ひらひら、きらきら
「握力じゃと?まぁ別にいいが。」
これは、ヘレスに押されて引かれて連れてかれて。
化粧をしてからサワアに軽くお小言を貰った後、
メルは化粧を落とし、更に自分で化粧をしたら
「もうしなくて大丈夫です、充分可愛らしいので。」
と、何故か滅茶苦茶耳が真っ赤な状態で言われて
メルは更にまた化粧を落とした後の話しである。
ヘレスについ此間、ウイスとコルンに言われたこと
(握力流石に付けましょう…?byウイスさん)
の話を思い出し、よくよく考えたのだ。
あれ?女性の握力ってどの程度…?と。
握力ってどれくらいあるのかな〜と言って
メルはヘレスの手を取り、にぎにぎと揉みながら
気になって聞いてみたのだ。
嗚呼成程と何となく察したヘレスは
ニヤリと笑った後ならばと声をかける。
その間サワアは彼女らの様子を温かく見守る様にと見ていたのだが。
そう、みていた。みていたのだ。
「ほれ、力いれてみい。」
『あっ、私のグッって握る訳じゃ
ないんですねーお姉さん。』
「お主に本気でやったら手が潰れるわ。」
『いやそれ程かよ』
それってさ、最早ゴリラとかの勢いを越えてやがるのでは?
とりあえず言われた通り力を入れてみたところ数十秒。
ヘレスの顔がもう変わる変わる。みるみる変わった。
サワアがじっとメルとヘレスの手を見つめている間
呑気な声で「ないですねぇ〜」とぼやく。
おい、じゃあお前はあるのかと思って居れば
ぱっと手のひらを見せてくれるので、
今度はその手を取ってぎゅっと握ってしまえば
思った通りだという反応される。
「これしきでも?」
『痛い痛い痛い痛い!!!!』
「なんじゃ?軟弱じゃのう〜。ほれ貸してみい」
メルが其処迄大袈裟に痛がるなんて在るわけないと
鷹を括ったヘレスがサワアの手を取り力を入れられ
同じような反応をしたのに、サワアはふふと笑う。
「どうしてこれ程力があるんじゃ!!!!」
「ふふ、言っておきますが彼女に入れた力よりも少々強めに握らさせて頂きましたので。」
『えっどっ、どれ…あの、えっと、え???』
「大体1.5倍程度ですかね。」
「ド阿保!!!道理で痛い訳じゃ!!!」
いや其処?私どっちかって言うと手を抜かれた方に困惑してるんだけど。
「貴方の実力で私が力を入れたらただの暴力と大差ないですからね。
例えて言うなら、赤子に成人男性が本気で握ったら潰れちゃいますよね?」
『うん』
「それと同等のことですよ。」
『私赤ちゃんなの?』
「はい。」
「いや違うじゃろ。」
そう冷ややかな目で見つめるヘレスに、あながち間違っていませんよとサワアは答える。
「気の扱い方もほぼ未収得な状態です。
知識を持った専門の方と張り合う等、
そのようなことは無謀なこと。ですよ?」
貴方様はあの方のお子で在られるお人ですからね。
そう言えばメルは首を傾げるので、クスクスとサワアが笑い飛ばす。
それにしても〜と苦い顔をして声を出し、
ヘレスはうーんと言って顎に手を置き
メルの顔をまじまじと見てから言った。
「…お主にこんな力で、
あれ程の威力を出していたとは」
『駄目なの?』
「……いやもう余りにも不思議過ぎて
もう何を言って良いか分らんのぉ。」
「ヘレス様が唸るとは…いや、エフェメラル貴方余程ですよ。」
『んなこたいわれたってだなぁ。』
「そんなに握力ないですか?」
先程のは利き手ではありませんよね?
どれ、握って見てください。本気で構いません。
そう言ったサワアにメルがぎゅっと握る。
すると似たような顔をしたヘレスに「じゃろう?」
と、まだ何も言っていないサワアにヘレスが
あたかも「言った通りだろう?」みたいな感じで言う。
「……そ、う、です、ね。………流石に握力はつけましょうか。」
『何で皆一致なんかな?!?!?!
ねぇ待ってよ!!本とか持ったりとかさ
ほら普通に日常生活支障きたしてないのに!!!』
「寧ろ逆に良く本とか持ててましたね?ってレベルなんですよ。」
そんなに!??!?
いやまさかねぇ、そんなわけがあるはずない。
「大方左右両方で15,6程度ですよ?」
『ねえ!!!普通に!!あ・る・じゃ・ん・か!!!!』
「だとしても少々軟弱過ぎやせんか?」
『支障ギリ大丈夫だよ!?!?
寧ろそれ以上要らないでしょうよ!!!』
寧ろ握力に何を求めているんだこいつらは!!!
私そこまでガチムチマッチョマンになろうとはしてないが……
「いや私も出来れば筋肉質にこだわるというものではありませんが…」
『ん?そうなの?』
「こやつこれでも筋肉苦手でな。」
「ちょ、ヘレス様?!その情報何方でお知りに!!!!」
「ペルが少々寂しがっておったのを、な。」
「…反応みて確信したと。」
してやられた。そう言いたそうにサワアは首を横に振ると
観念して「ええそうですよ」と話を持ち出す。
「過度な筋肉質は好みません。
ですが、支障が無いとは言えど、
無さ過ぎるのもまた同様です。」
『あっ論点すり替えてきた?』
「違いますよ話を戻したと仰って下さい。」
『いやでもまぁ…貰ってるお洋服考えると
割と手からでもやるべきなの、か???』
「おや、他にも何かなされているんですか?」
『うん、まぁ、父様がね、華樹神としての
正式なしきたりというか、なんというか…
儀式の時に着るお洋服は貰っててな。』
それが全体的に青と白の綺麗な色合いを持ったお洋服ではあるんだが…
今着ているある意味ビギニ衣装みたいなのと全く変わらないので、
お腹周りは勿論のこと、割とそこそこ鍛えておかないと、と思っていたのは確かだ。
『そっちの方はもう正式に終わったら
ほぼほぼずっと着ておく衣装なんだって。
こっちはまだ正装じゃなくて
見習い衣装に近い状態らしくてね。』
「そんなものがあるんですね。」
『らしいよ。何着かあるらしいんだけど…
確か通常用と、正装用、後は儀式用。
多分サワアのもそうだよ。』
「儀式用?僕のもですか?」
『多分だけどね。そもそもほぼほぼ白い衣服自体が見習いだった気がする。』
まぁその話は父様からお聞きしないと覚えてないから。
嗚呼そうですか。
「正式に執り行えばルトラール様の様な色を纏うということか?」
『恐らくは、ね。』
深くは聞いていないから、どう転がるかは知らないが。
ふと目を閉じた。青い髪色の女性が
背中を向けて遠くを見つめていた。
青い世界が、白い闘技場に世界を変え、
声援を送られている世界が見えたのだ。
歓声の中、片手を上げる女性。
深く青いローブを脱ぎ捨てると、
中は白いドレス姿で、胸下から斜めにして
青いリボンが刺繡としてではなく付けられている。
腰元には、青いリボンが、
大きく真後ろで凛と姿勢を保ちつつも、
風に揺られ、たなびいていた。
後ろからでも左右一つずつ横髪を緩くでも編んでいる姿が、何処か目を惹きつけて、離れない。
肩にまわっている白い袖が、なんとも面積が少なく、心もとない。
白く、二の腕近くまで通していた手袋のようなもの。
ふと、此方を見る様に振り返るも、姿は見えなくて。
恐らく奥にある光が反射して顔が見えないだけだろう。
眩しくて目が霞む。あれ、目を閉じている筈なのに、なんで?
ーふふ、待ってるよ。
『え?』
ー「秋」が来る。そこは「春」。私が一番、愛した時間。
『っ待って!!!なんの、は、なし?』
そう手を伸ばしてとろうとしたのだが、
「っメル!!!」
『っ!!!!』
「大丈夫ですか?何か術でも…メル?」
ふわりと消え、誰もいない場所に手を伸ばしていただけで。
泡のように、花が花弁が綺麗に消えてなくなった。
この世界は、緑が豊かで、空は青いだけ。
あの、一色とも取れるような綺麗な場所ではなかった。
『…あきが、くる?ここは、はるなの?』
「え?」
『…ごめん、なんでもない。』
そう言われて、さらりとヘレスが近づき
メルの髪の毛を触ってきたので
どうしたの?とメルがヘレスに聞く。
「…いや。…髪を伸ばすのか、と、おもってな。」
きっと白昼夢を見ていたのじゃろう。
そう思うことにした。確かに気がとんでもなく練りあがったのは察したのだ。
でも、今それを気付かせ、何かに走り出すならば。
ちらりとヘレスはサワアの方をみてやると
こくりと縦に振った動きを見て、
そのまま誤魔化し通すことにした。
サワアも同じ気持ちだったのだ。
その世界は、きっと彼女が…いや、今は良い。
そう、今は良いのだ。
折角帰って来てくれたのだ。
まだ、まだもう少しだけ、
居させて欲しいというものだから。
…例え其処が、「秋」だとしても。
今は「春」で、あるのだから。
まだまだずっとずーっと、先の話だ。
急がずとも、いずれは…やがて。
「ヘレス様もよく伸ばされておりますよね。
昔はメルも伸ばしていましたし、女性は皆そうなのですか?」
『え?あ、ああ、いやそんなことは無いと思うけど。』
「髪は女の命!じゃからな!!」
いや其処迄じゃないと思うんだが。
そう冷ややかな目をしつつも、話を続けるメルに
二人して少し安堵の息を零したことを
メルが気付いていたことなんて、
二人は知らないのだけれども。
『嗚呼儀式迄は背中の下くらいまでとりあえず
伸ばしてみて、其処から調整しようかなぁ〜
って思ってるからね。』
今は肩下胸上くらいでとどまっているが、
後々これも長くなっていくだろう。
まぁ大丈夫だ。
『次髪の毛切る時は失恋した時くらいだから大丈夫大丈夫。』
「それ全く大丈夫じゃない話なんですが……。」
『え〜?そう?だってもう失恋なんてさせてくれないんじゃなかったっけ?』
「だそうじゃが?」
「…ええええ、そうですね。」
「と、いうかメルよ。」
『ん?』
「さっきから思っておったんじゃが、お主、髪質変わってないか?」
『え゛うそ!!!!』
そう言えば確かに、前はもう少し暗い紺色の髪色だった気がする。
サワアも長いことの付き合いで逆に気付いていなかったらしい。
ヘレスに言われて二人で気付いたのだ。
いや〜こういうのは浅い付き合いの方がまだわかるからね。
特に女の子だとこういう小さい所みつけほんと得意。
あ大丈夫だよ、貶してるとかじゃないからね????
