額、頬、顎を伝い
「お待ちしておりま、した。」
『シン様?』
「…随分とおかわりになられて。」
『衣装のこと?今日はお出かけだからビーデルから貰ったお洋服着てみたけど。』
そう言ってメルが今日着てきたのはワインレッドカラーのワンピースだ。
白いレースがワンポイントで可愛らしい襟袖と襟元を見つつも
髪の毛は昨日纏めたようなお団子一つで
サクランボのヘアゴムを使って纏め上げて貰えてる。
「ビルス様は?」
「シャンパ様が遊びに来られておりまして。今だ睡眠をとられています。」
「そうでしたか。それにしても、本当にお久しぶりですね。
メル様がこうして来られるなんて。しかもまた一段と可愛らしい姿で。」
『…あう、そ、そんなこと……ないですよ。』
「????」
「ふふふ、メルさんは照れ屋さんになってしまわれましたので。」
そのようなお褒めの言葉すらも照れちゃいますよ。
困らせることをしてすみません。
「まぁ事実ですから、いい加減慣れて頂きたいのですが。
最初の頃なんかサラッと受け流しておられたのに、どうしてこうなったのやら。」
『うぐ…だ、だって…そりゃ、好きな人達に言われたら、嬉しいでしょ?』
傷付けたくないし、かといってありがとうって言うのもなんか違う気がして。
どう言っていいのか分かんなくて。
そうメルは俯いていくのをシンはウイスを見て首を傾げて見ると
ウイスは首を横に振ってため息を吐いた。
「本当に昔から見境が無いと聞いていましたが、事実でしたねえ。」
「そのまま受け取って頂いた方が私としては嬉しいですがね。」
『なら、あ、ありが、と?』
「ふふ、どういたしまして。ささ、ゆっくりして言って下さい。」
抱き上げたままではあるが、
ウイスはゆっくりとメルを抱き直してシンの跡をついて行く。
「…ふふ、気になりますか?」
『あう!!!…うう、ちょ、ちょびっとね?』
「ん?何か気になることでもありましたか?」
「ああいえ、メルさんは特に、此方で思い入れがある様子でして。」
『うっ!!ウイスさん!!!』
「ふふ、だって間違っていないでしょう?」
『そりゃ、そう、だけど…でも。』
そうメルは後ろを向いてその情景を見つめてしまう。
確かに、この地には彼も、彼等も、生きていたのかと思えば、
何処か胸がツキンと痛くなった。
エフェメラル様と呼ばれて、向きたくない場所に向いてしまう。
あの場所を見つめるなと、言われているから。
嗚呼でも、確かに思ってしまうのだ。縋り付いて、しまいそうになる。
『会いたい』
「エフェメラル様」
『だって、悲しい、悲しいよ…会えないの。
もう、その時間にしか、生きれない。』
ポコポコと音が聞こえる。優しい声が聞こえる。
暖かい陽だまりに生き残る私。
二人の狭間にすっぽりはまって、
綺麗な白い綿の様なまぁるい花を
輪にして、頭に乗せて。
酷い単語を並べて、こう言うのだ。
ー嗚呼、二度と、叶わない。
『大丈夫、使わない。伸ばさないよ?行かない。行かないから。』
「…そうでないと、皆さん泣いてしまわれますよ?」
『うん。大丈夫…大丈夫だよ。』
それは過去になったもの。もう、何処にも存在していない者。
寧ろ生きては許されない者。
だから、コレは、夢の中に、心の中に生きねばならない。
人は何時か死に、そして生まれ出る者達。
『待たなくて良いって、こんなにも辛いんだなって。
気づいちゃっただけだから。』
「メル様…」
「彼らは人間。貴方は天使。我々が手を加えれば、
貴方の望む世界は勿論取り戻せることでしょう。」
ですが、それを貴方も、彼等も。望んでいるとは到底思えません。
うん、分かってる。だからしないんだよ?
