裏切りの太母




前回のあらすじ

マルカリータとイチャイチャしてきました。

ぱっと戻って来た場所に、コマ送りの感覚を覚える。
手を握ったり閉じたりとしつつマルカリータと声を掛けた。

「大体1時間ですますね。」
『ふむ。じゃあ次するか。』
「ちょ、ちょっとお待ちなさい。」

貴方この状態がどれ程危険かお判りで?
そう言うコルンにいやもう片足突っ込んだ状態で何をとメルがにやりと笑う。

「相手の思うつぼというもの。」
『じゃあ入ってしまえばいいじゃん。』
「…は」
「め、メル様?貴方今何をしているのか本当にお判りで?」
『うん分かってる。相手は私らを禁忌に犯して
神の座から引きずり下ろしたいからしてると仮定したらね。』
「なら猶更おやめください……!!!!」
『あらあらコルンさんったら〜んも〜
のんのん。わかってないなあ〜〜〜???
こういうのは騙されたもん勝ちなんだよ。
こういうのは。ことわざとかあったでしょ?』
「そんなことわざ云々諸々何処にもありませんよね!?」

私知っていますからねというコルンに
おやバレちゃったかと
メルはニヤニヤして笑みを浮かべ続ける。

私の悪い癖というべきだろうか。
いや絶対そうだろうなぁ。

目には目を歯には歯を。

『しってるかい?この中にいるユダよ。』
「っ」
『目には目を歯には歯を。
白い空間を持つ者なら、白い空間を持っていた者を。
…私に勝とうなんざ百万年早いってもんだよ。』

閉じ込めたいならどうぞ、ご自由に。
但し記憶を消そうが魂を消滅させようとも
絶対に何が何でもこの場所に巡り廻って戻ってくるつもりだ。

それくらいの覚悟で、私はあの奈落に突き落とされて帰って来ている。
今更怖いから突かないで放置しようなんて
甘えた思考回路は持ち合わせていないのでね。

『閉じ込められるなら閉じ込めてみろ。
殺せると思うなら殺してごらん?
大丈夫。もう、お前のやり方は「手遅れ」だ。』

一度こういうのは揺さぶっておいた方が無難だからね。
ちらちらと天使らの目を見て、
何人かの目が合った時の違和感に背中が躍る踊る。

ゾクリとした、あの冷ややかな目を見つけて。笑みが勝った。

嗚呼怖い中に隠れてしまっている、喜びが。
今も生きていると分かって無性に悲しくなった。

『…ま、本当にこの中にユダが居れば、の話だが。』
「いると思っているのですか?」
『いなくても繋げてるとか在り得そうだなぁって思って、ねぇ?』
「揺さぶりをかけすぎて落ちてきた物で当たって死なないで下さいよ?」
「当たり所悪くて死んだとか洒落になりませんからね。」
『大丈夫大丈夫。死なせないと思うよ今は特にね。』
「…ん?どういうことですか?」

そう聞いたクカテルに、メルは答える。

『ん〜?今は引き継ぎ状態で、まぁ採用されるだろうって状態でしょ?
もし此処で切って自分が成り代わったとしてもさ?
他の天使らお前達が生きている訳じゃないですか。』
「え?ええ、まぁ、そうですね?」
『多分だけど自分一人だけでそれ以外要らないはずなんよ。』
「つまり、我々を消し去った状態で成り上がろうとしていると?」

この中の誰かが?そう言うサワアにまぁそういうこととメルは答える。

『勿論天使がっていう確証はないから、全員白も在り得るし…黒もまたあり得る。』
「流石に全員黒はないんじゃ…」
『黒幕が大神官〜とかだったら?』
「っ!!!」
『流石にお父上の命令は無視できないでしょう?』
「…だとしても、何故貴方がそう自ら戦に出向くように動くのですか。」

もう少しことを静かに動かし…

「…っ待って下さい。いや、まさか。」
『時間は有限なんだよ。天使達諸君や。』

儚い時間は、無限なんてありえない。
全ては泡沫の中にだけ、存在するのだから。

『まぁ誰が私を殺したか殺したいかが白い箱の部屋に繋がるかは別としてだ。
どうせ願いが叶うならもうこの際色々ごちゃ混ぜしちゃお〜〜って思って!!』
「そんなこと願うよりも貴方であれば皆言う事を聞くというものを…。」
「貴方の願いは其処ら辺の低俗よりも可愛らしい願い事ばかりですからねぇ。」
『え。じゃあ低俗と同じ様な願い事してもいいの?』
「出来る者ならしてみてください。星一つ消し去ってとか言えます?」

