はなうた





翌日、軽く仮眠を取りつつも目覚めたコニックの身体の中にいない姿で声が上がる。

「っメル様?!?!!?」
「んん〜〜なあに?もう朝からなんなの」
「メル様が何処にもおられないのです!!」
「ええ!?!?」

一体何処だと探している処、高い声に耳を傾けた。

「ん?うえか?」
「ちょ、こっ、こにっくさん!?!?」
「どうかされましたか?」
「嗚呼モヒイトさんおはようございますって違うあってるけど
メルが抜け出しちゃったみたいで」
「っ!!どちらに行かれたかわかりますか!?」

そう焚火の追加である枝を取りに行っていたモヒイトの身体もすぐに切り替わる。
駆け足で枝を置き、移動していたであろうコニックの後をエリーゼと共に追いかけた先には、

「っ」

青い空の下で、花畑の中、鼻歌を歌いながらぺたりと座り込んで歌っていたメルが居た。
背中越しに、手を伸ばすのがみえる。その先は崖でしかない。じゃあ、誰に、

「メル様」

そうコニックが声を掛けると、伸びていた手が止まる。
その手を取られた時は、この地で笑って居られ、いや、そもそも存在していたのだろうか。

「いきましょう。」

そう言われて、うんと言って振り返るメルの顔は、とても清々しい笑顔だった。

++++++++++

「本当にもう大丈夫なのですか?」
『うん!なんだか治ったみたい!!』
「…一応骨もくっついていますね。」

そう杖で中を見て答えるコニックが驚いたと静かに声を上げた。
あんな高熱続きで一気に熱が下がるとは到底思えない。

「ですが引き続き抱き上げて移動しますよ。」
『えっなんで』
「あれ程の高熱を数日経験しているのです。
ただでさえ不調だというのに、これで目的地に
辿り着いて戻れないとなったら私達泣きますよ?」
『えっそれはやだ』
「ぷっ、嗚呼そこはいやなんだ。」
「…エリーゼ様」

嗚呼ごめんごめん。そう笑う彼女にモヒイトはため息を吐いた。
なんだか既視感を感じる。気のせいだと思いたい、今日この頃。

朝食を取っていざ出発と言った時の発現である。
地団太を踏もうとしたメルの脇を掴んで
ひょいと持ち上げたコニックが
そのままモヒイトの背中にと移動させようとすれば、
モヒイトは気付いて荷物を降ろし背中でメルを受取った。

『ん???』
「ではお願いしますね」
「わかりました。」
『ん??????』
「おや、何か気になることが?」
『嗚呼もうちょい上に行きたいけどいや違う。』
「じゃあ上げますよ」

よいしょっと、そう言った掛け声と同時に身体も上に上がる。
視界も良いじゃない。違う、そうじゃない。そうーじゃないのー。

『待って普通におかしい。』
「なんらおかしくありませんよ〜」
『おいこら待て動くな降ろせ。』
「おや、随分とお口が悪くなりましたねえ?
お兄様に聞かれたら一体どのように言われることやら…」
『うぐっ』

嗚呼其処はまだ嫌なんですね。

いやだって、あの顔で仁王立ちとか…
嗚呼駄目だ想像したらなんだか笑えてきた。

…本気で叩かれても知りませんからね?

『えへへ、だって〜面白いじゃん?』
「嗚呼一応正気に戻られたということで一つお聞きしたいことが。」
『ん?なあに?』
「この髪は一体どういう有様でしょうか。」

場合によっては私からお小言を、と思っているんですが。
あっモヒイトしゃんたしゅけて…
無理ですねぇ〜〜。

「私も彼と、同意義というものですし。」
『あっ足痛いかな!?!?』
「加減してます。嘘ですよね。」
『ふっ!!!ぐっ!!!!』

また新しい鳴き声で誤魔化さないで下さい。
だって!!!

