この美しい場所には





嗚呼ねえ待ってそれ大丈夫?ボウル死なない???
大丈夫ですますわよ。

「これくらあっ」
『あ〜〜〜流石にボウルより泡立て用の方が先にお亡くなりになったと。』
「何をなさっているんですか。」
「コルンお兄様!ごきげんよう。」
「ごきげんよう。それで?」
『おかしつくってます!』

味見します?
その状態食べれるんですか?

『クリームです。はいあーん。』
「手洗ってますよね??」
『洗ってなければ作ってません。』
「…っ!これは」

どう?甘すぎない?

「ええ、甘いと思って覚悟していましたが…とても美味しいですね。」
『やた〜〜〜!!まるちゃんやたよ!!』
「ふふ、大成功ですますわね!」
『ね〜〜〜!!!』
「何の菓子を作っておられるので?」
『あ〜〜〜駄目駄目駄目駄目!!!』

ちょ、身体を使って押さない!!!!

危ないでしょうがと声を上げるコルンにだってとメルが叫ぶ。

『コルン様きちゃだめ!!』
「っ」
『味見はしてもいいけど中身は後のお楽しみ!!!』

そう言って軽く締めだしたメルに、本当にいいんですます?
とマルカリータがそっと覗くように声を掛けてみてくれる。

『いいんです。後で色々言われそうだけど。』
「い、いいんですますか…」

それにしても、よく作ろうって思いましたですますね?
そう?

「ええ。まさか生物を作り上げ、尚且つ植物も育て上げて
ありとあらゆる食事をこの場所で完結させるとは。」

あれから二週間程の月日が経ち、メルはマルカリータに声を掛けて
菓子作りの犠牲者一号にならないか?と低い声で決まったように
不敵な笑みを浮かべながら誘った。

それに対してあっさりと答えを返したマルカリータは、
現在華樹の樹から後ろに入った
右側奥にあるキッチンで料理を作っていたところだ。

正確には試作品に近い。というのもだ。

『私お菓子ってバアムクーヘンですら初だったんだもの。
アレは極論オーブンがあればなんとかなるだろうとか
鷹を括ってたら予想以上に出来なくてフィズにぶん投げたけどな。』

「でもこうやって作っているということは、誰かに渡したい方が?」
『まぁ全員。』
「あら。なら猶更お兄様達を引き換えさせなくて良いのでは?」
『ええヤダ。でもウイスさんはべつ〜〜〜!!』
「おやおや、仲間に入れて貰えるのですか?」

それは嬉しいですねえ?
えへへ!

『ウイスさんの味覚は絶対信じた方が良いって思って。』
「おや、それはそれは。…おだてても何も出せませんよ?」
『軽く高い高いしてくれたらいいよ!』
「喜んで。」

後でして差し上げますね。
やたーーー

『あれ私等価交換出来てる?』
「出来てます出来てますよ〜それにしても今何をお作りに?」
「ティラミスとやらと、後はなんでしたっけ?」
『ティラミスとマドレーヌ、カップケーキには挑戦してる。
今度飴とかキャラメルとかも作ってみたいけどね。』

アレくそ美味いんだよ。もう食べたい。

「そう言えば似たようなものを聞いたことがあるような…」
『嗚呼ブルマさんがビルス様に渡したことあるかもね。』
「成程、それでしたら味見も出来ますね。」

お願いします。
喜んで。

『じゃあウイスさんこの泡だて器を作って貰えます?』
「ええ。綺麗に折れちゃったんですねえ〜」
「ちょっと加減をミスっちゃっただけですます。」
「ふふ、はいどうぞ。」

これでどうするんです?
こうやってかき混ぜ続けるの。

『そしたらこういう形になるのがメレンゲっていうのでして、
もっと泡立てるともこもこの泡みたいなのが出来るんだよ。』

因みにさっきコルンに味見させたら美味しいって言ってくれた。
おや、意外ですねぇ〜
え?

