私を愛しているのでしょう?
前回のあらすじ
第2宇宙に遊びに来たと思ったらお泊りになりました!
「どうぞ、好きなだけお食べ下さい。」
『わあ〜〜〜!!豪華!!!』
「随分と豪勢にしたなあ?」
「まぁ幼馴染とはいえど客人ですし。少し腕を振るいましたので。」
『どうでも良いけど男料理って滅茶苦茶美味いの多いんだよね。
なんでだろう?量を作るからその分出汁もとりやすいのかなあ。』
「そうなんじゃないんですか?」
「さらっと椅子ではなく膝の上に座るのは何と言えばいいんじゃ…」
仕方がないでしょう。なんだかんだ言って彼女は華樹神でもあるのです。
「彼女は現在三期に入り、大神官様から印を貰ったとはいえども
天使は天使でも私達の天使とは少々管轄が違う場所の者ですよ?
彼女からしたらあの区域ですら下界の世界なんです。
天使である私に触れていないと息すら難しくなるというのに。」
『えっ息できなくなるの私。』
「おや、知られてませんでした?
まぁ外にこうやって出るのはある意味
今回が初めてでしょうからそれもそうですか。」
貴方の位置は天使であって天使ではありません。
ううん、なんとも面倒な言葉を話すのお?
「正確には原初代の天使と今世代の天使という違いです。
ちゃんと違いは幾つかあるんですよ?例えば輪の数、とかね。」
『私達の時代は基本的に輪は2つだったからね。』
「そうなのか!?」
『ええ、加えて付き人制ではなくて、
華樹神又は華樹神官になる者達をそう呼んでたんだよ。
付き人自体は本来居なかったはずなんだけどねぇ。』
一体何処から出てきたのか。
はたまたいたのかも余り覚えていないとメルは言う。
『破壊神を殺せば天使が自動的に機能停止するという様な事はないが、
花冠を付けた天使であれば花冠を燃やせば機能停止する様になってるよ。』
「おや、それは知りませんでした。」
『草冠だと燃やそうが大丈夫だけどね。と言っても燃やし方にも寄るけど。』
「ただ燃やすだけではならんのか。」
『特殊な炎が必要になるのと、破壊の力である元の奴が必要になる。』
「やつ?」
『まぁ今それやられると割と死ぬので割愛します。』
この話は外で話すどころの話ではないからね。
『後は戦闘自体可能ってところか。』
「本当か」
『天使ではあるけど神様の枠組みなんだよ。
天の使いだって人間達が煩かったから天使って形になっただけでね。
元々翼も生やした状態で、白い衣服を身に着けていたのが正装だったし。』
こんな形にまで変わっているとは思っていなかったが。
『とは言っても杖を使っての戦闘行為のみ許されているし、
割とシビアだったりするのでほぼほぼ戦闘不可能と言った方が良いけどね。
物理的な殺人行為は厳禁ご法度で消滅対象だったからなあ。』
「割と昔から苦労しておったんじゃな。その姿も昔のままか?」
『実はそうなんですよ。』
「…薄々気付いてはいましたが、やはりあの時の貴方だったんですね。」
よく原初代まで戻せましたね。
それも貴方のお父さんが禁忌を使ったからね。
「禁忌?」
『入れ替えの術。原初代の状態である私が、
今現在人間になっている筈なんだよね。』
「いい!?!?!」
『…まぁ今思えばなんで人間になったり
してたんだろうって不思議だったりしてたんだが、
今漸く此処で納得する行為が行われていたと思えば
まぁ納得できるものだよ。』
「過去と未来の肉体を交換とは禁忌も禁忌ですね。」
『多分こっぴどく叱られてはいると思うよ?
まぁあの状態だった私を助けてくれたと思えば
こっちからは何も言えないが。』
助けて貰えている身なのでね。
『あの後から一度天使に戻ったけど
ほぼほぼ仮の姿みたいな形だったから
多分このままの状態で生き続ける羽目になるんだろうなあ。』
「そんな嫌そうにいうものではないでしょうよ。」
『だって割と恋しいんだよっておおっと
余り言うと大神官様の反感買ってしまう。』
「まぁ触らぬ神に祟りなしと言いますからね。」
『神様だけにね。天使だけど。』
「この時点で反感買っておりそうじゃがな……。」
『ひえっ怖いこと言わないでよヘレスうう。』
うう、本当に見てないよね。こっち?あっち?そっち?どっち?
これ、そう言うと本当に見られるぞ?
