これは笑いすぎの涙なんだよ
前回のあらすじ
白い部屋でコルン様に抱き着いて半分ギャン泣きした。
以上。
「ではご指導のほどよろしくお願いします。」
『ぐずっ…ん゛』
「…泣いてままでも構いませんが、手元を狂わせて斬らないで下さいね?」
『ちがうの〜〜!こういう食べ物なんだよ!!!』
泣きたくないんだこっちは!!!
そうメルは玉ねぎの茶色い皮を向いて
水に流しておいたのを切り刻んでいた。
嗚呼電子レンジでチンとかしたらいいんだろうが、
電子レンジの想像が思いつかなくて、放置したのが悪かった。
『玉ねぎの涙の流れない方法って
鼻にテッシュ詰め込むだけじゃ無理なんだよお。』
「ならその下品な状態は外せばいいのでは。」
『でもむり〜〜〜』
そう鼻にテッシュをぶち込んでも
涙をぼろぼろ流しつつメルは玉ねぎ刻みまくる。
嗚呼〜この独特な匂いがテッシュの隙間から来るからな。
あと先程泣いていたのもあって
鼻水が出てくるのもあってその予防策としてテッシュが手放せないのだ。
何故あれ程まで泣いてしまった私。許さんぞ。
『こうやって縦に分断した後横に切っていくの。
本当は根元を放置して切っていくと楽だし、
本当は涙が出ない仕組みとかも分かっていたんだけど』
「何故しないんですか。」
『やり方忘れたんだも〜〜〜ん!!!』
えーん、結局原始的なことして手を動かせば終わるから!
だとしても痛いよお〜〜〜!!!やっぱり玉ねぎ嫌い!!!
一応食べると美味しいんだけどね!こういう作業は好きになれない!!
メルは全力で切り終えると手を洗ってしまう。
ひき肉たちも『っん゛〜せ゛い゛っ!!!』と野太い声を出してボウルにぶち込んだ。
その勢いにおやめなさいとコルンが引き気味に言ってくれる。ありがとう。すき。
『玉ねぎをフライパンでこんがり炒めます。』
「ほぉ?」
『狐色になったらボウルにぶち込みます。』
「成程、ちなみにコレを貴方幾つの時に?」
『えっと……さ、3歳?』
「さっ!?!?!?赤子ではないですか!!!!」
人間でいう処の年齢を彼は知っているのでその意外さに大きな声を上げて驚いてくれた。
いやー普通そうだよねわかる。マジでわかる。
『包丁自体は無理言って5歳から。マジのは6歳前後で使わせて貰えて
7歳になったらもう殆どの機械は使える様にさせて貰えてたよ。
教えて貰えたのは主に母方の祖母だけどね。基本家では自分で作れだったし。』
「そんな酷い生活を送られていたのですか…。」
普通は親が子に食べ物を与えるのではと言うコルンに
そんなの普通の生活を送れるならというものだとメルは答える。
曲がりなりにも華樹神の試練であるもの。
これくらいは覚悟しないとって最初は踏ん張っていたものだ。
そう、一度目に見つけた、その時間までは。
だからこれは、まだ、まだ幸せな時間の、存在。
あの時間を過ぎてから、この食べ物が酷く醜く思えて
一時期吐き気まで出てくるとは思っても居なかったが。
嗚呼、一応安心して欲しい。
今は乗り越えて一周回って好きになっているのだから。
『そうだねぇ〜初めて触れさせて貰えたのは3歳だからね。
初めてきちんと自分で作れたのはコレが初めてだったからね。』
案外レシピなんて身体が知っているものだ。流石私。
きつね色になった食べ物をぶち込んで終わった後、
フライパンを戻して油を再度引き直し、更に手を念入りに洗う。
『コルン様、サランラップを。』
