水の満ちたティーカップ






「…楽譜、ですか。」
『名前の無い楽譜に名を付けた時、その時こそ曲を生成した人物
即ち作曲者となり、その者が力を使えばどんなことでも不可能が可能になる。』
「付け加えが出来るとなれば、まぁ話は分かりますが…」
「貴方がその権利になり得ると?」
『其処ら辺は試験的な部分をしてみないと分からないけどね。』

試験的?

「何か当てがあるので」
『一応は。楽譜を書き換えるということは一度消しているということか
そもそも楽譜自体を別に書き換えているかの二択になるんですが。』

君らがどの位置に居るかによって話が変わってくる。
我々が?

『楽譜は全部で12音の構成。
正確には8音だったりするけどそこは割愛。
通常のト音記号即ちある音の下にはヘ音記号も存在する。
貴方達がヘ音記号で外の人間がト音記号の譜面に生きているとなれば』
「一つに戻るのもまた同じだと。」

そういうことだ。

「ですがもし仮にそれが正しいとして、他の華神らはどう説明をするのですか。」
『華神らが楽器演奏者その者だとしたら…とかも考えたけど
楽譜に記されるのはあくまでも作成者のみが使えるとしたら?』
「では、我々天使らの楽譜と、貴方達華神らの楽譜は別物だと。」

その可能性は十分にあり得る。

『いずれにせよ不明確な点が多すぎる。
だからしあーじゅが言ってた言葉を調べる為にも
ソレを出してきたわけなのではよかせ。
戻せ。こんちくしょう。』
「っと、それが人に頼む態度ですか。」
『返して下さいお願いします。』
「…貴方本当にプライドがあるのか
ないのかはっきりしませんよね。」

はいどうぞ。

『っしゃ!!!』

そう本をポンと手渡されたメルは急いでサワアの身体から外れ
その本にかじりつく様に身体を前のめりにしてページを開く。

ペラペラとめくっていくと、一つの言葉に辿り着いてその文字に手を触れた。



シンフォニア

「シンフォニア、ですか。」
「なんですかその文字は」
『ギリシア語の一緒にと音が語源となってるイタリア語の言葉だよ。
元来は漠然と合奏曲を意味する言葉であるけどね。
バロック音楽の分野においては声楽作品中に挿入された
合奏曲を指す用語として用いて』
「ちょちょちょちょ、ちょっとお待ちください。情報量が多すぎます。」

そう止めを入れられてなんだよと不貞腐れるメル。
もうピンピンしているが、この子これでも今戦えば
そんじゃそこらの戦っていない人間と同然の戦闘力である。

そんな状態で天すらも見えない程に位置するコルンらと
たわいもない様に話す度胸は恐らくこの宇宙隅々まで探しても
彼女くらいしかいないであろう、とは思う。例外は除きたい。
特に第七と第六近辺のサイヤ人に関しては、だ。

「ぎりしあだの、いたりあだのなんですか。」
『私が生きていた筈の1番目の言語だよ。』
「貴方覚えているんですか。」
『覚えているんじゃなくて図書館が記しているんだよ。
驚くことに何故か図書館の言語は生きているからね。』
「…あの纏めた本と貴方の記憶だけが消えていると。」
『それかあの図書館自体に何かしらの術が使われているか。』

其処ら辺も気になるから調べたいけど君らの目が怖くてね。
嗚呼だから夜中にコソコソしていたんですか。

「そうと仰ってくれればご協力したのに。」
『こういうのは公にすると記される可能性しかないからさ。
まぁ現在進行形で記されているだろうからもう手は使えないが。』

奇跡を起こさせる光をねじ伏せてるんだよ君ら。分かってる?
…いやそんなこと言ってもですね。

「貴方の所業を数えたらこれしきされること当然だとお判りでしょうが。」
『いやまあそうだけれども。』
「話が進みません。続きをどうぞ。」
『……それで、だ。言語を解読してたら大体の意味がギリシア言語というのが分かった。
ならギリシア言語に近しく、尚且つ私が望みそうな構成で、今まで出てきた華神らを纏めて一つの仮説が今浮かび上がってしまった。』
「まさかそれがこの交響曲という言葉ですか?」