「これくらいでしたらもう少し苦い方がお好きだった気がします。」
『え』
「ふふ、きっと断り切れなかったのでしょうね?」
『〜〜〜〜っ!!まるちゃんやるよ!!!』
「ふふ、了解ですますわ〜!」

顔、赤いですますわよ?
うっ、うるしゃい!!

「もしかして髪型を変えているのもそういう意味で?」
『あっ分かりました?』
「髪の長さが随分短くなりましたので、無理矢理に近いですますがね。」

意外と髪の毛の長さ、あったんですねえ。
そうなの。

『ツインテ割と動きやすいってことに気付いたけど、短いからこそだから
ほんとマルちゃん凄いなって現在進行形で尊敬してる。』
「あら。嬉しいことを言ってくれますですますわねぇ?」

何が欲しいので?
ん〜ぎゅ?
ふふ、後でたっぷり、して差し上げますですますわ〜!

「メルさん、これくらいでいいです?」
『ん?嗚呼そうそうそう!凄いウイスさんすーーごいね!!』
「おほほほほ!ありがとうございます。」

スポンジケーキは先に作ってるから、コレにどんどん重ねていくんだよ。
おや、後は飾り付けだったのですか。

『うん。最後にココアパウダーを振りかけて、
冷蔵庫に数時間放置したら完成するの。
今日の夜にでも食べようかなって。』
「おや?おやつの時間ではないのですか?」
『っ!あっ、嗚呼そうなの!』

それに試作品だから、本当は全員に振る舞う予定ないんだよね。
おや、それはそれは。

「狡いですねえ?」
『完成した時はちゃんと作ってお披露目するから…ゆるして?』
「仕方がないですねえ〜そのお言葉、忘れぬようにしてくれればいいでしょう。」

やたーーー

「それにしても試作品にしては少々量が多すぎやしません?」
『実は予想以上に多く作り過ぎまして。』
「なら猶更皆に振る舞えば良いでしょうに。」
『安心して下さい。犠牲者一人確保してます。』
「ぎっ、そんな酷いことを…」
「いいえ、割と事実ですますわよ。お兄様。」
「ま、マルカリータさん?」

なにを

「メル様は確かにお料理がお上手ですが、
それはあくまでもレシピに忠実で再現出来ればの話し。
最初の試作品はどうあがいても美味しくならないことが多いですますの。」

私も先程トイレに走りましたですますし…
嗚呼、それはそれは…

『私はそもそも身体が慣れちゃってて味覚もぶっ壊れだし意味ないからね。』
「だから犠牲者と…ちなみに何方にされるので?」
『無論サワアかコルン。又は両方。』
「…後で労わって差し上げて下さいね?」

もちろん!!!

『この際だからキャラメルとか作ろうかな。材料丁度余ってるし。』
「まだ作るですますの…???」
『キャラメルはいける。生キャラメルになると死ぬ確立高くなるけど。
コルンなら大丈夫でしょ。いけるいける。後で死なないかな私。』
「……聞かなかったことにしておきますね。」

へへ!助かります!!!

「こんな調子なんですか?」
「ええ。そうですますわよ?賑やかでしょう?」
「びっくりしましたよ。遠くから何か声が聞こえると思って
気になって来てみたら独り言じゃないんですから。」
『あ〜〜〜〜むーーーりむりむりむりむり。あ〜けろあけろあけろあけろーーー』

であえであえーーーありがとーーー

そう言って軽く話をしながらも冷蔵庫の扉を開けてやるウイスに礼を言いつつ
大きめの器に入れたティラミスを中にぶち込んでから気付いた。

『あっ!!!しまった!!!!』
「なんですか?」
『…あのままだと綺麗な形で出せない…。』
「嗚呼そういうことですか…別に試作品なんですし、いいのでは?」
『まあ、そうだけど…』
「あっそろそろ出来上がりそうですますわよ。」
『えっまってどれどれどれどれ。』