『え〜私も髪の色変わるのかなぁ〜やだなあ〜〜』
「そうなのか?」
『なるなら父様くらいのちょと明るめの
紺色というか青色くらいがいいなぁ。』
そう、先程見ていた、
あの綺麗な青色みたいな、そんな色。
空の、深い、何処までも続くような、
そんな、そんな…そう、
そんな、色を。
「其処迄明るくなるのでは?」
メルの髪色はどっちかというと黒色に近い方の紺色。
ルトラールの髪色は青色に近い方の紺色である。
髪色が全く違う色に変化する人もいるらしいが、
緩やかな変化だと色自体が暗くなるか
明るくなるかの二択らしくてだな。
『流石に白くなるのはちょっとやめてほしいなあ。』
「なんじゃ嫌なのか?」
『ん〜〜〜力使った時の感覚が分からないから
出来るだけ白は避けたい、って所存です、かね?』
「嗚呼そういうことですか。
ですが逆に分からない方がいいのでは?」
『え?なんで?』
「万が一敵に相対した時、力がバレやすいというものでは。」
『その前にこの地に一歩も一歩踏み入れさせないようにする!!』
「あの…エフェメラル?」
貴方、[[rb:先程 > あのとき]]やられたことを
もう、お忘れになりました?
プラティアとアイビーが攻めてきたときの話を出してきたサワアに
メルは苦笑いで嗚呼忘れていたと本気で言って二人がずっこけた。
いや〜〜んなこと忘れる忘れる!!
『第一奴らの目論見は大体分かってるから怖くなくなったしねぇ〜』
「目論見?」
『だってアイビー僕のお友達だった人だも〜ん!!』
「「はぁ?!?!?!?!?!」」
『あれ、気付いてなかったのか。』
「誰が気付くか誰が!!!!」
「寧ろ何時気付いたんですか!!!」
『洞窟で寝てた時だったかな?なんか夢見てさあ。』
一緒に抱き着いて寝た夢みたいんだよね〜。
昔も同じ様にベットの上で一緒に寝ててさ、
いや懐かしい夢みたもんだよ〜とメルはのほほんと答える。
それにヘレスがじとりとサワアの顔を見てメルを指さす。
それにはサワアが首を横に振った。
綺麗な青色を。ずっと見つめ続けたい。
願わくば、嗚呼でも、願わなくとも、きっと。
嫌になる程、染まりあがるのだろうから。
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[chapter:小話:改めまして、ご紹介を。]
ううう、どうして、どうして私ってこんなに出来ない子なの…
そうメルは半分いや、結構堕ち込んでいた。
白いドレスに身を包み、赤い頬を青く染め、ため息を吐いていた
時は1時間前にさかのぼる。
メルさん、そう声を掛けられたとある日。
大神官様と声を上げるメルに、お元気そうでとニコリ笑う。
「今お時間宜しいですか?」
『はい!どうされました?』
「エフェメラルさんはサワアさん達以外の天使ら並びに神々をお知りとお聞きしましたが、ソレは事実で?」
間違いないですよーとメルはフンスフンスと鼻息を荒らして答える。
『それがどうしたのですか?』
「嗚呼いえ、貴方とお会いした時は廻廊中か、戦闘中等
少々特殊な時ばかりでしたので。改めて自己紹介をと。」
『えっ、わ、悪いですよそんな…!!』
お仕事あるでしょう?そううろたえるメルに
寧ろお話してやってもらえると私が助かります。
そう言えば、『そう…?』と言ってメルはきちんと引き下がる。
幼い頃の面影が残ったまま帰って来てくれたのを再確認した大神官は
彼女なら大丈夫だと思い決断したことで。
まぁ、正確には全王様からのお達し、というものでもあるのだが。
「だ、そうですよ?皆さん。おあがりなさい。」
『え!?!?え?!?!?!?!』
ぞろぞろやって来た恰好は、破壊神や界王神の正装状態であって。
私この恰好大丈夫なの!?というメルにじゃあお着換えしてみようかといつの間に入って来たのか、背後から出たルトラールにメルは声を上げた。
「丁度ルメリアが是非とも試着して欲しいって言ってたし。」
『え?』
「や〜〜〜ん!!可愛すぎですますわ〜〜〜!!!!!」
『あ、あう…は、恥ずかしいよ……うっ』
「駄目ですよ〜誰かの身に隠れないで下さい。」
ニコニコと笑って、大神官はメルが隠れようとしたので
すっと上に上がって逃げるが、それも訳があって。
「本日一日だけで構いませんので誰の背中にも隠れずご対応お願いします。」
『ひぁう!!!』
「とんでもない声でたな…」
「ふふ、何時ものことですよ〜。」
えっという周りに、クスはふふと笑みを零す。
メルの姿は簡単に言えば白い肩出しワンピースドレス。
襟の様な胸元の袖が胸元の台形に近い角ばった切れ端から
背中にくるりと一周しているだけで、
それ以外袖は無く、面積が小さく感じられ、なんとも心もとないものだ。
白く二の腕近くまで通した手袋が心もとない袖を補ってくれているが、それでも繋がっていないので心もとないのは事実である。拭い去れないものが悲しい。
台形に形取った処は中央白いビラが付いているだけで、
ある意味セーラー服の胸元で、前の襟が全開になってる
気持ちだと思ってくれたら恥ずかしさが伝わってくれるだろうか?
台形の底は白い宝石がはめ込まれたブローチはキラキラ光り、
その下に二つの青いスカーフが動く度にひらひらと動く。
サッシュと呼ばれる帯が胸下左から反対側の腰へ斜めに欠けられて。
腰元には何処かの知事が祝い事で付けそうな勲章のリボンが青と白のコントラストを見せているが、
勲章の台座ともいえる程の広さには何もついていない。本来作り花というか、リボンでグルグル巻いたようなのを見かけるのだが、どうやら違うらしくて。
「宝石と其処の台座だけ、本来在るべき力に目覚めたその時こそ、華を咲かせるものよ。」
まぁ言わば、儀礼的な正装着ね♡
腰元から下は、垂れ幕を思わせるかのように左右へ広がり、
中央では白いビラが胸元よりかはマシでも白い布一枚と見える。
左右へ広がった上の生地はどうやら複数枚あるらしい。
上が白色、真ん中が青色、下が白色で、一番下のレースになっていた。
いや本当にこれただのドレスでは。
靴はバレリーナを思わせる足の上部分がほぼほぼ綺麗に見えているもの。
リボンの紐が、なんとも心もとない。色々と、心もとないなこの衣装…!!!
見ただけならまだ、カッコイイとか思ってたけど、
『幾ら何でも早過ぎでは?!?!!!?!』
そう赤面したまま身体を縮こませ、震えるメルに
マルカリータとルメリアは「あらあら〜♡」と笑っていた。
左右一つずつ編み込んだ緩い三つ編みの先を両手で一つずつ掴み
ふるふる振るって遊んで恥じらいを発散するところをみて
可愛げがあって困るわ〜とルメリアが笑っている。
『というかこれ上着とかありますよね!??!』
「…あら、よく知っているわね。でもだ〜め。」
『なんで?!?!?!』
「寒くなったらかけて貰いなさい。どうせ貴方のことだからローブで身体ごと隠してお話し始めるでしょう?」
『うぐっ!!!!!』
早速バレてしまった作戦に、ルメリアはクスクスと笑う。
メルが此処まで恥ずかしそうにしているのは正直見るのは初めて。
昔から人に会わせると言っても大勢でも殆どが女性だった。
そう、身長から年齢から幼かったから別に気にしなかったのだが。
「実際お会いしてお話して変わることもあるでしょうし、ね?」
『うう…ひどい。』
「今度お茶しましょう?」
…サワアとクスお姉ちゃんも一緒。後父様とスピスッピーも。
ふふ、では頑張ってね。
そう背中をとんと押されると困る。
ちらりと見れば、青いリボンがふわふわと浮かんでいる。
腰をフリフリ動かせば右へ左へと動くそのリボンが可愛くて仕方が無くて。
『〜〜〜!!!!!!!!』
「気に入ってくれたようで何よりね〜ほんと気に入られなかったらどうしようかと思ってたところなのよ。」
「そちらはアルメリア様のものですか?」
「ええ。次の華樹神となる者ですからね。試着ついでに皆さんとご交流する機会を、と大神官様にご相談したのですよ。」
「我々も元々ある神々への仕来りをお伝えしたかったのですが、どうしてもご本人様らがおられなかったものでしてね。」
これを機会に、次いでで本来行われていた神々の仕来りをご説明するというのだ。
だから正装を着用させて来させたのかと、破壊神や界王神は漸く此処で納得した。
「ほらほら、恥ずかしがらずちゃんとする。」
『あうあうあうあうあう、待ってどう話したらいいの!?ねぇ待って!かかさまぁ〜…!』
「ふふ、ご自分でお考えなさい。」
「絶対言ったら面白くないからとか」
おほほほほほ、そのような訳あると思います?
