マシュマロ作戦、開始!




「…うん、確かに駄目だね。」

こりゃまた酷い呪いを作ったもんだ。
そう顔がしかめっ面に豹変したアニュラスに
どう駄目ですか?とコルンが聞く。

「刃の場所がまずかった。まぁ心臓を避けたのが不幸中の幸いと言った処だね。
この刃、普通の気を練ったもんじゃなくて過去に生きていた華樹神の力を束ねたものだよ。」
「またとんでもない華を隠し持ってたね…流石にこれはこっちの管轄で動かないと処理が面倒だろう。」
「私華樹の蜜取ってきます!」
「それならこの瓶に朝焼けのつゆも。」

そう言ってアニュラスがぽんと投げ飛ばす瓶二つを受取ったヴァイスは了解と一言告げて空に飛び出した。

「この子は我々が一度受取ろう。君らの時間で言うひと月は待って欲しい。」
「それ程ですか、何か我々でも力に」
「ならない。これは君らの時間から離れた僕らのやるべきこと。
…君らはあの子の魂が何処にも行かない様に傍に居てやってて欲しい。」
「…わかりました。よろしくお願いします。
我々は我々のやるべきことをします。
コルンさん、行きましょう。」
「ですが……わかりました。
彼女をどうかよろしくお願いします。」

兄に言われてぺこりとお辞儀をしたコルンに、
うんと首を縦に振ったアニュラス。

「大丈夫。僕らがなんとかする。」

++++++++++

「とは言ったものの…こりゃ一苦労だぞ。」

そう言った場所は華樹の内部にある中央の位置。
理しか入れない管轄の場所にメルを寝かせて円を描くように立っていた。

「魔除けの類をこうも駆使して付けてくるって余程の力を注いだんだろうね。」
「呪いの解呪には流石に一人だと危険すぎる。我々三人で何とかいくしかない。」
「はい。」
「ですが、一体どうやって?」
「明らか僕の時代で請け負った華と、トーラスの所の華だ。
…華が紛失していたとは聞いていたが、此処で使われていたとは。」

厄介なものに狙われていたんだな。

「華樹神の華は各々で個性が出る。アニュラスは焔の様な強い感情に向けて。
トーラスは無常な感情に向けての効果が強く出やすいようにね。」
「では、この子の掛けられた呪いは…」
「そう。無常と始まりに強い力を使えるように合わせた特別種の種から育てた華だよ。」

もう明らか禁忌も禁忌でこんなもの外に出した方が駄目なくらいなんだけどね。
まぁ下の子達が罰を下してくれたから、こっちは何もしなくていいが。

「コレが出来るということは他の種も考えて置いた方が良い。」
「警戒は怠るな、ですね。」
「嗚呼。流石に引継ぎ時期だけに、こっちも手が出しやすい。」
「奴の強いて言う失態としたらこの時期でしょうね。」

もしも早い時期だったらば。
一期程なら手出しは出来ないままだったが。
今は二期から三期に移動している状態。

なんなら理自らがこの眠っている彼女の引継ぎを認めたのだ。
その時点で我々理らも手出しが可能というもの。

「にしてもよく狙われるねぇこの子。理になったらコレ理すら滅亡させに来てない?」
「怖いこと言わないで下さい。あとそんなことにならない様に今現在彼等が対応しているんでしょうが。」
「まぁそりゃそうか。あんだけの魂に好かれたらそりゃこれくらいの呪いはつきものと言ってもいいかもね。」

メルの力に伴い、廻廊で出会った人間達全てが。
メルのことに触れて、メルを見てくれただけでなく、
助けようと手を差し伸べてくれた。

その力と同じように、呪いの力も合わせて貰っていても不思議ではない。
良いことがあると同じ様に悪いことだってある。

「だが、寄りに寄って気を生成し溜め込める方を壊しに来たとは…」
「もし出来ても直で注ぎ続けながら生かすしか方法ないですよね。」
「流石にこの子にとっては酷だしねぇ…。僕らも最善は尽くすが。」

