がらくた




まぁ、だからと言ってだね。


『どうしてこうもフラグって立つんですかねぇ!!!!
本当に困った子だよ全くもう!!!!』

「此処で前回のあらすじを。
真っ白な世界が周りに起きていないか協議していたら
大神官様すらも餌食になってしまい、メルが彼に力を与え過ぎたせいか
自分の中にいた魔を呼び覚ましてしまいました。」

『そしてサワアとマルカリータにお手伝いしてもらいつつ、
自分の中で作っていた呪文を書き換えして、無事完了!
ってなったらその白い部屋に飛ばされました!!!』


どうしてだよ!!!!!此畜生目が!!!!!


そう白い部屋の床をダンダンと叩きつけるメルに対して
まぁまぁとサワアがなだめる。

「それにしても飛ばされちゃいましたねぇ。」
『そうですね!!!ほんとにほんとにごめんなさい!!!!』
「いえいえ」

ニコリと微笑む彼、サワアは第二宇宙の天使ガイドを務めている者。
後に華樹神官へとお仕事一緒にする人でもある人だ、が。

「一応天使ではある、には、ありそうですね?」
『私は?ねぇなんか変化ある?ある?ある?』
「…冠はどうされました?」
『え?あっほんとだ。』

そう言われてメルは頭を触る。
そう言えば確かに頭が妙に軽いと思ってたが…

「…華樹神の状態に戻っているのか何かわかりませんね?」
『そうだねぇ』

メルの服装は華樹神のものであれど、
理に選ばれたはずの冠は愚か、腰元の華はない。
胸元の華ですら、咲き切っていないのだ。

『いやはやこっちが力を失うパターンは予想外でした。』
「確かに。エフェメラル、扉を破壊しても?」
『構わないよ。』

そう言ったメルにサワアが気を作り出して飛ばそうとした瞬間だった。
綺麗に気が消え、扉の方に行く前から消えて無くなってしまった。

「っと、攻撃は全て無効化されていますね。」
『ですよね、ソレ、出してから、かき消されていません?』
「ええ、仰る通り、力を出した瞬間消滅していますね。」

まるで、無かったことにされているみたいに。

「それで、お題なのですが…エフェメラルはあの文字、読めますか?」
『う〜〜〜〜〜ん!!!そうですね!!!!!
お読みになれるから困っているんです!!!』

そう、まだ簡単だから良いのだが…
お題は1つではない、3つと言うのが困っている。
彼等の情報を元にすれば、これは二人の絆か
何かが強ければ強い程お題が増えると言うものだろう。

寧ろ皆どうやって日本語を読めたのだろうか?
其処が非常に気になるところなのだが、
声の主が日本語読めなかったら口頭とかしたのか?

嗚呼そこら辺一切聞いてなかった。
もう分かる前提読める前提だったのだ。



この場所には精神と時の部屋の様な入り口はなく、とにかく広く白い空間が広がっている。
強いて違うとすれば、目の前にドアが生成されていて、その上にお題がかかれていること。
ドアの隣には、看板が浮遊しており、分かる文字に生成されて説明書きがなされている。

上のお題は、日本語オンリーというのが、妙に魔女と言うかなんというか。



其処にはこう書かれていた。



ようこそ、○○しないと出られない部屋へ!
此処は願いが叶わないと出られません。

部屋にいる間は外の時間が進みません。
飲食物など必要最低限は冷蔵庫を開ければ
出てくる仕組みになっています。

それでは以下のお題を3つ叶えて下さい。



そう、その内容が、だ。


「…メル?どうしました?」
『…とりあえず、サワアさん。』
「はいはい、なんでしょう。急に改まって。」
『お兄さん一応聞きますけど、お付き合いしてる方は?』
「他にとかしておりませんよ。貴方以外するつもりもない。」

なんなら天使なので元々する必要性がないですから。
嗚呼まぁそうだよねぇ。
まあする必要性がないのは分かっていた。


『今更ながらだけどさ、ほら、破壊神とかいるじゃないですか。』
「ヘレス様ですか?えっ、ちょ、まっ、待って下さい。
…ひょっとして私がヘレス様を
お慕いしておられるとでも言うんですか?」
『したことないの???』
「あ〜〜〜〜、そう、ですねぇ…
どう説明したらわかってくれるんでしょうか。」



