さっきまで此処に居た人たち
『(いただきます)』
どうぞと言われて食事をするメル。
先程の間では夢だった。
びっくりするくらいには息が止まった。
胸の痛みを感じつつ、時間が戻っていることを知り
大神官に出会ってからサワアらに嗅ぎつかれること無く
事を終えて帰って来た次の日である。
一人で過ごせると言えばいい機会だしと言ってくれて
一年程であればこの広い家を一人で過ごしても良いと許可が貰えたのだ。
誰もいない。笑い合う人は、もう、どこにも。
あんなに満たされていたというのに、胸の奥が綺麗にくりぬかれて分からない。
名前も忘れてしまいそうになるものだから、ペンを走らせようとして止める。
書いて誰かに見られでもしたらまずい。
適当なありきたりであるようにも見えて本物を偽造しなければいけない。
もう、彼等は何処にも存在していないのだ。
あの綺麗な夢の中でしか、存在しない。
それにしてもあんな長く、はっきりした夢なんて久しぶりに見たものだな。
『はぁ』
ため息が出る。資料を照らし合わせつつも何か不備がないか確認し続ける作業だ。
各宇宙の天使らが使う筆跡を元に要点を纏め上げて纏めたものを完成させた。
空を飛んで地面に降り立ち、華樹を潜って本来生きていた場所に戻る。
嗚呼、世界はこんなにも色がないものなのか。
貴方が私を見てくれない。そんな世界は。
生きていいものではないし、生きれるものではない。
別に笑顔なんてしなくていい。だってみないでしょう?
知らないならこんな仮面は取り外していて問題ないというもの。
「…おや、驚いた。そのお姿では何年、いや何億年ぶりでしょうか。」
『(お持ちしました。ご査収下さい。)』
「……ええ、確認しました。いつもありがとうございます。」
「失礼します、大神官様、お尋ねした、いことが…嗚呼すみません」
「いえ、構いません。」
そう言って部屋をノックして入って来たのは
『(あ)』
先程まで笑って見てくれていた、彼その者が居た。
目が合ってすぐに逸らした。印象が悪いだろうが、気にしない。
彼となれ合うつもりはない。少なくとも、この現実では。
私が生きれるのは、色を持ち続けられるのは、
何時だってあの時間だけでいいのだ。
早く寝たい。そうして、長い長い夢を見たい。
貴方がまだ、生きている。そんな、夢。
「っ?!!?!?」
「メルさん?何処か具合でも悪いのですか?」
『え?な、んで?』
頬に伝わる違和感に手を付ければ、ボロボロと零れ落ちてくる。
違う、泣いてなんかない。コレは汗だ。雨が降ってるだけだ。
そうありもしない言葉を思い浮かべては消えていく。
なんでもない、そう言って避けて帰ろうとすればその腕を掴んで引き留める。
「なんでもない訳ないでしょう…!」
『っ』
「ほら、そんな顔を乱暴にかかないのです。」
淡い黄色のハンカチを取り出してぽんぽんと優しく拭い去ってくれる。
その優しい拭い方が、余りにも似ていて。さらに涙が零れ落ち続けてしまう。
優しくしないで。突き放して。嫌っていて。こっちを見ないで。
お願い。お願い。お願い。お願い。ねぇねぇ、お願い。お願いだから。
『も、い、い、です』
「ですが…」
「サワアさん。嫌がっておられますよ。」
「…すみません、無礼を。」
『っふ、い、いん、です。っしん、かん、さ、ま』
「ええ。今日はもう構いませんよ。またお荷物送りますね。」
お願いしますと思いながらぺこりとお辞儀をして
走り去さろうとしたメルをサワアが引き留める。
「せめてこれだけでも」
『(そんな、わるいです!)』
「受け取って下さい。まだ泣いてしまうでしょう?」
『…っ(洗ってお返しします。)』
「いえ、構いませんよ。…お持ち頂ければ、それで。」
『いえ、そんっ、な、わけ、には』
「サワアさん」
「…ではこれで。」
『あっ』
待ってと言っても彼は待ってくれない。
立ち止まらずに大神官の元に付いていき、
綺麗に消えて居なくなった。
手を伸ばしても、届かない。
満たされていたあの時間は、もう、何処にもない。
++++++++++
どうやって帰って来たのか不思議で仕方がないが、
とりあえず家にいたのは確かだ。
まぁと言ってもあの家に居ても落ち着かないので、
華樹の奥にある家に今現在住み付こうとしているが。
気付いたのかノックされて入って来た者が声を掛けてきた。
「エフェメラルさん、此方にいらしているとは…本当にどうされたので?」
『(気分転換ですよ。構わないでしょう?)』
「…ええ、まぁ、構いませんが。」
『(全王様と遊べる程まで回復出来ませんが、すみません。)』
「いえ、構いません。全王様もまだ駄目だよって仰られておりましたので。」
そっか。全部お見通しだね。
『(ねえ、すぴす。あれからどれくらいの月日が流れたんだろうね。)』
「…大体800億年ほどですよ。」
『そっか』
「…サワアさんがとても心配しておられましたよ。」
『そ、っか』
「ええ。そうです。自分を見て泣かれたらそりゃあ誰も心配するでしょう。」
涙は引っ込みました?