「…すみません、それどちらかというと私が原因で。」
「貴方が?」
「その子見つけた時酷い有様だったので治療の時に髪の毛をばっさり切っちゃいまして。」
「嗚呼そういうことでしたら、もう少し早く仰って頂けると」
『ふい、たすかった。』
「ですが…」
『ひっ』

身体の態勢を変えれば髪の毛くらいどうとでもなりますよねえ?
あっ、はい。すいませんでした。

「まったく…それで?その毛髪は一体何方に?」
『一応胸元に隠してました。はいどうぞ。』
「嗚呼どうも…ってメル様?」
『あいなんでしょう。』
「嘘を付かないで下さい。これ毛髪じゃないですよ。」
『えっうっそだぁ〜〜そんなことはあったわ。普通にあったわ。』
「何後ろで漫才しているんですか。」

そう歩いている最中に言われてすまないとも言わずに答えるコニックの手には
白い紙の中から毛髪ではなく綺麗な色とりどりの種が出て来ていたのだ。

「これは…」
『よくわからないけど、一応持っておいてくれる?』
「わかりました。杖の中に仕舞っておきましょう。」
「えっそれ収納も可能なの。」
「ええ。ある程度の荷物は此方でお預かりしていますし。」

宜しければ持ってもいいんですよ?
…嗚呼、じゃあ、おねがい、します。

そう言って彼女の荷物をコニックが杖で受け取り収納する。
それで、とモヒイトが声を掛けると同時に
メルが下にずれていたので調整しつつメルがおお、と声を上げる。

「あとどれくらいで到着されます?」
「本当にあとちょっとですよ。あの山頂を越えた下の洞窟なんです。」
「…こ、こです、かね?」

先が見えないとは思っていたが、上に辿り着いたコニックが固まる。
それを気にしつつもモヒイトが続いて辿り着いた目の中に入って来た情景で固まった。

メルの視界にも入って来たその場所は、

「…っ、こ、こは、いや、そんな、馬鹿な話があってたまりますか」
「ですが、事実、だそうですよ?エリーゼ様」
「はいなんでしょう」
「今更な話ですが、此処は何と言う惑星で、我々は何処に向かっているのでしょうか?」
「嗚呼本当に今更ですねえ?」

ニヤリと笑って此処はと言いつつモヒイトらの前に立って答えつつ、背中を向けてその先を指さし答えた。


「惑星、ヴェリタス」

死んだ惑星の亡骸ニーア・オートマティックの末路よ。


++++++++++

「メル様、寒くないですか?」
『ちょっと』
「あのちょっとじゃないくらいに冷えてるんですが…」
『いやマジでちょっとなんだって分かって。』
「はぁ…毛布掛けて貰っても?」
「ええ。」

洞窟はかなり冷えており、その先には光が漏れる水晶が
此方を導いているかのように先へと続いているのを
確認しつつエリーゼが先を歩く。

「この先を抜けたら大きな広い草原のある空洞がある。」
「あの場所ですね?」
「ええ。」
「おや?貴方は此方に来ないのですか?」
「私は導き手だからね、このまま元の場所に戻るとするよ。」
「流石に女性一人でお返しする訳には…」

そう言って引き留めるコニックにいいんですとエリーゼは答え
背中に乗っていたメルの手を取り、またねと手を離した。

その瞬間、黒髪の女性が嬉しそうに笑って手を離したのを、思い出した。


『おかあ、さん?』
「え?」


「おやおや、こんなところに居るとは。」
「っ!!エリーゼ様下がっ」
「っや!!」
「この子が次の贄とでもいうのでしょうねえ?」
「…っく、彼女を、放しなさいっ!!」

ふわりと後ろから出て来て腹を持って飛んだ者をコニックが追いかける。
まずいと思って振り返ったモヒイトの背中から離れそうになっているメルに声を上げた。

「っエフェメラル様!!!」
『〜〜っ、こっっっのえっちすけっちわんたっち!!!』
「ぐっ・・・!!」
「お、おおう……」

勢いよく下を蹴り上げて落ちたメルを受け止めたモヒイトが地面に降ろして背中に隠れさせる。
一応咄嗟の判断で自衛出来たのは褒めてやりたいが…もう少し他に無かったのかと考えさせられる程には痛々しいものを見てしまった。

『モヒイトさん!!』
「ええ、分かっています…!!余り無茶をなさらないで!」

杖で攻撃してきた別のコニックを受けつつもメルは彼の腕や身体の急所を狙って攻撃を仕掛け続ける。
一応組手をしていた者で、大体の動きは何となくではあるが掴んで動ける。

勿論飛ばされても体勢を変えて動ける、が

『〜〜〜っ、た』
「っメルさ」
『モヒイト!!!』
「肩程でもないですね。」

そう言った彼の言葉に、メルの視線が落ち、視線が変わる。

「っ!?」

背後に周り蹴りを入れてきたメルの動きに気付かずもろに食らった敵のコニックがそのまま敵のモヒイトに飛び込んで落ちていく。

『誰が肩程でもないって?』
「め、るさ」
『何処の誰を見て、肩程でもねぇっつった?』

私はねえ、青い空も嫌いなら白い雲も嫌いなんだよ。
…メル様?

