君に突きつけた現実




「…カルス人の血は花を流し、全てに還す者達だ。
血を使い、花を作り出す者で、それを使い過ぎると気が狂うという。」
「気が狂う?」
「嗚呼。文字通り正気を失うんだよ。正確には人間から外れるというべきか。」

その為白い力を持った者は特に。我々神々へ知らせるように年一で訪れていたんだ。
そういうミスティに、それではと声を掛けたのはモヒイトだ。
あの会議後、コルンとサワアが此方に向かう前に声を掛けてくれたのだ。
コニック、そしてマルカリータの二人も同じ様について来てくれて。

「エフェメラルは花を踏みつける者に関しては根に持っていたからな。」
「…嗚呼、ありましたね、そんなときも。
以前踏みつけてしまった時は五年くらい根に持たれましたよ。」
「そんなにですか。」
「多分喧嘩したら引っ張り出してきますよあの子。」
「…そんなにですか。」
「草花はとにかく優しくですからね。」
「ちなみに、もしご自身で踏まれた場合はどうされて?」
「…泣いてましたね。」
「…ギャン泣き、してたのは覚えありますか?」

そうミスティがサワアに聞くと、ええと紅茶を呑み込んだあと答える。

「ものすごく泣いてました。酷い時は下手したら半日、
いいえ、一日かけてくらいでしょうか。」
「あやしても何しても泣くから怒鳴ったりしてたが
そうしたらむくれるわすねるわで恨むからな。」
「ありましたね〜〜恨み買われていたアンダルシア様が
大層困っていました。」
「いたずらの域が越えるからな。」

そうそうとサワアが頷いて答える。

「それがどうかしました?」
「それで粗相をしたやつが一人いてな。」
「…まさか、自分で作った花だから
踏んでも何しても構わないからとか言ってたんでは」

「おお察しが良いな次の付き人天使よ。その通り。
あの子はどんな花でも蔑ろにしたら怒っていたから。
それで目を付けられていたのか…元々奴の渦中だったかは知らんが。」

「いずれにせよよろしくない話であるとだけはお伺い出来ますね。」

うーーんと一同が唸る。

「…どうするつもりで?」
「一応嗚呼なった以上、放置した方が良い。
気の済むままにさせてやってほしい。」
「それはするつもりですが、貴方方は?」
「リンク人とあっても既に管轄外の人間ですので。
情報を明け渡して何も致しませんよ。」
「良かったですね?第9の天使さん。もしも万が一、
この方が華神であり、管轄内でしたら
軽く宇宙を消し炭にさせるつもりでしたでしょうに。」

煩いと言って手を叩いて答えるミスティに、
キュフローがクスリと笑った。
何時もだと真逆だったりするのだが、今回は違っていて。

「全く、そんなことはしない。やっても一人だけですよ。」
「そう言えば何故絶滅したのですか?」
「単純に波乱ですよ。曲がりなりにも花を作る者。
華神により近い状態の種族でしたのでね。」
「簡単な話、我々みたいに養殖されるのではない、天然ものですよ。」
「そんな魚の養殖か天然かの違いみたいに
言われないで下さい…者が違うでしょう。者が。」

「話を戻すが、カルス…いやリンク人は別の世界から人を取り、
その人間をリンク即ち繋げ合わせる能力を持っている。」
「元から全員が、ですか?」
「嗚呼そうだ。だから共有者、リンクと名を付けているんだ。」
「何時からカルスと名を変えたかは知りませんがね。」
「明らか我々の目を欺くつもりだったんだろうが…
まぁ相手が悪かったな。」

さらっと言われてしまっては仕方がないだろうて。

「名前も変えなかったのは記憶が其処迄反映されていないのか
ただ単純に忘れているかのどちらかか。」
「いずれにせよ彼が戻ってきたとあれば話が別ですからね。
アレは天才肌で頭もよく回りますし…妙に嫌な感じしてましたから。」
「嫌な感じ?」
「こう、エフェメラルが嫌がるんですよ。
あの子元々人は選ぶタイプの人間でしたからね。」
「彼女が嫌がる?それって余程のことでは。」
「ええそうですよ。まぁあの子はある意味
歩くセンサーとして使っていましたからね。」
「そんな次世代のお子を何という扱いを……」