せめて一つにしましょうよ。
そう言う声を無視してオーブンを開いてみたのはいい匂いと共に出てきた貝状のもの。

『まるかりーた!違う待って普通に似てるの間違えた。これがマドレーヌです!!』
「全く似ていないではないですか。」
「どちらかと言えばマティーヌさんですますわよね。」

そうですね。嗚呼混ざったな?
どこをどうですか。どこを。

『後は冷まして出来上がりですね。うあっつうういついついつい!!!』
「大丈夫ですか?火傷しない様にして下さいね?」
『いけるいけるへいきへいき』
「手が大丈夫そうに全くみえないのですが…」

貸しなさい。
わああ

「…あついじゃありませんか!!!」
『ばれたーーー!!!』
「何騒いでるんですか。」
『あっさわさわさわーだ。』
「私はサイダーになった覚えありませんが。」

わっバレた。
バレるに決まってるでしょう。

「何されて?」
「今日のおやつですますわ。」
「ほぉ?マドレーヌですか。良いですね。」
「知ってるのですますか?」
「ええ、昔アルメリア様らとお茶会をした時に。
それにしても良く作れましたね?貴方結構失敗していたでしょう?」

ふふ、マルちゃんがいてくれたから!!!
頑張りましたですますわ〜

「ひとまずもう貝殻はみたくないですますわね」
「…嗚呼、お、お疲れ様です。」
『これくらいで?』
「貴方は加減を知りなさい加減を。」

作っても食べれない量を作ってどうするのです。
そりゃあ食わせる。

「誰に食わせるつもりですか。私此処まで食べれませんからね?」
『頑張ったら鶏さんの餌に』
「いや何企んでるんですか。折角産まれた彼等を殺す気ですか。
貴方低確率でも毒を作るというのに。」
「作るんですか。」
「作りますよ。私が天使だから無効化出来ててよかったんですが、
アレを喰らったら普通にトイレから出れませんよ。」

ええ、そんなに?
そうですって。

「やけに静かだから嫌な予感がすると思って
コルンさんに声を掛けたら
キッチンに居ると聞いて来たんですよ。」
『うわ、野生の本能。』
「おだまりなさい。これ本当に大丈夫なんですよね?
ロシアンルーレットとかほざきませんよね?」
『あっしてもいいよ?』
「今我々は天使と人間の狭間なんですよ。
貴方と同列。言いたいことわかりますよね?」
『えっまさか死ぬの』
「死にはしないでしょうが苦しみはします。」

分かったら怪しそうなのは省いて下さい。
えーーーー

『じゃあ〜〜…これと、これ、あとこれと、これとこれとこれとこれと』
「いや多い多い多い多い」
「一応勘は冴えてるので残ったものなら食べても大丈夫ですよ。」
「…凄いですますわね。」
「まぁマルカリータさんやウイスさんが付き添いであれば問題ないでしょうし。」
「私は先程参加しましたよ。」
「私は最初からいましたが、割と痛い目あいましたですますわ。」

それはそれは…うちの子が無礼を。
いえいえ。

「楽しかったので良かったですますわ。」
「ソレは良かった。」
『…』

杖を持って話をする彼等を横目に、
メルは手を洗ってから作っていたものを冷蔵庫に入れ
軽く冷やしておく間に洗い物をすることにした。

「そういえば今日の料理担当はお兄様方ですますか?」
「ええそうですよ。まさか準備する前に
作っていたとは思いませんでしたが。」
「すぐに片付けるですますわ。」
『嗚呼大丈夫。マルちゃん先にいっときな。
どうせあと10秒くらいでカンパーリさんが来るよ。』
「え?ですが」

そう言っているとガチャリと扉を開けてきた彼を見て固まる一同に
皆さんどうされて?と首を傾げるカンパーリにメルが声を上げる。

『ごめんマルちゃんお借りしました。ほらいきな』
「ちょ、これ!足でやらない!!」
「いいですますわよ。メル様また誘ってくださいですますわ。」
『はーい!嗚呼ごめんマルカリータちょっとまって!!!』

なんですます?

