少女は情緒を糧として
「そんなことがあったのですか。」
『いやもうマジでこれからが
幸先不安というか先に謝っておきます。
大変ご迷惑をお掛けします。ごめんなさい。』
「それに関しては別に構いませんが。」
あっ構わないんだ。
そう今は日を跨ぎに跨いで、お茶会中。
メルはモヒイトとコルン、サワア、大神官
ウイス、マルカリータの面子でお茶会を楽しんでいた。
特に後半の二人は偶々こっちに来ていたので、
追加で入って来た感じである。
『呪い幾つかあるってチェレステさん
言っていましたが、幾つかって幾つ〜〜〜〜〜!!!!!』
「断定されていないのがまたおかしな話ですねえ。」
「サワアお兄様は何か覚えていないのですますか?」
「…私がいた時は未だ呪われていませんでしたからね。」
『強いてくっついてくるとしたら胎児を引きはがされた後だよね。』
「可能性があるとすればその頃辺りですね。
あの後確か元の場所に戻って制裁を喰らって
我々も離れ離れになりましたし。」
まぁその後色々あってこうやって戻って来れてしまったが。
『呪いが幾つかあるのは分かったし、
そのうちの一つが現在の華樹神が被ってる
天と地に生きれないものなんだけどね。
それらを解除できるかもっていう話を聞きましてねえ。』
「解除方法を教わったのですか?」
『それが教えて貰えてないのでどなたか私を
今すぐ殴って気絶させて欲しいのですが。』
「ぶっ」
「げほっごほ」
おやむせた。
貴方がとんでもないことを仰るからでしょう!!!
「彼をこの場に召喚するとか
正気の沙汰ではないですよ…!!」
「そんなにお強かったのですか?」
「強いとか弱いの話を軽く超えたものです。
正直エフェメラルが本気で攻撃するよりも
威力が増した様に感じましたし。」
「…そう言えば以前とてつもない気を察知しましたが、
ひょっとしなくてもアレですか?」
ええそのアレで間違いありませんよ。
そう言うサワアに、聞いたウイスの眉が曲がる。
「アレと会話が通じるとは正直思えません。」
『ええ〜〜丁度今は真昼間の状態だから
彼の威力も半減するかなと思ってたんだけど。』
「確かにあの時は明け方に近かったですが、
それでも私単体で勝てる手段がみえなかったのですが。」
貴方真夜中に彼を召喚したらどうなるとお思いで?
んーー世界消滅する?
まぁ下手をすればでしょうね。
わぁお
「会話するよりもその場のノリで
貴方の身体を守るかどうかの手段とも取れました。
ですのでこうやって茶会でのんびり話が
出来る様な形に見えませんし、
まぁ彼とてするつもりもないでしょうからねぇ。」
『そんなーーー仲良くしてほしいよ……。』
「そうは言っても全員とは難しいものですよ。
第7と第6を見れば一目瞭然でしょう?」
「嗚呼ビルス様とシャンパ様の話しですか?」
「ええ。」
『むーーー納得出来てしまうのが悲しい処。』
「おほほほほ!!まぁあのお二人は
特に喧嘩が激しいですからねえ。」
此間なんか星を破壊してしまわれそうになりましたから。
わあ。とんでもねぇ。
「私情で破壊に巻き込まれる星のみにもなって頂きたいものですね。」
「全くですよ。此方が時を戻せるといっても限度があるのですから。」
「話は戻りますが、メル様はその呪いを解きたいので?」
『ん〜正直解いたら君らの前から消えそうな気がするんだけど。駄目?』
「駄目なお願いをする阿呆がいますか。」
いや此処にいるからとか言う話ではなくてですね。
「どうあがいても駄目に決まっているでしょう。」
「少なくとも全神々が貴方を探し出しに向かいますよ。」
「地の果てまで、ですますわね〜〜」
『だよねぇ〜旅に出れないんだったらこのままでも良いかなあって。』
「おや、可愛らしいことを仰るものですねえ?誰の教育ですか?」
「こればかりは彼女の質というものでは?」
『ん?何の話?』
そうウイスが話す言葉にモヒイトが
答えることでメルが首を傾げ、
股の下に手を入れて耳を傾ける。
おやと紅茶を飲んだ後そのティーカップを
持ったままメルに微笑みつつ、ウイスが答える。
「メルさんは現在各宇宙に降り立つには
我々天使らと何らかの手段で触れていなければ
その身を維持すら出来ない状態でしょう?
即ち、我々と触れ続けたい、という意味と同じことでは?」
『……………違うよ!?!?!?!?!?』
「っふふふ、別にそれでもいいんですますよ?」
『待って!?!?よくよく考えたら駄目じゃない!?!?』
考えて猶更顔に熱が入る入る。まぁ入る。
抱き着いてくるマルカリータには申し訳ないが無視する。
メルは首を横に振って頬の熱を手で冷まし続けるので精一杯なのだ。
『いやまぁ確かに、皆とは仲良くなりたいなあって思ってたりはするし…』
お手手繋ぐの好きだから良いんだけど…恥ずかしい、よ?
