借りものの集い
「此処に居たんですか。」
『………呆れてる?』
「それは僕が貴方に付いていくのが早過ぎてるのが怖くて逃げたことに?
それとも、ヘレス様を置いて行くかもしれないのに不安な貴方の心境に?」
どっちもというメルに、そうですねえとサワアは腰を下ろす。
此処は、メルが作っていた秘密の場所。
何故か完成されているこの家は、どうやら夢の中で作っていたらしい。
その為気を大量消費し、悪魔にまで誘惑に負けるくらいになっていたのを
ルトラールからお小言を貰い、ちゃんと彼らに説明をしていた。
その裏庭にある、小さな池のほとりは、何時か二人が出会った所に酷く似ていて。
想い出を切り離してくっつけたような場所で、愛おしくて笑ってしまったサワアは
そんなことないですよとメルの頬を触る。
「寧ろやきもちを焼いて
僕を見てくれるのが嬉しくてたまりません。」
『っ、し、して、ない、よ???』
「おや、そうですか。じゃあどうやったらやきもち焼いてくれます?」
『っ!!!してるしてるしてるから近づかないで!!!』
つれませんねぇというサワアに、メルは距離を取って座る。
何なら現在進行形で会いたくないのだ。
最近アルトリアやヘレスと会う彼を想像するだけでも
黒い者に浸食されそうになって怖い。
二人とも大好きだし、なんならもしもの事もある。
願いを捧げたってかまわないのに、彼等はそれを望まない。
私がサワアの事を諦めるなど、させないのだ。
私自身も、許さないのだから、酷いと思う。
一代目からずっとこの心は彼にしか向いていない。
堕ちた先も、きっと、彼の元なのだろう。
他にうつつを抜かしたいという訳ではない。
だが、これで良いのだろうかと、
身体が切り離されたみたいな感覚を思いつくのだ。
まるで、その場所がずれたかのような感じ。
大丈夫此処にいる、怒っていないと、彼は彼等は言う。
狡い、狡過ぎる。もっと酷くしていいのに。楽になっていい。
我慢しなくていい。私の為に、其処迄しなくていいのだ。
怖い、幸福に慣らしていないのだ。幸福を守る為に酷くし過ぎたから。
小さな光すらも、自分にとっては大やけどものなのだから。
「…愛おしくてたまらないのに。」
『っ』
「僕は早く貴方の隣に行きたいと思うのに。貴方は逃げるのですか?」
『…望んだら、駄目だ、から。』
「そうしたら僕は酷い目にあうから?」
何度もそうなったから?
そう言うと、メルはうんと頷く。
そっかと言ったサワアはじゃあと声を掛けた。
「少しずつ寄って行くとしましょうか。」
『へ?』
「おや、だって貴方も慣らしたのならしたのでは?
痛みが分からない処から痛みに慣らし、
本来痛いはずの痛みを無くす。」
それと同じ原理です。
「望んで駄目なラインに気付かせない様にすればいい。」
『っでも何時かは気付く!!幸せも、幸福も、全てが!!』
「忘れたくないのに?捨てないと誓ったのに?」
『っ、そ、れは………。』
「…確かに、幼過ぎる時に旅立たせたのは悪かった。」
サワアはメルの元に近づき、
そっと彼女の後ろから抱きしめてあげる。
怖がる時は前からよりも後ろからするといい。
プライドの高い彼女は泣く姿を見られるのが嫌だろうから。
「何だったら僕ずっと嫉妬してるんですよ?知ってました?」
『え!?!?!?いつどこで?!?!?!?』
「貴方が何処の男かもわからない奴に犯されてるの見てから。
ヘレス様にすらさせたくなかったんですからね?」
僕だって仕える身、あんな下郎の相手など本当は自分が下したかった。
純白で綺麗な貴方が、あんな時間をもし過ごしたというならば。
この手でとっちめて、殺してやりたくなんてもなったというもの。
まぁその前にあの主があんなお怒りだったのでそれにゆだねたとうもの。
あそこ迄怒ったのは正直初めてに近い。もうTOPだろうというのだ。
「貴方が弟達に何なら妹達にも、
ちやほやされてその腕に手に身体に触れるのを
僕はずっと許してなかったのですから。」
『!?!?!?』
「口では言っても許すわけがないでしょう?
まぁ彼らも分かっているから
アレ以上近寄らないというもの。」
最近近いような近くないような感じはお前のせいか!!!!