お待たせしましたと言う声が聞こえ、それじゃあと声を掛ける。


「純環の理に基づき、ただいまより手術を行う。」

一同、覚悟するように。


++++++++++


それから時間が進み、一か月後。
サワアはアニュラスから着信を受取り
大神官とコルンを連れて華樹のある理らの元にやってきていた。

「お待たせしました。」
「いやいや、寧ろこっちのセリフだよ。待たせてしまってごめんね。」
「一応約束通り、呪いの解呪は成功はした。」
「成功は?というと何かほかに気がかりでも…」

そう聞いたサワアに、少し目配せをした彼等に嫌な予感が胸を過る。

「単刀直入に言おう。呪い自体が深すぎて後遺症が残ってる。」
「っなんと!!!」
「それで、内容は彼女に言える範囲内でしょうか。」
「…気を自分で作ることがほぼほぼ不可能になった。」
「それって…最早死と隣り合わせでは。」

人間でいう処の植物人間って処だろうね。
そういうトベラに、そんなと声が上がる。

「ただコレを毎日飲ませた上で君らの気を彼女に直接注いであげててほしい。」
「此方は?」
「此処に育っている華樹から採れた樹蜜だよ。どんな生命も命の息吹を取り戻す妙薬。」
「そんなものを…」
「この手の呪いは華樹からの方が効くんだ。
すまないが、これ以上は少々手が尽くせなかった。」
「もう少し切り口が浅ければ後遺症も残させなかったんだけどね。」
「いえ、ありがとうございます。
少なくともこの身体で生きても構わないということですよね?」

「ああ、そうだけど…」
「きっと彼女も喜んでくれることでしょう。
この身体が無くなれば、自分が何処に帰って良いか
わからなくて困ったと言っておられたので。」
「…そうか。ほんと君の選んだ子には何も言えなくなるね。」

こっちが救われちゃ話にならないというのに。
そういうアニュラスにいえいえとサワアは答えた。

別にそれくらい完治させて貰わないと、
なんて言われるのを期待していたのだが
後遺症が多少残るのは覚悟の上だったそうだ。
なんならその程度で済むなら願ったり叶ったりだとも。

なんとまぁ、欲が無いのかなんなのか分からない子だ。

「僕が選んだのではなく、この子が僕を選んでくれたので。」
「…成程、感謝なんて向けなくて良いと。」

この子に向けてあげるべきだと。
ええ。

「はぁ…ひとまずその身体に魂が入った瞬間こっちに連れてきて欲しい。
此処で受けとるよりも死んだ場所に寝かせた方が癒着も早いだろうからね。」
「わかりました。」

そっと抱き上げるとその身体はただただ冷たい。
肉体が死んでいるのは当たり前で。
華で回している身体なので華という意志が必要になる。
その意志が無ければ身体は死んだも同然。

魂が無い状態よりも、意志がない状態の方が壊死する可能性が高いこの身体を
よくぞ壊死させずに維持して尚且つ後遺症も最小限でとどめて貰えたものだ。

「感謝してもしきれません。この御恩は必ず。」
「いいいい。寧ろこれでチャラってことくらいだよ。」
「…我々全く何もしていないのですが。」
「紛失していた華が見つからないこと自体困り果てていたんだ。
これで無事全ての華が見つかったも同然だし、
犯人は君たちの父親が何とかしてくれたそうだしね?」
「ええ。無事に。」

私が処罰を下して良いか正直迷いましたが、全王様のご命令を受けましたので。
まぁソレが良いだろうね。管轄内っちゃ管轄内の話になるし。

「そういう彼女は元気そう?」
「至って普通に元気していますよ?最近は走りたいって
魂の状態で走って騒いでドタバタしておりましたので。」
「っくくく、相変わらず元気で能天気なことだな。」
「彼女もそう言って頂けると喜ぶでしょう。」

きっと無邪気に笑ってうんと頷いてくれる。
まぁその後貶されていることに気付いて怒るかもしれないが。

「まぁ正確には彼女自体の気が作れないとかじゃなくて
作りにくい上に溜め込む場所が通常の半減以下になってるだけだよ。
華にして気を束ねて保管して置くやり方を教えるのも含めて今は連れてきて欲しい。」
「わかりました。ではこれで。」

