私の領域に踏み込むのは許さない




『集まってくれてありがとう皆さん。』

そう言ってメルは円卓に座らせる者達にニコリと微笑みお茶を出す。
モヒイト、シドラ、ロウをはじめとする現在の第9宇宙である神々に続き、
原初、星風の華神ミスティ、息継、欠陥の華神キュフロー
最果、 風の華神ライネア、終焉、星風の華神エル・ノルテ。

そしてヘレス、サワア、コルン、大神官、メル、エーリン
今回の被害者でもあるティオの計14名がこの場所に座り込んだ。

『色々ありまして記憶が混濁してまして、
先に断っておきますがこの二人の記憶が
僕すっぽり抜かれてまして。
一応サワアとコルンって名前は判明してる〜〜
んだけど、いやわかんないんだよね。ね?サワア。』
「……すみません、コルンです。」
「本当に分からないですか……。」
『オールバックってことしか分からん!!!!』
「はぁ…」

そう項垂れるコルンが頭を抱える。
下手をすれば自分か兄の髪型どちらかに似せれば
本当に間違えそうで恐ろしくなってしまった。

「それで?ソレはなんだそれは。」
『検査。出来た?』
「…嗚呼、無事採血は取れた。このまま後ろで作業をしても?」
『その為にお呼びしました。はぁいど〜ぞっ!!!』

メルは杖を出し、回しながらその地に杖を突きさす。
すると彼女がよく使う備品などが其処に勢ぞろいしたではないか。

「っな!!!」
「助かる。」
『分かり次第返事どーぞ。聞いてていいし話に入って良いからね。』
「分かった。」
『それでさっきから見てるけどアンさんフェルさんどうですかい?』
「駄目だな。お前本当になんか持ってるんじゃないのか?」
「綺麗さっぱり抜かれて回復の話になりませんね。」

やっぱりそうだよねーーーそう言ってメルが笑って答えつつ、席に座る。

『や〜〜〜〜!!!ねぇねぇ大神官様!』
「なんです?」
『選んで下さい。笑ってとぼけて話した方がいいか、正直にいくべきか!』
「そうですねぇ…?では、正直でお願いします。」

え〜〜〜嫌な方つくねえ〜そう笑って言うメルに、全くと周りが笑って居たのもつかの間。
笑い声がぴたりと止み、その場所を見てひんやりと身体の温度が消えていく。

「っ」
『…リンク人がいきていた。それも白の花を持つ者が。』
「……そんな」
「じょ、うだ、んじゃ、ない、よな?」
『そいつが言ったことが正しければ。でも証拠はあるよ?
この二人の力を持っても回復できない。それは元がないから。』
「…くりぬかれたと?」
『現在進行形でコルンとサワアの区別付かない時点でソレでしょ。』

あ〜〜〜困ったな。と言って椅子を回した後元に戻すメル。

『私を狙ったってことは、私の力を使って何か蘇生したいことがある。
でも華を司る願いは基本的に厳禁だが…まぁとある事情があればソレは無効化出来るんだわ。』
「とある事情?」
『繋いで器を変えてしまえばいいんだよ。』
「…まさか」
『まぁ問題は其処じゃない。うんうん。ほんと酷いよね〜。』

私も馬鹿じゃないんだよ。
この空の開いた、空白を。
そう言ってメルは胸に手を当てて笑いながら言うのだ。

『【そんなことするならこっちもこっちでやるしかないよなあ?】』
「っ!!!」
「リンク人とはどのような種族なのですか…?」
「…リンク人は元々4つの力を持った特殊な種族だ。
青、赤、緑、そして白の4色を一人一つ持って生まれる。」
「青は別の場所を通じる者。赤は威力を増大させるもの。
緑は意志を通じれる、言わばテレパシーを使える者達よ。」

では白はというリキールに、華神らが黙る。

『花を咲かせるもの。』
「っ、はな、ですか。」
『ええ。数千年に一度生まれるかどうかの話しだったはずだが?』
「だとしても何故貴方が知っているんですか?
リンク人は確か貴方に結びつきがないはず。」
「知っているとしても原初くら、いの…」
『ミスティ』
「…貴方本当にエフェメラルです?」

私は未だに信じがたいのですが。
そう言う彼女に勿論だとメルは言って目に指を指して言う。

『コレが証拠。とはならない?』
「…いいえ。証拠になりますね…はぁ。
リンク人は私が一度管轄に入ったことがある者です。
当時エフェメラル様は幼かったので遊びに来た時会ったことがあります。」
「なんと…!!!」
『花を司る子達は華神の生まれ変わりと称されるくらいに奇跡的なことがおおくてさ。』