「確か此方でしたよね。」
『ええ。』
一応ラップは完備。タオルもある。よし。
『コルン様』
「なんでしょう」
『手を洗って下さい。これから非常に大事な儀式を行います。』
「はぁ…。」
そう言われて渋々手を念入りに洗ってしまい、出来ましたと答える。
片方のボウルに入れていた量の大体半分ほどを入れてしまい
コトリとボウルを置いた音を立てると同時にメルが『よし』と意気込む声を出した。
『じゃあ混ぜましょうか!』
「混ぜるのは構いませんが、何もありませんが」
『こうやるんですよ〜〜〜!』
「ばっちょ、メル様!?!??」
『あはは〜〜〜あっつ!うっわあっっつ!!!』
「何とち狂ったことをしてるんですか!おやめなさい!!」
『でもこれやり方あってるよ?』
「は?!?!?!これがですか?!?!!?」
そう驚くのも無理はない。
素手で熱していた玉ねぎと冷えた肉を混ぜるなんて
気が触れていると思って間違いない。
私も最初見た時ぎょっとしたんだもの。
あれは忘れられない。いやだからこそこうやっていれるのだ。
いやおばあちゃんありがとう。貴方のしてくれたことは間違いないよ。
『ああ忘れてた!卵とパン粉、後は砂糖と塩もぶち込んで〜!!』
「ちょちょちょ、そんな適当に入れないで下さい!!」
『いいじゃんいいじゃん!』
「よくありません!!!!」
嬉しそうに笑って手を振るメルに、怒鳴るコルン。
いや〜こうでないといけないよね!!!
『ほら手を使って混ぜる!!』
「ひっ!!!」
『うわ凄い声出たね。』
「……誰がさせたと言っているんですか。」
『きゃ〜〜〜僕っで〜す!僕僕〜〜!!!』
「待って下さいコレを素手で混ぜ続けろと???」
『そうだよ〜ぐにゅぐにゅして気持ち悪いでしょ?』
「もう少し他の食材はなかったんですか????」
これしたくないと言わんばかりにこっちを向くコルンに、
メルはニコニコと笑ってないねぇと答える。
まぁ正直な話、本当は一応あるにはあるが、
そっちのレシピが曖昧なのと、
単純に忘れて居るだけなのもあったのだ。
なので必然的にこうなる。
『きゃ〜〜〜懐かしい〜〜〜〜!!!
ハンバーグのタネとか何年ぶりだろ!
下手したら数億年ぶりとかの長さになる!?
なっちゃう!?なっちゃうよね〜〜〜!!!』
「これ本当に食べれるのですか…?
既に幸先不安で仕方がないのですが…」
『ある程度混ぜれたら此処からが本番です。』
「お待ちなさいこれは序盤だったと???」
そうです。
『空気をいかに抜くかが大事になるんです。
こうやって手くらいの取って、ぺ〜ちぺちぺちって。』
「こ、こうで、っ」
『ふふ、最初は見誤って落としちゃったりするんですよ?
でも不思議と感覚掴んで遠くからでもできます。』
まぁ流石にもう一度作るなんてしたくないので確実に行くが。
メルは小さな手で掬ったタネをタンタンと音を立てて上に下にと落として形を整えていく。
少し大きめの楕円形になったところで真ん中にくぼみを入れ、銀色のトレーにおいてやる。
下にはラップを敷いて貰っているのですぐに取れる寸法である。流石私抜かりないね!!
『ほらやってみて?』
「…むう、結構難しいですね、この作業。」
『ふふふ、慣れたらちゃんと出来るよ?
あと自分の手の半分くらいでしてね?
その大きさで食う話になるから。』
「これを焼くのですか?」
『おお察しが良いですね。そうですよ?
