少しずつ消えてゆく光




前回のあらすじ

色々あった。


「いや端折り過ぎでしょうが。もう少し何か纏めるとか考えたらどうですか。」
『あいだっ』

ちょ、何も杖で殴らなくてもいいじゃん!!!
お黙りなさい。

「貴方という方はちょっと目を放せば気を抜くんですから。
そういうことをするから痛い目に合うんですよ。特にこの私とかにねぇ?」
『ひえ』

現在テスト終わり、午後2時半過ぎ。
反省会という名の猛省会を開催されておりました。
勿論マティーヌさん率いる3名の天使らとの戦闘後日談です。

『…いや、スイッチ入れば一応動けるんだよ一応は』
「確かにスイッチが入れば、の話しですね。
そのスイッチは一体誰が何時入れるつもりなんですか?」
『うっ』
「天使が使う身勝手の極意ですら無意識下で行うというのに
貴方が扱うソレは我々の上位互換と言っても過言では無い筈。」

なのに肝心な時程使わないとは、宝の持ち腐れと言えばいい方でしょうか?
うっうっうっうっ……!!!!!

「まぁ昔よりかは格段に動きは良くなりましたよ。まぁ昔よりかは。」
「なんだか一々棘がありますね…」
「カンパーリさん、余り彼女を甘やかさないで貰いたい。」
『コルン様こけちゃうもんね』
「…貴方が、貴方が私を……貴方が!!私を!!!
こかしに、くるんでしょうが!!」

いだいいだいいだあだだだだだだだ

そう何度も繰り返して言う様に言いながらもメルの頭を
ぐりぐりと痛めつけるコルンにメルも流石に悲鳴を上げる。

止めに入ったのはマティーヌさんで、
まぁまぁと穏やかな声に涙目のメルがマティーヌさんの胸の中に
ぎゅっと入って閉じこもってしまった。顔はもう胸いっぱいである。

おっぱいはいいぞ。最強だぞ。

「下品な言葉を思い浮かべないのです。
全く失礼極まりないと言ったらありゃしない。」
『何故分かるかなぁ……』
「貴方の考えていることくらい手の取る様に分かります。
あと分かるなら思わないで頂きたい。失礼でしょうが。」
『じゃあ何考えてたか言える?』
「…私にあのような下品な言葉を口頭でこの場で言えと。」
『…なんかすいません。』
「分かればよろしい。」

それにしてもあのような動きをなさるとは意外でした。
そう言ったのは第一宇宙の破壊神イワンに仕える天使であるアワモだ。
恰幅が良く、くせっ毛が特徴的な彼は温厚さと崇高な精神を持ち合わせ、
すべてを見通すことができると言われているのだが…

「まさか背後を取りに来たと思いきや全く違う方から叩き落していくとは。」
『まぁ無難な線からしてマティーヌさんを先に落とすと来るだろうから
次にカンパーリさんかアワモさんのどちらかに寄るんですがね。』

個人的にはアワモさんを先に落とす方が良かったのかなあと反省してます。
おや、私はそう思いませんでしたがね

『え?』
「其処に関しては良い線いったなとは思いましたよ。」
「甘やかさないでと仰ってたのでは」
「飴と鞭ですよ。良いところは上げておかないと
泣きべそかいてお兄様のご迷惑にならない様にしなければなりませんので。」
「そういえば此間泣いて縋り付いて騒いでおられましたが…ひょっとして?」
「…ご想像にお任せします。それで、話を戻しますが
其処ら辺に関しては良い線だと思いましたよ。」

寧ろアワモさんの能力的に
貴方との相性が悪すぎるので避ける方が宜しいかと。
嗚呼〜〜やっぱりそうか?

『アワモさん先を見通すからなぁ…
私の瞬発の勢いと相性悪すぎるんだよな。』
「気付いていたのですか?」
『ん?嗚呼、全てを見通すことに関しては知ってたよ?
まぁそれを利用して敢えてシナリオ通りに動いて
最後の方意味わからない動きして隙を突く方向で
路線変えようとして失敗したのがこの様だがなあ〜〜。』

