枯れぬくさびら





前回のあらすじ

白い箱の場所が出現して、華樹神が現れるかもしれない。


ということで。

「そのようなお話を皆さん聞かれたことは?」
「…此方では聞いたこともありませんね。」

余りの壮大な話に、大神官様に連絡し、それは少々問題だということで
すぐに全員を華樹神の場所であるこの草木の上にと集めさせたところである。

「エフェメラルさん、貴方達以外の向こう側では?」
『一応Cから数十。Bも立て続けに出ていると報告を聞いています。
どっちが先かとかもわかりませんが、こっちで起きていない訳もないでしょう。』
「各自探させると言っても、どうやって聞いたのでしょうか?」
『二つの世界とも、たまたま神々が犠牲になったらしいですよ。
それゆえことが発覚したので、調べていますがもっと増える可能性だってある。』

これまた厄介なことになったものだ。
神々に影響があるとは。

「一応皆さん事例がないということですし、
もし万が一そのような事態に陥れば
すぐに報告を頂ければ幸いです。」
「わかりました。」
『大神官様、後でお話が。』
「わかりました。では皆さん元の宇宙へお戻ししますよ。」

そう言って綺麗に消え去った者達に、
この地に居るのはメルと大神官だけになる。

「それで?何の話でしょう。」
『単刀直入に言います。私多分このままだと消滅するかもしれないのです。』
「…薄々気付いてはいましたが、それで?私に何をさせて?」
『この関係で貴方が管轄していたところで良いです。
似たような事件が無かったのか資料を調べて頂きたい。』

私はこの地から今自分で動くことは出来ませんから。
嗚呼そういうことでしたら構いませんよ。調べておきましょう。

「その程度でいいのですか?もう少し動かすことも可能でしょうに。」
『下手に動かして空いた隙に叩かれたらたまったものではありませんから。』
「それもそうですね。それにしてもよく勢いに乗り切りましたね?」
『え?』
「コルンさんとサワアさんですよ。貴方が選んだあの子達。頼みましたよ?」

そう言われて少し時間を置いて、
ぽぽぽぽと顔が赤くなるメルに
クスクスと笑って答える大神官。

あっこの人知ってる!!!!!

『すぴすさん!??!?!!?』
「っふふふ、すいません。すいませんから叩かないで下さい。」
『叩くことを言ってるんですよ?!?!?』
「では、私はこれで。」
『すいません、その節はお願いします。』

そう叩くのを止めたメルに対して、大神官もまた仕事に戻る。
ふぅと息を吐いた後、あれ私一人では?と思ったメルもまた驚いた。


+++++++++++

『とりあえず白い部屋ってあれだよな。』

これのことだよな。

そうどでかく見えたその世界。

そう此処はメルが前に飛んでいた白い世界だ。
最近一切来ていなかったが、
此処はもう来ても来なくても問題ない。

そもそも中央の位置であるあの白い世界から
大分距離を取った場所に置いている。

元々中央のあの会合を執り行っていた
ユートピアに繋げるものでもあったのだ。

何もないかと思って一応、いちおう、
本当に一応念のために確認しに来たというもの。

全く何もないのを確認し、家の中に戻って来た。

全く、花冠も華を咲き誇らせる前というのに、
こういう類に入れば華が咲き切ってしまうではないか。
流石に理になるには速過ぎるのだ。幾ら何でもね。

でも内容が違うのだ。

本来華樹神になる流れとしたら、華樹に選ばれ果実を喰って
それに従い知識を得たうえで廻廊に飛ばされ、12の時間を過ごし
そして戻って来たものが仮の華樹神に昇格する。

その廻廊に居る間、白い世界で一人だけでそのパズルを取るだけの話。
ただ例外として、サワアの様に身近な人物で、尚且つその記憶を知った者のみ
白い世界の中に入れることが出来るが、後に理や華樹神の中に組み込まれる為
安易に入れることは基本的にしない方がいいと言われている。

まぁそりゃそうだろうな。私だってあの時はビビった。

あと肉体と魂を切り離しているのは例外らしく、
本来魂も肉体も全部一致した状態で動くらしい。
それで耐えきれたら合格なんだが、
本来満たされた状態ですら難しい処を
この私という奴は削れた状態でも何とか生き残ったという