ううんとこめかみに手を置いて困るサワアに、
メルは少し困ったようにちらりと彼を下から見る。



「…確かに今此処でぶっちゃけますと、
誘われたり、などは何度かしましたよ?」
『わ、やっぱり。』
「気付いておられたのですか?」
『じゃないとあんなに私貴方を突き放さないわ。』
「…まさか貴方、ヘレス様が私を好いておられると?」


無くはないと思ってだ。そう、無くはね。
人間なら猶更、そういう迷いなど出てくるもの。
それがそのまま発展していたら、私は本当にお邪魔虫なのだ。


「はぁ…良いでしょう。
この際二人きりですし、はっきり言っておきます。
メル。確かに貴方が仰る通り、彼女。
ヘレス様は、私を好いておられた時期がありましたし、
それが余りにも可哀想だったので、
ほんの一時期だけ触れたこともあります。」

その時に人間の情などを知ったというものだと言う彼に、
うんとメルは話を聞いていた。

こっちを見てと言われてそっぽを向いていたが、
ちらりと向いた目が、少し寂しそうだった。

「ですが、貴方に勝るものは無かった。」
『っ』
「確かに彼女はとても愛らしい方でしょう。
貴方が自信を持って仰るのも頷けます。
嗚呼見えて面倒見が良いですし、
しっかりとした意思を持っていますからね。
…まぁ男癖が悪いのが難点で、少々心配な処ではありますが。」

料理も花嫁修業だとか言ってしていましたし。
私もするんですけどね、偶に振る舞ってくれたりするんですよ。
そう言う彼に、へぇと声が出てしまう。
いや、普通にずっとさせてるとかも思ってたりしてたのだ。

「長い長い時間共にしているので、多少の気の迷いは生じます。
それを何とか回避するのに手こずりましてね。」
『こう私が言うのもなんだけどさ、
私の事を想ってくれてたんだったら
私の話はしてくれなかったの?』
「仮にそう言ったとして、恋をされた人間が、
果たして同じ空間で長い時間共に過ごせると思います?」

うう、それは、出来ないな……。うん、私は無理だ。

「失恋させることは愚か、
変に期待を持たせるなんて言語道断です。
なので時が過ぎるのをひたすら待っていたら、
彼女からすぐに引いてくれました。」
『え』
「恐らく直感でしょうね。まぁ貴方に会った時、
ヘレス様がお前かとぼそり呟いた時は
流石にドキッとしてしまいましたが。」

11番目のあの時だろう。
ヘレスと共に会えたと言う時は。

確かにサワアったら
凄い挙動不審だったような気がしなくもない。


「まぁだとしても、あくまでもアレは仕事上の関係です。
貴方でもウイスさんやモヒイトさん達に恋愛感情を抱くなんてことはないでしょう?」

まぁ廻廊の者達と感情が繋がっていて、
とかでしたら話は別ですが。

そう言う彼に、全く同じことを思っていた。

『その通りです。廻廊の時間帯だと何人かは凄い気になったりしてました。
まぁリキール様とかが良い例かなぁ〜〜〜。フェルの愛情がえげつなくてね。』
「それと同じことですよ。多少の迷いがあったとしても、本質はなんら変わりません。」

うう、凄くわかりやすい。

「全く、此処まで言わないと貴方は信じてくれやしないのですか?」
『だ、だって…サワアとヘレスってとっても仲良しだから……。』
「まぁ長い付き合いですからね。
お互いの事を嫌でも理解してしまうというものです。」
『…泣いてたりしてたの?』
「流石にしていませんし、
アレはアンダルシア様達が悪いんですよ。」

一番面倒極まりない人にバレてしまって
本当に面倒だと困って天を仰ぐ彼に、メルは苦笑いを零した。

「して、メル?話を逸らすということは余り宜しくないお題なのですね?」
『うぐ』
「此処を一刻も早く出なければ貴方の状態がどう転がるかわかりません。
我々は今すぐに情報を共有し、直ぐに行動を移さねばならないことを
貴方でも、これくらいの危機感は流石にお持ちであり、ご存知ですよね?」
『そ、そう、ですけれ、どもぉ……』

