憐れんだ微笑でいいのに
「どういう風の吹き回しだ」
「お前何をするつもりだ。」
『私が壊れたら、また欠片を残してあげる。』
「…お前」
『聞いて。』
お願い、そうか細い声で言う彼女に、良いだろうと声を出す。
「それで?」
『あの時間と同じ状況下になったら全王様にこの宇宙を消さない様に言って欲しいの。』
「…まるで遺言の様に言うな。」
『私の役職はそのままで、私の欠片は日中のみ動かしておいて欲しい。
夜の時間は貴方が担当して良いから、肉体を動かしても寝かせても好きにさせて。』
「分かった。他には。」
『三期が終わると同時に結合に移行する。内容は手筈通りに。』
「ノートに書いていると。」
こくりと頷くメルに、分かったと
『大丈夫。』
「…そうにはみえんが?」
『どうせ人間の感情は一度だけ。』
後は全て、元通りになっていく。
波の様に、荒波は静かになっていく。
雨が止んで晴れるように。
それとまた、同じなのだ。
『ごめんなさい。』
「」
『悪い子で。』
「」
何も言ってくれない。そんな貴方が私は大好きだよ。
もう一人の私。白と黒の私。昼と夜の貴方。
一瞬と永遠の、狭間にある、空の中で。
『綺麗ね。』
「は?」
『もう、変わったんだよ。』
時間は。
そう言って指を鳴らすと同時に杖も消してしまう。
綺麗に折りたたんで、彼が持って行ってくれたら完成だ。
++++++++++
手筈通りに、メルはそう言っていた。
華樹神の見る悪夢は現実になる。
それをメルは知っていたのだ。
だから、絶対に叶えられるわけもない願いを置いて行く。
そうやって、何処かで理に触れ、戻れる線を作っておくのだ。
何時かの時の為に。何かの日の為に。
でもそうしたことが、引き金になり、
かえって悪い運を引き寄せることを、彼女は知らなかった。
「っ、なん、でっこれが、」
「お兄様」
「分かってます。」
バタバタと倒れていく破壊神らの奥で、
メルを庇い守る天使らを見つめる者に。
メルはじっと見つめ続けていた。
不思議と息は荒くならない。
だって大丈夫になったから。
『知ってる』
「え?」
『慣らすと痛みなんて亡くなるんだよ。』
それは死んだも同じだからね。
そう言う淡々とした声に、コニックが声を掛けるもむなしく
「っコニックさん!!!!」
がくりと倒れ込んだコニックに、クスが声を上げたことで気付く。
「っまずい!!!お兄様此処は一旦ひかせましょう!!!」
「ええ!!メル!!いきま……メル?」
『…ごめんね。』
そう言ってメルは耳元にセンサーを付け、
トントンと二回音を叩き
その場から宙に浮かんで足場を作って先に飛んだ。
あのバカと言ってコルンが走ろうとした時だった、
ばたりと音がして、嫌な予感がした。
「…お姉様?」
「大神官様、イレギュラーです。第4と第10がやられました。
このままだと危険ですので一度飛ばして頂きたい。」
「ウイスさん!!行きますよ!!」
メル様を止めにそう言うコルンに
ええとウイスが声を上げその場から飛び出す。
キンキンと音が鳴り響く中、えらく遅いなと直感がモノを言う。
右から来たら左が引いて、その後に足が来るなと思いつつ、
目の前に現れている悪夢に攻撃を入れた。
これは良い、これは素晴らしいと叫ぶ彼女の音が痛い。
湧き上がってくる活力、コレが満たされているということかと
叫びながらも黄金の草木を生やして倒していく彼女に、メルは走り続ける。
綺麗な金色。優しい青色。時間は変わらない。
でも喉がカラカラして、水が欲しい。
声は出さなくて良いけど、喉が渇いた。
ぎょろりと向いて、その杖を使って先に居る者に罰を与える。
綺麗な赤い血に染まりあがる身体の感覚が、妙に気持ちが良い。
自分のものを取り戻しに来ただけだ。
異論等認める訳がない。
メルは走り続け、コルンらが入っても透けて突撃し続ける。
少しでも、希望なんて、考える暇も与えない。
与えてたら、最期になる気がして。
「まだですかお兄様」
「悲報です」
「え?」
「向こうに跳べません。」
「なんですって!?!?」
一体どういうと言っている間にメルは杖を向き直し、声を上げる。
『架施を発動致します。状態レベル5。24全ての時間を引き上げます。』
「っエフェメラル様駄目ですそれ、は」
「お兄様!!!」
『杖よ、我に力を。』
左手で持ち、右手でかざすと青い宝玉が黄緑色の光りに光始める。
『とこしえに、囚われてしまった貴方を。私は迎えに来て差し上げたのです。』