『傷付いてその傷から新しい感情に触れることもまた、お勉強だからね。』
「…ええ、その通りです。流石は元原初代の天使様ですね。」
ご自身の立場を弁えていらっしゃる。
いえいえ、それ程でもないですよ。
『私は欲に忠実で、人も悪魔も天使すらも
仲良くして欲しかっただけの我儘さんなので。』
「おやおや、それはそれは。」
『でも私本当はエフェメラルって名前じゃないの、知ってた?』
「え?」
ニコリと微笑み、その名を口にすれば、一体誰が出て来てくれるのだろうかとメルは笑う
『不思議だよね、四つ葉のクローバーって四つの葉で幸福を意味するの。
三つだと不幸せであり不完全だって言いたげなのにね、
花言葉は「愛」「希望」「信頼」って葉ごとに意味が重なっているの。』
「何を言って」
『時間と同じだね。変わらない。其処に存在するしかない。
見えずに触れられない存在しているもの。』
私達華を持つ者達は、その身に名を刻まれていた。
本来の、名であるもの、神名であるであろう、名を。
『永遠の手前にある奇跡の時間に、私はその感情を置いている。』
「エフェメラル様。貴方はエフェメラルという名ですよ?」
それ以上もそれ以下もない。そう言う彼の目は、真剣そのもので。
この身体を離さまいと力が少しだけ強くなるのを感じ取った。
『…常に同じ。時は平等に。中立は時の印。
時間が狂えば、中立にならない、
だから消えて消滅し、また新たな形を保とうとする。』
「メルさん」
『私は真昼間に位置する一つなだけなのよ?ウイスさん。』
「それでも、貴方は貴方です。この世界でたった一人しか存在しないお方。」
どの世界軸でも、
貴方の様な形になれるなんて、
そう思わないで下さい。
代わりなんて、何処にも存在していないのだから。
そう言うウイスにメルは笑ってみせる。
『真昼間でも真夜中でもない場所は、一体なんていうか知ってる?』
「メルさん、口を慎んで頂けますか?」
帰りましょうという彼の動きがぴたりと止まる。
いや、動けないというのが正しいか。
メルの顔を見れない、下を向いたまま、時間が止まっている様に感じた。
「っ」
『青い空でも黒い空でもない世界。白い世界に、何時だって存在するの。
私は私達は、その3つを光に変え、世界を創り刻み歩いて来た。
でも不思議ね?そしたら輪なんて一つで良い。どうして二つもあるの?』
違う、最初から三つ存在していたの。
『花冠がこの頭に乗る時こそが、3つの輪を繋ぎ完成するというもの。』
私は、その時を今か今かと待ちわびている。
『知ってる?真昼ってお昼の12時を表すんだよ?でも0時っても言うんだよ。』
おかしいね。本当に。
0番目に、生き続けた私は、
最初から、その場所にしかいなかった。
『私はエフェメラル。儚い時間、午前と午後に挟まれた者。
「っめ」
『その名は、
その言葉で、背後に気配を感じ取る。
ギラギラと気配が、力を圧を感じる。
「その名を呼ぶということは、分かっているでしょうね?」
「っ、お、にいさま」
『…ほら、来てくれた。』
「すいません、借りていきますよ。」
そう言われて、メルはその腕を引き上げられてしまう。
『完成させたいのかさせたくないのか、どっちなの?』
「少なくとも私がいる目の前で完成させて下さい。
何別の所でしれっと飛んでもないご迷惑をかけているのですか。」
『わ〜しっとだあ』
「お黙りなさい。」
ギロリと睨まれても、ケラケラと笑って見せてしまう。
花冠を交換しないのは、貴方が私を完成させないでくれてるだけ。
かつて呼ばれていた名を、私が告げれば貴方は来てくれると思ったのだ。
ほら、メルでも、エフェメラルでも、なんでもなかった。
白く透明な翼を広げ、空を浮遊しようとするも、
その浮遊は役になんてたってくれない。
「第7よ、我々を飛ばして貰えますか?」
「っ、え、ええ、構いませんが…」
『ええ〜〜もう帰るの?』
「貴方が悪いんですよ貴方が。」
また来させますのでそう言う彼に、メルはウイスに軽く手を振ってその姿を消し去った。
++++++++++
「全く、とんでもない方ですね。」
『あれえ?コレなんですかね。』
「見てわかりませんか?首輪ですよ。金の。」
二つの首輪を外され、カチャリと付けられてしまう。
おかしいなあ、悪いこと一つもしていない気がするが。
