愛の良き日に
そうして一週間の時を経て、漸く。
『メルちゃん復活!!!!』
「おお〜〜〜」
『えっへん!!!』
「えっへん、ではありませんよ。ほら何処に向かわれるのですか、さっさと行く。」
『え〜〜ん!お師匠が酷いよお〜〜〜!!』
「おだまりなさい!!ちっとは足を動かせと言っておるだけではないですか!!!」
「まぁ、ある意味酷いと言えば酷いですね。」
そう言われて身体を動かしたコルンにニコニコと避けつつ笑いだすウイスを他所に、
メルは改めて見に来た廻廊の天井を見ようと上を見上げる。
綺麗な植物に彩られた場所は、何か目を引き付けられるようにも見えて。
目が留まる、その高い処が心なしか近くなった気がするのだが、気のせいか?
「えっと…え、エフェメラル、様?」
『え?どした?マルカリータ』
「気を練って飛んで行こうものなら言ってくれれば」
『え?私気なんて練ってないよ?』
「え?いやですが、飛んでいますよね?」
『え?え?………え?????』
そう周りが指を指す場所にメルはきょろきょろと周りを見てから地面を見る。
するとそこは地面から綺麗に離れた位置にいて、だな。
『待って!!私ほんっ』
「っ!?!?エフェメ」
「はっっやいですね?!?!?!」
びゅんと引っ張られる様に飛び出したメルに驚き浮遊を試みたが
鉛の様な物が足に絡んで身動きが一瞬取れなくなる。
「っな!!」
「メル様!!何かに掴まって下さい!!!」
そう言われてああああと叫びつつも手を動かし蔦を取ろうとしたが
綺麗に避けられて軽くショックを受ける。
遠くなる彼等に、手を伸ばしても届かない。
『っやだ!!私、はなれた』
++++++++++
『くないのに!!!!』
そう言った所は、とても澄んだ景色で、
浮遊が綺麗に外れて今度は上から落ちる。
『いいいいいやああああああああ』
なんでこう上げて落とすのかな!?物理的に!!!
違うよ、上げて落とす(物理)とかしないでもろてよ!!!
私の精神的な何かが減るんだよ減るんだってばああああ!!!!!
青空に飛ばされた場所から急降下する中、
メルは気を練って地に降りようとしたが
すぐにこの地に居るコルンらを考えて止める。
此処で練ったら折角巻けたのが水の泡になる。
だとしてもこの高さから落ちたら死ぬわ!!!!
死ななくても痛いというのは絶対嫌なのだ。
緑の生い茂るこの土地に、何処か既視感を感じていると
身体の落ちる速度が一気に止まる。
まるで全力でアクセルをふかせた車が急停止したような感覚だ。
ぐえっと女が出す様な声ではない野太い様な変な声が出た。
「だ、だい、じょう、ぶ????」
『な゛っ、な゛ん゛、と、か゛っ゛』
「それにしても貴方、良くあんな高さから落ちてたわね…新手の自殺志願者?」
『うう、前科犯ではあることだけは確かです…』
でも私そんなこと思わなくなったんだけどなあ。
じゃあ、何かに飛ばされて?
そうです、そうなんです。
「そら貴方も災難だったわね。どう?吐き気は」
『なんとか、すみませんお手数をお掛けしまして』
なんなら家のベットまでお借りしちゃって申し訳ない。
いやいや、人助けはするものでしょう?
「それに、なんだか放っておけない気がしたので…」
『…あの、お名前をお聞きしても?』
「エリーゼです。」
あっ、よかった。そう胸を撫でおろすメルに
どうかされましたと聞かれていえなんでもと声を掛けた。
流石に華の名前じゃなくて良かったとか、
次の犠牲者がお前だったらどうしようとか
そんな失礼極まりないことを考えていたなんて言えるわけがない。
なんなら良かったという点では彼女が嫌だからと言うのではなく
単純にこれ以上の世話を焼かせたくないという意味であってだな。
『私はメルって言います。お金とか
色々持ち合わせてなくてですね
…あっベット綺麗にしっっつ!!!』
「嗚呼そんな無理に動いたら…!」
痛みが走って身体を横に倒して蹲ることもできずに固まった。
人間本当に痛い時は声も出ない上に固まるんだぞ。
皆しってた!?私は今知った。現在進行形で知らされてる。
「足を深く切られてて動くのも難しそうなのにそんな無理してしまうから…!」
『…っ、し、らな、か、っ、たから』
「右足の足首と膝の内側側面の怪我と、あと左腕も割と深かったので余り動かさ」
嗚呼言ってる傍から。
「とにかくそういう状態なので、お気になさらないで下さい。
寧ろそれくらいで助かって本当に奇跡中の奇跡だと思いますよ?