いだだだだだだだだだだ
そうメルらの背後、言わば華樹の元で軽くルトラールの腕を引き寄せ、
そのまま首を絞めるアルメリアに、ルトラールが痛い苦しいといって
締め上げている腕をパンパンと叩いて降参の意志を示していたが、暫く放しそうにない。
二人共も、正装をしていた。
メルと同じ様にも見えるアルメリアは、青い処が黄緑色か、緑色に染まっていて
宝石の所は黄緑色。勲章の所はシロツメクサが咲き誇っていた。
髪の毛は横髪を左右に三つ編みして後ろに流し、一つへ纏めていた。
長さは大よそ腰元までだろうか。まだメルは胸元が隠れる程度だったので
これ以上長くしたらこんな長さになるんだなぁと他人事の様に眺めみて思っていた。
ローブは一応着ているが、深い緑の布で、肩元は白いもこもこが付いている。
胸元に2つ程の赤い綱が印象的にもみえたソレは、確かに自分一人なら余裕で隠れられそうだ。
なんなら彼女のローブの中にだって隠れてしまえるだろう。是非とも今すぐ入りたいが、それをすると罰ゲームがあるらしくてだな。
「一度隠れるごとにミニ罰ゲームが蓄積されるわ♡」
『へ?』
「でもいつどこで発生するか分からないから注意してね♡」
『具体的には?』
「ひ・み・つ♡」
怖いって!!!!!そう叫ぶメルにおほほほと笑うアルメリア。
いや本当にお久しぶりですねと声を掛けたのは
「あら、もう甘やかしちゃうの?」
「いえいえ、改めまして、お久しぶりです、
華樹神アルメリア様そして華樹神官ルトラール様。」
「元、が抜けているわよ?」
「うぐっ…いやですが」
「何も咲いていないとは言えど、一度花は咲かせている。」
その時点で、選ばれているからね。
そう名残惜しそうな顔をして、ルトラールはメルの頭を撫でる。
上を向いたメルに、ニコリと笑うルトラール。
髪色は紺色で、目は青い。片側だけ三つ編みにしているが後は野ざらしである。
ルメリア程ではないが、メルよりは長い。短い順で並べばメル、ルトラール、ルメリアとなりそうだ。
「ほら、ちゃんと前に出なさい。」
『あう!!!!!』
そうぎゅっと目を閉じて固まるメル。
フルフル振るってそっと目を開けると、
こてんと首を傾けニコリと微笑んだサワアに
少し頬を染め、えっと、とそっぽを向いて話をする。
手元は胸から下に降り、横ではなく前のスカートをぎゅっと握り締めていた。
『あ、改めまして、えと、は、はじめ、まして?
…えっと、か、かじゅ?』
「華樹神」
『あ!か、華樹神…の?え、えっと…え、エフェ、メ、ラルっていい、ます?』
「申します」
『あう!!!あうっ!!!!うう!!!!!』
最早半泣きである。
宜しくお願いしますと勢いよく頭を後ろに持って行った後
前に振り下ろした彼女に少し驚くも、ご丁寧にどうもとサワアは答える。
「私は第2宇宙の天使ガイドを
つとめていますサワア、と、申します。
此方は第2宇宙の破壊神ヘレス様、
そして第2宇宙界王神のペル様であられます。」
「破壊神ヘレスです、以後お見知りおきを。」
「界王神ペルです。本日はお招き頂き誠にありがとうございます。」
『〜〜〜!!!!!』
「ふふ」
どう!?ねぇ!!どう!?!??!
そう言いたそうに、もう目じりには涙が溜まっているメルに
少々弄り過ぎたかなと思いつつもルメリアは笑ってニコリと微笑んだ。
OKを貰えたことに余程嬉しいのか、
ぱぁと花が咲くように笑みを浮かべた後、
ニコリと笑うメルに、続きまして〜と言って
真逆の顔にさせた彼女にどくれるぞとルトラールがぼやく。
「ん?」
「ん?どうされました?ペル殿。」
「…すみません、聞きなれぬお言葉をきいてしまいつい」
『…ひょっとしてどくれるって言葉ですかね?』
「そうですじゃ!」
答えるペルにうーんと唸った後、メルは父様と声を掛ける。
「なんだい?」
『ある程度の質問は許容範囲ととっても構いませんか?』
「…ああ、勿論。何が知りたい?」
『彼らにはどれ程の知識を、嗚呼なんて言うんですかね…?』
こう、えっと。そう手を放し、胸元の前でクルクル回したり
トントンと何かを切る様に縦に振ったりと忙しない。
『お教えする範囲とか決まってるのですか?此処は駄目だけど、こっちは駄目〜とか。』
「…ふむ、一応限度はない、かな。」
ということは言い方を変えろ、という事か。
目を見て判断したメルは、私がご説明しても?
そう胸に手を置いたメルに、どうぞと手を見せるだけで
答えたルトラールにふぅと息を吐き、メルはペルに向き直して先程の質問を答える。
『どくれるとはいじける、即ち機嫌が悪くなる、という意味合いを持ちます。』
「ほぉ、此処での会話に何か規則があれば不束ながらお尋ねしても?」
『ええ。特にコレと言った規則はなーーーかった、はず、ですよね???』
「貴方が覚えている範囲で構いませんよ。」
いいのかそれは。いいのか。
『だとしたらありませんね。昔はほか…嗚呼失礼。
昔から何かしら騒動を起こしていましたので、
その時の癖、みたいなものですよ。』
メルは咄嗟に方言とは間違っても言ってはいけなさそうだし、
なんなら他にも神々が居て、良く面倒を見てくれていた子達から
真似て遊んでいたのを叱られて育った〜なんて過去の情報なんぞ
この場に出してはいけないと判断したのだ。
コレがかなりの良いポイントになっていて。
次々と話をするペルにメルが答えるも、その内容はよくよく考えを聞けばわかるが
要は「これ以上この場で貴方に話すことはないから、お引き取りを」とかなり和やかに対応するメルに
ペル様とサワアは答えた。これ以上話させると彼女にも悪い上に他の子達もいるのだ。
今回は食事会というのもある。
そう、乾杯は大神官が取ってくれていたのでね。
その後の、話であるのだ。大体食事して5分程度である。
食えていないんだよ。お腹空いた。
そう思っているときゅ〜と言った声に、何処から?ときょろきょろする周りにぱっとメルが反応して顔を赤らめる。
頬に入る熱を全力で両手を使い、身体を使って振り払おうとするも、取れにとれずで…
『ふえ、す、すみましぇん!!!』
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題名:突っ伏した
失態に失態を重ね、今現在に至るということだ。
はぁとため息を吐くメル。
前回のあらすじ。
自己紹介場で、失態おかしました。
どうも皆さん、エフェメラルです。
円卓に白いシーツを被せた食事机が
点々と設置され、その上には各宇宙で
美味しいと思った食事が並んでいたところから
少々離れた所で現在座り込んでいる場所は
全王宮から更に奥へと進んだ華樹神の間を
そのまま真っすぐ華樹のある場所へつっきる手前にある
互いに半円を描いた廊下の中間部分と言った処。
一応左側であるここは、トイレの前とかでもない。
逃げたらただじゃ置かないと言われているも、
メルは逃げてしまって追い打ちで考えた思考にため息を吐いた。
勿論欲望の赴くままに第7で食事を済ませ、
ことを終わらせ、そのまま引きこもりたい欲望に
現在進行形で駆られに駆られまくっているのだが、
そんなことはさせてくれるわけがない。主に私の責任感という気持ちがだ。
何だかんだ言ってメルは日本人産まれ日本人育ちなところが離れない。
真面目でこれと言ったことはちゃんとやり通さないと気持ちがずっと後を引いて困り果てるのだ。
過去のことは悔やんでも取り返しがつかないのだが、未来になれば話は別だ。
今行動しないと未来の自分が泣きっ面をかく羽目になるのだけは避けたい。
だとしても、行儀作法の仕方なんて家庭科テスト近辺で培った程度。
加えてその作法はあくまでも地球の日本の県の地域の礼儀作法である。
だから此処で使えると思ってあたかも私知ってますよ〜?偉いでしょ!ふふん!