「っくくくく、僕だってやっとの想いで君に会えたというのに。
独り占めくらいさせて欲しいというものなんですよ?エフェメラル。」
『…ずっと一緒なのに?』
「ええ、それでも。僕は欲張りさんなので。」
『っふふふふ、そっか!』
「ええ。機嫌が直った様で何よりです。」
『うん、嫉妬してくれてるってわかったから。』
「おやおや!…狡い人だ。」
『ええ、狡いでしょう?』
とってもとっても、まるで、悪魔の様に。
そう言って笑うメルに、ええとサワアも笑って軽くキスを落とす。
「そう言えば此処はなんです?」
『本当はサワアら天使らが人間になるところ。』
「さらっとえげつない所作るの止めて貰っていいですか???」
『精神世界見れる?』
「見れませんけど」
『じゃあ成功かな。人の出入りは基本してないのに。』
何で来たんだろう。そう言うメルに来れませんでしたよとサワアは答える。
『え?』
「アルトリア様が困っていました。メルが居ないのに気配はするって。
探してもなくて、本棚の奥の扉を見つけてこっちではと言ったんですがね。」
みえなかったんですよ。
「扉がみえる処か、僕が入れば消えたと騒ぐ始末で。
此処は貴方が作った精神的な世界に等しい場所。」
それはつまり、貴方が僕だけを許してくれているということで。
「それでは駄目ですか?僕だけのエフェメラル。」
『……じゃあ帰らないとね!』
「っと、ほんとにつれませんね〜〜???」
『つれなくていいの!まだ、まだ。貴方はそっちに居ていて欲しい。』
「…そうしたら一瞬しか居れないのを分かっていて?」
『うん』
まだいい。そう、まだ、線引きはしておきたい。
何時かその日が、一瞬じゃなければよかったと。
縋り付く未来の自分が愛おしくなるのだから。
狂っていると思う。
本当に、情けない。
「…まぁ良いでしょう。此方に暫くいるのですか?」
『一人になりたいときとかはって。』
「あっさり認めましたね。」
『見てわかるでしょうが。』
そりゃそうです。そう言いながらトンネルを歩く。
『待ってるね』
「え?」
『ずっとずっと。』
「…いつか。」
そう、二人はそうでなければいけない。
甘い蜜は一度や二度くらいでちょうどいい。
何度もすれば慣れてしまう。
そうして呆れて、その世界から離れた時。
きっと私は生きていけないから。
捨てられたトラウマは二度と消えないだろう。
そりゃあ一度だけでなく四度か五度くらいはされているのだ。
少なくとも0番目で二度、1番目で二度ずつはされている。
次なんて必ず来るのだ。
どうせ、許したって無駄だ。
だから嘘を付く。
痛みを知っていて。酷い嘘だ。
成長するために、傷をつける。
それが、失礼のないことだから。
そう言い聞かせて。今日も私は嘘を付く。
大丈夫だと。待っていると。
思ってもいない嘘を、分かっている彼に言うのだ。
++++++++++
「何が始まるかと思って来てみれば…」
「滅茶苦茶あえられてますね…」
主にお兄様の方が。
そう遠い目で見るコルンに、ウイスは苦笑いである。
現在ルトラールからの招集で天使にのみ発表するというのに
何事かと思って華樹の中庭へと足を運んで来てみればだ。
サワアがその衣服をルトラールと同じ衣装に変えていたのだ。
その周りには怖いもの見たさなのか、何人か弟は混じっているものの
妹達に和えられている。
「エフェメラル様は?」
「あちらで」
ちらりと見れば肩を落として、はははと冷たい目で空笑いするメルが見えた。
もう片足を立てて座り込んでいる彼女の衣装的にはよろしくない。
コルンが注意しに行こうと歩いている中、にしてもと声が上がる。
「髪色というか髪質かわりましたねえ?お手入れを?」
「ヴァドスさん。いえ、余りしていません。
何故か切っても切っても髪の毛まで伸びる始末でして。」
「せっかく長いのでこれを機に纏めてみては?」
「流石にそれはご遠慮下さい、彼女にも怒られてしまいます。」
「既に不貞腐れてそうですますが……」
「そう思うなら放れて下さい……!!!!」
どうして貴方達という子は…!!