『別にすっぴーのこと嫌うとかさげじむとかしないのに。』
「それをいうなら下げずむでは?
あと貴方がそう言うことしないと
大神官様も分かっておられるでしょうし。」
『えっそうなの?』
「寧ろそれ程澄んだ気をお持ちで
そんな感情を持っていたら人間不信ならぬ
神様不信になりそうですよ。」
「わらわですら結構きついからなあ。」
「ヘレス様!」
「おっと」
『え゛』
「嗚呼そう距離をとるでない…」
「はぁ…だからあれ程口には気を付けて下さいと言ったのに。」
ため息を吐いてメルの頭を避ける様に
項垂れるサワアが必然的に身体へもたれ掛かってくる。
首を横に振ってメルはサワアとヘレスを見ては
口に入れたものを喉の奥に押し込んでやった。
『もう少し抑えた方が良い?』
「寧ろそれ以上抑えたら貴方の方がきつくなるでしょう?
こればかりは此方の修行不足なので、何なら慣らす為にも
暫く一緒に居て下さると此方も非常に助かります。」
「おい」
「おや、貴方はこの子にすら弱音を吐いてしまわれるというのですか?
それ程の技量で私を取ろうと思っていたとは、浅はかな子ですねえ?」
「…一々勘に触る奴よのお???よかろう、
そう言うならお主が嫌がる程に愛で倒してやるわ。」
「お待ち下さい、何をするつもりですか。」
「お主が売ったもんでなあ?拒否権はないぞ?ほれメルおいで?」
『あう、でも、今は、いや…かも。』
そう言う彼女にヘレスの顔が豹変してサワアがぶっと吹き出す様に笑いだした。
そんな顔をしたことなど見たことが無かったというのもある。
笑うでないというヘレスに対して手を前に出して
何とか堪えだした処でメルが更に爆弾発言をする。
『だって後で沢山ヘレスと一緒に居れるでしょ?
お風呂とかねんねする時とか、サワア居ないなら
今のうちにぎゅっってしてもらってた方が
嬉しいかなって…おもって、たんだけど……だめ、かな?』
「…お主ずっとコレに付いておったのか?いや良く耐えておったな?」
「そうでしょう?前までずっと耐えていた私を本当に讃えて下さい。」
「流石に讃えそうになったわ。」
「讃えないんですか。」
この流れどう考えても讃える話でしょう。
そんなものするわけなかろう。
「まぁ今のうちに堪能しておくがいい。風呂も二人っきりに」
「一応言っておきますが、今回私と入りますからね?」
「『え゛』」
「ヘレス様もですが、貴方先程からの状況をお忘れですか。
常時とはいかずとも恐らくもって5分程度しかその地にいれませんよ?」
『そんな訳!!!』
そう言ってメルは食事をとったというのもあって
席を立ちサワアから距離を取る。
華を出して空を歩けるは歩けるが、徐々に肩の力といい、
身体全身の力が抜けていくのを感じ取る。
考えることもおぼつかない。
なにしてたんだっけ?
えっと、たしか此処に来て、なんで来てたんだっけ?
『…あ、れ?なん、で。』
「はぁ…思った通りですか、やはり数分程度しか持ちませんね。」
かたりと席から立ってメルがへたりと座り込んだところに
歩いて来たサワアがメルの身体を抱き上げてしまう。
すると身体の力が徐々に戻って来て、
思考も徐々にではあるが、クリアになっていく。
『…あれ?サワア?どうして』
「ヘレス様、これで分かったでしょう?
こういう状態で風呂に貴方と二人で居れるべきではないことを。」
「…むう。」
「そうむくれないで下さい。
風呂等向こうで幾らでも入れるではないですか。」
「外に出てこそリフレッシュというものもあるというのに。」
「その件に関しましては…まぁ、仕方がないでしょう。」
今度検討しておきますよ。
検討?