超絶稀の奇跡的な存在らしくてだな。

まぁルトラール様が産んだお子であった
自分の力がほぼほぼそのままとなれば話が別らしい。

そうなったら知識も力も全てがそろった
と言っても過言ではない程、極まっていた。

なので欠けた所でそんじゃそこらの
人間やらに負けるわけがないそうです。

いやだとしてもだ、凄いことになってしまった。

『変な話、これ私超強すぎるのでは?』

そりゃあ金の首輪付けて制御とかさせるわな。
だって創造も破壊も出来て、割と時も戻せる。

魂と肉体も移動出来る上に、
前世を越えた時間軸の記憶も持っているんだよ。


そりゃあ制御するよ。


何起こすか分からないパンドラの箱から
足がぶち出てきて走って追いかけてるような
ものじゃないのだろうか。

いや普通に怖いなそれ。
走る音速のパンドラとか想像したくもないんだが。

とにかく誰と誰が巻き込まれるかにもよるだろう
幸いなことにこっちの神々はなんだかんだ言って結構仲良しだと思う。
互いを何となくでも知っているし、付き合いも長いだろう。

全く知らない会ったこともない神様と二人っきりとかはないだろうが…
嗚呼でも気まずい雰囲気になるだろうな。内容が内容なら。

嫌な予感しかしないから、正直な話巻き込まれたくはない。

ブーブーとスマホのブザー音が鳴りだしたのでタップしてはいはいと声を変えた。

『ん?嗚呼今一人。え、なんで。いや特に異常ないし、大丈夫でしょ。それよりそっちは大丈夫なの?』

相手はサワアである。仕事部屋に入ってスマホをスマホ置きに置いてからパソコンを立ち上げた。
こういうのは文章にまとめて資料として残しておいた方が良いと思ったからだ。

ちょこちょこ見ながら音声を外に出すようにロックを解除する。

「こっちは問題ありません。界王神ら達にも話を聞いていますが、変な話も全くないので。
コルンさんが居ないならば猶更先に帰りますよ。」
『だからいいってば!ヘレスに代わって。』
「っですが」
「なんじゃ?わらわに用事か?」
『や〜〜ん可愛い〜〜〜へれす〜〜〜』

そう軽く相手をするメルに、嬉しそうにヘレスが手を振り返してくれる。
仕事の件で色々聞きたくてと言うメルに、ヘレスもまた表情を変える。

「何じゃ急に、お主が珍しいこともいうものじゃのう?」
『今仕事落ち着いてる?正直忙しいんじゃないの?』
「…はぁ、正直言うと割と忙しいから
もう少し相手してほしいかのお?」
「っヘレス様!!」
『ほらぁ〜〜〜。まぁ此間の件で怖いのは私もだけどさ、
こっちだって対策してるんだから大丈夫だって。』
「対策?なにをしとるんじゃ。」
『ええ?それ言ったら意味ないでしょうが。
貴方方とは言え度ダミーだったら私が嫌なんだわ。絶対いわん。』

此間の事もある。こうなったら徹底的にするべきだろう。
メルは考えていた。何を持って知識というのだろうか。
彼等の生命体ではないと察知したら攻撃出来る様に防犯対策を完備している。

安心して欲しい。一応漫画やらで見た者達はセーフティーにしている。
まぁ其処を抜けられると私の落ち度になるから問題ではあるのだが。

寧ろそれを掻い潜って来たから困っているのだが、
それはそれだ。うんうん。それはそれ。

『猶更帰ってきちゃ駄目でしょうが〜〜良いからお仕事してて?』
「ですが……」
『心配だとしても、ね?お仕事はしっかり、でしょ?』
「…ほんと、貴方には頭が上がりませんね。
ヘレス様お手伝いして頂けますか?」
「嗚呼勿論。急ぎで終わらせよう。この借りは今度な?」
「わかりました。覚えておきましょう。それでは。」

あいよと言って切られた通信によしとメルは言い切る。
空間の名前も付けて置いた方が無難だろう。
私が良く言っているのは額縁だが、向こうはドア。

なら扉ということで、トベラが思いつくが
彼もその場に居たが、どうやら彼が作ったのとは違うらしい。
そもそも作った意味が違う。

華樹神らが危険になった時に移動出来る様につくったもので
今でいう処の廻廊への道がその一つであるのだ。
逃げ道の扉として、効力を成すのは
あくまでも華樹神か華樹神官のどちらか二人。