頭を抱えて上を向くコルンには、
ミスティらもクスクスと苦笑いで答える。

「生贄とされる別世界の人間に、その気を持たせ
器とさせて召喚させるおつもりでしょうね。」
「それは特定の場所でしかできないと?」
「そのカルス人とやらが生息していた惑星は?」
「確かVの4892、それも東の果てにあったはずですが…」
「Vの4892ですか?それでしたら惑星リグレットですかね。」
「いえ、確かそんな名前では無かったハズです。」
「まぁアレから長い月日が経っていますし、
自然消滅をしていてもおかしくないでしょう。」

だとしても、何故とミスティが黙る。

「…別世界の人間を引っ張り出せるなら、行くことは?」
「大差ないでしょうね。」
「どちらかの世界に飛び、その先祖が華神に選ばれ、
此方に戻って来たとあれば話の辻褄も合います。」
「昔は終わる子達は悪魔や魔女にさえならなければ放置していましたから。」
「此処で未処理の仇が来ましたか。」
「あの時はあの時で色々ありましたからね。」

最果ての時辺りにでも戻って来たと思えば話が分かる。
あの時間にどさくさに紛れて戻していたら
そりゃあもう間違いないだろう。

だが、そうだとしてもモヒイトらが知らない訳もなくて。

「モヒイトさんは引継ぎでお話は?」
「いいえ。全く聞いておりません。」
「まぁ隠してしまったしねぇ。」
「絶滅していたという安易な考えもありましたから。」

それに関しましてはすいません。
いえいえ

「まぁある意味カルスらは華神の卵とでも言いましょうか。」

死ねば元の世界に戻り、記憶も消されるでしょうが
最初っからその事柄に組み込まされ、
抜け出せなくなっていることにすら気付くこともなく、
永遠に。その種が廻ることになるとは、思っていないでしょうね。

「寿命は?」
「寿命は大体百年程度です。血の濃さはよく知りません。
外に出てしまった以上は収拾がつきませんからね。」
「そうでしょうね…。」
「…怒ってます?」
「当たり前でしょう。あの方を何方と心得ておられるのですか。」
「まあそうでしょうね。そう言えばお気づきですか?」
「え?」
「華樹神が本当に怒った時のこと。」

それにはカチャリと音が強く立つ方を向いた。
サワアが失礼と言ったのに、ふふとミスティが答える。

「人に寄りますが、ルメリア様は地鳴りを出していました。」
「ルトラール様は確か雷落としてましたよね。物理的に。」
「物理的に。」
「…ちょっと待って下さい、それならメルさんは何一つお怒りに」
「いや、なってますね。」
「なってますよ?モヒイトさん。」
「え?ですが」

其処迄怒ってませんよ。そう言うのはサワアだ。

「ただその場で、怒っていないだけです。」
「私は是非ともその場に立ち会わせたくありませんが、
こうなったら仕方がありませんから。
甘んじて受け入れることに致しますよ。」
「え?あ、いや」
「あの子本当に変わらないんですね?昔から。」
「ええ、全く変わっていませんよ?例え記憶がかけようとも。」

彼女は時と場合によりけりで、その感情をあらわにする。

「記憶を力を、気を取り戻しに向かうので
どうしても彼女を同行するのは強制的になります。」
「でしょうね。」
「勿論付き添いはお二人、モヒイトさんは手筈通り。」
「ええ。分かっていますよ。」
「手筈通り?」
「これから元の宇宙へ戻って調べ尽くすつもりでして。」

現在界王神が全精力を上げて片っ端から探してくれています。
おお…それはそれは…

「私も手伝いに向かい、判明次第すぐにご連絡を、とね。」
「元があればこっちの管轄ですからね。」
「こっちの?どういうことですか。」
「24の宇宙が元々あって、
その12の宇宙から一つずつ落とされた。
でもそれは一つではなく、
チリも含まれていたとしたら?」
「そのチリが、カルス人らのことだと?」
「そうなったらこっちの管轄なんですよ。
一度消えて生まれた惑星ならまだしもね。」
「そういうことで、時間を遡りつつ
過去の資料を照らし合わせさせています。」

うわあという悲鳴が上がる。

「ふふふ、久しぶりに腕が鳴るわ〜〜〜?」
「…ミスティ様、頼みます。頼みますから制御して頂けると。」
「キュフロー様…?」
「頼むミスティ、お前が暴走したら誰が止めるんだ誰が。」
「あら?貴方が止めてくれるんじゃないの?アンダルシア。」
「私は管轄者じゃない。」

