青空から福音
「恥じらいというものはないのですか…恥じらいというものは……」
『そんなの私の顔にあるとおもう!?!?』
「ありませんが付けて下さい。」
『え〜〜〜?』
「お・よ・が・な・い・っ・!!!!」
ざぼっとついて来たコルンが
メルの腕を掴みちょこんと床に座らせるのに
目をぱちくりとしていた
メルがニコリと笑ってへらへらと笑う。
露天風呂は幸いなことに乳白色の色合いで
入っている間だけでは何をしているのか見えない。
その為メルが全裸姿でいることも
分からないと言えば分からないのだが。
「まったく、行儀がなっていないですよ…!!」
「ま、まぁまぁ。」
『え〜じゃあこういう遊びは?』
「ん?なんですそれは。」
『こうやって空気を入れて〜〜!じゃば〜!!』
「ちょ!!!」
風船のように膨らませた後丸い処を手で押さえて
ボコボコボコと音を立てて笑うメルに
はしたないですからおやめください…と
呆れながらも指導するコルンを他所に、
ヴァドスらはクスクスと笑って答える。
「まるで兄弟のようですね?」
「こんな妹がいてたまりますか。」
『あっそこお姉ちゃんじゃないんだ。』
「どう考えても妹でしょうが。と言いますか、
そもそも貴方が姉という位置が未だに理解出来ませんよ。」
『え〜?じゃあ…お兄ちゃん?』
「…ぐっ」
「はいはい、弟弄りはそれくらいにしてやってくださいね〜。」
そう言ってサワアがそっとメルをコルンから離してやれば
えーんと手をバタバタとさせて
コルンを恋しがるようにするのをみて
皆でクスクスと笑い合った。
「ほんとお好きですよね〜コルンお兄様のこと。」
「怖くないのですか?」
『ん〜怖くないと言われたら違うけど』
「違うんですか」
『でもちゃんと見てくれるって分かってるから。
だから怖くなくなるよ?』
「…それはどうも。」
『あってれてりゅ〜〜!!コルン様がてれてりゅ〜〜!!』
「てっ!照れてなどおりません!!」
この湯が熱いんです!!
そんなことないもーん!!
「そう言えば向こうで私の真似を
なさっていたようですが、その状態ですか?」
『大分近い!でもやっぱりシャンプーやら
リンスが無いと前にへたってくるんだよ…』
ほらこうやって。そう軽く頭をふるえば前に落ちてきた髪の毛を
無理やり上に上げて乗せるメルにおやおやと声が上がる。
『お風呂は基本的に上へ上げて置いた方が
すっごい楽なんだよねぇ。視界も良いし。』
「普段からしようとは思わなかったのですか?」
『いや普通にしてた時期あるよ。』
「あるんですか。」
『前髪束ねて上に纏めて止めるの。あっ今度する?』
「いいえ結構です。」
間に合ってます。
え〜〜
「本当に仲良しなんですね…」
「そうですねぇ〜我々が居ると分かって
あの距離なら色々問題ありそうですがね…。」
そう言う者達の視界にはメルの背中に
サワアが後ろからぴったりくっついていた状態。
サワアは全く気にしていなさそうにしているし
メルはメルでサワアに腹元を抱えさせているのだろう。
時々メルが動けばサワアの腕も少し動いていた。
何なら片手を掴んで手で遊び始めている始末だ。
まぁ、数千億年もの月日を経て彼に会えているとしたら
これくらいの甘えも許してやった方が良いと言うべきなのだろう。
こんなもので終わる訳もないだろうし、
終わったらそれはそれで一言いいたいことがあるというもの。
ウイスらはメルの好きなようにさせていたのは
彼女が今まで我慢し続けてきたからこそだったのだ。
「嬉しそうですね」
「ええ。それもそうでしょう、
なにせ一番お会いしたかった者に
会えた上に触れていられるのですからねえ。」
「だから何も言わないんですか?お兄様。」