割と手を焼いたなあの時も、とメルはそっぽを向いて想い出す様に笑ってしまう。

「それで、何故其処迄して貴方はお怒りになっているのですか?」
『…花を蔑ろにするからね。』
「は?」
「…当時問題児がおりまして、
極々稀に悪魔の状態が戻らずに生まれ直すことがあるんですよ。
そんなの本当に彼だけでしたから、私も覚えがあります。」
「そんな、悪魔が生まれ変わるなんて聞いたことが」
「リンク人だけですよ。だからあの惑星は此方でも機密事項でした。」

とは言っても、何処かの誰かさんが一つだけの宇宙しか止めなかったので
其方の惑星は野放しにされちゃっていましたが。
そう何処かを見て言うミスティに、メルが話を進める。

『リンクを知ってる者は?』
「…私で止めました。」
『何故?』
「…彼女には荷が重いと判断したのが一点。もう一点は絶滅したと確認したからです。」
『君は気にならなかった?』

そうメルはキュフローからライネアに目を向ける。
少しだけはと答えて話しを流す。

「違和感程度でした。余り深くは問い詰めませんでしたね。」
『…そ。』
「それにしても意外ですね。貴方が其処迄腹を立てるなんて。」
『は〜〜〜言わないと分からないかなあ〜〜〜。』

そうメルは後ろの背もたれに腰を掛けた後、前にかがむように曲げて言う。

『花も愛でず人も碌に大事に出来ない者が、無責任に。
努力し培い成し得る人間の情を使って、
この身殆ど埋め尽くされていたものを
物だけ奪うだけでおさまらず。』 

大事な者の権利も壊し、捨て去り
空に手を伸ばす一欠けらも地に落とさせる行為を取り
知った上で手のひらで転がし笑い、堂々取って行ったんだぞ?

『【あの屑以下の愚弄を許す訳がなかろう】』

知ってる?私根持ちなんだよ。何処までも追いかけるぞ。
おおこわい。

『嗚呼加えて?ヘレス様もサワアさんだっけ?お二人のお墨付きまで貰えてる?
滅茶苦茶真面目で優秀で努力家な人間の?妹さんをも?手を出したんだろ?
というか手を出したに近いなら出したも当然だろ?は〜〜〜〜??????』

生かして永久に放り込む以外術がないだろうて。
これこれこれこれ

「其処迄怒るのは分かりましたが、流石に周りに酷というもの。」
「いい加減落ちついて下さい。」
『うるせえちょっと黙っててこのダブルオールバックパックセット』
「おっ」
『加えて記憶を遡ること数時間前の状態を見てみたら、アレ多分ね〜〜全部持ってるやつだよ。』
「は!?!?!??うそでしょ!?!?!?!!?」
「み、みす、てさん?」
「えっ待って!!!名前は!?!??!」
『ん』
「えっ、あっ、その…ぺ、ペタルリチャードと」
「は!?!?!??!?!?!」

同姓同名じゃんそういう彼女に、メルはニコリと嬉しそうに笑ってうんという。

『いや、滅茶苦茶偶然だよね♡運命だよね♡』
「駄目ですよ」
『や〜ちょっとだけだって』
「駄目です」
『触るのも?』
「駄目です」
『見るのも?』
「駄目です」
『わ〜〜〜なんもできん』
「しなくてよろしい。」

殺したいのに。
尚更駄目です。

「貴方の位置はほぼほぼ中立。私情で殺さないで頂きたい。」
「同感ですね。そんな奴の血で貴方の手を汚させるくらいなら
此処に神々がいるではないですか。」
『えーーーーー』
「なんだ、嫌なのか?」
『シドラ様情けかけそうでやだ。』
「それを貴方が言いますか。」
「人の事言えないでしょ。」
「何馬鹿なこと言ってるんですか。」
『ねぇ待って酷いんだけど!!!!!』


全くもう酷いったらありゃしない。

「それで、これ程の人間を集めたんです。本題は?」
『ん?嗚呼それでですね、
今からミスティさんはモヒイトさんに
リンク人やらの話をありったけ包み隠さず
全部話しておいて欲しいんですよ。』
「わかりました。向こうでお話しても?」
『部屋の中入って貰っても構いません。
キュフローさんはエルさんと一緒にシドラ様に手ほどきを。』
「手解き?」
『キュフローさんは一応情報知ってるでしょ?
その共有と、エルさんは華神らの気の扱いを
キュフローさんと一緒に彼に教わって貰いたい。』
「わかりました。」