なーんて使って違って見ろ。恥をかくからな。加えて私一人だけならまだしも、
今回幼馴染ことサワア&クスだけでなく両家庭のご両親まで居られる始末だ。
因みに全王様は母様が「旅行チケット」なるものを渡したとのことで
付き人さんと大神官の妻さんであるお方が付き添いで遊びに行ってるとのこと。
各宇宙も一日程度なら別に空けても構わないし、長くなっても往復で一週間。
たったそれだけなら問題ないらしい。
まぁ日本人の感覚に喩えて言うなら授業で貰った数学のプリント
それも算数の範囲一枚程度を一週間後に提出するようなものであるらしい。
そりゃいつでも出来る上に範囲も限られているのでやれるだろうが…
確か各宇宙によって人間レベルが変わっていたはずだ。
その範囲が大学レベルで尚且つ締め切り3時間前とかになっていなければいいのだが…
そんなことを此方が考えることではない、とも取れる今回のお食事会と言う名のお目見え会。
破壊神の衣服は頭に長方形の用紙を円にして立て、目の前を暖簾宜しくくらいに垂れかけさせていた。
左右は白い布で覆い、顔が見えるのは白い布と真ん中に降ろしていた各宇宙の印が付いた布の間程度か。
下も白い布で腰下から覆い、中のサルエルパンツらしきものが前から印のついた布とちらちら見せてくるも
前に見た時よりかは遥かに見えにくいので、変な話印の数や模様で判別しないといけないのが苦しくて堪らない。
一応身長やそれなりの風貌で何とか、うん、なんとか切り抜けられそうなところはあると思うがな。
だとしても天使はまだよくても破壊神と界王神の名前を全部各同じ印で一緒に覚えている訳がないだろうて…!!!!!!!!!
『僕が名前覚えるのどちゃくそ苦手なのわかってんのかなぁ〜〜〜』
ふぇえとほんとに泣きそうな感じというかもう泣いてる。
もういじけているの範疇を軽く凌駕しました。どうしてくれようこの気持ち。
あと華神ら何処よ。アルトリア何処よ。まぁ大体想像はつく。
大方後日改めて彼らだけにお目通しさせるつもりだろう。
そうでないとメルがはしゃいで礼儀作法の練習処ではないから。
一度見ているならば別に切り替えられる。
そう、先程のペルにしたように。すんなりと話題を持って行けば自由に話せる。
だが本当に正しいのか、それが良いのか、あと相手がどう思っているのかなどなど
挙げるとキリがない程の疑問が脳内のメモリーを圧迫して思考が停止し、パニックになって何も言えなくなるなんてものが
果たして上に立つ者が持ち合わせて良いのだろうか?断じて良くないのだ。
そう、よくないのだ。だからこその、この場である。
彼等はよくわかっている。メルが周りのことを見て判断する子だと。
逆に言えば周りを見せない様に泳がせれば、やれる判断が出来ない。
即ち、先程みたいに悶え狼狽え、しまいには腹の音を聞かせ舌を噛んで無事KO負けとなるのである。
飛んだ恥さらしものだよ。此畜生。どうしてもっと勉強しなかった。いやしたけど。
一応儀礼は知っているんだよ。知るところは知ってる。
でもそれが此処で通用する訳がないじゃないか。
ペル様が仰ったとおりなのだ。この世界で通用するものがあれば教えて欲しい。
現在縋りに縋っている言語も、其処迄優秀ではない。
理解が出来ないと途端に音が消える。
別にもう一度聞けばいい話しなのだが…
『(どうせ怒っちゃうでしょう…?)』
こんな出来損ないを、嘲笑ってきっと恥ずかしいと思ってるはずだ。
もっと、どうして、出来ないのだろう?頑張っても、駄目なのだ。
頑張っている処が、彼らとは違うから。
悲観的になるのはどうしようもない。一人だから。
ぺたりと地面に座り込み、体育すわりをしてぐずってると
コツコツと音が聞こえてきたのにグッと腕で涙を拭い去った。
「此方におられ……大丈夫ですか?」
『っ』
「ああ、すみません…気分が悪い、訳ではなさそうですね?」
そう膝をついて少し濡れたハンカチで目元を拭ってくれる。
誰だろうと思っていると、こんなところで申し訳ありませんと
彼が先に応えてくれる。
「第1宇宙の界王神、アナト、と申します。」
『ぐずっ…華樹神見習いのエフェメラルと申します。おみみくるしいところみせちゃってすみまぜっ…あう。』
「ふふ、失礼。随分とお可愛らしいお方だと思いまして。」
笑ってしまい申し訳ありません。そう笑う彼に、ううんと首を横に振ったメル。
座り込んで目元が赤い時点で何となく想像はついていた。
きっと恥じらいで泣いていたのだろうと、そう思っていたのだが…
『こんなのやですよね…サワアも、クスねぇも。』
「え?」
『だって、二人と同じ歳なんですよ?私。…二人みたいにかっこよく出来ないの。悪いよ。』
違っていた。
この子は、自分の振る舞いを、外につつかれ怒って泣いていたのではない。
周りにいた子達に恥をかかせてしまったと、申し訳なさで泣いていたのだ。
しかも、こっそりと、誰も来なさそうな、こんな出入りの見えない廊下の壁で。
苦しかったのか、今は靴を脱いで裸足になっている。
ちゃっかり横に置いているのは、
すぐに履いて誤魔化すつもりだったのか?
「…そのように深くご自身を傷つけないで下さい。」
きっと彼らも望んでいないことだろう。
確かに不甲斐ないことはある。
取り繕って綺麗に着飾り、
遠ざけられた方がずっとずっと苦しい。
なのに貴方は、あの場でしなかった。
「どうしてそう思うのですか?」
『え?』
「嗚呼いえ、すみません
…こう、心を痛めるつもりはないのですが
先程のご対応をお見受けした所、
貴方様が知見の無いお人とは想像出来なくて…」
何か理由があってのことでは?
そう聞いてみる。本当は知見も何もないだろうと思っていたが、
何処か拭い去れなかったのだ。違うと、否定した気持ちを。
否定したのが、正解だったとすぐにメルの言葉で分かった。
『…あのね?私沢山お勉強したんです。』
「お勉強を?礼儀作法のですか?」
そう言えばこくりと縦に頷き、手を胸元でもじもしと
第一関節のみくっつけ、少し開いては閉じてを繰り返す。
『でも、ペル様が言った様に、此処で使えるとは限らなくて…
その、私…出来なかったら、どうしよっ、て、怖くなっちゃって、』
ごめんなさい、こんなの、だめなのに…
そう先程までの思いが溢れ出たのか、涙をボロボロと零し始めた。
『ふっ、わた、し、だめ、なの』
「…どうして?」
『ひっ、うう、できなくてっ、ふ、おこられ、ちゃ、て』
サワア、怒られないかなぁ。
私が出来なかったから、怒ってないかなぁ。
そう泣いて、肩を震わせ、目元を手の甲と手首で拭い去る。
ひっくひっくと、しゃっくりを上げて。ふるふると震えているその背中に手を回して当てるとぴたりと止まり此方を向いていくれた。
…嗚呼、だから、大神官様は貴方に向けてあんな優しそうにしておられたのですね。
「大丈夫ですよ。誰しも間違いはあります。」
『ふ、でも…』
「それに戻って来たばかりでしょう?
廻廊を見させて頂きましたが、
あれ程小さなお子の状態から帰って来てくれたのです。
寧ろ出来なくて当然というものですよ。」
『…そ、っか、な?』
「ええ。」
この子は違う。人の様な子ではない。人なのに、心臓もある、臓もある。
でも、気が、心が、彼女の通う情が、それを否定してくる。
善も悪も、全部ひっくるめて、抱えようと、捨てきれずに。
傍で泣いて、少しでも前に進める様に、ゆっくりと。
…だが、時はそう待ってくれない。
彼女の進む速度と、帰って来た時間が
余りにも離れすぎているのだ。
無理もない。まぁ、だからこその、この場であろう。
「泣いているのが分かった方が、あの方達は哀しみますよ。」
『っだめ!!!…あ、そ、それは…だめ、だと、おもいます。』
「ふふ、無理しなくて構いません。
それに、周りを全く見させない訳ではないでしょうし、ね。」
『え?…っ!!!』
「…すみません、ご苦労をお掛けしましたね。」
いえいえ、そう笑うアナトに、ぺこりとお辞儀をしてきたのは
『い、いつ、から…』
「ぐずり声を聞いたくらいからですよ。」
ほぼほぼ最初っからじゃないか。
ううと頬を膨らませた後、ぐりぐりと腕で拭えば
嗚呼乱暴にしない…と声を出す。
「全くもう…あれ程で落ち込んでいたらこの先やっていけませんよ。」
『だって…』
「彼の言葉通り、其処迄お気になさらないで下さい。まぁその為の場でもありますし。」
『え?』
「言ったでしょう?何故、人の影に隠れず話をするのか。」
日向で、お話してくれるのではないのですか?
「意味をきっと、貴方は知っている筈です。」
『意味を…』
「それに礼儀作法を弁えておられるなら見せつけちゃってくれればいいでしょう?」
『え?で、でも』
「そちらの礼儀作法を我々は知りません。知見も広がるというものです。」
だから、こんな暗い場所で、一人泣いていないで下さい。
「戻りましょう?皆心配します。」
心配しているとは言わない。だってそう言えば、彼女はすぐ不安になるから。
引け目を感じ、深く傷つき、成長出来るであろう道を閉ざすだろうから。
心優しいのだ。優し過ぎて、痛くなるくらいには。
『…うん。ま、まって、私お靴は、はくから。』
「ええ。…アナト様すみません」
「ん?ああ、いえいえ。お力添えになれたら光栄です。」
『何かお礼お礼えっと、あ!』
「花なんて上げては駄目ですよ?」
『なんで!??!』
貴方本当にそうホイホイと自身の力を明け渡えて
ご自身の力が残らなかった時はどう身を護るおつもりで?
