みんな何処へいったの




夢を見た。綺麗な額縁に飾られた神々の場所。
暗い場所に光り輝き、その場所に縋り付いて笑う時間。

誰もいない、誰も、彼も、目覚めない。
そんな寂しい場所なのに、
なのにどこか、満たされていて。

寂しくないのに、怖くもないのに。
何故か、涙が溢れてとまらなくて、
その場に縋ってしまえれば。

満たされた感覚など、何一つたりとも
其処にはなくなってしまって、いて。


振り返ると、沢山の人が
横たわって眠りについていて。

怖くなって、その中にことりと
身体を落とし、目を閉じてしまう。

間に挟まって、その手を取らずに、
ただ、目を閉じて、眠ってしまう。

逃げる様に、コレは夢だと言い聞かせて。
今日も私は、目を閉じてしまう。


嗚呼、今日も、良い夢だったと、願い続けて。






目を覚ます。






『』


ちゅんちゅんと朝から雀の音が鳴り響く。
ドタバタと走って来た子に、首を傾げた。

「も〜〜〜煩い!!!ティーナ!!
エフェメラルが困るでしょうが!!!!」
「んだよ!!別にいいじゃねえか!!
元気なくらいが丁度良い!!おはよ!メル!!」
『…?(おはよう、ティーナ。今日も元気だね?)』
「嗚呼元気だぞ〜〜〜
メルも早く声出せるくらいには元気なれ〜〜?」
「ちょ、ティーナ!!!!」
『(どうして?言語は此処で間に合ってるよ?
意思の疎通が出来れば何も不自由はない。)』

そう言うメルに、それはそうなんだがとティーナは答える。

「口で言うのとテレパシーで言うのでは話が違うんだ。」
『(理解出来ない。同じであるし、
此方の方が其処迄消費も無い。健康そのもの。)』
「それはそうなんだがな〜試しにちょっとな?な?」
「はいはいっ、そこまでそこまで」
「あ〜〜〜〜あ〜〜〜〜めるう〜〜〜〜」

ティーナが引きずられて部屋から連れ去られて行ったのを
声が聞こえなくなるまで見た後、メルはそっと外を見つめた。

大きな華樹が白い花を咲かせている、この星の名はアトランティス。
私が起きたのは今から大体1000億年ほど昔だそうで、
この地に住んでいる彼女達は歳をとらなければ死にもしないという。

あの華樹を中心として、4方向に春夏秋冬として季節が分かれ、
この場所は中央部で、私エフェメラルが住んでおり、定期的に
4方向から一名ずつ選出され、千年周期に人が変わり続けている。

春からアマレット、夏からリコット
秋からティーナ、冬からフェルが来てくれていた。

「おはよう、エフェメラル。調子はどう?」
『(おはようフェル。心拍数一定、異常は見られません)』
「そっか。ご飯は食べられそう?」
『(食べれます)』
「無理しないでね。」
『(無理?理解が出来ません。)』
「…そっか。」

そう寂しそうに笑う彼女にメルは首を傾げた。
嗚呼、まだ寝ていたいけど、起き上がらないといけない。
メルはベットから起き上がり、身支度をする。

浅黄色と白色の衣服に身を包み、部屋を後にする。
一階に降りれば彼女らが席について待ってくれていた。

「さっさと食べようぜ」
「ええ」

頂きます。そう手を合わせて食事を共にする。
今日は何処に行く?向こうに行く。
調理は?私がするよと声がかかる中、
メルは規則正しく目の前の食べ物を取り続ける。

口に含んでは呑み込んでしまう。ただそれだけの時間。
この星にも随分と慣れたし、彼女らの相手も随分慣れた。

でも、何処か、こうやって話して食べていた気がする。
ずっとずっと前から。まるで、昨日の様に。
日の当たる真下で?それとも、暗闇のど真ん中で?

「メル?どうかした?」
『…!(…なんでもないよ。)』

そう、なんでもない。


何度か怒られたり叩かれたりしたが、
会話を変えれば何とかなることが判明した。

彼女らの真似をしてしまえば何とでもなる。
ただ無理をしないでと泣かれた時は困ったから
ある程度してから、そんな真似などしなくなったが。

『(ごちそうさま)』
「お粗末様でした。美味しかった?」
『(わからない)』
「そっか。」

最近胸がツキンと痛くなる。
あの暗い場所の夢が鮮明な日は特にだ。

美味しい?無理しないで。
大丈夫。そんな言葉に痛みが走る。

一体なんでか分からない。
でも、暗い場所に行けば
全部ぜんぶ、解決する気がして。




ーどうか、僕を置いて行って下さい。




ジワリと涙が浮かび上がり、
ポロポロと泣きだしてしまう。


何故だろう、嫌だってはっきり言えるのだ。
その言葉だけは、否定出来るのに、
一体、何処で、聞いてしまったのだろうか。


「…メル」
「今日はお散歩しに行きましょうか。歯を磨いておいで。」
『(わかった。磨いてくる。)』
「…あの日か。」
「ええ。だからちょっと気分転換に散歩を。」
「寝かせた方が良いのでは?」
「帰って来なくなったらどうするのよ。」