部屋をお借りしますそう言って席を外す彼等に、メルはうんと頷く。

『ライネアさんは最終的に動いて貰いますので
今此処に居る方の気を覚えて下さい。』
「わかりました。端から端まで、ですよね?」
『ええ勿論。』
「では先に破壊神からお借りしても?」

お好きなようにと手を前に出して頷くメルに
コルンもまたこくりと頷いた。
リキールが席を立ち、そのまま姿を消す。

「あの」
『ん?』
「お怒りにならないのですか。」
「ティオさん…」
「私がしでかしたも同然なんですよ…!?」
『…私ね?私がされたことは確かに怖かったけど
そんなことってどうでもいいんだ。とってもね。』
「は、?」

そんな在り得ないという顔に、だってとメルは答える。

『自分の事は自分で片が付くけど、相手のことって無理じゃない?』
「あ、いや、それは、そう、ですが。怒らないのですか?何故巻き込んだのかとか。」
『どうして怒るの?自分が蒔いた種だからそこはお門違いじゃない?』
「…っ」
『私ね、沢山頑張ったのに手を降ろさなければいけない時間が一番嫌いなの。』

正確には、その時間を大事な人が人達が、味わい、
華に縋り付く様な事になりかねないことが、だ。

『頑張ったのに、何とかやり遂げようとしたのに。
でも報われない。そんなのざらにある。でもね?
それを分かって手を使って掬い取って
さらっと消える野郎なんぞもっと嫌い。
地獄になんて生ぬるい。消滅なんて以ての外。』

もっと味わってもっと下げずんで。
残酷な悲鳴は要らない。必要ないから。

『貴方の悲鳴が耳から離れないの。』
「っ、」
『こんなはずじゃなかった。助けて。怖い。ごめんなさい。
何時かの誰かと全く同じ。真夜中に位置するそんな時間。』

瞬きした目の色が、一瞬金色と赤に変化する。
その姿には大神官も目を丸くしたが、
すぐに目が黄緑色に変わったことで落ち着きを取り戻す。

「ですが、幾らなんでも復讐など、消滅するおつもりですか…!!!」
『え?復讐?なんのこと?』
「は?」
「え?し、しな、いのですか?」
「いやする前提の顔でしょそれ。」
『え?しないよ!?ないない!復讐なんて浅はかな!!!』

そんなの足りない。

『一滴の雫一つで喜怒に塗れ、哀楽に縋り付く光景を
目の前でじっとずっと見つめて笑い続けるだけだよ。』
「…貴方は鬼か悪魔ですか。」
『えへへ〜〜〜残酷でしょう?酷いでしょう?狡いでしょう!!』

だって僕は、人間だもの。

『神様なんて何処にもいきやしないのだ。
亡骸に縋り付くことこそ滑稽極まりないというのに。』
「それは同感ですね。蘇生したところでたかが知れていますから。」
「問題は誰を、蘇生したかったか、に寄りますが。」
『大方めぼしは付いてる。』
「でしょうね。我々も薄々感づいていますが。」
「可能ですか?」
『可能です。』

そう聞いた大神官にメルははっきり答える。

『大神官様』
「なんでしょう」
『戻る前と今とで大体前が10だとして、今どれくらいです?』
「それは気、即ち貴方の体内に残る力、としてですか?」
『ええ。』
「…隠されていると話は別ですが、大体3か2、程度でしょうか。」
『ミスティ〜〜〜は、いないわ。だ〜れだだれだ〜だ〜れがしってる!!』
「はいはい。」

え〜〜〜〜〜りん!!!!
は〜〜い!え〜〜りんっで〜〜〜す!!!

「ん〜〜〜〜?何の情報が欲しいの?」
『造花出来るかどうか。』
「嗚呼成程、1も要らないし、それなら華も知らないんじゃない?」
『はなあ?なにそれ。』
「お二人共お持ちですよね、あのおはな。」
「…まぁ、持っていますが。」

そう言って胸元からそっと出してきたサワアと杖から出した
コルンの手に乗った華を見てげっとメルが声を上げた。

『えっ!!!!うっそ!!!!マジで言ってる?!?!!?』
「マジまんじ。」
「誰ですかその言葉教えたのは。」
『ひゃあ〜〜〜えっ待ってえっと、コルンさんですよね?触っても?』
「ええ、どうぞ。」
『…うわ、すご、ほんとだ。造花じゃない。ガチじゃん。』
「ガチですよ。本物しか彼らに渡してませんよ貴方。」