おやまあ。
「あ〜ん可愛すぎですますわ〜〜」
『あう。マルカリータ!!ちょ、待って
私お人形じゃないんだよ?抱き着いてもぐえっ』
「マルカリータさん!メル様が苦しそうではないですか!!」
「これくらい愛情表現ですますよ!!!」
『(待って愛情表現で私の胃が死ぬから。普通に誰か助けて。)』
「そう言っていますから、せめて力を緩めて差し上げなさい。」
そう言ったコルンの言葉に不服なのか嫌そうにも少し力を緩めて貰う。
嗚呼お帰り私の酸素。愛おしくてたまらない日は今日という日程ないよほんと。
『まぁ、カタバミが漸くくっついて
華開くと思えばいいんだろうけどねえ〜〜〜』
にしてもこの本、一体どうしようか。
そちらは?
『かか様から貰った本なんだが、まぁ見てみてこれ。』
「…これは、」
「二という文字ですかね?」
『そ。元々一すら無かったんだが、
ページを追えば最後の所は
私が廻廊を終えた直後くらいで閉じられているんだよ。』
メルはコルンに渡して指を指して見せる。
此処読める?そう言って指を指した場所に
ええと珈琲の入ったティーカップを置いて答える。
「少し目を通させていただいても?」
『構わないし、その情報を此処で共有してもらってもいいよ。
一応その為にも今回サラッと話をしようと思って出してきたものだし。』
「というと?」
『いい加減そろそろ教えてもらいましょうか?
スピスさん?……いや、スピリタスさん、と言うべきか。』
「…なんのことでしょう?」
『とぼけても無駄だよ。こっちは色々物が出そろってるんだから。』
そう言って深く腰を掛けたメルは片手で光を幾つか飛ばして見せる。
光が点とし、線を帯びてメルの背後で光り輝き続けている。
『理を書き換え、乗っ取ろうとしていただなんて口が裂けても言えないって?』
「…は?」
「今更何を言うのかと思えば、そんなことですか?」
『一応これでも私はもやもやしたまま上の上司に付きたくないのでね?』
一応、仕事はしてきていますので。
そうですか。
「なら猶更何も言わないで流す、というご経験もされているのでは?」
『…よくもまぁ子供の前でそんな気を出せるねえ?』
「貴方がそうさせているとは思わないのですか?」
『それはそう。』
「其処は否定されないのですね。」
そう冷ややかにも見守るコルンにああとメルは頷いて答える。
『もうこの際白状しちゃいません?そしたらこっちも手が出せますよ。』
「と、いいますと?此方にメリットがあるとでも言うのですか?」
『私の天使である位置が欲しいというならば。別に構いませんよ?』
そうしても全王様が許可してくれるならば。
まぁそうしても私は余り快くは思いませんが。
『サワア辺りなら特に分かってくれると思うんだけどねえ?』
「…正直な処、貴方の天使である位置は余り知りませんからね。」
『おやとぼけるつもりか?』
「いいえ。そもそも知らないのですよ。昔の貴方が余りにも優秀だったが故にね。」
『それは失礼。でも、誰一人として耐えられる天使は一人もいないよ?』
「それは私ですら、ということでしょうか?」
『ええ。…一度人間になって生涯を何度も繰り返してから言ってくれたらいい。』
その時に、それでも誰かを守らずに中立で居れるものならば。
『その時こそ、此方側に手を差し伸べてやるというもの。
そんなことも考えずに力任せに手を出せば火傷で済まないですよ?』
「ご忠告ありがとうございます。
ですが、その貴方を此方でお任せ頂ける
というのはまたどうしてですか?」
「…それは私も少し考えていました。
華樹神であり元々の天使であるメル様であれば、
全王様すらも引き入れてしまえる器をお持ちの筈。
何故今更大神官様の補佐に名乗り上げたのですか?」
『まぁクス姉の話が一番の理由なんだけどもね。』
あの人のお願いは流石にちょっと聞かないとなんか身体がうずうずしちゃって。
……そうですか。
『後は今の天使と私が生きた天使の違いとか、理になるとしても情報が少なすぎるからね。』
「今後の、未来に向けての情報収集と言った処でしょうか?」
『まぁそう言う処ですよ。なんなら正直こんな堅苦しいこと全部ひっくるめて叩き落として下界で生きたいくらいですがねぇ〜〜〜。』
「白昼堂々と仰いますが、駄目ですからね。」
ですよね〜〜〜〜
『その本の様に、この感じだと増える感じがするんですよ。
