悪い夢ですから。」

そっか。夢か。夢なら、いいかあ。
そう思ったメルがすっと目を閉じて眠りだすのに、
ギッと睨んだサワアに、模倣されていたコルンが本来の姿を現す。

どっと彼の腹に蹴りを入れ、メルを奪い取り返したのだ。
その動きにメルがそっと目を開け、また涙を零した。

『…さ、わあ。あ、りがと。』
「〜〜っ、ええ、どういたしまして。遅れてすいません。」
「お兄様。」
「…色々聞きたいことはありますが、貴方方彼女に何用で?」
「ソレはいけない。悪いことは言わないから手を引け。」

そう言った者に、何故とサワアが答える。
そもそもこの地をどうして知っているのか知りたいもの。

「ソレは許されない。裏切者に位置する者。」
「何の話を…」
「華の者が言っていた。ソレは殺されるべき存在だと。」
「選ばれた者とお伺いしています。お引き取り願えませんか?」
「嫌だと言ったら?」
「全員で始末するのみ。」

ぱっと腕を上げたコルンに続いて、敵らの背後からリキールら破壊神が飛び出してきた。
それには敵も驚き、空に横に避けて彼らの動きを避けて動く動く。

白いローブを着飾った6人に、破壊神らがタッグを組んで攻撃を仕掛け続ける。
軽く避けられたりするのを見て、ヘレスが舌打ちを打った。

「身勝手か」
「流石でも見えない。お前らは相手ではない。」
「あのお方は!?」
「わからん、でも見当たらん!!」
「彼女には眠って貰っています。すぐに目醒めるでしょう。全てが終われば。」
「…お前ら、誰に喧嘩売っているのか本当に分かっているのか。」

ぶわりと逆立てるリキールに、勿論と答える者達。

「貴方らは我々に勝てるわけがない。」
「っな、ん、だと」
「リキール!!っ、」
「ヘレス!!!」

バタバタと倒れていく破壊神に、気付いた天使らもすぐに動く。

「お兄様!!此処は構いませんのでとにかく走って下さい!!」
「わかりました!!コルンさん!!」
「ええ、後を頼みましたよ!!」

ばんと扉を開けて飛ぶ二人にメルがつぶやく。

『…と、らん、てぃあ、に』
「とらんてぃあ?」
「…コルンさん、12宇宙へ飛びますよ。」

アストランティア、彼女はそう言っているのだろう。
メルが生きれるとすれば、恐らくそこしかない。
頷いたコルンがメルを抱えたサワアを見つつも背後を気にして空を飛び出す。

「一体アレはなんだというのですか。」
「わかりません、ですが前に見た白衣の人間に似た者達ですね。
流石に模倣が少々メル様より完成度が低かったですが。」
「色々聞きたいことはありますが…っと、流石に駄目ですか。」

火傷する音にコルンが嫌な顔をする。
メルの首輪は触れさせることを拒んだのだ。

「お父様は?」
「一応報告をしています。ですが我々全員中立の存在。
彼らが下界人であれば防御する以外術がありませんので。」
「…神々であれば対処をするのですがね。」

急ぎましょうと言った言葉に、コルンは頷いて速度を速めた。

+++++++++++

「…そう、分かった。彼女をすまないが。」
「ええ。っと、起きましたか?」
『ん…こ、こ。』
「エフェメラル」

そう言われて寝ぼけたまま顔を向ける。
するとふわりと気持ちよい風と共に髪の毛が温かい頬に触れてくる。
くすぐったくて、目を閉じて涙が零れ落ちた。

「いつまでも、愛してるよ。僕の愛おしい子。」
『…とと、さま?』
「では。」
「お気をつけて。」

消える者に、メルはまだうとうととしている。
この星は春の星惑星。アストランティア。
こうやって来れるのもルトラールとアルメリアが何とか形を維持してくれたから。

大樹の向こう側に行けば第12宇宙の華樹に通じている。
一応此処までくれば大丈夫だろうと、一息ついて二人は深いため息を吐いた。

「はぁーーーー、なんですか一体奴らというのは!!!」
「わかりません。ですがあの子達が心配になりますね。」

ヘレス様も、そういう彼に、んんとメルがばたつくので、そっと下す。
ぐったりとして寝ているのを起き上がらせる。ぐらぐらふらつくので
じっとしていろと言うも、言う事を聞かない。それどころか