行きましょうと言った大神官に二人ははいと答えてメルをう抱いて連れ帰ることに。


++++++++++

そうして、やって帰りました。

なんかちょこちょこと説明しただけな気がしますが。
気のせいですよ気のせい。

無事に魂が肉体に戻り、その目をゆっくりと開いてみる。
おお眩しい。そして白い。えっ待って。白い。


『…え、ここいずざどこ』
「貴方のよく暮らしていた場所で間違いありませんよ?」
『いや、しっっっっっろいんだが。
あとあの奥の枯れ木ってまさか私が育ててたやつ?』
「ええ。それで間違いありません。」
「彼女が一時的に力を使った為にこうなったのですよ。」

嗚呼そう言えばこの場所、華樹神の精神によって反映されるとか言ってたな。誰かが。
ん?待ってじゃあ私が死んだ時ってどうなってたんだ?

「徐々に草木は枯れ、そのまま床は白いこの場所になりましたよ。」
『わあ…そりゃごめんね。』
「軽いですね……」

いやだってそれくらいが丁度良いでしょうと言ってメルは身体を使ってその地に触れる。
痛みや悲しみがしみ込んで離れていない。此処で死んでいたのが分かる。
まぁ正確には死んだのではなくて切り離していただけなのだが。

そうでなければ今頃サワアもコルンも消滅して生きていやしない。
私の魂が綺麗に残っていたからこそ、今こうして戻れているというもの。

『というかよく私こんな動けるね???どういうこと???』
「そりゃあ此方で肉体を維持させていたので。」
『此方で???肉体を???維持させて?????』
「普通に心臓を半強制的に動かしていたんですよ。」
『言っておくが普通じゃないからな????????』

さらっと言う大神官とサワアの言葉にメルが首を傾げながら答える。
もう半笑いである。こんなさらっと言われたら笑うしかないよなぁ!?

「つい此間の様に動けるのはその為でしょうね。
多少動きにくい処はあるでしょうが。」
『まぁ…まぁ。それじゃあ気を巡らせるのも?』
「出来るはずですよ?」

そう言われて目を閉じてその場に座り込んでみる。
両手を胸元の前で維持したまま息を吸って吐いてを繰り返す。
吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いたその先。

無いもの存在しえない者。此処に生き残れてしまった者。
風が心地よい。五月の様なさわやかな風。暖かくない生ぬるくもない。
青い空の下で、黄金色の草原になるはずの青々しいみどりの草原の上に。

私達は生きていて。その草原から大きな樹が高らかに育っている。
枝から生えたその白いコデマリの様に丸い花が咲き誇るその場所は、
とてもじゃないが其処迄大きな樹になんてならないのに。

私が想像しただけの、想像上での植物が、この場所に咲き誇って綺麗に生きている。

「…綺麗」

そう誰かがつぶやいた言葉にメルは目をゆっくりと開ける。
其処は、綺麗な花畑が一面に広がっており、チラホラと金色と青々しい緑の草がみえる。
目の前に咲き誇る樹木は樹齢何千年というものだろうか。
大きな幹から伸びた四方に分かれた枝先からは、白いまりの様な花が咲き誇らせていた。

「やはりその者の心を生き写しているのでしょうね。
これ程綺麗な魂をしていたら当然というべきでしょうが。」
『…私が?』
「ええ、私が。」
『これ、だしたの?』
「おや、お気づきではないと?」

そう聞く大神官にメルは首を傾げた。
地面に咲いている青や赤や黄色の花々に指を指していたのだ。
うんと頷くメルに、おやおやと答える大神官。

「私達の気を渡したとしても貴方が気を使って創り出したので、
間違いなく貴方の力ですよ?エフェメラルさん。」
『はわ……すっごくきれい……!!!!あお〜〜い!!!』
「本当に綺麗な処ですねぇ〜〜!」
『すご…これひょっとして、コデマリ???』
「いや、違うよ?これはコデマリじゃあない。」

その声は!!!

