あなたのことばかり




自傷行為がバレたのでカウンセリングが始まりました。
滅茶苦茶嫌がるメルに対して、アルトリアは苦笑い。

まぁメルの気持ちは分からなくはない。
だがそのやり方が本物に近いというのはよろしくないのだ。

それ程、大事にしてくれるのはわかる。
見た方が良いというのは、その酷さがどれ程か。
人間はこんなにもみにくいものだと。

それに耐えられるためにも、廻廊は創られている。

だが、サワアの時からはそれを撤廃してしまった。
その為そのまま正式採用になるので、怖いのだ。


「枯れたらと思うのが怖いのね」
『……。』
「そう。」

だからと言って廻廊を続ければ彼は恐らく悪魔に戻る。
その可能性が非常に高かった。ソレだけは阻止したかった。
だからこういう手を取ったが、時間稼ぎにしかならない。

戦闘行為を禁止されている中で育った為
その怒りの矛先の種類もかなり限られていることだろう。
勿論メルとて血肉が欲しいわけでもない。

ああやって落ち着かせるのは
何もメルだけではなかったというのは意外だったが。

「まさかルトラール様も同じことしてたとは……」
『流石にびびった』
「いやー血は争えませんね〜〜〜」

血が濃すぎる。

何ならメルに対して「甘い」とまで言う始末だ。
あれ以上の残酷を知られては困るので流石にストップが入って終わり。
一応解散にはなったが、二人して反省会を行わさせられている。

「だってアレをしないと慣れないですからねぇ。
流石に幼少期からしてたのはよろしくないですが。」
「だとしても駄目です。最初から最後まで駄目です。」
「残酷過ぎるんですよ。そもそも人間の浅はかな行動が。
なら自分で律するというもの。
感覚を消すのには一度殺さないと消えないんです。」
「それは感覚を麻痺させているというだけ。
時間稼ぎにしかならないでしょうが。」

それはその通り。

「いやにしても成長したねぇ〜?」
『……まぁまぁね。』
「おっと!ま、いいか。」
「ルトラール様?」
「あの子の組手でもしてくるから。その子よろしく。」

そう手を振る彼に、もうとアルトリアはため息を吐いた。

「…嗚呼やって悪魔を殺してたの?いや落ち着かせてたって感じか。」
『ん。誰も見えない触れれない信じないだからする。』
「…助けを求めても無駄。相手されないだから?」
『そうだよ。』

当然の様に言うメルが、本当にくるっているとしか思えない。
いや、そうしないと、無理だとしても、それでも生きたのは何故?

「諦めようとしても、諦めれなかった。」
『…ん。』
「そっか。」
『ん。』

きっと何度も諦めたのだろう。
それでも芽吹く、同じ様に、同じ想いを。
それは地獄よりも酷い、煉獄の様な所だろう。

「メルは、終わらして、違う人生送りたい?」
『…迷ってる。』

嗚呼だから、そう揺らぐのだろう。
前に鬼ごっこを宣言した彼女の中には、其処もあるのだろう。
もしもサワアが、こっちを見なくなったら。

その方が一番良いのだと、彼女は思っているはずだ。
自分が見ていなければ、彼はずっと今頃幸せだっただろうにと。
ならば早く終わらせてやらねばならない。

駆り立てられて、その傷を深くえぐって。
皮肉にも、その傷こそが彼と結ばれる原因になるとは
彼女も思っていなかったはずで。でも止まらなくて。

もう、帰れない帰る場所が分からない、迷子の天使。
翼を取り戻しても、天の場所など消え去った。
帰るにしても帰れなくなった孤独な天使なのだ。

唯一残っている、天使でもあるのだ。

そう、彼女も然り、サワアもだが、彼女らは唯一の生き残り。
アニュラスが断言したのだ。これ以上にない程に完成度が高いと。
メルとサワアはかなり貴重な存在になっているのだ。

