適当に呼んだ名前は外れた
「…め、る……?」
『…?どうしたの?えーりん。何か悲しいことあった?』
そう寂しそうに手を伸ばすメルの手を取り、
ごめん、ごめんねとメルをそっと抱きしめてやる。
首を傾げ、ただただ困り果てるメルに、
咳払いしてエーリンのことを引っ張る者が声を掛けてくれた。
「ひとまず、無事に引き取って頂けたこと、大変感謝申し上げます。」
「いえいえ…遅れてしまったこと、大変申し訳ございません。」
「この処罰は甘んじて受け入れます。」
『…?ね、ねぇ、えーりん。』
「ん〜?どうしたの?」
『あの人達悪いことしてない、よ?
私が悪くて…?あれ?でもなにしてたん、だっけ?』
想い出せないと言ってふわりと広がる翼に、
後ろから見ていたアニュラスの目が細まる。
「…いいのよ?無理に想い出さなくて。」
『え?』
「いいの。もう、なぁんにも。考えなくていいのよ?」
『でも、何か、大事なこと忘れてて。誰か、助けたかったのに。』
「それに関してはご安心を。」
そう言ったのは大神官だった。
「彼の処遇は此方で何とか致しますので。
貴方が考える事など何一つありませんよ。」
『…しなない?あえなく、ならない?』
「ええ。もちろん。」
『…っ!なら、よかった…!!!』
「ですので今日はもうお休みになられて下さい。」
長旅で疲れたでしょうし。
そう、だっけ?
…ええ、そうですよ。
「じゃあ一緒におねんねしにいこうか」
『…!えーりんと!?する!!!』
「ふふ、それじゃあ、って」
「ちょ、これ」
『あるけるよ!!ほら、はやく!!』
「あっちょ、馬鹿!!!貴方それシーツ一枚なのわかってるの!?!?」
ねぇ絶対分かってないでしょ!!?!??
きゃははははは
そう笑いながら走り出したメルを追いかけ、
消えていくエーリンことヴァイスらを見届けた後
連れ出してくれた者達は会議室の方にと足を運んだ。
++++++++++
「…大体の事情は把握しました。
二つの原因が考えられるでしょうね。」
「一つは精神的なショック、彼女は
人間の悪い方面を物語上でしか見届けていませんからね。」
「廻廊であれども、その時間はあくまでも他人の人生と
共に生き続けるだけで、その人個人ではありませんからね。」
何度かきついことは在ったとはいえ、
それは他人が傍に居たからこそ成し得ているもの。
自分一人だけの人生ではなかった為、
多少なりともショックは大きく膨らむことはない。
「もう一つは、術、か?」
「恐らく名を知られたことへの術でしょうね。」
「あれ程口を酸っぱく言い聞かせていたんですが…」
「…いや、寧ろ抵抗していたでしょうね。」
「え?」
「あの子アレでもプライドが高いですから。」
「まぁ、大体察しがつきますから。
大方警戒し過ぎて周りが見えず、肝心な所で上げ足を取られ、
そのままずるずる答えてしまった、と言った処でしょうね。」
仰る通りで、という彼女の声は聞こえない。
いや、もう見れないというべきか否か。
「すみません、我々の失態で彼女をこうまでさせてしまい。」
「処罰は甘んじて。」
「お二人共……。」
「顔をお上げください。サワアさん、彼の様子は?」
「…酷く落ち込んでおりました。事情をきちんとお聞きしました。」
どうやら彼も被害者のようです。
…まぁ、そうでしょうね。
「あれ程彼女の気に触れ続けた人間ですからね。
悪い感情も綺麗さっぱり洗い流されてしまうのも
無理はないでしょう。」
「…そんな力があったんですか。」
「力と言いますか、最早アレはただの習性といいますか。」
「それで?」
「彼女も殺してあげるなと言っていましたし、
ひとまずは少々の処罰をと、考えております。」
「それでしたら、貴方方にお任せします。」
「…よ、よろしいのですか?」
「ええ。その代わり、彼は勿論彼女のケアも。頼みましたよ?」
「勿論です。」
「ありがとうございます。」
よしと声が聞こえる中、ふと気になった場所に目を向けた。
「エフェメラル様…!?!?」
『…へへへ!!』
「はぁ…全く、どうされました?」
「え、だ、大神官様?!!?」
小さな子供になっている子に、
ため息を吐いて答えつつ近づいて行った大神官に
周りの者達もざわついた。
「会議中は入らない、とお話していたでしょう?」
『え〜〜〜でも、きになったから!!』
「気になって入ったらいけませんよ。」
『むう〜〜〜。』
「…あ、あれは?」
「しっ黙っていてください。」
そうリキールが指を指すのに、コルンが声を掛ける。
心なしかメルの様にみえるも、その身体は透けて見える。
現在メルの心境は酷く不安定なために、
前に起きていたことも発生しやすい状況下に陥っていた。
『可哀想にね?何度繰り返したって、結末はおんなじなのに。』
「…メル様」
『まぁた人間につつかれちゃった。あーあ!どうして繰り返すかなあ?