『清らかな水も嫌いなら、清々しい程の咲き誇る華とかもっと嫌いなんだよ。』
「な、なにを」
『でも何が一番嫌いかっていうとだなあ?』


【お前らの様な人を蔑みあしらう様な愚か者のことなんだよ】


突如膨大な気が凝縮され、メルの手から飛び放った球が直撃して悲鳴を上げる彼等に追加で詠唱を続けようとするが、すぐに止まるのは、その腕の中にいる者を見つけたから。

「っく、だ、いじょ、ぶ!め、る。はや、っぐ」
『っ〜〜えりーっや』
「っと、流石に先程のは堪えましたよ。」

あのお方の防御が無ければ此方も一たまりもありませんでしたし。
…野郎
おお口が悪いですねえ?流石堕ちた者は違う。

『彼女を離せ。』
「貴方がこっちへついてくれるとならば。」
「っ駄目です!メル様話を聞かないで下さい!!」
「そう言っていますが、どうします?このままでは彼女、死にますが。」
「っぐ」
『……っ、わ、かった』
「エフェメラル様!!!!」

メルは項垂れ、髪を横に流して首を見せつける。
取り出した金色の首輪をあてがおうとしたその瞬間だった。

「刈り取ってしまえ。感情ソレごと全部、纏めて取って。」
「っな!?!?」
「”華よ神よ魔の者在ろうとする存在よ、
今こそ儚き願いを継げ、代償与えて”」

お願い……聞いて。

「”我に【収穫】の力を授け、華の者誓い導を渡せ!!!”」

その言葉にエリーゼの膝から多肉質の葉が急速に生え始めたではないか。
株の中心から華茎をのばし、小華を10輪程付け、白い光を解き放ち始め
そのまま手に白いナイフを作りだして攻撃を放った。

「っぐ!!」
「エリーゼ様!!」
「私は大丈夫!!そんなことより早く道を続けさせて!!」
「させませ、んよっ!!」

そう言って敵のモヒイトが動き出した時、ニヤリと笑った下を見た彼の瞳に瓜二つの姿が映し出される。

「しまっ」
「額縁よ!華の者連れて舞い戻れ!!!」

コニックの言葉にぐわんと歪な音と共に金色の額縁が広がり、世界を繋げると
岩よとエリーゼが声を上げた言葉に敵が動くも、封じられて声を上げた。


「〜〜〜っ、きっ、さま!!!」
「おや、随分と悪いお口ですねえ?…そのままお黙りなさい。」
「我が血に眠りし光を解き放て!!」

手の平から創り出した岩を投げつけながら更に手から膝に咲いた華を千切って槍の様にぶん投げた華が岩に当たると、凄まじい爆音と火花の華を咲かせ、目がくらむ。

「……逃げられましたか。」
「まあ、収穫はありましたし、行きましょう。」

そう言って、一つの種を掴んだコニックがモヒイトと共に姿を消した。

++++++++++

「は〜〜〜あぶなかった〜〜〜〜」
「あぶなかった〜ではありませんよ!!!なんですかあれは!!!」
「私もわからんです。というか此処いずざ何処ですか。」
「此処は廻廊。彼女の安息地ですよ。」
「…えと、貴方は?」
「申し遅れました。私の名はサワアです。」

額縁から飛び込んでしりもちをついて痛がっていたエリーゼに対して軽くお辞儀をしてから自己紹介をした手を差し伸べる。どうやら起こしてもらえるらしいので、お言葉に甘えるエリーゼ。

「色々と大変ご迷惑をお掛け致しまして、誠に申し訳ございません。」
「嗚呼いえいえ!とんでもない!!毎日楽しかったの…ん??なんでしってるんですか???」
「すみません、我々は此方の額縁に映像として映し出されるものでして。」

あれ、お風呂も?
いや流石にそこは…

「見ようと思いませんし、仮に見てもその時だけは目を背けます。」
「まぁ流石にそうしてもらえるとたすかって嗚呼違うそうじゃない〜!
メル!?ねぇメル大丈夫?!生きてる!?死んでる?!いいいやああああ!!!」
「お、落ち着いて下さい…!!!」