『かえしてやりたい。』
「…ヘレスの元に?」

うんと強く頷く。

嗚呼そうか、あの物語をこの子は一番に見ていたから。
愛おしそうに見ていて、悪い噂ばかりが蔓延っていた時間。
灰色にしか見えなかった、あの小さな時間。

女の子がみるもんじゃない、男みたいだと。
言われているのを庇ってしまっては泣いていた子。
大丈夫、君はそのままで居ればいい。

ずっとずっと、見てきた彼女は、こんなにも強いのに。
弱いなんてない、この子は土壇場とんでもない力を振り絞る。

鬼ごっこの時だって勿論、悪魔に翻弄されつつもその身体を魂を核を貫き通して、サワアらに怪我させない様に戦っているのを聞いても居るし、実際みたこともある。

本当に日向の下で絵本を見ている子ではないのだ。
もう、前を向いて、立派な女性になっている。
そしてその先には、彼女が一番手にしたかったであろう場所が。

最終地点が、いや、始まりが、幕を開けようとしているのに。

なのに、この子は、この子の運命は最初から決まっているとでもいうのか。
ヘレスが望んでいないとは思っているだろう。
なんなら嬉しそうに心の底から喜んでいるくらいだ。

だが、メルは分かってるのだろう。
長い付き合いになっていれば、それが空いた時の空白がどれ程きついのか。

そして、狙われることに。

「メル」
『間違いない。ヘレスは種に選ばれる。』
「…やっぱり気にしてたのね。」
『ん。だからサワアは絶対にヘレスに付かせるべき。』

あの中で一番華樹に選ばれやすいとメルが判断したのだ。
極力交代でとメルが頑固で頑なに言うのが分かった。

「ヘレスにそのこと、伝えた?」
『ううん』
「どうして?」
『言いたくない、知って欲しくない。』
「それは選ばれやすくなるから?それともヘレスのこと信用してない?」
『ううん』
「じゃあなあに?」
『…サワアは悪魔でもあって、その樹を知ってる。』

彼が付いていれば、何かしらの抑えは効いていると思っているということか。
尚更選ばれることはなく、そのままになるだろう。
だが、それも時間の問題。

『空いた穴に満たされる様なものが無ければソレを埋め尽くしてくる。
空白が無ければそれに支配されるのも時間の問題。』
「だから出来るだけ近くに居る人は交代させたくないと。」
『ん。』
「そっか。優しいね。」
『んなこたない。』
「そう?それってさ?ヘレスがずっと笑って最後まで生きれる様に邪魔しないってことでしょう?」
『うん。笑って欲しい。せめて、あの人がいる間だけは。』
「その先って、貴方は生きていると思う?」
『え?』

やっとこっちを向いてくれた。
寂しそうな顔が目を見てくれる。

「ひと時しかいきれないかもしれない、名前の貴方が。
ヘレスは本当に貴方が我慢してまでして自分が笑えると思う?」
『それは……、わからない。』
「そうね、分からないね?ねぇ、エフェメラル。
私は貴方の事を小さい頃から見ているわ。」

昔と変わらない。その優しさは花の花弁のようで。
触れば柔らかく痛みを包み込んで癒してくれる。
でも、それは太陽が栄養が余り触れなければの話。

華はやがて枯れる。種になり、また咲き誇る。
その繰り返しをする華神らの意味を

「あの子達は我々のことを本質を一切みてもくれてないの。」
『っ!!!』
「きついかもしれないけど聞いて。
貴方が幾ら頑張ったとしても、努力しても
あの子が報われるとは限らない。」
『っでも、しない訳には』
「確かにそうね?してあげて楽になるでしょう。
でもあの子はどうなる?成長できる?」
『……っ』
「優しい、本当に、いい子なのね?エフェメラル。」

其処迄しなくていいの。だから、優しくその身体を早く在るべき場所に上げて欲しい。

「きっとね、ヘレスは待ち望んでいたと思うの。」
『え?』
「いつか戻ってくる愛しき人が帰って来るその日まで。
あの子は、ヘレスって子はね?きっと待ってくれてたの。」

サワアが寂しくない様に。似たような黒髪を持った女性として。
悪魔を望んだ、メルが、何時しか真似たあの黒髪の黒目と同じ様に。
遠くを見ている彼を知って、きっと、傍に居てくれたはず。

「そうしたら、貴方が望んでもなんら、おかしくないでしょう?」
『……寂しくないかな、怖く、ないのかな』
「寂しかったらあの子きっと此処に遊びに来るわよ?」
『ほんと?堕ちない?』
「ええ。きっと。」