これがもしも、3期である証だとすれば?』
「…まさか貴方が生まれた時から3期が始まっていたとでも?」
『普通にその可能性は高いなって。似たような本を見たことは?』
「……4までの本なら見たことがあります。」
「お父様、それはルメリア様のですか?」
「ええ。一瞬だったのでこんな形だったはずですが。」
そう言って空中に指で線を引いて言う大神官にメルははーーと深いため息交じりにその文字を見つめて笑う。
『…うっっわ、ラテン文字の4かよ。まじか〜〜〜。』
「ラテン?」
『こっちの話。まぁ似たような文字ではあるから、
此処の理での系列は本が主流って意味かなあ。』
他の理だとどんなものなんだろ。
「漢字とやらの成り立ちに意味があるとでも言うのですか?」
『……本という文字は極めて分かりやすい文字でね。
木の下の方に印しを付けて根本という意味を表す文字でもある。
草木は地上で様々な形に生い茂っていても、通常根は一つ。』
そこで、草や木を数えるときには、
根を数えるのが数えやすかったからでしょうか、
「本」という字は、草や木を数える単位として
用いられることもあったらしい。
『また本は根元と言う意味から元の、本来のという意味もある。
書籍や書物等のことはこっちの意味が変化して生まれたもの。
書籍は元々全て手で書き写すものだった。
その時の元になる方を本と読んでいた。』
その元は、一体何処を指すというのだろうかねえ。
そうメルはちらりと目を逸らしてから目を閉じて
口にカフェオレを含んで飲み込んだ。
ごくりと音が鳴ったのが脳内で響いている。
『まぁ要はその本が続いてしまっているから、話が終わんねぇだろふざけんなって言いたいんだよ。』
「本当にその口修正効かないのですか?」
「単純に言いたいだけでしょうから流しておくが吉ですよ。」
『その内容がスッピーにも入っていたらと思ってね。』
「…成程、私が貴方の時間を止めているかもしれない、と思ったのですね?」
そういうことだ。
「それに関しましては半分正解ですね。」
「…お父様???」
「ふふ、一応断っておきますが、
私は彼女みたいな浅はかな感情で動いていませんよ。」
『勿論それは存じております。
何ならこんな息子や娘がいる目の前で
話してくれる様なお人ではないともね。』
「おや、狡い人ですねえ?そう分かっていても尚言わせると?」
『これくらいの我儘、許して下さいよ〜〜。』
そうだらりと机に身体を下すメルに、
これはしたないと隣でコルンに叩かれる。
いてぇ。普通にやめろ。
「ま、貴方の呪いが在ることは兄からも相談を受けていましたので。」
「まさかそれを解く為に、こんな遠回りを?」
「流石にこうなるのは誤算でしたよ。
元々は貴方とメルさんがくっついて
こっちに来ればと思っていましたし。」
『さらっと現在進行形で成し得たこと言ってないですかね????』
「ふふ、此方に来てくれて大変嬉しいですよ?メルさん。」
『ううう、そう言われると恥ずかしいのでバナナで隠す。』
「メルさん?????」
そう言われつつも、メルは自分で創造した
ふわふわのバナナクッションに身体をめり込ませて
身体をそのまま横に向け、座椅子に肩を持たれかけてそっぽを向いた。
『だって〜〜よくよく考えたら私家族の仲に入ってるってことでしょう?』
「おや、今更何を仰るんですか。」
『え?』
「そうでもしないと我々がこ〜〜んな近くで話をするわけがないでしょう?」
『そうなの?』
「そうですますわよ?下界は勿論ですが、
神々とあれども此処まで手を焼くなんて考えないですます。」
「それこそ全王様や大神官様らからのご命令以前になんてねえ?」
ええと周りが頷くのに、メルはクッションに
頬を擦りつけつつも首を傾げて困惑をあらわす。
『まぁ此処まで来たら走り続けてしまうしかないけども。』
「何処に行こうというんですか。」
『ん〜最果ての更に向こう側?』
「其処に我々も居るとでも?」
『え〜〜〜???きちゃう?』
「ふふ、是非とも。」
貴方の仲間、ですので。
そう言った大神官の方を向くと
ちらりと紫色の目が左右からも見てとれて。
ニヤリと笑った彼等の目が光っているのが、
これまた背中をぞわりとさせてくるもんだから。
『……おおこわ。ねぇ、スッピー。
貴方本当に自分の力でこの子達作ったんだよね?