「それは来てのお楽しみということで。
ヘレス様は先に入られますか?」
「流石に客人の前には無礼じゃろう。良いから入れてこい。」
「ではお先に。」
『あれえ?何でこうなる???』
「おや、堂々と二人きりで風呂に入れるという
口実が出来て嫌だというのですか?」
『いや別に嫌という訳では』
「では参りましょうか。」
『なんか嬉しそうだな????』
そうじとりと睨むメルに、
そりゃあそうでしょう?とサワアが答える。
「貴方が私の為にそんな姿で来てくれて、
その服を私が脱がせてやれるというのですから。」
『うう……えっち。』
「えっ…貴方の方がえっちというものですよ。全くもう。」
なんてこと言わせるんですか。
だって。
そう言って風呂場であろう部屋の中に入っていく。
ギリシャ系の感じを思わせてくるくらいの
異質な処に小さなバスタブが恋しくなってきた。
唐突なホームシックである。
サクサクと衣服を脱がせるのが凄く手際よくて
コレ着たことあるんかって思ってしまった。
「それにしても良く大神官様も許可を出しましたね。」
『え?なんで?』
「気を大量放出していた貴方の状態を私達の宇宙ですら
感知出来る者も少なからずいるはずですし、
貴方を狙っている輩など五万といるというのに。」
『え゛いや〜〜そんなまっさかあ〜〜!!』
「一応言っておきますが、
気を吸い取って自在に変化出来る種族も居るんですよ?
貴方に偽装するだなんて我々が騙される訳もありませんが。」
その前に貴方が消えた時点で全神々が捜索に当たりますし。
ひえ。恐ろしいこと言わないで。
『私そんな家出女子しないよ…』
「どうだか。昔も似たようなことをしていたくせに。」
『似たような?そんなことしたかな…?』
「…外しているならいいか。」
『サワア?何か言った?』
「いいえなにも。とにかく私やヘレス様でも気が違うと
察知したらすぐに杖を出して連絡するようにして下さいね。」
『はぁい。』
髪を洗ってくれている間に身体を洗う。
ばしゃーとお湯を上から被って横にぶるぶる軽く振るってしまう。
身体は自分のが終わったらサワアの分まで洗っている間、
同じことを考えていたのか自分の髪の毛も洗っていた。
『っふふふ、似たようなことしてる〜!』
「そうですね。本来天使は風呂など入らなくていいのですがね。」
『うちらの時とえらい違いだなあ。』
「おや、その時から入られていたのですか?」
『中身が中身だったもんでね。
天使と言えども華樹神らの候補者だったんだから、
生きとし生ける者でなければいけなかったんだよ。』
「成程、いずれにせよ人間の形は保たせたまま
神の上位互換へと無理矢理昇格させられていたんですねえ。」
『そう思えば割ときつかったな…。
肉体よりも精神的な修行がえげつなかった。』
「修行?何していたんですか。」
『廻廊もどきの奴はしてた。
まぁ私その時から早い子だったなあ。』
今思えばその当時から結構ハイスピードだった気はする。
良い子良い子してもらっていて、余り詳しいのは思い出せないが。
『それでも毎日とはいかなかったけどね。
完全な人間ではなかったし。』
「天使と人間の狭間ということですか?」
『どっちかっていうと神と人間の狭間、かな?
天使はあくまでも役割的な名称だけだったし。』
「まぁ翼が在ることで天使と良く行った者ですよねえ。」
『悪魔は風呂とか入ってたの?』
「あの時ですか?当時はそんなものに
ありつける方が稀でしたからね。
基本的に入らなかったですが、
血に塗れた時だけ流してたくらいですね。」
悪魔も今のサワアら天使と余りそう変わらないらしく、
生きる人間みたいな形はある程度保つものの、中身はほぼ空らしい。
その為風呂に入らなくても食べ物を食べなくてもさほど問題ない。
此処まで完全に必要ないとまではいかないが、
必須と言うほどではなかったというべきだろう。
いやはや、それにしても此処まで来てしまうとは。
『よくよく考えたら私達のこの状態ってもう奇跡だよね。』
「奇跡を凌駕した何かにも感じますがねぇ。」
『ふふ、まさかまたエテルネルと一緒に
こうやってお話出来るとは思わなかったもん。』
「それは此方のセリフですよ。
まさか貴方に、それも似たような天使の位置で
お会い出来るとは思いませんでした。」
『ほんと不思議だよねぇ〜〜天使だったり人間だったり間だったり。』
「人間の方が良いですか?」
そりゃあねぇとメルはそう言って風呂場の中を少し歩こうとする。
そんなことはサワアが許しはしないので腰元をぐっと抑えられてしまうが。
『人間の方が、華樹神としては、ね?』
「…力の作用という意味ですか。」
『そんなところ。…まぁ天使としての役割も
きちんと果たせていないから、
いずれにせよこうなるべきなんだろうが。』
「役割?」
『ルトラールが何故天使であり華樹神であったか。』
「…まさか、本来の位置はその場所だと?」
そう。誰が仕組んでいるかは知らないが、誰かはこう考えている筈だ。
『私が本来の華樹神である位置に降り立ち、
理に成りあがるその時を待っている。』
「…その瞬間成り代われる者が、貴方を陥れた張本人だと?」
『まぁ此処まで来てあの人だった〜だなんて
ちょ〜っと出来過ぎているかなあって。』
「それなら大神官様達に相談とかしなかったのですか?」
『其処が元凶だったら元も子もないでしょう?』
「貴方まだ疑っているんですか?」
『そういう訳ではないけどね。…これは暫く外れないもんだよ。』
そうやって生き続けて来てしまったが故、なのだ。
『色々やり残したこと沢山あるから、回収も凄い面倒になってくるくらいだし。』
「回収?」
『女子会とか?』
「おや、する気になったのですか?」
『する気て、何誰かから催促でも貰ったんかお前は。』
「それこそうちの破壊神様がね。」
嗚呼。
『まぁ今夜は程々にしますよ。程々に。』
「そうして頂けると助かります。
一応念のため私も居ますが、万が一と言う事もありますので。」
『流石にヘレスと一緒に寝るとか言わないよね?』
「別に寝て良いなら構いませんが、彼女が嫌がるでしょう?」
まぁ恋敵と一緒に寝るのもなあ。
…そっちではないはずなんですがねえ。
あえ?なんで?