うっと今度はサワアの方が引く。
半泣きの彼女に問い詰めることなど出来ないのだ。
何だかんだ言って、惚れた女である。

強く言い過ぎたかと言って、咳ばらいをして話を変える様に声を変えた。


「…では、貴方の出来る範囲からお伝えしていただいても?」
『一応、この中では…お互いが作った料理を間食することですかね。』
「………ちょっと待って下さい。そんなことですか?」
『いやそんなこととは言いますが、お兄さん。待って。
出来れば赤とか緑、茶色を基調とした食事を頼みます。』
「それは別に構いませんが…」

貴方が普段食べているものですよね?
ええそうです。

「似たような食材を使ってしまえばいいのでは?お題はなんですか。」
『…た、互いの知っている知識で一番美味しいものを
作ってお互いにあーんしてって、いう、やつでして、ね。』
「……分かりました。では第2宇宙ので構いませんね。」

そう赤面しながら目を閉じて徐々に小さくなるメルの言葉に
サワアも何となくそのことに察してそれ以上は突っ込まない様にした。
確かに文字を見て聞けばまだわかるが、言わせるのは酷だろう。

三つある時点で恐らくあと二つは言いにくいのが察せられる。
まぁそんなことを考えている暇があれば今すぐにでも今のお題を達成させるべきだ。

「さて、調理器具でしたら、と。」
『おおおお、でるねぇ。いつも使ってるもの?』
「ええ。本当に思い描くと出てくるものですねえ。」

そう言えばサワアの宇宙の方には遊びに行ったことが無いな?
漫画とかでは神殿みたいな滅茶苦茶エモい場所だった気がするが。

華樹神になってしまえばその土地をウロチョロすることも出来ないだろう。

「どうしました?」
『え?ああいや…サワアの所、
遊びに行ってもはしゃげないなぁって思っちゃって。』
「…別に手くらいぶんぶん振り回しても構いませんよ。」

今度遊びに来ますか?
いいの!?!?!

「ええ、大神官様や他の方達にも相談してですが。
ヘレス様は少なくとも大喜びしてもらえると思いますよ?」

勿論千年後の話しですが。
まぁそうですよね。

「それにしても出さないのですか?」
『いや、何処の時代の何処を対象としていいのやら…』
「……では私が選択しても?」
『嗚呼別に構わないけど、何か食べたいものでもあるの?』
「貴方が前に寂しい時に食べているものが
あるとか何とかお話していた気がするんですが。」

げっと嫌そうな顔をするメルに、
そんなに嫌ですかとサワアが聞く。

『…とてもじゃないけど、食べれるもんじゃないよ?
それでも本当に良いならいいけど。』
「でしたら私が偶に食べる夜食をおつくりしますよ。」
『え?!!食べるの?!?!?!』
「ウイスさん程ではありませんが、あんまりにも長い時間生きるので
人間らが食べる姿を見て好奇心で食べたりもしますよ。
あと単純に破壊神様らにお作りするので、その分味見とかもね。」

嗚呼そりゃあまぁそうか。

「その程度の範囲で良ければですが。
私も人に特に貴方にあんな夜食を振る舞いたくはありませんし。
お互い様ということでどうでしょうか?」
『それでいこう。』
「ですがエフェメラル、そのお題的には
貴方の思い描く調理は向いていないのでは?」
『ん〜〜私は一応好きなんだよ?好きで美味しいから食べるんだし。』
「ならいいですか。」

まるで生放送番組かのように、
二つに分かれたキッチンに互いに配置へつく。
サワアが指を鳴らして食材を出して調理を開始した中、
メルもまた指を鳴らして昔作っていた食材を取り出した。

やはり、記憶に残る分はある程度変換可能なのか。

と、言う事は、だ。

『あ〜〜〜えっっっぐ。量えっっっぐ。』

調理器具を出した隣に冷蔵庫を思い浮かべてから
その扉を開いて声が低く出た。
いやもう、元々ない空間だったのだがな。

冷蔵庫を思い浮かべると、キッチンの隣に出現し
更にその中身を見てみると
具材が沢山入っているのが見える見える。

まぁ〜〜〜〜見えるのだ。


『いやこんな作らん。いらんわ。馬鹿。』

ぱぁんと扉を閉めた後、
そっと赤い容器だけを取り出して机に叩きつける。
これと声が聞こえてそっちを向いた。

「何遊んでいるんですか。ちゃんと作ってきてくださいよ?」
『わかってます〜〜〜。でも食べて文句言わないでよ?』
「それはこっちのセリフです。あと火傷しないで下さいよ?」
『しないしない。しても大丈夫でしょ。』
「いえ、そもそもしない様にと言ってるんですよ。」