我をなんだとそうため息を吐いたアンダルシアにミスティはクスクス笑う。

「まぁそういうことですので。…皆さんすみませんが、ご協力お願いします。」


ええ、分かりました。


++++++++++


そういうことですので。

「今回は3つの班に分かれて行動させて頂きます。
此方A班メンバーは第2第8の神々三名ずつ。
そしてメルとティオさんの計8名で動いて頂きます。」

『わ〜〜〜!!よろしくです!!』
「こちらこそ」

「B班は第4第6第7第10の破壊神そして天使が。
此方は主にA班の護衛兼突破係りですので。」
「わかりました。」

「C班は残りの者達です。主にA班とB班の長である
サワアさんとクスさんからの指令に従って頂きます。」
『(なんだか大それたことになってきたね?)』
「(大それたことになってきたのではなく、大それているのですよ。)」

「はいはい」
「なんでしょう」
「先生D班いりますか。」
「何をするおつもりかによって話が変わります。」
「根を鎮静化に。」
「構いませんが、各破壊神や界王神らにお伺いしてからにして下さい。」
「既に許可は取ってあります。資料も此方に。」
「……する気満々ではないですか。分かりました好きになさい。」

やたーーーー
やるぞーやるぞーやったるぞーーーー

そう華神らの掛け声に、元気だなぁとメルがぴょんぴょんと飛び跳ねる。

「ああ忘れていました。メルさん此方を身に着けて頂けますか?」
『なんですこれ。』
「貴方の姿が他の者達に見えない様にするものです。
一応燃えたり溶けたりしたら無くなりますし、
創っても練ったものなのでそれ以上の効果は期待できません。」

ご了承を。そう言われてメルは淡い浅黄色の布を頭にかぶせてみる。
ストールのようにも出来れば、ポンチョの様にも出来る程の広さと長さがある。

「あとこれも」
「っそれは…!!!」
『ん?これどうやってつけるんです?わっか〜〜〜』
「…貸して下さい。」
『はいどうぞ』

そう言ってメルは黄色いヘアバンドを渡し、彼に付けて貰う。
可愛い〜〜と言ってぴょんぴょんと飛び跳ねまわるメルが
サワアに向かってありがとうと声を掛けた。

「…どういたしまして。」
『???』
「それではみなさん、頼みましたよ?一応言っておきますが、
次彼女に何かあれば対象の宇宙を消すおつもりですのでご了承下さい。」
「ちょ」


++++++++++

聞いてないが!!!!
そう声を上げる子に、煩いですとウイスが声を上げる。

「仕方がないでしょう?全王様のご命令ですので。」
『あれ待って私誰についていればいい?』
「我々の傍から離れないで頂ければ構いません。」
『えっ迷子になる予感しかしないんだけど……。』
「それでしたら手を繋いでおきますか?」

そう言ってサワアが手を差し出すと、分かったと言って手を掴んでみる。
それに少し驚いた姿をみて、どうしたの?と首を傾けてみた。

「嗚呼いえ、なんでも…」
「…ほんと元はそんな感じですか。」
「元々メルは素直ですからね。あんまりにも素直なので
サワアさんはそれによくタジタジになってましたし。」
「ちょ、お姉様!!!」
「おや?間違ってませんよ?」
『…じゃあ、こうすればいい?』
「嗚呼いえ、そういう訳では……」

そう言ってメルはサワアの手を離し、コルンの傍に寄る。
違うそうじゃないと手招くサワアに
もう一度トテトテと近づいてその手を取ってしまう。

わ〜おっきいおてて!コルンさんとどっちがおっきい?
比べてみます?
わ〜〜〜!!!コルンさんの方がおっき!!!

「…呑気だな」
「あれくらいが丁度良いんですよ。あれくらいが。」
「気が緩みやしないか。」
「おほほほほ!!!そうして気を抜いて宇宙が消えたらどうします?」
「お前らは死なんがこっちは…ってなんだよ、そんな顔して。」

そう困惑するシャンパにいえとヴァドスは答える。

「貴方方が本気を出して頂かねば、あの方が泣いてしまわれますから。」
「は?」
「馬鹿だねえ?まだ気付かないの?メルは天使に可愛がられてるんだよ?」
「破壊神が死んだら次の破壊神が決まるまで天使は停止するんだろう?」
「それだけじゃない。俺達全員が生きていることこそがアイツの喜びなんだよ。」
「リキール」