そうむっとして答えるアマレットに、だってとティーナがぼやく。

「流石にこんな退屈だと気が狂うって…!!」
「まぁ流石にこの世界に来てから早くも一千億年だからねえ。」
「在り得るとしたらあと四億年後くらいじゃない?」
「もう先の計算と後の計算し過ぎて一千億程度しか分かってないけどね。」
「わかる〜〜〜〜!!!!」

とは言っても、メルの事だから、
どうせ天使の時間に何か変化が起きるとみた各々は
その時間ごとに彼女を外に出してやっている。

「スッピーはあれから104年程度で
記憶を取り戻してくれたからね。」
「思った以上に結構早かったよな。」
「分かるびびった。ま〜じビビった。
理様らとも契約し直したのは驚いた。」
「いやわかる。」
「エテルネル様は?」
「一応継続して交流しているが、
勿論天使らとは厳禁だ。」

スピリタスもそこら辺分かっているらしい。
へ〜〜〜〜

「だが良い知らせもあるぞ?」
「良い知らせ?」
「もう殆どの界王神と破壊神が見つかったそうだ。」
「ほんと!?!?!?」
「嗚呼、その調整も含め、今日連れていく。」
「あ〜〜〜〜〜ながかった〜〜〜〜」

ほんとな、今までよくやったよ。
そういうティーナに一同が頷く。

「でも、エフェメラルってスピスに会ってるの?」
「いや、余り交流はしていない。」
「前にしたのは…100億年くらいまえか?」
「そうだね。声も音もさせなかった時だから絶対驚くよ。」
「どっきりするためにあの子出すつもり????」

ふふ〜〜〜そう笑うティーナに
はぁとため息を吐いたリコットが声を上げる。

「あ、通信だ。はい、此方夏のリコットです。
ええ、はい。嗚呼今身支度させています
というか出来ました。いいんですか?向かわせますよ?
本当に良いんですね?覚悟良いですね?」
「何期待させてんだよ。」
「いった!!ちょ、ティーナ何するんですか!!
これ以上馬鹿になったらどう責任とってくれるんですか。」
「それ以上なんて無理だろ。」
「酷いね?!!?!?」

そう騒ぐ彼女らを無視し、フェルが大神官からのコンタクトに返事をする。

「ええ、至って良好ですが…
少々感情表現に驚かしてしまうかもしれません。
ああいや!そんなことはないですよ!!!
何方に行けばよろしいですか?」

嗚呼其方に、分かりました。
そう言って通信を切った辺りでメルが戻って来た。

『(大神官様?)』
「ええ、もうこっちは来てくれて構わないからって。」
『(会いに行くとか久しぶり?)』
「丁度100億年ぶりくらいかな?
まぁ積もる話もあるだろうから、
ちゃんと着替えちゃって。」

そう言ってフェルが
メルに浅黄色の布を被せてやる。
するとメルは首を傾げた。

これ以上着るものなどない
というのに、何をしているのかと。

「ほら、荷物。」
『(嗚呼ごめん、忘れてた。)』
「それじゃ、行くか!!」
「ええ。」
『(え?皆いくの?)』
「華樹の前に二人置いてくがな。」
「誰行くの。」
「一応私とフェルで行く予定。」

大丈夫?うんそう言うフェルに
それならとリコットが名乗り出る。

「私が一度様子を見て来ましょうか?
彼の事もあるでしょうし。」
「…それなら、お願い、しようかな?」
「わかりました。では原初と息継で
送り届けることにしましょう。」