そう軽く落ち着かせつつも移動させた場所は華樹のど真ん中。
ひえー壮大と言うエリーゼに既視感を覚えるのですがとポツリ呟いたコルンの言葉には
何も聞かなかったことにしておいてやってくださいとコニックが訂正の様に声を入れた。

「おかえりなさい、皆さん。ご苦労でしたね。」
「いえ、寧ろすみません。かなり到着が遅れた上に
お怪我をなさられていたというのに
気付かず放置してしまっておりましたので。」
「…あの、一つ、聞いても?」

ええ

「そ、の、かみ」
『嗚呼これ?』
「怪我から細菌が入らない様に先に切りました。すいません。」
「嗚呼それでしたら別に構わないのです。」
「マティーヌさん大丈夫ですよ?もし万が一彼女が襲われたとでもしたらその時は…ふふっ」
「ふふっってなんですか!ふふって!!え、本当に待って怖いよ!?お兄さん怖いこと言わないで!?」
「ちょ、これ!恐れ多いですよ!!このお方を何方と」
「コルンさん。」
「いやですがお父様」
「お父様?!?!?!こんなちっちゃいのにおとっぐ」

流石にお許し下さい
ふふ、それはどうしましょうねえ?
お父様!?!?

「冗談ですよ。うちの子が粗相をしましてすみません。最近つい手が出てしまいがちなもので。」
「…むう、否定できないのが否めないので出来れば言わないで頂けると。」
「ふふっ」
「嗚呼貴方がコルンさんだったんですか。するってーと、ひょっとして貴方がマルカリータさん?」
「ん?え、ええそうですますが…」
「ご存じで」
「メルが熱を出した時に声に出してたので。」
『ちょっとその話しないでもろて』
「ちょっとその話詳しくお聞かせ願えますかね。」

あのコルンさん?
なんでしょう?

『私のうわ言戯言ですよ?聞く耳持たない方が無難だと思いますが。』
「おや?そうは言いますが、貴方の深層心理を読み解ける絶好の機会というものですよ?
こんな機会をみすみす見逃してしまえば、一体何時御眼鏡にかなうというのでしょうか?」
『そんなことで満足されても困りますが?!?!?!』

貴方の内心が読めないからそうなるんです。
うぎゅ!!!

「全くもう。天使とて余り頭を使いたくないのですよ。」
「てんし」
「おや、申しておられなかったのですか?」
「華神になられるお方とは存じ上げませんでしたので。」
「かしん」
「薄々気付いていましたが、まぁ華を咲かせましたから普通に此方へ引きずり込んで来ました。」
「ひきずーりずりずり????」
「あの、彼女大丈夫ですかね?ついていけてます?」

いいえ。まったく。


++++++++++

「あーーー成程成程。とりあえず12人集めて
あのドッペルぶっころしたら世界の平和待ったなしってことですね?」
「貴方のその言い方、なんだか本当に既視感を覚えるんですが…」

どこかで演奏してたりしてませんでした?
いいえ?別に?
嗚呼そうですか…

そういう今現在はメルの体調を確認しつつも食事を摂っていた処だ。
帰ってきてすぐに風呂と行こうかと思っていたが
予想以上にエリーゼの腹から大きな虫が鳴り響いた音を聞いて
先に食事へとウイスが誘ってくれたのだった。

「それにしてもよかったねぇ、メル。」
『ん?ふあんぬうふ?』
「サワアさんって人の所に戻れて。」
『んぐっ』
「ちょ、だ、大丈夫ですか…!?」

胸を叩くメルに、隣に座っていたコニックが水を出してみれば
片手で受け取り水をがぶ飲みしてから数回咳き込んで声を上げた。

『なんつーこというかな!?!?!』
「え〜?だってそうでしょ?皆に会いたそうにしてたけど
一番はその子に会いたそうにくうくう寂しそうに泣いてたくせに。」
「…ほ〜〜〜?」
『〜〜〜っ、やぁ!こっちみないで!!!』
「ふふっ、それは失礼?でも私は貴方と離れていて少々寂しかったので。」
『うぐっ』
「……ねぇ、アレ通常?」
「まぁ通常っちゃあ通常、ですねえ〜。」