「っと、何処に行こうとしてるんですか?」
「その状態で帰らせるつもりはありませんよ。」
『…んん、でも、』
「駄目です。何のために貴方を此処までお連れしたと思っているんですか。」
「一応警告音を鳴らせてくれたのは助かりますが。」

カンカンと言った音が鳴り響いた時は胸がひやりとしたものだ。
すぐにヘレスと共にその場に走り、
辿り着いた場所を見て、理性が吹っ飛びそうになった。

ぐったりとしたメルを偽物だろうコルンがうだいていたのだ。
ぽろりと涙を零すその姿に、泣かせるな
というよりも触れるなというのが強く出た。

同時にコルンも到着しており、その姿をみて顔が変わり、二人で相手をしてメルを奪還。
その後続々と破壊神と天使らが集結し、一部は隠れて様子を見ていた。

襲撃に襲撃を重ね、その間に二人はメルを連れて逃げてきたというもの。
今は千年程縛られている時期なので、本当は地面に落ちる事すら許されない。
がくりと落ちるメルの身体を受け止め抱きかかえ直す。

「…身体にダメージは負わない、ですか。」
「この地が特別なのかもしれませんね。此処も安息ではないでしょう。」
「ええ、ひとまず移動しましょうか。」

ふわりと浮かぶ二人に、メルはまた目を閉じる。


+++++++++++


『…あれ、此処。』
「起きましたか。」

パチパチと焚火の音がしていい匂いと共にお腹が鳴る。
うう、こんな洞窟何処で見つけたんだか。
ざぁざぁと雨の音に、コルンとサワアだけでなく他の天使らも辿り着いた。

「お兄様」
「合言葉を。」
「…蒼穹そうきゅうにある空の名は?」
空色チェレステ
「お疲れ様です。」

よくやりました。そう笑うコルンに、こくりとマルカリータは頷いた。

「現在殆どの破壊神と天使が眠っているですます。
逃げ出せたのは私と他にもいるですますが…」
「…そうですか。ルトラール様達にはお会いに?」
「ええ。逃がしてくれたのと、あとお伝えを。」
「伝え?なんでしょう?」
「現在全王様たちがもし消滅したとしても、メル様も同じ位置に居るので片方が消滅してもこの世界は生き残れるとか。」
「…まさか」
「流石にお父様達のことは。」

かなりの手慣れな気配はしたので、正直長期戦は控えた方が良いと判断して正解だっただろう。
神々の場所をすぐに荒らしたとは、大罪で終わる者ではないだろう。
悪魔かと思ったが、アイビーら悪魔は全員そのようなことをする奴らではないのは分かっていた。

なんだかんだ言ってメルの事を好いてくれている。コルンらを攻撃なんてするつもりはない。

全王様たちの安否が非常に心配だが、今は自分らがとにかく彼女を守り抜く以外はない。
アストランティアはとても広い星で、
大樹があった処から結構な距離を飛んだ後、
そのまま歩きに変えたものの、ほんの一区画を歩いている気しかしない。

「この地は幾つか帰る場所が隠されれてるですます。
そこに行けば元の宇宙何処かに通じるですますよ。」
「わかりました。貴方も付いてきますよね?」
「勿論ですます!メル様はマルカリータがお守りするですますから!!!」
『…ごめんね、みんな。私のせいで。』
「そんなことありませんよ。これは奴らが仕組んだこと。貴方の責任ではない。」
「コルンさんの仰る通りです。貴方が反省するものなど何処にもない。」

眠りが深く、思考の判断が鈍くなるのは仕方がないもの。
それを分かっていて、奇襲をかけたのだろうが。

「なんなら神々への宣戦布告というもの。」
「まぁ我々は何も出来ないですますがね。」
『うう』
「我々の目を盗んで奪還しになど考えないことですね。」

その点も策を考えていますそう言うサワアに、メルはふんと鼻息で答える。
どうやら図星らしい。焚火がちらちらと綺麗に見える。

「家とかは行かないですますの?」
「下手に行くと場所バレしますからね。幾つかデコイを置いて動かしています。」
『えぐ。そんなこと出来るのコルン様…』
「貴方がしようとしたことよりはるかに簡単なハズなんですがね……」