そう言いつつも外に出て、靴を履いてから
そのまま浮遊して大体30分程でついた場所。

大きすぎて多分百人輪になっても
囲めないくらいの太さに育った華樹に
メルは上を見上げていた顔を下げる。

「さ、行きましょう。」

両手を取って、その空間に
足を踏み入れると、世界は一変する。

花畑の世界が、途端に
簡素になって世界が狭苦しく感じる。



息苦しさが相まって、胸が痛くなる。



ーこのまま、時が止まってしまえばいいのに。



…余り、この場所は、好きではない。
なら何処ならば、好きだと言えるのだろうか?
こんな明るい場所ではない、暗闇ならば。






私は、笑って、息継ぐことが、出来るというのだろうか。






ソワソワしていて待っていると
目の前に現れた人に
メルはびくりと驚き反応したが
すぐにこくりとお辞儀をし返した。

「お待ちしておりました。どうぞ、此方へ。」
「お久しぶりです、大神官様、お変わりないですか?」
「ええ。各宇宙での会合が始まりますので、こちらへどうぞ。」

100億年に一度、全宇宙の神々が
この華樹の中央に集まり、
会合を行うことになっていた。

正確には一度全王様の近くで会議をし
その後に此方で昼食を取ったあと、
午後の会議で場所を移してのことらしい。

何故そうするかというと
此処を使わないまま放置するのも悪い
という大神官の計らいらしい。

多分だけど掃除、面倒過ぎるんじゃないかな。
大神官様の所はまだしも、此処、無駄に広いから。

余り使わなくなったとは言えど
一応使う人がいると分かっていれば
定期的に見て掃除をしてしまう。

でも、かと言って一人はきつい。
だから天使らを使ってやってるのだろう。
そう踏んでいた。



その前日辺りに早く到着し、
メルは調整を整え、会議に出席し続けている。

勿論浅黄色のベールに身を包んだ状態でだ。
これを外して日向に帰る日は、来るのだろうか?
日陰のままで、生き続けるしかないのだろうか。


「皆さんお元気です?」
「ええ、変わりないですよ。」
「あれから人も変わったのでは?」
「ええ。大変面白いことになっています。」
「面白いこと?」
『(それって、こんなこと?)』
「ええ、こんな……え?」

そうちらりとリコットの方を向いて
話をしつつ歩いていた大神官の歩みが止まり、
驚いた顔でこっちを見て固まっていた。

「あ〜〜先にしちゃったか。」
「……エフェメラルさん?」
『(そうです。僕がエフェメラルだと思います。)』
「それ日本語あってないからね?」
『(言語違うのでは?)』
「まぁそうだけど。」
「あなた、いつから…」
「大体300億年前くらいから?もっと前か。」

そう首を傾げて言うリコットに
そうですねとアマレットが答える。

「割と早い段階から言語を話せるようになりました。
あの時から数えて200億年くらいまえからです。」
「その時は単語ですら無かったですがね。」
『(そうだったね。そんな日もあったね。)』
「こうやって流暢に話せる様になったのは最近なんですよ。」
「つい20億年まえくらい?」

もっと手前じゃない?そう話す二人にメルは首を傾げる。

「…それは良い兆しですね。見ていて安心しました。」
『(いつも通りに動けばいいんですよね?)』
「ええ構いません。」
『(わかりました。では、お二人共構いませんよ。)』
「わかりました。では大神官様、後を頼みます。」

これくらい出来れば一人でも大丈夫だろう。


そういう訳もありまして、ですね。
今回は一人だけで出席させることにしたのだ。
メルを一人にするのは何も今回だけではない。

徐々にではあるが、彼女が一人でも
動けるように教育はしていたのだ。

完全に崩壊した後から、
此処まで取り戻してきたのは
大変苦労を掛けたことだろうに。

それを嫌こと一つ言わずに
やり遂げた彼女らには頭が上がらない。


「ええ、分かりました。お預かりいたします。」
『(いっちゃった)』
「いっちゃいましたね。…それにしても、
大変素晴らしいですよ。エフェメラルさん。」
『(そうですか?驚きました?)』
「ええ、そりゃあもう。かれこれもう、
…千億年以上も前の、話ですが。」
『(驚かなさすぎでは?)』
「ふふ、そうですね。」

それは、そうかも、しれませんね。
そう笑う大神官に、メルは首を傾げてみる。

何処か寂しそうな空気が漂ったのだ。
何故寂しくなるのだろうか?
それは、大神官から?それとも?


ーまだ、いけないの。


まだ。もう。


『(今回もコレを着て歩けばいいんですよね?)』
「ええ、構いませんよ。一度外に出てみましょうか。」
『(助かります。)』

前日は大抵人がいない。
勿論手伝ってくれる天使も少なくはないが、
破壊神らの手伝いで、てんやわんや
していることが多いのだ。

「嗚呼そうでした、私以外の子がいる時は
どうかお静かにお願いしますね。」
『(…わかりました。それでは、
意識をオートOFFにセットできますので
そのまま開始しておきますね。)』
「……ええ、お願いします。」

そう言った後、メルは目を閉じ
身体を隠してから目を開く。

横に一つ線がみえる状態が
そのオートOFFという状態だろう。

「…其処迄来たというのですか。」
『(はい?)』
「なんでもありません。」

先を急ぎましょうか。

大神官はソレを少し見た後、
先を急ぐように足を歩めた。

「…おや?コルンさんに
サワアさんではありませんか。」
「大神官様、何方におられて?」
「全王様のベットを整えに帰っていました。お二人共は?」
「お手伝いに参りました。」
「…そうですか、では、ご案内しましょうか。」

そう前に来た二人に、メルは少したじたじになる。
この二人は何故かこっちを良く見てくるのだ。
絶対に着ていてバレないはずなのに、前の会合辺り
特にこのサワアってやつは、まぁ〜見てくる見てくる。

大神官様の目によく似ている彼を見てすぐに目を逸らした。
まさかこんなイレギュラーが起きるとは想定外だ。

精神を安定させようと、
オート機能を使う様に
胸を触ったのに起動しない。

異常事態だ。

トクトクと、心臓が音を鳴り立て始めて
ぞわりと悪寒が背筋を伝って、
鳴り始めた心臓を締め上げる。

今迄外で音を鳴らせたことはなかった筈だ。
…あれ?そうだっけ、でも何処かで確かに
鳴らせていた気がしたけど、何処だったか。



ーどうか、日向に…戻りましょう?