この後焼くので余り大きすぎると焼くのが面倒になるんです。』
これくらいの大きさで。
結構小さいですね。
そうハンバーグの形を互いに見比べながら話をして作る。
今回は一つの綺麗なハンバーグではなく、
少し歪な形を含めた小さめのハンバーグにすることになった。
それが、私の作った最初で最後のハンバーグだったから。
懐かしさで思わず笑みが零れてしまう。
目が細くなり、その情景を想い出してしまった。
背後では嬉しそうに笑っている声が聞こえる。
コルンは振り返ってその姿を見ていることだろう。
黒い髪の毛の子供が、台の上から立って
祖母と一緒に仲良く作っている時間を。
優しい世界を時間を、今此処で見てくれていることだろうから。
「…楽しかったのですね。この作業が。」
『ええ。何よりも、どんな食べ物よりも。』
私はコレが好きでたまらなくなって。
そして同時に嫌いで嫌になった食べ物だったから。
だから愛情を注いで注いで注ぎまくってしまう。
出来たらフライパンに敷いた油が少し跳ねる程度にまで温度を上げ
そのままタネをおいてやる。ジュウジュウと音が出ている間に蓋をしてしまう。
タイマーをかけて、大体時間もあるから弱火で15分はやってしまおう。
多分30分いるが、様子見である。
『ではこの焼いている間に手を洗いまして〜』
「むぅ、案外のきませんね。」
『ふふ、こういう時は食洗剤系を手にやるととれるんですよ。』
「…それ、手荒れの原因になるとお聞きしていたはずなのですが。」
『そうですね〜〜!!!』
「そうですねじゃありませんよ!!もう少し他にってこれ!!!」
『っははははは!!!』
「笑い事では…って本当にのきますね。」
起こっていた顔が元に戻る。意外過ぎたのだろう。
まぁそこら辺の詳しい説明は省かせてもらうが、兎に角とれるのだ。
『ほらほら、本当に取れてる?嗚呼取れてる取れてる〜〜!!』
「…あの、エフェメラル様?」
『ん〜?どうしたの?おお、結構深い処迄
揉んでくれたんだな。間まで入ってんじゃん。』
「自分で洗えますが…その。」
『……あっ!!!!!』
「んんっ、すみません。」
意識させるつもりはなかったが、
異性の手をそんな触られるとこっちもその気になるのだ。
その気にさせたくないなら是非とも距離を取って貰いたい。
ソレが分かったのかごめんと言ってそそくさと手を洗ってしまう。
「それで次は?」
『え?あ、ああ…コルン様は濃い食べ物を好みます?それとも薄いさっぱり系?』
「別にどちらでも構いませんが、貴方はどちらをお食べになられて?」
『ん〜小さい頃はすりおろし系の大根は嫌いだったから、デミグラス系かなあ?』
「ではそちらの方を。材料は此方ですか?」
『ああそっちは使わないかな!それが大根。』
すりおろして他の液体と共に食べるんだよ。
ほぉ?食べ方も変わっているのですね。
『私がしてるのはソースとケチャップを確か1:2か1:3の勢いだったはず。』
「それを手で混ぜるので?」
『っふふふ、流石にしないよ。こっちはスプーンで混ぜるの。
じゃあどうしてアレは素手で混ぜたでしょうか!』
「普通にそう教えて貰ったからではないのですか?」
『それは半分正解かなあ。』
一応そう教えて貰ったからしたものではある。
だが本題はそっちではないのだ。
『ハンバーグのタネはね、色んな材料がある。
それを混ぜると同時に最終的に形にする時手を使うでしょう?