あんな全く瓜二つの生命体をどうして作ろうとするのやら。
全く本物がいるというのに、偽物で満足なんて出来るはずもないのを分かっているだろうに。

『えっでも原始的なことさせるの私が許せないんだけど。』
「場合が場合なので致し方がありませんよ。
これしきでプライドなど傷付くこともない。」
「今現段階で一番恐ろしいのは貴方が死ぬことですからね。
これは仮説ですが、貴方が死ねば我々も停止するでしょう。」
『え!??!!?そうなの!?!?!?!?』
「全王様らと繋がっている正確には
似た位置に居るということは恐らくそうでしょうね。」
「では何故メル様を殺しにきたのですますかね?
この世界自体が消えることを願ったのですますか?」
「スーパードラゴンボールを使ってしまえばと思いますが…」

流石にそれにも理由があるのだろう。
メルを狙うその理由が。

「言ってましたよね、殺されるべき存在、裏切者に位置する者。」
『あ』
「何か気付いたことでも?」
『嗚呼いや、でも…まさかな。』
「間違っていても良いので話してもらえません?」

そう言ったサワアに、あのねとメルが言う。
現在はマルカリータの膝の上で何とか腰を下ろしているので
真面目な話をしていいのか困ったが、どうやらしてもいいのだろう。

『話が変わるんだけど神話の中で滅茶苦茶好きだった奴があってだね。』
「本当に急に変えましたね…?日本とやらのアレですか?」
『どっちかっていうと世界のって感じかな?その人は神の子であり、
それが受肉して人となったっていう真の神であり真の人である
救いの主として描かれた生きてた人らしいんだよね。』
「またとんでもなくでましたね。」

自分を神だというなど、愚かなとコルンが言うのにメルが続けて話す。

『その人神様から試練貰ったかなんだかでそこら辺覚えてないんだけど
宣教って言って要は使える人から教えてもらった〜やった〜皆もやってみて〜救われるよ〜みたいな感じで広める人のことなんですがね。』
「あの、そこまで知能を下げなくてもわかりますから…それで?」
『それで弟子となった者から12人選び、彼らに特権を与えたとされてるの。それらは十二使徒。そのうちの一人って裏切者がいたんだよねぇ。師匠を売った大馬鹿野郎が。』

まさかそう目を開くコルンにええとメルが答える。

『黄色の衣服を身に纏う者。』
「っ」
『…ま、その人後に色んな方向から恨み妬み貰ってて、
殺害計画でまんまと罪を被されて処刑されたんだよね。』
「あらあら」
『墓埋葬されたけど復活するとか馬鹿みたいな蘇生して帰って来るけどね。』
「人ですか?その人は。」

人ではない気がするが。

『その滅茶苦茶な人を尊敬していた一人が妙な書き残しをしていて、超面白くてテンション上がってたんだよね。』
「それは?」
『尊敬していた者が生きているうちに、その復活者が来臨。
合図とともに主が天から下り、死んでいた者達が復活。
蘇った者達が天にのぼり、尊敬していた者は生きたまま空中で
その主に出会い、その後何時までも共にいるっていうやつ。』
「ぱっと聞けばそんな大したことではない気もしますが。」
『おかしいよねぇ〜死んでいた奴が蘇生ねぇ?ねぇ?』

私、一体なにしてたと?

そうにやりと笑うメルに、ぞっとサワアが気付いてその表情を変えた。

「メル、貴方…」
『黄色の衣服は私が持つ者。名はユダ。』

裏切者の持つ色なんだよ。黄色っていうのは。

ぱちりと音がして、暫くした後メルが声を上げる。

『裏切り者の代名詞となっているユダは、黄色の衣服を着飾っていたことから
とある地域では黄色が腰抜けや卑劣等のマイナスイメージ代表格みたいな感じで思われてるんだよ。』
「貴方がそんなことをするようなお方に思えませんが。」
『まぁ普通に私がミスったんだろうねぇ。昔からお人好しだっただろうし。』
「では、その時の奴らが押し掛けてきたと?」

恐らくは。

『だとしても何度も転生し直しているハズだし、今更思い立ったが吉日さぁ殺そうなんてとち狂った思考回路を叩く人が一人いたところで六人集めて奇襲かけるなんて、もう頭おかしすぎて痛いんだけど。ねぇコレ夢でいい?夢でいいから寝て覚めたいんだけど。』
「すいませんがこれは現実です。目覚めてますよ。」
『ですよねーーーーーーー。はーーーーーーどうしよ。』
「その方達はお強いですますの?」
『…多分父様が告げた弟子の11人だろうねぇ。いやあの頃の記憶は正直サワアとの赤ちゃん下ろした時の方が強くてあまり覚えていなくてね。』
「まぁ」