交響曲シンフォニー

『そうだよ。これはシンフォニアと同語源であるが、
バロック音楽まぁつまりは古い古の音楽では
声楽つまり声だけの音楽作品中に挿入された合奏曲を
指すだけの用語として用いていた。』

まぁ言語の違いってだけ。ありがとうとあざっすの違いくらいだ。
同じありがとうだけど少し訛ってるそんな感じ。

話を戻すが、この交響曲。序曲のみを独立させ、
演奏会用に演奏したのが起源とされているらしい。
管弦楽によって演奏される多楽章構成の大規模な楽曲。
それが交響曲であるのだ。

『原則として4つ程度の楽章によって構成されている。』
「原則、て…っまさか!!!」
『私が早咲き、つまり私が指揮者の立場として先に演奏を続けていたら?』
「…成程、別の誰かが作った曲を貴方が演奏していたから
彼女達とも多少なりとも交流が出来た。」

そうでなければ説明が出来ない。

『楽譜を作るということは作曲者。即ち指揮者とは違う立ち位置に入る。
音は同じ音でも形は作曲者によって変化する。同じドでも違うドになる。
楽譜がそもそも違うから。場所自体が違うから。
だから忘れるのではなく、知らないことになる。』
「…よく、考えましたね。」

華神及び加護天使らはト音記号とヘ音記号の音自体になり、
その和音構成自体を理らが導き束ねる。

華樹神や華樹神官は譜面の五線譜であるものだろう。
華樹神が華神の位置にあるト音記号に位置すれば
華樹神官は加護天使らの位置にあるヘ音記号の五線譜。

シャープやフラット、ナチュラルは
互いに協力してタッグを組んだ状態であることだろうし、
和音が構成されて力を発揮し、威力を倍増させていたのは
和音自体の組み合わせだからこそ。

変に構成すれば不協和音と化し、力も半減どころか
絶望的に変わっていた話もどこかで聞いたことがある。
勿論音楽に用いて話しをしていなかったことではあるが、だ。

『問題は理が音楽そのもののルールになっているのか
それとも作成者という楽譜を作り出す創造主であるかの違い。』
「それとこれとでどう違うのですか?」
『書き換えが可能かどうかに寄るんだよ。
願いが叶うという点でも妙におかしい。』

ひとつだけ願いが叶えられるとしてもだ。
華神らの願いには許可が出ない。
それは音が音を励ますこと自体無意味だから?

ならばもし理が音楽そのもののルールであれば
理が願うものが、音楽そのものであれば、願いは叶わない。

『即ち理その者をひっくり返したり、華樹自体を変えようなんぞ、
そもそも叶えられるわけが無くなって来るんだよ。』
「…流石に考え過ぎでは。」
『じゃあどう説明するの。この状況下を。』

幾ら何でも、出来上がり過ぎている。考えれば考える程、だ。
まるで私こそが、作曲者その者かの様に思わせてくる。

『本も異常だった。数が変わって行くのは、あれは楽章だとすれば?』
「だとしたら終焉が出た時点で4という数字が出てきた筈。
貴方が見えていたのは1だったのでは?」

そうなのだ。だからこそ、其処ら辺もおかしな話ではある。

「…それが、ルメリア様の勘違いだったらどうなんでしょうか。」
「コルンさん?というと?」
「いや、ですから、文字自体を間違えていたら、ですよ。
例えば4だと思っていたのが実は1だった、とか。」
「いやそんなまさか、ドジをするなんてありえ………るんですね。」
「………やりかねませんね、彼女なら。」
『ありえますね、かかさまなら。』

はぁと下を向いてため息を吐いて項垂れるサワアと同じく
メルもため息を吐いて項垂れていた。強いて違う点と言えば
メル自体顔は上に向いていたが。

『原則として4つ程度の楽章に分かれている交響曲。
まぁそのうちの少なくとも一つの楽章が
ソナタ形式であることが定義であるが、
序曲を除けば4どころか何楽章も書けるし、
特に近現代では例外も多い。その為場所に寄るけど
最近はなんでもありとも言われたりしてなくもない。』


序曲(前奏)としてのものが代表的だが、
場面の切り替わりに奏されるような間奏も含まれる。
これがのちには次第に長大化して独立し、
古典派音楽に至り、交響曲へと発展した経緯ではあるのだが…。

まぁそんなくそ面倒なことを考えても
意味があるはあるが、気にしなくていいだろう。


『理が指揮者、或いは作成者その者であれば。
華神らを手に取る様に自在に扱いその楽譜を完成させることが出来る。
完成させた処自体が、各理の持ち場である3つの移転自体だとすれば…』

完成させたとして、一体、何が起きる?