『もしもコルンさんかコニックさんどっちかに会ったら
後で私に会う様に声掛けておいてくれない?』
「嗚呼例のやつですますか?分かったですますわ。」
「例のやつ?貴方何企んでいるんですか。」
『犠牲者って言ったらわかる?』
「…せめてコニックさんはやめて差し上げなさい。」
「コルンお兄様はいいんですか。」

あの子はなんだかんだ言って強いですから。
…喜んでいいのか泣いた方が良いのか分かりませんね。

「それにしても意外ですね。貴方何時から計算できるように?」
『気の気配でしょ?もうただの直感。』
「おや、ただの勘でしたか。」
『でも最近結構な確率で当たってるから、
もう少しでコツ掴めそうなんだよねぇ〜〜。』
「組手も割と複雑化してきてますからね。」

今度テストされるんでしょう?
おやバレてますか。

「ええ。今度は3対1だとかお聞きしましたよ?」
『まぁね。』
「ちなみに相手はご存知で?」
「一応は。」
『どうせカンパーリさんマティーヌさんヴァドスさん辺りじゃない?
あの近辺知ってるようでまだ知らないし、
マティーヌさん辺りは互いに好きだからっていうので
甘く見ちゃうところ詰める感じだろうからな。』
「…盗み聞きしました?」

いいや?

『ただの勘。んなもんでしょ。よし!終わり〜。私も手伝おうか?』
「いや結構です。流石に昼間から殺人事件を巻き起こしたくないので。」
『なんだよ〜〜一応作れはするんだよ?』
「得意料理くらいでしょうが。お気持ちだけで良いのでお戻りください。
コルンさんとコニックさんに用があるんでしょう?」

彼等なら下で自室にいるでしょうから。

『了解。』

そう笑って手を振って消えるメルと交代でクカテルが入ってくる。
何かしてました?そう聞いたクカテルにいえいえ何もとサワアが笑って答える。

「ただの毒見ですよ。」

++++++++++


コンコンとノックをしてやればどうぞ
と声が聞こえて失礼しますと言ってドアを開ける。

「…誰かと思えばエフェメラル様ですか。何用で?」
『ごめんなさい、今お時間構いません?』

ええ、いいですよ。そう言って付けていた眼鏡を置いて
中央にある席に座らせようと椅子を引いた
コルンに少しお辞儀をして机に物を置いてから座った。

「これは?」
『試作品ですが、一応これも。』
「これは???」
『解毒剤です。』
「メル様??????」
『ああん、サワアに言われちゃったからあ〜〜』

一度作るものは高確率で毒生成するから絶対に解毒剤渡せって。
…貴方何してるんですか。

「見た目は綺麗ですがね。これは
…もしかしてキャラメルとやらですか?」
『そうです!食べたけど美味しかったし、大丈夫だと思うんですが。』
「貴方の場合味覚すら誤魔化しそうですからね。」

むうひどい!みんなしてそういう!
お兄様だけではなかったんですか…

「はぁ、無下に出来ませんし、頂きますよ。」
『ありがとうございます。』
「いえいえ、此方こそありがとうございます。
それにしても、随分と可愛らしいものを持っていますが、其方は?」
『うぐっ…後で行くので。お部屋。』
「そうですか。余り騒いだら他の子達に迷惑を掛けますよ?」
『さっ、さわがない!!・・もん。』

ええ。そうして頂けると幸いです。

「ティラミス。直訳すると私を引っ張り上げて、ですか。
随分と愛らしいプレゼントをこんな夜分遅くに持って行きますねぇ?」
『へ?』
「意訳すれば元気づけて。一体何を求めていらっしゃるので?」
『っ〜〜!!帰るからね!??おやすみなさい!!!』
「ふふ、おやすみなさい。」