実は母体から産みました〜とかないんだよね?』
「使う訳ないでしょう。何を今更とぼけたことを仰るのですか。」
『だよね〜〜〜。いや血は争えんなって思ったけど
コレをいうなら気は争えんなって意味になるのか?』
「何訳の分からないことを仰るんですか。」
まぁ分からないか。
「その本はどうするつもりで?」
『一応定期的には確認してみるよ。
何か自分で書くんじゃなくて
勝手に書き記され続けてるからね。』
「何か変化があればまた教えて頂けると?」
『下手にこっちへ踏み込まなければ。ね?』
「…取引ですか。貴方も随分大きくなりましたね?」
そうでもしないと貴方絶対こっちくるでしょ。
おや、まるで消滅するのを拒むみたいにいいますね。
そうなりそうだからやってんだよこちとらさあ。
『だってサワアが居なくなるのは勿論嫌だけど、
スッピー達が居なくなるのも嫌なんだから。』
「メル様…」
『皆が居ないと、私もう嫌だもん。』
悪魔が天使に、天使がまた天使になったこの地で。
同じ様な立ち位置になって、
漸く笑えられる時間が流れ出したというのに。
そんな時に居なくなったら
一体何処で願いを叶えられたらいいのだというのか。
皆も同じ様に大事になった責任をどうか取って欲しいものだ。
「なら何処もよそ見等しなければいいではないですか。」
『…それは恥ずかしいのでしない。』
「っふふふ、おやおや、泣き虫さんが
とんだ恥ずかしがり屋になって
帰って来てしまわれましたねぇ?」
『待って?私もう泣かないよ???』
「おや、先日サワアさんに会えずにぐずって
寝ちゃった子は一体だr『スピスさん!?!?!?』」
言い切る前にダンと机を叩いて立ち上がった
メルがすぐに気配を察知して距離を取る。
かたりと席を立ち「嫌ですねえ」と、彼が呟きながら歩き出すのを見て、
はぁとため息を吐いた者達がゆっくりと起き上がる。
どうやらここら辺でお開きになるだろうと思ったのだ。
「其処迄我慢されていたとは、
気付かなかった私にも落ち度があるというものですね。」
『…あの〜さ、さわあ、さん?』
「はい。なんでしょう?」
『笑顔なのが寧ろ怖い!!!…まって?何で来るの?』
「いやいや、貴方が後ろに下がるからでしょう?」
『では聞き方を変えます。私に近づく理由は何ですか。』
「ふふ、貴方が寂しがっていると聞きましたので。」
抱きしめて差し上げようというのです。
いいです。結構です。充分満たされました。
おや、では私が満たされていないと言えば。
「貴方はどうしてくれますか?」
『ど、どう、って…っあ!!!』
「はい、捕まえた。」
『?!?!?!?!?!?』
「おほほ、まだまだですねぇ〜〜。」
「はぁ…精神面で我々に勝とうと思う者なんぞ
いっそのこと憐れだとというもの。」
まぁ仕方がないというものでしょうね。
メルを軽く後ろから抱きしめ捕まえたサワアに対して何も言わないコルンに
ウイスやモヒイトらも軽く彼等の戯れには何も言うまいと息を合わせていた。
「さて我々はここら辺で引きましょうか。」
「そうですね。」
『あれえ?どうしてかえるのかなあ???』
「おや、寧ろ弄って欲しいのですか?」
『どうしてそっちに変わるのかな?!?!?!』
ちょ、待ってくんな。
いやどっちなんですか。
そう待てと言われたり来るなと言われたりでコルンの眉間にしわが寄る。
『だ、だって…もん』
「はい?すみません、聞こえなかったのでもう一度仰って頂けますか?」
「…コルンさん、貴方も随分狡い人になりましたね?」
「え?それはどういう意味ですか?」
「ほらほら、もう一度ですって。言って差し上げればいいではないですか。」
きっと皆さん喜ばれますから。
いや私のさんちが死ぬが!??!?
ふふ、あとでちゃんと回復して差し上げますので。お気になさらず。
気にするが?!?!?!
そう押し問答する間、咳払いされてびくりとメルの身体が反応した。
そのあと、数秒考えたのかサワアの手からするりと離れたと思いきや、
サワアの背中に周り、未だに抱きしめていたバナナのクッションを片手で掴みつつも
ちらりと背中越しにコルンらに目を合わせて答える。
『…だ、だって…その、一度に皆から貰っても、お返し出来ないもんって』
「……」
「あらあら。」
「だ、そうですよ?」
「…言っておきますが、お前達にも言われていることですよ?」
「ふふ、確かに全員で愛でるのも、また一興ですねえ。」
『あれえ!?!?スピリタスさんいつの間にこっちへ!??!』
更に背中に回っていたのに気付いた時は遅い。
腰元から手が入って身体が浮遊する。
あっやっべ。これ逃げれない奴だ。
ぞっとした悪寒に、逃げられるものなら逃げてしまいなさいと上から声が聞こえる。
「まぁ、どうせ。逃げる事すらも忘れてしまうことでしょうが。」
そうにやりと目が細くなった彼の姿が最後となったのだった。