「はぁ…これ以上言えばなんて言われるか想像がつきます。」
今日くらいは許して差し上げて下さい。
ふふ、そう言われずとも許しますよ。
「あんなにはしゃいだお姿なんて見られませんからねえ?」
「…ま、こうしてほとんどの者で風呂に入るなど中々ないでしょうし、
のぼせない程度にやらせておけばいいでしょう。」
「お兄様ばかりずるいですます!」
「あっのぼせそうな感じを察知したんですが。」
「はぁ…どうしてこうもなるんですかね。」
勿論その後予想通りメルを取ろうとマルカリータが来て
サワアの名を呼び帰ろうとするメルとの取っ組み合いで
コルンに叱られている間にメルは無事にフラグを回収し、
二人の間でゆっくりとのぼせたのであった。
++++++++++
「全く、幾ら仲が悪いといえど人を
それも風呂場の最中で奪い合いしますかね…!!」
「…すみません」
メルはメルで身体を冷やしてもらいぐったりと横になっているが
顔色が少し悪いのを見かねてコルンが距離を置いて説教していた。
何時もなら兄であるサワアはもう少し理性がきく者であるが
どうもメル絡みになると効き目がぶれにぶれまくる。
まぁそこら辺はコルンだけでなく皆も問題点になりかねない処…。
「マルカリータさんもマルカリータさんです。
女性とあらば彼女に付きっ切りで
遊んでもらえたでしょうに。」
「だって…お兄様ばかり目が泳いで
こっちを見てくれなかったですます…。」
「……む…ま、まぁ…そう、ですね…
…それに関しましては、今日ばかりは我慢なさい。」
流石に我々並みの年月を待ち続けて漸く会えたのです。
私達は其処迄長い間離れている感覚などありませんがね。
「彼女からしたら気が狂いそうな程の年月
耐え忍んできた上でのアレを喰らってるんです。
…あの程度のいちゃつきは我慢なさい。」
「いちゃつきって…コルンさん、そんな言い方ないでしょう?」
「ではアレでどう説明をしてくれるのですか?」
「もうその辺になさっておいては如何です?」
「ウイスさん」
「メルさんが気になっておいでますから。」
そう角から出てきたウイスの目線には
ちらりと角から覗いてこっちを見ているメルが見えた。
明らかに寂しそうな顔で『ごめんね…?』
と言いたそうに上目遣いで見てくるメルに
う゛っと、何処かからともなく声があがる。
「お兄様」
「では、お言葉に甘えて。…メル?調子はどうですか?」
まぁまぁ。
駄目なら部屋にお戻りなさい。
え゛っなんでバレるの。
はぁ…一体何年の付き合いだと思ってるんですか?
貴方の体調管理くらい大体見てわかるんですから。
そう言いながらメルの前に行って話していたサワアが
メルの背中に手を掛けそのまま抱き上げてから移動する。
歩けるという悲鳴が上がる中、見えなくなったところで
はぁとコルンがため息を吐いた。
「これから楽しくなりそう、ですますわね?コルンお兄様。」
「私は既に頭が痛いですがね…。」
「ふふっ…でも、不思議と嬉しいです。」
「マルカリータさん…?」
「皆でこうして何かをして過ごすなんて、
ある意味二度とないと思っていましたですますから。」
全員で来たとしても破壊神での付き添いが基本。
こうやって天使ら全員で自由にするということは
天使見習いとしてならまだしも、
大人になって、しかも天使ガイドとして
活動している間ではありえないことなのだ。
そもそも天使自体が変な話宇宙を管轄する者達であり
こうやって少しの間だけでも同じ場所で
それも人間と天使の狭間に位置した状態で暮らし続ける
なんてことが出来るのはこの時間帯だけに限ったことだろう。
向こうの宇宙らが一体どういう形になっているのか、
ソレに関しては皆同じ想いであって。
「…そう浮ついたところを掬われないことですね?