華樹神官に置いては華樹神の願い華を
喰らってじゃないと効力を発揮できないとか。

なので、必然的に華樹神のみが使えるというもので。
その白い扉は派生を作ったにしても出来ても理が出来る範囲。
よって、本当に謎の白い箱に入った場所ということ。

たった一つの扉とお題が書かれた白い空間の様な白い箱の中。
たった二人きりで、そうやって組んで一体何をするのだろうか。

相手の意志が全く分からない。

これが下界の何かだったらよかったのだが、
力の掛け方といい、華が咲くという話と言い、
どう考えても華樹神や理の管轄に
堂々入り込んでいる気しかしないのだ。

これが似たようなものだった〜とかだったら
大きなため息を吐いて良かったと安堵を告げているのだが。
そういかないからもやもやしているというもの。


『は〜〜〜マジで困る。』

ピコンと音が鳴るのに、タップをする。
一応スマホの中に天使らとグループで通話出来る機能を搭載している。
言わば現世であるゲーム通話機能みたいなものだ。

作業をしながら彼らの話にログインする。


『あーい、メルちゃんでーす。おつかれさまでーす。』
「きましたか。お疲れ様ですエフェメラル様。」
「エフェメラル様、です??」
『ごめん今作業中。丁度人数集まってるからついでに聞きに来ただけ。皆やってる?』
「ええ、今捜索していますが、こちら第10は無しです。」
「こちら第4ですがありません。」
「こちら第6もありませんわ。」
『あ〜やっぱそうか。第9いる?モヒイト様???』
「はい、おりますよ。ですが少々問題が。」

やはり出たかとぼやいたメルに、やはり?と声が上がる。

「予想しておられたのですか?」
『第7、第8、第9、あと第2と、第11は多分ほぼ確定で出る。
他はランダムに選出する可能性が高いかなと踏んでたけど。それで?』
「対象者は界王神と破壊神様です。
現在飛んですぐに戻られてきた処で、
大神官様にもご報告をしてまいりました。」

成程、ある程度探した者達が此処に集っているところか。
まぁ神々とは言っても界王神に声を掛けたら瞬時に移動出来るだろうし
其処ら辺は時間かけなくても声を掛ける程度だから
精々あっても三時間くらいあれば情報収集は可能ということか。

「第2は?」
『先程連絡が入ったので良い。今の所無い、が。』
「出る可能性があると。」
『なので野放しにして放置してる。
あっ言っとくけど第8も帰ってくんなよ???』
「急に入ってきて何を言うんですか。」

そう呆れる声にメルはだってと椅子に座って答える。

『コルン様仕事片付けてるって言っても暫く面倒見てくれてたでしょう?』
「まぁそれはそうですけど。言われずともそちらに行く必要はないでしょう?」
『いやまぁそうだね。』
「待って下さい。ちょっ、ちょっとお待ちなさい。貴方今一人ですか???」
「っ!??!?」
「メル様?!?!」
『いやいいです、いいですから皆さんちょっと私に手を割き過ぎ!!!パパにちくるよ!?!?』
「それどちらの方ですか!!あとそのような言葉を使わないでとあれ程私言いましたよね?!?!?」
「はいはい喧嘩しない。」
「『してないです!!!』」

妙に被る二人に、周りが笑って少し和んだ後咳払いしたコルンが続ける。

「それで、これが全員ですか?」
「第1と第12は既に報告して別世界の管轄に席を動かしていますので。」
「わかりました。第2は?」
『先程了承済み。もう皆揃った?』

ええという声に、ヘッドホンへと切り替える。
ネットを使う予定は一切ないが、ネットをしている感じの形を作って、
その中に資料を書き込んで言っている。

一応誰にも見られない様にという意味でロックはかけまくっている。
所謂ただのメモ帳みたいなものだ。
資料を見やすくするようにブログの様な形式ではなく
プロットタイプ、要はメモ帳の様に切り貼りできるようにも改変している。

勿論チャットは全てローマ字記入の日本語です。
いやぁ此処は譲れないという者です。バレたらまずいけど。

『はい、じゃあ執り行っていい?大丈夫?』
「構いませんよ。」
『はーい。じゃあ始めます。まず順番に第3から。』
「此方は異常ありません。」
『第4』
「此方も」
『第5』
「異常、というより引っ掛かるものは見つけました。」
『っまじか!!』