あう
そもそも、その花の力を甘く見積もり過ぎです。
救われたからといっても、対価がおかしいんですよ対価が。
そう言うサワアに、クスクスと笑うアナト。
いや本当にこの二人は面白い。
「すみません、って私も何度も謝っていますね。」
『ああいやこちらこそすみません…あれ?』
「ふふ、でしたら一度第1宇宙へ遊びにいらしてください。」
『え?そ、それだけでいいんですか?』
はい。
『で、でも私今此処から離れる訳には…』
「…いつか、で。構いませんのでね。」
『ほっ、なら。』
ニコリと笑い立とうとするメルに、アナトも手を出そうとしたが
先にサワアが手を出した上に、メルもサワアの方を向いていたので
そのまま彼に引き渡すか、と思い、宙に浮いた手を後ろに戻した。
「では私はこれで。」
『あの!あとで…その。』
「ええ、また、あとで。」
そう言って帰る彼に、ほっとメルは胸をなでおろした。
「全くもう、其処迄考えなくて良いと思うんですがねぇ。」
『だ、だってだって、恥ずかしい?って思うの、駄目なんでしょう?』
「何方でそのようなことをお知りになったか知りませんが、
貴方程度のことで一々恥じらっていればガイドなんぞ務められませんよ。」
『そうなの!?!?!?』
天使ガイドを何だと思ってるんです。
「彼が仰られていたように、貴方は此処に戻って来たばかりです。
分からないことも多くあるでしょうから、是非ともその時はお尋ね下さい。」
『でも』
「怒りませんし、呆れて見向きもしなくなったりしませんよ。」
あのような、母親の種族とは違うのだ。
冷めた目をした者。虚ろう彼女の黒ずんだ瞳。
心が冷めていく。すっと、色を忘れたかのように。
でも、そんなことさせない。
手を取り、分かったと頷く彼女がいるから。
冷めた色も、ふわりと色を、取り戻していくのだ。
花が咲く、その日の様に。
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それからというものの、メルは会場に戻ると
マルカリータに飛びつかれ、背中を叩き
ちょっと迷子になっていたのだと嘘をついてその場を誤魔化し中に入った。
第11、第10、第12、第3、と次々挨拶をしていくうちに何となく慣れていく。
特段深く考えなくて良い。そう言い聞かせ、気になることは名前を知る人に聞く。
そうすれば嬉しそうに笑って説明をしてくれた。
お話が出来てる。此処に居られる。居て良いんだなと、思う。
温かな陽だまりの下で、ポカポカした気温に眠くなってくるねぇと言ったビルスに
いけませんよとウイスが言っているところだった。
『ウイスさん、ビルス様、シン様!初めまして、
華樹神見習いのエフェメラル、と申します。
以後お見知りおきを。』
「おや、これはこれは。ご丁寧にどうもありがとうございます。
改めまして、私は第7宇宙の天使ガイドを務めさせて頂いております
ウイス、と、申します。此方は破壊神のビルス様、そして界王神のシン様であられます。」
「よろしくお願いいたします。」
メルがドレスの両方を軽く摘み、
上下にしゃがみお辞儀をする姿勢を取ると
ウイスが胸に手を置き、ぺこりとお辞儀をし返した。
手はスカートの前を握り締めず、手だけを軽く持っていた。
こうしてみれば本当にお綺麗で…
「お兄様も隅に置けませんねぇ〜」
『お兄様…?』
「ふふ、失礼。お食事はもうとられましたか?」
『ええ!皆さん進めてくれまして…』
お食事って美味しいものなのですね。
ええ、そうですよ〜
「まぁ。とは言っても此方のお食事はお知りのものばかりでしょうし。」
『そうですね…はっ!ち、違いますよ?!』
「おほほほ!!構いませんよ。寧ろ知らない知識があればお教え下さると我々も大変ありがたいですからね。」
『(それ、端的に言えば地球要らなくて済むからサラッと破壊しちゃえて楽だとか思ってたりしちゃうのかな……。)』
流石にそう思ったら出来ない話である。
勿論この食卓だけでなく、メルは元々外に長く身を置いていた者。
料理は勿論のこと、食材やら知見は恐らくウイスらよりも遥かに優れている。
だからこそ、その時々に応じて、何をどう判断して良いのか
分からなくなって終いには泣き出してしまうのだ。
…ベソかいたとは、もう言わないかもしれないがな。
『でも懐かしいものばかりですね。うわ〜美味しそう〜!』
「一口食べてみます?なんでしたら後でお召し上がりください。」
『っえ!?良いんですか?!』
「その為にも幾つかご用意させて頂いておりますので。」
「通りで手出しさせない処があったんだな。」
そう頭の頭巾を軽く被っているビルスがほほほとウイスの笑いを睨みつつ横目にぼやく。
『え〜え〜どれにしよう〜中華ってどれもこれも美味しいから迷っちゃうんだよねぇ〜。』
「おや、これは中華、と呼ばれるものなのですか?」
あっと言って手を口に置いたも遅い。
気が緩んでいる証拠だ。
うう、精進しないと。
そう思っているメルの思考すらも、この場であれば。
天使らだけでなく、界王神らも読み解けるとは、知らずに。
未だ残っているルメリアとルトラールの力により、
この場一体にメルの心が読める様に設定してくれているのだ。
勿論華樹神見習いのエフェメラルだからこそであるし、
本来華樹神、並びに華樹神官になれば、
あの大神官様ですら読めない位置におられるとのこと。
それ即ち、上位互換と言っても過言ではない。
選ばれたということは、自分らが届かない位置になる可能性が大いにある。
此処は下手に気を悪くさせ、評価を下げていくわけにはいかない。
まぁ、もっとも、メルが天使を神々を嫌う様な子でもなければ
プライドが高すぎる訳でもないのだが。
「これとか美味かったぞ。喰わないのか?」
『あふぁあふぁ』
「ビルス様、もう少しのご辛抱ですよ。メルさん悶えていらっしゃりますので。」
ただいま取り込み中です。しばらくお待ちください。
そんな張り紙を想像していると、ぷっと笑ったウイスに
メルは首を傾げた。失礼と笑う。
時間も押すことだろうし、軽く話をしてから切り上げようと思ったメルは
そう言えばとビルスに目を向けた。
『ビルス様』
「んー?なんだい?華樹神見習い様」
『あうっ!』
「っくくく、っそれで?」
『あ、ああ…悟空達ってどうしてるのかなって思いまして。』
その…
『あの時、暴れちゃったみたいになって、ご迷惑かけちゃったから。』
「嗚呼…そんなこと気にしちゃいないよ。」
『え?でも』
「それに外に出れないんでしょ?此処から。」
それはそうだけど
『もしよければ、ご招待、しても、いっかな?って…あの。』
「…それは僕じゃなくて先に大神官様らから通して言っておいで。」
『そしたらいいんですか…!?』
「ま、向こうの都合もあるだろうけどね。」
ニヤリと笑うビルスが、一つ料理を提示するならと答えるので
じゃあシュウマイをと手を上げる。
「ん?」
『あれ?食べてましたよね?シュウマイ』
「白い奴ですよビルス様。お肉を薄い皮で包んだ。」
「嗚呼あれか!というかこれだろう?」
『ええ。ふっふっふ〜〜〜〜お二人いや、お三方どうやら知らないようですね?』
シュウマイに、種類があることを。
あっダジャレになっちゃった。
そう気を戻すメルに、ずっこけるビルスとシン。
ケラケラと笑うも、ダジャレというか、なんというか。
気を狂わせる様な感じは妙に悟空を思い起こさせるもので。
…そんなバカなことがあってたまるかとビルスは思った。
悟空がメルと何かしらの繋がりがあるのではないかと。
よく考えてみて欲しい。老界王神から力を貰い生き返った悟空だ。
神々の力を取り込んでいる時点で、異例だというのに
加えてあの全王様ですら救ってこの地に引き入れているのだ。
…いや、もしもこれが【既に用意されていたもの】だとしたら?