あの地帯は樹木も生い茂っていて下手に落ちて枝に
身体を突きささり抜けてそのまま死んだとか洒落になりませんから。」
うう、めんぼくない。
「幸いなことに私は在宅勤務ですし、一通りの家事等出来ます。
まぁ街に行って買い取って頂く形ですから日中時々いませんが…」
『すみません、お世話かけます……』
これが華樹神とか見える訳もないだろうに。
メルは髪の毛をみてぎょっとする。
『っあら!??!?』
「嗚呼偉く長い髪の毛だったんですが、
変に切られちゃってたので切っちゃいました。」
きっ!??!?!!?
「了承を取らずにすみません。ですがことがことでしたし、
出血口から髪の毛が入るのだけは避けたかったので。」
『…いえ、別に。』
メルの髪の毛は背中下くらいまで伸びていたのが肩上近くまでばっさりと切られていたのだ。
一応髪の毛は余りに綺麗だったのでと纏めてから綺麗に水を通して洗い流してくれていて。
ご丁寧にと見てみれば、まぁ白い色に光り輝いていることの綺麗なことだ。
「どのようなお方か存じ上げませんが…こういうものになるので?」
『…………ええ』
そうですとは言えなくて、でも一応髪色は白くはなるので間違ってはいない。
そう言い聞かせながら彼女から受け取り横に置いた。これはお持ち帰り出来るならしておこう。
もし万が一にでもこれを捨てて、それがコルンらの目にでも入って見ろ。
明らかに気を出してこっちを確認しに追いかけるし、
そんなことをしたら奴らの目に留まって
火に油とガソリンとサラダ油をぶちまけている形になってしまうだろうから。
想像しただけでも身震いしてしまった。
「…?まぁ、構いませんが、何か食べたいものとかあります?」
『特に…嗚呼貴方が良くお食べになるものを貰うだけでも構いません。』
「起きになさらないで下さい。私も人とこうしてお話出来るのは些か久しぶりですので…」
『…では、スープ系のを、出来れば此処に生えている植物で煮たものが欲しいです。』
お任せあれと運んできてくれたものは、だ。
『(うっわ、普通の具沢山コンソメスープかよ)』
大きなお茶碗に入れてきただけではない。
白米から肉の何かを炒めたハンバーグ的な形からして
もう洋食カフェの何処かに入ったかのような印象で
いいんですか、これ、食べちゃって本当にいいんですかと
よだれを垂らしつつ指を指して言うメルには、
構いませんよと苦笑いしながらお盆を下げて答えるエリーゼさん。
いや、エリーゼさまでしょこんなの。
無理だよ崇めて敬いまくるしかないじゃないか。
頂きますと言って箸を使って食べれば旨い旨いのなんのその。
驚く顔をしているのを少し食べてから気付いて
何だろうと首を傾げると、いやと声が出る。
「その状態で良く食べれますね…」
『え?…だって食べないと治らないですし』
「嗚呼違います、その物でですよ。
他にないのかって怒らないんですか?」
『え?嗚呼お箸の事です?別にこれしき大丈夫ですよ!
寧ろこっちの方が使いやすくて助かります!!』
ありがとうございますというメルに、いえ別にと目を逸らした彼女。
嗚呼そういうことかとメルはふと思いついた言葉を零す。
『ひょっとして私が食べれないようにして自分で食べようとしていたんですか?』
「っ!!!」
『それなら言って下さい。私が沢山食べたら貴方の分が無くなってしまいますし。』
「いや、そんな!!」
『ほら、あーん』
「………へ?」
『嗚呼お嫌ですか?あーん。』
「嗚呼いやちがくて…え?い、いいん、ですか?」
別に構いませんよ。
『毒も入ってなさそうですし、貴方が食べたいと思ったものを食べて貰わねば
私も身を救って貰ったものですから。申し訳なさで死んでしまいそうです。』
「…では、お言葉に甘えて。」
そう口にした彼女の目がキラキラと光る。
お互いの青い目が合わさって、ニコリと笑うメルに
美味しいといわんばかりにニコリと笑ってくれた彼女。
『ごちそうさまでした』
「お粗末様でした。」
『いや本当に美味しかったです。お店で出せますよ?』
「ふふ、それは嬉しいお話ですね。
何時かお料理屋さん出せたらなあって思ってたんです。」
でも、私ドジで目の前でこけちゃって
大体お料理を渡せずじまいで…
『あれ?でも私の時こけてなかったですよね?』
「あ、そういえば…なんで、でしょうね?」
『あっ…言っちゃったら次私受けちゃう感じ???