いいえ。
そうですか。
「…痛みますか。」
『…うん。』
「貴方は悪くない。全王様もそう仰られております。
…あの子達もそう仰るでしょう。」
そうだとしても、貴方はご自身を責めるのですか。
…そうだよ。
『だ、って、わる、いこ、だった、っから』
「…良い子でしたよ。最初から最後まで。ずっとずっと。」
ハンカチ、返してやらなきゃ。
そう思っても、この家に一度入って出られなくなってしまった。
彼に会いに行ける距離からしたら此処にいた方が早い上に移動も楽ではある。
このまま此処で暮らしても良いかと聞けば勿論だと答えてくれる。
「是非とも此方で暮らして下さい。皆も喜んでくれることでしょう。」
「…メル」
『…ある、とり、あ』
「いいのね。」
そう言った彼女に、うんと頷けば真剣な表情が
一気に和らいで「そう」と嬉しそうに言う。
「大神官様。我々は一時的に封鎖へとなります。」
『え?』
「気付かなかった?これから数億年に
一度の半周期程度華樹のゲートが封鎖されるのよ。」
しらねえ。んなのしらねえ。
「だからあらかたの荷物は持ってきたのよ。」
『わあ』
「ふふ、結構あるから皆連れて来たかったんだけどね
流石にあの中不安定になってる時は
大人数で移動するとはぐれちゃ困るから。」
「では暫くお会い出来ないのですね。」
「ええ。前は数年程度でその前も数千年でしたし、
まぁ今回もそのくらいで終わりそうな予感はしていますがね。」
此方に居させた方が貴方もお仕事楽でしょう?
…ええ、とても楽にさせて頂けておりますよ。
「時々膨大な量を持ち抱えて来られるので、
その点につきましてはもういなければ
ならない存在になっていますよ。」
「あらあら、よかったねえ?」
『…うん。』
彼が見てくれなくても。彼以外の誰かが見てくれている。
それだけで、いい。そう、思ってしまう。
笑ったメルに、少し驚いた表情を見せた大神官がすぐに顔を戻した。
ではと言ってアルトリアから荷物を置いて貰って送る彼を横目に
メルは一階に置かれた大量の荷物を見上げて笑ってしまった。
『ふふ、まって、おおすぎ…!!』
ちょっとこれ一人では無理だろ。
普通に5人家族並みの大移動の荷物量には笑ってしまったではないか。
夢だったから流暢に話せたり動けたりしていたのだろうな。
現実はそう上手くはいかない。ちょっと動けばすぐに身体が悲鳴を上げる。
休憩をしていたら昼が来て夜が来て一日が終わってしまう。
勿論仕事の合間にやるんだからいくら時間が経っても終わらない。
早くハンカチ返してやらないと、と思いつつも、
いやもう返さない方が良いのかもしれないとまで思い出してきた。
確かにこのまま返せば自分の匂いが
染みついたものを渡すということになる。
彼の記憶から綺麗に私がいないならば。
もう、そのままにしておいた方がいい。
出来るだけ彼とは関わらない。
これが現実生き抜く手段なのだ。
まぁ、出来れば…彼が笑っている姿を
遠くから眺めて居られたらいいのだが。
そんなこと、在り得るわけもないし、
仮に在り得たとしてもずっと泣いて迷惑をかけてしまうだろう。
良い子で居なければいけない。息苦しい。
ー無理なさらないで。
そう何処までも自分を見てくれた彼は、何処にもいない。
貴方に会いたい。早く、早く、早く、早く。戻りたい。
でもどうやって帰ってたっけ?どうやっていってたっけ?