どうか光栄に思いなさい。そう言ってメルは背後に入り、彼女の首を杖で切り落とした。
ごろりと転がる生首に、悲鳴が上がるのを無視しつつ、ペタルリチャードの方に向き直した。
「殺すのか」
『』
「はっ、所詮神もにんげっぐ」
『もういい』
何も要らない。必要などない。
杖を使い、そのまま勢いで胸にさしつけ、その首をはね上げた。
彼の身体と、生き返った彼女の身体から黄色と茶色の光を取り出し
その手から杖の中にいれてやると、
黄緑色の光が青く染まりあがり、髪の毛や目の色も変わって行った。
『おわり』
「…貴方、何をして」
『回収出来たよ。ほらはや』
パシンと鈍い音が響き渡る。
「何をしているのです。」
「お兄様…」
「勝手に動くなと言ったでしょう。」
『でも君らそうしないと生きれなかったでしょ?』
「っ!!!」
『杖もまだ使える。早くかえ』
「危ない!!!」
そう振り返るメルの目に黒い髪の毛が映る。
腹の辺りで妙な温かさを感じ取った。
「…っティオ……貴方なんてことを!!!!」
「ねえ、エフェメラル様。」
『なに?』
「白い世界に行きたいんでしょ?だからいっ」
「ヘレス様!!」
ばたりと倒れるヘレスにサワアが杖を使い回復を入れるも
回復の遅さに思わず舌打ちをついた。
此処に来てルピルムの呪いが入った短剣を持ってきていたのだ。
ティオの身体がジワリと腹から消えていくのに気付いたウイスが声を上げた。
「っ、ヘレス様、貴方…」
「っふふふ、おぬ、しも、あまい、のお?」
「…っあな、た」
「サワア、め、るを、たのん」
「…ヘレス様?ヘレス様何ふざけたことをしているんですか。」
『っ!!不味い!!ビルスか!!!』
「っ!!!」
流石のメルも声を荒げて杖を持ち直し彼の元に飛び出す。
タンタンと音を立てて花を踏んで速度を上げるも、既に遅く
「メル」
『…ビルス』
「っくく、なに、やっ、と、さま、づけ、しなっ、ぐほっごほ」
『悪い夢だね。早く覚めないとまたお寝坊さんって言われるよ?』
「ああ、そう、だな、」
『夢で寝たら起きれたりするんだよ。だからはよ目を閉じろ。』
「いて、ちょ、き、み、ひどい、ね」
『酷くて良いよ。悪い子だからね。』
良い子じゃないの?
うん、そうだよ。
『僕は悪い子悪魔の子だよ?破壊神ビルスよ。』
「…ぼ、くは、そう、は、みえ、ない、けどね。」
息を切らしながら、ウイスの回復を持ちつつ答えかける。
「まい、ごの、め、を、して」
「ビルス様、喋らないで下さい。傷が開きます。」
「ういす」
「駄目です」
「める、を、たのん」
「…駄目ですよ、ほんっっとうに、馬鹿なお人です。
貴方が死んでしまえば、私はこの子の、おそばに、すら、つけな」
パタリと最後まで言えずに倒れたウイスを立ち尽くしたまま見つめる。
静かになったその世界に、メルはヘレスが居た所にと足を運んだ。
『…知ってる。悪い子はね、大事な人の最期なんて見れないんだよ。』
ヘレスの傍で倒れ眠るサワアの姿を見て、
世界が徐々に黒く染まり続けていくのを感じる。
杖を使い軽く一振りしてやれば、
彼女らの身体がふわりと宙に浮かび上がりつづけたまま
メルは中央に此処に来ていたモノたちを集めていった。
最後の一人を置き終えた後、忘れ物がないか辺りを確認する。
元凶だった二人の遺体を綺麗に消し去った後、
メルは杖を五回叩いてその場を後にした。
『ただいま戻りました。』
「…おかえりなさい。」
横に眠っている者達の前に、杖を振ってやる中、
じわじわと黒く染まりあがっていく空間に
大神官が答えかける。
「すみません、彼らが不甲斐ないばかりに。」
『いえ、別に構いません。』
「…エフェメラルさん?」
『ごめんなさい。大神官様。』
悪夢は現実に、なってしまうのだ。
『プルチック感情、輪廻の輪を発動しています。状態はレベル5です。』
「っな!!!!貴方その状態がどういうことか!!!」
『私ね?スピスのことも、皆のこと、大好きだからね。』
「…エフェメラル、?貴方、なにをっ」
抱きしめて背中を軽くトントンと叩いてやると
身体の力が抜け落ちたのを確認すると
メルはそっと彼等の傍で寝かせてやる。
『…ほら、天使も寝れる。そうでしょう?』
そう言えば、メルの目から涙が零れ落ちてきた。
暗い、ただ真っ暗闇の中。下をみたら、天使らが目を閉じている。
嗚呼眠れている。ほら、ソレが夢の中なんだよ?