えっえっ待ってそれは嫌だけどでも嫌っていうのは
受けるのが嫌なんじゃなくて貴方が背負うショックを
持たせたくないというかですね!!!』
「ぷっ、ふっ、ふふふふふふっ」
『?????』
「わ、わかっ、わかりますから」
そんな慌てなくても
あ、わて、てないよ!?!?
そう裏返る声にまたしてエリーゼが笑って答える。
一思いに笑って静かになった頃、彼女が先に声を掛けてくれた。
「メルは幾つなの?」
『えっと、そういうエリーゼさまは?』
「ふふ、様だなんて嫌だわ?エリーゼって気軽に呼んで?」
『えっ、えっ、えり〜〜〜ぜえ〜〜〜〜!!!』
「あはははははっ!!ほんっっとメルってば面白い子ね?」
もう妹が出来ちゃったみたい。
むう!メル妹じゃないもん!!!
『まったくもう、皆してそういうんだから。』
「皆?嗚呼そう言えば貴方何処から来たの?」
『ん〜〜お空の上?』
「まるで天使さんみたいね。」
あれ?ひょっとしてあってる?
うぐうぐうぐ
『ぼ、ぼくてんしじゃないもんちがうもんべつじんるいだもん』
「ふふふっ、ま、天使の末妹さんを保護しちゃったのはいいとして」
『違うが!?!?あとどちらかと言うと私おねっ』
「…お姉ちゃん?」
嗚呼違うんです〜〜このお口が駄目なんです〜〜〜!!!
こう情報を出してしまう自分が情けなくてもう泣きそうになる。
「でも私より明らか年下のようにみえるんだけど…」
『そういうお姉さんは幾つなんですか。』
「え?今年で大体28くらいかな?」
『にっ!?!?!?!?!えっうっそだ!!!!!!』
見た目的には正直20歳でも全然いけ…いや、よくよく見たら年相応、か?
「ふふ、そう思ってくれて嬉しいわ。お姉ちゃん張り切っちゃう。」
『あう〜おね〜え、ちゃ〜〜ん!!!』
「ふふふふふっ、あらあら、随分と大きな妹が出来ちゃったわねぇ〜?」
何が食べたい?
さっきのやつ!!!
え〜もう?残ってるのないから別のにしましょ?
え〜〜〜そんなあ〜〜〜〜
「また余ったら作ってあげるから。」
『ん〜〜やた〜〜〜!!!!』
「ふふっ、ほんと可愛らしいわ〜。ほんとにうちの子にならない?」
『あっそれは無理です。』
「あら酷い。天に戻っちゃうから?」
『…それは、その……えっと、私、ね?人探ししてて。』
「人探し?」
そう、人探し。
「ソレは一体どんな子?」
『髪型とかそういう人とかではなくて、特徴が掴めないんですが…』
「でも、人探し?」
『う、うん…』
「…ちなみにその子ってまさか一人じゃなかったりする?」
メルが指を折っていたのを見て試しに聞くと
その通りと言うのでこっちも驚いた顔をするエリーゼ
「あら当たった。」
『直感いいですね?』
「貴方が分かりやすいっていうのもあるけど」
『う゛っ』
「ふふっ、でもそれならもっと分かりやすい。
何か一つ特徴があったりしないの?
こう共通点、とか。」
『…おはな』
「おはな?おはなが共通点なの?」
そう、お花。
『お花のお名前だったりするんです。もしくは花を身体に咲かせたりとか…勿論願いによって左右されちゃいますが、』
「へぇ〜〜〜貴方もお花咲かせたりできるの?」
『できなくもないですが…』
「してみてよ!ほらほら」
『…すみません、それは流石に無理です。』
「どうして?」
『…』
「言えない理由があるのね?…分かったわ」
『え?』
あら、私が無理やりにでも話を聞こうとお思いで?
嗚呼いやそういうわけでは
「落ちてきた意味もそれだけじゃない気はするっていう直感もある。
それにね?なんだか私貴方の事が気にいっちゃった。」
『へ?????』
「エリーゼってお花はないの?」
『え?あ、いや、流石にない、とはおもう、けど…曲なら、』
「曲?」
『エリーゼのために、って曲があるんです。
私の地方ならではの曲と言いますか、そういうのが。』
それって音が鳴れば演奏出来ちゃったりする?
