水のドレス






シャンパ様達の話を聞いて、ある程度話を纏め上げた処。
コンコンとノックが入ってはーいと声を上げる。

「失礼します。メル様お呼びしました。」
『はーい、ごめんちょっっっと下がっててね。席広くする。』

よいしょっと、そう言ってシャッターを下げる様に上に上げていた腕を
下に一気に下げてから左右のドアを抉じ開ける様に
両手で横にかくと、範囲が今までのよりも数倍広くなったではないか。

その広さにおおと声が漏れる間、
メルは指をちょんちょんと空中に置いてから指を鳴らす。
するとその場所に椅子がポンと現れたではないか。

『最後にウイス様達にします。
どの組がどの組か分からないので、
色別に椅子をご用意しました。
お掛けになって頂けますか?』
「皆さん動いてもらえますか?」

そう言ったウイスに分かったと悟空をはじめとし、各々が席についた。
目が細くなるメルに、声がかかる。いえなんでもと答えた。

『…では、改めて。皆さん一度目を閉じて貰えますか?』
「お、おう。わかった。」
『ビルス様、ウイス様も。』
「わかりました。ビルス様。」
「ああ。」
『皆さん今から話す言葉に対してイエスなら首を縦。
ノーなら首を横に振って下さい。
此方で話しにくい内容はこの後お聞きします。』

流石に一人一人に絞るのは少々多すぎるのだ。
こういうのはある程度先に聞いてから絞った方が良い。

『皆さん全員白い箱の中にいましたか?』

そう言えば全員が首を縦にふる。
それは白いドアが付いて、その上に看板がありましたか?
そう言うと彼らは同じ様に行動をした。

どうやらそこら辺は全く同じらしい。

『ではこの場で話しにくい方は首を横に振って下さい。』

そう言うと何人かが振ったのを見てメルの目色が変わる。
やはりここらへんで発生するか。ちょっと怖いが。

『わかりました。では悟空さんらからお話お伺い致します。
後の方達は外に出たすぐ隣にソファーがありますので
其方で腰掛けてお待ちして頂ければ幸いです。』

そうぺこりとお辞儀をした後、各々が捌ける中ウイスを呼ぶ。

『ウイスさんは此方に残ってもらえますか?
全員分を貴方は聞いて貰いますので。』
「かしこまりました。」
『では悟空さん、ベジータさん。お話を。』
「そのまえに、もうちょっと気さくに話せねぇのか?」
「っ悟空おまえ!!」
『…なら、こんなかんじがいい?』

そうメルは顔を隠した後、悟空と会った時くらいのテンションに戻す。
ケラケラと笑ってそうそうと悟空が笑って言う。

「やっぱメルはそれくらいがいいぞ!」
『えへへ〜〜〜ありがとう!!悟空に褒められるとなんだか嬉しいなあ〜〜!』
「そうか?でも褒められると嬉しいのはオラもわかっぞ!!」
『うんうん、それで、白い場所で君らどんなお題になってたの?』
「それは、その…」
『ん〜じゃあ質問を変えるね?白い部屋ってさ、なんかこう変なものが出てこなかった?』
「というと?」
『例えば、お題がチャーハンを作って下さいとか出されるじゃない?
でも白い箱の白い部屋の中に一体どうやって作れと?調理材料から色々は?
ってなって、想像してたら目の前に出てきた!とか。』

他の宇宙でもそのような現象が?とウイスが聞くと
メルはきっぱりソレはお答えできませんと言い切った。
この話は悟空らにも酷であることになりかねない。

『それで?お題の内容に沿ったものは出てきた?』
「出てきた」
『じゃあ次ね。二人はその時の記憶って覚えてる?』
「さっき起きたばっかだしなぁ。」
『それってその前に何してた?二人ともウイスさんと組手?』
「オラは地球に帰ってたぞ。」
「俺もだ。」
「彼等は一度地球に返しています。
まぁ修行は追々面倒を見ようと思っていたところですから。」
『はーわかりました。』

つづけますねーと声色を変えずにメルはパソコンをつつく音を止めない。

「にしてもなにしてんだ?」
「貴方方の情報をあの機械に打ち込んでおられるのですよ。」
「はえーーーとんでもねぇな!メモっちゅーことしねぇのか?」
「その強力版と言った処でしょう。
余り余計な話は慎んで頂けます?メル様のお仕事の邪魔になりますから。」
『あ〜いいよいいよ、ウイスさん。そのまま放置していて。』
「ですが」
『寧ろそうしてもらった方が後からポンポン気になることも出てくるだろうし。ね?』