振り返る、其処には誰も、居ないはずなのに。
何処か懐かしくて、胸が、満たされた感じがした。

満たされ過ぎて、ジワリと
視界が歪んできたのをすぐに止める。

その間に大神官の後ろに入って歩き出すので
彼らに気付かれない様にと、
更に後ろへ入ろうと思ったが


コルンに当たりそうになって
すぐに大神官との間に挟まれて
歩くことになってしまった。


…どうしよう。いつもなら発動するのに、
今日に限って調子が悪いのかな。
あの暗い場所の事ばかり考えちゃうから。


鮮明に想い出せるその最期は
何時だってこの二人に挟まれて眠るのだ。
何を考えているのか分からないのに、
嬉しそうに笑って泣いて目を閉じる。




ー…いっそのこと目覚めなければよろしいのに




そうだね、私も、出来れば
…覚めたくなんて、なかったんだよ。

だから朝は特に涙が出やすい。
ジワリと浮かび上がる涙に不味いと思う。
ぐずれば一発アウトだ。

声を出すことは正直言うと、
物心ついた時からしたことが無いが、
泣き声はどうしても出る。

「ここ最近お忙しそうでしたし、
まだ未設定なのではと思いまして。」
「そうでしたか。まぁ忙しかったですが、
何とかこなせていましたし。」
「…そうですか。」
「此方です。中へどうぞ。」


そう言われてメルもまた中に入る。


会議室の端に入り、
定位置でちょこんと
座って丸まってしまう。



嗚呼、良かった。何もない。





胸に手を当て、先程鳴っていた場所を確認した。






嗚呼、良かった。音が、しなくなって、くれて。





それに、誰かが、酷い嗚咽を
泣き散らした、声が聞こえた。

はて、一体誰だろうか?




…どうして、「手折らないで下さい…!」と叫んでいるのだろう?





手折るものなんて、何処にも無いというのに。






「それでは、何かありましたらご連絡ください。」
「ええ。」

パタリと扉を閉めていった彼を無視し、
メルはこのまま先程の夢の続きを
見ようと思いながら身体を動かした。

「…コルンさん」
「ええ。さて…どう、しましょうか?」

ん?

「…います、いや、いらっしゃい、ます…よね?」
「ええ、いますね。いらっしゃいますね。確実に。」
「今回は一人、ですか。」
「…ええ。……分かります?」
「ええ。限りなく、うすい、ですが、ね。」
「はぁ…何方かご存じ上げませんが
…其処に居られるお方よ。
どうか隠れずに出てきては如何です?」

数百億年以上も昔から、
一体この地で何をしているのですか。
そう言われて、何事かと身体を起こして前を見る。




そうしたらあの二人がこっちを見ているではないか。




げっまずい!!!




彼らと接触は厳禁なのだ。
気付いたらすぐに杖をって




『(あ゛っ!!!!こっっのお馬鹿!!!
向こうに使いの杖忘れて来ちゃった!!!!)』
「ん?使いの杖?」
『(え゛!!声聞こえちゃう系なのこれ!!!!)』
「聞こえてますね。…此処ですか!」

あ〜〜おやめくださいお兄様〜〜〜!!!!
布を引っ張って何とか杖から逃れてしまう。

ひらりと避けられたことに、固まられたのでこっちも固まってしまった。


「………は?????」
「どうされました?」
「ああ、いや、確実に捕まえた筈なんですが
避けられましたね。」
「…あの、一応確認しますが、
コルンさん貴方身勝手の極意は?」
「常時発動しているに決まっているでしょう。
お兄様も同じ様に付けている筈ですが?」

避けられたんですよ。
ええ。

「身勝手の極意を避けるとは
…貴方ただ者ではありませんね?」

ひえ。

そう悪寒を察知したメルは急いで移動する。
位置が分かっているのだろうか
前にコルンが現れるので急いで方向転換して切り替える。

「あっちょ、待ちなさい!!!」
『(むーーーりむりむりむりむり
むりむりむりむりむりむり!!!!!!)』

無理・オブザ・無理!!!!!!!!!