華神らの力の根源は、恐らく音によるもの。
その音の根源が誰かが担っている。
違う、音の根源自体が、ルールであるならば?

理がルールの基盤そのものであれば。
華樹神や華神らに手を出す訳にもいかなければ
そもそも楽譜上のルールなだけで、介入など不可能。

ルールであるだけなのだ。介入もくそもなにもない。



では、華樹と、その泉は?



落ちた場所に、ぞわりと身震いがした。


「メルさん?」
『……作曲者は、何故か交響曲を書いてる途中で
死んでたりするし、結構悲惨な結末を遂げたりしてる。』
「貴方もそうなる可能性が高いと?」

いや、でも流石にそれは、考え過ぎ、か。

『(まだ華樹から産まれたかどうかも決定打に欠ける。
…仮に彼女から聞いてどうこうなるというものでもない。)』

作曲者として、指揮者としても、楽譜を持つ者であるならば。
では理が何故3つに分かれているのか説明が出来ない。

和音であるならもう少し理の人数が増えているべきだろう。
一人だけで、今回ある意味異例の3名が一つになろうとしている。



華樹が音で、泉が人で、その狭間に位置する者が、演奏者という位置ならば?


『…だから音に狂ったのか。あの子も私もあの子達も。』
「メル様?」
『楽譜を書かなかったのは気を吸い取られる可能性があると本能で察知したから。
本自体記入して力も吸われるんだから尚更取られることを考慮すれば避けるも同然。』

狂い咲きはそれ即ち演奏者ではなく、元々音の先導者。
音の枠組みの中に位置していた自分が、外に出て来てしまった。
…いや、逆か。外に居る自分が中に入ったことで譜面が書き換わってしまったのか。

だから外せば元通りになる。

居ないことで、全てが、平和に落ち着いてしまうと。

華神らを受取りに行くということは、書き換わっていく譜面を正す行為?

『この杖が、タクトになる日が、来るとすれば…それは。』
「メル」
『…』
「もう疲れたでしょう?寝ましょうか。」

どうせなら、一緒に。
…いいの?

「まぁ仕置きの後ということなら皆も納得しますでしょうし。」
「…もう遅いですからね。いい加減にしないと明日がきついですから。」

時刻は二時半を過ぎようとしていた。

メルはそう言われるがまま本を渡し、そのまま眠ることに決めたのだった。



++++++++++


翌日、から更に時間が流れたとある日のこと。


2年と3か月というとんでもなく短いスパンに変わっていて
気になって廻廊に戻って時間を見たその数に、
開いた口が塞がらずに固まっていたメルがいた。


『……いやまじか。』

マジですね。

「…いよいよ分からなくなりましたね。予想が外れましたか。」
『27年じゃなかったのか。いやめっちゃ短いね???』
「すぐにでも準備をしておいた方が良さそうですね。」
『そうだね。次は誰が来てくれるの?』
「一応ヴァドスさんとウイスさんが付き添いに向かう予定ですよ。」

次は第6……あの子の、時間か。
ニコリと微笑んでくれていた、彼女のことすらも
私は知らなくなってしまうのかと思うと、少し寂しいが。

せめて、指揮者であれば…私は彼女のことを覚えていただろうが
それは違うのだ。指揮者であれば、その楽譜を演奏してやることしかできない。
誰かに伝えることしかできない。その楽譜の音を救うなんてことは不可能で。