「…やはり第7は駄目でしたね。」
『え?』
「あの場所は貴方が一番人に近づける場所。…貴方隙を狙って行ってましたよね?」
それも自分の感覚を無意識にして。
嗚呼そう思えばそうかもしれない。
「あの名はかつて貴方が知った全王様と同じ様な作用を持ちます。
彼等二人には後で話をして記憶を消し去らせて貰いますのでご了承を。」
『ええ〜〜駄目なの?』
「当たり前でしょう。何寝ぼけたことを仰ってるのですか。いい加減にして下さい。」
あう、
「当分外出禁止ですよ。一応言っておきますが、仕事も一時中断ですので。」
『え゛』
「後で仕置きも入れます。まぁ身をもって感じてしまえば貴方も其処迄馬鹿ではないですし、分かってくれると思いますが。」
本来の名がどれだけ恐ろしいものか、味わっておいて欲しいものです。
そう言う彼に、ううとメルはしょげつつ自分の住んでいた場所のトンネルに作られた柵に触れず立ち尽くす。
これに触れたら多分金の首輪と同等の威力を持っているだろうから
まぁ間違いなく意識が吹っ飛ぶ可能性が高いだろうと思ったのだ。
お察しの通りですとサワアが低い声で答える。
「その状態でこの檻に触れたら貴方の意識は飛びますし、仕置きは倍になりますので。」
『え゛』
「嗚呼別に仕置きが欲しければどうぞご勝手に触れて貰って構いませんよ?その分貴方がある意味苦しくなるだけですし、自分の首を絞めてしまったらどうなるかも経験するいい機会ですからね。」
おっと、これは本気で怒ってるな????
「当たり前のことを言わないで下さい。
その状態での名ではありますが、その威力は桁違いなんです。
我々の手の届く範囲内で収まっていてもらわねば困るんですよ。」
ただでさえ貴方の力は膨大で、本気で動けば勝てないというのに。
名を少し変えることで威力を半減し、尚且つ意識も変えて能力を抑えている状態。
「それが本来の形でこの地に降りたら
下界の人間らにも影響を及ぼしかねませんのでね。」
『…嗚呼やっとわかった!!!
私がきちんとした天使になるまでに呪いとか細かい物を取り除かないと
完成したら戻れないから余計なことはやるなって言いたいのね!?』
「はぁ…………」
そうですとも言わずに深いため息で頭を押さえて固まるサワアに
メルは首を傾げて違ったかなと思い始めていた時だった。
付きましたと声が聞こえてその姿を見る様に
ちらりとサワアの横から覗くように見る。
「また珍しいことを。何をなされたんですか。メル様」
「元の神名を口滑らしたんですよ。ウイスさんらの前で。」
「エフェメラルさん?」
『ひっ!!!!!』
ニコリと笑った大神官の顔には、
隣で歩いていたコルンと目の前に居た
サワアも目をぎょっと丸めた。
「様子をと思って見に来れば…余り事の次第を分かっていませんね?」
『あっわ、わかりました!!分かりましたから!!!』
「その感じは分かっていませんよ?長年の付き合いなのでね。」
『あの、なんでこっちへ???』
「寧ろ何故逃げるんです?」
『お兄さんの背後が恐ろしく怖いからですよ!!!!』
気の練り方が尋常じゃない。
それさっと切ってきたら大天使さん以上の傷残るよね!?!?
間違いない気がするんだけど!!!!
「金の首輪にも慣れ過ぎてしまって仕置きになりませんね。」
「元々気を分散させるものでしたよね?」
「ええ。この子の場合は精神面から固めているので
ちょっとやそっとの仕置きだと分かりませんよ?」
「まぁそうなんですが…」
「ふむ、そうですねえ…彼等にも一応話は聞いておきますので少々お待ちを。」
++++++++++
そうしてやってきたのは全王宮の方です。
正確には華樹神の広場にある部屋の一部を大神官様が一時的に繋げてくれて
其処から移動しまして、数分後の部屋の中は簡素でベットが大きなヤツ一つですね。
ううん、嫌な予感しかしない。
「お待ちしておりました、大神官様。」
「すみませんお忙しい中ご足労頂きまして。」
「いえいえ、とんでもありません。して要件は。」
「少々、ね。」
『あの、大神官様?』
「なんでしょう?」
『今から何をなさるつもりで???』
なんだか嫌な予感がして困るのだが。
この場所には後ろにコルンとサワア。
そして目の前には大神官だけでなく
コニックさんも来てくれていた。
「別に逃げても構いませんよ?