メルは下から掬い取られる処を避けすぐさま
足に力を入れ華を咲かせ宙を駆け走れば
「いい!?」と素っ頓狂な声が聞こえた。

「は、はな!?!?」
「…気、ではありますが、一瞬過ぎて判定付きませんね。飛ばさせますか?」
「した方が良いでしょうね。」

サワアとコルンはメルの下に入り、
とにかく浮遊させるように着地点に
攻撃をしなくとも動いて避けさせる。

それには流石のメルも寝起き寸前みたいな状態の為
たじろき浮遊をし続けるしかなく、
一気に体力ががくんと落ち、地面に身体を打ち付けた。

『い゛っ…!!!』

いたい。

ここ滅茶苦茶広い会議室なので一周してから
また戻る算段にしようと走り出して
声が後ろから聞こえる。

「気配を消しても音でばれますよ。」
『っわ!!!』

目の前に来るとかは知らない。

メルは出てきた彼の身体に
ドンと飛び込むように飛んで入る。

「っと、捕まえましたよ…?
これ!!で、すか、ね」
『(っ…!!!)』

はらりと浅黄色のベールを取られてしまい、
その世界がまた一段と光が強く
目をぎゅっと閉じ、しゃがみこんでしまう。

息がしづらい。怖い。怖い。怖い。

怖い。

急に明るくなった世界が怖い。

地面に寝転がり、
頭を抱えてぎゅっと目を閉じる。
息を吸って吐かないと。

ちゃんと、息しないと。

あれ、でも、息してどうしたんだっけ?



「震えて…?子供…?いや、女、ですか。」
「迷子ですかね?いやにしても貴方、
随分と前から出席していますよね?」
『(うっ、あっ、えっと、あの、その)』
「声が出せないのですか?」




ザザ、と砂嵐の様な視線の先に見える。
暗闇の中に、腰を下ろした背中が見えた。

茶色と黄色の衣服をまとった者が、
彼女の左右に、横たわっている様に見えて。

息するだけなんて、得意だった。
吸って吐くだけ。

意識がおぼろげになれば、
目を閉じて、横になるだけの時間だ。

あれ、でも、どうして、嫌なんだろう?
悲鳴が聞こえる。帰っておいでって。


ー外で生きれないのならば…!どうか、どうかお戻りください…!!!

もう、手折らないで下さい…!!!!

そんな声が、目を閉じれば強くなっていく。
嗚呼、したいの。したいのにね、出来ないんだ。
ごめんなさい。ごめん。ごめんね。




名前も分からない、優しいお人。



目を閉じて、一瞬だけ、頬に触れた感触がして。
ぼろりと溢れ出た感情に、あれ?と声を出した。

起き上がって、腰を地面につけて手を見ていれば
二人がぎょっとして膝をつき声を掛けて来てくれた。




「…っ!!!」
「ああ、泣かせるつもりでは…!!」
『なく?』
「え?だって貴方泣いて…」
「…泣いたことがないのですか?」



わからない。わからなくて良い?

聞こえなくなっていく。聞こえるのに?



『(…何故皆さんそうやって声を頼りにするのです?
そんなもの、テレパシーで事足りるから不必要なのに。)』
「え?その話を今蒸し返します???」
「嗚呼いや、まぁ…確かに声を出さずに
テレパシーで会話は出来ますが、
それに頼り過ぎるのも悪いですからね。」
「…失礼ながら、お名前をお伺いしても?」

泣かせるつもりはなかったのです。
私は第8宇宙の天使コルンと申します。
此方は第2宇宙の天使サワアさん。

こんにちは、お嬢さん。



「はじめまして、私の名前は、サワアと申します。」


ボロボロと涙を流すメルの涙を指で拭ってやるも
溢れて止まらないメルが口をぱくぱくと紡いだ言葉に目を疑った。



…しってるのに、おいていったの?



「…っ、」
『(嗚呼ごめんなさい。私の名前は…今は)』


すみません。


そう笑って答えるサワアに、
メルは手で彼に触れることなく
そっと距離を取る。


そう、メルは知っているのだ。
彼等のことを、誰よりも、何よりも。
知っているからこそ、距離を取る。


何も知らないと、彼等の目を見てすぐに悟った。
…嗚呼、きちんと呪いはかかっている様で何よりだ。
流石私。そう言う処はきっちりとしていたんだな。

ぐずぐずと音を立てつつも首を横に振った。



『(…すみません、名前は伏せさせて頂きます。)』
「おや、そうですか。…驚かせちゃいましたかね?」
「こんなのほぼ無理矢理剥がしたもんでしょう…
そりゃあ警戒もされますし名も伏せたくなりますよ。」

何なら泣かせちゃいましたし…。
嗚呼そうですね…いやはやどうしましょう?