い、一応…
「ちょ、ちょっと待ってて!!」
『え?』
そう言われて数分後に出してきたのは、だ。
ちょっとした鍵盤の形をした円状のものでして、
所謂ドーナツ型の鍵盤というべきだろうか。
一体なんという形をしているのか。
音はマジでびっくりするくらいには
ピアノの音するから不思議過ぎて理解が追い付かない。
流石に弾きづらいと目を向ければ一つ下の
レバーを外した音がしてから形が長方形に変わったではないか。
目が飛び出るくらいに驚いて見せれば笑われてしまう。
どうやら反応を一々見ているようだ。
…まったく、私は近くの子供ではないのだが。
『…エリーゼはとある地方の女性名を指します。
別の地域ではエリサ、また別の地域では
エリシアの変化したもので、意味は余り覚えてないけど』
でも、確か、神様由来だった気がする。
そう思いながらもエリーゼのためにという曲を演奏してやって終われば大きな拍手で凄い凄いと此方をみてくれる。
そういや、前もこうして演奏して嬉しかったな。
あの時はなんだっただろうか…あれ?
「どうかしたの?」
『え?嗚呼いや、なん、でも、ない…かな』
エリーゼのためにが想い出せるのに、なんか違う。
何かがことりと落ちたように感じるのは、一体、なんだ?
待って、私何か忘れてる?いやでも、何を?
『何かを、忘れている、気がしなくもなくて
…いやでも、はっきりとしなくて
忘れてることを忘れている気がしなくもなくて。』
「…きっと記憶喪失なのよ。」
『え?でもそれって名前も全部分からない人をさすんじゃ』
「それはあくまでもそういうもの。
ほら、一部分しか覚えていないものでも
全部覚えていないに等しいでしょう?」
名前とか土地とか言えてもじゃあ何処の誰ですって言える?
あっ、それは…
「きっと落ちてる時に記憶迄落っことしちゃったのよ。」
『そう、なの…かな?』
「ええ。なら猶更記憶が戻る迄居て貰わないと。」
『え?で、でも』
「こんな綺麗な演奏を聞かせて貰えたんだもの。
そうだ!せっかくならこうしない?
私は貴方の演奏を聞く。
貴方は此処に住む。これいい感じじゃない?」
いいやまったくいいかんじじゃない。
『比率が明らか貴方の負荷が高すぎるよ???
ねぇなんなの馬鹿なのうつったの?』
「ふふふっ、そうかもね?」
『あっそこ否定しないんだお姉ちゃん泣いちゃう。』
確かにピアノは割と弾けるのだが、嫌なのだ。
あれ?でも、なんで嫌だったんだろう?
メルと声を掛けて貰えれば、その視線にはいつも通りの顔色。
あれ?でもこの子は初めて出会っただけであって…
何を見て、どれと比較をして、「いつも通り」なんて言葉が出たんだろう?
「…お疲れそうだし、今日はもう寝たら?」
『え?いやでも』
「もう夜になるだろうし」
『え????いやでも朝でしょ?そんなすぐによ』
るになってました。
目を飛び出す様に驚くメルにクスクス笑われる。
「ほんとこの世界自体が分かってない様に感じるわね?いやそれもそうか。だって記憶がないものね?」
『え???え????え?????』
「あら。他の場所では朝昼夜ってくる感じだったのかしら?」
『普通にそうじゃないの?????』
ええ違うわ。
「此処は時間帯がバラバラに流れていくものなの。まぁ極々稀に朝昼夜って一日のサイクルが戻る時期があるんだけどね?それも4年に一度しかないくらいだし。」
『なにそのうるう年で清算しましょう的なノリ……』
そんなのでいけるのか。いやいけているからこういってるのだろうな。
「まぁまぁ!だから私の行く時間は不定期にはなるけど
時間帯の数ぶんで動いてるから気にしなくてもいいってこと。」
『嗚呼まぁ…どうも?』
「此処から夜の時間帯が3回連続で出てくるから、起きたいときに起きて貰って構わないからね?」
『え?待って、一度の時間帯が何時間か分からないの?』
「測ったことがないし、そもそも時計なんて使っても無意味よ?」
そんなまさか。いや今時計を生成する訳にもいかない。
気を封じられている以上作り出すのは厳禁である。
嗚呼これなら思念伝達も余り多様しない方がいいなこれ。
ならば猶更…サワアらとはぐれたに近しいものでは???
青ざめるメルに対してどうしたのと声がかかる。
『ど、どうしよう……か、かえれない』
「…大丈夫。ひとまず治る迄此方にいたら?」
『でも、治ったら?』
「想い出すまで。貴方のお迎えが来るまで。」
それなら、心配はいらない?
えっと、た、たぶん?
なら大丈夫ね。
『どうして其処迄優しくしてくれるの?私貴方に何もしてやれてないのに。』
「あら?そう思うなら、そうでしょうね?でも、私はそう思えないわ。」
『え?』
「おやすみなさい…よい、夢を。」
そう言って帰って行った彼女にこれ以上聞くこともできずに伸びた手がベットのシーツに落ちる。