貴方意味分かってないでしょう。

ため息を吐いて言うサワアは、現在水を使って軽く何かを水切りしていた。
腕をまくっている処をちゃんと見るのは初めてかもしれない。
ちらりとこっちを見てなんですか?と声を掛けられてそっぽを向いた。

なんでもないと言った後、気になってちらりと見たら。

『〜〜〜っ、な、なに!!なんか文句あるの!?!?』
「っくくく、いいえ?なぁんにも?」

頬の熱が非常に暑くて仕方がない。
首をぶんぶんと横に振ってから、メルは作業に取り掛かることにした。

鍋を作り、其処に水を入れてからそのまま火を付けて放置する。
その間にタイマーを作り、セットを三分に設定するだけする。

『(えっと、確か沸騰した後に塩か?入れても入れなくても良いが。)』

そういや暫くぶりだな。全く作ってなかったけど、案外覚えているものだ。
今回は自分一人ではないから、半分こで三人前にしておこう。
本当は二人前が一人前の分なのだが、少ない方が割と良いだろう。

パスタにくっついているシールを剥がし、
皿や次に使うであろうケチャップを転がしてから蓋を開ける。

やはり銀紙ついてるのね。

ぺらりと外した後、蓋を取りつけてから前を向いて指を鳴らす。

ぱちんとした音に続いてその場に綺麗な茶色のテーブルが
二人で向かい合う様に椅子を置いて設置された。

まぁ椅子は横に置いてしてもいいが、
想像したのがこっちだから仕方がない。
席なんて後で幾らでも変えられるだろう。

グツグツと鳴り出した鍋に加えてざるを作り出す。
パスタを綺麗に入れ、箸を作り出してから軽くかき混ぜ
そのままタイマーをセットする。

ピッと鳴った音に合わせ、皿やら何やらがちゃんとあることを確認。
本当にやること無くなったな、と思いながら鍋の中を見ていた。

「何時ぶりになるんですか?ソレを作るのは。」
『…どうだろうね、サワアは?』
「そうですねぇ、本当に最近作っていませんでしたし。
軽く千年ぶりくらいになるんじゃないでしょうか?」
『え!??!そんなに!?!?!』
「ええ。そんなに。貴方は?」
『んんん、廻廊の一番目だからなぁ。
君と別れた最初に作って食べたものだし。』
「では数億年以上前ということになりますかね?」

まぁ時系列的にはそうなるだろうな。
正直そんな気分ではなかったのだが、
意外とそうなれば、私歳いっているんだな。

まぁ天使らと人間の年齢やらを比べたら
意味がないというかもう、成さないというかだが。

『…久しぶり過ぎてちょっと胸が痛くなっちゃうかもね。』
「そんな思い入れのあるものを振る舞ってくれるのですか?嬉しいですねえ?」
『私も嬉しいよ?サワアが前から食べてた食べ物一緒に食べれるんだもの。』
「……ほんと、言い返されちゃいましたね。」
『へへ!!照れた?ねぇねぇ照れた?』

そう言っているとぴぴと音が鳴ってすぐに消す。
其処からの動きがまぁ早い早い。

鍋をぱっと掴んで左にザルへとパスタを墜とすように水を切る。
熱いので先に水をかけて、持ち手だけ冷やしてから水切り。
水を軽く切った後、直ぐに鍋にサラダ油を敷いて火をかけ直す。

その間に更に水を切った後、パチパチと言い始めた所にドンと勢いを付けていれた。

「偉く豪快にいれますねえ?」
『あれ、終わったの?』
「ええ。夜食って言っても
本当に切って盛り付けるものですから。」
『もう少しまってねぇ〜。すぐできるから。』
「手伝いましょうか?」
『盛り付ける時にお願いしようかな。』