『えーーーりん!!!!』
「おかえり、エフェメラル…!!」

そう抱きしめてくれたエーリンことヴァイスに、
メルはキュウキュウと喉を鳴らせて喜ぶ。

嬉しそうに鳴くメルに、本当に良かったと、
今生きている彼女を抱きしめられる喜びを噛み締めていた。

「貴方がギリギリで魂をそっちに吹っ飛ばしたのが良かった。
アレに魂まで触れたらもう貴方が
此処に戻ることなんて叶わなかっただろうからね。」
『ひえっっっっやっぱりか。
いや〜嫌な予感がぱって出てきてさ。』
「にしてもどうしてあの子が触れてきたの?
君が外に出たとかしか考え付かなかったんだけど。」
『いや普通に中に手入れて来たよ。』
「入れてきた?!?!?!?嘘!!!!!」

ほんともほんとだ。嘘など言っていない。

「恐らく華を二つも持った上の種を
魂ごと取り込んでいたことからだろうな。
流石に悪い思考を持っていても反転させて
良い様に誤魔化して生きていたんだろう。」
「まさにゴキブリ並みのしぶとさだな。」
『ごき…いやいや、そんな可哀想な。』
「可哀想も何もあるか。あんなやつなど
糸引きながら歩く腐敗物と変わらないんだぞ。」

そんな可哀想なことを言わなくてもいいじゃないの…。
もう死んでいるというのに、
何を今更怒っているんだこの人達は。

「寧ろお前の潔さには呆れてものが言えん。
どれ程自分を見捨てれば気が済むんだか…
いやそうしないと此処に辿り着けれていない上に、
こんな集大成みたいなことしでかさない訳もないだろうが。」

その点でいけば、まぁコレが一番の最善策と言った方がいいんだろうが。
なんとも微妙な感じで幕を下ろすもんだなと彼はため息を吐いた。

「まぁこんな樹木を育てられる時点で理にも華樹神にも相応しいというもんだなぁ。」
「と、いう訳で〜メル?いくわよ〜〜〜?」
『へ?あっ、え?待って?!どこに!?!?!?』

理の中央へ。

そう言って連れ出された場所はというとだな。




『うわ…綺麗。』

華樹の内部に入ってきています。
現在メルはサワアらを放置して中に入ってます。


「さて、単刀直入に言おう。メル」
『ん?なんですか?そんな改まって。』
「今回の件でお前の力が半分以下に落ちてしまった。」
「正確には気を瞬時に溜めて発動する時間がより増えたってところかな。」

…ん????

『どういうことですか?
私がある程度聞いた内容だと
殆ど気が生成出来ない上に
溜めれも中々出来ないくらいで
とどまってるということでしたが。』
「大体それであってる。
そこで気を束ねて保管できるものを手渡そうと思ってな。」

そう言ってトベラが渡してくれたのは一つのポタラだ。
自分が付けているのと全く同じものを手渡して来てくれた。

『これは?』
「本格的な華樹神が付けるものだ。受取れ。」
『ありがとうございます。』

付け直してみれば、ふわりと身体が軽くなった感じがする。

「それを両方付けて入れば毒状態等の身体異常は
基本的に受け付けないし入れたとしても常時浄化している。
それだけでなく身体強化から特定の敵からの防御バリアも搭載している。」
『最早物理的なお守りやないですか。』
「片側どちらかを二回タッチしてみろ。」
『え?こうですか?っわ!!』

目の前に出てきた気にびっくりして後ろに下がってしまった。
その出てきた青い気についてトベラが続けて説明をする。

「それが今お前自身が現在作り出せる限界だ。ちなみに天使らで言う千万分の一程度の量だ。
人間に換算したら割とスーパーマン程度になるが、お前の知るサイヤ人という人種からしたら弱過ぎるレベルだな。それでも数十分の一程度だ。」
『えっちっっさ。すっっっっくな。』
「一日それの三倍程度しか気が生成できない。というわけで流石に華樹神がそうだと問題でしかないのでポタラで補強することになった。異論は認めん。」
『あっはい。』

二回タッチすれば自分が持てる全体量を把握出来て
そのまま華にして保管できるらしい。
これはあくまでも自分の気なので、もう片方を二回タッチすれば
他人から受け取った気の量を確認できると聞いて早速出したらばだ。

『うげっ!!!!』
「…まぁ、これくらいは妥当だろうね。」
「ある程度入れすぎな気がしなくもないけど…ひいふうみぃ、いやおおいな????」
「お前天使らに愛されてるなぁ。予想以上に。」
『えっなんでわかるんですかそういうこと。』
「気の色でね。一人でなくて複数人から貰えている時点で愛されてるんだよ。」