「よしよし、何処か具合が悪いのですか?」
『(すみません、時々なるだけで。気になさらずに。)』
「いや気になさりますよ。そんなボロ泣きされたら。」

そうさらっと突っ込みを入れるコルンに
メルはそれもそうかと妙に納得してしまった。

『(でも剥がすのは躊躇なかったんですね。)』
「…失礼、まさかお綺麗なお嬢さんとは
思っていませんでしたので。」

この感じだと全くこっちを知らないというものだろう。

白い衣服に身を包んだメルは言わばドレス姿の状態だった。
襟元を大きく切り抜き、肩や背中を露出させるデザインで
肩を少し隠す程の小さな袖が付いていた。

丈は膝より少し上にかかる程度で、元々白い手袋と冠、
後は華樹の力の勲章でもある華のついたリボンを掛け、
胸元の中央部分はVカットで切られた処の下には
青いスカーフが付いたエメラルドグリーンのブローチを
取りつける予定だったのだが、色々準備を今思い出して
胸をばっと隠した動作に二人してそっぽをむいた。

この衣服、上から見ると頑張ったら中が見えてしまうのを
メルは知っていないが、サワアらからしたら見られたと勘違いし
失礼と二度三度、咳払いしながらも謝罪を入れられた。


彼等は特に感覚では鋭い方で、
ある程度計算して今回を練ったのだろう。
なんならあの仕事量からして
下手したら作戦練っていたのかもしれない。

なんか妙に最近忙しいと思っていたらこいつらの仕業か。
しくったな、こっちの方が情報があるというのに、
何故こういうことを想定しないかな???

『(…コルンさんと言いましたよね?
貴方まさか先程、はめました?)』
「先程?ああ…いや、何のこと、ですかねえ?」


…うっわ。これ、絶対はめた。
嵌めやがったぞこいつ。


何かイライラしてきたんだが…あれ?イライラ?


私そんなこと思ったこと無かったんだけど。



物語でしか見たことのない感情に首を傾げる。
彼等に会った時からエラー表示が
脳内に増えていく一方で頭が痛くなる。

蹲りだすメルに、本当に体調が悪いのかと
声を掛け触れようとした手に距離を取った。

「っ」
『…すっ、ぴ、げほっごほっ』
「お呼びですか?」
「っわ!!!」
「お、おと、大神官様?!?!」
「……嗚呼成程そういうことですか。
………大体話は分かりました。」

座り込んで喉に手を当て
咳き込んでいるメルの背中を
そっとさすってやる大神官に

メルは内心ありがとう
と感謝の言葉を雨の様に
降らせてやっていた。

そうすればクスクスと笑い、
どういたしましてと答え返してくれる。

「女性を泣かせるような真似に育てた覚えは無い筈ですが?」
「ぐっ…す、すみません。」
「はぁ…どうか、無礼をお許しください。」
『(大丈夫ですよ。私も色々取りつけてなかったまま着ちゃいましたし、恥ずかしい思いとあればお互い様かと。)』
「え?あ、ああ…」

大体メルが勘違いしていたことを今漸く察したサワアに
コルンらが首を傾げるも、大神官がサワアに声を掛け話を流す。

未だ背中はちゃんと手を置いてくれていて。
二人の話を聞いていると、ふと視線が下に向いてしまう。

黄色と茶色が、床に寝そべっていない。
何故だろう、それが分かるだけで、
…どうして、どうして、こんなにも胸が痛くなるのだろうか?

「…すみません、サワアさん。
其方の布を返して貰えますか?」
「え?あっ、え、ええ…すみません。」
「いえ。…立てますか?」

無理だ、見られている感覚が痛みを帯びてくる。
別に目を閉じて貰っても構いませんと言われるが、
このままいけば、いや、遅かれ早かれ…。

……致し方が無い。

メルはそっと胸に手を当てた後、
目を閉じ、手で耳を塞いだ後、
首に手を掛けようとした手を止めた。



「っ!!!おやめください…!!!!
エフェメラル様!!!!!!」


はっと目を開けて、その先を見つめた。




確かに声が聞こえて、でも、居ない。




ポロリと零れ落ちる涙に、声が出た。


…こるん?


それは、か細く、物音一つで消える程小さな音だった。




「…駄目、ですか。」
『っ、ふ……っ。』




ぶわりと黒い水だまりが広がっていく。

嗚呼止まって、お願い。思わないで。
居ない、此処にいない。わかってる。
気付いた、気付いてない。大丈夫。
誰もいない、違う居る此処に居る。

大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫だから。
目を閉じれば、耳を塞げば、終わるのに。
なのに、首を、絞めれない。