お忘れですか?この場所がどういう場所か。」
そして、彼女がどういう位置に存在しているのか。
「…分かっているですます、そんなことくらい。」
理に導かれ、理に殺されようとしている子。
華樹神どころか理ですらお目に掛かれない者が選んだ子。
その子が何度も死ねないのに死にかけ続け、辿り着いたこの場所。
理自体を、華樹神の位置を、書き換え続けている彼女が進む場所に、
我々天使らもついていくしか生きる術がないのだ。
全王様ですら抗えない理そのものに。
従わない以外は他ならないというもので。
それでも、メルは天使らを従えようと思ってしてなどいない。
なんなら外の状態が悪いことに気付いたメルが最終手段として
サワアら全員メルに関わりの在る者達の記憶だけを切り取って
保管した者達こそが、自分ら天使なのだから。
ある意味、メルの妄想上に生かされている状態では
とてもじゃないが本来の力を振り出すには難しい。
なのでこうやって廻廊の力を思う存分酷使してでも
この廻廊を抜け切り、元の場所を奪い返そうとしているのだ。
「ならばよろしい。」
「お兄様はどちらに?」
「彼女に用がありましてね。」
++++++++++
「…寝ましたか。」
「ええ、数十分前に。」
くたりと寝ているメルに、耳をすませてみれば
息をすぅすぅと寝息を立てているのが聞こえて少しホッとする。
これで死んでいたらひとたまりもないのはこっちの方でもある。
「何か彼女に用が?」
「まぁ、少し。」
「…コルンさん」
「なんでしょう。」
「貴方は此処に来る前、どれ程の時間が経った感覚か、覚えていますか?」
「…それは、この子が絶望に打ちひしがれている間、ということで?」
そうですねえ
「大よそ数時間、いえ、数年程度…と、言った処でしょうか。」
「きっとエフェメラルからしたら最初の廻廊がそうだったんでしょうね。」
「…大丈夫ですよ、また、何時もの様にお話が出来ます。」
「そう、だと…良いんですがね。」
分かるでしょう?
…そりゃあ、そう、ですが。
「貴方が否定したらこの子は一体何処を向いて生きればいいのですか。」
「…いけませんね、つい感傷的になってしまう。」
「お兄様…」
「弱音を吐いても許されるのは貴方であるというのに。」
泣いて泣いて、前が見えなくなってしまっても。
それでも、手を伸ばしては、そっと降ろして。
彼がそれで。笑って居続けてくれるならば。
「…貴方は一体、何者だったのですか…エフェメラル。」
天使になっても、貴方が遠く感じます。
「…前に彼女は話していました。
酔生夢死の様な時間を辿る神になるくらいならば。
無我夢中に生きる短くも儚い人間で在り続けたい。」
「すいせい?」
「何も価値のある事をせず、ただ生きていた。
と、いうだけの一生を終えることを指す言葉だそうです。
くだらない一生と言えるくらいの、
長い年月を生き抜く神になるくらいならば。」
我を忘れてしまうくらいには、
心をうばわれ、無意識的にただひたすら走り続ける
短い時間にしか生きれない人間で在り続けたい。
それは、儚い春の一瞬に咲く花の様な。
「私は何者でもない。誰かに付けられる者で在りたくない、ともね。」
「…変な子ですよね、まったくもって。」
「ですが、そんな子だからこそ。我々は心を救われているというもの。」
一応これでも各宇宙で戦えば一番強い者達なんですがねぇ。
言えていますね。
「この子は力で勝とうとしない。
だからと言って、我々に助けを乞うこともしない。」
「寧ろして良いべきところで自分の力で
足掻こうとするのだから困ったものですが」
「最近は良く助けを求めてくれるようになりましたね?何かしました?」
「いいえ?なにも。…ですが、この子なりに
きちんと理解して実行なさっておられるのでしょうね。」
すぐには、できないけど。
いつか、かならず。
「我々と共に。傍で居続けられるように、
助けを求めてくれる…そんな子。」
どうか、この時間だけでいい。
此処にいる時だけは、優しい時間を過ごしていて欲しい。
あの現実が貴方にとって地獄よりも酷い煉獄の中であったらば
此処は貴方にとって、天国であればいいと思うばかりだ。
そう、此処が。
++++++++++
「それにしても、お主も良くこの時間を作れたとは思わんぞ。」
『むう。私とってもえらい?』
嗚呼、えらいぞ。
そう言ってメルの頭を撫でてやる彼女こそが、
この物語での一番大役とでもいっていいくらいの人間、
いや、存在その者である、
『かじゅ』
華樹の者。アコマリ。略してマコちゃん。
白い髪の毛を降ろしている彼女がニコリと
微笑むその眼は金色色に光り輝いていて。
白い衣服に身を包んだ彼女こそが、
この理に咲いていた大きな華樹その者。
「ん〜?どうした。」
『階段側の下にある5つの扉ってさ、あれ一体どういう位置なの?』
「…そう、だな。逆に君はどう考える?」
どうだったらいい?
