風のない室内
「…そうか、じゃあ改めて自己紹介をする。
アタシの名はアーディル・ト・キフィル。
華神名はサキョワだ。華はサワギキョウと桔梗。
公正なる華神、第6の人間だ。」
彼女の言葉を借りるなら…そうだな。
「原初、第6公正なる華神サキョワ。」
「…そう言うなら、私はシナリス。シナリス・マリオットです。
第8月初めの華神シナリス・マリオット。」
「お前が元カレンデュラか。」
「か?」
いやー本当にアタシのこと知らないんだな?
えっ、え、ええ……???
「私貴方とお知り合いで?」
「まぁ、ちょっと、な。話を止めて悪い、次いくか。」
「…えっと、第10誓いの華神、エリーゼ・レウィシアです。」
「アルカネットです…まだ、華神と言えるものでは、ないので。」
「じゃあ無名だな。第12無名の華神アルカネット。」
いいじゃねぇか。
よ、よくありません!!
「私まだ、皆さんみたいに綺麗なお花咲かせたことないのに
…こんな場所に居て良いんでしょうか。」
「アルカネットさん…」
「少なくともどこぞの誰かさんが選んだんだ。誇って良い。」
「…でも」
「それに、お前みたいなぐずぐずした奴の方が案外素質しかなかったりしてな?」
「え?」
「ちょ、ぐずぐずって言い方もう少しありましたよね…!?」
そう立ち上がるエリーゼに対して良い良いと手を振ってこたえる。
今回集まったのはメルの件についてもだ。現在時間は夜の20時を過ぎそうになる頃。
風呂上りで皆寝る前に人が集まったということで懇親会と言う名の女子会を開催していた。
因みに現在メルはウイス達とおねんね中である。
「それで、本題は?」
「ちょ、シナリスさん冷たいですねぇ???」
「そう言いますけどね、サキョワさん。こうして仲良しごっこをして良いメリットがおありと?」
「ちょ、シナリスさん!?!?」
「ある。」
ほぉと目が細まる彼女に、サキョワは応える。
「この世界は一つの曲調に変えることが出来る。いや正確には曲を作る音が我々の存在その者と言うべきか。」
「…何の話ですか。」
「古い文献を見つけて解読しているんだが、コレをみてくれ。」
「…これ、貸してもらっても!?」
いいと言って手を広げて答えるサキョワに
シナリスが食いつくように見入る。
「この世界は理が管轄しており、理が変わるまで大きく分けて3つに分断されているらしい。」
「3つ?」
「原初、01、02。メルが産まれるのは本来02付近だったが
色々な手違いで01に産まれてしまったと聞いている。」
此間大神官様が言ってたことですよね。
嗚呼そういう奴。
「01には父親であるルトラールが華樹神官を。
母親であるアルメリアという者が華樹神を務め、
この地を統括していたそうだ。」
と言っても、全王様が交代する間だったり
その前の世代を引き継ぐ形には近しいものだったそうだが。
「前から全王様とやらはこの世界を創っては消しを繰り返す。
勿論この宇宙そのものであり、この世界自体を消し去ることは不可能。」
「理はその世界そのものを消し去れると?」
「そう聞いている。そして、その理は華神らから選ばれているというのも、だ。」
正確には、華樹神から、というものではあるが。
「そもそも早咲きしてしまったが故にメルはアルメリアである者の終焉に手を付けている。
その為彼女の管轄に近しい者達を理解し、同時に彼女らもメルを親しんでいた。」
…まぁ、それはすぐに崩壊してしまうものなのだが。
「本格的にメルが開花即ちこれは譜面を書き上げる行為に切り替えた。
此処で華神らの持ち場が大きく変わり、楽譜も大きく変わってしまう。」
「それまずいんじゃ」
「そこで理様のご登場。無事に調整が出来て、ひと段落はしたが…」
「メルが楽譜を書く側に変わってしまったということになるの?」
そうなるだろうなとは、踏んでいる。
「一つの仮説は譜面であるということだ。アタシ達は一音だけを願い続ける。
一音を忘れる即ち願いを忘れたら消えて無くなってしまう。」
「音自体が無くなるから存在が消えるというのは間違っていなさそうね…」