最後の最後で、手が止まるのだ。

引き千切らせてくれたら、どれ程、楽なのだろうか。

なんて酷い、呪いを掛けられてしまったのだろう。



駄目だ、この子達を巻き込みたくなんてない。
お願い止まって、ごめんなさい。

もうお願いなんてしないから。
もう手を伸ばしたりしないから。
だから、ごめんなさい、どうか止まって。
あの時間だけを、繰り返しているだけでいいの。

もう、もういいのに。
嬉しそうに笑っている、あの額縁だけに。


何も咲かない、音すらしない、この胸元は、
一体何を、教えてくれるというのだろうか。



「…御迎えを呼びましょう。」
『っ!!』
「いけませんよ。この状態で貴方を
出席させる訳にはいきません。
この二人でこの状態は幾ら何でも酷ですよ。」

貴方にも、彼等にも。

そう言う大神官に、
ボロボロと零しながらも
メルは首を横に振った。


本当はまだ此処に居たいのだ。
居れば居る程、色が戻っていく感じがする。


記憶に残っているこの情景が、
色を灯し、鮮やかさを増す度に、
この黒い水たまりが広がる。


墨汁の様に黒い液体が、現実を壊していく。


もう、望まないから。
もう、見ないから。
だから、もう一度だけ。
あの鮮やかな世界を見せて欲しいのに。


ただ、それだけなの。


その世界を、見せてくれる。


たった、それだけでいいのに。







『〜っ、ふっ…っう、あ、う、っけほっこほっ』
「アルトリアさん。私です。
彼女が発作を起こしました。」


分かりましたお迎えに上がります。

そう淡々とした声が聞こえる。

それまで移動させますかと聞いたコルンに
ええと言った直後、サワアがメルを
抱き上げてきたではないか。

「っわ、ちょ、ちょっと!!」

流石にと身体の中で暴れ出す。
いけませんと言って叱る大神官に
身体が跳ね上がって止まる。

「沢山時間は在るのです。大丈夫ですから、ね?」
『(…たとえ、春が、終わっても?)』
「っ、」
『(大丈夫だよ?ちょっと涙が止まらないだけ。)』

ほら、こうやって笑えるようになったんだよ?
そう笑ってやると、酷く顔が歪んだ顔が見えた。

「しなくていい。」
『(でも)』
「無理に笑わないで下さい。」
『(…無理じゃないよ?大丈夫。)』

黒い墨汁は、草原を黄金色に
光輝かせて花を咲かせ始める。

ぽつぽつと広がる場所に、
メルを抱いていたサワアも
近くで見ていたコルンも辺りを見渡した。

『(ほら、こんな綺麗なお花も
咲かせられるようになったんだよ?)』
「……いけません、無理をしないで下さい。」
『(こんなにも笑えるようになったし、
お話も沢山練習したの!)』
「…ええ、分かっています。分かりますとも。
沢山努力をなされたのが手に取る様に分かりますよ。」
『(もう大丈夫なのに?早くしないと
もう、夏が終わって秋になっちゃう。)』
「ならせません。だから、無理をしないで。」


春は終わってないのです。
そう言ってくれる大神官に
メルは笑って言うのだ。





『うそつき。はるはもう、おわったのに?』





「……え、ふぇめ、ら、あなた」


そう言って笑う。

ほぉら、綺麗に笑えるでしょう?
貴方が好きな、笑顔なの。
練習なんて、本当は沢山していない。

しなくていいと、言ってくれたお人がいたから。

感情沢山覚えているのよ。
貴方も知らない、記憶迄も。
覚えてないなんて、嘘つきなのよ?

どうか忘れて良いと、言ってくれたお人がいたの。




そう笑えば、大神官はメルをそっとサワアから取り
そのまま宙に抱きしめてくれた。

彼の力が強くなることに、メルはボロボロと涙を零す。
ぐずぐずと言って、前が綺麗に見えない。
次第に声が漏れる。嗚呼、声に出して、
泣けれる様にもなれたんだよ?


ねぇ、いいこでしょう?
ねぇ、いいこでしょう?

ねぇ、おねがい、どうか、おねがい。




めをさましてよ、







さわあ









『(お勉強もしてきたし、ちゃんと
声も出そうと思えば出せるんだよ?)』
「ええ、分かってます。」
「大神官様」
「…貴方達は?」
「おやめなさいコルンさん。」

彼女らを通しなさいという大神官の声に、
はいと言って距離を取ったコルンの目から視線を変える。


「…酷い。」
「っ」
「彼等に名は?」
「明かす訳もないでしょう。」


とは言っても、少々ヒントは差し上げてしまいましたが。
それくらいは構いませんよ。


「…ごめんね?辛かったね。」
『(つらくない、くるしくないよ…!!!)』
「駄目。」

今貴方の名前を呼べないの。だから言う事を聞いて。
そう言うアルトリアにメルは首を横に振って距離を取った。

『(お仕事ちゃんと出来るもん…沢山頑張って、
沢山出来る様になったから、見せたいんだもん…!!!)』
「また時間を取って差し上げます。今日はお帰りなさい。」

そしたら一体、彼らに会う日は何時になるの?

ねぇ、私は、あそこで生きて良いの?
誰も咎めない?許さない人は出ない?
嘘でしょう?そんなのあり得ないでしょう?

あそこに居続ければ、いつかきっと、貴方達が私を取り戻しに来る。
そんなのいやなの。あそこにいたくなれば、ずっとずっと、あそこにいたいの。




あの光も落ちない、暗闇のど真ん中で。





ねぇ、嘘つきだよ。ととさま。

みんな、みんな、ゆるしてくれないの。

ねぇ、どうして?どこにいったの?