そう聞く彼女に、そうだなぁとメルは言う。
『廻廊が12個でしょ?自分の味方と、後は自分の心がトンネルの向こうにあるんだから…
一番最初ってこともあって、理全員に繋がる扉だったら寂しくないかなって。』
「…寂しく?それまた何故。」
『だって、此処はお友達が沢山いる処でしょう?理って良くも悪くも家族みたいな感じじゃない?』
代々受け継いでいくって、それってさ?ご先祖様みたいなものでしょ?それって家族の、血が繋がっているって意味であって。
『幻想に近い理の者ではなくて、
本当に普通のありふれた人に会える
そんな場所に迎える扉だったらさ?
何処に行っても何をしていたってさ?
寂しくなんて何もないかなぁって。』
「…ほんと、お前は何処まで
そんな澄み渡っていられるんだろうな?」
『まこちゃん?』
「狂っていく世界で、お前は一体何を望む?」
何を願う。何に、祈りを捧げる?
黄金色が、此方を覗くように見続けてくる。
まるで、お前の言いたいことは
そうじゃないと否定してくるように。
カラスに睨まれたカエルか、いや違うな。
こういうのは一体、どんな言葉だっただろうか…?
『(あれ、カラスじゃなくて蛇だったよな?
何で
「…一度廻り続け、狂ってしまえば永遠に狂い続ける。
狂い咲きを起こした者でも
此処まで生き続けるのは最早呪いに等しいというもの。」
『…ま、こちゃ?』
「いや、私。だからだとでもいうべきか。」
先に伝えて置く。
「お前は私。私はお前。これから2択に狭まることになる。」
いつの間にか誰も居ない。
まるで、今までが夢だったかのように静かになるこの場所が嫌だ。
ひんやりとしていて、心臓の音が鳴り響いて怖い。
身体がまるで金縛りにあったかのように動かなくなった。
今彼女の目を見たくないのに、見たくなってしまう。
それくらいの好奇心で身体が動くのだから、
きっと金縛りにはあっていないのだろうなと
見当違いのことばかりを脳内で廻らせてオチを見つけに行く。
何処までも、廻るというのに。落ちる場所なんてありえないはずなのに。
「はぁ…お察しの通り、各扉はお前の知る理へと続く扉だ。」
『わあ!!!』
「本来は在るべき色に続く…が、恐らく変わっていることだろう。」
『どういうこと?』
「例を出せばそうだな…0代目はトベラ。
続いて1代目はアニュラスだろう?0は黄色、
アニュラスは赤色を保持している筈だ。」
『うん。そうだよ?』
「だがそれがもし、本来の色ではなく狂った先の色であれば?」
その言葉に思考すらも停止する。
目が細くなった彼女が続いて話をくわえていく。
「トベラは本来透明色だ。だって無だから。
そもそも何も色等見つけれない。
其処から色々あって狂い変化して黄色へと続いた。」
『ちょ、ちょっとまって!!それ、まるで私と
同じようなことが起きたみたいな言い方してるでしょ…?
あの人達はそんなことなかったっては、なし…を、』
あれ?そんなこと、一体、いつした?