まぁその分仕置きが増えるだけですが。」
『待って本当にそんな罰なのなんで????』
「なんでと言うのですから分かっていないですよね?
まぁこれから分からせることになりますが。」
ついでですし、皆さんもお勉強になるでしょう。
そう言って指を鳴らしてメルの衣装を変えてしまう。
黒めの長いワンピースに、なんか見たことあるなと
ふと考えてすぐに思い出して距離を取った。
「っと」
『っ!!』
「おや、逃げるのですか?」
『ちが!!待って!!本当に待って!!!
違う違う違う、待って違うの。なんでこれ知ってるの!?
というかなんで、いやなんでしってる!??!?!』
「そりゃあ一度は貴方と契りを交わしましたし?
その記憶を読み解いただけですが?」
『あ゛!!!!まっマジでそれだけはやめて!!!
本当に駄目!!ほんとねぇお願いだから!!!!』
「駄目です。これ以外方法を無くした責任は取って下さい。」
急に手のひらを返して逃げようとしたメルに、
コルンとサワアが杖を交差してドア前で防ぐと
ぎょっと焦って身体を飛ばしつつも
前を後ろを動いて忙しないったらありゃしない。
後生だからあと泣き叫ぶメルが足をバタバタとその場で踏み続けて言うのは
逃げたいが逃げられずに地団太を踏み続けているだけだというのだろうか。
両手は胸元に揃えてその場で足踏みをし続けて困っている。
「コニックさんだけにしたのでもありがたいと思いなさい。
正直全員集めて見せしめにと出来る範囲内なんですからね?」
『うぐっ…そう言われると、うう……。』
「ほら、自分の足があるならさっさと定位置に行きなさい。」
そう言われて肩を落とすだけ落とし、もじもじしていたが
メルはその足で小走りになりつつもベットの上にちょこんと座り込んだ
背中を少し此方へ見せているのは反抗の印か、それとも恥じらいからか。
いずれにせよそんなものも外すつもりではある。
「我々を倒して組み敷いてしまえばいいものを、しないんですね。」
「出来る力はありますよ。それをしないのがこの子の欠点でもあります。」
『っ…!!』
「名の意味を余り深く教えて差し上げなかった私の失態というのもありますが、
貴方は少々純粋すぎますからね。あの方が貴方を溺愛していた理由も分かりますが。」
同時に我々が壊れない様にとその名を与えてやっていたというのに。
「貴方という子は名に囚われたいのか囚われたくないのか
記憶を探ってもその感情を知ってもなんら分かりませんね。」
『あれ?それ褒めてる?ねぇ褒めてるんだよね???』
「幼子に戻しても手を緩めるつもりはありませんからね。」
『…っ』
「牙をむいても笑っても何しても駄目です。まぁ、幸いなことに?