分かりましたと言って隣に立ってくれる。
それに少し笑みが零れてしまって、ふふっと笑ってしまった。

「どうしました?何かおかしいことでも?」
『え〜〜?い〜〜や?こうやって普通に立って
食事作るのって凄く久しぶりに感じちゃってね。』
「…確かに余りしませんね。今度しますか?」
『うん。お願いできる?』
「よろこんで。それにしてもそんなに入れて良いんですか?」

ケチャップの事を指さして言うサワアに、うんとメルは答える。

『一度大量に入れてから、かき混ぜて、そしてまた追加で入れる。』
「味見は???」
『しない。』
「メル様?????」
『いいからいいから。…よし、これでいいや。』

色も同じ、匂いも同じ。その感じに、
何時しかの時間が呼び起こされそうになる。
首を絞めたって、もう。止めれないというのに。

癖なんだなぁ。

「盛り付けて向こうに持って行きましょうか。」
『うん。』

皿を持ったサワアに、メルは鍋を軽く水にさらしてから後を追いかけた。

「後処理までしてから食事するんですね。」
『本当は沸騰させた方が取れるんだけどね。
これ服に付いたら中々のかないんだよ。』
「おやおや、またとんでもないものを食べてたんですね?」
『席くっつけてもいい?』
「構いませんよ?寂しいので?」
『ん〜〜ほんの少し。』

おやおや、素直ですね?と笑うサワアにんとメルは答えて席に着く。
この隣に座る感じ、前の感じ。指を鳴らして似たように椅子を作り置いた。

嗚呼、覚えてる。案外刻み過ぎて困ってるんだこれ。

『頂きます。』
「頂きます。」

そう手を合わせて言う二人が口にしたもの。

『ん!!おいふうい!!』
「普通に美味しいですね。これは何て言う料理なのですか?」
『具なしスパゲッティ』
「…メルさん?貴方前にコレ栄養素が無いって代表格で言ってませんでしたっけ?」
『えへへ〜〜〜。』
「というか、貴方コレ幾つで作ってたんです?」
『だからサワアくらいのあの身長くらいで。』
「……ご両親は。」
『お父さんは仕事で帰らないし、お母さんは適当に作ってって言ってたから。』

刃物は怖いし、でも鍋しか扱えないからって。
そう言うメルに、そうでしたかと少し手が止まる。

『にしてもコレ美味しいね??どんぶり?名前なんて言うの?』
「名前はありませんが、グーデラと呼ばれる赤い木の実を細かく切り落とし、少し溶かしてから
ロラスに入れて混ぜ合わせたものです。」

緑色のロラスと呼ばれた白米みたいな粒の中央には
赤い木の実が細かく切られて軽いどんぶりに盛られている。
要は卵かけごはん的なアレだろうか?

「グーデラってこっち?」
「ええ。」
『ん〜〜〜なんだこえ、んん??』

酸味があるのか?食べても食べてもなんか納得がいかない。
始めての食べ物の感じで、例えが見つからない。

噛めば噛むほど甘酸っぱい感触と、赤い方が少し甘いのだろうか?
コリコリとした触感がまた少し辛みを帯びてきて食欲がそそるそそる。

えっこれ夜食に食べてたの。マジか。絶対くそうまい。

「そんな急いで食べずとも、おかわりは幾らでも作れますから。」
『んん〜〜〜!!!んん!!!!』
「っふふ、はいはい。それは良かった。」

どうやらメルの食事でもお気に入り登録として追加されたらしい。
足をぶんぶんと振って、美味しさを表現しているのを見て笑ってしまった。

「時々ヘレス様がお急ぎの時に朝食で作っていたりもしたんですよ。」
『っへーーー朝からこんな辛いのいけるんだ。』
「其処迄辛くしていませんが、辛いですか?」
『ちょっとだけ?でも朝からってスパイシーだなと。』
「嗚呼、まぁ彼女あんな顔して結構辛口ですからね。」

なんかさっきから棘がみえる気がするが、気のせいだろうか?
其処迄突き放さなくてもいいとは思うんだが。

「朝食を流石に抜かれるのは不味い時にお作りしたりするんですよ。
まぁと言っても貴方達でいうおにぎりという形にですが。」
『ああ、昔おにぎり作ってたね。えっまさか。』
「そのまさか、ですよ。おかげ様で好評ですよ?私の料理。」
『アレ本当にいいよね!!もう持ち運びできるし量も自在だからね。』
「ええ。本当にその節はありがとうございました。」