まぁ色んな意見があるけど、
混ぜる時に指の方が均等に混ざりやすいからっていうことが一番かな。』
一応他の機械で出来なくはないが、
どうしても素材を傷つけかねないことが多いのだ。
指なら傷つけずに上手く均等に混ぜれることが出来る。
それだけでなく手に材料がしみ込んでしまっているので
タネを取って丸める時も割と楽に出来るのだ。
まぁタネの水分が足りなさ過ぎるとくっついてくるので、
その都度で水を付けたりと対応は変えてしまわないといけないが。
基本的にはそうやって形を保たせ、綺麗に置いておく。
『本当は餃子とか、チャーハンとかケーキとかも作ったことあるんだよねぇ。』
「結構お作りになられていたんですね。お兄様達とは?」
『いや一度もないね。私が此処でよく食べていたのは果実系と和食だし。』
洋食でも中華系は一度もないかもしれない。
ラーメンとか食べていないしな。
『帰ったらご馳走してあげようか?』
「それはまた嬉しい誘いですが、
また今度という楽しみにしておきましょう。
コレを出たらまず貴方の状態を
確認しておかねばなりませんのでね。」
『ありゃりゃ、流石に駄目か。』
「っくくく、話を逸らしたってそうはいきませんよ?」
『うう…あ、そうそう、それでね?』
そうメルは嬉しそうにハンバーグの説明をしていく。
タレはお好みと言って三種類作ってしまっているが、
絶対全部使いきれない気がする。
それもまた一興ということならば、そう言う事にしておこう。
ハンバーグの話をしていると、タイマーが鳴り響く。
予想以上に綺麗に出来ていたらしく、もう大丈夫だと言うので
少し火を強めにしてこんがり焼いていく。
少し黒くなってしまうくらいが丁度良いと言うのだ。
人によるけどと言うメルに、今度作ってみようかと少し考えて止めた。
流石に途中のやることが面倒過ぎるのだ。
もし欲しいと言われた時が、少し気が引ける内容でもある。
『盛り付けたら完成〜〜〜!!!』
きゃ〜〜!可愛い〜〜〜!!!
そう嬉しそうに笑って飛び跳ねるメル。
何時の間に炊いたのか、炊飯器から白いご飯と
ご丁寧にオレンジジュースまで添えられていた。
完璧に子供の食べるものである。
真ん前に座って席に着く。
頂きますと声を出してしまえば
目の前に作られた食べ物を食べるしかない。
ナプキンやフォークなどを出しているが、
メルは箸を使ってハンバーグを切って食べていく。
「…箸を使った方が良いのですか?」
『ん?…嗚呼いやどっちでもいいですよ。
私はお箸の方がやりやすいので。』
おいひ〜〜と声を上げて頬に手を置いて動くメルに
前に見ていた仕草を想い出す。
「テーブルマナーはおばあ様から教わったのですね?」
『……おや、流石にバレちゃったか。そうだよ。
一通りはこっちのおばあちゃんに教えて貰ったんだ。』
お母さんは見てくれなかったからね。
そうですか。
『このハンバーグはね、おばあちゃんが作ってくれたもので
私も作って見たくて滅茶苦茶反対押し切って作ったの。』
「ほぉ?それはそれは、欲のない貴方がするなんて
一体何を企んでいたのですか?」
『むぅ人聞きの悪いことを。…おばあちゃんはお母さんのお母さん。
お母さんが食べた物を私も食べたかったから作ったんだよ。
お母さんにも食べて貰いたくて頑張って作ったんだよ?』
「そうでしたか…」
『ま、食べて貰えなかったんだけどね。』
「……は?」
口に入れようとしたハンバーグを止めて声が出た。
そのまま置いて彼女の話を聞いた。
いや、そこまでするのかという衝撃的な事実に耳を疑ったのだ。
『その日はお母さん食べたくなかったって。
後から知ったけど子供の手垢がついたものなんて
食えたものじゃないって。』
「…そんなことを」
『頑張って作っても、私だから駄目だったんだよ。』
ニコリと微笑んで、ただ下にある食べ物を規則正しく食べていく。
綺麗に食べるその振る舞いは、きっと並々ならぬ努力のたまもので。
それを蔑ろにして、放置までしたとは、想えないくらいに綺麗で。
『私が子供だったから駄目だった。だから大人になって振る舞おうとした。
でも母は其処に存在しない。だって母は既に私を捨てていたから。
おかしいよねえ、最初から育てるつもりなんてなかったのに。』
一体何を期待していたのだろうか?この餓鬼は。
そう言うメルの目が酷く黒く見える。
どす黒いその目に背筋がゾクリと嫌な予感を察する。
ぱちりと瞬きをすれば、そんな目なんてどこ吹く風。何処にも存在しないのだ。
一瞬幻を見せて来ていたのかと疑ったが、そんな芸当出来るわけがない。
ぐちゃりと先程タネを握った感覚が脳内に過る。
この子の心はそうやって握って残った小さな力。
潰した肉片は、この理に奪い攫われてしまったから。
だからそのままにしておいていいというのだろうか?