そう打っていたタイピング音が消える。
それは自分がそのスマホの方に食いついたからだ。

「ええ、下界の方に偶々交流していた者達がおりまして。
その者達と界王神様で奇妙な夢を見たという話を聞きしています。」
『あ〜了解。』

恐らくそれは派生か、また違う何かだろう。
後者だとあればいいねと話を切り、次と声を掛ける。

「第6は似たようなことがありましたよ。白い箱の様な場所ですよね?」
『うんそう。』
「先程私とシャンパ様で行きましたところでしょうか?」
『ああ?!?!?いったああ!??!?!』

待って待って待って待ってと頭を抱えた後、息を整える。
落ち着け、本当に落ち着け。まだ内容を聞いていない。

『待って、この場で言える内容かどうか聞く。言える?言えない?』
「言える範囲ですよ。そんな際どいことが起こる場所なのですか?」
『可能性が拭えないからこっちが滅茶苦茶困ってるんです。それで?』
「私達が見たのは”二人で腕組みをしろ”というものでした。
そうお題の通りに従えば、すぐにドアが開きました。」
「破壊等はしなかったのですか?」
「攻撃して戻れない方がまずいと思いまして。
大神官様達に連絡を入れようとしましたが、通信出来ませんでした。」
『ほぉ!!!出来ない!!!ほう!??!?!』

メル様?とテンションの高いメルにコルンが低い声で反応する。
嗚呼ごめん、マジでごめん。

『いや、通信出来ないってもう下界の人間がやれる範囲違うかもしれない。』
「どういうことです?」
『ねぇ、時間とか何時だった?どれくらいで帰って来た?』
「そうですねえ、余り考えていませんでしたが、一瞬だったと思いますよ?」
『あ〜〜〜それが事実ならこっち確定だな。よし、ヴァドスさん後でこっち来て。会わせたい人いるから。』
「わかりました。報告書はお書きになった方が宜しいでしょうか?」
『うん。私も軽く書いてるけど、簡易でも良いからこのまま書いてきて欲しい。』
「わかりました。では後程。」

そう切って消える彼女に、サア次とメルは答える。

『はい第7』
「お姉様と同じ様な事が此方でも起こりました。ですが、頻繁に、下界の者達もという点が気になります。」
『…下界?』
「どなたが巻き込まれて?」
「悟空さんやパンさん、といえば、貴方はお判りになるでしょうか?」

ガタンと席を立つ音が鳴る。
目の色は分からないが、口元だけで表情は確認できた。



怒っている。


メルは怒っているのだ。


『…内容は。』
「そうですねえ、端的に申し上げますと、
全員手を繋いだり会話をしたり、時間制限制のものです。」
『全員呼べる?』
「構いませんよ。これからお伺いいたしましょう。」
『お願い。第8』
「…一応私とリキール様が。この通話に入る前に起きましたので、其方にお伺いします。」
『分かった。第9も来てね。』
「わかりました。準備いたします。」
『第10』
「我々も同じようなことが起きています。」
『第11も???』
「そうですますわね、お伺いしますですますよ。」
『いやもういる奴ら全員やんかぁ〜〜〜〜〜〜』

まじかぁと言うメルに、クスクスとマルカリータが笑う。

「場所は華樹のあった場所で構いませんですます?」
『いいよ。一応トッポとかそこら辺も探ってから来てね。怪しいから。』
「わかりましたですます。では後程。」

そう言われてすぐにメルは資料を作る様に取り掛かる。
カチャカチャと音を立てて、その各宇宙の資料を軽く取りまとめている中、ブザーが鳴り響く。
カチカチと右上の縮小ボタンを押し、そのままビデオカメラをダブルクリックして立ち上げる。

するとこの場所の位置だけでなく、華樹神が移動出来る全てがみえる様になっていた。

『きたか。』

ヘッドホンを変え、マイクを差し込み、ビデオカメラの見えている場所をクリックして声を上げる。

『”あーあー聞こえる?聞こえてるね。ヴァドスさん”』

はい、なんでしょうと此方を見てくるのが非常に怖いのだが、まぁいいか。うん。なんでこっちがん見出来るの???