あいたい、あいたいの。でも、あえないよ。

もう、あなたにあえない。

あいたいのは、あなたじゃなくなったから。



一番に会いたい人は、この目の前に、居るというのに。
その目は、一番欲しかった瞳を、映してさえくれやしないのだ。





『(画面越しではない。布越しから見えるこの場所以外に。
次という触れられる時間は、一体、何処にあるというの?)』
「…っ、」
『(嘘を言わないで。私を守ろうとして、
その子達に悪いことをしないと誓って。)』


これ以上引き延ばせば、
本当に向こうで息をするしかないと何処か分かっていた。
コレが最後のチャンスだと、何処かで言われている気がした。
いや、そうなのだろう。


「それは」
『(それが、お願いでいい。)』

もういいの。

『(もう望まないもう伸ばさないもう、そこ以外で息しないから。)』

ちゃんと、大丈夫になろうと、しているから。

『(まだ、上手く笑えなくて、ごめんね?)』
「…いえ、構いませんよ。そんなことは。」
「それで?約束してくれると?」
「勿論です。…貴方のお願い等、
寧ろ叶えないと天罰が下りますよ。」

これ以上喰らったらひとたまりもありません。

そう言う大神官に、ならとアルトリアは
顎で後ろに居た子達に歩み寄らせる。

「さ、帰ろう?また来たら良いから、ね?」
「皆待っています。泣くなら後で沢山泣けばいい。」
『(ふぇる、りこっと)』
「ティーナも帰りを待ち望んでいますから、ね?」
「そうだ!久しぶりにバアムクーヘンでも食べましょう?」
『(ばあむ、くーへん)』
「アレ滅茶苦茶口の中パサついて死ぬんだが。」
「アルトリア様本気ですか…」
「何台無しなこと言い出すんです……」
「え?え?え?なんで?!?!だってそうじゃない!?!?」
『ぷっふふふふふ』


嗚呼、まだ、笑えるんだ。

おかしいな。ほんとうに。

おかしい。


貴方の居ないこの世界で笑えるなんて。




そう叫ぶアルトリアに、
クスクスと笑いだしたメルを見て
大神官の顔が変わった。


「っ、あな、た…わ、らって……」
『(大神官様)』
「…なんですか?」
『(お仕事のお話、後で沢山聞いても良いですか?)』
「勿論。」
『(かえろっか)』

泣きながら笑って答えるメルに、
帰ろうと手を取ってくれる二人。

よいしょっと言ってメルを
地面から剥がして立たせてやる。

『(ごめんなさい、急に泣いちゃって。)』
「いえ…すみません、無礼をお許しください。」
『(今日は調子が悪かっただけなので。
気になさらないで下さい。)』
「乱暴にしてしまい申し訳ございません。」
『(…いえ、寧ろありがとうございます。
だって日向でまた。貴方達に出会えられたので。)』
「え?」

そっと触れた手に、また涙が溢れ、
墨汁が大きく広がって止まる。

息を吸って吐いて、
その痛みを慣らすのではない。
共に、息をする。


嗚呼、此処に、生きているのだ。


この後ろに、傍に、皆が。



共に。



『(かえろっか)』


もうすぐで、夏がくる。
そうして、本格的な夏が来て、
春なんて忘れ去る日が来る、かもしれない。

そんな日に、私は彼らに出会えて、
本当に良かったと思えているのだから。


『(では、また。)』
「ええ、お見送り致しましょう。」
「すみません、それでは。」

そう言ってリコットはメルが
サワアから受け取った布を取り
そのままメルに被せてしまうと、
姿は綺麗さっぱり居なくなってしまった。


それどころか墨汁や花の場所も分からず、
次第に其処に居るのかどうかすら
分からない程に変わってしまった。


「貴方達はその場で待機していてください。わかりましたね?」
「…はい」
「わかりました」
「よろしい。では参りましょうか。
…ええ、ええ、分かっていますよ。
ですがお小言くらいはお許し下さい。」

…えっ。…ま、待って下さい、それも駄目ですか?
では…ええ…うーん困りましたね。
逆に聞きますが、何でしたらよろしいので?

そう聞く大神官の顔色が変わる変わる。
その姿なんて、今まで一度も見たことが無くて。
何を言っているのか気になって仕方がない。

「…やらかしちゃいましたねぇ〜〜」
「お兄様」
「すみません、つい好奇心の赴くままに。」
「本当に珍しいですね。何か術でも掛けられてきました?」
「…それだといいんですがね。」

何処か、不思議なんですよ。

「私は天使の筈なんですがね。
彼女を見ているとずっと此処が
痛くてたまらないんですよ。」

「お兄様…」
「痛いを通り越して、
何も感じれなくなってしまうくらいには。」




私は、私達は、一体何を忘れているのでしょうかね?




「何を、知ってはいけないのでしょうかね。」
「…きっと、大神官様がお話して下さいますよ。」
「そうだといいのですが。」