そうちらりと見たメルに、仕方がありませんとウイスはため息を吐いて答える。
椅子にちょこんと座ったまま、杖を軽く持っているウイスさんにメルはニコリと笑った。

「本当に貴方達は運が宜しいことですよ。」
「そうなんか?」
「ええ。このようなメル様は私でも見たことありません。」
『あーなんならサワアも多分知らないよ?だってこれ仕事中の私に近いからね。』

あーでも前に何度か見せたかもしれない。
付き合い長いから何処かでやってるかも。
いずれにせよ余り見れないものではあるだろう。

こうやってきちっとして対応なんて中々しない。
仕事をしている時以外は特にだ。

『ご不便をおかけしておりますのでね。』
「アレはお前が作った世界なのか?」
「これ、ベジータさん。」
『構いませんよ普通に言わせておいて。
そうですねぇ〜〜似たような感じですかね?』
「どういうことだ?」
『私が、というよりかは、
私が持ってる管轄に近い状態が起きているから、
その原因が知りたい。ってところです。』
「…成程、だから全宇宙で
自分の管轄に当てはまる奴らを集めたのか。」
『そういうことです。お判りになられましたか?』
「嗚呼。」

ならよかった。そう微笑んだ後、メルは話を続ける。
悟空らは手を繋いだり、料理を作ったりをさせられていた。
お題が一つではなく二つになっているのが妙に気になる。

次と言うメルがそれなんだと悟空が言うので思い出す。


『ああごめん、それ一人一個持ってって。』
「食べるとどうなる。」
『いや普通の飴。舐めて帰ってもらったら
暇つぶしになるかなって。詫びです詫び。』
「これが詫びか。随分と小さくなったもんだな。
あの料理のほうがよっぽど詫びている様に見えたが。」
『すいません。その程度しか渡せないもので。』

でも食べて下さいね。約束ですよ。
そう言うメルに、少しした後
良いだろうとベジータがにやりと笑う。

意外と驚く悟空に、けつを足で叩きながら部屋を後にする。
続けてパンちゃん達。今度は家族三人だ。
お題は二つ。一緒に寝たり、手遊びで遊んだりしていたらしい。

いやのほほんとしていて可愛らしい。もうずっとしていていいよ。

「たのしかったー!またいきたい!!」
「こら、パン!駄目でしょう?すいません。」
『いえいえ、ねぇパンちゃん、
お姉ちゃん幾つか聞きたいことあるんだけど、きけるかなあ?』
「いいよ!!なんでもきいて!!」

そうむふーと鼻息を荒くして答えるパンに、
ビーデルと悟飯が困り果てるのに、
メルは首を横に振って構わないと答える。

じゃあとパソコンから身体を放し、
パンの方を向いて話を聞く体勢に入った。

『パンちゃんその時ってどんな気持ちだった?』
「どんな?」
『こう、例えばそうだなぁ。
あ〜あ、パパとママと一緒に遊びたいなあ、
とか思った次の瞬間に入ったとか。』
「あ〜〜〜確かにそうだったかも?」
『それって何時ぐらいの時になっちゃったかな?』
「確かおうち出る前だった気がする。」
「昨日の朝頃ですね。パンがぐずっちゃって
保育園に行けなくて。こっちも途方に暮れてたんです。」
『同じ様に思ったりしました?例えばこう、
お願い事叶えてやれるなら叶えたいって。』
「ええ。」

そう言う彼女らにそうですかとメルはニコリと微笑み返す。
ウイスはその表情を悟空いや、入った時からずっと見続けていた。

余りにも綺麗で、完璧に、人に対して表情を変える。
それは流れる水の様に、器に変わっても変えない。
形は器に対して変わっていくだけであって、水は変わらない。

メルの対応は至って素の様に感じ取れるからこそ、恐ろしかったのだ。

これはこうかな?こういうのはあったかなあ?どうかなぁ?