まぁ昼間があれば夜中もあるから、繰り返さざるを得ないかな。』
「彼女の傍に居てやらなくてよろしいのですか?」
『ん?嗚呼〜まぁいいんじゃない?理も傍に居る事だし。
僕は僕で緩やかに動いてやるしかないからね。』
「そう言って、こっそり抜け出し星を破壊しよう、
なんて思っていませんでしたか?」
そう言う大神官に、メルの目が赤く光りを灯す。
真夜中に位置する者、その目が、黄金色が混ざり合う。
「彼女の損傷が余りにも激しいのは分かります。
ですが、貴方がしたらそれこそ彼女は嘆くのでは?」
『…流石にバレちゃうか。』
「彼らに処罰を与えさせますので、今回はお引き取り下さい。」
『……君がティオ君か。』
そう足を少し絡ませながら浮遊するメルらしき者が
ティオの前に姿を現す。
その姿に、ははっと膝をついてかがむ彼にそのままでと答える。
『…ふむ、んん〜〜〜どうするつもり?』
「これの処罰を、ですか?」
『ん。』
「…一応全て吐かせた後、今後の躾も兼ねて外には出すつもり等ありません。」
「っえ!?!?」
「当たり前でしょう。
貴方をこのまま野放しにするのはよろしくありません。
かと言って四六時中放置するなんて以ての外ですからね。
今まで通り過ごしてもらいますよ。」
そう言うサワアに、嬉しい気持ちと、少し申し訳ない気持ちが複雑に混ざり合う。
『まぁ、君がもし、この時。』
メルらしきものが指を鳴らし、その世界を切り替える。
倒れ込んでいた全裸のメルを見て、神々の反応が変わった。
起き上がるメルが、ティオの方を向いて声を上げる。
『あの子を庇う様な真似をしなければ…僕は今頃君を殺してやっていただろうね。』
「…これは」
『僕がこの記憶を担っているからね。こうやって映像として叩きだせるんだよ。』
「嗚呼、だから記憶が無くなっているのですか?」
『正確には持ち出している、が正しいけどね。徐々に慣らしていくし、まぁこいつの素性が分からないのが難点なんだがな。』
メルの身体を取り、人を天秤にかけて誘う者に
その場の空気が何℃か下がっていく。
『彼は誰かを蘇生させようとしていた。』
「誰か、ですか?」
『それを察知した彼女が怒って華を咲かせようとしたが、不発に終わって尻尾を出してしまったんだがな。』
「………はぁ」
『これ程の人間に囲まれたら流石にびびるから、仕方がないだろうが。』
上に上がり、檻の中でメルは逃げ惑う。
手が上から下から横からと出てくるのを
今まで見たこともない様な拒絶を見せ、其処から離れようとする。
口に手を当て、言わない様にと藻掻きつつ、人質に取られた後は、もうお察しの通りだ。
中央に持って行かれた後の光景は指を鳴らしてかき消してやった。
これ以上彼らの反感は買いたくないというか、これ以上見ても無意味だからだ。
「…浅はかな」
「コルンさん」
「言いたい気持ちは痛い程分かりますよ。全員同じ気持ちです。」
「若干三名、いや四、五名くらい違う気が感じ取れますが……」
「確かに、分かりますですます。」
ま、まるか、りーた?