大丈夫、私も今から、長い長い夢の中にいくからね。
もう、一瞬なんて、有り得ない。永遠に、首を絞めてしまうのだ。
『ほら、大丈夫。』
涙が零れ落ちる時点で、私は壊れていやしないのだ。
メルはそう息を吸って吐いてを繰り返し、
その目の前にある額縁に目を向けた。
夢でみた、綺麗な彼等が描かれている、
この暗闇に、スポットライトが当てられていて。
人は光について行く。メルはゆっくりと歩き出し、
眠っている彼らの隙間に足を置いて前に歩く。
『だって、此処に、生きているのだから。』
その額縁の前に座り込み、そっと手を当て頬を当てた。
耳からは嬉しそうな声が聞こえてくると思っていたが、
何にも聞こえてこない。あるのはただの静寂それだけである。
「しんじゃったの?」
そう背後から声が聞こえる。
彼に繋げなければならないのに、そんな余裕すらもない。
『すみません、私の失態です。責任は取ります。』
「…いいよ?メル、大丈夫?」
『大丈夫です。』
「そのかお、大神官が言ってた。大丈夫じゃない顔。」
『大丈夫ですよ。それは嘘ついてます。』
「大神官も嘘つくの?」
『きっと嘘つきますよ。』
其処迄は知らないので、嘘を付けない自分が
サラッと本音を出してしまい、それに対して笑いが込みあがって来た。
嗚呼、本当に大丈夫なのが、嫌でたまらない。
『…彼に繋げます。』
「かれ?」
『オムニス。ごめんね。』
「…める?どうしたの?」
久しぶりにお名前呼んでくれた。嬉しいよ?
うん、そうだね。
『貴方の事も、皆、みんな大好きだからね。
だから、あの子のことも、仲良くなって欲しいの。』
「…わかった。」
『ありがとう。おむくん。ちょっとだけ待ってて欲しいの。』
「どうするの?」
『皆の中に入りたくて。』
そう言ってメルは天使らの元に歩いて間を縫ってその場所に立ち尽くす。
ぼたぼたと零し、嗚咽を漏らすメルに、メル〜と声がかかる。
大丈夫、大丈夫だよ。なんにも痛くない。辛くなんて、ないよ。
笑いながらメルは髪の毛を耳にかけ、そのままゆっくりと身体を横に倒した。
後ろにはコルンが此方を向いて眠っており、
目の前にはサワアが横になってこっちの方を向いて眠ってくれている。
互いに見られながら、寝れる位置に。
ぼたぼたと涙を零しつつも、大丈夫と声を上げた。
『おてて、おおきっ、なあ……ねぇ、さわあ?おぼ、えてるよ?』
メルね、ずっと、ず〜〜〜っと。覚えてる。
だからね、いつか。いつか、また笑って居ようね。
『嗚呼でも、メルね、疲れちゃった。』
沢山攻撃して、沢山守ったの。でも守るのも攻撃も難しかった。
そう笑ってメルはそっとサワアに触れようとしてその手を止め、おろす。
『疲れちゃったから、もう、ねちゃうね?』
久しぶりに、こうやって横になれるね。
目覚める日は、一体何時だろうか。
嗚呼、もう、二度とないのに。
有り得ない。
もう、存在しない。
『…大好きだよ?ずっと。ず〜っと。』
もう、触れることなど、できない。
血塗れたこの手で、綺麗な手を握るなんて、弱い私は無理なのだ。
叩かれた頬が痛い。胸が酷く、痛みを伴って笑う。
嗚呼!やっと!ゆっくりできるね。
「ねるの?」
「ねちゃうの?」
『…うん。寝たら起きる子の言う事を聞くんだよ?おむにす。』
「わかった。」
「わかったよ。」
『いい子だね…わたしと、まったく、ちがう。』
いいなぁ。いい、なあ。
嗚呼、これが
『どうか、ゆめだった、、ら、いいのに、な』
メルはそっと目を閉じた。
++++++++++
目が覚める。
目の前に寝ている天使にうおっと声が上がってしまったのは許して欲しいと思う。
だって目が覚めた次の瞬間ドアップでよくよく敵対する天使がいたらどうおもう?