そう子供に対して向ける視線に、パンも次第に心を開いて色々話していく。
本当に話術というよりかはその気にさせる誘導が上手いのだろう。
加えて女性というのもあり、相手によっては自分からあえて下がって言うのだ。

自分が悪かった。ごめんなさい。だからお話してほしい。
そう、とんでもない罠があることを、彼らに気付かせずに。
ゆるりとその甘い罠に入っているとも気付かせずに。


「…本当に末恐ろしいお人ですよね、貴方って人は。」
『そうです?そうならコルン様達呼んできてください。』
「わかりました。」

ウイスとビルスの話を聞いた後、
メルはニコリと微笑んでぺこりとお辞儀をした。
ソレをちらりと後ろを向くように見ていたウイスは
そのまま軽くお辞儀をしてではと答え前を歩く。


+++++++++++


「流石に休憩なさっては?顔に出ていますよ?」
『そうだねぇ。ごめん皆に告げて来てくれない?』
「わかりました。」

そうリキールと二人きりになったメルに、
リキールがおいと声を掛けてきた。

『ん?どうしました?フェルに会いたくて心臓死にそうです?
お薬処方できないんですよねー恋の病って。』
「ばっ違う!!!…お前、その表情どうしたんだ。いつもとは点で違うだろ。」

服装もという彼に嗚呼可愛い?と医者の様な
白衣を上に来たメルにいやそれはそれだがと答える。

「なんでこんな形で聞いている。
お前なら心の中を読んで記憶を消すことなど造作もないだろうに。」
『あんな力に頼って事実と思う方が馬鹿らしいよ。ふざけてる。』
「は?いやだが、それが事実だろうに。」
『記憶は主に本人が記憶している映像や状態が保管されているもの。
それが口に出したりして変化することだってあるし、間違えて覚えていて
口に出して変わったら元も子もない。』

ヒントになることを無視するなど言語道断。
私は口で目でみたものしか判断しないのだ。
よってそんなしょうもない力にだけ判断するなんてしたくもないのだ。

だから天使らの様な似た力は一切使っていない。
神を愚弄しているとか思っても構わない。
まぁ事実そうだしな。

『私は私のやり方で聞いてる。
それに、割とああやって食事を共にしていると案外口開くもんだよ?』
「あ?そういうものじゃないだろうに。」
『リキール様あ〜〜〜。人間ってもっと
もーーーっと頭使わずに考えてたりするんですよぉ???』

馬鹿だなあ〜〜〜と笑って言う彼女にイラっと来るリキール。
それにそこら辺になさいとコルンが声を掛けた。

「彼に言わせても、もう出てこないというのに。
リキール様もリキール様です、
この方の術にハマろうとは修行が足りない証拠ですよ。」
「は?いや、どうかんがえても何もしてなかった、だろ?」
『だ、そうですよ?私もしていませんよ〜〜!』

そう、なにも。

『なぁん、にも。ね?』
「……っ。」
『あ、飴ちゃんどうぞ〜〜〜』
「おい、喧嘩売ってるだろ。」
『売ってない売ってない〜〜買わないだけだけ。』

っそれをんぐ。

口を開けた所に更に腕を突っ込んで入れたメルに、
リキールだけでなくコルンもぎょっと驚いた。
一応口の中にいれたつもりだが、
唾液がくっついてしまったので手を洗いに奥に走る。

なにするんだという彼に、
食わなさそうだから食わせただけとメルは答えたのだ。

『飲み込むよりも舐めて帰ってね?』

噛み砕くよりも、舐めて帰ってね?

そう言うメルの目に、少ししてから分かったと言って席を立った。


がちゃりと音を立てて消えた者達を見て、ちらりと用紙を見てため息を吐いた。

+++++++++++


無事全員分の診察が終わった後、メルはガンと勢いよく机に頭を置いてそのまま
腕を机の前に降ろした状態で暫く維持するのに、メル様?と声がかかる。

『あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
づがれだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
「っふふ、お疲れ様ですますわ。」
『流石にいっききつかったわ。馬鹿じゃないの私。
ほらマルカリータも帰った帰った。』
「つれないですますわねぇ?今日はお泊りしてもいいですますよ?」
『破壊神さんに悪いから。』
「いや俺はどっちかっていうと
お嬢さんに振られた後のこいつが面倒なんだが……。」

そう破壊神と天使に挟まれながら言うメルに対して、
破壊神であるベルベッドが冷や汗を流しながらメルに答えを返す。
診察は無事終了し、荷物をまとめたメルはそのまま
彼女らと一緒に部屋から出る様に移動していた時だった。

『そうです?でもお仕事あるでしょう?』
「あ〜〜まぁあるはあるが……だな。」
『んん?』
「嗚呼名案ですますわ!ベルベッド様も今日は此方でお泊りになられては!?」
「なんだと!?!?!」
『待って?!?!?!』