『”…そのまま別の宇宙来るまで待機してもらえる?全員来たら声かけて。”』

わかりましたとお辞儀をする彼女に、シャンパがちらほらと別の方を見る。
どうやらこのカメラを視認出来るのは彼女のみらしい。

いやこっっっんわ。

これ一応自分の力でもあるのだが、監視カメラは透明化というか、そもそも人が認知した時にのみ設置して起動するようにしている。

加えて声も違う方から出している為、こっちのカメラ目線で話すとか絶対に在り得ないはずなのに。

カメラをクリックして、音を消してぼやく。

『いやこっわ、こーーーーんわ。ヴァドス怖いわ。あの子やっぱり異常だな。』

流石ウイスの姉である位置にあるというもの。
あの人多分キレるヤツ。敵に回したくはない。

徐々に増えていく周りに、嗚呼大分いい感じに集まったなと思いつつ、メルは資料を印刷し、そのままバインダーとノートを持って席を外すことにした。

パソコンは消して、一応ね。

衣装を着替える。白い衣服にしていたが、今回は違う。


「…おや、きまし、た、か」
「メル様?その衣服は??」
『ごめん、切り替える為にね。』

流石に下界の人間が此処まで多く居ると手を変えた方が良いだろう。
ちらりと見た者達にごめんなさいとメルは声を変えてぶんと頭を分下げた。

『私の名前はメルって言うんですけど、実はつい此間神様に昇格したばかりでして、
ちょっと手違いで貴方方にも影響を及ぼしてしまったことが先程判明しまして。
本日はその入った処の内容等を教えて頂きたくてお呼びしました。』

お忙しい中まことに、いやほんとうに、いやもうマジでごめん。

そう苦しそうに目を閉じてぐっと食いしばる様に言うメルに、天使らはぽかんと聞いていた。
いやそれもそのはず、メルのその対応はまさしく普通の市民がよくする仕事の感覚なのだ。

彼女らにこの対応を一度たりとも見せた覚えは正直ない!!!!!


「あ〜そういうことだったら仕方がねぇのか?」
「仕方があるわけないだろう!!」
『皆さんにはお詫びとして、お話して頂いた方には私から詫びをさせて頂ければ。』
「わび?何をくれるんだ?」
『そうですね、其方の教えて頂いた記憶が必要無ければ此方に預けさせて頂ければ。』
「っ!!!」
「…違うな。此処に居る全員分全ての記憶を取る。」

流石にバレるか。まぁそれは奥の手というものだが。
そうニコリと笑って居るメルがそんなことはと胸に手を当てる。
今の服装は軽く正装、まぁ言わば界王神のコスプレに近かったが。

「あの世界は一体なんなんだ。」
『それをすり合わせる為にも皆さんをお呼びしました。
一人一人お話を聞きたいので、
とりあえず第5から此方に来ていただけますか?クカテル様。』
「わかりました。」

行きましょうと言われてきてくれる彼等に、ではとメルが指を鳴らす。
其処には食事が用意されており、おおという声にぺこりとメルはお辞儀をして後にする。


「あのようなこと、何時の間に出来る様になられて?」
『出来るわけないじゃないですか。』
「っですが」
『出来るとは、何時でもどこでも可能なこと。
あれはただの実験ですので、少々見た目が歪で
不味いのも入っているでしょう。』

まぁそこら辺もすぐにバレそうですが。
そう言う彼女が移動する場所は、自室の隣にある場所。
コンコンとノックをした後、ふむと言って扉をばっと開ける。

『…よし、良い調子だな。』
「此処は?」
『これくらいの広さで構いませんか?』

其処は全体的に淡いクリーム色、白色で、左に何かガラスで囲んだ場所。
ソレを左に進み、コンコンと更にノックを入れ、ドアを開けた。

『どうぞ』
「はあ…」

全体的に縦長の場所。二つ程軽い仕切りがあるが、
それでも形程度で綺麗な仕切りとはいかない。
奥の方が繋がっているのだろうか?