そう扉は優しく締めてから出て行った
彼女の姿から視線をキャメルへと変える。


「…私が意味を知らぬとでも思ったのですかね。」

キャラメルを片手に口の中にいれてから解毒剤の準備をしていたが、
どうやらハズレではなく低確率の当たりを引いたらしい。
程良い甘さに笑みが零れる。


「(貴方と一緒だと安心する、これからも一緒にいようね
…なんて、そんな甘ったれた言葉を捧げるのですから。)」

何を言っても無駄というものだろう。
コルンはため息交じりに貰った菓子を机に持って行き眼鏡をかけ直す。


口どけがなめらかで溶けてゆくほどに
牛乳と砂糖の甘さが広がるキャラメル。

温かみのある口触りに、溶けていく中
彼女が懸命に作っていた処、違う物を入れてきた唇を触った。

「引っ張り上げるのはあの方、ということですか。」

ま、仕方がないですね。

「譲ってやると致しましょうか。…む。」

流石にこっちは駄目でしたか。
そう思いながらコルンは解毒剤に手を付けた。

++++++++++


そうこうして、サワアのお部屋に到着してしまった。
ウロウロしているとドアが開いてどうぞと言って開けてくれる。

「ティラミスとはまた魅惑的なお誘いを受けましたねえ。」
『え』
「おや、知らないとでも?あれくらいのおとぼけなんて造作もないですよ。」

…僕に溺れて、僕の手で引っ張り上げていいのでしょう?
っひえ

『あっちょ、そういうつもりじゃ』
「おや、違いました?では何故こんな夜分遅くに来ているのです?」
『それは』
「…そう、捉えてもいいんでしょう?」
『…す、すきに、して。』
「ふふ、では。お言葉に甘えさせて頂きましょうか。」

そう言ってサワアは一口ティラミスを食べてからメルに口づける。
んんと言ったメルを無視して顎を開けさせ一緒に舌と共に物を押し込んでやる。

腕を何とか放そうとしているが、そんなことさせるわけない。
片手は逃がさぬように腰元に持っていき、
さすってやれば意識がそっちに集中する。

段々目が細くなり、きゅっと閉じてしまえば完成だ。

はぁはぁと息を切らして軽く震えて立っている子を見つつ、
ぺろりと口元についていたココアをなめとった。

「…あまいですねえ?エフェメラル。」
『っは……あ、まい?』
「ふふ、かわいい」
『っにゃ』

ぴくりと身体の緊張が走ってこわばりつく彼女の身体をさすってやれば
固まったり緩んだりとせわしなく動く。

後ろを気にして下がろうとする彼女に腰元の腕を強めれば
胸元にもたれ掛かってくるのは明白で。

ううと涙目のまま上を見上げられては、帰したく無くなってしまう。

嗚呼このまま帰さずにずっと一緒に居られたらとは思う。
でも、そんなこと自分も許していないし、きっと彼女も心の奥底では同じ気持ちだろう。

願わくば、ずっと。一緒に居続けられる、そんな夢を。見られたらいい。

「続きは夢の中で、ね?」
『……えっち』
「っくくく、そうですね?男の子はみーんなえっちですよ。」
『…がおー?』
「なので早く寝に行きましょうか。」
『わっ!あ、あるけるよ!?』
「私がこうしたいのです。」

それとも抱き上げるのはお嫌だと?
…うう、好き、だけど。

「ならいいではないですか。」

そう言って扉を開けて歩くサワアに、
メルはぽすんと胸板に寄りかかってちらりと上を見上げる。
すると前を向いていた顔がちらりと向いて目があう。

嗚呼、見てくれると、何かが満たされていく。

攻撃していけばいくほどに零れ落ちていったものが、
こうやって穏やかな時間を過ごせば過ごす程、満たれ戻る。
これは一体なんなのだろうか。分かってる。きっと、この答えを、私は。