もう分からない。がむしゃらに走って来たから、帰り道なんて知らない。
でも、そういや華樹の中が不安定だとか言ってたけど、
隙を見てあの中に入りさえすればあの時間に戻っていけるかもしれない。
そうだ、きっとそうだ。そうであるべきだ。
一色だった色がどんどんと光を取り戻していく。
彼に会える。サワアに、あの、優しくて大好きな
あの人に会える希望が見えるだけで、
こんなにも世界がキラキラとして見えてくるのだから、
不思議なものだ。現金だなあ。私。
『は、やく、お、わら、せなきゃ』
そうして彼等と何をしようか。
何をして、どんな話をしようか。
嗚呼、楽しみだ。この手を取ってくれる。
そんな、何時しかの夢幻を。
私はこの手に掴んで前を向いて歩いていけばいいのだから。
ことことと作業をしていると部屋のノック音に『はあい』と間延びした声が出て自分でも少し驚いたが、入って来た人に更に驚きました。
『っえ?!?!?!』
「エフェメラルさん順調です?」
『(順調も何もある程度片付けてる最中ですが)』
「お手伝いとか欲しくないです?」
『(率直なお言葉を出しても?)』
「いいですよ。」
『いらんかえれ』
「エフェメラル様??????」
そう言ったのはコルンだ。凄く険しい顔をしているが、ふんと鼻息を飛ばしてやる。
べーだ!お前らの手なんて要らねぇよ!!!
私を知っている人くらいしか入れない処だったのに。
どうやらいつの間にか彼等にすら許している自分がいたらしい。
『(別にこれくらい一人で出来ますし、場所は一人で決めたいのです。あっお仕事なら話別ですよ?お仕事の件ですか?)』
「手のひら返しが凄いですね…」
『(いやーそれ程でも!!)』
「褒めてませんが。」
「仕事の件も勿論のことですし、中にご案内してもらっても?」
『(物が多くてすみませんが、奥は空いてるのでどうぞ。)』
そう言って、正確にはそうテレパシーで伝えてから動き出したメルの後をついて行く各々。
仕事部屋に入れ、円卓に座らせてから紅茶を取りにメルが席を外して数十分後。
お待たせしましたと言って紅茶や珈琲を置いて行くのに「おや?」と声が上がる。
『(ん?どうかされました?)』
「嗚呼いえ…お父様、彼女に我々の好みをお伝えしておいでで?」
「いいえ?何も告げていませんが。」
「…そう、ですか。」
『(まさかお嫌いでしたか????)』
「いや、その逆と申しますか…ま、いいでしょう。頂きます。」
どうぞと手を前に出して少ししてから席にちょこんとついてやる。
今日来てくれたのはコルンさんとコニックさん、そしてウイスさんの3名だ。
サワアは居ないんだなあ、と、残念に思ってしまうこの感情が、いやになってくる。
あんな時間は何処にも存在しないのだと、嫌でも見せつけてくるから胸が痛くてたまらなくなる。
「腕を上げましたね。」
『(それはどうも。)』
「声が出ないのですか?」
『(え?)』
「嗚呼失礼、ウイスさん?」
「おや、聞いてはいけない話でしたか?ですが時々お声を聞く限り、お話できそうな感じがしたんですがねぇ?」
まるで、あえて喋らないようにしている、とか。
…っ。
「図星ですか?」
『(だとしたら?失礼極まりないから話せと?)』
「いえいえ、ですが我々貴方に「何も」していないのですよ?」
そんな親を殺された様な目付きで見られても困ります。
…それもそうです、ね?
『(私そんなに怖い顔してます?)』
「してますよ。特に彼等の気配を察知すれば顔が変わります。」
『(わあお)』
「私や全王様とお会いする時は変わらないのですがねえ。」
「何か失礼なことをしていたらお詫び申し上げたくて本日お伺いにと」
嗚呼そういうことか。
『…とくに。』
「っ!!」
『な、にも、してない、ですよ。っけほっ』
「大丈夫ですか?」
『う、ん。だ、っい、しょ、ふ』
えへへ、ちゃんと声にして話さないからお話も難しくなっちゃったね。
…そうですね。
「昔よりはずっと、お話が下手くそになられました。」
『お、や、ひ、どい』
「ふふ。これを機にお話の練習相手になってもらっては?」
「…それは実質彼女と交流をしてもいいという話になりますが。」
「おや、そういうつもりでしたよ?
少なくとも、この子達をこの場所に
入れて貰えている時点でそのつもりでしたし。」
それに、サワアさんも前に遊びに来られているようでしたし。
…あれ?そうだっけ?