そう軽く怒るサワアだが、内心そうではない。
妹達もソレを知っているから近づいているというもの。
「ご機嫌斜めそうですねえ?エフェメラル様」
『出来ればこっちにも来ないで欲しいんだけど〜〜ねぇ〜〜〜??』
「おや、そうです?笑っているので喜んでいるのかと思いましたが?」
『話すのは好きだけど、何処かの誰かさんが怒るから……!!!』
「っくくくくく、似たような話してましたよ?」
『えーやだ』
「ちょ、やだってなんです!?聞こえてますからね?!?!」
そう反応したサワアにメルは腹を抱えて笑う。
サワアの衣装はルトラールにかなり近い。
白い衣服に身を纏う彼の髪色は
確かにほんのりだが薄い紫色を染め上げている。
身体の色はまだ青いので、まだまだだろうが。
肩下まであった髪の毛が背中まで伸びている上に、
髪の毛も細く、ちょっと頑張ればいい感じに波を作れるだろう。
このままだと髪色は薄紫色に染まりあがるのだろう。
まだよーーくみないと紫…か、な?程度なのでほぼ白色だが。
「というか全く近づく素振りすらしませんねえ?」
「どうしたんでしょうか?」
「いつもだったらくっついてるですますが……」
「照れ隠しですよ。」
「ルトラール様!!」
『ちょととさま!?余計なこと言わないでってば!!!!』
「っくくく、いいじゃないか。だってそうだろう?」
サワア君がかっこよすぎて視界にすら入れるのも嫌な癖に。
そう言う彼に、メルの顔が真っ赤に染まりあがる。
金色の草花の中に入れるのも、今は落ち着いているからであって。
どきどきと心臓が急に飛び跳ねて苦しい。
すっと正装である白い布を被ってしゃがみ丸まってしまった。
いわないでぇと小さなか細い声が聞こえて、
それに堪らなくなったのかマルカリータが彼女に抱き着いた。
よく見なくても半泣きというか、顔を赤らめて…
「エフェメラル」
『あsdふぁsdふぁsどf!?!?!?!?』
「っくくくくく、そんなに好きですか?」
『わかるなら離れて視界にくんなばか!!!!』
メルが心の中を見られたくないのが分かる。
現在進行形でサワアの事を想像しては忘れてを
繰り返しつつ、好きなことの言葉がツラツラ出てくるのだ。
流石に見えているとこっちが恥ずかしくなるので
見えた途端ぱっと天使らもシャットアウトしている。
まぁそれを見ていて笑えるのは想い人であるサワア本人と
後は育ての親であるルトラールや、
大神官であるスピス辺りだろうが。
「つれませんねぇ?そんなに嫌です?」
『う゛や、じゃ、ないからあ……うう。』
「……拉致っても?」
「駄目ですよー。」
「……。」
「心の中で舌打ちしても駄目ですよー。」
舌打ちしたんか。いい度胸しとるな。
そう言ったメルに、お前もなと言いたい気持ちを抑える。
「ところでサワア、君華は?」
「まだ生える気配はありません。同じ場所に咲くんですよね?」
「嗚呼、胸元と腰に生えるはずだ。華樹神と似たようにね。」
指を鳴らしたルトラールが同じ様に花を咲かせる。
腰元に切れ目があるのはそう言う事なのだろう。
胸も割とはだけているのは華が綺麗に咲くように。
「どうして皆さん隠さないのですますの?」
「そうですね、確かに、急所を晒しだしている
といってもおかしくないのでは?」
「確かにそうですね。でも、ソレが違っていたら?」
「は?」
「エフェメラルは分かっていますよね?」
『当たり前でしょそれ造花だよ馬鹿なんじゃないの。』
「えっ!?!?はっ!?!?!?」
『誰がポピーとか可愛らしい華咲かせると思うの。馬鹿じゃない。
思いやりの心ひとっっかけらもねぇぞこいつ。』
悪い子ですねーそんなことないですよねー?