おかげさまで非常に助かっています。
そう言う彼に、いえいえとメルはお辞儀をする。

『でもヘレスの気持ちわかるなぁ〜〜』
「と、いいますと?」
『朝凄い忙しくて、でも食べたいけど時間なくって
余裕とか全くないから食べないとかもあるある。』
「彼女の場合ダイエットとかもしていますからねぇ。」
『え゛あんなに痩せてるのに?!!?』
「私も言っているんですがね、時々されますので止めてるんですが。」

流石にソレは不味いよ。とメルも話す。
確かに引き締まった体つきをしていたが、
ダイエットまでする必要性はないだろう。

大きな胸がしぼんだら私泣くぞ。

「あの、さらっと私より酷いこと考えていません?」
『いいや?それにしてもこれいいね。時短と言うかなんというか。
軽く炒めてさっと上に盛って出来るんでしょ?
しかも美味いし持ち運び可能ときたもんだ。』

流石に大量に朝食べると腹を壊すが、
これ、多分卵かけご飯に似ている感じがする。

もしそうなら、焼いてたべるのも美味しいし、
鍋の〆に入れるというのもきっと美味いだろう。

「ええ、今度おつくりしますよ。」
『おねがいしまーす。』
「はいはい。…と」


そうサワアと話をしながらも、食事を楽しみ、綺麗に完食をする。
するとドアの方からカチリという音がしたのを
二人して聞いて互いの目を見て言う。

「…聞こえました?」
『うん。聞こえた。』
「後二回同じ音が鳴ればこの部屋から出れそうですね?」
『そうだね。』


食器を洗う必要もなさそうです。
そう言ったサワアに、メルも頷く。
食事を取り終え、鍵が開いた音と同時に、
食べていた食器や調理器具が消え失せたのだ。



「さて、あと二個ですが…メル様」
『ひえ』
「…別に私は貴方とあれば構いません。」
『いやですねでもですね、いやまだこれは
マシ、いやうんマシか????うん???』
「次は何です?」
『…お、お互いにですね。』
「はい」

メルはもじもじと右へ左へと視線を逸らす。

『お、お互いに、お願いを聞く、というものです。』
「…では、話が早いですね。メル様。」
『はい?』
「三つ目のお題は何でしょうか?」

お願いですから、教えて貰えませんか?
そうニコリと微笑むサワアに
メルは酷い!!!と半泣きで首を横に振った。

「酷いも何もありません。
何もそんな襲うような話ではないのでしょう?」
『う』
「…まさか、そうなのですか?」
『い、一応そ、その…は、はぐをですね。』
「はぐ?とは」
『おっと????』

あれ、貴方知らなかったっけ?
なんです?食べ物ですか?それとも何かの動き?
あのハグを知らない。
知りませんね。


あの愛を貫く場所でハグが浸透していないのも
まぁハグ自体愛の表現ではあるものの、
それは地域で違うものでもあるし。


そう言う彼に、おかしいなと思いながらも
こうやってとメルが両手を広げて閉じる。


『ハグとは、愛情表現の一種です。
こう、抱きしめるやつです。』
「ああ、抱擁のことですか。」
『それですね。はい。』

そういうか。そういってしまうか。
そっちの方が恥ずかしいんだが。私は。


「…え、それだけですか?」
『いや5分という短いようで長い時間をですよ?
いやいやいやお兄さん待って下さいよ。
こういう状況で私に触れるなんて嫌で』
「いいえ?貴方が良ければ私は普通に触りますが。」
『えっ?』
「えっ?」

え?え?え?え?