そう言いながらメルは自身の身体をうにょうにょと
うねらせて身体を左右に動かし絡まった蔦から脱出しようともがいていた。


そう、アワモ達を捕獲して誰かにぶつけて纏めて一掃しようとしたのだが
まさかの自分に入ってミイラ取りがミイラになってしまった現状であるのだ。


ははは、笑っておくれ。特に観戦してた組達よ…。


何だかんだ言って気になって全員が
この華樹の樹の前で観戦してくれていたのだ。

因みに私は未だ解けずにコルン様の真下で
うねうねしています。だれかたすけてちょ……。

「身勝手の極意を無理に使おうと横着したからですよ。
それにしても黄金の草花を冠にしようとしたのは驚きました。」
「あの状態は一体なんだったのですか?」

『理由としましては至極簡単なことなんですがねぇ…。
単純に無意識で危機を避けながら
周囲の者達の意識を阻害し続ける力を
自分から広範囲ではなくて単体ごとに
振り分けられないかなって思ってやったことです。』

「嗚呼アレは広範囲から特定の人間のみに絞っていたのですか。」
「それにしては気のばらつきが激しすぎますし、
外に見破られておりましたねえ?」

うぐ。

「加えてまだまだ手足の動きも迷いがあります。
誰かに気付かれたらどうしよう?
なーんて気が見え隠れどころかオープンもいい処でしたし?」
『うぐうぐ』
「おまけに背後を取られ、何度かカンパーリさんに
捕縛掛けられていましたからねえ。」
『あ、あれは!!…えっと、その…』
「なんです?まさかこの期に及んでワザと、
だなんて仰るんじゃないでしょうねぇ…????」
『ひえ』
「…ほんと飴と鞭が過ぎますね。」
「ええ、鞭が多そうな気がしますが、大丈夫なんでしょうか?」

大丈夫ですよ。そのまま温かく見守って差し上げておきなさい。
そう言ったのは心配そうに話しをしていた
マティーヌさんとカンパーリさんの間に入って来たサワアだった。

それはまたどうして?とアワモが心配そうに声を掛ける。
がみがみと言われている間、メルはミノムシの様に真っすぐな身体を
しょげて頭を地面に落とし動かなくなっていたのを
とても心配そうにしてやり過ぎでは、とサワアに少し抗議の異を述べた。

「何度も危機的状況下に陥っていて
未だに自力で難関を突破出来ていませんからね。
あれくらい言われて当然という者です。」
「いやだとしても…」
「自分達全員で戦っても勝てないと瞬時に分かった
此方の落ち度があったとしても、ですか?」
「っ、」
「別に構いませんよ。あれくらい初対面で動けば当然のことですし。」

私とて嗚呼やられたら割と一瞬迷いますからね。

「次の一手が見えない以上手を出すのは
避けた方が良いですから。
貴方達の判断は至って正常ですよ。
寧ろアレの質が悪いのがいけないんですからねえ。」

『ねぇ待って飴と鞭どころか茨と鞭と時々ニードルなんだけど。』
「誰が晴れのち曇り時々雨みたいな言い回しをしろと仰ったんですか。」

話しはまだ終わっていませんよ…???????
ひえっ

そう半泣き状態のメルに対してちゃっかり
片膝を地面についてじとり睨んで言うコルンに
精一杯の汗が身体からぶわりと滝の様に流れ出た
メルを放置しようと決めたサワアはというと。

何だかんだ言って愛されていますよねぇ
と言って来たウイスの方にサワアは目を向けた。

「おや、分かります?」
「ええ。そりゃあもう充分に……ねぇ?」
「あれ程生き生きとしたお兄様を見るのは初めてかと。」
「前々からあんな感じでよくご指導されていましたよ。」
「…コニックさんそれは本当で?」

そう聞いたアワモに本当でとコニックがちらり彼を見て答える。

「今回は少々度が過ぎそうな気はしますが…
まぁテスト前後はピリピリしていますからね、お互い。」
「コルンお兄様はさておいて、メル様もですか?」
「ええ。」
「そんな素振り何処も見えませんが…」
「…いいえ?割とぴりついてますよ。
普段は割と温厚な様に見せかけて
はしゃいでいますがアレはダミーですし。」

余裕があるからこそ、色々仮面を被れるというもの。

「対してテスト前後はそんな化けの皮が
剝がれるかのように顔つきが変わりますからねえ。
真顔といいますか、なんといいますか。」
「どちらが本性なので?」
「どちらも、と言いたいところですがね。
恐らく真顔の方が本性でしょうね。
それを見せたくないからこそはしゃいでいるんでしょうし。」

まああんな真顔しょっちゅうみたいかと言われたら
見たくないというのが事実ではありますし。

割と笑われている方がイメージありますからねえ。

そうこう話していると説教がどうやら終わって
本格的に落ち込み始めたメルを見かねたサワアは
其処までにしてやって下さいとコルンに声を掛けにいった。

++++++++++

『(…別に試しにやることは出来るんだよな)』

脳内だけであれば自由に動くことが出来るのは皆同じ。
問題はそれを現実に落とすことだ。データを落とすのと同じ。
セットアップさえ出来ればいけるのだ。それをずっと止めている。