「音を奏で、合わせ、一定の時間繰り替えし続けることで音が音楽になり」
「楽譜自体が完成させられると…?だとしてもウイス様達はどう説明するの?」
そこでだ。
「彼等はそもそも譜面ではないとしたら?」
「…どういうこと?」
「音階自体ってことだよ。低い音も高い音も同じ者。」
「いや、それはない。」
なんだとそう言う彼女に訂正を入れてきたのはエリーゼだ。
「仮にそうだとして、外の彼等をどう説明する?」
「だからト音記号とヘ音記号がだな」
「だとしても、それなら最初から居たということでしょう?」
「うぐ」
「確かに、途中から切り取られたって言ってましたし…」
ほらと言う声に嗚呼じゃあどうだよと荒げる声に
冷静に的確に話を進めていくエリーゼ。
「奏者という点は?」
「…奏者?」
「そうよ。記憶を切り取るそれ即ち楽譜上には居ない存在。」
「……嗚呼、そうか。楽譜から切るんじゃなくて演奏自体を切る方か。」
それなら自在に切って戻してが可能になる。
だが、元々居たものから人間が分裂するか?
「なら楽器は?」
「がっきだ?」
「ほら楽器ならこう抜いたり絞めたりして演奏するものもあるじゃない?」
「…嗚呼調律しつつって感じなら、あるにはあるわね。」
「楽器であり演奏者でもあるっていうなら、人が変わってメルの事を知らないって言っても辻褄あうんじゃない?」
同じリコーダーでも、新しいリコーダーと使っていたリコーダーでは違う。
つまり、彼女が言いたいことは楽器自体は同じだし、似たようなものだが
使用していたものかどうかの違いなだけだと説明したいのだろう。
「まぁ納得するような、しないような…こじつけなような、そうでないような?」
「…仮に楽器だとしても、奏者は誰だ。」
「破壊神とか」
「……悪寒が走ることを言うんじゃない。」
記憶が正しければ、彼等のことを大神官様から脳内で軽くメルの知る範囲程度の情報を共有して知っている彼女ら。
あんなとんでもない奴らが静かに席について演奏する訳もない。まぁ比喩だとしても、意味わからない。
「まぁ天使らは関係ないとして。」
「嗚呼違うんだ。」
「おい」
「ほら、楽譜って名前とかついてるじゃない?こう何々曲とか」
「あーーー
「そうそう!!!理達がどの位置にいるか知らないけど、もし作曲者ならって。」
「…恐らく名付けるならこうだな。」
純環の定理作曲者ヴァイス
交響曲第2番「黎明の調律師」
交響曲は本来4楽章に編成されたもので、
ソナタ形式であるソナタの語源は
「鳴り響く」という意味を持つ
ラテン語のソナーレから来ている。
古い鉄板ものだと第1楽章にソナタ。
第2楽章に変奏曲などの調が第1の近親調。
第3楽章にメヌエット第1と同じ調
第4楽章でソナタかロンド主調か同主調の音が構成されている。
勿論第1楽章は原初。第2楽章は引継。第3楽章は最果て。
第4楽章は終焉がその身を降ろし、演奏を奏でていることだろう。
彼女らの統一された状態は「樹木」
その為木々に由来する言葉が主力になっている筈だが、
此処ではそれをダミーとしていることだろう。
本来の持ち場は「四季」そのもの。
第1楽章「春の
第2楽章「夏の
第3楽章「秋の
第4楽章「冬の
これがエーリンならぬ純環の理ヴァイスの持つ力。
交響曲第2番「黎明の調律師」というものだろう。
コレを出してきて対抗するとあれば…
メルもまた、同じ様に力を使わねばならない。
「交響曲1番は?」
「流石に情報がないから管轄外。」
「じゃあ3番は?」
「…そこら辺メルが入ってるから
彼女と一緒に考えた方が良いだろうな。」
恐らく名を付けたらそれなりのおまけ程度にはなるだろうが
無いよりかはマシ程度の力になってくれると思っている。
嗚呼でも
「そういやメル、メモ取らせたらこんなの描いてたんだった。」
「これは?」
「私の時足を軽く複雑骨折させちゃって。あと捻挫。」
「軽くじゃない。軽くじゃない。」
「その時に書いてた文字なんだけど、私読めなくて。」
これ誰が分かる?