だから望んでいい。

サワアが、華樹神官になって、この地で一緒に居ることを。
貴方は心の底から望んでいいし、迎え入れていいの。
その悪夢は、もう、見なくていい。

血に飢えて、その刃を自分に相手に突き刺してまでして
生きなくて、もう、よくしたはずなのに。

なのに貴方はしようとする。しなくていいのに。

「ヘレスのことも皆大好きだから守りたくなるのね?」
『…うん。だって、喧嘩してる二人見てて楽しくて。』
「…それはちょっと悪いわね????」
『へへへ!!!』

流石に喧嘩は止めてやろうと思わないのか。
確かに口喧嘩が妙に夫婦じみているというか、なんというかだ。

あそこの関係は余りよくわからないが、
間違いなく恋人関係のソレではないだろうに。

まぁ万が一仮にもしも間違えて手違いがあったとして
サワアがヘレスに手を出していたとかあれば
恐らくアルトリアを率いて原初が総攻撃に向かう事だろう。

間違いなく死ぬと思う。
死なない天使になったのが可哀想なくらいには。

『だから出来ればヘレスともお喋りしたいんだぁ。』
「…そんな好かれちゃったらサワアが嫉妬しちゃうね?」
『うん!だからね?内緒なの!!』

嗚呼、本当に可愛らしいのだ。この子という子は。

サワアが怒らないように、自分が不貞腐れないように。
ヘレスのことを守るように、彼女は其処を求める。
二人が仲良く、その宇宙を司ることを終えるその日まで。

ずっとずっと、待ち続ける方を選択するのだろう。

「流石にソレ聞いたら一緒に居るしかなくなるけど、どうする?」
『え〜?いてくれないよ。だってお仕事もあるだろうし。』
「じゃあ逆に聞くけど、ヘレスと何したいの?」
『えっなんだろう?髪の毛編んだり、お風呂もまた入りたいでしょう?
あとお絵描きしてるの一緒にしたいし、花冠…は、いいや。』

流石にそれはサワアと先にしたいとメルは照れくさそうに笑って言う。
嗚呼あとねえとどんどん出てくる出てくる。まぁ出てくる。

『カードゲームもしてみたいし、一緒にゴロゴロして寝落ちしたい。』
「っふふ、聞いたら全部叶えてくれると思うわよ?言って見たら?」
『え〜〜〜やぁだ。』
「あら、どうして?」
『だって此処が大好きになり過ぎちゃったら宇宙忘れちゃうでしょ?
私は第2宇宙の彼等だからこそ好きなの。』

一番が叶わない、二番目が叶う。
一番を望まない、二番目を望む。

二番目だからという宇宙としても
メルにとってしてみれば
その二番目は、思い入れがあるのだ。

メルトリアの件も然り、不思議なことに
二番目はメルにとって救世主に等しいというもので。

自分ばかり、私ばかり見るのはまた違うというものだ。
それにアルトリアははぁと深いため息を吐いた。

「あ〜〜〜ほ〜〜〜〜〜んと、
愛されて愛され尽くして可哀想になって
来たんだけど?どうします?お二人さん。」
『…………ん???????』
「いやはや、どうしましょうねぇ?ヘレス様」
「許可は?」
「彼女が我儘を言うなんて早々ないのです。
そりゃあもう、どうぞ、ご自由に。」
「だ、そうじゃが?」
『!!?!?!?!?!!?!??』
「っと、逃げるのは無しですよ〜。
あとそれ一部だとしても僕も入ってますよね?」
『アルトリア!!!!』
「無理」

むりちゃう!!!そこなんとかする!!!