考えたくもない。
地球が壊れたらメルも諸共消えるとか冗談だけにしてほしい。
「具体的にはどのようなシュウマイとやらがおありなのでしょう?」
『え?あ、ああ〜そちらの惑星にあるかは存じあげませんが…
私の知っている知識でいけば…シュウマイでも中身が違ったりするんです。
嗚呼あと焼きシュウマイ!!』
あと水餃子とかもあったよなぁ。嗚呼あのもっちもっち好きだったなぁ。
そう頬に手を置いてふるふると横にふるメルに、食いたいというビルスが
少し静まった場所でしょっと肩身を狭めた。
『ふふっ、今度レシピ思い出して作っておきますね。その時はウイスさん、ご連絡しても?』
「ええ、是非とも。」
『やた!…はっ!!!』
「ところで、メル様。我々はどう言ったらよろしいのでしょうか?」
『どういったら?』
「正式名称の件ですよ。貴方の名前は沢山ありますので。」
千代木とか古都とか、そういうウイスに、嗚呼確かにとメルは唸る。
『う〜ん。一応エフェメラル、が正しいとは思います。しっくりきますので。』
「わかりました。」
『ですがメルと短く切って頂いても構いません。なんなら敬語抜きでも!』
「っいえ、それは…!」
『…いつかで構いませんので。』
そう、いつか。そうメルは閉じていた目を開いた。
その目は、何処か、
「っ!!!」
『ん?どうされました?』
「あ、ああ、いえ、なんでも…」
青い色を、灯している様に見えて。
気のせいだと思い、咳き込み、話を流した。
題名:きれいな、きれいな、
それからそれから。
「コルンお兄様の元にはもう行かれて?」
『いえ』
「…ひょっとして行くつもりないので?」
そんなわけがあるわけなかろう。
『気付いたら粗相していないか色々言われそうで怖くて怖くて』
「いけないんじゃないか…」
そうキテラに言われるメルはというと、現在第4宇宙にお邪魔しています。
界王神のクルさんやら天使のコニックさん、そして破壊神のキテラさんには
大変ご面倒をお掛けしたことだからね。
その節は大変ご迷惑を…そう謝るメルに、
お元気になられて良かったとコニックは答える。
「何かありましたらお気軽にご相談下さい。
お力添えに成れるよう、尽力致しますので。」
『はわ…!天使だ……!!!!!』
「おもっっきり天使だがな。」
「ふふ。一つ気になったことがあるのですが、お尋ねしても?」
そう言われてええとメルは応える。
「そちらの髪は?少し解け掛けていますが…」
『え?あ、嗚呼本当ですね…!すみません。』
「いえ、昔からそう編まれて?」
「そういやあの方達もしているな?」
キテラが言ってその場を見る。華樹の下でたわいもない話を
大神官と共に三人で談笑していたのが見て取れた。
メルの両親二人共、必ず一つは三つ編みをしているのだ。
『嗚呼、華を持つ者たる者三つ編みは礼儀作法と同じらしくてですね。』
「そうなんですか?」
『ええ!なんでも悪魔や魔女になりにくかったり、近寄らせないとか。』
「それだけでか?」
『解くことなんて風呂に入る程度くらいですから、
特段これといって面倒起きたこともないですし。』
まぁ今迄が今迄だっただけかもしれませんから。
…それに、伝承は幾つか取り揃えている。
『(何処かは忘れたが、三つ編みの意図はそれぞれ。)』
中世のヨーロッパでは魔女やら悪魔の伝承が伝わり、現代に多く残っている。
とは言っても事実かどうかは定かでない。確かめようにも、その地にはいないのだから。
魔除けや魔女対策という意味合いは勿論だが、
髪には人間の霊魂、少なくともその力の一部が
宿っていると考えられていたらしい。
恐らく「髪」と「神」だからか。
用紙の「紙」に呪文を付け札にした
呪符等の効果が期待できるのも
「神」の意味が少しでもあるからとは推察するが、
推察止まりではある。
なんでも「神々との結び付きを更に強いものにしようという意図があった」とされている。
まぁこの話、とんでもないものが多くてだな。
死んだ魂を守る為に髪の毛一房引き千切って(正確には切り取って)
その髪の毛で止まった心臓を再び鼓動させ、生まれ変わりになろう存在を作り出したとされる話がある。
自分の髪を広げ、その子の身体を覆って、神の子を守ったとされる話だ。
その伝承曰く、「髪には生命が宿っている」だから在るべき神の元へ
連れてってもらおうと思ったのか、見ていた女性らも夫に一房切り取り
遺体へ埋めるようになったとされるが。
…まぁ色々と端折っている上に時間も経過しているから
事実とはまた大きく異なるものではあるだろうがな。
『(正直魔術関連の彼女らを見て特に断じて、
確固たりたくはない!…筈の話も出てくるというもので。)』
髪の話は多い。自分の髪を祭壇に捧げ、
武運を祈願してくれたおかげで災難に遭わずに済んだといわれたり、
天の不思議は「髪の精霊」とみなされていた彗星は毛であり、
世界の終末の日にはその毛でこの空を包み隠していく時、神が現れるとされたり。
天におけるが如く、地においてあるべし。
天地対応魔術の原理にのっとり
女性の髪は神と同等の神秘的な力が分与されていたとの話。
賢者らは女性が髪を束ねたり解いたりすると、
宇宙の創造力や破壊力が活発になるのでは
とざわついたとまでいったら、
流石に女子供可哀想だとは思って
そっと本を閉じた記憶がある。いやはや懐かしい話だ。
メルは髪の毛を解き、手櫛で直していると
櫛はお使いに?とコニックが取り出してくれたが丁重にお断りした。
何だかんだ言って引っ張られるのだ。
ただでさえずっと引っ張られているのに加えて引っ張ったら髪の毛泣いちゃうかなって思ったんだが。
…ん?なんだか今日本当に人が笑うな?気のせいか。
「それにしても随分と長いですね。お手入れ大変でしょう?」
『そうでもないですよ?こうしゅばばばーって。』
「…間違ってもあの方々の前で言わない方が宜しい話しでは。」
「イル様、大変そのお心遣い痛み入ることでしょうが…時すでに遅し、だと思いますよ。」
そう深く唸るコニックに、メルは首を傾げた。
後でこの件でメルが怒られるとは、メル自体知る由もない。
「髪の毛に何か意味でもおありの様にみえたもので。」
『…まぁ、こうやって解いた時触り心地がいいので。』
あと匂いもしてとってもすき!ああでもそんなことは言わないよ?
ちゃんとお姉ちゃんになったからね!フンスフンス、と、内心息を荒げつつ自慢するメルだが、
そんな気持ちも伝わっているのを、この子は知らないのである。
何故気づかないんだエフェメラル。
どうして気付かないんだエフェメラル。
そんな閲覧者や見ている者達の気持ちなんて
さらっさら皆目見当もつかないエフェメラル。
『(雨を始めとし、雷雨、稲妻、霞に極めつけは悪魔を出現させるとか
髪の毛に色々と文句を言いつけるなんて面白い話だったんだけどね。)』
予言を与える巫女や魔女たちも同じような考えを抱いており、
自分達の髪を結ったり解いたりすることにより、
神々も同じ様に髪を結ったり解いたりすることが出来た。
その為、束ねないとあれば、力自体が飽和し、何もなくなるのでは?
と、考えた魔女らの理由から、術を行う時は髪を結わずに力を振るった。
事実天候を支配していたというか、タイミングが良い感じに重なって
思い込ませれたラッキー人間らというものではあるだろうがな。
なんなら兄弟が海に出ている時は夜に髪の毛とかすなとか言われる始末だ。
嵐が起きて、船を沈めないようにという理由からだが、
髪の毛ひとつで転覆するくらいならそういう末路だったのでは?とは思ってしまう。
因みに、「洗いざらい白状する」という意味は髪の毛からきているらしい。
なんでも、古代の人々は女性の呪文が効果を発揮するには髪の毛が無いとまで主張した。
逆に言えば髪の毛を失った者は無害。髪自体に力が籠っているから。だから長ければ長いほどいい。
そこで神を信じる者達にとりあえず髪の毛をつるりんぱしたと。サラッと言うけどね、髪の毛だけに?煩いな。
拷問を掛ける為には、まず力を封じ込めなければならない。だから力のあるであろう象徴の髪を削いだらしいのだ。
なら髪の毛の毛なんだから、身体の毛も同罪では?とか頭イカれてる子がぼそりと言い出してね。
このようにして、髪の毛だけでなく、身体の隅々まで。端から端までさらけ出すということで
「洗いざらい白状する」という表現が男の胸毛をそり落とす習慣から産まれたらしい。マジで?