そう手渡した文字は誰も解読が出来ない。
こればかりは天使らの誰かに手渡した方が無難そうだ。
「アタシから渡しても?一応これでも彼等とは仲良く出来そうだし。」
「お願いします。」
「大事に預かる。」
理らもまた、杖を持っていた。
メルの位置する杖が、本来在るべき力を持てば
…もう、こっちも手を出せるというもの。
くすぶっているだけであって、
既にメルの請け負う理の時間になっている筈である。
そうでなければメルが終焉らの人間を忘れる訳もないだろう。
きっと、杖をタクトと変え、指揮とした者に成れば。
彼女らの事も思い出すことだろうし、作曲者としても
私達を動かすことだって造作もなくなることだろう。
そうなれば草花の力なんて軽く使う程に成長もするはず。
それも含め、コルンらに指導されているのは非常に良い傾向ではあると思う。
まるで、全てが其処に到達するように仕組まれたかのような…
「全てはルールに則って」
だから、到達したくなくても、してしまうもの。
解散することもなく、その日は寝てしまい、次の日の朝。
カタカタと食器を仕舞っている姿を見つつ、丁度見かけた者に声を掛けることにした。
「コルン、様、で…あってるよ、な?」
「…ええ、私がコルンですが…サキョワ様ですよね?」
「嗚呼。」
「貴方記憶がおありの様で…」
「例の子だろ?」
ええそう言いながらも食器を片付けるコルンに
手伝うと言って入って来た彼女に良いですと拒否したが
ついでだからと言って無理言って入らせてもらうことにした。
こうでもしないと、きっと話が続かないだろうから。
「それは?」
「嗚呼こっちが本題。後でこの内容を見て貰おうと思って。」
「私にですか?他の子達もいるでしょうに、それまた何故?」
「何となく。」
華樹の勘。そう言って笑ってやれば目をぱちくりとさせて驚いている。
そんな顔をするものだから、こっちも目をぱちくりとさせてしまった。
「っくく、そう、ですか…ええ、分かりました。
後でお目通しさせて頂くことに致しましょう。」
「…………お前、変わったとか言われないか?」
「よく言われます。」
だろうな
「なんです?何かついてますか?」
「…いや、なんでも?それよりも意外だとはおもわんか?」
「何がですか。」
「敵同士だった奴がこんな至近距離で。仲良く食器を洗ってるんだぞ?」
もう少し何か言いたいこと無いのか。
「…いや、今更ですからね。」
「あ?」
「嗚呼いえ、此方の話しです。」
「まさかお前達メルと敵対してたーなんて……えっ待ってマジ?」
その話はちょっと初耳なんだが。
「昔の話ですよ。それも彼女がまだ廻廊途中に居た時です。」
「…嗚呼、例の早咲きか。」
「ご存じだったのですかって嗚呼貴方はもろ敵対してましたよね。」
「お前さんとこのお父さんがえらい強かったからな。」
実はあの時、大神官に一応会って対決していたはいた。
でも一時的なものだったし、
すぐに逃げてメルの元に移動出来たから良かったが
それでもかなりの凄腕だったのは間違いない。
正直もう敵に回したくないとは思っている。
メルでいう、2番目のメルトリアである時期の話しだ。
「それはどうも。」
「お前を褒めたわけではないんだが。」
「いえいえ、親を褒められて嬉しくない子供は居ませんよ。」