「という訳で私一度席を外しますので。
というか第8に用があるので。」
『まま!!!!!帰って来てまっま!!!!』
「はいはい、ママはお仕事じゃからの〜〜。」
「…いい、ん、で、すよね?行っても。」
「ええ、一日程度大差ないですから。」

神々の時間的には、正直ひと月くらい少々放置してもさほど問題はない。
第7宇宙のようにぽんぽんと厄介事が出てくるわけでもないのだ。
なんなら此間溜まっていた仕事も綺麗に片付けて来たくらいである。

迎えに来たコルンは少々メルの泣き方が異常だったので心配になったが
恐らく大丈夫だろうと思い、アルトリアを連れて帰ることにした。





「…さぁて」
『ひ』
「サワア、お主もじゃぞ!!」
「はいはい。どうぞご自由に。」

メルは髪の毛を下ろし、ヘレスに髪結いのお勉強をと
サワアの髪の毛を使って互いに練習をしていたところだ。

『あう、自分の三つ編みなら出来るのに〜〜
えっと、右がこっち、左真ん中だから…』
「それはこっちじゃ、これはこっち。」
「痛くないので強くしてもらってもいいですよ。」
「じゃあこうじゃな」
「ちょいっヘレス様?!?!?!」

加減というものがあるでしょうが!!!
あ〜〜?痛くないと言ったじゃろうが〜〜。
貴方ねぇ!!!!

『っふふ、Deeds, not words.か。』
「…ん?なんじゃその言葉は。」
『ん〜〜?いやぁ?なぁんも?』
「意味は何て言うんです?」
『…恥ずかしいから敢えて別にして言ったんだが。』
「ほ〜〜〜〜〜????なんていうんじゃろうなぁ?」
『うぐ…言葉ではなく行動を。』

君らのその感じを見て思っただけだよとメルは
サワアの髪の毛を一度ほどき、綺麗に櫛を解く。
優しく、髪の毛が痛まない様に、そっと丁寧に。

『言葉だけで言い合うだけでなく、行動に指し示せばって意味だよ。
…二人ともいつも言葉で言い合っているにしては行動も伴ってるから。』

その、ちょっと、羨ましくて。
そうもじもじし出したメルに目をぱちくりしたヘレスが
メル〜〜!と飛びついた。ばんと横に倒れたメルが痛がる。

「ちょ、ヘレス様?!メルが嫌がってますって!!!」
「いやじゃないじゃろ〜〜???なぁめる!!!」
『なんかこれどっちとっても私きつないです!?!?』
「ん〜?なんじゃ、サワアのことばかりみおって。」

わらわのことは見れぬというのか?
そう抱き着く彼女に、そんなことはないとメルはクルッと回って言う。
それに気付いたヘレスがちゅっとメルの額にキスを落した。

「可愛らしい顔をしおってからに…愛らしいのお?」
『〜〜〜〜〜〜〜?!?!?!?!?!?!』
「ヘレス様???幾ら貴方と言っても
やっていいことと悪いことくらい分からなくなりました?」
「これくらいは許されていいじゃろう?
余り嫉妬しすぎて囲っては可哀想じゃろうしなあ?
人間一年目の小僧め。」
「……表出て下さい。久しぶりにしましょうか。」
「よかろう。」
『ばっちょ、あ、お二人とも?!?!!』
「エフェメラルは気にしないで下さい。
これは我々の関係に置いてのことです。」
「わらわとて成長しておるんじゃ…加減は無用。」
「いいでしょう。ご自由に?」

ああ〜やりはじめちゃった。
一応此処私の力が入ってるから、私の活力も綺麗に吹っ飛ぶの
言い忘れて喧嘩し始めちゃったんだけど。大丈夫かなあ。

かと言ってあの感じを止められるわけにもいかない。
まあいいかあとメルは一階のベランダでことりと横になる。
普通に板が痛いので、部屋に入って軽くタオルケットを取って来た。

ううん、それでも痛い。

流石にベットはと思って地面に足を下す。
おっと、そういや草原の方が楽だったんだった。

メルはそのままタオルケットに身を包み横になりつつ
ヘレスらの動きを見ていて、徐々にうつらうつらと気持ちよくなって眠りそうになる。

嗚呼、多分、これ、外に飛んだ気が



る、めらる、

「大丈夫ですか、エフェメラル?」
『…ん、さ、わあ?』
「は、よかった…具合が悪そうですが、気分は?」

そう言えば何かふらついた感覚はあったな。
多分二人の喧嘩で取った気が原因だろうが。
流石に言うのは気が引ける。

『喧嘩終わった?』
「ええ、一応は。」
「むう!!全く衰えとらんじゃないか!!」
「も〜〜だから言ったでしょう?私は
ルトラール様もそうですが、元天使でもありますから。
力の使い方が少々変わるだけであって本質は全く変わりません。」