普通に驚くだろ?少なくとも僕は驚いた。
「きみ、メルじゃないね。」
「きみだれ?」
『…エテルネル』
「えてるねる?」
「それが君の名前?」
『……嗚呼、そうだ。』
メルから伝言を預かっているという彼に、全王様が何々?と声を掛ける。
『エフェメラルが死んだ。』
「…でも、生きてるよ?」
『違う。エフェメラルは欠片しかない。』
そう言ってエテルネルは青い光をそっと手からはなす。
マッチの灯りよりも、豆電球よりも小さい欠片に綺麗と声が上がる。
『こうなったら外に出しても死んでいると同然だ。
基本的には僕がこの身体を維持するために動く。』
「なら宇宙全部」
『ダメ』
「なんで?」
『この宇宙を消さないで欲しい。』
「…それがメルの、お願い?」
嗚呼そうだとエテルネルは答える。
『この子が付けていた役職をそのままにしてほしい。
引継ぎは僕が行う。勿論この子が寝ている間のみだ。
昼間は基本的にこの子が担当するけど、出来れば会わないでやって欲しい。』
「なんで?」
「どうして?」
『君が会えば、この宇宙を全部消しちゃいたくなるくらい怒ってしまうだろう。
そうしたらもしもこの青い光が元通りになった時、あの子はどうなる?』
「えっと、残してっていったから、こまる?」
「かなしくなっちゃう?」
『嗚呼そうだ。悲しくて泣いて、また死んでしまえばどうなる?』
「そんなのいやだ!!」
「いやだいやだ!!」
『そうだろう?沢山遊びたかったのに勝手に消えたら嫌だろう?』
そうだそうだという全王様に、ならばとエテルネルは答える。
『この世界を消さないでやって欲しい。この青い光が生き続けるその限り。』
「…分かった。」
「何時なら会っていい?」
『まあ当分は難しいな。千年から一億年程度と言った処か。』
「それくらいならいいよ。」
「あっという間だよね」
「そうだね、あっという間だ。」
そう言う彼らに、なら良いかとため息を吐いて席を立つ。
指を鳴らし、その世界を元の場所へと戻してやった。
そうすれば大神官が目を覚まし、身体を起こし上げる。
「…っ、私は、一体。」
『大神官様。』
「め、る…さんで、はどうやら、なさそうですね?」
貴方はと睨まれる自分に、ニコリと微笑み胸に手を当てる。
『エテルネルと申します。大神官、スピリタス様。』
「…貴方が真夜中の者ですか。」
『単刀直入に申し上げます。エフェメラルは死にました。』
「……そうですか。それは残念ですね。」
『ですが奇跡的に光のみが残っています。』
これが戻るかどうかは、彼女次第。
そう言う彼に、残すのですかと大神官は聞く。
『ええ。肉体の維持と、そして貴方の管轄も彼女の状態を維持させて頂きたい。』
「僕が許可したよ。大神官」
「…分かりました。」
『華樹神の部屋は原則天使らですら立ち入り禁止にしてほしい。』
「その方が良いでしょうね。破壊神らも選ばなければなりませんし。」
『何人かはツテがあるし、その間華神らを回させても?』
「そちらの方が有難いですね。彼女らにはご迷惑をお掛けしますが。」
良いと言ってエテルネルは全王様を引き連れて華樹神のある場所へと移動した。
++++++++++
「…そんな」
『事実だ。』
「…エテルネル様と申されましたか。一体誰を引き継ぎにされるご予定で?」
『とりあえず原初と引継が良いだろう。原初は天使らに指導して頂きたい。』
「正気ですか…?我々は彼等と親しみがあるのですが。」
『其処ら辺は安心して欲しい。
次に目覚める時はお前らは勿論僕のことも知らない筈だ。』
は?