怖いんだ。アノ時の状態と同じ様になると、戻れない気がして怖くなる。

血の匂い、湧き上がる何かを悟る自分。その何かに溺れ続けたい欲情。
全て自分が変わる感じがして、後戻りできないところまで行く気がして怖い。
…嗚呼でも、別にいいのかもしれない。

やるだけやってみるか、後で怒られるかもしれないが。

『…コルン様まって』
「なんです?」
『大神官様』

なんでしょうそう言ってきてくれた彼に一つ声を掛けた。

『今天使ら全員本気で戦闘しても消滅しないって断言できる?』
「それは彼等と貴方で、ということですよね?」
『』
「無言は肯定ととりますよ?…一応可能ですよ。時間は戻せませんがね。」
「…大神官様それは本当ですか?」
「ええ。その杖に時間の巻き戻し等不可能です。
回復も今までよりかなり制限されていますし、
出来るだけ戦闘は避け続けた方が無難かと。」

そこで、試したいことがあるとメルが提案してきたのだ。

『コルン様とコニックさん…後は、そうだな
……後一人はそっちで決めて良いよ。』
「再試合等珍しいこともあるのですね。」
『試したいことがあってね。』

戻れないかもしれないけど。

「…今日はやめておきましょう。」
「コルンさん…」
「万が一貴方が私らを傷つけた時の修復が難しそうですからね。」
『負けるのが怖いんだ?』
「…なんですって?」

ぎょろりと落ちてきた視線の圧が怖くて、思わず笑いが込みあがって来た。
嗚呼、楽しい。怒らせるのが、楽しいと思ってきている。
エラーを吐いても吐くだけで、直すなんて出来ない。しないんだ。

『聞こえなかった?意外と弱いと思ってた兄の幼馴染が強いなんて思いたくないんだって』
「…余り調子に乗ると後で痛い目にあいますよ。」
『それはこっちのセリフだよ』
「……いいでしょう。どうやらきつい灸を添えた方が良さそうです。」

なら此方も本気でそう言ったコルンにそっと入って、その場に残った者はというと


「組手等久しぶりですね。お手柔らかにお願いします。」
『(まぁ妥当な線でサワア連れてくるよな)』

そりゃそうか。戦闘的には劣るかもしれないが、術というか技が多い彼を出してくるのは良いと思う。
一瞬ウイスさんかモヒイトさん出して来たらちょっと怖いなと思ったけど、これならいい。

『私もほんと悪い子になったもんだなぁ〜』
「何呑気な話をしているんですか。」
『戻れない癖して、何戻ろうと思ってるんだろうね?』
「……エフェメラル様?」

手を握ったり緩めたり、身体を動かして筋肉を伸ばして縮めて動きを再確認しつつぼやく。


『そうだよ、私。全部戻るなんて烏滸がましいにも程があるよ。』
「…余り考えさせない方が良さそうですね。」
「っコルンさん!?」

瞬でメルの背後に入り攻撃をしようと手で首を狙った時だった。
確かにねらったし、直撃したであろうに、何時もなら倒れるはずなのに。

「っな!?ぐ」
「コルンさん!!!!」
『ねぇ、寒いんだ。』
「…コニックさん、本気で戦って下さいね。」
「え?」
「私は先に行きます。」

彼女が寒いだなんて言う訳がない。目の色が違うことに気付いたサワアは目の色を変えて彼女の前に入って下から攻撃を入れてみる。自動で身体を動かしているのか、はたまた身勝手の極意を瞬時に使ってやっているのか。

いずれにせよ余り宜しくない状態ではあることは確かで。

「人選、ミスりま、したね…!!」
「策にハマったとでも?」
『喋る暇あるなら手足動かせば?』
「っぐ」
『遅いね?笑っちゃう暇あるよ。』

コルンの腕の中をすり抜けて背後に蹴りを入れた上に
手から操作してサワアの身体をツタで拘束し続ける。

『エラーなんて吐かなくていい、だって戻らなくていいんだから。』
「っ!!!メル!!」
『貴方が言ったんだよ?コレを理解してって。』
「違います、その感情を制御しろと言ったんですよ…!!!」

座った目を睨みつけても全く意味がない。
せめて怯えひるんでくれたらその隙に色々手が打てるというのに
こうなったら何をしても集中を欠かないと終わらなくなってしまった。