まあ今はまだ天使ではありますが、
後々華樹神官に行くということはそれなりの技術も勉学する身。
ソレを交えてしてこれですから、まだまだでしょう。

なんなら魔女らとの対決で勝てました?
勝つ感じも見えませんでしょう?
そうつらつらというのに、メルが唸るので止める。

なんか頭が痛い。悪魔が悪さしている感じはしない。
嫉妬とかそんなのじゃないが。

「そうがみがみ言うな、恥ずかしい。」
「いや貴方がですね…はぁ、分かりました。
エフェメラル、部屋はどちらで?」
『っ、い、いいよ、別にこのままでも。』
「流石にそんな状態じゃあ悪い。良いから連れてってもらえ。
どっちにせよ今日でなくともわらわは全く良いのじゃから。」
『でも、やだっ。』

ぱっとヘレスの服を掴んで離さない。
もう、もう、嫌なのだ。

痛い、頭が、割れそうになるくらいには、痛い。
貴方を、私は、離したくない。

もう、二度と。

そう思った時だった、綺麗な華が胸に咲き誇る。
それと同時に、黄色が白に変化した。

『っごほっ』
「っ!?!?メル!!!」
『っげほっ、ごほっごほ』
「っしっかりしろ、メルメル!!!」

まずい、そうだ、これ悪魔とかじゃない。
確信した。これは華が変わることでの作用だ。
本来華神は華が変わると死ぬようになっている。

だがメルが書き換えたのは死なない様にした。
繰り返しが出来る様に、文字通り不死になっているのだ。
下手したらこれは

一度死ぬ様に、無理矢理身体を書き換えている最中の可能性が非常に高い。

『っひゅっ、ごほっ、ごほ』
「ああ、血が…!!」
「ヘレス様落ち着いて下さい。貴方が慌ててどうするのです。
綺麗なタオルと水を持ってきてください、此処に寝かせておきます。」
「っ、わかった!!」
「横にしますよ、大丈夫。」

いや、しなくていい、多分、もう一度綺麗に枯れる気がする。
これどうなるんだ?そういやあれ途中だったけど。
しわくちゃむくちゃになって死んでまた子供からになるのか????

いや待てそんな感覚ない。
ということは身体の内部が古びてまた戻るのか。
いやそれ待って尋常じゃない痛みになる。
脳が死ぬ脳が。これ駄目。

『っご、さ、わ、がっごほっごほ』

駄目だ此処シャットアウトしてる。伝えたくとも伝えられない。
それに気付いたサワアがエフェメラル、と声を掛ける。

「強く伝えて下さい。聞こえる可能性があります。」
『(痛みを…!痛みをとにかく消せれるなら…!!)』
「っ、分かりました。」

まだ天使としての力は使える。メルの痛みが無くなる様に力を使うと、次第に楽になったのだろう、咳き込みが止まって楽になった顔になる。

「っ、」
『ごめん、二人とも、心配かけたね。』
「一体なんじゃあれは、どう考えてもただ事では」
『多分書き換えの代償かな。今ちょっと試していてね。』
「…待って下さい何したんですか何しようとしてるんですか。」
「お主自分の身体、っ、実験にしてないじゃろうな?!?!」

そんな怒らなくてもいいのに。
べつにこれくらいどうってことない。
誰かが傷付く位なら自分の身体で考えればいいだけ。

モルモットなんて作るつもりがないのだから、
危険だと思えばかえればいいだけのこと。

『…華神と加護天使の交代切り替えの案の一つ。
本来だと寿命とかで死ぬか、華ちぎるんだけど
ソレを無くすとしたら繰り返しが何処に行くかの、ね。』
「……それ、下手したら体内がボロボロになりつつ
回復し続けるということじゃろう?」
「ヘレス様」
「っ、お主自分の身体を何と思っておるのじゃ!!!」
『身体だよ。ただの。』
「っ、」
『堕ちた奴に慈悲等ない。生かすも殺すも私が決める。』