「さて、流石に上がりましょう?
のぼせてしまってはヘレス様に怒鳴られてしまいます。」
『そうだねぇ〜〜〜。』
そう言って私はサワアの手を取って風呂場を後にした。
++++++++++
「うむ。可愛らしいのお、流石メルじゃ。」
『何が流石なのだろうか。普通にパジャマ着ただけなのに。』
「ぱじゃまとはなんじゃ?」
「寝間着用具のことですよ。ヘレス様。」
そう説明をしたサワアに嗚呼成程とヘレスが答える。
服を着替え、ヘレスとも交代で風呂から上がって合流した時だった。
うとうととしていたメルがぶっきらぼうにヘレスの言葉に応えただけで。
「おっと、流石に寝られては?」
『…だって、へれすと、もうちょっと』
「はぁ…また明日の夜にでもすればよかろう?」
『でも…まだ、たくさ、ん』
「サワア」
「分かっていますよ。」
前に倒れそうになったメルを抱き上げ、そのまま横に倒してしまう。
まだ、まだ寝ないという可愛らしい我儘を聞かないで早く寝て下さいとサワアはメルの頭を優しく撫で上げる。
違う天使の位置に居る彼女の身体は、不思議な位置に属していて。
未だに睡眠が必要になっているんだなと思いつつも、
サワアは軽くシーツをかぶせてやり、おやすみなさい、良い夢を。
そう言って目を閉じたメルの額にキスを落して起き上がる。
「何かありましたら呼んで下さいすぐに駆け付けますので。」
「一緒に寝てやらんのか?」
「今日は貴方が、でしょう?様子を見にちょくちょく足を運ぶことをお許し下さい。」
「…仕方がないのお。メルだけなら許してやろう。」
「ありがとうございます。それではヘレス様も、良い夢を。」
「嗚呼、おやすみ。」
ひらひらと手を振ってメルの反対側で横になってから目を閉じたヘレス。
少しして、全力で寝ているヘレスを放置して、メルがむくりと起き上がった。
トイレに行きたくなって起き上がったのだ。
杖を持ってそのままうとうととしたまま外に出てしまう。
えっと、おトイレは確か、むこうで、
そう思いながら身体がぱたりと倒れてしまうのに、気付いた人が此方に駆け寄って来た。
「だ、大丈夫ですか?!何処か具合でも…!」
『うにゅ、お、といれ…』
「おといれ?」
「音がしたので何事かと思えば、此処は貴方の住む場所ではないんですよ。」
「天使様…!!」
「すみません、彼女を渡して貰えますか?」
軽く抱き上げた男性に対してサワアが手を差し伸べる。
ええと言って渡した後、ぐったりしていた身体が
徐々に力を想い出したかのように動き出した。
『…あれ?ここ』
「お手洗いに行きたかったのではないのですか?」
『…あっそう!!まってもれる!!!』
「ちょ、此処でなど洒落にならないんでやめてくださいよ!?!?!」
『まってどっちこっち!?!』
「逆です!!!貴方本当に急いでる時真逆に走る癖何とかして下さいよ!!!」
彼女が慌てる時は割と切羽詰まった時が多い。
本気で漏らされると威厳も何もあったものではないし、
色々と洒落にならないのでやめてもらいたい。
サワアはメルを抱え込みそのままその場を後にした。
その姿をずっと見つめていた者など知らずに。