貴方は一体、何処までお人好しであれば気が済むのだ。
『食べれる様になれば怒られない。音を立てなければ気付かれない。
だからそうやって私は行きぬいて来たの。食事は機械的な作業。
人間のコミュニケーションでの一部分だから。』
「…そうではないと気付いても、それを続けたのですか。」
『そうだよ。味にもついちゃってる?』
「ええ。酷いくらいには。伝わってきますよ。」
彼女が生き続けた時間が一口一口で味を変えていく。
痛み哀しみ嘆きが入り混じっているのに、
愛情が深い処から包んできて感覚を狂わせてくる。
これは良いものだと、言い聞かされている気がしてならない。
これは狂う。明らか食べるものではないのに、食べていないとしょうがない。
気が付けば皿は空になっていて。意外だと目を少し丸めてしまった。
自分がこれ程まで食べれるとはというのもあるが
『ごちそうさま。』
今日もあの人は、コレを食べてなんてくれなかった。
そんな言葉をぼやいて箸をおいたメル。
それと同時に椅子に座ったままで机が消える。
呑み込むことに長けてしまった幼子が。
今目の前で下を向いて微笑んでいる。
一体何処を見ているなんて、野暮なものだ。
だって彼女の背後にその情景がみえているのだから。
幼子が母親であろう場所を行こうとして足を止めて立ち尽くしている。
白い人形を抱きかかえて立ち止まるのがまた痛々しい。
そっちに行けばいいのに行かない、いけないのだ。行けば怒られるから。
だからその場所から決して動かない。怒られることは悪いことだから。
悪いことならサワアが迎えに来てくれることはないだろうから。
それを分かっていたからこそ、メルは言う事を聞いたのだろう。
皮肉なものだ。叶えたい願いに殺されそうになるとは。
彼も思ってはいなかったことだろうし、そうなるなら撤廃しただろうに。
「…叶えたくないから貴方は距離を取るのですね。」
『え?』
「その母親と父親と。三人で食卓を囲んで笑うことが普通だと。」
『なにを言って』
「とぼけないで下さい。貴方の感情は今手に取る様に分かるのです。
…それは貴方も間違いではないでしょう?私の感情が分かるはず。」
契りを交わしたのだから。
そう言うコルンにメルの目が少し揺らぐ。
此方の感情を知っていて、違うと否定するのは
自分の感情に嘘を付けてはぐらかしたいから。
そうするのは自分を守りたいからで。
ただそれだけ、それだけなのだ。
サワアと二人で花冠を交換したかったように
あの母親ともその時間を共有したかったはずだ。
だから今満たされたら、その時間は戻らない。
まぁ今更戻したところで彼女も満足なんて出来やしないだろうが。
だってこれ程までに大きく膨らんでしまった感情を
一体どう処理し切れるというのだろうか?
「叶わない願いを持てて良かったですね。それでお兄様との願いは叶うことになる。」
『そう、だ、ね…うん。よかった。』
なんらよくない。なんならこっちの願いを叶えたいがために走ったも同然だったはずだ。
もう悪い子でいい。貴方が迎えに来てくれないならば。
ならこの時間を愛そう。この時間に生きてしまえばいい。
そうできない癖に、何故望むのだ憐れな幼子よ。
「二兎を追う者は一兎をも得ず。まさに貴方に相応しい言葉ですね。」
『…そうだね。それは私も思ってた。』
何もない。0に戻ってしまうもの。
それがエフェメラルという女性というものなのだ。
ポーンと音が鳴った。嗚呼最後の仕上げをしよう。