「エフェメラル様はとても可愛らしく、少し触れただけでも反応してくれて
縋る様に甘えてくれる純粋で可愛らしいお方ですますから。」
「触れたくなる気持ちは分からなくないですよ?」
「ですが…壊れる程にするとは、加減を知らないのに触るとは如何なものかと。」
「正直其処に置くだけでも汚らわしいくらいですからね。」
『はいはい、ストップストップ。あいつにも知られたらどうする。天使らよ。』
練りに練る者達に、子供姿のメルが手を前に出して止めに入ると、
その姿にか、それともメルを思ってか、彼らの気が静かになっていく。
『怒るのはいいけど、その先の責任とれる?』
「…そ、それは。」
『…今回はあくまでも!!真夜中に入り込んだから、この僕が!!
すぐに対処出来たからこそ、効果が期待できたからいいけど。』
もしも、人が、もしも、天使が。
この子の感情に、手出しをしようものならば。
『【その身に余る苦楽を永久に回してやろうと思ったのだが?】』
「ひっ……!!!!」
『そんなことこの子が望んでいる訳もない。
なんなら今回の件で僕ら二人共力をごっっっそり持ってかれちゃったからねえ。』
「そういえば、あの気は一体何処に行ったのでしょうか…?」
それも含めて、気になるのだ。
『理が変わるからこそ、でしょう?ねぇ?お二人共。』
「おふたり…?」
「…お前ソレを此処で言うか?
『おお、恐れ多いことを。』
お辞儀をする子に、深いため息を吐いたアニュラスが頭を掻く。
「まぁ、彼女の方は君らに任せる。お前は大人しくしとけ。」
『え〜〜〜〜〜』
「
『…分かりました、分かりましたよ。全く、人使いいや神使いが荒いなぁ。』
「しないっていうだけだから間違いなく使いはないはずなんだがな。」
そう口を入れる彼に、ぶー垂れる子供が浮遊して回る廻る宙を回る。
見えない者に、サワアが声を掛けた。
「見えなくていいんですよ。なにも、知らない方がいい。」
「…わかりました。」
「…それでいい。」
「ではこれにて解散で。皆さんご苦労様でした。」
大神官がそう言って彼等を元の宇宙へと戻し終えた後、
子供と理らも、いつの間にやら消え去っていて。
「さて、我々、だけに。なりましたね。」
「っ!!!!」
「本来であれば、貴方には人が耐えられないであろう
ライン擦れ擦れのを告げる予定でしたが…
貴方の周りに免じて、今回限りは許して差し上げましょう。」
身体の痛みではない、精神的な痛みが声すらも奪う。
彼の目だけではない、サワアやヘレスらもその痛みを味わっていた。
大神官が怒るのも無理はないのだ。あれ程危険に晒すなと忠告してのこれだ。
本来であれば消滅させる権限を持ち合わせている全王様に仕える者。
その為彼の言葉一つで自分らの運命が変わることなんて造作もない。
「全王様もメルさんが仰られることに従うとのことですし。」
「…っすみません」
「謝るくらいなら態度で示すことですね。ヘレス。」
「…はっ。」
「本来ならば、こういうことは消し去るのが礼儀なんですがねえ。」
色々イレギュラーが発生していまして。
私も疲れたのでさっさとお帰り下さい。
そう言って大神官はサワアらを元の場所に戻してやり、
本当に一人ぼっちになった処でぼそりとつぶやいた。
「……すみません、また、貴方を傷つけちゃいまして。」
++++++++++
くたりと眠る、子供の様に警戒を無くして眠る。
その瞼の横は赤く腫れていて、泣いていたことを知った。
彼女は理に成る者。その為本来咲かせた華の分、情が分かれて行く。
エフェメラルは片喰を咲かせた。
その為三つの葉と同じ様に三人の力を宿らせることで
理の歯車に導かれるまま道を進んでいく予定だった。
「…すっかり、元通りになってしまわれましたね。」
青い髪の毛も、殆ど暗い色に変わり果てていて。
一応防御結界を施していたのだが、
その気すらも吸い上げられているとは想定外だった。
見つけ次第威嚇を、とも出来たが、彼女自体が拒絶していたのだろう。
此方から見ることが出来ず、帰って来た子の姿をみて
仕舞い込んでいた感情が露わになってしまったではないか。
「本来であれば…私も処罰を受けるのですがね。」
貴方はソレを、よしなんてするわけがない。
なんなら、ティオのことを想い、庇おうとする悲鳴が聞こえてくる。
やめて、どうか、私のせいで、誰かが消えるなんて。
「…今回だけ、今回で、終わりですよ?」
これで分かったでしょう?