全く困ったもんだよ。

「今回は全員協力して、一度も気を使わずに戦うとのお達し。」
「破壊厳禁とか、なんだか鬱憤溜まりそう……」
「仕事だからな。後一応他宇宙なんだから弁えろよ。」

そう言い合う破壊神らに、メルはちらりと覗き見してはコルンらの方を向く。

「ん?どうされました?」
『…ううん!なんでも!!!』

ニコリと笑い、メルは右手にサワアの手を取って
左手にコルンの手を取りニコニコ笑って前を向く。
左右に揺れたり、前に揺れたりと忙しないが、
その心境は余り宜しくはない。

こうやってソワソワするのは不安であるのだ。
大丈夫といっても、まだ癒え切らない状態での出発。
余り気を離し続けると戻れなくなるという大神官の言葉に
出発は次の日の早朝と来たものだ。

まだ怖いだろうに、ニコニコと笑って
周りに大丈夫だと振りまいている笑顔がまた、
心を締め付け苦しくなってくる。

『…はやく戻さないといけないのにな。』

おかしいんだ。空いた方が、楽だと思ってしまう。
だから、そう思い続ける前に、早く戻さねばならない。

ふと気になって後ろを振り返る。
後ろにはコニックさんやウイスさん達が立っていた。
気付いた者が少し目を丸めてはニコリと微笑み返してくれた。



その更に後ろに、目を向けても。

誰もいない。居ないのだ。

何もない。白い時間。


『(だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。)』

何時だって綺麗な白い世界を思い描けるのだ。
でも、私は此処に、生きると決めてしまった。
何も分からないこの両手の中に。ぴたりとはまって。

安心してしまうはずなのに、
どうしても後ろが気になってしまう。

「後ろに居ても構いませんよ。」
『…』
「手を離しても構いません。」

そう言われるとメルは首を横に振って否定する。
このままがいい。このままでいないと、いけない気がしたのだ。
大きな手に、触れられて居続けていた気がした。

片方の手を取り、そのまま頭に乗っけてみた。
まるで網目が太い、ただのザルのようだ。
水が落ちても掠りはして、少しだけ液体は取り残される。

其処に引っ掛かったものが、詰まっているようにも感じれて。
落ちた水ばかりをおもい、考えがまとまらない。

『(ちがう)』

頭を撫でられても、全く嬉しいとか感じれない。
それが怖いと思えないのが、酷く怖いのだ。
ひんやりとするこの空いた胸が、埋まらない方が良い。

此処に入る、ものが。あっちにあるんだと知れているから。

入らなければどうしよう。



ふと思ったのだ。


もしも綺麗に入らなければ、私はこの場所に居て良いモノではない。
偽物になって、本物ではない証拠になり、誰もいなくなる。

誰も、何も、誰も。

ひとつもない、くうはくに。

「メル」
『』
「大丈夫。」

ね?

そう微笑んでくれるサワアに、うんとメルは答えて俯いた。
似たようなことがあった。目を閉じてはいけない。
考える時は常に目を開けていなければいけないのだ。

そうしたらぐにゃりとした感覚が分かるから。
ぴょんと飛んで、この地に足でちゃんと立ってやれる。

そっちになんて、堕ちれない。堕ちるなんて、させてやくれない。

胸が痛い、ことすらも。もう、分からないのだから。


「(…無理もないですか。あれ程の傷を負ったのですから、不安にもなりましょう。)」

後ろ姿を見ていたコニックは彼女に聞こえない程度で息を吐いた。
肩が下がり、黙り込んだ彼女の姿は、まるで叱られた後に帰る
両親の間に挟まれた子供にも見える。

それ程大人しく、小さく見えたのだ。

「(他の記憶はあるのに、彼等二人だけ空いていて。
もしそれが嵌まらないならば。
貴方は空白の世界にまた戻ってしまうのでしょうか。)」

その時は今度こそ、此方に帰るなんてことはないと。
もしそうなったら、今度こそこの世界は終わりだなと思うものだ。
恐らくすべての宇宙を消し去るおつもりなのだろう。

そうでなければ彼女の為に
此処まで人員を割くなんてことはしないはずだ。
ある意味これは、別れの挨拶に近いというもの。

まぁそうさせるつもりは更々ないのだが。

「…心配ですか?」
「…まぁ、ゼロではないですね。あれ程落ち込まれておりますし。」
「コニックさん…」
「もう少し早ければ、こうなりもしませんでしたが。」
「取り戻した後、また沢山お話をすればいいではないですか。」
「クスお姉様…。」
「それにしても第11を連れて行かなかったのは何故でしょう?」
「凄くついて行きたそうでしたよね〜〜〜」