「…2代目トレースは赤から黒へと。
3代目ヴァイスことエーリンは黒から白へと変化している。」
『え?緑じゃ』
「お前の目は何色だ。」
元の色はそう言われて黄緑だけどとぼそり呟く。
「黄緑色から青色へと変色しているだろう?」
『でも緑じゃないよ?』
「だから狂い咲きと言っておるんだ…。最初から緑として産まれるはずが、
ちょっと早く生まれたから色が若すぎることになった。」
本来緑で咲くはずが、黄緑とかなり明るい色から
咲き誇ってしまったが故に、理にも華樹にも早く目が留まってしまった。
「此処は其処迄酷くなる様な額縁に続くことは断じてない。
それは一重にお前自身が望んでいることから出てくるもの。」
『…わ、たしが?』
「先に断っておくが、人を懲らしめたいとか
そういう悪意的な要素は関係ない。」
まぁ、もしそういう浮ついた様な気も持ちで華樹神に選ばれたとしたら、
それはそれで色々と多問題に発展するから考えたくもないが。
「話を戻そう。少なくともお前が入れる扉は緑ではなく青の扉だ。」
そう言ってトンネルを含めて左3つ目の青い扉に立つマコちゃん。
『え?じゃあ緑は?あとその流れだと紫とかは?黄色とか黒も白もないし…』
あっ白はあるね?
「扉の扱いは知っているな?」
『…触っても?』
「嗚呼どうぞ、お好きに?」
そう手を見せつけて答える彼女にメルは白い扉の前に立ち尽くす。
一見普通のドアに見える。金色のドアノブは全部同じ統一されている。
形も同じ。四角い形で、黒色の格子型の形が頭より上に一つ枠が設置されていた。
格子、なんだから確実に奥がみえるはずなのに、
全部奥はみえず真っ暗闇なのも不思議で。
気になってノックを数回叩いてみれば、予想通りだ。
白色から黄色へと変化したではないか。
ごくりと喉唾を呑み込んだ。
各場所へドアをノックしてみる。
赤色の扉は黒へと変化し、緑色は青色へと変化する。
紫色は変化なし。青色の扉も含めてだ。
この感じからすれば、恐らく透明色が白という判定で黄色。
トンネル側から緑、青、白、紫、赤で行けば、緑から青に変わる点で行けば最初の緑色の扉である処なのだろうが…
彼女の話しからしたらそうではなさそうで。
だって最初の扉色が本来の色。即ちメルの居る青色の扉左から3つ目がメルの居場所。
仮にメルが青色だとしても、緑色を持つものが誰一人としていない。
まるで空白だ。空白の時間があったかのように感じらされる。
逆に、というか緑色の扉がメルのだとしたらだ。
青から変化しないということは自分の先
即ち未来に起きる子の色を先に知らせてくれるという意味にもなろう。
そうしたら紫色の扉が変化しないのも納得がいく。
だってそもそも存在していないから色を変える意味すらないのだから。
…でも、そうだとしたら、今度は扉の数が足りないことになる。
だって考えてみて欲しい。今は0代から数えて4代目に切り替える位置だ。
それなら全部で5つないといけない。だが未来のを含めると7つないと話が通じないのだ。
あと2つの扉が隠されているのか、そもそも別に用意されているのか、
それとも、そんなつもりではない何かなのか。
いずれにせよ問題が山積みなのは間違いないということで。
メルは深いため息を吐いて唸る。
『……ん゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
「ふふ、考えて考えて?もっともっと。深くまで。」
そうは言われてもだな。これが白い扉が透明であれば…
『あ、違う逆か。』
狂っているということは、本来の色がノックした色ならばどうだ。
白色が黄色になったということは、本来黄色であるのだから
真ん中が1代目のアニュラスが位置するばしょ。
赤色が黒色になったということは、
本来黒色であるのだから3代目エーリンの場所?
いやでも、色が変わる、違うか?
ーあのお方がそういうことをするはずがないのですが。
そう誰かの声が脳内で響く。
…いや、まさか、な?