「何をいまさら恥ずかしがってるのですか。」

そう席を立ったメルにあわせてサワアも立つ。
それと同時に椅子やら食卓が消えて無くなる。
空白のまっしろな箱の中に閉じ込められる。

ぶわりと汗が出てきて後ろに下がる。

「…ほぉ?なるほど?ひょっとして恥ずかしいのですか?愛らしいですねぇ?」
『っ!?!?!』
「たった五分ほどではないですか。
それに抱きしめるなんて幾らでもしているでしょう?」
『あっばっやっあ!!あれは暗かったからで!!』

まぁ確かに薄暗かったりが多かったなと言う彼に
こういう真昼間みたいな明るい所で改めてだなんて私ちょっと、もう、無理。

顔を赤らめて困り切って眉を下げて固まるメルに
少し考えた後サワアが一つと提案する。

「では私はこのまま動かないので、
エフェメラル、貴方から僕に抱き着いて来てみては?」
『え』
「何時でも構いませんよ?ほら。」

そう言ってそのまま腕を後ろに持って行って立ち尽くす彼に、
メルはいやどうしようと固まって動かなくなる。


「どちらにせよこの空間から出ても一瞬で戻れるはず。
もし仮に長い時間此方に居たとしても、
その時間から差し引きすれば秒数もカウント出来ますからね。」
『…ねぇ普通に楽しんでない?!?!?!ねぇ!!!!!』
「っくくくく、ええ。今と〜〜〜っても楽しいですよ???」

ええええん!!!!助けてえーーりーーーん!!!!

そう叫ぶメルに対して、此方に干渉出来なさそうですねと笑うサワア。
それもそうだ。外の時間が一瞬ということは、
こうやって時を過ごしている時間とのズレを縫ってくるとは
余程こっちを見ていなければ難しいだろう。

出来たとしても此処は二人だけのお題部屋。
三人になってまた文章が変わるのだけは避けたいところだ。

「昔はあんなに甘えてくっついて来てくれたというのに。」
『あっ、あれ、は…その、え、えっと……。』
「ん〜?どうしました?」
『あ、あう…さ、さわあの、ばかあ。』
「っくくく、すいません。意地悪ですねえ?」

ほんとだよ。意地悪過ぎるわ。

「っ」
『…っん!!』
「っふふ、抱きしめても?」

うんと頷いたメルに従い、サワアはそっとメルの事を抱きしめる。
立ったままこうやって抱きしめてわかるものもあるのだが……。

「…いざこうやってすると、恥ずかしいですね。」
『言わないで。気を紛らわしてくれるならそう言う話はやめて。』
「ええ?そうです?こんなに可愛らしいのに。
見ないなんて勿体ないでしょう?」
『え!?待ってなんでこっちみてるの?!!?』
「おや、駄目ですか?」
『あっ、や、だ、だめ、じゃ、ない、けど……』

ううう恥ずかしい。

顔に熱が集中して頭が茹で上がって熱で倒れそうになる。
まぁそうなったらサワアが看病してくれるだろうけれども。
そういえば下からは全くなんも見えないけど、
上からは案外筒抜けだったりするのだ。

前にサワア達が子供の姿だった頃抱きしめてやった時に
その姿をじろじろ見続けていたのを思い出す。
うう、因果応報とはこのことをいうのか?