エーリンはメルの後ろに立ってその補佐をする。
ソワソワするメルに続いて向こうとサワアの方を指さした。

「なんでしたら向こうが古いですよ。」
『えっ!?!?わ!!!これ片喰じゃないですか〜〜!!!』

きゃ〜〜〜凄い此処か!!お前か!!!
そう言ってメルはサワアの方に向かって華を取り話をする。

あっとってよかった?
どうぞ。

『…そういや、なんで使わないで取っておいてるんです?』
「使うまでもありませんから。」
「そう言うくせに、本当は使ったら無くなるのが怖いとかじゃろうに。」
「ちょ、ヘレス様!!!何言うんですか!!」
「ほ〜〜?図星なんじゃろう?よせよせ、あついの〜〜。」
『…ふふふ』
「メル?」
『いや、なんか面白くて。』

ごめんなさいね?
ああ、いえ。

『別に使って貰ってもいいのに。
幾らだってこんなの出せるというのに。』
「約束しましたから。」
『え?』
「貴方と二人で。」
『…そっか。想い出すまで取っておいてくれるって?』
「ええ勿論。」
『じゃあ頑張って強奪しにいかないとね!』
「頑張らずとも構いませんよ。
というか強奪ではなく取返しに、でしょうが。」
『え〜〜〜!!じゃあ略奪?』
「だから取返しにって話聞いてます?!?!?」

きゃ〜〜怒った怒ったと走り出すメルに
もう少し落ち着いて下さいとコルンが騒ぐ。

「はいはい、ストップストップ」
『あ、できちゃ?』
「できちゃ」
『きゃ〜〜〜できちゃ〜〜〜!!!』
「なんですかそれ」
「検査結果。はい大神官様どうぞ。」
「ありがとうございます…これは」

そう手渡した彼女の紙に書かれていた内容に目を通した後
大神官はその用紙を綺麗さっぱりと消し去った。

「メル」
『ん〜〜?』
「よしよし」
『きゃ〜〜〜!!』
「わっちょ、やったな???」

そんな奴にはこうだと言ってくるくると回しだす彼女に
安静にさせて下さいとコルンが間に入って止めに行く。

「…不思議でしょう?彼女。」
「え?あ、は、はい…。」
「記憶が無くなっても、周りの子達ばかり怒るんですよ。」
「昔から嗚呼なのでもう諦めてますがね。」
「おや、それでも一番怒ってた貴方がソレを言いますか?」
「…おやめください。過ぎたことを。」

そう項垂れるサワアに大神官はクスクスと笑って見せる。

「確かに貴方がした行為は許されることではありません。」
「…そうですよね。」
「ですが、その行為以上に、あの子は周りを見るのです。」
「…?」
「自分だけで怒ればいいのに、空いた穴を見て嘆いたのですよ。」

誰かがこうなって、傷付いてしまうことに。
それだけに、恐れ、縋り、その力を振るおうとする者。

「欲望ではない。誰もの手を取り、絶えず笑う子。
それが、あの子なのですから。」
「…私は、どうすれば。」
「そのままで。」
「え?」
「昔の様に、振る舞っておやりなさい。」
「大神官様。」
「あの子が望むのは、たったその一欠けらなのですから。」

日向でケタケタと笑い続ける幼子の様な子。
一瞬でしか見れない、その感情に、気配に。
全てが狂ってしまわない様に。

時間を止め、願いを切り取り、その場に縋り付くだけの子。
ソレがどれ程、痛いことか、知らせてさえくれそうにない。
気付いた時は、泣きそうな顔で笑ってくれる。

「罪があるというならば、償いたいと思うならば。
尚更の事、彼女を「裏切る」だなんて思わないことですね。」
「…わかりました。」
「にしても、あれ、どうします?」
「さぁ?どうされます?」
「…はぁ、エフェメラル様!!もうそこら辺にして差し上げてはどうです?」

もうコルンさんも困り果てているではないですか。
そういつも通りの口調で言ったサワアに
本当はとヘレスはティオに声を掛けた。

「あいつら物凄く傷付いておるんじゃぞ?」
「…え?」
「見た目になんて絶対に出さん。そうしたらあの子が泣いて困るから。」
「あの方がですか?」
「嗚呼」

きっとそうなったら、ボロボロと涙を流して首を横に振ってしまうだろう。
ごめんなさい。悪い子で。良い子でなくて。ごめんなさいと。
悪くもないのに、謝って、そうして泣きつかれて眠るくらいには。