あっっっっ、それはちょっっっっと無理かな?!?!?!?!
はぁ……そういうところからですよ。

「誰かが憎いから殺せとか、
自分が良い方向にだけ進めばいいとか、
そんなの考え付かないでしょうが。」
『考え付きはするけど、いやそれ実行しても
しょーーーもねぇな。クソが。
っては思って叩き落として足で踏みにじって
鼻で笑ってる方が滅茶苦茶楽しくて好きだよ私。』
「さらっと頭のおかしい話にすり替えないで頂きたい。」

あとそのやり方思考がおかしいですからやめなさい。
そう言うコルンにメルはやだーーと嬉しそうに笑って答えている。
本当に肝が据わっているというものだろう。

『え〜〜?まぁそうだねぇ〜〜?
人を殺しても良いことなんにもないし、
自分が良い方向に向かっても人が良く無ければ私は嫌な方だからねぇ。』
「なんでしたら皆が良ければ自分のことなど考えもしないのでは?」
『おおヴァドスさん大正解。さっすがウイスさんのお姉ちゃん!!』
「ほほほ、お褒め頂きありがとうございます。」

にこりと微笑む彼女が可愛い。んもう好き。大好き。皆好き!!!

『ま、入れば入る程出れなくなりそうな感じは
プンプンしてるから正直入りたくないけれどもだ。』
「ならしないで頂きたい。」
『だとしても半強制的に入ってしまう分は仕方がないでしょう?』
「ぐ、だ、だとしてもです。既にこの数十秒で二度も
貴方はその部屋に入っているではありませんか。」

しかも二回目に至っては自分から入ったも同然。
余りそういうことをされて、後で痛い目をみても救えないのだ。
そう言うコルンに、メルはぶーと声を上げる。

『でも此処まで来たらもうラストスパートダッシュしかないでしょ!?』
「だとしても先に手を打たれて泣くのはどちらですか…!!」
『大丈夫いざという時はサワアかコルンのお華食って願えばなんとか〜なる!!』
「そう言う問題じゃないんですってば…!!!って、メル様?ちょっと待って下さい。」

ん??

「今なんと」
『え?食えばなんとかなるって。』
「いえ、華を、食べて願えば本当に願いが叶うんですか?」
『嗚呼いや別にやろうか?』
「ちょちょっちょっちょちょっと!!!」
『あ〜〜どうちて〜〜〜』

胸に手を移動させだしたメルを見て周りが驚き
近くにいたサワアとマルカリータが
ばっと彼女の手を取って頭の所まで上げて止めた。

華を食べて願えば、本人自体ならまだしも他の子では千年程眠る様になるはず。
そうするまえに、願ってしまえば彼女自体が死んでしまう可能性もぬぐえない。
そんなことを分かった状態で易々とやらせる訳がないだろうに。

本当に自殺未遂というか、なんというか。

「全く、本当に何をしでかすか分からないことをなさらないで下さい。」
「命は一つだけですますのよ?エフェメラル様。」
『どうせ戻ってくるというのに?』
「…だとしてもです。確かに我々は死にません。掟を破らない限りは。」

でもそれは、掟を破れば貴方に会うこともなくなります。
例え貴方がもう一度此処に辿り着いたとしても。
貴方が模倣を作って描く、空想の世界以外では。

出会う事なんてもう二度と無いに等しくなる。

「サワアお兄様と離れてから帰って来る時間を考えればわかるはずです。
数十年程で帰って来るというものではないでしょう。」
『じゃあこのまま周りの人たちが苦しむの放置してみるって?』
「そもそも貴方の最終的な立ち位置は其処でしょうに。」
「理の皆様も仰られていたではないですか。過干渉は厳禁だと。」

むぅ。

頬を膨らませても駄目なものは駄目です。

『そもそもどうして皆そうやって私を守ってくれるの?
大神官様のご命令だからってだけじゃなさそうなんだけど。』
「まぁお兄様達がお世話になったというのもありますが、
貴方の立ち位置から貴方自身を見て
どうしようもなく放っておけないのですよ。」
「貴方程の清らかな気は今まで見たことがありませんし。」
『…ん?コニックさん。』
「なんですか?何かおかしいことでも言いましたか?」
『待って?誰が清らかだって????』
「貴方の気ですよ。比べたこともないのですか?」

いや、在るわけがない。したことない。
そう言うメルに、コニックがきょとんとする。
あれ、固まった。待って私おかしいこと言ったな???