貴方がどれだけ脆い存在で、どれだけ儚い者なのか。
人間は強欲で、願いの為なら手段を問わないことを。
様々な知能を兼ね揃えて、この地に仇成すことを。
彼女の膨大な気を使って、何をしでかすかなんて流石に看過は出来ない。
全王様にご相談した結果、一応様子を見つつ、事の次第によりけりでは
全王様自らが出向いて処罰を下して下さるという話になっている。
「みな、貴方が大事なのですよ。」
守ろうとしてくれたんですね。分かっていますよ。
サワアさんやコルンさんの事が、何よりも大事で。
だからあんなにも、警戒して、あんな目付きにまでして。
そうまでしても、守れなかった自分が、許せなかったんですね。
「…傷付きませんよ。大丈夫。
ですから、沢山お話を聞かせてやってください。」
きっと、彼等はそれを望んでいますから。
きっと、そう、きっと。
そう言い聞かせていると、ううんと声を上げて目を開ける子に、
大神官はおはようございますと声を掛けてやる。
『あれ、ここ…』
「お疲れで沢山寝られていました。気分はどうですか?」
『…すこし、だるい、?』
「そうですか。」
『…あれ、なんで?』
そう言いながらメルは下を弄りだすのに、ピクリと眉が動く。
いけませんと言って彼女の手を取る。
目の色が少し濁っているのに、駄目ですねと低い声が出た。
『え?』
「…いえ、此方の話しです。中がかゆいですか?」
『あ、そ、そう…?奥がかゆくて、でも』
「でしたら…身を委ねて。」
今彼らにやらせるのは酷だろう。
あんなに綺麗だった透き通る気は、何処にもない。
あの数時間でこんな濁って帰って来るとは…。
『ふあ…あっ!!』
「嗚呼、コレが悪さをしてたんですね。」
『こ、こえ?』
「ええ。綺麗に取り除いて差し上げますので、そのままで。」
映像でも見ていたが、中を隅々まで吸い取ろうとしていたらしい。
粘液性の媚薬と言ったところだろうが、
これを直で、それも数十分の間止めずに
責め立てられれば、そりゃあ壊れもする。
幸いなことなのは真夜中の方に
記憶を維持させることで乖離現象を起こし、
あたかも自分のことではないかのように勘違いさせつつ、
これが夢であったのだと思わせたくらいだろうか。
まぁ、現実だったと後で知ることになるだろうが…
その時はその時で優しく抱きしめてやればいい。
それにしても、快楽には弱いと思っていたが、
コレに耐えつつも、理性を何度も取り戻していたとは…
「ほんと、お強くなりましたね。エフェメラルさん。」
『っんふ、あっ、んん!!』
「ちゃんと約束を守って頂いて嬉しいですよ。」
『あっでも、ふっあ、あっ、まも、まもれ、なかっ』
「守ってくれました。」
『でも』
「守りましたよ?大丈夫。」
ボロボロと泣いて、違うと首を横に振る彼女。
忘れちゃった忘れちゃったと、
子供の様に泣きじゃくる子に、大神官はその手を止め、
そのまま優しくメルの背中に手を回し、抱きしめてやる。
気は恐らく彼等の力と同じ様に、
メルが望んだ感情の気を綺麗にくりぬいたのだろう。
逆に言えば彼等二人のことが、
この子の全てになっているというもので。
それを知った時、二人が一体どんな反応をするのか
少し面白くて笑いが込み上げてきてしまった。
「すいません、笑ってしまって…」
『うう…』
「もう取り除いて差し上げましたので。
もう大丈夫そうですよ。」
『あう…?』