このほかにも、子供は余り早く髪の毛切ると体力が損なわれるとか
恋人に捨てられた者に対して愛する人の髪の毛を密かに切り取って肌身離さず身に付ければ、その人の魂に影響力をぶんぶか行使しまくれるとか。挙句の果てには誠実の証として、お互いの髪の毛を交換していたとされる。主な理由は、何方か一方が裏切ったらその髪の毛を使って復習の呪いをかけ…ああなんだかそれ以上はいけない気がする。
そんなかんじで、魔女のまじないや恋人同士の魔除けの交換などで重要視されていたことからも明らかなように、髪には人間の霊魂の少なくともその一部が宿っていると考えられていたのだ。
昔何かの文献で、そもそも髪の毛を長くでき、保つのは貴族の特権。
更に三つ編みなどのアレンジはその貴族の中でも上位を示す髪型だとか。
『(…ま、リボン強要されなくて心の底から安心してるけどね)』
此処で華神らの儀礼に戻る。
三つ編みをしているのは魔女や悪魔の魔除けだけではない。
純潔を意味する三つ編みもあるというものなのだ。
「ふむ、では噂だけだったのですかね。」
「何の話だ?」
「え?ああいえ、前にクスお姉様から髪に結わえる紐の話をお聞きしまして。
こういった正装の時にお見かけするものばかりとてっきり。」
『あっここここコニックさんそれ以上はいけない』
「え?」
多分この勘は当たる。そう思っていると背後に圧が感じられて。固まった。
ぶわりと顔から汗が、まぁ〜ダバダバダバダバ出て行く出ていく。
私の水分全部この場で吹き飛ばせるのでは、と思われる程にはだ。
「あら〜すっかり忘れていたわ〜。コニックさんありがとう。」
「え?」
『しませんよ!?!??!?!待ってかかさまねぇおねがいしますからぁ!!!!』
「ふふ♡だぁめ♡ほら儀式はちゃんと、ね?」
そう背中を押す方向はというと、サワアの方で。
意識したメルがその場でボンと音を立てる程に
頬を染め上げ、ついには我慢できず、コニックさんの後ろに隠れてしまった、メルなのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『うう…は、恥ずかしいよ……。』
「ふふ、まぁまぁ、そう言わずに。」
にっこにこのサワアに、真っ赤っ赤のメル。
今はほとんどの宇宙にお目通し出来た処。
ルメリアに呼ばれたサワアは目を向けていると
トテトテと小走りで来たメルに目を向けた。
「随分と可愛らしいではありませんか。」
『うっ。い、いわないでぇ……』
「ぷっ、ふふふふ、すいません、痛いですから叩かないで。」
吹き出す様に笑うサワアに、
メルはポコスカと肩を、
正確には二の腕を叩きに叩く。
「まさか黄色いリボンを編み込ませて頂けるとは、至極光栄極まりないことですよ。」
ほんと。
そう言ってメルの両サイドの片方を取って櫛を使ってほぐした後、丁寧に淡い黄色の布を編み込んでいく。
じっとしていなければいけない上に、これ以上隠れると罰ゲームが増えるだけであるのは事実。
仕方がないのだ、腹をくくらなければいけない。寧ろ半分以上回って一度隠れただけで奇跡だろうて。
『…皆知ってないと良いのに。』
「おや、知らせてはいけないのですか?…僕のだって、ねぇ?」
『〜〜〜〜〜!!!!!!!!!』
「ふふふふ」
ご満悦である。
まぁそれもそう。だって数十億年以上も昔に過ごしていた幼馴染が
時を駆け戻ってきて、自分と同じ想いのままいてくれているのだから。
華樹神の髪紐は幾つか種類があるも、
この礼儀作法は少々特殊で、中々お目にかかれないもの。
そう、結婚前提の好意を持った相手の色を三つ編みに編み込む儀式なのだ。
華樹神は華樹神官と婚姻の仲。添い遂げるという意味も含め、
未婚の場合、見習いである時、そうこの時期でしか、しない。
言わば激レアMAXのお披露目会になっていたのだった。
この手の文献で一番嫌だなと思っていたものが採用されていたのだ。
この三つ編み。本来の風習やら伝統ではどう描かれているか忘れたが
結婚したい相手が現れると三つ編みに明るい色のリボンを編み込むのだ。
更に結婚が両親に許されると
2本目のリボンを編み込むという伝統があったそう。
髪の毛を見るだけで此処まで分かってしまうと、
もう恥じらいを通り越して呆れて笑うしかないだろうな。
そう、メルは今現在、1本だけでなく
2本のリボンを編み込まされていたのだ。
黄色と何故か青色のリボンを、だ。
黄緑ではないのは髪色が変わっているのを推察するに
恐らくメルの持ち色は「青」とのことらしくてだな。
左右2本ずつ、計4本のリボンが
メルの前髪正確には横髪に垂れることになっていた。
片方が終わり深いため息を吐いたメルに
お嫌ですか?としょげるサワアへ嫌じゃないと答える。
『寧ろいいの?私なんかで。』
「なんかでとはとんでもない。貴方がいいのですよ、エフェメラル。」
『〜〜〜〜えっち!!!!!!』
「えっ!!…貴方ねぇ。」
そう呆れるサワア。
この三つ編み話、北の農民が行っていた風習なのだが、
なんでもそこの地域では結婚前の娘は
「純潔」を意味する1つの三つ編みを
背中に垂らす髪型をしているとかで。
結婚すると2つの三つ編みにし、
更に頭を覆い隠す為に被り物を被る
という伝統があったとされるものだ。
『だって恥ずかしいよ…私ずっと前から、
サワアにやってくれたこの三つ編み、
結婚してたみたいにしちゃってて。』
「………あの、エフェメラル?
貴方もっと恥ずかしいことを
ご自身で言われていることにお気づきで?」
それ端的に言えば、小さい頃からずっと結婚していたとか
そう言う意味合いに取られるのですが。
自分だけ浮かれてたみたいに落ち込むが、
さらっと自分のものだと思い込んでいたとか
もっと恥ずかしい話を思いつき、
それ以上はいけないとサワアは考えるのを止めた。
「そういえば、アルメリア様。これを外す時はどんな時ですか?」
「ん?嗚呼それはね、式の前日に解くからそれまでかな?」
『え、待ってかかさままって、つきえっ、けっえ?』
「あら、サワアさんではお嫌?」
『いいえ!!寧ろありがとうございます!!!!』
そう叫ぶメルにならいいじゃないと笑うアルメリアことルメリア母様。
全くもう、止めて欲しいものだ。
結婚が決まると、式の前日には三つ編みを解く儀式が行われる。
結婚式当日には2つの三つ編みに結い直す儀式があるから。
そう、華樹神として正式に事が運ぶまではこの状態を維持しろというのだ。
要は「メルはサワアの恋人なので、誰も手出しするなよ♡」と言っているもの。
しかも加えてどうやって誤魔化そうにもレパートリーが無いままあれよあれよとネタ晴らしされてしまい、
今現在コルンお兄様のお所に顔を見せに行くの恥ずかしすぎて辛すぎて困り果てているのだった。
とはいえ、お付き合いなんて始めようにも声掛けられていないし、
したところで出来れば長く付き合ってみないと分からない。
子供の時と大人の時では話が違うのだ。
加えてこちとらかなりの長い間旅に出た上に
千年もの時間をこの地から出れない状態なのだ。
せめて華樹神となってからと思うのだが。
『あ、そういえばかかさま。』
「ん〜?なぁに?エフェメラル。」
『かかさまって同じ様にリボン付けてたのですよね?
式をするまで大体どれ程時間がかかったので?』
「そうねぇ〜どれくらいだったかしら?」
「あんま詳しく覚えていないが、人間で言う処の精々3年程は。」
あのですね、天使らの3年が一体どこら辺の長さになるのか、ちょっと恐ろしいのだが。
想像していると嗚呼でしたら千年の隔離も可愛らしいものですねとか
上から声が聞こえるのです。あー、一年間=千年間か?この単位。
下手したら一万年だったらどうしよう。えぐ。人の換算一旦考えない方がいいかもしれない。
「ま、千年なんてあっという間ですよ。」
そうだといいけどな。
「…ほら、出来ましたよ。」
そう言われて横髪をみた。
黄色と青色が、この色の変わる髪色に緩くも編み込まれていて。
解いて付けなくなる日が来ないことを願う。
『…うん。ありがと。』
どうかこのままで居させて欲しい。
千年の間だけでもいいから。
短い時間でも良いから。
そう言い聞かせる。
何時か来る、
綺麗な綺麗な黄色と青は、
この胸の前で、揺らいでくれた。
『改めまして、初めまして。第8の皆さま。
華樹神見習いのエフェメラルと申します。』
「…第8宇宙天使ガイドを務めさせて頂いております
コルン、と、申します。此方は破壊神のリキール様。
そして界王神のイル様であられます。」
三つの尾を持つ狐のような見た目をした破壊神。
対となるイルが立てる計画の不備を直すのが生き甲斐で、
人間レベルを下げる存在は厳格に破壊する生真面目な性格。
そのため人間レベルは四番目に高く、力の大会を辛うじて免除されていたところだ。
「改めましてはじめまして、エフェメラル様とお呼びしても?」
『ええ』
「それにしてもお綺麗です…!」
『ありがとうございます…。』
「おや、えらく萎れて。疲れています?」
まだ対応している途中ですよ。
あうあう。
こ、コルン様…!!
「厳粛に、です。私は兄弟の様に貴方様を余り甘やかすつもりはございませんので。」
「そう言って一番気になって仕方がないだろうに。」
『え?』
何も殴らなくたっていいだろ!!
失礼なことを申し上げたからですよ…!!!
「全く、無礼をお許しください。」
『嗚呼何もされてませんし…!』
「…いえ、」
「お疲れでしたら席にお座りします?」
そう言ってイルが椅子を作り出してくれたのに対して
ありがとうございますとメルはそっと座る。
座るだけでも違うものだ。少し足をプラプラさせてからぴたりと止めてコルンを見た。
しょげた顔に、ため息を吐いて何も言わずに食事の方を見た。
どうやら見ないふりをしてくれるらしい。リキールがぼそぼそと
顔を近づけて答えると、また頭を突かれていた。
意外だと思った。
二人はこうやってこんな場で言い合うこと無いと思ってたから。
クスクスと笑うメルに、度重なる無礼をお許し下さいと落ち込むコルンに
ではお願いしても?と聞いたメルになんでしょう?
と、意外な返答に少し目を開き聞く。
『今度お茶しましょう?』
「…別にそれは構いませんが、」
『日程抑えてさえくれたら構いませんし、あっ!
此方に移動されるならば界王神様らのテレポートとか
その杖に仕込むとかどうでしょう?』
「あっ、いや、流石にそれまでは……。」
『そう?』
「うっ…検討させて頂きますか?」
流石に我々二人で解決するには些か荷が重いので。
わかりました。また後日ね。
ええ。
「エフェメラル様、貴方様は何がお好きで?」
『ん〜酸っぱいものが大半か、な?』
「酸っぱいものですか?でしたら此方ですかね。」
『こちらは?』
「スイの実です。普段は木に実っているのを切り分けたものですよ。」
黄色い見た目に、酸っぱさが感じられる気もする。
フォークを使って一気に食べてはいないが、その大きさに
待ってと声を聞く迄もなく。ぱくりと入れて顔が青ざめるイル。
もごもごもご、そう目をぱちくりとさせ、メルはイルをがん見しているだけで。
「…あれ?」
「…メル様?」
『…………ん〜〜〜〜〜みゃい。』
あれこれ美味しい。
『えっなんだこれ?何だろう?もうちょっと食べても?』
「ええ、ど、どうぞ…」
んん???何だ????