そうですよ。
「もうお忘れですか?」
『(すみません、最近物忘れが激しくて…歳ですかね?)』
「それくらいで年齢のせいになさらないで下さい。」
そうため息を吐く大神官にメルはそれもそうかと苦笑いして紅茶を飲み込む。
別にカフェオレでなくても紅茶くらいだったら飲めるし、嗜む程度は出来る。
今回入れたのはアールグレイという茶葉だ。
アールグレイは、爽やかな香りが華やかに広がるのが特徴的で
柑橘系の爽やかな香りは涼しげな印象も与え、夏に良く飲まれるとか。
私はホットで飲むのが好きなので
例え蒸し暑い夏だろうが飲むときは熱いの一択だがな。
茶葉にも花言葉がある。
『(…駄目だな、考えるな。)』
彼等の居る前で、あの人達の事を思い出しては
それこそ失礼極まりない行為であって。
…まぁ、こうなるから私は貴方達と
会いたくないと思っていたんだけれども。
「…何かお悩み事でも?」
『(気になさらないで下さい…
ただの、独り言。そう、独り言ですから。)』
たわいもない話をしながら円卓で
お菓子を囲んで話していたのを思い出してしまう。
つい先ほどまで話をしていた、お昼間の休息時間。
お菓子を作ってお披露目してお話に花を咲かせるだけ。
願いなんてなにもない。
ただ、その時間だけが、この胸を埋め尽くしてくれる。
それだけで、充分だった。
充分、充分なのに。足りなくてたまらない。
会いたい、会いたくなってしまう。情が溢れ出て、本当に困り果ててしまう。
会いたいのは彼等ではない。あの時間に生きていた彼等の方なのだから。
私を知ってくれる彼等ではなく、私を知っていた、彼等だけに。
「…私達は、貴方とどのようなご関係だったのでしょうか。」
『(すんごいお喋りでしたよ?特に私が。
粗相をしまくってお師匠嗚呼いや
コルン様に叱られまくっていたくらいには。)』
「それ程とは、かなりやんちゃしていたんですね?」
コルンお兄様が叱りまくるなんて中々ありませんし。
えっそうなんですか?
「ええそうですよ?私ですら数回あるかないか程度ですし。」
「十分あるではないですか。」
『(ええそれくらいで済むの凄いですね???
私両手どころか多分三桁言ってると思うんですが。)』
「エフェメラル様??????」
なんなら多分そろそろ四桁いくかもしれない。
…流石にそれはなんとか手段を変えるとかなさらなかったので?
『(したんですがどれもこれも失敗しまして。
最初はコルン様と軽く組手してたんですがね
途中からコニックさんと組手してたんですよ。)』
「ほぉ?私とですか?」
「それはまた随分と珍しいと言いますか、意外と言いますか。」
『(手抜いたら滅茶苦茶怒られてました。主にコニックさんが。)』
「私の方ですか。」
静かにですけどねー変に力んじゃうから力抜けってどこぞのお師匠が言うんだもの。
はぁ
『(だって酷いんだよ?ねぇほんと聞いて。
力んじゃうの気を抜かせる為にウイスさんとか
マルカリータさん辺りぶち込んでから
気を抜かせたら殺す気で手刀背後から
降ろしてくるんだよあの馬鹿。)』
「ばっ」
『(加えて一人だけならまだしも3人で動かれたら
ただでさえ一人だけで手一杯なのに避けるだけじゃなくて
攻撃を入れろだなんてクソみたいな指示するだけの
高みの見物とかほんと気が狂ってる。鬼か悪魔か。)』
「いいますねぇ〜〜」
ご本人いますが。
この人違う。
『(あんなすっとこどっこいと一緒にしちゃ駄目でしょ。
そもそも目の色が違うし、私の事全然知らなさそうだもん。)』
「まぁ事実ですしね。」
『(あの人なら、彼と同じくらいの年月程見てくれてたもの。)』
それと同じにしては、彼等に合わせる顔がない。
…ほんと、素直ですねえ?