「…よ、よろしいので?」
「ええ。まだ記憶が不安定なので次いでですから
もう少し濃く植え付けて差し上げれば?」
「お父様!?!??!」
そう慌てふためく男性に、
メルは首をこてんと傾げ、大神官の後ろに潜りこんだ。
「…っ!!」
「大丈夫ですよ。そうだ、エフェメラルさん。
貴方に会わせたい子がいたんですよ。」
『あわせたい?』
「此方の方です。」
「あっちょ、お、お父様?!?!!」
無理矢理背中を押しだした大神官に、思わず声が裏返る。
「貴方が名付けたお名前です。覚えていますよね?」
「っお父様!!流石に酷では…!!!」
「大丈夫…この子らは、柔に育っているわけではないです。」
「…え?」
白いシーツの上で、白い衣服に身を包む子供の様な女性。
黄緑色の目が、少しだけ、青い色を灯していく。
『…わかんない。』
「…っ」
『でも、えっと、ん!!!』
「ちょ、あっお父様押さないで下さい!!!」
抱きしめてやりますからと言って渋々コルンは彼女を抱きしめてやると
脳裏に入ってくる、その鮮明過ぎる時間に、思考が止まる。
「……はっ、あ、あなた、まさか」
『しってる?ラルって「一時的な静けさ」
「活動の一時的な停止」って意味があるんだよ?』
「…えふ、ぇ、めら、る、さま?」
『時は、止まるだけ。大丈夫、きっと、だい、じょう、ぶ。』
「…大丈夫ではありません。辛かったですね。」
怖かったでしょう。そう言って、
コルンはメルの身体をそっと抱きしめてやる。
それに、ふるふると小刻みに震えだしたことに、
力が強まり、ぎゅっと抱きしめ直した。
「怖かったですね。すみません、怖い思いをさせました。」
『っ、ちが、わた、わたしっ』
「違いますか?それならきっと、違うんですね?」
『っちが、ちがうの、ごめ、ごめっ』
「許しますよ。大丈夫。許して差し上げます。」
ほんと?そう黄緑色の目が此方を見つめる。
それにええと微笑んでその目から零れる涙を掬い取ってやった。
「沢山頑張ったとお聞きしていますからね。」
『でも、っ、まもれ、なかっ、』
「果たしてそうでしょうか?」
『…ふぇ?』
そうちらりと見せてくれる場所に、メルは目を向ける。
其処には、先程帰っていた筈の、者達が姿を現していた。
「メル、お主…姿が」
「ヘレス様。」
『…あの、ひと、』
「すみません。」
貴方を危険に晒して。そう謝る彼に、メルは首を傾げる。
「話してやりなさい。包み隠さず、全て。」
「…はい。貴方のことは、天使様らからお話を伺っておりました。」
どれ程崇高なお方なのかも、貴方に触れれば触れる程、すぐにわかりました。
そうぽつぽつと話してくれる間、メルは少しもぞもぞする。
それをそっと見守るコルンの目に合わせると、顎で前を向けと指示をする彼に
メルは少し笑って前を向き、コルンをベットに座らせ、その上に乗っかって話を聞きだした。
「私の居た惑星は元々惑星
歳の離れた妹の面倒を見ていたんですが、それと同時に
昔からヘレス様のお傍に仕えていました。」
「…昔ながらのよしみ、ですか?」
「いや、破壊神になってからというもの殆ど面識はなかったがな。
ある日突然偶然じゃが別の惑星で出会うてな。」
「そこで拾って頂き、今では別の惑星で
妹を置いてヘレス様の元にまた仕えていました。」
『……それで?』
ええ、それでと少し声が戻る彼に、メルの顔も少しほころぶ。