いだだだだだだっだだだぼくわるくだだだだだだd
そうばっと来てメルの頭をぐりぐりと痛めつけるルトラールに
全員温かく見守るしかない。
「では正解を言えます?」
『ったた……ええ?矢車草。華言葉は「繊細」「教育」「信頼」。』
「その通り。ご名答。」
よくできましたと言った彼が指を鳴らす。
するとどうだろうか、ポピーという花が枯れた
其処からはまた違う光を光らせて生えてきたではないか。
小さなとがった花弁が一点から放射線状に出たその青紫色の華に
誰かが綺麗とぼやいたことから話が続く。
『はぁ…見なくても大体誰がどんな花を咲かせるかもわかる。
それくらい出来て当然、でしょう?』
「その通り。彼にはまだ出来ていませんがね。」
『いやアレ無理でしょ。』
「っあれとはなんですか、あれとは!!」
『いやととさま、コルンさんで何年かけました?』
「そうですねぇ、端から端でしたら、数十年は。」
『私軽く三十年くらいかかったんだもん。偉いそれは。』
「貴方の覚えが悪いってことですからね?」
一応全宇宙ですので。
げ、私地球上しかないんだが。
阿保。
びえ。
「まあ、こんな感じに華をぽんぽんと変えることも可能です。」
「……手品ですかね?」
メルの胸元が黄色い華から白い華、赤い華と様々な種類の華が咲く。
それだけではない、腰も違う様に種類を変えて色も変えて咲かすのだから
手品と言っても全然おかしくはない。何なら種類が多すぎる。
天使らは軽く引いてみていた。
「本来の華を見せなければ幾ら引き千切られようとも、どうとないことです。」
「成程、まず咲かせて次に偽造華をと。」
「ええ。この子みたいに外に出しっぱなしはやめて頂きたい。」
『ええ、だって皆引き千切らないでしょ?』
「……こんな感じなので。」
「すいません。信頼されるのは嬉しいのですが。」
流石にやめましょうという周りにメルは非常に嫌な顔をする。
確かに可愛らしい華ではあるのだが、そう言われると困る。
「逆に何故他の華にしないのですか?貴方くらいであれば我々を騙す程度造作もないはず。」
「そうですね、確かに旅の途中でも花を変えることなど出来たハズですが。」
『……あ〜〜、して無意味だってことに気付いたからしなかったのが一点。』
確かに間違っていた。というのを植え付けるなら別にいいだろうが。
こっちの華が正確なのに、今更それに騙される天使らではないと思ったのだ。
後は、
『コルンさん達にその、華まで嘘つきたくなくて。』
願いは常に一つ。一直線であるのは知らせたかった。
そのことに、何人かが目を閉じた。見てられなくなったのだ。
主に恥ずかしすぎて。
「なんかすいません。」
『いえべつに……』
「加護天使も然り、一応華は咲かせることが可能です。
ただ少々扱いが難しいのと、一度華神として華を咲かせている為
願いの通りに華が咲けるかというとそうはいかないのです。」
「ほお、違うのですか。」
「気の扱いに似ています。球体で出すか、円盤で出すかの違い。
気の本質は同じですが、出す形が違うので
想像しても上手く出なかったりするんです。」
「そんな形なんですねぇ。」
『へーーーーしらなんだーーーーー』
「貴方には散々教えたハズなんですがねーーーー」
流石に幼児に其処まで求めてはいけない。
無理無理と鼻で笑って手を横に振るメルに
もうひと叱りを入れるルトラール。
最早恒例行事なのだろうか。
サワアに至っては軽く苦笑いで済ませている。
「では姿も元の姿に戻せるということですか?」
「慣れたら出来ますよ。私も元はこっちですし。」
『え゛みたことない!!!』
「そりゃ見せる機会ありませんでしたから。」
そう指を鳴らして出てきた男性はルトラールの面影が
ほんのり残ってはいるものの、身長が少し伸びている。
大体コルン程度だろうか、かなりの高身長ですらりとした体格にしては
その目は紫色で少し大きい目。前髪は左右に飛んでいるが、髪の短さは短髪。
肩なんてつくことを知らない程の短さである。
白い髪の毛をわしゃわしゃとかきむしって言う
彼の衣装は殆ど大神官と似たようなもの。
少々だぼっとしているのが気になるのは言わないでおこう。
『わ〜〜〜〜!!!本当に兄弟だったんだ!!!!』
「そりゃそうでしょう……何馬鹿なこと言ってるんですか貴方は。」