そうメルは首を傾げ、眉間に皺を寄せ悩む。
『ん〜〜〜、何だろう。見た目はライチなんだけどなぁ〜大きさは林檎かってくらいデカいのに味がパイン?いやパインとまた違う、マンゴーではないな。酸っぱさが強すぎるのなんだ〜〜?嗚呼喩えていうならモズクの酢を喉に水飲むように一気に飲んだ感じのアレに近いか???でも果実なんだよなあ〜〜〜〜。』
嗚呼何だろう?でも好き。普通に好き。
そうパクパク食べると、あっ駄目だと驚くので
見ていた者もびくりと反応した。
『けほっ、ん、んん。余り酸っぱいの食べ過ぎると胃が死ぬもんね。
え〜良いな〜。自生の仕方気になる。ねぇコルン様。』
「な、なんでしょう?」
『此方ってコルン様がとられて?それともイル様?』
「見つけたのはイル様です。取りに出向いたのは我々の方ですが。」
割と危険な処ですか?
「いや、言うほどのものでは…お気に召されました?」
『あっ、や、余り食べ過ぎると返って食事を摂らなくなりそうなので…!!』
正直他の宇宙は割と辛い物が多く、比較的甘めの食事をと取っても
それでも辛かったのだ。でも第8宇宙、割と果実寄りで結構好きかもしれない。
『…あれ、ひょっとして、コルン様。とと様から自慢話とかお聞きしてました?』
「っ!!!」
「…おっと?」
「…すみません。こういう手は使いたくなかったのですがね。バレてしまっては致し方が無い。」
前々からお聞きしていましたよ。貴方様のことについては。
「お食事を中々摂られなくて困っていたりとか、酸っぱいものが好物で、辛い物が大の苦手だったりとか。」
「え゛っ!!!」
「でも余り過度な甘いものは苦手で、少し柔らかくも、噛み砕いて形を保っていれば飲み込めることとか。」
『うわあああああんととさまぜんぶじゃああああああああん!!!!』
すみません。
「こう、弟妹達に差を付けようなどとは思っていなくてですね。…まさか此処までとは。」
『すみません。…でも、そう言って選んでくれて嬉しいです。』
「え?」
『だって他の宇宙で食べれなかったとしても、自分の所で少しでも腹が満たされてくれればって思ってくれたのでしょう?』
ならいいよ。
そうニコリと笑うのだ。そんなことないのに。
浅はかな感情など、彼女は目もくれない。
コルンはそうですよと困ったように笑って答えた。
『ん?どうされました?リキール様』
「いや、お前わらっ」
『?????』
「すみません、リキール様は少々腹痛を。」
えっ!大丈夫ですか!?そう焦るメルにご心配なくとちらり目を向ける。
「ですので、ね?」
『あう…わかりました。では私はこれにて。』
お大事にと言われ、数秒後にお前なと怒るリキールに
腹の底が分からないお方ですねと低い声でコルンがぼやく。
「お気づきになられなかったので?」
「へ?」
「…はぁ、私の勘違い、ということにしておいて差し上げましょう。」
メルは気付いたのだ。あの一瞬だけで。
「(これ以上は知るなと言った私の警告を、
彼女はすぐに察知し、演技に興じてくれたのだから。)」
恥ずかしいこと極まりない。
この失態は後で丁重に謝罪を含めた上で出向くとしよう。
今度は、彼女が気に言ってくれた、嘘の果実と共に。
そうこうしまして。
無事終了しました。
全員分周り、ルトラールから
「どれが美味しかった?」と言われて
第8の方を指さして。
『ばれちゃったかなぁ〜。』
嘘を吐いたこと。
本当はあんまり好きではない。
パイナップルの味自体は吐いた後の酸味に酷く似ていて苦手なのだ。
あの最後甘いのか苦いのがわかりゃしないのが、また何とも言えない。
でも、嫌いなわけではなくて、好きかと言われたら好きともいえる。
しかもパイナップルよりも断然優秀で、ライチの様な少しみずみずしく
ぷるっとした触感がまた美味しかったのだ。
なので恐らく「今はすきじゃないけど、きっと未来の私が好きになりそうだなと思った」から「好き」だと判断したまでのこと。
そこまでコルン様らが読み解いているかと言われると分からないが。
ま、いずれにせよ今度会って言われたらこたえよう。
もう、吐き出したあの味なんて覚えなくていいのだから。
もう、何も、考えなくて良い。それが、酷く。
『寒いなあ』
お風呂に浸かっていても。寒い。
胸に手を当て、終わった後に言われた言葉を思い出した。
ー人間で在ろうとしなさい。
『何でですか?』
「華樹神ら華を持つ者持たざる者の区別です。
大まかに言えば心臓が止まれば魔女や悪魔になると思って貰って結構。」
『え』
「大まかですよ。確実にそうなるとは言っていません。」
そうきっぱり言うアルメリアことルメリア様に
その真剣さが胸を指してくる。
「今回はこうして皆さんとお食事会をしましたが、本来華神らとするものです。」
『え』
「花を持ち、花弁を喰らい、咲き誇るその練度を競い合う矜持の場。
…でも、今は違います。神々は彼ら天使らと宇宙に生きながらえた
華を持たない者達の場にと移り変わっていますからね。」
メルの頬に手をそえ、その頬から光を灯す。
嬉しそうに笑って、こっちを見てくれる。優しい目。
この目が何よりも好きだったのに。
「主な時間はこうです。お食事会をし、次は華披露目。
次に舞踏会をして、その日のうちに演奏会を執り行うもの。」
その間に3度程会議を行います。勿論定例会議ですよ。
各宇宙が何をなさられているのか。
元々華を持つ者はコロコロ変わっていましたので
周期は一年を通してです。
会合は人間の季節で言う処の3、6、9月を予定しています。
現在は各宇宙の子達が司っているので、
其処ら辺何をなさるかは貴方に身を委ねると致しましょう。
「ですが必ず10月頃には神々総出で一度お集まりするものがあります。
会合自体は強制参加ではありませんが、こちらは強制です。」
年に一度は必ず出向くようにと声を掛けていたらしい。
意外と学校行事みたいなものだなと思って居れば
学校と大差ないでしょうとルメリアは答えた。
「華神らは三か所だけなら移動が可能です。
自分の星から此方の場所にテレポートするようにね。」
『へー全員一律だったんですか。』
「この広い宇宙ですからね。わざわざ移動してまでして
宇宙を回りながら目的地に到着〜なんて
平和でなかったあの時にやれるわけもありませんから。」
昔は魔女や悪魔が多く存在し、結構な頻度で
神々の場所へと襲撃にかかられていたらしい。
その為結構ボロボロの状態で生きていた時もあるとかなんとか。
願いがかなえられるというのもあるが、
どうやらそれ以外でも襲撃はあったらしい。
「その為ご自身の身はご自身で守らねばなりません。
まぁ幸いなことに、貴方の現状とても良く恵まれていますからね。」
『え?』
「ふふ。その日を楽しみにしておくとよろしい。」
なんか怖いんだが。
「話を戻しますが…貴方が主にすることは3つ。
1つ、本来の華を咲かせること。まぁ此方は遅れても構いませんし、貴方のことです。その華以外にあるでしょう。」
『え?な、なんでわかるのですか?』
「その着飾った衣服。それは見習いとは言えど装着すればその者の力が引き出される筈のものなのです。」
…ですが、貴方の場合違う。
「宝石の色もない上に立てかけている勲章にすら華が咲かない。
それどころか胸元にすら華が中々でないとあれば大問題です。
まぁ主な理由は今咲かせている華ではない、というものでしょう。」
でなければ話になりません。
「曲がりなりにも貴方は私の贄となったお人です。
廻廊に入れる者は華樹神になり得る存在しか通用しない。
…もしくは、華樹神以上の存在であるか、」
…それとも、あの伝説に在る”王”なる存在か、いやそれは流石に言い過ぎだろう。
「ともかく、まずは花を咲かせることです。コレが出来ない以上先には進めません。
華樹神ともあろう者が自身の華すら咲かせずしてどうなるというのでしょう。」
それ程迄か。そうおいたわしやと言いたそうに泣き崩れるアルメリアに、メルは少し狼狽える。
「では2つ目。」
『急に戻るね????』
「力を付けて下さい。貴方は筋力が無いですが、有るに越したことはありません。
加えて勉学も続け励んでいましょう。まぁそこら辺はルトラールも手伝ってくれていることですし、
今度日を改め、お話が行くと思います。」
『????は、はぁ…。』
では最後です。コレが一番重要なんですよ。
「心臓を動かし続けて下さい。絶えず。」
『…え?』
「先程も申し上げましたが、願いを維持するということは
そもそも願い自体が人であったことから起因するもの。」
ですが神になった以上、其処迄必要とするものではない。
願いが核となり、心臓の代わりとなって生命を維持してくれています。
「その為変な話太陽の光と水さえあれば生きていけます。」
『え!!!!』
「ですが…その分規則は乱れ、力も衰えることが確認されています。
加えて何故かは知りませんが、祈る力も、生命力も衰えました。
その為自分は神ではない、人であると言い聞かせる。」
そうしたら胸元の鼓動は動き出します。
「華を咲かせていながらも絶えず音を響かせなさい。よろしいですね?」
それが、華樹神見習いとしての試練でもあり、華樹神として身を降ろした後にも、大事になってくるのだから。
そう言っていたが、
『と言われても〜心臓って動けええで動く問題じゃ無い筈なんだけど…』
でも、何故か知らないが動いている。
試しに本当に試しに、心臓が止まってしまえばいいと思ったが
それでも動いていたので、心臓自体が止まる時は恐らく何かしらのアクシデントが必要なのだろう。
まぁ何がとは分からないが。其処ら辺は分かってくるだろう。
心臓を止めたまま維持すれば魔女に、か。
私が魔女になった時はどうなるのか、少し気になるところではあるが。
『…ま、なんとかなるでしょ。』
そう思いながらメルは湯船にたっぷり浸かり、その身を癒したのであった。