「言いましたよ。間違いなく。」
「…待って下さい、気を扱っていたのでは?」
「コニックさん。彼女達は特殊な気を扱う者達ですよ。
我々が知る気を読み解く以外の方法を扱われておられるはずです。」
『嗚呼まぁ、思いつきもしなかったなぁ〜〜〜〜!!!』
「…今度そちらも加味してメニューを組みましょうか。」

ええと嫌そうな顔をするメルに、
しませんよとコルンが言うと、いやだしてと真反対の事をいうので、
天邪鬼ですねえと何処かから声が聞こえ始める。

「本当に貴方というお方は知れば知る程不思議な方ですよ。
気の扱い方も存じ上げないと言うのにあれ程の力を発揮するとは。」
『嗚呼皆を巻き添えにして戦闘意欲根こそぎかっさらうやつ?』

この下に生えているみたいな。そうそれです。

「我々の様な神々の気を扱うにしても少々形が違うといいますか」
「確かに此処まで澄んだ気は正直初めてかもしれませんねえ?」
『え?え?ま、まって、なんで皆こっち見るの????』
「言われて初めてとは言いませんが、気になったので。」

そう周りの視線が一気に集中したことで
メルは二人の手からばっと離して
ちょこんとサワアの背中に隠れ
頭を背中にくっつけてぎゅっと目を閉じ始めた。

その姿は、幼い頃にしていたメルの行動そのもので。

「ふふ、照れているんですか?可愛らしいですねぇ?」
『ぴゃ!!てっててて照れて、なんか、な、い…もん。』
「っふふ、そんな赤面しちゃったら説得力がないですよ〜?」

ふにふにと指でツンツンするウイスに、
んにゃ〜〜と言葉ではない声を出すメル。

嫌そうな顔をして否定しているが、本当に嫌な訳ではない。

『ってそうだ。ウイスさんも私の気を見たから
仮の肉体というか作ってくれたの?あの11番目の時間のさ』
「ん?嗚呼あの時の話しですか?まぁそれも一つですねえ。」
『え。まだあるの。』
「貴方の気が余りにもあの方の肉体に合ってなかったというのもあります。
外に切り離しておいた方が後々良い方向に向くとも考えてのこと。」

まぁ妥当な線だったのは確かでよかったですが。

「だとしても、あの時より比べて、更に澄んでいますよ?」
『え、そうなの?』
「ええ。初めてお会いした時は不純物の少ない純水だった水でしたが、
今では超純水まで不純物のほぼない状態域に入っていますからねぇ。
貴方が下界の人間と会って不純物が入ってしまえば最後。
そのまま戻らないのが惜しいと言うのも、理解できますでしょうか?」
『はわ…そりゃ他の水に行こうとしたら皆止める訳だわ。』

確かにそうなったら私もちょっと止めたくなるかも。
おほほほ、分かって頂けて何よりですよ〜。

純度が高い水は貴重。

加えて時間を掛けていけば更に純度が高くなるなら余計に貴重だろう。
それをあえて他の水と混じらせて濁らせるなんて、
時間を掛けていったその時間自体が無駄になるというもの。
嗚呼だから皆下界に行かなくても良いと言い張るんだねぇ〜〜〜。

「本来気はそうそう努力して大きな変化を遂げるものではありませんからね。」
「産まれた時に持つ素質、と言った方が良いでしょうか。」
『あれか?身体が変わらないみたいな感じで、
ある一定以上の変化はないとかそういう?』
「その感覚で間違いないですね。
その点貴方が行っているのは肉体どころか
性格も変わるくらい人が違う程に見違えていくんですよ。」

嗚呼そりゃあ貴重か。そんな出来ないのに出来る人なんて貴重過ぎるか。
ましてや理とか天の存在に等しい処に行けるってなればそりゃ囲うもんか。
なんか言いくるめられている様な気がしなくもないが…まぁいっか!!

どっちにせよ白い世界にはこれからどんどん入るには間違いないのだ。
何人かが頭を抱えているが、全く気にしなくて良いと思う!!!