そうか?そうなのか?昔の人達よ……。


「っくくくく」
『…なに、なにがおかしいの?』
「いや、貴方が其処迄困るなんて思わなかったので。」

意識してくれて嬉しいですよ?エフェメラル

そう耳元で言われて、ぞわりと背中を伝う感じに、
抱き着いていた腕に力が上手く入らなくなる。

『…っやぁ、やめて?』
「っ!!!……ほんと、何処まで愛らしいことをしてくれるんだか。」

頬にキスを落すサワアに、メルはぎゅっと目を閉じた。
その姿をみてはまた抱きしめてやる。

彼女は全く気付いていないだろうが、
これでも抱きしめる判定が一度外れている為
大体10分程度抱きしめることになっている。

今ではコルンも彼女を愛でることが出来ると言えば出来るというもので、
余りこうやって二人っきりになる時間なんて早々なかった。

サワアだって仕事もちゃんとあるのだ。
勿論言っておくが、メルは仕事をしていない訳ではない。
どっちかって言うとメルの方が超ハードな仕事をしているようなもの。

理達の仲間入りになるということは、それ即ち、
人や神の域すらも凌駕する存在に成り得るということ。

「(…今だけ、今だけは。この子をその中にいれないで下さい。)」

神という存在がもし、願いが叶うというならば。
どうか、どうか今だけは、この子が人の様に
ありふれた何処にでもいる存在の様に振る舞うことを、許して下さい。

今だけは。

そう、今、だけは。

貴方は僕の腕の中で僕だけを見つめて困り続けていればいい。
そんな酷い所になんて、見つめ続けなくて良い。
自分らも行くといっても理になどなれはしない。

彼女が、選ばれてしまった理由なんてもう分かり切っている。

だから、これはそう、足掻いているだけだ。

この子がこの箱から飛び出したら、その時は。


「(まさか、ね。選んでるとか、じゃ、ないですよねぇ?)」


もしそうならば、本当に怒って
此処の世界ごと叩き壊すというもの。

まぁ、自分は中立の存在。

そんなことをしてしまえば消滅してしまいそうだが。

消滅なんてしたくないと思うのは、
単純にこの子を置いて行ってしまうからというだけで。

貴方がもし、自分の見えない所に行ってしまうというものなら。
もう僕はこの世界で生きていく価値など見つけられないのです。

貴方が生かしたとしても、絶対に僕は貴方を思い出して、
会えない時間にその掟を破ってでも消滅を求めるでしょう。


貴方が破壊神らに破壊という消滅を望んでいた様に。
僕もきっと、掟を破って消えていなくなる。

まぁ、そうなれば恩情で記憶を消し去って
元の位置にでも戻されそうな気がしますが。

カチャリという音に開いたと声が聞こえる。


『ね、ねぇ、サワア?』
「なんです?」
『お、お願いがあるんだけど…』
「いいですよ?なんですか?」
『こうやって抱き着いても、
嫌いにならないでくれる?』
「…そんなことでいいんですか?」
『え?』
「え?」

いや、もう少し何かあるだろうに。
抱き着いて嫌いになるなんてそんなことあるのか?

そんなことでと目を丸くするサワアに、
今度はメルがえっ?と聞き返す番だった。


『えっ?あっちょ』

軽く、少しだけ強めに抱き返すサワアに、
メルの緊張が跳ね上がったのか、身体がこわばり固まる。
どきどきと心臓の脈打つ音が聞こえなくもない。

サワアはクスリと鼻で笑った。


その懸命に前を向いて走り続ける彼女が
自分の為にと言って自分から近づいてきたなんて
可愛らしいことをされて、気分を害するなど。

ましてや、嫌うなんてあり得るわけがないのだから。


自分のことで、周りが見えなくなって困り果てる姿をみて、
嗚呼ダメだなとサワアは気付く。

『え?そんなことって、いや凄く難しいよ?』
「いえいえ、そんなことですよ?
僕がそんなこと、鼻からするわけがないでしょう。
寧ろこうして貴方が抱き着きに来てくれたことが
僕は嬉しくて仕方がないくらいなのですから。」
『〜〜〜っ、うん。約束。約束だよ?』
「ええ、(…これが短い時間でよかった。)」

もし、長い時間一緒に居続けると、
どうやってしまうか、分からない。

そうサワアはちらりとメルの方を見る。
メルはそれどころじゃないのか、
眉を下げて、口をぎゅっと閉じ
兎に角早く時間が過ぎるのを待っていた。

どきどきと心臓の音が大きくなっていることに
サワアが気付いているなんて、知りもしないで。

「(ほんと、中立なんて忘れてしまいそうになる場所ですね)」

貴方の為なら、この身を捧げても。
なんて言葉が出てくるというのに。


ガチャリと音が鳴ってポーンと音が鳴る。
どうやら緑の点灯が出れる合図らしい。
ドアの上に点灯された光を見ていきましょうとサワアは答える。

メル?と言ったサワアに対し、ご、ごめんとメルが言う。

『こ、腰抜けちゃって…』
「…っふふ、分かりました。では、失礼しますね。」
『えっ、あっ!』

そう笑ったサワアはメルの足を掬い、姫抱きのまま立ち上がる。
体制が不安定になったメルがぎゅっとサワアの胸板に掴み寄る。

「そのままで構いません。帰りましょう。」
『え、あっでも』
「歩けないのでしょう?ならこのままで構いませんよね?」
『やっ、あの、そ、うだけど。』


役得、とはこういうものなのでしょう?


そうサワアは思いながら、
メルをゆっくりと抱きかかえて
ドアの方へと向かったのだった。


鍵はもう、既に開いていた音を鳴らして扉が開く。