果たしてそうだろうかと思った一瞬の感情なんて

私は見ないふりをした。

「とにかく鍛錬は少し練度を高めることに致しましょう。
今後は夜分に奇襲される可能性を考慮して対策を練ります。」
『よろしくお願いします。』
「ひとまず準備が出来次第修練場に来ていただけますか。」
『わかりました。衣服を着替えて色々準備してきます。』

こういう時は早めに準備をしておいた方がいい。
というのも、だ。何を準備するかというと
杖の中身を整理整頓するというものがですね。

よく私は気になったら荷物を持ち帰っているので
保管場所から捨てる処分からに時間が掛かるんですよ。
まぁこれもそれも、元の場所に戻れたら話は終わるんですが…。

今まで会ってきた者達のことなんて分からない上に
書き記していた本の中身まで消えたら人伝えで聞くしかない。
それでも何を言っているのか正直分からない
例えていうなら新しい言語を知る外人みたいなノリなのだ。

なので覚え直しをするくらいなら、聞かない方がマシというもの。

…それに、何故か知らないが、心が酷く痛くなるのだ。
まるで、それ以上知るなと、言われているような気がしてならないから。

だから私は彼等に聞かないし、彼等も私にそれ以上教えてやらないのだ。


『…ひとまず荷物の準備は出来た。』

一応簡易の衣類一式と洗面用具やらの旅行用品は新品に変えた。
杖の内部に空きは沢山あるから変な話腐る程詰めても問題はない。
衣服自体は今まで通り、大神官様に仕えている衣服に身を包む。

恐らく白い衣服は別の枠組みに入る為の正装だと思えばいい。
自分の衣服が此方側であれば、尚の事この状態を維持した方が
力の引き出し加減も正直言えば段違いではあるのだから。

『とりあえず杖は閉まって、いい、かな。』

準備が出来次第向こうにとコルンは言っていた。
下手すれば此処に戻ってくるのも、暫くないかもしれない。

此処には多くの想い出が詰まっている。
この場所が、どうか、誰にも忘れ去られることの無いように、
なって欲しいものだが…きっとそうは、いかないだろうな。

名残惜しくて、ただ上がるわけでもないのに
階段の手すりにそっと手を掛け撫でてみる。

冷たくて気持ちいい。

ただ頭の中はそれだけが浮かび上がって、
消えて溶け無くなってしまった。

まるでコップの中にいれた、水に浮かぶ泡が
消えるかのように、一瞬の出来事。

『いこう』

この廻廊を早く、終わらせる為にも。
アンコールは、一曲しか、演奏出来ないならば。


++++++++++

『お待たせしました。』
「随分遅かったですね。」
『…色々手間取りまして。』

そう言いながら修練場にやってきたメルの前には
コルンだけでなく他の面々も集まっていた。

『………とりあえず暴力反対なんですが。』
「流石に手出しさせる訳がないでしょう。」
「と言うかこの状態で下手に破壊したら死ぬだろ。」
『ん?』
「ん?」
『…う、ういて、る?』

メルが漸く気付いたのか、身体を固めて片言になる。
それにふわふわと浮いていた狐が何だと声を掛けて近づいた。

「コルン、お前言ってなかったのか?」
「ええ、言う事でもありませんか」
『きいいいいやあああああしゃべったああああああああ!!!!!!』


ごつんと鈍い音がしてメルが
倒れ込みそうになるくらいには
その場にしゃがんで悶えること数十秒。

『なっいたいが!?!?!?なんで殴られるの!!!!!!』
「お黙りなさい!!!誰が甲高い声を出せと申したのです!!!」
『誰も言っておりませんがどう考えても驚くでしょうがこんなの来たらさ!!!!』
「だからと言って其処迄慌てるものでもないでしょうが!!!
貴方からしたら猫や狐が喋っている時点で頭がおかしい話でしょう!?!?」
「待ってサラッと僕達貶されてない?」
「言うな。」

だからと言ってだねと喧嘩に発展するメルとコルンを見つめる
人形である形は保つビルスが項垂れる様にため息を吐いた。
その隣にそっとリキールがふよふよと浮かびながらも退散してくる。