「…ま、それもそうか。」
「貴方のご両親は?」
「殺された。」
「…それは失礼。」
いやいい。言ってないからな。
「母は強かった。父もまた、強かった。」
「貴方の生きていた土地は確か第6でしたよね?」
「嗚呼。第6宇宙のアストミット。父は狩人。母は額装師だった。」
「……お待ちなさい。それは」
「そう、結ばれちゃいけない子供だったんだよ。」
だからこそ、メルの記憶を知ってから、胸が酷く痛んだというもので。
天使が恋して悪魔と共に時を過ごしたその代償。
その時間、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。
愛を恋を、望み願い祈り手を伸ばして
掴もうとしていたのだろうに。
そんなこと、この世界は許しちゃくれなくて。
透明無色の存在は、存在すら許されないというのだから。
酷いものだ。人の小さな幸せすらも、叶えてやれないのだから。
「アタシは弓使いでもあり魔枝の額装師でもある。」
「確か額装師はどんな力も絵画の様な魔法を扱うとお聞きしていますが。」
「良く知ってるな。色が塗られている杖を使う。」
ま、母は色がなくて、アタシは珍しい色を灯してしまったが。
「珍しい?」
「色が無いのは黒色になる。お前達が本来持っている杖の様な、な。」
「…逆だというのですか。」
そうだ。
「白かった。ただ、透き通るくらいには白くて、中はキラキラと反射して、虹色にも見えるその宝玉が。」
使えばどんなことも、叶えてくれる。まさに魔法の杖だった。
でも、そんな威力を持つから、彼等は許さなかった。
「情報が入って襲撃に襲われてね。当時まだ子供だったからな。」
幾つだったか。
「まだ2歳半だったかな。」
「に……貴方、」
「人が笑うのは裏がある…知ってるだろう?」
「…これから良くなりますよ。」
「…ま、今が楽しいから良いけどな。」
それで話を戻すが。
「枝さえ取ってくれば自分の杖を創り出すことも可能だ。」
「前の杖は」
「盗られた。だから向こう側が発展していることだろうし
だからこそ罪滅ぼしとして向こうにいたんだよ。」
あの島国で。もう一度。
…そうだったのですか。
「まぁ最後は喧嘩ばかりだったが、楽しいひと時もあったんだよ。」
優しい、酷く、優しい時間だった。
「あんなの知るくらいなら、いっそのことなけりゃあ良かったのにとは思ったがな。」
「…同じことをいうのですね。」
「え?」
「メル様も、昔同じことを仰られていました。」
まだ、青い目になるかどうか、分からなかった時。
陽だまりの下で、訓練もまだ出来なかった時。
マルカリータを散々追いかけまわしてぜぇぜぇと息を吐いて笑っていた時に彼女はぼやいた。
ーこんなこと知ったら戻れなくなるから嫌なんだよ。
ーそれまた何故?
ーどうせ痛い思いをするんだから。
「いっそのこと、知らない方が、最大の幸福である者だと。」
「…同じだな。ほんと、嫌になるくらいには。」
その、宝玉も、メルの瞳の姿その者も。
「…お手伝い感謝します。お礼になるかはわかりませんが、此方を解読しても?」
「構わん。寧ろすまんな。」
「いえいえ、秘密を掲示して頂いたのです。これしきのこと容易いものですから。」
なんでしたらお詫びとして、なんでも一つ聞いても構いませんよ?
いいのか?