そう隣に座っているウイスが答えるのにわあ凄いねえとエリーゼがぼやく。

「そりゃ嗚呼も恋しがるってもんか。」
「嗚呼も?どうですか?」
「ん?抱き枕作って抱きしめながら寝てたりとか、
後は泣きながら早く会いたい、帰りたいって。」
「ふ〜〜〜ん???」
『〜〜〜〜〜〜!!!!!』
「滅茶苦茶赤面していますねえ」
「…ごめん私もう言わないであげるね?」

そうしてもらえると非常に助かりますとメルは精神的な面から声を掛けた。
それには驚いたがすぐに嗚呼と納得する。エリーゼは周りへの対応が異常に早かった。

メルと目を合わせた時、胸元から白い花を見て納得したのだ。
華を咲かせた者同士での思考回路、所謂通信的なアンテナにもなるものだと。

「それにしても、とんでもない気の量ですねえ?」
「え?」
「まぁ気の存在自体知らなかった者ですし、
後で気の抑え方を教えて差し上げた方が良さそうですね。」
「おや、コルンお兄様が教えて差し上げるので?」
「その方が都合良いでしょうし、
別にこれしきどうと言う事でもないでしょう。」
「割と苦労すると思いますがねぇ〜〜。」

そうですかね。私も若干拭いきれないのが困りますが。

「それにしてもお見事でした。あの動きからよく目くらましを作り出しましたね。」
「え?嗚呼アレ実は咄嗟の判断でして」
「…まさか勘で動いたとでも?」
「驚いた。戦闘経験は?」
「一度もありません。」
「…これは磨いたら化け物になるかもしれませんね。」

ありえますねえと周りが談笑する中、メルは思いだしたと声を上げる。
静かに、ただ、静かにだ。


『レウクロッタじゃないな、違うなんだっけ駄目だ思い出せてはない。』
「何の話です?」
『エリーゼ。君苗字あるでしょ。』
「姓名ってこと?ええ、一応あるけど。」
『教えて。』
「…エリーゼ。エリーゼ・レウィシア」

やっぱりと言う低い声に、何かと困る顔をする彼女に、コルンが答える。

「貴方は選ばれた華神という者なのですよ。レウィシア様」
「私が?」
「レウィシアという花をご存知でしょうか?」
「いいえ」
「花言葉は…ほのかな思い。」

彼女を望んだ、思いですよ。そう言うコルンに対していや違うなとメルが待ったをかけた。

『レウィシアは別名岩花火という名称がある。岩から花火の様な華を使って攻撃をしたのはその一部だともいえよう。』
「彼女の得意武器がそうだと」
『まぁね。』

そう言って食事に戻るメルの姿を見て、コルンはふむと声を出してから食事に戻った。


++++++++++

コンコンとノックをすれば「はーいどうぞー」と間延びした声が聞こえる。
失礼しますとコルンが入れば、未だベットに入っていない彼女に声を掛けた。

「寝れないのですか?」
『まあ時差ぼけって処かな。どうしたの?』
「嗚呼いえ、お食事の最中何か言いかけてそうな感じを受取りまして。」

気のせいでしたらこのまま引きますという彼に
そうだねえとメルは言ってから手をこまねいたことでドアを閉じ、中に入る。

「…これは?」
『気になって名称一覧を引き出して来てみたんだよ。…ほら、此処みて。』
「エリーゼ、の意味…っ」
『意味は「神の約束、神は私の誓い」』

彼女、華神になる時どんな言葉を言ってたと思う?
…どういっていたので?

『刈り取ってしまえ。感情ソレごと全部、纏めて取って。
それに続いて、こういったんだよ。
…華よ神よ魔の者在ろうとする存在よ、
今こそ儚き願いを継げ、代償与えて、お願い聞いてってね。』

我に【収穫】の力を授け、華の者誓い導を渡せ

『テレーゼという言葉がある。意味は収穫で…
エリーゼの為にという曲はご存じだよねえ?』
「ええ。貴方が散々我々に聴かせていたあの曲ですよね?」
『アレは諸説あって、エリーゼではなくテレーゼの為にっていう題名だったという者がある。』
「…彼女の本来名乗るべき名はテレーゼだったと?」
『其処は分からない。でも、収穫の意味を成すテレーゼに加えてエリーゼの神の約束、誓いって言うのがどうもありきたりすぎて怖いんだよ。』
「だから寝れないと」