もう一通り喧嘩させて頭を冷やさせた方が良いと思ったのだろうか
それとも巻き添えを喰らえばひとたまりもないと思ったのか。
…恐らく後者だろうな、我が弟と幼馴染ながら申し訳ないと
サワアは傍から見てため息交じりにすみませんとリキールに謝る。

「うちの子達がご面倒をお掛けしております。」
「嗚呼いや、いいよ…別に、うん。」
「それにしてもあんなに仲悪かったっけ?」
「いえ、至って良好ですよ。特にメルさんの方が
言い出すようになったために
嗚呼なっていると言うべきでしょうねぇ〜。」
「口出ししなくて良いことを言いますからね、彼女。」
「昔からなのか?」
「ええ、割と昔からですよ?と言っても、幼い頃くらいだったのと
私と遊んでいる時に時々口喧嘩するくらいだったと思いますが。」

クスお姉様の時はどうされて?
基本的に頷くしかされていませんよ。

「寧ろあれ程キャンキャン話すなんて私は初めてみる気分ですよ。」
「毎度毎度見ているではないですか。」
「最初のあの子を見ていたら分かる話です。
幼い子を面倒見たことがおありなら猶更。」
「………嗚呼、何となく言いたいことは分かりました。」

前にメルがサワアを巻き込み身体処か心まで幼く戻ってしまった時のことだ。
人自体好き嫌いは殆どないが、サワアや身内が傷付けば泣いて喚く彼女は
自分から意思を前に出すことは基本的に無かったのだ。

それが対サワアであれば話は別だったが
まぁよく言う人見知り、という範囲に入れて当然だろう。

「それにしても喧嘩する程仲が良いとは言うもんじゃなあ?」
「…なんです、こっちを見て。一応喧嘩と言っても
ほぼほぼ彼女が悪いことが主ですからね?」
「ほーそれはどうかな?」
「…人形の状態でどうなるか分かっておられないようで。」

いやいやいや、そう後ろに下がる彼女がそれ以上下がることなどなくて。
その代わり、と言っては何だが。

「…分かりました、分かりましたからソレをおさげ下さい。」
「め、める…お主、」
『……ふんっ!!!』

杖と言う名の矢をサワアに向けて威嚇していたのだ。
ヘレスをそっと片腕で抱きしめ警戒をあらわにしていたメルが
そのまま攻撃を撃ち放てば周りにも被害が及ぶが、
そんなことは知ったこっちゃないメルの感情を汲み取り
サワアは両手を上げてお手上げだ、降参だ、
と意思表示を表しながらその場から数歩下がってやる。

そうするとメルもメルでそっと矢を仕舞い、
気配を元に戻してやった。

『へれす?』
「なんじゃ?」
『ねぇヘレスなの?』
「…お、おう、た、確かにわらわはヘレスじゃが…」

め、める?お主何をしておるのじゃ?

「あっちょ、こら、なにする!!!」
『びるす?ねぇびるすなの????』
「いやどう見ても僕でしょ。」
『じゃあアレりきーるなの。』
「だからそうだといっおい!!!」

そう一人また一人と宙に浮く人形を腕にかき集めていくメルに
文句を言おうとしたビルスだったが、腕の振えを察知して
そんな口を叩くことを忘れてしまった。

『…そっか。』
「っ、」

なんて顔をするようになったんだろう、この子は。

いや、今まで抑え続けていたのだろう。
やっと、この地でそんなこともしなくてよくなった。
ただそれだけ、それだけなのに、どうしてこうも
胸が痛めつけられる思いになるのだろうか。

『……よかった、無事で。』
「…メル、お前」
「今現状外では貴方達の模倣が神を名乗りその地に君臨しております。」
「何だと?」
「俺達の形をか?奴らの仕業と?」
「第12宇宙にいた彼等の仕業かどうかは判明しておりません。
ただほぼほぼ貴方方と同じ力をお持ちということだけは言えるでしょうね。」

と言っても、我々とて天使でしか相対していませんし
色々不明確な点が多すぎて何も言えないに等しいのですがね。

「珍しいな、お前が其処迄言い切るなんて…明日は槍が振るのか?」
「お望みとあらば槍が振るであろう惑星に連れてって差し上げましょうか?」
「いや結構」
「ならよろしい。」