あの悔しそうに抱き着いていたことときたら。
そうウイスはコニックらと数分前の話を咲かせる。

メルの事が心配過ぎてついて行くと駄々をこねていたのだ。
流石に悪いとコルンが叱ろうとしたが、サワアが声を掛けた。
自分の場所を全うしてこそ安心させるものですと。

そう言われて悔しそうではあるが、
メルにお守りと言って前に作っていた宝石を手渡した。
黄緑色の綺麗な石を持って、うんと笑って
ネックレスとして飾ってやると二人して笑い合って。

「大神官様、間違いなく消滅しそうな者達を省きましたよね。」
「違いありませんね。特にマティーヌさんとマルカリータさんは。」
「おやそうですか?」
「あのお二人は非常にお怒りでしたからね。
無論我々とて怒りが無いというわけではありませんが。」
「なんでしたら一番怒り心頭のメンバーでは?」
「在り得ますね。」

クツクツと笑う天使らに、メルは首を傾げた。

「貴方を傷つけて怒らない天使や神々は何処にも居ないんですよ。」
『…そう、なの?』
「勿論。こんな綺麗な気を持っているのに、
濁らせ傷つけて帰られたらそりゃあ驚きますよ。」
『おどろいた?』
「驚いて一瞬何を見ているのか分かりませんでしたからね。」
『そういや凄い驚いてたね?特にサワアさんの方。』
「ええ。見間違えならどれ程良いかと思いましたよ。」

白いシーツにくるまれて、明らか殴られたであろう跡が痛々しく、
ぐったりとした姿に、一瞬死んでしまっているかと脳裏を横切ってしまったのだ。

抱きしめてすぐにそんなことが無いと知り、安堵したのを未だに覚えている。

『…でも私本当に力使わないで良いの?』
「当たり前でしょう。何馬鹿なことを仰るんですか。」
「別に我々が眠るくらいで彼等に会えなくなるなら構いませんよ?」
「ちょ、サワア!!おぬし」
『〜〜〜むう。何かヤダ…!!!』
「ふふ、なら大人しく守られていて下さい。
最終的に貴方が必要なのですから。」
『…ん。わかった!』

でもシーツ気持ちよかったなぁ〜。何のシーツ使ってたんだろ?
聞いてきたらいいのでは?あわよくば貰ってきます?

落ち着くならと、サワアが声を掛けたのだ。
それにわかったと言ってメルが後ろを向いて
そのままコニックらの方に向かったのを見て息を吐いた。

「全く、記憶が無くてもあの子はあの子ですね。」
「お兄様…」
「頑張ってやらないと、記憶を取り戻した時にどやされてしまいますからね。」
「…そうですね。」

コニックの方に向かったメルは手を胸元でもじもじとさせながらお願いをしていて、
話を聞いて理解したコニックが杖を使って前に使っていたシーツと似たようなものを出してやると、
メルは目をキラキラと輝かせてそのシーツをお気に入りの人形の様に抱きしめてやる。

そのまま笑っている、この時間が、何処か懐かしくて。

「ん?なんだなんだだんだ!??!」
「ちょ、エフェメラル様!!!」

メルは白いシーツを被っていたのをモモンガの様に広げ、
破壊神らが会議をしている中に突っ込んでったのだ。

『ねぇ、何時かさ。何時かで良いから、試合。しようよ。』
「…は?」
「ねぇ、君記憶かけてるからそう言えるんだろうけど、
元々そういう戦い嫌いだったでしょ。」
「一体どういう風の吹き回」
『ねぇ、何時かでいいよ。何時か。』
「メル…お前」
「…そうじゃなぁ〜さすれば、どういう試合がいい?」
「ヘレス、お前まで」

微笑みながら指を指して聞くヘレスにそうだなあとメルは答える。

『天使と組んで二対二でしようよ!』
「…それ、俺達に勝ち目絶対ないだろ。」
「ぷっくくくく、そうじゃなあ〜〜一度だけなら許してやろう。」

なんだそれ、無理だろ。
どうあがいても勝てない。
え〜そんなことないよ〜〜〜

そう呑気な声が聞こえる中、メルはニコリと微笑んだあと、
後ろでそっと杖を出し、指を一度鳴らす。

ふわりと光り輝く青色が、何処までも綺麗だなと思いつつ声がかかった。



























「どういう風の吹き回しだ」



午後の真昼間ポスト・メリディエム