知ってるけど、今は、今だけはどうか、知らないままで、居させて欲しい。

『(すきだなあ)』

貴方も、貴方を好きでいる、私すらも。
全部全部、愛おしくて、その海に溺れて居続けたい。
このまま何もかも分からなくなったとしても。

貴方だけを、知れていれば、それだけでいいのに。

嗚呼きっと、そんなことにならないのだろうな。

全て知っていて、貴方だけを忘れた。そんな世界で。
生きていたあの頃が、酷く懐かしく思える。

『(ねぇ、サワア。大好きだよ?)』

ずっとずっと。どんな時だって。
貴方の手を取って引っ張って貰いたいの。
この暗やみの中で。貴方と二人きり。

それだけで、いいなんて、思っていない。

私は弱虫だなあ。

『(愛してるだなんて足りない。)』

好きで好きで仕方がないの。
分かったらどんどん欲張りになってしまう。
手を伸ばして伸ばして、伸ばし続けてしまうから。

そうして、目覚めた時の絶望に、乾いた喉を思い出したくない。

このまま止まればいい。いやだ止まって欲しくない。
ずっと続けばいい。いやだ一瞬で終わって欲しい。

そうやって肯定しては否定を繰り返すから、
この空間は正常に回っていると私は思っている。

笑って走って、まるで普通の生活をし続けてる。
嗚呼もしも、もしもコレが夢ならば。どうかもう、二度と醒めないで。
私は此処で生きていくから、この先の更に向こうへ行くから。

誰も引き留めないで欲しい。あんな地獄に、私は戻りたくない。

こんなにも満たされているの。

『(すき)』

貴方に触れていれなくても。貴方が誰かと笑って居るのをみるだけでも。
陽だまりの下で、たわいもない話しで笑い合っている。
ソレをみるだけで、もう、この心は満たされている。

ボロボロと零れ落ちる涙に、目を開けた。

「…僕も貴方が好きですよ?エフェメラル。」
『…うん。ねぇ、嘘じゃ、ない?』
「ええ。神にだって誓って差し上げましょう。」
『…そっか。』

嘘だって、そう言ってくれると、嬉しくてたまらなくなる。
本当ならもっともっと、嬉しくなって困ってしまう。

『ねえ、さわあ』
「んー?なんです?」
『お花の冠、作ろうね。』
「…ええ。いつか、また。」
『ううん。何時かじゃやだ。』
「え?」
『あの子が良いよって、言ってくれた時。』

その時に、交換しようね。

『その日まで何のお花にするか決めてきてね?』
「…ええ。まぁ僕は昔と変わらないですがねえ。」
『え〜何それ良いな〜。』
「では貴方も同じ様にすればいいではないですか。」
『あの時の情と今の情は違うからなあ。』
「では、廃れてしまったと?」
『違う逆だよ逆。…もっともっと、好きになっちゃって怖いくらいなの。』
「おやおや…ほんと、狡い子ですねえ。」

分かりました。また、その日まで。

「僕は目一杯の愛情を華に注いでお返し致しましょう。」
『…うん!やくそく、だよ?』
「ええ。」

おやすみ。
おやすみなさい。

「よい、夢を。」
『うん。』

そう言ってベットの中で目を閉じれば、気持ちよく眠りにつけれた。
午後の昼下がりに、綺麗な白と青と黄色の花冠を頭に乗っけてくれるサワア。

お返しに、同じ花冠を彼の頭の上に乗せてやれば完成だ。

手を恋人つなぎの様に絡め合わせて笑い続ける。



嗚呼、幸せって、こういうのを言うんだろうな。









そう、幸せに満たされた時は、何時だって残酷で。








目を覚ます。











白い天井に、涙が零れ落ちた。








嗚呼








『ゆめなんだあ』













あなたとわらえた、そんな、ながいながい、ゆめ。