此処は所謂、あれか。


「診療所みたいなものですか?」
『いかにも。よくしってるね?』
「前にウイスさんからお伺いを。」

嗚呼私の世界の知識か。そりゃあ言うかもしれないなあ。
それくらいだったら言うだろう。面白そうにみていたし。

医師が座る場所にメルは座り、パソコンを立ち上げる。
ごめんちょっと待ってねと言って席を外す前に声を掛けた。

『ごめんクカテル様』
「なんでしょう?」
『次の宇宙を呼びに行って来てくれない?
此処に来させずに、待合所えっと』
「わかりました。入ったすぐの場所で座らせておけばいいのですね?」
『そうそう。お願いします。』
「畏まりました。お呼び出来次第此方に戻ります。少々お待ちを。」

そう言われて界王神らが席に座らせたままに放置される間。
メルは少し席を外し、其処ら辺からノートやら資料を作り出して保管する。
こういうのは先に作って纏めていたほうがやりやすいのだ。

ノートを持ってきて、シャーペンを作り出し、
そのまま頭をノックして軽く第5と日本語で書き切る。
こういうのは敢えて相手が知らない言語のほうが良い。

全て此処の資料は日本語で統一した方が楽だなと考えたメルは
パソコンを立ち上げ、三画面を作り出して共有を開始する。

「…すごい、このようなことが出来るならば、
界王神どころかもっと上の位置におられても
構わないはずですが…貴方、一体何者なのですか。」
『いやいや、私神様ですから。界王神様とか恐れ多くてですね。
今上だと大神官様に言われまして。』
「だっ!?!?!だだだだだだ、大神官様に!?!?」
『ええ、失敗するのもいいですが、
反省して責任を持って全うしてくださいって。
お叱りも貰ってるので。』

ごめん。大神官様。あながち嘘ではないから許して。
割とこっちの責任管轄の問題になりかけているのだ。
言わせているということにしておいて欲しい。後で謝ろう。

メルはそう思いつつ、では初めても?と声を掛ける。
コンコンとノックが入ってきたのは説明をしてくれている途中だった。

入って右側に座っていたメルはちらりと見た後すぐにパソコンに向かい合う。


『うんうん、そっかあ、そうですよねえ〜〜それは困りましたね。』
「そうなんです。いやもうどうしていいかわからず、とりあえずやってみようとなりまして。」
『幾つかお聞きしても?』
「構いません。」
「(…もう仲良くなられている。)」

何時もであれば少し警戒をしたりと天使らと話をする時などは距離を取っていた。
なのにこうして入って来てみれば別人も別人なのだ。この人は一体誰だと言いたいくらいだ。

無邪気に高い声で駄々をこねたりしている者はいなく、
少し低い声になったりもするが、基本的にほんわかしたような
まるでカウンセラーをしている人の様に丁寧に話を聞いている。

一体何時起きたか、そしてどのくらいの時間があったか。
ドアとかそういう形や、気温、形状。それら全てを事細かに聞いていく。
それも、責め立てる方に向けず、ひたすら共感するように言うのだ。

「色を当てると言ってもそんな簡単なことと思ってしていたんですが、それが上手くいかなくて。」
『瞬時にどれ程で当てれるかも書かれていなかったんですか?』
「そうなんです。ただ”二人で同じ色を叫べ”くらいしか書かれていなくて。」
『あらあら〜〜〜それはそれは、困りましたね???』

すいません、変な所に飛ばしちゃってしまいまして。
そう笑いながら困って頭を下げるメルに、いえいえと二人は首を横に振る。
神様とてミスは起こすが、これ程まで影響があるとは思っていなかった。

そう思わせるように、メルはそういう素振りをし続ける。
その姿はまさに、ただそこら辺の、ミスをした神様にしか、みえなくて。

「(……とんでもない化けの皮を見た気がしますね。)」
「クカテル様?どうかなされて?」
「ああいえ、なんでもありません。
メル様それではこの辺でよろしいでしょうか?」
『ええ、もう充分です。嗚呼お二人とも此方を。』
「これは?」
『詫びです。自分の好きな味に変えられて舐めれるので。』

割と長く持つので食後ちょっとしてから食べた方がいいかもしれません。
そう言う彼女に分かりましたと一つ黄色い紙で纏めた飴を
手に握った彼等が席を立ち礼儀正しく頭を下げる。

『ではクカテル様。同じ様に天使らを移動するように
皆に説明をしてきてもらってからお帰り下さい。
此方の資料は纏めてから会議に提出させて頂きますので、
その時はご参加宜しくお願い致します。』
「わかりました。余り無茶をしないで下さいね?」
『勿論。何かあればお声掛けちゃうかもしれませんが、
とんぼ返りにさせないように気を付けています。』
「ええ、そのつもりで。それでは。」

パタリとドアを閉めたメルに対して、
ふぅとクカテルは息を吐いた後彼らの跡を追う様に歩く。

「第6の皆さん。奥のドアに出向いてもらえますか?」
「わかりました。」