「え?」
「は?」
『エフェメラルがそのように彼等に呪いをかけていてね。』
一応言っておくが大神官。お前もだからな?
『気を与え、印をつけたもの全員が含まれる。』
「…成程、嵌められたという事ですか。」
『まぁ寧ろ消滅する天使が無くなるだけマシだと思ったらいい。』
こっちもフォローする。
お気遣い痛み入ります。
「でしたらすぐにでも取り掛かりましょうか。」
『いいのか?』
「ええ、その方が…きも、紛れますので。」
『…すまないな。』
「いえ。」
そう言って二人で席を外すのに、全王様へエテルネルが指示を出す。
メルの事を知って、彼らも酷くショックを受けているのだ。
華神らの所には通路を繋げて置き、何時でも移動できるように声を掛けた。
華樹神の場所は全王様の寝室という設定にすれば
天使らも神々もそう立ち寄らないだろう。
エテルネルはなるべくエフェメラルがドアから移動するように
大神官にも伝え、移動経路をとにかく天使が会わない様に取り繕った。
そうして、案外月日は流れ、一か月くらいが経った辺りか。
エテルネルはコンコンとノックを通して大神官の部屋に入って行った。
『失礼。大神官様、少々耳に入れて頂きたい内容が。』
「なんでしょうエテルネルさん。」
『エフェメラルが息を吹き返しました。』
「っ!!!それは、本当ですか?」
『ええ。ただ目を開けて身体を動かせる範囲です。
破壊神らの候補は見つかりましたか?』
「いえ、まだ其処迄では…。」
『…一度お会いになりますか?』
「出来れば。」
分かりました。それなら明日にでも予定を開けて置いて下さい。
そう言う彼に、大神官は礼を言って
彼からの予定とその他の調整を聞き終え席に戻る。
「……まさか、しないしないと仰っていたのに
こんな大それた作戦を思いつかれ
まんまと罠にはまってしまうとは。」
私も、落ちぶれたものですね。
「まぁ、救われるといえば、救われますかね。」
ほんと、酷いお人ですね。
どういうことをしたら嗚呼も育つものか。
「まぁ忘れるのは…ある意味贖罪というべきでしょうか。」
ー私の本当の死は、人から忘れられることだよ。
「…狡いお人ですよ。ルトラール、貴方のお子は。
彼等の中で、ゆっくりと、共に寝てしまわれてから
時を止めてしまわれたのですから。」
目覚める前、実はメルの言葉を盗み聞きしていたのだ。
なんならちらりとその姿が見えてしまった。
嬉しそうに涙を流しながら、その目の色が
どんどんと暗く落ちていくのを、見ていられなくなった。
気は濁り、とてもじゃないが澄んだあの気は何処にも存在しない。
ただの光も見えない、暗闇に変えながら、嬉しそうに笑って言うのだ。
手を伸ばしたその光を、そっと胸に仕舞い込んで。
もう、大丈夫だと。涙を零して笑って言うのだ。
「…おや。私も涙脆くなってしまいましたね。」
彼女の呪いでしょうか。そういうことに、しておきましょうか。
沢山遊んで沢山考えて、沢山頑張って来てくれたのだ。
疲れて眠りたくもなるだろうし、彼女も本望だっただろう。
天使らが眠り続けるど真ん中で。自分も眠れてしまえたのだから。
「…ですが、彼等は生きるのですよ。エフェメラルさん。」
貴方が付けた呪いがなくても。次の破壊神に仕えるというもの。
「…さて、私も一応念には念を入れておきますか。」
次の私が、この時間に触れない様に。
「貴方が笑って生きれるその日を。」