そう驚くマルカリータにごめんねとメルは告げる。

『名前は憶えていなければ詳しい事情も分からない。
まぁ大方上に上がる人が一人増えるなんて嫌だ。
ってことで私恨み買って罪被せられて死んだだけだろうけどね。』

それに付き合わせていると思えば、本当に申し訳ないものだ。

「いえいえ、あの時私は貴方に救われたというものですし、
それに関しましては寧ろ感謝を述べたいくらいですよ。
…まぁ、と言ってももしそれが正しいとあれば、奴らに敵を討てるというもの。」
「お兄様?ご自分の立場をお忘れですか?」
「分かっていますよ。要は本気で戦闘をしなければいいのです。」

卑劣だろうがなんだろうがこの際関係ない。

「エフェメラルに手を出しただけでも大罪だというのに、貴方も黙っている人ではないでしょう?」
『え?え?』
「まぁそうですね。正直自分の姿で気を許して貰えたのは嬉しいですが、
この純粋なお方に触れた手や目すらも切り落としたいくらいです。」
『ん??んん????』
「なんです?何も間違ったことは言っていないはずですが。」

そうかな?そうなんかな????

「そうですますわ!あんな野蛮で汚らわしい下界の者にメル様が触れられたとは……全員でぼこぼこにしてやりたいくらいですますよ。」
「マルカリータさん。お言葉が過ぎますよ。」
『そうそう!』
「低俗の者に処罰を下すのは我々の手ですら生ぬるいというもの。」
『待って???お兄さん????』

なんです?そういうコルンに、メルは待ってと答える。
ブチ切れてる人が三人おる。此処におる……。
私そんなに守られるはずの人間ではない気がするのだが。

「おや、貴方が救った価値はこれ程で返しきれないというのに。何をいまさら。」
「私達に守られているですますよ?メル様。」
『あう、天使がいるう、ここに天使がいるう!!!』
「っくくく、良かったですね?両手に天使。ですよ?」

いやほんとそう!!!!!もう此処が楽園で良いよ!!!!
そう叫ぶメルに、クスクスとサワアとマルカリータが笑う。

「まったくもう、こんな洞穴で夜を明かすなんて乙女になんて失礼なと思ってたですますが」
『おい』
「凄く不思議です。貴方と居ればこんなちっぽけな苛立ちすらも消し飛ばしてくれるですます。」
『…マルカリータ』
「あ、もう一度。」
『え?あっ!!マルカリータ様』
「あ〜〜ん!!!戻しちゃ駄目ですます!!!」

いや無理と首を横に振るメルに、なんでとぎゅっと抱きしめるマルカリータにメルはだってと呟く。

『はずかしい、から…じゃ、だっ、だ、だめ?』
「……駄目ですよマルカリータさん。渡せませんから。」
「なんでですます!!!あ〜〜ん!!!メル様が可愛すぎですます〜〜!!!」
「死にます死にますから。」

内臓が飛び出そうなくらいにぎゅっと絞められて困ったメルに
サワアが落ち着けとマルカリータをなだめる。
へたったメルがそう言えばと気付く。

『待って!!私これからどうやって寝ればいいの!?!?』
「嗚呼普通に私らが貴方を抱いてますので、そのまま寝て貰っていいですよ?」
『いや流石に申し訳ないが!?!??!!?』
「だとしても地に足を下ろして歩けるどころか気を失う直前まで倒れかけたではないですか。」
「貴方の場合自分の持っている気を全て地に吸収させる効果でしょう。
もしそれが現実問題なら惑星が粉々になってもおかしくありません。」

うう、それはこまる。

「まぁ12なので管轄外なのですが、どうやら我々でも貴方を抱き上げてさえいれば大丈夫そうですし。」
「ご安心を。これでも鍛えていますので。」
『確かに睡眠をとらなくていいというのもあるから良いけどそういう問題ではなくてですね。』
「ではこうしましょうか?今回の件は貸しを作るということで。返す時に何か要望するとは。」
『あ、それでいいよ。うんそれがいい。』

なんだか策にはめられた気がするが。そうそっぽを向くメルに、ニコリと微笑むサワア。
何も見なかったことにしようとコルンはそっと目を閉じた。