いやこれを殺されたら僕らも半泣きどころか軽く寝込んでたね。
だな。こんな貰えるなら願ったり叶ったりだしな。

「その状態のまま中央に合わせてごらん?」
『こう、ですか?』
「そうそう。色を混ぜる様にしてみて?」

そう言われて少しずつ絵の具で混ぜ合わせる様に
マーブル状になっていく形が
徐々に青い綺麗な色を保たせてくる。

完全に青い色に変化すれば完成らしい。

「その状態になれば君の気に変換されたも同然という状態だよ。
これは暫くの間やっておいてごらん。自然と可視化しなくても
出来るようになってくるからね。」
『…すご。こんなこと出来る様になるの私。』
「ならないと今現在お前は死ぬんだよ。」
『うげ』
「本来は華を取られるか多量出血死しかなかったんだけどね。
君の場合は気を吸い取られる仕組みな上にストックが取れない状態。」
「加えて生成速度も遅すぎて話しにならない。そこでそのポタラだ。」

そいつがあれば基本的に気は生成してくれる上にストックも出来る。
気をある程度保てるようになれば華にしてポタラの内部にストックを置いておくのもいい。

「通常の願いが叶う華と違ってこっちの華は華でも赤い木の実だ。
これ一粒で其処ら辺暫く飛び回れる程の気を凝縮している。」
『このつくり方も教えて貰えるんですか?』
「いやこれ自体は気の上限を設定しているから常時作られていくはずだ。
定期的にポタラを触って欲しい。両方同時に四回触るとポタラから出てくる。」

試しにしてみろと言われ、両方の耳に飾られているポタラを四回触ると
ぼろぼろと音を立てて落ちていく木の実にメルは目を丸めた。

「瓶はコレに入れて保管しておいで。」
『これは?』
「特注の瓶だよ。コルクも瓶のガラスも君の宇宙にある材質で創り出しているけど
もしも増やしたいなら基本的に創造よりも手作りで作って保管をお願いしたいかな。」
『どうしてです?』
「気を練った上での瓶だからね。工程途中に必要な状態があるんだ。
コレがソレのレシピだから、一応大神官に目を通させた後
君の知る子達にも見せてあげときな。」

恐らく困るだろうが、仕方がないと言って連れてってくれるだろうし。
そういう彼に首を傾げつつも礼を言って資料を受取る。
いや、割と分厚いなこれ…。

「あとこっちも。」
『本ですか?』
「君が貰っていた本を改良したものだよ。容量も増やしているし、目次付きで開ける様にも設定している。」

ノックをしたらその分内容も変化していく仕様も変えていないからね。
わあ〜〜〜〜〜

「あとはこれか。」
『杖、ですか?』
「華樹神は基本的に杖を持たないけどね。緊急用で持たせているんだよ。」

君の場合は青く光るようだけどね。
そう言う彼から受け取る杖の先は球体になっており、その部分が青く光り輝いている。
その周りを淡い蔦が一周回って囲んでおり、青い宝玉の下は若々しい葉と共に
下にいけばいくほど古い枝のこげ茶色に変化している。

「葉の所には力を使えば各々の華が咲き誇ります。
貴方の場合は八重型のトサシモツケという品種です。」
『とさしもつけ????』
「最早貴方の場合は八重コデマリや八重雪柳寄りですが。
一応品種的にはトサシモツケという品種です。
分からなければご自身でお調べを。」

きっとその意味に杖も反応してくれることでしょうし。
そう言われてかたりと音を立てて取った杖をまじまじと見た。
未だ反応しないが、きっとこれから長い付き合いになることだろう。

杖の収納の仕方は天使らと同じだと言われて後で聞くようにと言われました。

「そんでもってこれ。」
『あっ!!私の花冠!!!』
「君が肉体から魂を分離した時に枯れ果ててたようだよ。
何か壊れたらいけないからと預かってたんだ。
まぁ君が目覚めたと同時に生き返ったんだけどね。」
『嗚呼そうなんですね…それそれは、ん?待って下さい。』
「なんだい?」
『これもなんか役割もってます????』
「おお流石に気付いたか。」