だからそうならないように、例え腸が煮えくり返る思いだとしても。
決して、彼等二人は彼女の前ではいつも通りに話をするのだ。

強いて怒るとしたら、彼女の居ない時、
もしくは彼女が寝付いた瞬間と言った処か。

「よく耐えたな。お前も。」
「…ヘレス様」
「怖かったろう?」

妹がいなくなるのも、あの子がいなくなるのも。

「…っ、え、ええ…すみません、本当に。」
「…我も過ちを犯した者じゃ。」

その分前を向いて歩けばいい。

「それにしても何故破壊を進めたんじゃ?
我の破壊は好きではないと。」
「…単純な好奇心です。貴方と天使様が
仲睦まじい姿を見ている時の彼女が、
余りにも寂しそうにしておられたので。」
「……そうか。」

まるでそれは、妹が親を待ちわびて
立ち尽くすかのように見えたとティオは呟く。

全く瓜二つの姿で、視力も弱く
目の色も変わってしまい、
今は薄い黄緑色になっていると聞いた。

「…奴の居場所は此方でも手を取っています。
こう見えても貴方のお傍についていた者。
ありとあらゆる手を取っているのです。」
「その時は約に立ててもらおうか。」
「ええ。是非とも。」


++++++++++


それにしても

「大半が私と貴方で作られてるんですって。」
「お兄様…」
「ふふ、どっちが多いんですかねえ?」
「お戯れを。」
「これで半分とか言い出したらどうします?」
「…在り得そうな話を言わないで下さいますか。」

これ以上頭を抱えたくないです。
ふふ、それもそうですね。

「にしてもどうします?」
「一応我々は天使であり中立…とは言えど、
それはあくまでも、戦闘行為お呼び善悪の関係性での話」
「ええ、その通り。…彼女の記憶を取り戻しに向かうのは
中立に背く行為ではない。」
「視察、という移行で?」
「別に構いませんよ?」
「…ほんと貴方達二人には呆れてものが言えなくなります。」

ふふ、お褒めの言葉ありがとうございます。

「見ましたよね?」
「ええ勿論。」

触れた瞬間、腸が煮えくり返る思いだった。

白い肌に、透き通るかのような翼を広げ、その輪を二つ重ねて光らせる姿が。
スポットライトに当てられ、下界の見せしめにされ、その華を強く咲き誇らせて
隠していたとっておきの一番すらも奪われ、堕ちてしまったかつての天使を。

蔑ろにした挙句の果てには愚かな行為をした者を
蘇生に使おうとまで企んでいるのを
気付きも出来なかったという、失態を犯しているのだ。

「怖かったでしょうに、怖い思いを慰められる腕すらも奪ったのです。」
「お兄様…」
「一番心を許していた者の記憶を奪い、その手を伸ばしても、届いたとしても、叶わない場所に、連れ去ってしまった。」

彼女の気は、心を持つような者。

「きっと今も尚、怖がっていることでしょう。」
「…早くお迎えに、向かって差し上げないといけませんね。」
「ええ。すみません、不甲斐ないばかりに。」
「いえいえ、此方も一足遅かったので。コニックさんには頭があがりませんね。」
「全くですよ。頭下げても謝られては困ります。」

心を傷つけてしまったことだろうに。

天使ではない別の者に、下界の人間にまで、縋り付いて。
その快楽に酔いしれ、溺れ、前も後ろも碌に見れずに堕ちたその天使を。
一体どうして傷付かずに見つけ、その身体を抱きしめてやったというのだろうか。

申し訳なさそうに言う彼も、きっとこの怒りを分かち合ってくれることだろうが。

「それにしても…ほんと彼女には驚かされますね。
まさかあのマルカリータさんやマティーヌさんがお怒りになるとは。」
「マルカリータさんは分かりますが、マティーヌさんは余り接触していなかったはずでは。」
「それが案外しているんですよ。メルがとっても気に入っちゃってまして。」

最近は自粛するくらいです。
おや、それはそれは。

「まぁ、彼女らは賢いので。其処迄気を使わずとも構いませんがね。」
「皆さんお怒りになるのも、まぁ言わずもがな、ですね。」
「ええ。あれ程澄んだ気をほぼほぼ取り出した上に濁らせたんですから。」
「…加えて昔の人間、ですよね。何か心当たりは?」
「ありません。ですので後で彼女らにお話をお伺いに向かいますが、一緒に来られます?」
「ええ。勿論、お供させて頂けるのであれば、是非とも。」

それでこそ、我が弟。

そうニコリと微笑み、部屋を後にする。