貴方はとても賢い子ですから、今からする仕置きの内容も
どうやら分かっておいでのようですし、
ついでですから彼らにご説明して差し上げなさい。」
『え゛』
「なんです?この私に言われて出来ないとでも?」
あっ待ってその言い方は無理ぃ……。
メルはもやもやした感情を手でわきわきと動かした後
深いため息を吐いて降参したのかコニックらの方を向いて説明をする。
『…華樹神は元々人間です。
人間が天使に変わる変化の元とも言いましょうか、
人間の感情に溺れてしまった者達を戻す仕置き
云わば矯正と言う物がありましてですね。』
「はあ、それがこの状態ですか?」
『…ええそうです。一人に対して異性の者を4人付け、
今から三日三晩その者の一番良いとされることを
永遠と繰り返し続ける仕置きがありましてですね。
私はこの仕置きの中でも、もっっっとも苦手としてまして。』
「早くしゃべりなさい。時間を取らせてどうするのですか。」
『うぐっ』
一々棘がある…こわいよお
貴方のしでかしたことですからね。
『うう…仕置きは全部で5つあります。拷問等の苦痛を伴う仕置き、
力を奪う剥奪の仕置き。こっちは前に付けていた金の首輪のことです。』
「アレお仕置き用の首輪だったんですか…!!!」
『ええそうですよ…それでですね。情を一時的に殺す消失系の仕置きと
拘束系の仕置き、あと最後が、情を増やす仕置きがありまして。』
「情を増やす?」
「普通に聞けば何もな、い、と…お待ちください。
もしかして、情に溺れ続けながら気を回すのですか?」
『コルン様はお察しが早くて助かります。そうですあってます。
正確には認知の矯正というべきでしょうか…はい。そうです。』
そう何時になく覇気も元気も何一つないメルに、少し申し訳なさを感じるが
そんなこと考えなくて良いですよと大神官がサラッと答える。
「苦痛を伴う仕置きはこの子にすれば快楽に変換させて仕置きになりません。
かと言って剥奪の仕置きも先程見てみれば
もう手中に収めたのか仕置きになりませんし。」
「て、いや、大神官様????」
「かと言って拘束系の仕置きは今現段階でして意味がない。
そもそもこの子は家に閉じこもる時間が長いので効果が期待できません。」
「嗚呼もしや消去法で首を絞めてしまうことになったと???」
そういうことですね。
「自分の楽になるよう動いたことで
自分の首を締め上げることになるとは。
なんともまぁ皮肉なことですよね。」
「して、その情を増やすとは?」
「メルさん、貴方ご自身で言えますよね?」
今も尚、隠しているソレを。
そう言う大神官にびくりと反応してメルはそっぽを向いた。
びしりとヒビが入る部屋にメルだけでなくコニックらも驚いてしまった。
「ほら早くしないと貴方の大好きな天使達が怯えてしまいますよ?」
『貴方がやってるんでしょうが!!!あなっ……ああもう!!!』
どうしてこうなるかな!!!
私そんな悪いことしていないと思うんだけど。
『…受容といいますか、信頼といいますか、
そういう絆という糸としたものを極力避け続けてます。』
「絆ですか」
「お待ちなさい、まさか我々のことを未だに
信頼していないとか言うんではないですよね???」
『……』
「無言は肯定と取りますよ。成程だから仕置きですか。」
「これに懲りて人に助けを求めることを植え付けて貰えればとね。」
「逆効果な気がしますが…気のせいですかね?」
「ええ気のせいですよ?コニックさん。」
間違いなく気のせいじゃないよ????
「その服装は、仕置き用ということですか?」
『うう、そうです…本来の服装は基本白で身を包んでいます。
それはえと、待って?コレ言っていい範囲?』
「安心なさい。良く無ければ仕置きの時間が延びるだけですよ。」
『よくないね!??!?!?』
嗚呼でも仕方がないか、此処の人間ならまだ言っても良い、うん。いい。
『白は空白の時間です。つまり0という
始まりでも終わりでもない狭間の時間に位置します。
私の名前は狭間に位置する状態の場所、
それは空白を意味するも同意義です。』
その為帰る場所は白いあの空白の世界にと飛ぼうとするのは、
本能的に帰るべき場所だったということになる。
まぁそこら辺はどうだっていいのだ。そう、どうだって。
『繋がる状態、つまり紐となる線を作ってしまえば、
私の感情は貴方方天使だけでなく私が気を許した
全ての神々に伝わってしまうことになります。
文字通り私が王様になりあがるということにもね。』
「それをしたくないから我々と距離をとっていたりしていたと?」
『まぁそれもあります。後は単純に全王様が
どちゃくそ可愛いから私が王様になってしまうと
彼の自由が奪われて私が愛でれなくて嫌だっていう理由ですが。』
「いや、なんですかその陳腐な理由は……。」
そんなものの為に我々は守られて、いや考えない方がいいでしょうね。
『時間は常に変わらない。それは完全でも未完全でもない。
それは空白に似たような者、それは終わらない階段の廻廊の様。
それは昼も夜も変わらず表裏一体に生き続ける状態そのもの。』
「…まさか」
『そう、その名こそが、私の天使と在った存在であり、
この地に生まれる予定だった名なのですが…』
「その名をこの子は軽く受けとめ
さらりと下界とまではいきませんが人前で喋りましたのでね。」
「だから罰をと。」
『うう…でも権利状態は無効化になってるはずでしょう?