そう二人が驚くのに、嫌ですか?
としょげだす彼女に嫌そうではないと答えるのはメルだ。


『正直立て続けに問題が起きていて
頭が割れそうなので出来れば帰ってもらえると
私の精神が落ち着くので
帰って欲しいっていうのが事実でありまして、
別にベルベッド様達が嫌いなわけではなくて
寧ろ仲良くなってみたいというか
私もそのピエロどうなってるのか
終始問い詰めたい次第でして。』

「分かった分かったからお前は休め…」

絶対言わなくてもいいところまで口に出てる。
そう背中を軽く押す彼に、うううとメルは声を上げつつドアを開いた。
このまま風呂に直行して今日は手前の方で寝ることにしよう。

ではと二人が消えるのをみて、メルも風呂に移動した。





『…にしても、全員に共通しているのは私が知っている範囲ってところか。』

正直勝ち負けで最後の一人残れば華樹神にという形なのかと思ったが、
それなら次の白い部屋に閉じ込められるというもの。
ただこれで幾つか分かったことがある。

『願った者と、願いを叶えたい者が合わさった時に部屋へと導かれるのか。』

だとしたら、天使らと余り関わるのは避けたいべきこと。
そういうのもあって、正直サワアやコルンは
特に仕事しとけと強く言って帰って来るなと言い聞かせている。

まぁ其処に気付かない彼等でもないだろう。
こっちの事も考えて、甘えて貰っていればいい。

風呂に浸かって、はぁ〜と声を上げる。
そういえばこうやって一人になるなんて久しぶりな気がする。
なんなら皆待ってと焦った声を上げていたなあ。

私一人になったって、別に生きていけるんだけど。


『…皆優しすぎるんだよねえ。』

コルン様も割と堂々一位にいるよ。
アレ優しすぎ。飴と鞭が良い塩梅なんです。
余りこっち側に来て欲しくないというのもあったんだけどなあ。

『破壊神には天使が居てやらないとねえ。』

それが一番なのだ。それが、私にとって普通。
あの空白の、みすぼらしい時間が、叫んで言うのだ。
これ以上彼らに近づくなと。言われている。

これは話していない話なのだが、実は白いローブの者達でも、
コルンとサワアに模していた者達はいつの間にか形を変えていた。

『…あいつらマジでわからねぇな。』

核が無かったのだ。本当にぽっかり空いていて。
だから余計に怖かったのだ。模倣でも核は少なくとも作る。
なのに何故動いて、何故こっちを見ていたのか。

殺さねばならないという意味は、何処にいくのかと言うのは。
きっと奴らの一番言いたかったことだろう。
サワアらが安心しているのに流されてはいたが、もっと裏がある。

裏が、あっていれば、良いのだろうか。

『あ〜〜駄目だ駄目だ。もう考えるな。』

考え過ぎるのは良くない。メルは風呂から上がり、そのまま手前の部屋に横になった。
奥に行く気力も残っていないのだ。資料を横に置いて、目を閉じてしまった。






















































「そこで何をしているんですか?」

その言葉に、すやすやと寝ている
メルの身体に触れようとしたものがぴたりと止める。

気になって様子を見に来れば、
本当に気を抜かせないことに巻き込まれるものだ。

それ程彼女の位置は、非常に魅力的なのであろう。

「その方に触れるというなら、容赦は致しませんが。」
「……愚かな者達が。この均衡を戻すこともしなくなるか。」
「…。」
「やはり華は愛でない方が良い。その地だけに生きるしかない。」
「貴方、何者ですか。いや、会ったことがありますよね?」

ずっとずっと、ずっと昔に。

そう言うサワアに、黙る彼いや、彼女か。
身長が全く分からない。間にあるその白いローブに身を包んだ者が、ぼそりとぼやく。

「……何度廻っても、変えたくないなら、こっちも手を打つよ。」
「っきえ、ましたか。」
「お兄様」

小走りで走って来たコルンに、未遂です
と答えたサワアは寝ているメルを優しく抱き起し
向こうの家に連れていくことに。

眠りが深いのか全く起きる気配がない。

「貴方は何をしたのですか。」
「…っ、」
「あの者に、貴方を殺させようと約束でも交わしたのですか?」

僕は、何を忘れて居るのです?

そう暗闇に消える言葉に、コルンは何も言えず、暫くその場に立ち尽くしていた。