まぁそれが大半なんだけどね。

『あとは詠唱の違い、かな。』
「詠唱の?」
『今までは華よ神よ、願いを継げよ。代償与えて、お願い。聞いて、だったんだけどね。』
「…そう言われてみれば、確かに違いますね。」
『前にアルカネットが私の為に詠唱してくれたって聞いたことがあるんだけどさ、』
「まさか詠唱が違ったから不発に終わったとでも?」

ですが確かに気の増幅は感じられましたよ?
じゃあ未完成で終わるか、それとも今ではなかったかのどちらかだろうね。

『いずれにせよ魔の者在ろうとする存在よ
っていう言葉が私の存在に続いているように聞こえてね。』
「…書き換えて行っているかもしれない、と。」
『充分考えられる。…これがどのような作用をもたらすか見当もつかない。』
「だから日記を書かれていたんですね。」
『過去の情報を未来に持って行くために…そう、思っていた。』

コレをみてと言うメルの日記に、コルンが声を上げた

「っこれは…!!!」
『筆跡を消した痕があるよね。』
「…此処に紛れ込んでいるとでも?」
『否定できなくない。任せられるね?』
「ええ、お任せを。」
『まぁ誰かが消しているのではなく、自分が消してってるんだろうけど。』
「…無意識にですか?」

嗚呼いやそういうのじゃないけど

『…ごめん、まだ言語化難しいや。また出来たらお話しても?』
「そうして頂けると助かります。」
『あーーそれにしても、色々問題が増えてきたなあ。』
「悪魔の力を持つ華神ら、ということですか?」
『まぁそれもある。』

あと気の練りようかな。
練りよう?

『さっき帰って来る時にブチ切れて練ったんだけど、凄い満たされなかったんだよね。』
「…満たされなかった。」
『いつもなら練りに練り込んでぶち込むんだけど。』
「ま、まあいいでしょう。それで?」
『嗚呼うん。それで、闘った時凄い空周りした感じがしたんだよ。』

華は咲いたのにね。

『でもその時だったかな、エリーゼが力を持ち始めたんだよ。』
「…ご自身の気が移動したとでも?」
『そう言わないとあれ程の気が彼女に宿って使えるわけもないかなって。』
「もし仮にそうだとしても、貴方が他人に気を無意識下で明け渡すなんてことはしないと思いますが。」

それは私も思う。

『だからこそ、気になるんだよ。』
「まぁ、分からないことを永遠と考えるのも無理なことですよ?
時間で分かってくることもありますから。」
『そうだけどもども〜〜〜』
「もう寝て下さい。横になるだけ、目を閉じるだけでも構いませんので。」
『むう〜〜〜。』
「嗚呼そう言えば一つお聞きしたいことが。」
『ん?』

なあに?そう言いつつもメルは背中を押されてベットの中に入り込んだ身体をコルンの方に向けていると
シーツをメルの身体に被せ直しつつ話をするコルン。

「鼻歌ですよ。あれ声が聞こえなかったのですが、一体何を歌っていたんですか?」
『あれお兄さん方声とか聞こえるの?』
「たまにですがね。基本聞こえませんが、鼻歌の時だけ口元すら隠されて見えませんでしたので。」

みえなかった、か。

『なら知らなくていいことだね。』
「…そう、ですか。」
『おやすみ、コルン。』
「ええ、おやすみなさい。良い夢を。」

そう額にキスを落としてから部屋の電気を消して帰って行ったコルンを見てから
暫くしてメルはシーツの中にいれられていた腕をばっとシーツの上に出してあおむけになっていた身体を横に倒してやる。

『…はなうた、か。』


ー貴方と一緒に埋めましょう。この前言ってたチキンと共に。

枯れたお花と割れた破片。混ぜて溶かして出来たのなあに。

ー貴方と一緒に埋めましょう。確かに在った時間と共に。

朽ちたお花と消えた箱。溶けて消えた、はずなのに。

ー此処に在ると、声が聞こえる。嗚呼題名のない額装よ。

君の居ないこの場所で、キラキラ照らして導いてみて。

ーずっと笑い続けてる。君の生きてた筈の場所で。

『…貴方は居ない、存在しない。声が聞こえぬ午前二時。』

貴方は居ない、存在しない。優しくしてね?私のことを。
愛して愛したこの額縁を、音に交じった、ホントの希望。

どうか、のばして、手を、のばした、その先に


『…ねよう』


希望なんてなければ、全てが元通りになんて、有り得るわけないのにな。