『戻らなくていいんだよ。だって戻れないものなんだから。』

貴方に会いたい。会えない。もう、その中でしか、生きれない。
夢を見せて。綺麗な時間の中だけ。きれいな、じかん。

『…嘘つき』

貴方が迎えに来るなんて、そんなの無かったくせに。

腹の奥底が渦巻くその感情を使って
彼等の動きを避けては受け止め流してを繰り返す。
先程よりかは断然にこっちの方がやりやすい。
冷静に彼等の動きを分析しながらこっちも動ける。

焦ってるのが目に見えて分かる。
だってこんなことしたこと無かったもんね。
人が嫌がる視界外からの動きを
不定期に繰り出しつつ蔦を生やして動きを少しだけ止める。
種なんて触れなくても至近距離にさえいれば
すぐに植え付けられるもの。

自在にこっちが動かせる。
首を折って殺すことなんて造作もない。
でも、しない。それは、してはいけないから。
自分が殺すなんてしてはいけない?


『もうしてるのに?血の匂いは残ってるのに。』
「メル」
『だめだよ。汚れちゃう。』
「汚れませんよ。それに汚れたらまた洗い流してしまえばいい。」

いつの間に抱きしめてくれていたんだろう。
背中からの体温が温かい。
うつらうつらと落ちる頭をそっと撫でた後
メルの身体を優しく包んで言う。

「おやすみなさい」

そう言ったサワアの言葉に、メルはそっと目を閉じた。
すやすやと寝息を立て始めればもうおしまいだ。

どっと疲れを感じた二人に対してお疲れ様ですと
労いの言葉を掛けたのは部屋に戻ってきた大神官からだった。

サワアはメルの身体をそのまま抱きかかえ、
地面に腰を掛け胸元にもたれさせ寝かせつけている。
少し身体を後ろにし、椅子の背もたれ役になっていて
少々行儀が悪いが、今回に限り許して貰いたいと思う。

下手に動いてまた同じ様になったら
今度こそ緊張感たっぷりの戦闘モードに
突入してしまいかねなかったからだ。

流石に其処迄行儀の悪いとは言えど、言うものはない。
大神官は困ったようにサワアに声を掛けた。

「それにしても、日に日にお強くなられますねえ?」
「…ほんと足元にも及ばなくなった時が怖いですよ。」
「おや、そんなつもりがおありと?」
「…いいえ、これっぽっちも。」

彼女が強くなるならば、自分らが強くなってしまえばいい。
そう、ただ、それだけのことだ。

「貴方が不安がることなど、何一つないのですからね。」
「…お兄様」
「寒いならば温めてあげましょう。
怖いならその恐怖を拭い去ってしまいましょう。」

不安も痛みも無くなってしまえばいい。
そうして何一つとして残らなくなったその時、
自分だけを見つめて笑ってくれていれば、それでいい。

優しい陽だまりの中で、穏やかに。
それだけの、ことだというのに。
どうして此処まで難しくしてしまうのか、
本当にわかりかねてため息が止まらないものだ。

「手に取るところにあるというのに…貴方は手に取らない。まるでそれは、自分のものではない他者にある為だと言い聞かせるように。」
「自分のものだと知ったとしても、それでもこの子は取らないのですかね。」
「ええ。きっと…取るつもり等、さらさらないのでしょう。」

そうでもなければこんな近くにあるというのに手を取らない訳もない。
きっと怖いのだろう。自分が変わってしまうのが。

何時か来た時の、最悪に耐えられなくなる、その瞬間が。

「今まで何度も至難を乗り越えてきたのです。…今回も乗り越えますよ。」

乗り越えさせて、みせるものですよ。

「私とずっと。一緒に居てくれるのでしょう?」

ねぇ、優しい優しい、儚い子。

「どうか、ひと時の。夢幻を見せて下さい。」

そうだ。目覚めたら、花冠を作って差し上げましょう。
貴方の大好きな陽だまりの木下で。どんな花が宜しいでしょうか?
赤色?貴方の髪色にはとても生えそうな綺麗な色ですね。
青色?貴方の目色に合わせた綺麗な色ですね。
緑色?貴方の力に合わせた、とても優しい綺麗な色ですね。

嗚呼それとも

「僕の色で染め上げてしまいましょうか?」

黄色に光り輝く、綺麗な優しい、小さなお花。

片喰に戻ってくる、優しいお子。

「貴方の望む、その日まで。」

僕はずっと、此処で待ち続けて差し上げましょう。