「ええ、別にお答え出来る範囲であれば」
「スリーサイズとか?」
「………仮に貴方私のを聞いてどうするつもりですか。」
「色々飲み込んだな。」
「当たり前でしょう。何素っ頓狂な質問をされて
何処に飲み込まない奴がおるというのです。」
まだ妹達なら話は分かりますが。
まぁ冗談だって。
分かっていますよそれくらい。
「じゃあ、メルのことはどう思ってる?」
「どうとは、そりゃあ良い子だとは思っていますよ?」
「なぁ」
そう座って此方を見てくる彼女の目に、少しためらった後仕方がないと言い切って答える。
「…愛らしい子だとは思いますよ。狡いくらいには。」
「弟子だから?」
「まぁそれもありますね。名を付けて頂いた、というのも。」
でも、それよりも、もっと深いものだろう。
今なら答えられる。でも、きっとこれは抑えた方が良い。
「報われないなぁ、おまえも。」
「貴方もですか?」
「嗚呼…ほんと、報われないことばかりだ。」
きっとあのこも。
「奴ばかり見てくれてさえ、居れれば…何もないのに。」
「見ないと?」
「其処に書いていることが全てだ。」
あとこっちは昨日の資料。
いいんですか…!?
「貴方方も秘密裏にしたいことがおありでしょうに」
「どうせバレるんだ。話が早い方が良い。」
ソレに匹敵するからな。
…っこれは!!!!
「これ何処で入手されたのですか!!!」
「エリーゼが面倒を見ていた時にメルが書いていたそうだ。
彼女が覚えているかどうかは定かではないがな。
下手に聞けば感付かれるだろう。」
「…気付かれたくなければ隠せ、と。」
貴方嵌めましたね?
さぁ?
「隙があったもんでな?」
「…一杯食わされましたね。私もまだまだですか。」
ですが、
「これは一部の人間にお伝えしても?」
「ご自由に。華に選ばれ秘めし者達なら。」
「…貴方、一体何処まで知って」
さあ?
「ご想像に、お任せする。」
++++++++++
「それでこの情報ですか。参りましたね。」
「ええ。」
時刻は深夜が過ぎる程。
コルンは寝静まった後にこっそりサワアの元に訪ねていた。
一応連絡はしていたので起きてくれていて助かった。
「どういたしましょう」
「ひとまずは保留ですね。明らかコレを言わせた後が面倒過ぎます。お父様には?」
「一応ご報告済みです。貴方にお伝えしたのはお父様からですから。」
あとお伝えするとしたらコニックさん辺りでしょうか。
嗚呼彼ですか。
「まぁ妥当でしょうね。」
「華は」
「此方に。」
「…光り輝きますね。」
そう言って前に出してやれば、共鳴しているのかしらないが
青と黄色の華が光を分かち合う様にふわりと解き放っているではないか。
「一度は枯れている筈ですがね。…ま、向こうは
捨てたと言ってましたし此方としては大いに好都合です。」
「コレの意味を知られたら大事ですからね。」
「まぁその前に彼女の願いの方が強そうですが。」
「ふふ、違いありませんね?」
何だかんだ言って彼女は強欲なのだ。
彼等の様な願いよりも深く粘度の高い願いで上書きして遮断することだろう。
「ま、こっちには劣りますが。」
「…怒りますよ?」
「勝手に怒らせておけばいいでしょうあれくらい。」
「お兄様…」
「それにしても…
余花、それは春に遅れて咲く花のことを指すもの。
遅咲きの花で、メルからしたら似ても似つかない存在。
嗚呼でも、題名を考えれば、分からなくもない。
「これを完成させた時の、彼女の言葉が楽しみで仕方がありませんね?」
「…楽しんでいます?」
「そりゃあこれくらい楽しまずしてどうするというのです。」
エンドロールの向こう側で、
アンコールが鳴り響いて鳴り止まない。
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと。
最後の一曲、奏でて終焉を。
「交響曲第3番なのか、それとも第4番なのかにも寄りますが。」
「正確には交響曲第3番
「ま、そんなことはどうでも良いのです。とりあえず教えて頂ければ後でお父様の元にでも行きましょう。」
「わかりましたそれでは。」
「おやすみなさい。」
おやすみなさい、そう言って出て言ったコルンの足音が消えた辺りで
どっと疲れをため息と同時に吐いてしまった。
「…お前も難儀なものよな。」
「言わないで下さい。言えばなおの事疲れます。」
「それは失敬。」
「それにしても、驚きましたな。」
そう言ったのは界王神であるペルだ。
ヘレスらとは違い、少し時間を置いて目覚め会話が出来るようになっている。
このままいけば次の廻廊が始まり終わる頃には全員が話せる様になっていることだろう。
「まさかあのお方がこの世界そのものを統べる者達のお子だったとは。」
「ペル様口を慎んでください。」
「うっ」
「その言葉がどういう力をもつものか、ご存じないとは言わせませんよ?」
そう目を細めたサワアに、すまんとへなる声にため息を吐く。
「…名は意味を成す。どうあがいても、必ずです。」
「サワア……」
「私が選んだのはエフェメラルです。彼女は神であるべき存在。」
そんな寂しい場所に、戻すなんて、考えていない。
「そ、そうですぞ!!貴方様には彼女がいなければ話になりません!!」
「…ま、元恋敵としては何とも言えないが。」
「ヘレス様…」
「じゃが、あやつを放置しておってお主と愛を育む愚か者を知るよりかはずっとマシじゃ。」
「…ヘレス様」
言う様になりましたね?