「はぁ…言っても聞かないのは分かっていましたが。」
「これは時間の操作に影響を及ぼさないことを祈るしかなさそうですね。」
「ですが厄介な部屋ですね。
自分達がある程度操作出来るならまだしも、
こう相手の願いすらも判定に入るとは…
変な話想像するなと言っているも同然ですね。」
「考えるな、と言えば簡単な話ですが、
これからずっと、となれば話が別ですしねぇ。」

ううむと唸る天使らに、メルはきょろきょろと右へ左へと彼等の顔を見て首を傾げた。

『ん〜〜ねぇ、サワア』
「なんです?」
『確か神様でも駄目なのって、時間とか時空を越えたものだよね?』
「ええ。我々天使ですら禁忌ですからね。それがどうされました?」
『要は越えなければいいんだよね?』
「…いや、そうですが、メル様???何をお考えで。」
『ん〜〜夢とかそういう幻系の類かなって思えばなんとかならない?』
「だとしてもどうやって立証するおつもりで?」

そう言ったモヒイトに、むぅと頬を膨らませた。
でも彼の言う事は確かではあるのだ。

「ですが時空をゆがめているかどうかもまた、立証等不可能にも考えられます。」
「エフェメラル様、貴方様らの知識で何かヒント等はございませんでしょうか?」
『私の?』
「ええ、と言いますか華樹神様らや、理の一部などは。」
「其処からは私が説明しようか。」
「っヴァイス様!!!」

ぶわりと風を作り出して帰って来た彼女に、メルはえーーりーーーん!!!!と叫ぶ。
はいはいただいま〜と両手を広げる彼女の胸元にメルは綺麗に入り込んで抱き着いた。

「こっちで一通り調べましたが、
ちょ〜〜っと面倒な話になりそうかもって思ってきました。」
「面倒?と、いいますと?」
「華樹神らの中でこういう時空をゆがませる系に発展する力もあるってこと。
ほら、メルとか特に覚えがあるはずなんだけど。」
『え?わ、わたし?ええ???』

ううんと唸っていて、ふと白い部屋の中を思い出した。
あの額縁に縋り続けた先は、一体どうなったんだろうか。

『…もしかして、私が辿り着きたかった場所自体があそこになるってこと?』
「その可能性が出てきた。というのも
此処で言うのもあれだけどね。
貴方さ、IF部屋は入ったことある?」
「IF部屋?」
『あ〜〜〜あの最下層にあった青い扉のこと?』
「そうそう。それそれ。貴方の核は青だからね。」
「あの、IF部屋とはなんでしょうか?」
「華樹神が使える緊急避難用出入口のことです。
全王様が世界を消し去った時に半強制的ではありますが
其方の方に移動出来る扉が一人一つ設置されていまして。」

貴方の場合は廻廊の真下にあったはずという彼女に
メルはこくこくと頭を縦に振り回していた。

『あの場所は嫌な予感がしたから極力避けてたよ?
なんか凄い嫌な殺気というか、悪い感じ。』
「まぁ入ったらこの世界にある何処かのIFに入り込むからそりゃそうよね。」
「あの、嫌な予感がするのですが、まさか…」
「ええそのまさか。恐らく別世界のエフェメラルが迷い込んでいる可能性が出てきたのよ。」
「っ!?!?」
「なんと」
『えっ!!!私お友達増える?!やった!?』
「阿呆、そんな訳ありますか。」

そう軽くデコピンするサワアに痛いとデコピンされた処を両手で隠して半泣きで反対するメル。

「それで?どうなさるおつもりで?」
「ひとまず本人の姿が見えない以上は話にならない。
メルの言っていた通り、他の人達を巻き込むくらいならば
今回は大人しく自分達の周りで対処して欲しいってこと。」
「それなら別に構いませんが……」
「問題はいつどこで起きるか分からないことですよね?」
「そうねぇ。それもあるし、その子が一体何処から来て
どういった経緯でこうなったのかとかもわからないからね。」
「経緯でその部屋自体の仕組みが変わるのですか?」
「事例はなくはないのよ。恐らく精神と時の部屋って部屋は其処からの派生だと思うわ。」

元々白い部屋の中で耐久戦というか、お仕置き部屋みたいなのを作っていてね。
時間がもったいないからっていうことで外と中の時間を遅くさせていただけ。
だから禁忌に犯されて消滅っていうことはまだないっちゃないけど。

「その子がどういう経緯かによって貴方達の消滅も決まってしまうってところ。」
「ということはどちらにせよ我々が消滅する可能性はぬぐえないと。」
「だからこっちも大急ぎで対策から何から何まで考えてるのよ。」
『…じゃあとりあえずやることはなぁに?』
「天使連れてやりたいことやってきんしゃい。」
『はいさ!!!』

そう手を上げるメルだったが、あれぇという声と共に誰かの声が響いた。