『いやだって肌の色違うし髪も目も違うから。』
「まぁ人間に一度ならねばなりませんからねぇ〜〜〜。」
「と、言う事は我々も後々髪色が変わると?」
「嗚呼いや、それはこの子に聞いてみないとわからないんです。」
というと?そう首を傾げたウイスにルトラールが説明する。
「この子が理としてシステムを弄ったらその分の役割が変わるんです。
その為髪色が変色するとかまでいってればですが…した?」
『してなくもなくもなくもない。』
「どうころがるか分からない、と。」
『しょゆこと。恐らく華神と同じ位置になるはず。
元は髪色が変わっていて、力を使えば変色。
最初は元の目、次には同じ金色の目になるはずなんだが。』
「あ〜わかりやすく言うと、エフェメラルの様に髪色は紺色
目は黄緑色だけど、力を一度使えば髪だけ白くなるが、
本気出せば目の色まで変わって黄金色に染まるってことね。」
おーそうそう。と拍手する彼女に、
今度は軽くタックルしてやる。
もう明らかに戯れである。
『うう、だから元の形自体はほぼ仕事も変わらないはず。
ただ言っとくけど天使に戻ることはもう今後ないから。』
「成程、其処を断ち切って来たのですか。」
『流石に卵ってなるとねぇ?』
「そうですね、其処は断ち切って頂けると有難いです。」
いえいえ。
『にしても父様』
「なんだい?」
『華樹神官って杖とかあるの?』
「嗚呼これか」
『それってさ、悪魔の名残り?』
「……ま、模倣だね。」
華樹神は天使の、華樹神官は悪魔の。
二人は一人ずつ牢獄に閉じ込められて
しまっている状態だというのだ。
やはりとメルの目が細まっていく。
『それ以上は?』
「ない。現に僕も杖がこれ以上変わった事はない。
ルメリアも草花の冠を作って終わっているからね。」
『あ〜選ばれていないからそれ以上は知らないと。』
「っエフェメラル様!!!」
「いいいい!!そういうこと。君らは特に選ばれた状態。」
「成程、何が起きてもおかしくないから、
今のうちに早いこと事を済ませておけという事ですね?」
「そういうことだ。という訳で皆、
すまんがこの子達が成長するためにも
何かあれば協力してやって欲しい。」
「もちろんですますわ」
「お力添えになれれば光栄です。」
「言われずともするつもりですから。」
「流石だねえ。血は争えないと?」
「おや、そうです?」
ちらりと互いを見る二人にメルはクスクスと笑った。
そういや本当に悪魔の感覚が一切掴めない。
痛みもないのは、アニュラスのおかげだという。
言うなら元はあるけど鎮静させて表に出ないだけ。
夜になったりすれば戻ってくる可能性があるから
気を付けて欲しいとは言われているが。
全く気にならないから困っている。
まぁ何もないからいいか。
うん、なにも、なにもないよ。
そう、なにも。
『何もないから出ないで欲しいなあ?』
「っ!!!??」
ギリギリと音を立てて、メルの背後から出てきた黒い影に
サワアらも気付いてばっと攻撃を入れようとするが。
「っな!?」
「触れれない!?!?」
『っと!!あ〜〜面倒だなあっ!!!』
ぱっと放した後、どいたどいたとメルが走り出す。
天使らはそのまま壁沿いの方に移動し始めた。
『ったく、満たされたら出るのか空になったら出るのかわっっかんねぇ!!!』
「っエフェメラル!!!」
「大丈夫ですよ、サワア君」
「ですが!!」
「聞いていませんか?メルがどうして耐えられたのかを。」
「……まさか」
「悪魔をずっとずっと、飼っているんですよ。」
あの陽だまりの頃から。
メルは走って黒い剣を作って影と合わせて戦う。
ぎっと睨んで走り出し、その剣の威力は引けを取らない。
寧ろ押していく一方だ。
『もっと、もっと、もっと、もっと!!!!』
遅い、そう言って軽く影に一つ刺したのだ。
ふらついた影に、メルは頭を掻いた後
ばあか。
そう言って後ろを振り返り軽くその飛び出した黒い影を切り裂いた。
背後から来ていることも想定していたのか。
次々と出てくる影に、メルはにやりと笑う。
「っは!!!」
『ーーーー、』
急に影がサワアに変わった瞬間だった。
メルの目が輝いた後、嬉しそうに愛おしそうにして手を伸ばす。
切られると思った瞬間、足でその腹を突き刺したのだ。
『ほぉら、気を抜けば、お前は死ぬんだよっ!!!』
そうだろう!!!!