まぁな
「誰かさんに似て、な?」
「それは私を指しています?それとも彼女?」
「さあ?ご想像に任せるとして、わらわは寝るぞ!!」
美容の大敵じゃからな!!
貴方肌どころかその身が人ですらありませんが。
「其処ら辺どう説明するんですか。」
「うるさい!!つべこべ言わずにねるぞ!!!」
「はいはい、おやすみなさい。」
そう言ってベットにそれぞれ入ってしまう。
一応簡易ではあるが前に使っていたヘレスらのベットは小さくも作っておいてある。
頭の上ではあるものの、彼女らも気にっているから何も文句は言われない。
「(ねぇ、エフェメラル。)」
サワアはそう思いながら目を閉じてしまう。
其処は大きな華樹の樹の下で。
青い髪色を灯した女性が此方を向きもせずに
地面と睨めっこをし続けている。
「(どの華を、私に捧げてくれるというのです?)」
貴方が束ねた華だろうか?それとも、彼女ら華神の華だろうか。
嗚呼全く別物だって構わない。僕は、同じ華を渡すことになる。
「(ねぇ、そんなに長く眠っていたら、春が過ぎ去ってしまいますよ。)」
そうしたらまた花冠を作る瞬間を逃してしまうではないか。
それはまずい、そう驚いたように身体を跳ねて前を向いた彼女と目が合う。
その目は、青くなくて。ダイヤモンドが光を灯したように、虹色を奥に散りばめさせてきていて。
『白昼夢だよ』
それは、昼間に寝てみてしまう夢の話しではないのですか。
『これは、真昼間が見る、白昼夢のお話。』
嗚呼、だから、貴方は生きていないというのですか。
夢幻にしか存在しないとでもいうのですか。
午前も午後も分からない時間でしか、笑えないと。
そんな、酷いことを言わないで。
『大丈夫。私は何時だって、貴方と共に生きているのよ?』
嘘つき、そんなこと無い癖して。こうやって時々
僕の夢の中にこうやって入り込んでくるのだ。
髪色は白く光り輝いている。自分と同じ様で違う、白い髪色。
もう近くにいるのに、はるか遠くの存在に感じられる。
春に咲く、遅咲きに。思いがけなく出会い、巡り合う。
鳴り響く音が飛び散り切り裂くその最中。
触れさせてくれない。触れたら最後、この夢は目覚めてしまう。
それならいっそのこと、このまま二人きりで。
「(そんなこと、望まないのですよね。)」
お互い。
そう思えば、嬉しそうに笑って
肩を落としてコッチを見上げてくれる。
触れたいのに、触れられない。
嗚呼、本当に、狡い人なのだ。
エフェメラル、優しい子。
春のひと時にしか、生きれない。
可愛い子。
『はなかんむりを』
「こうかんしましょう」
二人だけの、優しくも、酷い、悪夢を。
僕はこれから毎晩、見ることになるとは思わなかった。
かつて彼女も似たような夢を見ていたことすら、知らずに。