お前らが決める処遇は何処にも存在しない。

『…どちらにせよ、理らも似たようなことをしている。
何も私が私だけがではない。』
「…そうか。それで?」
『え?』
「体験してみてどうじゃ。」

いや待て。他に色々言いたいことがあるだろうに。

「どうせお前に色々言った所でまたするじゃろう。
なんならきつく叱ればこっそりやりかねん。」
「まぁ仰る通り、妥当な判断かと。」
『いや、だとしても。』
「で?」
『ええ????……非常によろしくない。これはやらん方が良い。』
「じゃろうな。心臓に悪いわ。」

だとしても困るなあ。ふむ、と唇に手を当てて唸るメル。

「何か気になることでも?」
『嗚呼いや、君らに言う訳にも……』
「話して解決することもある。行動にじゃろう?」
『それ今言う?…なら、言うけどさあ。』

君ら破壊神と天使でしょう?

『華神らが何故人間ベースなのか知ってる?』
「一代目からの呪いか何かじゃないのか?」
『違う。そもそも感情の振り幅が大きいのが人間だっただけ。』
「は?え、た、たったそれだけでか?」
『そ。悪魔は一途すぎ、天使は欲なさ過ぎ。偏り過ぎてさ
華を維持するには絶望的だったけど、人間に試してた時があって。』

残酷過ぎて余り思い出したくないが。

『無理矢理嫌でも咲かせて実験されていてね。
中にはとち狂った様に悪魔になった奴もいる。』
「むごい……なんと醜いことを。」
『その中でも女の子、特に小さな子で
無垢な子なら生きる確率が非常に高いってのが出来てさ。』
「成程、其処からなんですね。」
『死ぬほど腐った思考回路だから、
変えようと思ったけど、中身をちゃんと見たら
まぁある程度ちゃんと考えられていてさ。』

下手に弄ると今みたいになるということだ。

でも、いや、でも。

『多分だけど華の入れ替わりで根自体が変化してるんかなと。』
「…と、いいますと?」
『胸の中の奥にある種自体が変化してて、丁度胸元だから
気管付近で悪さしてるのが吐血の原因なのかな〜〜と。』
「メルの言う通りだ。」
『っとその声は!!!』

最果て、第4薬の華神クノフィリス様
原初と終焉、第8回復の華神のアンダルシア様とフェル!!
メルの声によっと手を上げて部屋に入って来た
三人にサワアがぺこりとお辞儀をする。

「皆さんどうしてこちらに?」
「アルトリアが半泣きでかきついてきてなぁ〜。」
「嗚呼、すいませんご迷惑を……」
「いやこっちも説明を余り深く受けていなかったというのと
似たような症状を訴えている奴らが多数いてな。」

その報告と、メルも似たようなことになってないかと
心配で様子を見に来てみれば…
そう言ってアンダルシアはしゃがんでメルの顎を上に上げる。

「ふむ……やはり出ておるな。」
「何をみられて?」
「喉から下にかけてうっすら線が入っておるのが分かるか?」
「嗚呼、これじゃろうか?」
「そうそう、コレが感情線。」
『そこ手相占いするところじゃないんだが』
「煩い黙れ。」
『あっはい。』

秒で黙ります。すいませんでした。

「これが出ていると、大体何かしらの強い意志が反応したという印になる。
基本的に華神ら華を持つ者全員が必ず持ってしまう症状じゃがなぁ〜〜、
普通だとこのまま引くんじゃが、引かずに何かしらの症状が出ると良くない。」
「例えば?」
「風邪の様な熱、咳、くしゃみ等の症状は勿論じゃが、
種の場所によっては吐血の様な症状も出る。
喉、胸までの者は吐血。腰や股までの者は陰部出血。
その他の部位は全員その場所から出血を起こしておる。」

現在進行形で。そういう彼女らの衣服も特に下は
丁寧に隠されているのがそういう原因の一つなのだろう。

「恐らく種自体の入れ替わり、まぁ理が書き換わるというので
その類に合わせた種類限定に生え変わる
要はただの生え変わり時期ってことじゃろうな。」
「……はーーー」
「なんとまぁ人騒がせな、じゃあ命に別状は?」
「酷く出過ぎなければ問題はない!というわけで。」
『うにゃあ〜〜〜〜〜〜』
「はいはい、ちくっとするよ。」

うううううと嫌な声を出しつつも採血を採られている。


ひとまず安心、と、言った所か。