そう言って腹を蹴り、
出てくる天使らの模倣が徐々に色を帯びていく。
裸足で走りっては飛んで切って斬って気ってきりまくる。
『本物と疑う様に』
「エフェメラル」
そう背後の声に、メルは微笑んだ。
全く同じなのだ。メルの目の前にはサワアが居るのに。
サワアらがみえる場所には、全く同じ声も形も同じものが居た。
『もっと』
「メル」
『もっと』
「エフェメラル」
『ちがう』
お前は偽物。そこは本物。
後ろからばっと横に刺したのだ。
何処をみて、笑っているというのだろうか。
黄緑色の目が、恐ろしく輝いている。
『何をしてもお前らは私はその感情は!!!!!
偽造された造られたものでしかない!!!!!!!!!』
刃物を作り出し、一人また一人ときっていく。
傷付けるのは簡単。そうメルは言いながら
破壊神や界王神らを作り出しては切り刻んでいく。
徐々に本物に近づいて。
『大事な者は本物か偽物かの判断。』
「っ」
『お前は本物。』
急に飛び込んだメルに、倒れたコルンが目を丸めてみていた。
後ろに来た自分の腹を貫いたのだから。
『んーもっと出来るはず。というか自分の模倣も此間ろくに出来なかった。』
指を鳴らせばメルと瓜二つが出来るが、
それもつかの間。首がぱんと吹っ飛ぶ。
前もだが、デモンストレーションをしていたあの頃を思い出す。
メルは、これを、何度もしているのだ。
同じ形がどんどんと切っては攻撃をしてくる。
下、上、横、斜め、何処からも似てはない攻撃パターンに
メルは飛んでしゃがんで受け止めてを繰り返す。
ダンと模倣に突き落とされ、息を吐くメルに、
模倣がすっと上に手を上げる。
「っ!!!」
「」
出ようとしたものに手を横に出したルトラール。
『ころせばいい』
「っ」
『自分しか殺せない?私は完成されたから?
貴方は不完全だから?だから死ぬの?殺す?
殺せばいいよ?楽になれるよ?おいでおいで?』
こっちへくればいい。
そうして、お前は愚か者になれる。
『お前は選ばれない。』
逆転してメルが今度は馬乗りになる。
子供の胸にトントンと手を叩いて言うのだ。
『愛される訳がない。』
許すな、許すな、許してはいけない。
この世の誰よりも、残酷に。慈悲などないと。
『だってお前は捨てられたろ?』
私が皆を望んでも触れれても。
お前は一度、捨てられたろ?
『お前は要らない子、わぁるい、悪魔の子だ。』
そう言っても、子供は手を止めて動かない。
はぁと酷く冷たい息を吐く。じろりと睨むその眼。
冷めたような、冷たい目。
自分に向けるものではない。敵に向けるものだ。
『そんな嫌か。完成を傷つけたくないか。愚かだな。』
ならと言ってメルはその刃を両手で持った。
『誰もが殺せないなら私が殺す』
「っメル!!!!!」
流石にとサワアが飛び出す。
ゆっくりと胸に血がにじむ。
その光景に何人かも動き出した。
だんと突き飛ばしたサワアがメルの身体を取る。
何をしているんだと叫ぶ彼にいつものというのだ。
「は????」
『いつもしてる。まえもしてた。』
「なにいって、これ、自傷行為とかわら、あ」
ただただ嬉しそうに笑うメル。
その目はとても嬉しそうで、泣きそうな顔で。
傷付けなくていいのに。
傷付かないと、生きれない。
まだ成長出来るからと。言い聞かせて。
見捨てられることを恐れている。
手を伸ばしても、届かないその世界。
切り取られた廻廊に落とされた子供。
もう、二度と、帰れない、天使。
何処に、返れるというのだろう。
何処に、帰るというのだ。
『それにいたくないよ?』
「は?いやでも」
『ころせ』
「っ」
自分の分身が嫌そうに泣いている首を横に振って。
でもその手は刃はさくりと胸に刺さる。
痛そうにでも、笑って、無理矢理、笑って居る。
そうだと、メルは言うのだ。
『感情は産まれる、種が芽吹く様に。
だからある一定になるとこうして殺して、其処で慣らしてるの。』
貴方達が敵に回ったその日に、私が生きれる様に。
一人で一人を抱えられるように。
私は何度だって傷付くことを、恐れないのだ。
自分から、耐えられるように、という意味ではだが。