『仲間はずれが、理に…既に、居る、とか。』
振り返りたくない。彼女の目を見たくない。
そうだと言われている背中の視線が痛くて心臓が跳ね上がった。
「…なら、仲間外れは一体誰だろうなあ?」
『っ、』
「…少なくとも、お前ではない。」
『……え?』
こっちを向いたなと言わんばかりに目が細まる彼女に、メルはそれどころではなくなった。
普通に考えて私だと思っていたのだが、
「純環の理らは純粋なる環を永遠ともいえる程に廻す者達の総称である。
逆に言えば一度外れた者達は理とは呼び難い。」
『…それ、全員言えなくなる仮説があるんですが、ソレは一体。』
「っくくくく、それはそれだ。お前の仮説のうちの一つは正解だ。」
『…ど・の・か・せ・つ・だ・??????』
何処だと悩むメルに今度こそ腹を抱えて笑い出したマコちゃん。
可愛いね??嗚呼すいません話がそれちゃいますね。
「何時かはその扉を嫌でも開けなければいけなくなる。」
『…まこちゃ?』
「狂った先でも、お前が私を望んで居てくれるならば。
…私はどんな手を使ってでも、お前の望んだ先を提供してやれるんだがな。」
案外そう簡単にはことを運ばせてくれないらしい。
「こんなシステムもぶち壊してくれる子がいれば…色々と楽になってくれるんだがなあ?」
『…狂ったら元に戻らない。』
収集が付かなくなる。もう、後戻りなんて出来ない。
過去にいくら縋った処で、どうしようもないのを考えても無意味だ。
でも、それでも未来が変わるかと思って見つめ続けてしまう。
それが縋る行為になっていると、分からなくても
いいや、分かっていても。止めれないから、廻るのだろう。
此処の扉が何を示しているか分からない。
でも、今開くつもりはないし、どのみち開くなら今ではないのだろう。
そっとノックをして色を元に戻してやると、何処か落ち着いてしまう自分が居た。
これが狂った先の色なら、落ち着いている暇なんてないというのに。
「エフェメラル」
『なあに?』
「花冠を、交換するのだな?」
そう言われて視線が明後日の方向にへと向いてしまう。
肯定しているようなものだから、したくはなかったのだけれども。
「…考えている通り、お前の環自体が花冠に位置している。
逆に言えば花冠を作って交換さえしなければ、
お前はお前のままで居られるというもの。」
『えっと?つまり?』
「つまり恋した情を持った奴と約束を果たさない限りは
次の代に入らない上に狂い続けて終わらないということだ。」
『え、それ、ある意味ブラックホールうむ話にならない?』
「まぁ放置し過ぎるとそうなるな?」
それ宇宙どころか世界そのものを消し去るみたいな話だよね??!?!?!
『まってそれ急いで戻さないとまずくない!?!??!』
「まぁ慌てるな。どうせそうなる。」
『そんな変えれないみたいに言うなよな!?!??!』
他人事みたいに言うけど、貴方も割とまずいのでは?!!??
「まずくないわ。寧ろ我々は枠から綺麗に外れた位置に適しておる。」
『え?ど、どゆこと?』
「最初に言ったじゃろう?一人は二つ、二人は一つ。それ即ち我々二人は一つの存在。
お主が死のうとも、死ねるわけがない。正確にはお主の言葉で言い換えれば転生を続けるというものかのぉ。」
ある程度は綺麗にこっちで切り取っておるが。
それでも膨大な量を保管しておるし。
『でも私何度も死にかけてるしってか一度は死んでるみたいなものなんだけど』
「アレは強制的な仮死状態に瀕しているだけであって、本来の死ではない。
心臓が止まろうが手足がもがれようが、何をしてもお主が死んだと思えば死ぬし、死なないと思えば死なずに生きれるぞ?」
『そんな夢みたいなことを言われましてもですねえ……』
もう呆れて話しがついていけなくなってくる。
「現に空を飛びたいと思って強く念じて受け入れたら一時期くらい空を飛んでおったはずじゃが?」
『え?あ、ああ、言われてみれば、たし、かに?』
「原理は同じ。此処に入れば尚更、まぁ正確には産まれた時から同じなんじゃが。それはどうでもいい。」
とにかく、受容し、強く思えば願いはなんでも叶うということを忘れないで欲しい。
そう言う彼女に分かったとしか言いようがない。
幸福を満たせば不幸も自ずと同じ様に来てくれると分かっている。
それは、私が思っていたからそうなっていたのであれば、
そう、想わないようにすればいいだけのことであって。
メルは何とも言えない気持ちのまま、暫くその場に立ち尽くすのであった。
いつの間にか、誰も居ない感覚は綺麗になくなっており、
その代わりマコちゃんの気配は何処にも感じ取れなくなっていた。