緊張をほぐしてやっているのか、それともまた違う理由か。
「妹が突然行方不明になりまして、
跡を辿っていると先程まで居合わせた場所に
隔離されていると聞いて。」
「それで彼女を巻き込んだと?」
「…本当は巻き込む予定等ありませんでした。
ただ、教えてくれたヤツをもう少し探れば、
こういうことにならなかったと今では後悔しております。」
妹の安否も心配だっただろう。
その手を使うのは何も珍しいことではない。
妹が知りたければ、彼女に合わせろ等と言いそうなことはすぐに分かった。
「お察しの通り、私は妹と引き換えに貴方の姿を少し見せるだけで話を終わらせる予定でした。
天使様らが気を配っておられる方でもあると分かっていまして、
何かあっても大丈夫だと、少し安易な気持ちになっていました。」
それも悪いと項垂れる彼が、続けて言う。
「彼の名はペタルリチャード。種族は少々特殊で、
カルス人、昔の名称だとリンク人と」
『なんて?』
「メル様?」
『なんて、いった?』
かたりと身体を前に動かして降りようとする
メルの身体をコルンが腕を掴んで止める。
『誰だって?何処の、種族だって?』
「エフェメラル様??」
『りんく?あの、リンク人が?』
「っメル様!!気を鎮められ…っ!!!」
メルはその足で、ゆっくりとそのまま歩く。
裸足のまま、止めようとしたコルンの身体を下に落とさせる。
一瞬何が起きたかと思えば、地面に生えている黄金の草木に目を丸めた。
『生きてる?生きてるの。』
「っ、え、ええ、そう、いって」
『青、赤、緑、違う…白か。』
「え?」
『ペタルは花びら。リチャード。
リトル、リチャードは支配者の意味を持つ。
花の支配者だからこそ華に触れれた?』
誰のために?何を蘇生しようとしている?
誰を、目的としている?その目は、殺す目は。
『嗚呼…面倒な。大神官様。』
「はい、なんでしょう。」
『第9を此処に。』
「わかりました。お呼びしてきましょう。」
『…ミスティ、私だ。エフェメラルだ。少々緊急事態でな。
そちらと此方に穴を開ける。頼むから第9全員と、
何時もの面子を連れて来て欲しい。』
「…メル、様?」
『嗚呼ごめん、エーリン様様。僕です、エフェメラルです。
いや、記憶はまだ無理。収集つかんけど、いやむり。まって。』
笑わせないでと笑いだすメルが、嗚呼おかしいと言って杖に向かって話をする。
『ちょっとトンボ帰りになるけど一度こっちに戻って来て欲しい。
いや違うんだって。目覚めるって。こんな聞いたら目覚めるから。』
とにかく、うん、はーい。
そう言って通信を切った後メルはふわりと杖を投げ捨てるように杖を消し去る。
「何をするおつもりで?」
『色々と、ね。皆さんもこのまま居て貰うよ。』
いや、もう目が覚める事言わないで欲しいと
メルはため息を吐きながら自分の足で
コルンの腕を引っ張り上げ身体を起こしてやる。
黄金の草木は綺麗に消え、彼もまた息を吐いて何をするんですかと声を出す。
「全く、急に動くから焦ったではないですか。」
『だからごめんっつてるだろ。』
「あの…記憶が戻ったので?」
『いんや?こいつとそいつの区別も分からんくらいには。なぁコルン。』
「…すみません、私はサワアの方です。エフェメラル様」
『わ〜〜〜!!二分の一〜〜〜〜!!!』
おっし〜〜〜と笑って指を鳴らし答えるメルに、サワアはため息を吐いた。