いや此処まできて何もないのが逆に怖いわ。

「一応華樹神の役割をもたらすものだよ。
それ被る人が違うと華樹神の樹木も変化するから気を付けてね。」
『さらっと一番大事なこといいませんでした?!?!?!?』
「っはははは!!まぁ冠は燃やそうが引き千切ろうが
鎮めようが置いて行こうが何しようが、径数十キロくらい離れたら
ちゃんとかぶり直せる仕組みになってるから安心しててよ!!!」
『もっと凄いこと言ってるの分かっています?!?!?!?!』

叫ぶメルに、ケラケラとトベラが笑う。

「ちなみに杖の役割は基本的に天使らと似たようなものだ。
通信も出来るし各惑星の場所も把握出来るよ。」
『えっ最早スマホじゃないですかやだなあ。』
「すまほ?」
『ああ通信機器ですよ。杖のこんな小さな板バージョンだと思って頂ければ。』

前に持っていたんだがな。アレどこいったんだろう。
ああいうやつってズボンの中に常時入れていないと無くすんだよ。
杖の方がまだ視界に入りやすい上に常に持ってる感じするから
こっちの方がいいのかもしれないな。

「へぇ、そんな機械があったのか。勉強になるねえ。」
『他にはどんな機能がついているんですか?』
「此方側の通信も搭載しているよ。
気を練って威力を出す役割ではないけど、やろうと思えば出来るから。」
『はえーーー本当になんでもありですね、これ。』
「いやいや。瞬間移動系は基本的に出来ないし、蘇生は勿論不可能なのは痛い処だと思うよ?」
『あっ華樹神駄目なんですか。』

そう移動しながら話を聞くメルに、うんとトベラが答える。

「昔は可能だったんだけどね。余りにも強力だったから外したんだよ。」
『まぁ蘇生も出来て願いも叶えてって二重になってますしねぇ〜〜。』
「でしょう?そのくせ昔は数も無限だったんだよ。」

まぁ今でも無限だけどね。
え゛

『そうなんですか???』
「ああ。やろうと思えば君なら何度でも願いを叶えることだって可能だよ?
まぁソレを彼らがさせてくれるとは思っちゃいないが。」
『かれら?あっ!!!』
「おかえりなさい。もう終わったんですか?」

華樹の内部から外に出た所で足を止めたトベラらにメルも足を止めて先を見た。
其処には大勢の人込みの中にポツンと一人立っていた者から声がかかった。

それを見つけて、メルはそのまま走り出す。
杖を片手に。手荷物は軽いバックを貰ってその中に詰め込んで。
ジャンプして声を掛けてくれた彼の名を呼んで
抱き着いてきたことに驚きつつもちゃんと受け止めてやる。

『さ〜〜〜〜わああああああああああ!!!!!』
「っとっとと!!!危ないじゃないですか!!何してるんです!!」
『っきゃはははは!!!!』
「色々頂いたんですか?」
「正確には返したに近いけどね。」
「トベラ様!!」
「やぁ皆の者。集まってくれているようだね。」
『ティーナ様達やミラ達も、どうして此処に?』
「招集を貰ってね。色々大変な目にあってたのきいたよーー???」
『うぐ』

唸るメルに周りがクスクスと笑う。
どうやら彼女らには知られている事実らしい。

サワア曰くまだ殆ど説明などしていないと言っていたが、
ティーナが軽くスマホを見せてくれたのでそれを見てぶっと吹き出してしまった。
本当にふざけてる。

『いやっ、まっ、ひっ、まっ、まってねぇ!!!』
「っくくく、な?面白いだろ?」
『面白いどころか私のこと最早アニメキャラか
何かだと勘違いしてるでしょそれ!!』

そう笑いながら背中を叩くメルに、
いてぇじゃねぇかと怒るティーナだが、その目も顔も優しい笑顔で。


キラキラと目を輝かせて、声を揃えてくれるのだ。
その声に、合言葉の様な答えで返してやったら、
皆は嬉しそうに笑ってくれたのだ。



おかえり、エフェメラル。


ただいま、エテルネル。