幾ら何でも、こんなことしなくたって…』
「メルさん?まだわかりませんか????」
うぐっ
「無効化になっていようと貴方の状態は華樹神の位置で間違いありません。
華樹神は情で動く神様です。極めて人間に限りなく近い場所に位置し、
己を人間だと勘違いさせたり神だと思い出したりすることでも威力を変える者。
その願いを情を形にしたのが華というものです。」
「そんな大それたことだったのですか…」
「ええ。その為情が低い状態だと何が起きると思いますか?」
「…気が少なくなる?」
「そうです。気が少なくなるとどうなります?」
「力の…っまさか!!!支配できるとでもいうのですか!??!」
コルンが驚き声を荒げるのにそうですよと大神官は答えた。
「名を明かすとは即ち死を意味します。
名を知り力を分かった者が、敵かも分からない。
ましてや敵すらも味方に取り入れようとする
貴方が一番してはならないことです。」
「あの時はまだ名を知っているとは言えど、神々の位置に居た為
彼女の動向は此方で多少なりとも見えたので目を瞑りましたが、
今回の件につきましては貴方が悪いですからね?」
あれ程名には気を付けなさいと言ったでしょう?
もし界王神が悪い心を持ち合わせていたらどうするのですか。
『っシン様はそんなお人じゃ!!!』
「それは貴方が知るシンという者。
…貴方は前を向かない。向くことを恐れた。
まぁあの人がやった行為なので、
其処ら辺は情けで話を流して差し上げますが。」
『っ!!でも!!!』
「だとしても。下界に一度でも降り立つ気配がある
今の貴方には先にお灸添えをしておかねば
神々の反乱など起こさせる訳には行きませんからね。」
これでも貴方を請け負った身なんですよ。私は。
「兄でもあり、かつての華樹神であった
王の人からご命令を承っているのです。」
『うう……』
「確かに、彼は貴方が思う様に良い子ではありますよ。
ですがその姿に甘んじて軽々しく情報を与えるとはまた違う話です。」
「まぁ自らの命を差し出している様なものですか。
そりゃあまたとんでもないことをしましたね?」
『うぐ…ご、ごめんなさい。』
確かに調子に乗っていたかもしれない。
この子達なら大丈夫だからと、信頼をしていたのかもしれない。
でもそれは信頼ではない。自分の中に居る彼らの模倣での話。
繋げているだけで、本来生きている彼等をみていない
愚かな行為であるのは間違いないのだ。
だとしても、この情を向けてしまえば、怖いのだ。
何も怖がることなんてないと手を前に出してくれる。
でもその手を取って地に落ちない保証なんて一体何処に存在する?
人間は神でもあり、神もまた人間であるのだ。
人間が神を知るからこそ、神は成り立つ。
多く在ればあるほど、その威力は増していく。
そう、今の華樹神みたいな情を持つ者の様に。
でも、私はそれを成し得ない様にセーブさせ続けている。
そうすればトカゲのしっぽ切りの様に生き延びられることが出来るから。
だがしてしまった行為はトカゲのしっぽではなく
トカゲの心臓そのものを差し出したことなのだ。
「名は体を表すとも言います。貴方は真昼間に位置する存在。
理の一部を彼等に奪われると直通路で
この世界が理ごと改変されてしまいますよ?」
「とんでもない位置におられるではないですか……」
『ううう…』
「下界に降ろすのに許可制を取った理由が分かりました。
名を奪いその地位に成り上がらない為の予防線だったんですね。」
「ええ。ですが気を許せばこうですからね。」
「嗚呼…それで、その本題は?」
そうでしたね。
では、
「始めると致しましょうか。」