「本当にどうされたので?其処迄話すなんて何年ぶりですか。」
『(目の前に置いてるからつい喋っちゃうの。すぴすのばーかばーか。)』
「ちょ、エフェメラル様!?」
「構いませんよ。いつもこうなので。」
「…驚いた、貴方お父様の名前を簡単に言い合える仲だったのですか。」
『(言い合えるというかなんというか。割と色々ありだったよね?)』
「まぁ思い当たることはほぼほぼやり尽くしましたよねえ。」
あれ普通に夫婦がするくらいの勢いだよね。
おや
「ならなっちゃいます?別に私は何時でも。大歓迎ですが?」
『結構です』
「おやおや、口頭で言われちゃあ、何も言えませんねぇ〜」
『えへへ』
「ほんと今日は機嫌がいいんですね?貴方が其処迄素を見せるなんて。」
「素ですか?」
「ええ。割と近いですよ。」
普段はもっともっと甘えたですが。
えーそんなことないよ。
『(確かにちょっと背中にすり寄ってもたれかけちゃうけど。)』
「甘えてるではないですか。」
『(全員やってた気がする。)』
「しかも一人だけではないのですね。」
クスクスと笑うウイスにメルもくすりと笑ってみせる。
嗚呼、会いたい。会いたいのに、会えている気分になる。
駄目だ、アレは夢。コレは現実。此処は夢になんてなれない。
あそここそが、夢幻のなかなのだ。彼等は、死んだ。死んでいる。
アールグレイの苦みが喉の奥でジワリと広がっていく。
此処が現実なのだと、言いたそうに、喉に痛みを付けて。
『(風が気持ちいいですね。)』
「ええ、本当に…何かしました?」
『(いいえ?それよりお仕事の件ですが、何の話です?)』
「嗚呼忘れてました。貴方が余りにも意外なことしかなさらないので。」
おい。
「今までは彼等から提出されたものを私が貴方に渡していましたが
今回から数人程度から直接手渡ししてもらう形を取りたいと思いまして。」
『(まってそれでその数人程度のメンバーですか????)』
「ええ。」
『うーーっわ、人選えぐ。』
「エフェメラル様???」
ああしつれい。
『(つい本音が。)』
「そ、そう、ですか。」
『(でもそうしたら貴方に手渡す分が分からなかったりしません?)』
「其処ら辺に関しましてはご心配なく。
後で貴方に纏めて頂いたものを提出してもらいますし、
万が一不備があったとしたら直接彼等を呼び出しますので。」
『ほんと私が嫌がることするよね。貴方って。』
「っ!?!?」
「おや、そうですか?」
『そうだよ。…僕他の人が呼ばれるの嫌なの分かってる癖してよくやるよ。』
「ふふ、そうでしょうかねえ?」
そうだよ!
『前みたいにわちゃわちゃしてお話しちゃったら、駄目だよ。』
「それは何故?」
『だって…さわあ達のこと忘れちゃう。』
「…我々とお話をすれば、忘れてしまう程の者達だったと?」
『ううん。そんなことない。そんなことないよ。』
でも、全部好きになっちゃったら、可哀想でしょう?
『だって私は、ずっと待ってくれてたあの子達に
待ってくれた分をお返し出来てないもの。
…出来ずに、置いてかれちゃったもの。』
「エフェメラル様……」
『会いたくなっちゃう…寂しくて、怖くて、申し訳なくなっちゃうから。』
此処にいるのに。貴方達は、私を知らないだけで。
『そんなの、貴方達が可哀想だから。あの時間はあの時間で、終わらせなきゃ、手折らなければ、いけないのに。』
私は出来ない。だって私は弱いもの。
あの時間にずっと溺れ続けたいと、本気で思ってしまっているのだから。
会いたい。会って、触れて、笑い続けていたいのに、そんなこと、出来ないのだ。
『もう出来ない。だって、一番は、何処にも存在しないから。』
「…もし一番が戻ったら?」
「ウイスさん」
「もし貴方が望む彼が、貴方の元に戻ったとしたら、貴方はどうするのですか?」
『それでも私はその手を取らないよ?』
「何故」
『もう時効だから。』
あの時間を過ぎた、あの眠りについた時で、もう、終わっている。
私は進んでいないのだ。あの時間から、ずっと置いてってる。
何時か彼等が私を思い出した時、同じ様に触れられるように。
寂しい思いを、しないように。ずっとそのままにしているのだ。
『全部進めちゃったら、私と見てくれないのが怖いし、
それに遠い存在になったら余計に悲しいでしょう?』
「悲しい?」
『だって近くにいるのに遠いんだよ?
そんなの、置いて行かれるのよりも、辛いことだろうから。
だから寂しい思いをしない為に、私はこのままを維持し続けてあげたい。』
「…お優しいのですね。記憶を持っていた
かつての私が心底羨ましいですよ。」
そう?
ええ。
「頑なに喋らないと誓っていた貴方の意志を軽々とぶち壊して
こうしてお話をお聞かせしてもらえているのですから。」
「それ程我々は貴方に愛されていたということですよねぇ。」
『…あ』
「今更テレパシーなど使っても無駄ですよ。なんなら無視しますよ。」
ひどい。
『むぅ。』
「ふっ、ふふふふ」
『すぴすのばーか』
「照れ隠しに人を貶す癖、何とかなさい。」
『やっ!!!!』
そういう処は幼いんですからと言う大神官にメルは首を横に振って否定する。